特開2015-138873(P2015-138873A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-138873(P2015-138873A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】ソーラーパネル清掃装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20150703BHJP
【FI】
   H01L31/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-9392(P2014-9392)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大西 工
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA11
5F151JA15
(57)【要約】
【課題】ソーラーパネルの受光面を自律走行する本体を同一直線上にない次の清掃ラインに移動させるときに、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることである。
【解決手段】本体1を次の清掃ラインに移動させるときに、本体1を受光面上で旋回させるクローラ2と、本体1の前方の受光面を撮影するカメラ8と、カメラ8で撮影された撮影画像から直線を抽出線として抽出する画像処理装置9とを設け、次の清掃ラインを受光面で観察される直線と直角方向または平行方向に設定し、本体1を次の清掃ラインに移動させたときに、画像処理装置9で抽出される抽出線の傾きに基づいて、クローラ2で旋回させる本体1の向きを、次の清掃ラインの方向へ向けるように補正するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に延びる直線が観察されるソーラーパネルの受光面に配置される本体と、
前記本体を前記受光面上で自律走行させる自走手段と、
前記本体に搭載され、前記受光面を清掃する清掃手段とを備え、
前記受光面に同一直線上にない複数の清掃ラインを設定し、前記本体を同一直線上にない次の清掃ラインに移動させて清掃するソーラーパネル清掃装置において、
前記本体を前記次の清掃ラインに移動させるときに、前記本体を前記受光面上で旋回させる旋回手段と、
前記本体の前方の前記受光面を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された撮影画像から前記直線を抽出線として抽出する画像処理手段とを設け、
前記次の清掃ラインを前記受光面で観察される前記直線と直角方向または平行方向に設定し、
前記本体を前記次の清掃ラインに移動させたときに、前記画像処理手段で抽出される前記抽出線の傾きに基づいて、前記旋回手段で旋回させる本体の向きを、前記次の清掃ラインの方向へ向けるように補正することを特徴とするソーラーパネル清掃装置。
【請求項2】
前記次の清掃ラインを前記受光面で観察される前記直線と直角方向に設定した請求項1に記載のソーラーパネル清掃装置。
【請求項3】
前記受光面で観察される直線が、前記ソーラーパネルのセルの境目、セルとセルを結合するリード線およびパネルユニットの外周のいずれかである請求項1または2に記載のソーラーパネル清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネルの受光面を清掃するソーラーパネル清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギを利用する発電システムの1つとして、太陽光エネルギを利用するソーラーシステムの普及が進んでいる。ソーラーシステムはソーラーパネルの受光面を太陽に向けて屋外に設置するものであり、工場、ビル、一般家屋等の屋根や屋上を有効活用して、ソーラーパネルを設置できる利点もある。ソーラーパネルは受光面を太陽の照る方向(日本では南方)へ傾斜させて設置されることが多い。
【0003】
