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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-138634(P2015-138634A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】端子金具付き電線及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/02 20060101AFI20150703BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20150703BHJP
   H02G 15/02 20060101ALI20150703BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150703BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150703BHJP
   H01R 35/02 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   H01R43/02 B
   H01R4/02 C
   H02G15/02 B
   H01B7/00 306
   H01B13/00 521
   H01R35/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-9162(P2014-9162)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
5G309
5G375
【Fターム(参考)】
5E051LA02
5E051LB03
5E085BB03
5E085BB14
5E085CC03
5E085DD03
5E085HH13
5E085HH34
5E085JJ36
5G309FA06
5G375AA04
5G375CA02
5G375CA12
(57)【要約】
【課題】端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することで、端子金具と金属素線との間を良好に固着させること。
【解決手段】複数の金属素線12からなる編組線10に端子金具20が固着されて接続された端子金具付き電線1であって、端子金具20と編組線10の端部に設けられた重ね部14とが重ね合わされて配され、重ね部14は端子金具20に固着されない非固着部14Bと、端子金具20に固着された固着部14Aと、を有し、固着部14Aは、その幅方向において、非固着部14Bよりも外側に膨らんだ形で設けられていることを特徴とする。固着部14Aがこのような形状とされていることで、固着部14Aにおける金属素線12が重ね部14の幅方向の全域に亘って端子金具20と固着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属素線からなる導電部材に端子金具が固着されて接続された端子金具付き電線であって、
前記端子金具と前記導電部材の端部に設けられた重ね部とが重ね合わされて配され、
前記重ね部は、前記端子金具に固着されない非固着部と、前記端子金具に固着された固着部と、を有し、
前記固着部は、その幅方向において、前記非固着部よりも外側に膨らんだ形で設けられていることを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項2】
前記端子金具は、前記非固着部と重なる部位の幅が前記固着部と重なる部位の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の端子金具付き電線。
【請求項3】
複数の金属素線からなる導電部材に端子金具が固着されて接続された端子金具付き電線を製造する方法であって、
前記端子金具と前記導電部材の端部に設けられた重ね部とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記重ね部のうち前記端子金具と固着されない非固着部の幅方向の両側を支持部材で支持する支持工程と、
前記重ね部を前記支持部材で支持した状態で、前記重ね部のうち前記端子金具と固着される固着部と前記端子金具とを一対の電極の間に挟持して加圧する挟持工程と、
前記固着部と前記端子金具とを加圧した状態で前記一対の電極の間に電流を流す通電工程と、を備え、
前記支持工程では、前記固着部の幅方向の両側と前記支持部材との間に隙間が設けられた形で前記非固着部を前記支持部材で支持し、
