特開2015-138878(P2015-138878A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アツミテックの特許一覧

<>
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000003
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000004
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000005
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000006
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000007
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000008
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000009
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000010
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000011
  • 特開2015138878-熱電変換モジュール 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-138878(P2015-138878A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20150703BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20150703BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   H01L35/30
   H01L35/32 Z
   H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-9464(P2014-9464)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】内山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】久保 和哉
(57)【要約】
【課題】高性能化を図りつつ、小型化及び設置場所の自由度の向上を図ることができる熱電変換モジュールを提供すること。
【解決手段】絶縁性を備える多孔質の絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1表面に形成された薄膜状の熱電変換素子と、を有し、前記第1表面は、前記第1表面とは反対側に位置する第2表面に対して傾斜した面を含み、前記絶縁フィルムは、前記第1表面と前記第2表面との距離が短い部分ほど密度が大きいこと。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を備える多孔質の絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルムの第1表面に形成された薄膜状の熱電変換素子と、を有し、
前記第1表面は、前記第1表面とは反対側に位置する第2表面に対して傾斜した面を含み、
前記絶縁フィルムは、前記第1表面と前記第2表面との距離が短い部分ほど密度が大きいことを特徴とする熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記絶縁フィルムは、平坦なフィルム部材を圧縮することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記第1表面は、前記第2表面に対して一定の角度にて傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記第1表面は、湾曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記絶縁フィルムは、前記第1表面側に樋状の凹部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記熱電変換素子は、形状が同一である2つの前記絶縁フィルムによって挟持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼーベック効果による熱電発電を行う熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールは、ゼーベック効果によって熱エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能である熱電変換素子から構成されるモジュールである。このようなエネルギーの変換性質を利用することで、産業・民生用プロセスや移動体から排出される排熱を有効な電力に変換することができるため、環境問題に配慮した省エネルギー技術として当該熱電変換モジュール及びこれを構成する熱電変換素子が注目されている。
【0003】
このような熱電変換モジュールは、一般的に、複数個の熱電変換素子(p型半導体及びn型半導体)を電極で接合して構成される。このような熱電変換モジュールは、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている熱電変換モジュールは、一対の基板と、一方の端部が当該基板の一方に配置される第1電極と電気的に接続され、他方の端部が当該基板の他方に配置される第2電極と電気的に接続される複数の熱電変換素子と、当該熱電変換素子に電気的に接続される第1電極を、隣接する熱電変換素子に電気的に接続される第2電極に、電気的に接続する接続部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−115359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の熱電変換モジュールの使用用途の拡大、及び使用される各種機器の小型化に応じて、熱電変換モジュールの一層の高性能化、小型化、設置場所の自由度の向上が要求されているが、従来の構造の熱電変換モジュールでは、これらの要求を十分に対応することが困難であった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高性能化を図りつつ、小型化及び設置場所の自由度の向上を図ることができる熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明の熱電変換モジュールは、絶縁性を備える多孔質の絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの第1表面に形成された薄膜状の熱電変換素子と、を有し、前記第1表面は、前記第1表面とは反対側に位置する第2表面に対して傾斜した面を含み、前記絶縁フィルムは、前記第1表面と前記第2表面との距離が短い部分ほど密度が大きいことを特徴とする。