ソーラーパネルは、光起電力効果によって太陽光を即時に電力に変換する太陽電池を組み込んだ複数のセルをパネル状に組み立てたものであり、一般的なソーラーシステムでは複数のパネルユニットを縦横に並べて接続したアレイとして用いられる。大規模なメガソーラーシステムでは、パネルユニットを接続したアレイの全長が数100mに達するものもある。通常、ソーラーパネルの受光面は青黒系の色とされ、セルの境目やセルとセルを結合するリード線が銀白色系の線で縦横の格子状に見えるようになっている。また、パネルユニットを配列したソーラーパネル全体の受光面には、各パネルユニット外周のフレームが銀白色系の線で縦横方向に見える。なお、一部のソーラーパネルには、セルの境目やリード線が見えないものものある。
【0004】
ソーラーパネルは屋外に設置されるので、大気や雨水に含まれる塵埃や、鳥の糞、枯葉等の異物が受光面に付着する。このため、これらの受光面に付着した塵埃や異物によって太陽光が遮断され、発電効率が低下することが、ソーラーシステムの大きな問題となっている。この発電効率の低下を防止するためには、ソーラーパネルの受光面を適宜清掃して、付着した塵埃や異物を除去すればよいが、ソーラーパネルは屋根や屋上等の高所に設置されることが多いので、安全性等の面から人手による清掃は困難である。また、広大な受光面を有するメガソーラーシステムでは、人手による清掃は多大な手間を必要とする。
【0005】
このようなソーラーパネルの清掃の問題に対して、ソーラーパネルの受光面上に、ブラシ等の清掃手段を搭載した本体を配置し、この本体を受光面上で所定の清掃ラインに沿って走行させながら清掃手段で受光面を清掃するソーラーパネル清掃装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1に記載されたソーラーパネル清掃装置では、受光面が傾斜するソーラーパネルの上端と下端で水平方向の長手方向に延びる載架レールと、受光面の傾斜方向の上下縦軸方向に延びる上下移動用レールとを設け、清掃手段を搭載した本体を上下移動用レールで傾斜方向の清掃ラインに沿って走行させながら清掃し、上下端の載架レールで傾斜方向と直交方向に次の清掃ラインの位置へ移動させて、ソーラーパネルの受光面全域を清掃するようにしている。
【0007】
特許文献1に記載されたソーラーパネル清掃装置は、本体を載架レールと上下移動用レールで案内するので、本体を複数の清掃ラインに沿って案内走行させ、受光面全域を残さず清掃することができるが、載架レールや上下移動用レールを敷設するために設置費用が高価になるとともに、屋根等に必要以上の重量が加わる難点がある。
【0008】
特許文献2に記載されたソーラーパネル清掃装置では、清掃手段を搭載した本体に、ソーラーパネルの受光面上で自律走行する自走手段と、ソーラーパネルの大きさや形状を認識する認識手段と、自走手段等を駆動する電源装置とを設け、認識手段の出力に基づいて本体が受光面を所定の清掃ラインに沿って走行するように制御している。自走手段としてはロボット歩行を採用し、認識手段としては超音波センサを用いている。また、清掃手段としては回転ブラシのみを設けている。
【0009】
特許文献1、2に記載されたものでは、いずれも本体が走行しながら清掃する複数の清掃ラインを受光面の傾斜方向に設定し、本体をそのままの姿勢で傾斜方向と直交方向に次の清掃ラインの位置へ横移動させて、次の清掃ラインでは走行方向を逆向きに設定している。すなわち、本体は前の清掃ラインで前進走行すると、次の清掃ラインでは逆方向に後退走行しながら清掃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−273351号公報
【特許文献2】特開2010−186819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載されたソーラーパネル清掃装置は、本体を自律走行させるので案内用のレール等を設置する必要はないが、本体の自走方向が所定の清掃ラインからずれることがあり、未清掃の領域が残りやすい問題がある。特に、清掃ラインを受光面の傾斜方向と直角方向に設定した場合は、重力加速度によって本体の走行方向が清掃ラインから傾斜方向の下方側へずれやすくなる。
【0012】
このような問題に対して、本発明者らは、ソーラーパネルの受光面に配置される本体と、本体を受光面上で自律走行させる自走手段と、本体に搭載され、受光面を清掃する清掃手段とを備え、本体を所定の清掃ラインに沿って走行させるソーラーパネル清掃装置において、本体の走行方向の清掃ラインからのずれを検出する方向ずれ検出手段と、本体の走行方向を操舵する操舵手段とを設け、本体を清掃ラインに戻すように操舵手段を制御する先願1(特願2013−123628)、先願2(特願2013−117207)を提案している。
