【実施例】
【0026】
(実施例)
上記端子台の実施例について、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、端子台1は、樹脂成形部21を有するハウジング2と、板状のバスバー3と、シール部4とを有している。
図3に示すように、バスバー3は、樹脂成形部21に埋設された埋設部32及び樹脂成形部21の開口端211から外方に突出した接続部31を一体に備えている。
図3及び
図4に示すように、シール部4は、埋設部32と樹脂成形部21との間に存在する隙間5の一部に配され、隙間5を封止している。また、シール部4は、後述するように、飽和結合のみからなると共にハロゲン原子を含有する100質量部の第1ゴム成分と、不飽和結合を有すると共にハロゲン原子を含有する3質量部の第2ゴム成分とを含有してなる。
【0027】
図1〜
図4に示すように、端子台1のハウジング2は略平板状を呈しており、その中央部に樹脂成形部21が設けられている。また、樹脂成形部21には、複数のバスバー3が貫通配置されている。複数のバスバー3は、埋設部32の幅方向に互いに並んでいる。また、バスバー3は、埋設部32の長手方向がハウジング2の厚み方向を向くように配置されている。なお、以下において、バスバー3の並び方向を「横方向Y」という。また、埋設部32の長手方向を「高さ方向Z」といい、埋設部32の厚み方向を「縦方向X」という。
【0028】
図1及び
図2に示すように、ハウジング2は熱可塑性樹脂よりなる樹脂成形部21を有している。樹脂成形部21は、
図1〜
図3に示すように、バスバー3の埋設部32を覆う流路壁部212を有している。流路壁部212は、隙間5における開口端211からシール部4に到達するまでの領域よりなるシール部4の流路51を、縦方向X及び横方向Yの四方から覆っている。なお、本例の樹脂成形部21は、ガラス繊維強化された芳香族系ナイロン樹脂より形成されている。
【0029】
また、本例においては、埋設部32の厚み方向(縦方向X)における流路壁部212の厚み寸法d(
図4参照)は3mmである。このように、厚み寸法dを3mm以下にすることにより、端子台1が加熱された際の熱膨張による変形を小さくすることができ、ひいては、縦方向Xにおいて隙間5が過度に広がることを抑制できる。その結果、端子台1が加熱された状態において、シール部4が流路51内を流れる際の抵抗が小さくなることを防止でき、シール部4の漏出をより長期間に渡って抑制できる。また、同じ観点から、埋設部32の厚み方向(縦方向X)における流路壁部212の厚み寸法dを2mm以下とすることがより好ましい。
【0030】
バスバー3はスズめっきされた銅板より構成されており、
図1〜
図3に示すように、樹脂成形部21を貫通すると共にインサート成形により樹脂成形部21に固定されている。本例のバスバー3は、長手方向に直交する断面が幅12.5mm×厚み2.5mmの長方形状を呈している。
【0031】
また、
図3に示すように、バスバー3は、樹脂成形部21に埋設された埋設部32の両端に接続部31を有している。各々の接続部31は、ワイヤーハーネス等を締結するための締結孔311及び締結ナット312を有している。
【0032】
シール部4は、隙間5の一部に設けられ、埋設部32と樹脂成形部21との間を液密に封止している。なお、本例においては、シール部4に含まれる第1ゴム成分として、エピクロロヒドリンゴム(ダイソー(株)製、「エピクロマー(登録商標)H」)を用いている。また、第2ゴム成分としては、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテル及びエチレンオキサイドからなる3元系共重合体(ダイソー(株)製、「エピクロマー(登録商標)CG」)を用いている。
【0033】
本例の端子台1は、以下の製造方法により作製することができる。まず、100質量部の未架橋の第1ゴム成分、3質量部の未架橋の第2ゴム成分及び溶剤を混合してなる接着剤を準備する工程を実施する。接着剤の詳細な組成は、以下の通りである。
【0034】
・第1ゴム成分(ダイソー(株)製、製品名「エピクロマー(登録商標)H」);100質量部
・第2ゴム成分(ダイソー(株)製、製品名「エピクロマー(登録商標)CG」);3質量部
・ステアリン酸(花王(株)製、「ルナック(登録商標)S−50V」);3質量部
・酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製、「CX150」);3質量部
・架橋剤(川口化学工業(株)製、「アクセル(登録商標)22−S」);1.2質量部
・溶剤;210質量部
なお、溶剤には、トルエン、キシレン、酢酸エチル及びメチルエチルケトンが含まれている。
【0035】
次いで、別途準備したバスバー3における埋設部32となる部分に接着剤を塗布する工程を実施する。本例においては、塗布時の接着剤の厚みは0.02〜0.3mmの範囲とした。また、塗布後に接着剤を自然乾燥させる工程を実施した。
【0036】
その後、インサート成形により樹脂成形部21を形成すると共に第1ゴム成分及び第2ゴム成分を架橋させ、接着剤が加熱されてなるシール部4を隙間5に形成する工程を実施する。インサート成形を行うことにより、溶融状態まで加熱された樹脂と接着剤とが接触するため、接着剤が加熱される。これにより、溶剤が揮発すると共に第1ゴム成分及び第2ゴム成分が架橋剤により架橋される。その結果、埋設部32と樹脂成形部21との隙間5にシール部4が形成される。以上により、端子台1を得ることができる。
【0037】
次に、本例の作用効果について説明する。端子台1は、埋設部32と樹脂成形部21との間に存在する隙間5の一部に配され、隙間5を封止するシール部4を有している。そして、シール部4は、第1ゴム成分及び第2ゴム成分を上記特定の範囲の比率で含んでなる。そのため、端子台1は、隙間5を液密に封止することができる。
【0038】
また、シール部4は、第1ゴム成分及び第2ゴム成分の両方を含むことにより熱老化の進行が遅くなるため、軟化が抑制される。その結果、端子台は、長期間に渡ってシール部の漏出を抑制することができる。
【0039】
また、端子台1は、上述の製造方法により作製することができる。そのため、接着剤の粘度を調整することができ、ひいては接着剤をバスバー3上に途切れなく塗布することができる。その結果、接着剤が加熱されてなるシール部4により、隙間5を液密に封止することが容易である。
【0040】
以上のように、端子台1は、隙間5を液密に封止でき、かつ、シール部4の漏出を長期間に渡って抑制することができる。それ故、端子台1は、優れた性能を有する。また、上記製造方法を用いることにより、端子台1を容易に作製することができる。
【0041】
(実験例1)
本例は、第2ゴム成分の含有量を種々に変更した端子台1を作製し、性能を評価した実験例である。本例の端子台1(試験体1〜試験体6)は、表1に示す比率で各成分を混合した6種の接着剤(接着剤A〜接着剤F)を用い、実施例1と同様の方法により作製した。なお、試験体5及び試験体6は、試験体1〜試験体4との比較のため、第2ゴム成分を含有しない接着剤E及び第1ゴム成分を含有しない接着剤Fを用いて作製した。これらの6種の接着剤及び試験体を用いて、以下の評価を行った。
【0042】
まず、150℃で1000時間加熱する熱老化処理を施した後の接着剤の伸び及びせん断接着強度を、接着剤A〜接着剤Fのそれぞれについて測定した。測定方法を以下に説明する。
【0043】
<接着剤の伸び>
接着剤をシート状に成形した後、150℃で30分加熱することにより第1ゴム成分及び第2ゴム成分を架橋させた。その後、得られたシート状の接着剤に上述した熱老化処理を施した。そして、熱老化処理後の接着剤を用いて引張試験を行い、伸びを測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
<せん断接着強度>
スズめっきされた銅板及びガラス繊維強化された芳香族系ナイロン樹脂からなる樹脂板が重なっており、重なり部分に接着剤が設けられた、JIS K 6850に規定された形状を有する試験片を作製した。なお、試験片の作製手順は、上述した端子台1の製造方法に準じたものとした。すなわち、まず、スズめっきされた銅板に接着剤を0.03〜0.2mmの厚みで塗布した後、接着剤を乾燥させた。次いで、インサート成形により、接着剤と重なるように樹脂板を形成した。そして、得られた試験片に上述した熱老化処理を施した後、JIS K 6850に規定された方法に準じて引張試験を行い、接着剤のせん断接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、接着剤A〜接着剤Fを用いて作製された6種の端子台1(試験体1〜試験体6)について、シール部4の漏出の有無の評価及びシール部4の密着性を評価するためのリークテストを実施した。評価方法を以下に説明する。