前記挟持工程では、前記非固着部の幅以上の幅を有する前記一対の電極の間に前記固着部と前記端子金具とを挟持することを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記挟持工程では、前記非固着部の幅よりも大きな幅を有する前記一対の電極の間に前記固着部と前記端子金具とを挟持することを特徴とする請求項3に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の金属素線からなる心線を被覆した導電部材に端子金具が接続された端子金具付き電線として、例えば特許文献1に記載の端子金具付き電線が知られている。この端子金具付き電線は、端子金具の上に蝋材を載置し、この蝋材の上に電線の心線を重ね合わせて加熱することにより、端子金具と心線とを蝋材により電気的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−124178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の端子金具付き電線は、端子金具と心線とを蝋材によって固着させるため、蝋材を載置するための作業工程が増す等、端子金具付き電線の製造コストが上がってしまう。そこで、端子金具と錫めっきが施された心線とを平坦な下側電極の上面に重ね合わせて載置し、その幅方向の両側から支持部材等で支持した状態で、端子金具と金属素線とを平坦な上側電極で上側から加圧しながら通電して加熱することで、端子金具と金属素線とを溶接して固着する方法が検討されている。
【0005】
しかしながら、このような固着方法によると、端子金具と心線とをその幅方向の両側から支持部材等で支持した状態でその上下方向から両電極で挟みこんだ際に、心線の金属素線が押し潰されて浮き上がり、電極と支持部材との間の隙間に金属素線が入り込む虞がある。その結果、端子金具に溶接されない金属素線が生じ、金属素線と端子金具との間を十分に固着できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みて創作されたものであって、端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することで、端子金具と金属素線との間を良好に固着させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の端子金具付き電線は、複数の金属素線からなる導電部材に端子金具が固着されて接続された端子金具付き電線であって、前記端子金具と前記導電部材の端部に設けられた重ね部とが重ね合わされて配され、前記重ね部は、前記端子金具に固着されない非固着部と、前記端子金具に固着された固着部と、を有し、前記固着部は、その幅方向において、前記非固着部よりも外側に膨らんだ形で設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の端子金具付き電線は、固着部の幅方向の両側が非固着部よりも外側に膨らんだ形となっている。固着部のこのような形状は、その製造過程において固着部が端子金具に固着される際に、固着部の幅方向の両側が支持部材等で支持されない状態で、非固着部の幅以上の幅を有する電極等で固着部が加圧されて押し潰されることで形成される。このため、その製造過程において固着部が電極等で加圧される際に、電極等と支持部材等との間の隙間に金属素線が入り込むことを防止することができる。さらに、固着部がこのような形状とされていることで、固着部における金属素線が重ね部の幅方向の全域に亘って端子金具と固着されているので、端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することができる。このように上記の端子金具付き電線では、端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することで、端子金具と金属素線との間を良好に固着させることができる。
【0009】
上記の端子金具付き電線において、前記端子金具は、前記非固着部と重なる部位の幅が前記固着部と重なる部位の幅よりも小さくてもよい。
【0010】
この構成によると、固着部における金属素線と端子金具とが固着される際に、非固着部の幅方向の両側が支持部材等で支持されることで、端子金具のうち非固着部と重なる部位よりも大きな幅とされる固着部と重なる部位が支持部材等と前後方向において干渉する。このため、固着部における金属素線と端子金具とが固着される際に、端子金具が前後方向において位置ずれすることを防止することができ、端子金具と金属素線との間を一層良好に固着させることができる。
【0011】
本発明の他の態様は、複数の金属素線からなる導電部材に端子金具が固着されて接続された端子金具付き電線を製造する方法であって、前記端子金具と前記導電部材の端部に設けられた重ね部とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記重ね部のうち前記端子金具と固着されない非固着部の幅方向の両側を支持部材で支持する支持工程と、前記重ね部を前記支持部材で支持した状態で、前記重ね部のうち前記端子金具と固着される固着部と前記端子金具とを一対の電極の間に挟持して加圧する挟持工程と、前記固着部と前記端子金具とを加圧した状態で前記一対の電極の間に電流を流す通電工程と、を備え、前記支持工程では、前記固着部の幅方向の両側と前記支持部材との間に隙間が設けられた形で前記非固着部を前記支持部材で支持し、前記挟持工程では、前記非固着部の幅以上の幅を有する前記一対の電極の間に前記固着部と前記端子金具とを挟持することを特徴とする。