【0013】
上述した先願1、2は、本体を同一直線上にない次の清掃ラインに移動させる際に、操舵手段を旋回手段として利用し、本体が90°または180°方向転換するように旋回させ、次の清掃ラインでも前進走行させながら清掃できるようにしている。このように前進走行のみで清掃する場合は、自走手段の駆動機構を簡素化できるのみでなく、例えば、清掃手段として、洗浄液ノズル、回転ブラシおよびワイパを前後方向で一方向のみに順に配置することにより、ソーラーパネルの受光面を効率よく良好に清掃することができ、本体をシンプルな構成で清掃能力の高いものとすることができる。
【0014】
上述した先願1、2では、次の清掃ラインの方向へ本体を旋回させる際に、デジタルコンパスやジャイロセンサ、3Gセンサ等の傾斜センサを用いて本体の向きを検出しているが、これらのセンサは、ソーラーパネルの設置条件や受光面の勾配等の影響を受けやすく、十分な旋回精度が得られない問題がある。特に、傾斜センサを用いた場合に、受光面の勾配がないか小さいときは旋回精度が低下する。このように旋回精度が低下すると、本体は次の清掃ラインで所定の方向からずれた方向に走行することになり、清掃領域が重複したり、未清掃の領域が生じる等の不具合が生じる。
【0015】
そこで、本発明の課題は、ソーラーパネルの受光面を自律走行する本体を同一直線上にない次の清掃ラインに移動させるときに、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも一方向に延びる直線が観察されるソーラーパネルの受光面に配置される本体と、前記本体を前記受光面上で自律走行させる自走手段と、前記本体に搭載され、前記受光面を清掃する清掃手段とを備え、前記受光面に同一直線上にない複数の清掃ラインを設定し、前記本体を同一直線上にない次の清掃ラインに移動させて清掃するソーラーパネル清掃装置において、前記本体を前記次の清掃ラインに移動させるときに、前記本体を前記受光面上で旋回させる旋回手段と、前記本体の前方の前記受光面を撮影する撮影手段と、前記撮影手段で撮影された撮影画像から前記直線を抽出線として抽出する画像処理手段とを設け、前記次の清掃ラインを前記受光面で観察される前記直線と直角方向または平行方向に設定し、前記本体を前記次の清掃ラインに移動させたときに、前記画像処理手段で抽出される前記抽出線の傾きに基づいて、前記旋回手段で旋回させる本体の向きを、前記次の清掃ラインの方向へ向けるように補正する構成を採用した。
【0017】
すなわち、本体を次の清掃ラインに移動させるときに、本体を受光面上で旋回させる旋回手段と、本体の前方の受光面を撮影する撮影手段と、撮影手段で撮影された撮影画像から直線を抽出線として抽出する画像処理手段とを設け、次の清掃ラインを受光面で観察される直線と直角方向または平行方向に設定し、本体を次の清掃ラインに移動させたときに、画像処理手段で抽出される抽出線の傾きに基づいて、旋回手段で旋回させる本体の向きを、次の清掃ラインの方向へ向けるように補正することにより、受光面で観察される直線を旋回角度の目安とする抽出線として活用し、自律走行する本体を次の清掃ラインに移動させるときに、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることができるようにした。
【0018】
前記次の清掃ラインを受光面で観察される直線と直角方向に設定する場合は、後述するように、旋回後の本体の幅方向位置に関わらず、抽出線は撮影画像の左右方向に湾曲して延びるように抽出される。この左右方向に湾曲して延びる抽出線は、本体が次の清掃ラインの方向へ正確に向けられたときは、撮影画像の左右端で同じ高さ位置となる左右の傾きがないものとなり、本体の向きが次の清掃ラインの方向からずれているときは、撮影画像の左右端で高さ位置が異なる左右で傾きのあるものとなる。したがって、抽出線の左右の傾きをなくすように、旋回手段による旋回角度を補正することにより、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることができる。
【0019】