【0008】
上述した熱電変換モジュールにおいて、前記絶縁フィルムは、平坦なフィルム部材を圧縮することにより形成されていてもよい。
【0009】
上述したいずれかの熱電変換モジュールにおいて、前記第1表面が前記第2表面に対して一定の角度にて傾斜していてもよく、前記第1表面が湾曲していてもよく、又は、前記絶縁フィルムが前記第1表面側に樋状の凹部を備えていてもよい。また、これらに代えて、前記熱電変換素子が、形状が同一である2つの前記絶縁フィルムによって挟持されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱電変換モジュールによれば、高性能化を図りつつ、小型化及び設置場所の自由度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る熱電変換モジュールの製造工程における断面図である。
図2】実施例に係る熱電変換モジュールの製造工程における断面図である。
図3】実施例に係る熱電変換モジュールの製造工程における断面図である。
図4】実施例に係る熱電変換モジュールの製造工程における断面図である。
図5】実施例に係る熱電変換モジュールの使用状態を示す断面図である。
図6】変形例に係る熱電変換モジュールの断面図である。
図7】変形例に係る熱電変換モジュールの断面図である。
図8】変形例に係る熱電変換モジュールの断面図である。
図9】変形例に係る熱電変換モジュールの断面図である。
図10】変形例に係る熱電変換モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明による熱電変換モジュールの実施の形態について、実施例及び変形例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例及び変形例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による熱電変換モジュール又はその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略等を行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例及び変形例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0013】
<実施例>
(熱電変換モジュールの製造方法)
以下において、図1及び図4を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュールの製造方法について説明する。ここで、図1乃至4は本実施例に係る熱電変換モジュールの製造工程における断面図である。
【0014】
先ず、図1に示すように、絶縁性及び多孔質性を備える平坦なフィルム部材(発泡体)である絶縁フィルム1を準備する。絶縁フィルム1には、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アラミド、ポリイミド、若しくはポリウレタン等の高分子系のフィルム、又はセラミックからなるフィルムを用いることができる。絶縁フィルム1の膜厚は、例えば、約20μm、約50μm、約180μm、又はそれ以上から適宜選択可能である。
【0015】
次に、図2に示すように、絶縁フィルム1に対して、円柱状のローラ2を押し当てつつ回転移動させ、絶縁フィルム1の全体を圧縮する。より具体的には、ローラ2を絶縁フィルム1の表面に対して傾斜させて押し当て、絶縁フィルム1の第1端部1aから第2端部2bに向かって圧縮量を徐々に減少させるようにする。
【0016】
このような圧縮行程を経ると、図3に示すように、絶縁フィルム1の断面が三角形状となる。すなわち、絶縁フィルム1の第1表面1cは、第1表面1cとは反対側に位置する第2表面1dに対して一定の角度にて傾斜することになる。換言すれば、圧縮後の絶縁フィルム1においては、第1端部1aから第2端部1bに向かうにつれ、第1表面1cと第2表面1dとの距離が徐々に長くなっている。ここで、圧縮量が多いほど密度が大きくなるため、第1表面1cと第2表面1dとの距離が短い部分ほど密度が大きくなる。すなわち、第2端部1bから第1端部1aに向かうにつれ、密度が大きくなる。
【0017】
次に、図4に示すように、一般的なメッキ技術又は真空蒸着技術を用いて、絶縁フィルム1の第1表面に薄膜状の熱電変換素子3を形成する。図4には示していないものの、熱電変換素子3は、複数のP型半導体(熱電変換材料)、及び複数のN型半導体(熱電変換材料)が交互に並設されている。また、P型半導体、及びN型半導体の一端は絶縁フィルム1の第1端部1a側に位置し、他端は絶縁フィルム1の第2端部1b側に位置している。更に、P型半導体、及びN型半導体の端部は、P型半導体とN型半導体とが直列又は並列に接続されるように、電極(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0018】
以上の工程を経て、熱電変換モジュール10の形成が完了する。
【0019】
(熱電変換モジュールの使用態様及び効果)
次に、図5を参照しつつ、本実施例に係る熱電変換モジュール10の使用態様について説明する。ここで、図5は、本実施例に係る熱電変換モジュール10の使用状態を示す断面図である。
【0020】
図5に示すように、熱電変換モジュール10は、熱源11に対して第2表面1dが近接するように配置される。すなわち、熱電変換モジュール10は、第2表面1d側から熱が供給されることになる。ここで、熱電変換モジュール10の絶縁フィルム1は、厚みに応じて密度が異なり、密度が大きい部分ほど、熱伝導率が高くなっている。すなわち、絶縁フィルム1においては、第1端部1aから第2端部1bに向かって徐々に熱伝導率が低くなっている。従って、第1端部1a側においては、熱源11の熱が熱電変換素子3に到達しやすく、第2端部1b側においては、熱源11の熱が熱電変換素子3に到達しにくくなっている。これにより、熱電変換素子3においては、絶縁フィルム1の第1端部1a側に位置する一端部が高温となり、絶縁フィルム1の第2端部1b側に位置する他端部が低温となり、かかる温度差による起電力が生じることになる。