【0012】
上記の端子金具付き電線の製造方法によると、支持工程において固着部の幅方向の両側と支持部材との間に隙間が設けられた形で非固着部を支持部材で支持するため、挟持工程において非固着部の幅以上の幅を有する一対の電極の間に固着部と端子金具とを挟持することができる。このため、挟持工程において電極と支持部材との間の隙間に金属素線が入り込むことを防止することができる。その結果、端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することができ、端子金具と金属素線との間を良好に固着させることができる。
【0013】
上記の端子金具付き電線の製造方法において、前記挟持工程では、前記非固着部の幅よりも大きな幅を有する前記一対の電極の間に前記固着部と前記端子金具とを挟持してもよい。
【0014】
この製造方法によると、挟持工程において電極が幅方向に多少ずれた場合であっても、電極が重ね部の幅方向の全域に亘って重畳した状態を保つことができるため、挟持工程において電極と支持部材との間の隙間に金属素線が入り込むことを効果的に防止することができる。その結果、端子金具と金属素線との間を一層良好に固着させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端子金具に溶接されない金属素線が生じることを防止することで、端子金具と金属素線との間を良好に固着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1における端子金具付き電線の斜視図
図2】端子金具と編組線とを重ね合わせた状態を示す断面図
図3】端子金具と編組線とを一対の電極の間に挟持した状態を上方から視た平面図
図4図3におけるIV−IV断面の断面構成であって、端子金具と編組線とを一対の電極の間に挟持した状態を示す断面図
図5図4における一点鎖線で囲まれた部分を拡大した図であって、上側電極とガイド部材との間の隙間を拡大した拡大断面図
図6】端子金具と編組線とを一対の電極の間に挟持した状態を示す斜視図
図7】実施形態2において端子金具と編組線とを一対の電極の間に挟持した状態を上方から視た平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
図1乃至図6を参照して実施形態1を説明する。本実施形態では、図1に示す端子金具付き電線1を例示する。この端子金具付き電線1は、図1に示すように、編組線(導電部材の一例)10の端部に端子金具20が溶接されることにより編組線10と端子金具20とが電気的に接続されたものである。なお、以下の説明では、図2図4、及び図5における紙面上側を上方とし、図1における左前側及び図3図7における紙面下方を前方とする。また、図2乃至図5、及び図7における左右方向を編組線10、端子金具20及び後述する一対の電極41,42の幅方向とする。
【0018】
端子金具20は、銅または銅合金からなる平板状とされている。端子金具20の後方側には、図1に示すように、相手側端子(不図示)と接続される円形の貫通孔22が形成されている。また、端子金具20の前方側は、編組線10の端部が重ね合わされて編組線10と接続される接続部24とされる。
【0019】
端子金具20の接続部24の一部には、その幅方向の両側にそれぞれ切り欠き26が設けられている。接続部24のうち幅方向の両側に上記切り欠き26が設けられていない部位は、後述する編組線10の固着部14Aと重なる部位とされる(以下、当該部位を端子側固着部24Aと称する)。一方、接続部24のうち幅方向の両側に上記切り欠き26が設けられた部位は、後述する編組線10の非固着部14Bと重なる部位とされる(以下、当該部位を端子側非固着部24Bと称する)。また、端子金具20の接続部24では、上記切り欠き26が設けられることで、端子側非固着部24Bの幅が端子側固着部24Aの幅よりも小さくなっている。
【0020】
編組線10は、筒状をなし、図1に示すように、銅または銅合金からなる複数の細い金属素線12を網目状に編み込んだ電線とされている。金属素線12の表面には錫めっきが施されることにより錫めっき層(不図示)が形成されており、金属素線12の酸化や錆の発生が抑制されている。編組線10の端部には端子金具20と重ね合わされる重ね部14が設けられている。
【0021】
編組線10の重ね部14は、その前方側が抵抗溶接によって端子金具20と固着される固着部14Aとされ、後方側が端子金具20と固着されない非固着部14Bとされる。編組線10の重ね部14は、図2に示すように、抵抗溶接前の状態では中空形状となっている。そして、編組線10の重ね部14は、端子金具20上に重ね合わせられて固着部14Aが抵抗溶接されることにより、図1及び図3に示すように、端子金具20の接続部24及び金属素線12の錫めっき層から溶融した錫めっきによって固められて幅広な中実形状となり、その固着部14Aが端子金具20の端子側固着部24Aと固着される。