前記次の清掃ラインを受光面で観察される直線と平行方向に設定する場合は、抽出線は撮影画像の上下方向に直線状に延びるように抽出される。このとき、上下方向に延びる抽出線の傾きは、受光面で観察される直線に対する本体の撮影手段の幅方向位置によっても異なる。すなわち、本体が次の清掃ラインの方向へ正確に向けられた場合に、撮影手段が直線上に位置するときは、抽出線は撮影画像の左右中央で垂直に延びる。また、撮影手段が直線の右側に位置するときは、抽出線は撮影画像の左側で中央側へ右向きに傾くように延び、直線の左側に位置するときは、抽出線は撮影画像の右側で中央側へ左向きに傾くように延びる。この本体の撮影手段が直線の左右にずれたときの撮影画像における抽出線の下端位置と傾きは、撮影手段の左右へのずれ量やカメラレンズの種類によって決まる。したがって、使用するカメラレンズの種類に応じて、本体が次の清掃ラインの方向へ正確に向けられた場合の抽出線の下端位置と傾きを予めデータベースとして記憶しておき、実際に抽出された抽出線の下端位置に応じて、この下端位置に対応するデータベースに記憶された傾きを目標値として、抽出線の傾きを目標値とするように旋回手段による旋回角度を補正することにより、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることができる。
【0020】
なお、前記旋回手段としては、例えば、自走手段をクローラ走行のものとする場合は、左右のクローラに速度差を付与する方法を採用することができる。また、自走手段をタイヤ走行やロボット歩行等のものとする場合も、適宜の旋回機構を設ければよい。
【0021】
前記次の清掃ラインを前記受光面で観察される前記直線と直角方向に設定することにより、撮影画像で左右方向に延びる抽出線の傾きに基づいて、旋回手段による旋回角度を容易に補正することができる。すなわち、左右方向に延びる抽出線の傾きは、旋回後の本体の幅方向位置と無関係に、本体の向きの違いのみによって変化するので、本体の幅方向位置を考慮する必要がなく、単に抽出線の傾きを零に近づけるように旋回角度を補正すればよい。
【0022】
前記受光面で観察される直線は、前記ソーラーパネルのセルの境目、セルとセルを結合するリード線およびパネルユニットの外周のいずれかとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るソーラーパネル清掃装置は、少なくとも一方向に延びる直線が観察されるソーラーパネルの受光面に配置される本体を、同一直線上にない次の清掃ラインに移動させるときに受光面上で旋回させる旋回手段と、本体の前方の受光面を撮影する撮影手段と、撮影手段で撮影された撮影画像から直線を抽出線として抽出する画像処理手段とを設け、次の清掃ラインを受光面で観察される直線と直角方向または平行方向に設定し、本体を次の清掃ラインに移動させたときに、画像処理手段で抽出される抽出線の傾きに基づいて、旋回手段で旋回させる本体の向きを、次の清掃ラインの方向へ向けるように補正するようにしたので、自律走行する本体を次の清掃ラインに移動させるときに、本体を次の清掃ラインの方向へ精度よく向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は本発明に係るソーラーパネル清掃装置の本体を示す外観斜視図、(b)は(a)の側面図
図2】ソーラーパネルの受光面と清掃ラインの例を示す平面図
図3図2の受光面で本体を次の清掃ラインに移動させるときの制御手順を示すフローチャート
図4図3の制御手順で受光面の境界が検出されたとき撮影画像の例
図5】(a)、(b)は、それぞれ本体を次の清掃ラインに移動させたときに撮影される撮影画像の例、(c)、(d)は、それぞれ本体を正確に次の清掃ラインの方向へ向けたときに撮影される撮影画像の例
図6図5(a)、(b)の撮影画像から抽出線の傾きを検出する方法を説明する説明図
図7】(a)、(b)は、それぞれ図2の清掃ラインの変形例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1(a)、(b)は、本発明に係るソーラーパネル清掃装置の本体1を示す。この本体1は、後述するソーラーパネルの受光面21を自律走行する自走手段として左右一対のクローラ2を備え、清掃手段として、洗浄液タンク3aの洗浄液を受光面21に噴射する洗浄液ノズル3b、洗浄液が噴射された受光面21をブラッシングする回転ブラシ4、およびブラッシングされた受光面21をワイピングするワイパ5を前後方向に順に備えている。また、これらの自走手段と清掃手段を駆動するバッテリ6も搭載している。クローラ2は、後述するように、本体1を受光面21上で旋回させる旋回手段ともなる。
【0026】