【0021】
上述したように、本実施例に係る熱電変換モジュール10の熱電変換素子3における温度差は、絶縁フィルム1の構造に起因して生じるため、熱電変換素子3における温度差のバラツキが生じにくく、安定した熱電発電を行うことができる。すなわち、熱電変換モジュール10の性能を向上させ、高い信頼性を実現することができる。
【0022】
また、熱電変換素子3が絶縁体である絶縁フィルム1上に形成されているため、熱電変換モジュール10の絶縁すべき部分において、良好な絶縁特性を確保することができる。更に、熱電変換素子3の端部ではなく、主表面が絶縁フィルム1の第1表面1cに接触しているため、熱電変換素子3と絶縁フィルム1との接合面積が大きくなり、熱電変換素子3と絶縁フィルム1との優れた接合特性を確保することができ、熱電変換モジュール10自体の接合強度を向上することができる。換言すれば、熱電変換モジュール10においては、熱電変換素子3を構成するN型半導体及びP型半導体の寸法バラツキが生じたとしても、熱電変換素子3と絶縁フィルム1と接合不良が生じることがなく、熱電変換モジュール10の信頼性を向上することができる。
【0023】
そして、本実施例に係る熱電変換モジュール10は、絶縁フィルム1上に熱電変換素子3が形成されているという比較的に簡易な構造を備えているため、製造コスト及び製造時間の低減を容易に図ることができる。特に、本実施例に係る熱電変換モジュール10は、フィルム状に形成されているため、フレキシブルであり且つ小型化されているため、様々な場所に容易に設置することができる。
【0024】
以上のように、本実施例に係る熱電変換モジュール10は、高性能化を図りつつ、小型化及び設置場所の自由度の向上を図ることができる。
【0025】
<変形例>
上述した実施例においては、熱電変換素子3の形成面とは反対側に位置する第2表面1d側に熱源11を設置する構成を想定したが、熱源11を第1表面1c側に設置してもよい。このような場合には、第2表面1d側に冷却装置を配置し、第1表面1cと第2表面1dとの距離が長い部分に比して短い部分を効率よく冷却し、第1端部1aから第2端部1bに向かうにつれて温度が上昇するようにしてもよい。
【0026】
また、上述した実施例においては、絶縁フィルム1の断面が三角形となるように、平坦なフィルム部材を圧縮していたが、圧縮後の形状は三角形に限定されることはない。例えば、図6及び図7に示すように、絶縁フィルム1の第1表面を湾曲させてもよい。より具体的には、図6に示すように、第1表面1cが外側に向けて突出するように湾曲してもよく、図7に示すように、第1表面1cが内側に向けて突出するように湾曲してもよい。いずれの場合であっても、熱電変換素子3は薄膜状に形成されているため、第1表面1cの形状に沿って形成される。
【0027】
また、図8に示すように、絶縁フィルム1が第1表面1c側に樋状の凹部15を備えるように平坦なフィルム部材を圧縮してもよく、図9に示すように絶縁フィルム1が第1表面1c側に凸部16を備えるように平坦なフィルム部材を圧縮してもよい。図8又は図9に示すような熱電変換モジュール10においては、第1表面1cと第2表面1dとの距離の最短部分が高温側となるようにしつつ、当該距離の最長部分が低温側となるように、N型半導体及びP型半導体を並置しつつ直列に接続する必要がある。なお、第1表面1cと第2表面1dとの距離の最長部分が高温側となるようにしつつ、当該距離の最短部分が低温側となるようにしてもよい。
【0028】
図6乃至図9に示した変形例のいずれの場合においても、上述した実施例に係る熱電変換モジュール10と同様の効果を奏することができる。また、熱電変換モジュール10の設置場所の状態に応じて、絶縁フィルム1の形状を変更し、当該設置場所に最適な形状の熱電変換モジュール10を提供することができる。
【0029】
更に、上述した実施例1においては、熱電変換素子3の片側のみに絶縁フィルム1を配設したが、図10に示すように、2つの絶縁フィルム1、21によって熱電変換素子3を挟持してもよい。具体的には、図10に示すように、2つの絶縁フィルム1、21の第1表面1c、21c同士の間に熱電変換素子3が位置するようにする。ここで、絶縁フィルム21は、絶縁フィルム1と同一の構造及び特性を備えている。
【0030】
このような構造を備える熱電変換モジュール10’においては、上述した実施例1に係る熱電変換モジュール10と比較して、より一層の良好な絶縁特性を確保することができる。また、熱電変換モジュール10’の絶縁フィルム1の第2表面1d側に熱源11が近接されると、上述した実施例と同様に、第1端部1aが高温側となり、第2端部1bが低温側となる。ここで、第1端部1aに対向するように、絶縁フィルム21の第2端部21b(第1表面21cと第2表面21dとの距離が長い端部)が配置されていることから、熱電変換素子3に伝達された熱が、第2表面21dに伝わりにくくなる。このため、第1端部1a及び第2端部21bの間に位置する熱電変換素子3の一端は、高温状態を良好に維持することができる。一方、第2端部1bに対向するように、絶縁フィルム21の第1端部21a(第1表面21cと第2表面21dとの距離が短い端部)が配置されていることから、熱電変換素子3に伝達された熱が、第2表面21dに伝わりやすくなる。このため、第2端部1b及び第1端部21aの間に位置する熱電変換素子3の他端は、低温状態を良好に維持することができる。すなわち、本変形例に係る熱電変換モジュール10’においては、熱電変換素子3の両端の温度差を容易に大きくし、且つその温度差を良好に保つことができることから、より優れた熱電変換効率を備えることができる。
【0031】
なお、第2表面21dにヒートシンク等の冷却装置を配置してもよく、これによって熱電変換素子3の両端の温度差をより大きくし、且つその温度差を良好に保つことができることとなり、熱電変換モジュール10’の熱電変換効率をより一層向上することができる。
【符号の説明】
【0032】
1、21 絶縁フィルム
1a、21a 第1端部
1b、21b 第2端部
1c、21c 第1表面
1d、21d 第2表面
2 ローラ
3 熱電変換素子
10、10’ 熱電変換モジュール
11 熱源
15 凹部
16 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10