【0022】
また、編組線10の重ね部14における固着部14Aは、図1に示すように、その幅方向において、重ね部14における非固着部14Bよりも外側に円弧状に膨らんだ形で設けられている(以下、当該固着部14Aのうち外側に膨らんだ部分を膨出部16と称する)。そして、固着部14Aにおける金属素線12は、重ね部14の幅方向の全域に亘って端子金具20の端子側固着部24Aと固着されている。
【0023】
続いて、本実施形態における端子金具付き電線1の製造方法を説明する。本方法では、端子金具20と編組線10とを溶接装置40を用いて抵抗溶接によって接続する。この溶接装置40は、図2に示すように、上下に配されるタングステン製の一対の電極41,42を備えている。一対の電極41,42は、下側に配された下側電極41の上面41Aと上側に配された上側電極42の下面42Aとがそれぞれ平坦に形成されており、上側電極42の下面42Aと下側電極41の上面41Aとが平行に対向する配置とされている。
【0024】
本方法では、まず、下側電極41の上方に端子側固着部24Aが位置するように、端子金具20の接続部24を溶接装置40上に載置する。端子金具20の接続部24を溶接装置40上に載置することで、図2に示すように、端子側固着部24Aが下側電極41の上面41Aに載置される。ここで、接続部24は平板状となっているので、下側電極41に対して端子側固着部24Aが面接触した状態となる。次に、端子金具20の接続部24上に編組線10の重ね部14を重ね合わせる(重ね合わせ工程の一例)。
【0025】
次に、端子金具20の接続部24及び編組線10の重ね部14の幅方向の両側を一対のガイド部材(支持部材の一例)44,44で挟み込む。このガイド部材44は、セラミック製とされ、接続部24及び重ね部14を挟み込んだ状態で対称配置される。また、このガイド部材44は、図2及び図3に示すように、その先端部に、上下方向に沿って溝状に延びる凹部44Aが形成されている。凹部44Aの上端は上側に開口しており、下端は下側に開口している。
【0026】
ガイド部材44の先端部のうち、凹部44Aを挟んだ前方側の部位及び後方側の部位における内側端面(編組線10と対向する側の端面)は、それぞれ編組線10の重ね部14及び端子金具20の接続部24を支持する支持端面44Bとされる。本方法では、接続部24及び重ね部14をガイド部材44によって挟み込む際に、接続部24における端子側固着部24Aの幅方向の両側、及び重ね部14における固着部14Aの幅方向の両側が、それぞれガイド部材44の凹部44Aと対向するように挟み込む。
【0027】
このように接続部24及び重ね部14をガイド部材44で挟み込むことで、図3に示すように、編組線10のうち、固着部14Aを挟んだ前方側の部位と後方側の部位における幅方向の両側が、それぞれガイド部材44の支持端面44Bによって支持される(支持工程の一例)。この状態では、重ね部14における非固着部14Bの幅方向の両側、及び接続部24における端子側非固着部24Bの幅方向の両側が、それぞれガイド部材44の支持端面44Bに当接されるとともに、固着部14Aの幅方向の両側とガイド部材44の凹部44Aとの間に隙間S1が設けられる。
【0028】
なお、ガイド部材44の凹部44Aの深さ寸法は端子金具20の切り欠き26の深さ寸法とほぼ等しくなっており、ガイド部材44の凹部44Aの前後方向の幅は端子金具20の切り欠き26の前後方向の幅よりわずかに大きいものとなっている。このため、端子側非固着部24Bの幅方向の両側が支持端面44Bに当接されることで、端子側固着部24Aの幅方向の両側が凹部44Aの底面と当接する。
【0029】
また、ガイド部材44の凹部44Aの前後方向における寸法は端子金具20の端子側固着部24Aの前後方向における寸法よりわずかに大きくなっている。このため、図3に示すように、接続部24及び重ね部14を一対のガイド部材44,44で挟み込んだ状態では、端子金具20の各切り欠き26に各ガイド部材44の支持端面44Bが入り込む(各ガイド部材44の凹部44Aに端子金具20における端子側固着部24Aの両側が入り込む)。これにより、一対のガイド部材44,44によって端子金具20が前後方向に移動することが規制される。
【0030】
次に、図3乃至図6に示すように、編組線10と端子金具20とを一対のガイド部材44,44によって支持した状態で、編組線10の重ね部14における固着部14Aの上側から上側電極42を押し当てる(図3では上側電極42を一点鎖線で示す)。これにより、重ね部14における固着部14Aと端子金具20における端子側固着部24Aとが一対の電極41,42の間に挟持されて加圧される(挟持工程の一例)。
【0031】