前記本体1には、本体1の姿勢の傾きからその向きを検出し、旋回手段の制御出力となるジャイロセンサ7も搭載されている。ジャイロセンサ7の替りに、デジタルコンパスや3Gセンサ等の傾斜センサを搭載してもよい。また、本体1の前面側中央には、前方の受光面21を撮影する撮影手段としてのカメラ8が斜め下向きに取り付けられ、このカメラ8の撮影画像31を画像処理する画像処理装置9と、画像処理装置9の検出結果に基づいて、後述するように旋回手段の旋回角度を補正するコントローラ10が組み込まれている。コントローラ10は自走手段や清掃手段の作動も制御する。
【0027】
図2は、ソーラーパネルの受光面21と清掃ライン25の例を示す。この受光面21は、多数のパネルユニット22を縦横に並べて配列したメガソーラシステムのもので一方向に傾斜しており、この受光面21の傾斜方向と直交方向でのパネル全長は数100mに達する。青黒系の色とされた受光面21には、パネルユニット22の外周22aと、各パネルユニット22のセルの境目22bが銀白色系の直線として、縦横方向に延びるように観察される。図示は省略するが、セルとセルを結合するリード線も直線として観察される。
【0028】
前記受光面21での本体1のスタート地点は傾斜上端側の左端とされ、本体1が走行しながら清掃する複数の清掃ライン25が受光面21の傾斜方向と直角方向に設定されている。本体1はスタート地点から右方へ最初の清掃ライン25を走行した後、受光面21の右側の境界21aの直前で旋回しながら下側の次の清掃ライン25へ移動し、次の清掃ライン25を左方へ走行する。本体1を旋回させる際には、旋回手段としての左右のクローラ2を逆駆動または片側駆動させて本体1の向きを転換する。このような旋回による方向転換を受光面21の左右両側の境界21aで行い、順次下側の清掃ライン25を走行して、受光面21の全域を清掃する。
【0029】
図3は、前記受光面21の右側の境界21aで本体1を前の清掃ライン25から次の清掃ライン25に移動させるときの制御手順を示す。前の清掃ライン25を走行中に、カメラ8の撮影画像31に受光面21の境界21aが検出されると、コントローラ10は本体1を境界21aの直前で停止させる。図4は、このときの撮影画像31であり、境界21aは上方へ凹に湾曲するように左右方向へ延びている。
【0030】
こののち、コントローラ10は、本体1を旋回手段で傾斜方向を下る方向へ90°旋回させたのち、下側の次の清掃ライン25の位置まで少し走行させ、さらに旋回手段で左方向へ90°旋回させて、左方の次の清掃ライン25の方向へ向けるように移動させる。
【0031】
最後に、以下に述べるように、本体1を次の清掃ライン25の方向へ向けたときにカメラ8で撮影される撮影画像31から、次の清掃ライン25と直角方向に延びるパネルユニット22の外周22aやセルの境目22b等の直線を抽出線Lとして抽出し、この抽出線Lの傾きに基づいて、旋回手段による旋回角度を次の清掃ラインの方向へ向けるように補正する。この補正を行った後、本体1を次の清掃ライン25へ走行させる。なお、説明は省略するが、本体1を受光面21の左側の境界21aで次の清掃ライン25に移動させるときの制御手順も、旋回方向が左右逆になるのみで、基本的に同じである。
【0032】
以下に、前記本体1を次の清掃ライン25の方向へ向けたときに旋回角度を補正する方法を説明する。図5(a)、(b)は、本体1を次の清掃ライン25の方向へ向けたときに撮影される撮影画像31の例を示す。また、図5(c)、(d)は、旋回後の本体1が正確に次の清掃ライン25の方向へ向けられたときの撮影画像31の例である。これらの撮影画像31には、受光面21の傾斜方向に延びるパネルユニット22の外周22aやセルの境目22b等の次の清掃ライン25と直角方向に延びる直線が、上方へ凹に湾曲して左右方向へ延びる曲線33として表れ、次の清掃ライン25と平行方向に延びる外周22aや境目22b等の直線が、上下方向に傾斜して延びる直線34として表れる。
【0033】
なお、図4および図5(a)〜(d)の各撮影画像31は、境界32、曲線33および直線34を分かりやすくするために、画像処理装置9によって2値化処理するとともに、太陽光の反射等によるノイズを除去した後のものであり、黒色の撮影画像31中に、境界32は白く表れ、曲線33と直線34は白色の線として表れている。
【0034】