【0047】
<シール部4の漏出の有無の評価>
バスバー3の長手方向が鉛直方向と平行になるように端子台1を固定した。この状態で上述した熱老化処理を端子台1に施し、熱老化処理後におけるシール部4の漏出の有無を目視にて観察した。その結果を表2に示す。
【0048】
<リークテスト>
予め熱老化処理を施した端子台1の樹脂成形部21における一方の開口端211a(
図3参照)から流路51内に圧力100kPaの圧縮空気を導入した。そして、他方の開口端211bからの圧縮空気の漏出の有無を判定した。その結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表1及び表2より知られるように、試験体1〜試験体4は、100質量部の第1ゴム成分及び3質量部以上の第2ゴム成分を含んでいるため、熱老化処理を行った後にシール部4が漏出しなかった。また、試験体1〜4は、リークテストにおいて圧縮空気が他方の開口端211bから漏出せず、シール部4は優れた密着性を示した。
【0051】
一方、第2ゴム成分を有しない試験体5は、熱老化処理を行った後にシール部4が漏出した。また、試験体5及び試験体6は、リークテストにおいて圧縮空気が他方の開口端211bから漏出した。
【0052】
以上の結果から、シール部4が第1ゴム成分及び第2ゴム成分の両方を含むことにより、長期間に渡ってシール部4の漏出を抑制できることがわかる。また、シール部4は、第1ゴム成分及び第2ゴム成分の両方を含むことにより、樹脂成形部21と埋設部32との間を長期間に渡って液密に封止できることがわかる。
【0053】
(実験例2)
本例は、熱老化処理の加熱時間を1000時間から1200時間に延長した以外は、実験例1と同様の方法により接着剤及び端子台1の性能評価を行った例である。なお、本例においては、実験例1における接着剤A〜接着剤D及び試験体1〜試験体4を用いて評価を行った。
【0054】
150℃で1200時間加熱する熱老化処理を実施した後の接着剤A〜接着剤Dの伸び及びせん断接着強度の測定結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
また、試験体1〜試験体4について、150℃で1200時間加熱する熱老化処理を実施した後のシール部4の漏出の有無の評価結果及びリークテストの結果を表4に示す。
【表4】
【0057】
表3及び表4に示すように、試験体2及び試験体3は、100質量部の第1ゴム成分に対して第2ゴム成分を5〜20質量部含んでいるため、150℃で1200時間加熱する熱老化処理を行った後に、シール部4が漏出しなかった。また、試験体2及び試験体3は、リークテストにおいて圧縮空気が他方の開口端211bから漏出せず、シール部4は優れた密着性を示した。
【0058】
一方、第2ゴム成分の含有量が3質量部である試験体1は、熱老化処理を行った後に、シール部4が漏出すると共に、リークテストにおいても圧縮空気が他方の開口端211bから漏出した。これは、第2ゴム成分の含有量が試験体2及び試験体3に比べて少ないことにより、シール部4の軟化が早く進行したためと考えられる。
【0059】
また、第2ゴム成分の含有量が25質量部である試験体4は、熱老化処理を行った後に、シール部4の漏出は起こらなかったが、リークテストにおいて、圧縮空気が他方の開口端211bから漏出した。接着剤Dは、表3に示すように、接着剤B及び接着剤Cに比べて、熱老化処理後の伸びが小さく、かつ、せん断接着強度が高くなっている。すなわち、接着剤Dは、熱老化処理によって接着剤Bや接着剤Cよりも硬くなっていると考えられる。その結果、接着剤Dを加熱してなるシール部4は、樹脂成形部21及びバスバー3から剥離し易くなっていると考えられる。
【0060】
実験例1及び実験例2から知られるように、100質量部の第1ゴム成分に対して3質量部以上の第2ゴム成分がシール部4に含まれることにより、熱老化処理による軟化が抑制され、シール部4の漏出を抑制することができる。また、第2ゴム成分の含有量を5〜20質量部の範囲内にすることにより、シール部4の漏出を抑制するとともに、シール部4と樹脂成形部21との密着性及びシール部4と埋設部32との密着性が高い状態を長期間に渡って維持することができる。その結果、樹脂成形部21と埋設部32との間をより長期間に渡って液密に封止することができる。