なお、下側電極41の幅は、編組線10と端子金具20とを支持した状態における一対のガイド部材44,44の凹部44Aと凹部44Aの間の幅W1(図3参照)と一致している。一方、上側電極42の幅は、編組線10と端子金具20とを支持した状態における一対のガイド部材44,44の凹部44Aと凹部44Aの間の幅よりもわずかに小さく、かつ、固着部14A(非固着部14B)の幅W2(図3参照)よりも大きいものとなっている。このため、固着部14Aに上側電極42を押し当てる際、上側電極42の幅方向の両側が各ガイド部材44と干渉することはない。一方、これにより、上側電極42と各ガイド部材44との間にはわずかな隙間が形成される。
【0032】
また、固着部14Aと端子側固着部24Aとが加圧される際、固着部14Aの幅方向の両側がガイド部材44によって支持されないため(固着部14Aの幅方向の両側と各ガイド部材44との間に隙間S1(図3参照)が設けられるため)、固着部14Aが一対の電極41,42の間で加圧されて押し潰されることで、固着部14Aの幅方向の両側が非固着部14Bよりも外側に膨らんだ形とされる。その結果、図4に示すように、固着部14Aの幅方向の両側に上記膨出部16が形成される。
【0033】
ここで、仮に各ガイド部材に上記凹部が設けられていないとすると、固着部の幅方向の両側がガイド部材によって支持されることとなる。そこで、上側電極の幅方向の両側が各ガイド部材と干渉しないように、上側電極の幅を、各ガイド部材の間の幅、即ち固着部(非固着部)の幅より小さくする必要がある。この場合、固着部の幅方向の両側における一部に上側電極に加圧されない部位が生じるため、固着部が一対の電極の間に挟持されて固着部における金属素線が押し潰されることで、固着部の幅方向の両側における一部の金属素線が上側電極と各ガイド部材との間の隙間に入り込むことがある。
【0034】
これに対し本実施形態では、図5に示すように、上側電極42の幅を固着部14Aの幅W2よりも大きくできるので、固着部14Aが一対の電極41,42の間に挟持されることで、固着部14Aの全域が上側電極42によって加圧される。このため、固着部14Aにおける金属素線12が押し潰される際に、固着部14Aの一部の金属素線12が浮き上がることが防止され、上側電極42と各ガイド部材44との間の隙間S2(図5参照)に金属素線12が入り込むことを防止することができる。
【0035】
次に、固着部14Aと端子側固着部24Aとを加圧した状態で一対の電極41,42の間に電流を流し、固着部14Aと端子側固着部24Aとを、錫の溶解温度より高く、銅の溶解温度より低い温度範囲内で加熱する(通電工程の一例)。この工程では、加熱温度が錫の融点を過ぎると、固着部14Aの金属素線12及び端子側固着部24Aの表面に形成された錫めっき層から錫が溶け出す。そして、溶け出した錫が、金属素線12の隙間に確実に入り込むとともに、固着部14Aと端子側固着部24Aとの間に確実に入り込んだ状態となる。これにより、固着部14Aと端子側固着部24Aとの間がしっかりと密着される。
【0036】
次に、固着部14Aに対して端子側固着部24Aの全域が密着したところで、固着部14A及び端子側固着部24Aを冷却する。これにより、錫が硬化して固着部14Aと端子側固着部24Aとが固着されて電気的に接続され、端子金具付き電線1が完成する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の端子金具付き電線1によると、その製造過程において、非固着部14Bの幅方向の両側がガイド部材44によって支持され、固着部14Aの幅方向の両側が支持されない状態で固着部14Aと端子金具20とが加圧される。このとき、非固着部14Bの幅以上の幅よりも大きな幅を有する一対の電極41,42の間に固着部14Aと端子側固着部24Aとを挟持させる。このため、固着部14Aが一対の電極41,42の間に挟持されて加圧される際に、固着部14Aの全域が上側電極42によって加圧される。
【0038】
そして、固着部14Aの幅方向の両側が支持されない状態で固着部14Aが一対の電極41,42の間で加圧されて押し潰されることで、固着部14Aの幅方向の両側が非固着部14Bよりも外側に膨らんだ形とされ、固着部14Aの幅方向の両側に膨出部16が形成される。その結果、固着部14Aにおける金属素線12を重ね部14の幅方向の全域に亘って端子金具20と固着させることができ、端子金具20に溶接されない金属素線12が生じることを防止することができる。このように本実施形態の端子金具付き電線1では、端子金具20に溶接されない金属素線12が生じることを防止することで、端子金具20と金属素線12との間を良好に固着させることができる。
【0039】
また、本実施形態の端子金具付き電線1では、端子金具20に切り欠き26が設けられ、これにより、端子側非固着部24Bの幅が端子側固着部24Aの幅よりも小さくなっている。このような構成とされていることで、固着部14Aにおける金属素線12と端子側固着部24Aとが固着される際に、非固着部14Bの幅方向の両側がガイド部材44で支持され、端子側非固着部24Bよりも大きな幅とされる端子側固着部24Aがガイド部材44と前後方向において近接する。このため、固着部14Aにおける金属素線12と端子側固着部24Aとが固着される際に、端子金具20が前後方向に位置ずれすると、端子側固着部24Aがガイド部材44と前後方向において即座に干渉し、端子金具20が前後方向に位置ずれすることを防止することができる。これにより、端子金具20と金属素線12との間を一層良好に固着させることができる。