図5(a)、(b)は、いずれも旋回後の本体1の向きが次の清掃ライン25の方向から右方へずれているときの撮影画像31であり、図5(a)は、カメラ8の幅方向位置、すなわち本体1の幅方向中心位置が、次の清掃ライン25と平行方向に延びる直線上にある場合、図5(b)は、カメラ8の幅方向位置がこの直線からずれている場合である。また、図5(c)、(d)の撮影画像31についても、図5(c)は、カメラ8の幅方向位置が、次の清掃ライン25と平行方向に延びる直線上にある場合、図5(d)は、カメラ8の幅方向位置がこの直線からずれている場合である。
【0035】
図6は、図5(a)、(b)に示した、本体1の向きが次の清掃ライン25の方向から右方へずれたときの撮影画像31から、左右方向へ延びる曲線33、すなわち次の清掃ライン25と直角方向に延びる直線を抽出線Lとして抽出したものである。この抽出線Lは、カメラ8の幅方向位置に関わらず同様に抽出される。図中には、図5(c)、(d)に示したように、本体1が次の清掃ライン25の方向へ正確に向けられたときの撮影画像31から同様に抽出される基準抽出線Lも示す。この本体1の向きが右方へずれたときの抽出線Lは、左端が右端よりもΔhだけ高くなるように傾斜する。向きがずれていないときの基準抽出線Lは左右端の高さ位置が同じとなり、Δhが零となる。したがって、抽出線Lの傾きをなくして左右端の高さ位置の差Δhを零に近づけるように旋回角度を補正することにより、本体1を正確に次の清掃ライン25の方向へ向けることができる。図示は省略するが、本体1の向きが次の清掃ライン25の方向から左方へずれたときは、抽出線Lは右端が左端よりも高くなるように傾斜し、同様に、左右端の高さ位置の差Δhを零に近づけるように旋回角度を補正すればよい。
【0036】
図7(a)、(b)は、それぞれ図2の清掃ライン25の変形例を示す。なお、これらの図ではセルの境目22bの表示を省略している。図7(a)は、複数の清掃ライン25を受光面21の傾斜方向に設定したものであり、受光面21の上下の境界21aで、図2に示したものと同様に、本体1を90°ずつ2回旋回させて、次の清掃ライン25へ移動させる。この変形例では、旋回後に抽出線Lとして抽出される直線を、清掃ライン25と直角方向に水平方向へ延びるパネルユニット22の外周22aやセルの境目22b等とする。
【0037】
図7(b)は、複数の清掃ライン25を角形の渦巻き状に設定したものであり、受光面21の各コーナ部で本体1を90°旋回させて、外周側から内周側の清掃ライン25へ移動させる。この変形例では、旋回後に抽出線Lとして抽出される直線を、次の清掃ライン25が傾斜方向のときは、水平方向へ延びるものとし、次の清掃ライン25が水平方向のときは、傾斜方向へ延びるものとする。図7(a)、(b)のいずれの清掃ライン25においても、旋回後の本体1の向きの補正方法は、上述した図2の清掃ライン25における補正方法と同じである。
【0038】
上述した実施形態では、複数の清掃ラインを受光面で観察され、抽出線として抽出される直線と直角方向に設定したが、清掃ラインは抽出線として抽出される直線と平行方向に設定することもできる。
【0039】
上述した実施形態では、ソーラーパネルの受光面が一方向に傾斜したものとしたが、受光面は傾斜のないものであってもよい。
【0040】
上述した実施形態では、セルの境目またはパネルユニットの外周を抽出線として抽出したが、セルとセルを結合するリード線を抽出線とすることもできる。また、ソーラーパネルはセルの境目やセルとセルを結合するリード線が見えないものであってもよく、この場合は、パネルユニットの外周のみを抽出線として利用するとよい。
【0041】
上述した実施形態では、本体の自走手段をクローラ走行のものとし、左右のクローラを逆駆動または片側駆動して本体を旋回させるようにしたが、自走手段はタイヤ走行やロボット歩行等のものとして、適宜の旋回手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 本体
2 クローラ
3a 洗浄液タンク
3b 洗浄液ノズル
4 回転ブラシ
5 ワイパ
6 バッテリ
7 ジャイロセンサ
8 カメラ
9 画像処理装置
10 コントローラ
21 受光面
21a 境界
22 パネルユニット
22a 外周
22b セルの境目
25 清掃ライン
31 撮影画像
32 境界
33 曲線
34 直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7