【0040】
また、本実施形態の端子金具付き電線1では、上述したように、その製造過程において、上側電極42と各ガイド部材44との間の隙間S2に金属素線12が入り込むことを防止することができる。その結果、端子金具20に溶接されない金属素線12が生じることを防止することができ、端子金具20と金属素線12との間を良好に固着させることができる。
【0041】
また、本実施形態の端子金具付き電線1では、上述したように、その製造過程において、非固着部14Bの幅よりも大きな幅を有する一対の電極41,42の間に固着部14Aと端子金具20とを挟持させる。このため、上側電極42が幅方向に多少ずれた場合であっても、上側電極42が重ね部14の幅方向の全域に亘って重畳した状態を保つことができ、上側電極42とガイド部材44との間の隙間S2に金属素線12が入り込むことを効果的に防止することができる。その結果、端子金具20と金属素線12との間を一層良好に固着させることができる。
【0042】
<実施形態2>
次に、実施形態2について図7を参照して説明する。本実施形態の端子金具付き電線101は、その製造過程で用いるガイド部材144の凹部144Aの深さ寸法が実施形態1のものと異なっている。その他の構成については実施形態1のものと同様であるため、構造、作用、及び効果の説明は省略する。なお、図7において、図3の参照符号に数字100を加えた部位は、実施形態1で説明した部位と同一である。
【0043】
本実施形態では、図7に示すように、その製造過程で用いるガイド部材144の凹部144Aの深さが実施形態1のものと比べて浅く形成されている。そして、その製造過程において、固着部と端子側固着部とを下側電極と上側電極142との間に挟持させる工程では、非固着部114Bの幅と等しい幅を有する上側電極142を固着部の上側から押し当てる。
【0044】
このような製造方法であっても、固着部が下側電極と上側電極142との間に挟持される際に、固着部の全域が上側電極142によって加圧される。このため、固着部における金属素線が押し潰される際に、上側電極142と各ガイド部材144との間の隙間に金属素線が入り込むことを防止することができる。その結果、端子金具120と金属素線との間を良好に固着させることができる。
【0045】
なお本実施形態では、ガイド部材144に凹部144Aが設けられていることで、固着部の幅方向の両側がガイド部材144によって支持されないため、固着部が下側電極と上側電極142との間で加圧されて押し潰されることで、実施形態1と同様に、固着部の幅方向の両側に膨出部116が形成される。
【0046】
上記の実施形態の他の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の各実施形態では、導電部材の一例として編組線を示したが、編組線以外の導電部材が端子金具に接続された端子金具付き電線であってもよい。
【0047】
(2)上記の各実施形態では、端子金具の一例として相手側端子と接続される貫通孔が形成された端子金具を示したが、端子金具の構成については限定されない。
【0048】
(3)上記の各実施形態では、端子金具に切り欠きが設けられた構成を例示したが、端子金具に切り欠きが設けられていない構成であってもよい。
【0049】
(4)上記の各実施形態では、錫めっき層から溶け出した錫によって編組線と端子金具との間が固着された構成を例示したが、編組線と端子金具との間を固着させる構成については限定されない。
【0050】
(5)上記の各実施形態では、その製造過程において、端子金具の上に編組線を重ね合わせた後にそれらの両側を一対のガイド部材で挟み込む例を示したが、端子金具のみを一対のガイド部材で挟み込み、その後に端子金具の上に編組線を重ね合わせることで、編組線の非固着部の両側を一対のガイド部材によって支持してもよい。即ち、支持工程を重ね合わせ工程の前後に分けて行ってもよい。
【0051】
以上、本発明の各実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…端子金具付き電線
10,110…編組線
12…金属素線
14…重ね部
14A…固着部
14B…非固着部
16,116…膨出部
20,120…端子金具
22,122…貫通孔
24…接続部
24A…端子側固着部
24B…端子側非固着部
26…切り欠き
40…溶接装置
41…下側電極
41A…(下側電極の)上面
42,142…上側電極
42A…(上側電極の)下面
44,144…ガイド部材
44A,144A…凹部
44B…支持端面
S1…固着部の幅方向の両側と各ガイド部材との間に設けられた隙間
S2…上側電極と各ガイド部材との間に設けられた隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7