(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-138880(P2015-138880A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】コンデンサ及びコンデンサの設置方法
(51)【国際特許分類】
H01G 2/08 20060101AFI20150703BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20150703BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20150703BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20150703BHJP
H01G 2/04 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
H01G1/08 A
H05K7/20 E
H01G1/02 H
H01G1/02 Z
H01G1/03 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-9582(P2014-9582)
(22)【出願日】2014年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(72)【発明者】
【氏名】塩見 裕二
(72)【発明者】
【氏名】石田 真教
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322AB06
(57)【要約】
【課題】コンデンサからの放熱を促進し、熱による悪影響を小さくすることのできるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2に接続される電極板3と、コンデンサ素子2及び電極板3とは電気的に絶縁状態とされた伝熱体4とをケース5に収納し樹脂10を充填したコンデンサ1であって、上記伝熱体4は、一方が樹脂10に埋設され、他方が露出しケース5外方へと突出しており、上記ケース5には、上記伝熱体4の突出する側が被取付体11への設置面となるよう、取付手段54が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子(2)と、このコンデンサ素子(2)に接続される電極板(3)と、コンデンサ素子(2)及び電極板(3)とは電気的に絶縁状態とされた伝熱体(4)とをケース(5)に収納し樹脂(10)を充填したコンデンサであって、上記伝熱体(4)は、一方が樹脂(10)に埋設され、他方が露出しケース(5)外方へと突出しており、上記ケース(5)には、上記伝熱体(4)の突出する側が被取付体(11)への設置側となるよう、取付手段(54)が設けられていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
伝熱体(4)は、電極板(3)に絶縁体を介して取り付けられた金属製の伝熱ブロック(4A)である請求項1記載のコンデンサ。
【請求項3】
伝熱体(4)は、コンデンサ素子(2)の側面に近接且つ対向配置された金属製の伝熱板(4B)である請求項1記載のコンデンサ。
【請求項4】
伝熱体(4)は、コンデンサ素子(2)の側面に近接且つ対向配置された金属製の伝熱板(4B)と、この伝熱板(4B)に取り付けられた金属製の伝熱ブロック(4A)とからなる請求項1記載のコンデンサ。
【請求項5】
コンデンサ素子(2)と、このコンデンサ素子(2)に接続される電極板(3)と、コンデンサ素子(2)及び電極板(3)とは電気的に絶縁状態とされた伝熱体(4)とをケース(5)に収納し樹脂(10)を充填したコンデンサの設置方法であって、上記伝熱体(4)は、一方が樹脂(10)に埋設され、他方が露出しケース(5)外方へと突出しており、上記伝熱体(4)の突出部が、被取付体(11)に当接するようにしてコンデンサを設置することを特徴とするコンデンサの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサ素子をケースに収納したコンデンサ及びコンデンサの設置方法に関し、特にコンデンサの放熱に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサの誘電体フィルムには、主にPP(ポリプロピレン)が用いられる(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−190969号公報
【特許文献2】特開2013−4652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、コンデンサの小型化や低コスト化が推し進められており、ESR(等価直列抵抗)の上昇が避けられない状態にある。ESRが上昇すると、一般にコンデンサの自己発熱量が増大し、コンデンサ自体の温度上昇を招くことになるが、PPの耐熱温度が105度と比較的低温であることから、温度上昇に伴って動作が不安定となったり、熱劣化によって寿命短縮が生じていた。また、装置全体の小型化を図る目的で、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等に近接してコンデンサを配置する場合には、IGBTからの発熱も加わることとなり、上記悪影響がより顕著なものとなっていた。
【0005】
そこで、この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、コンデンサからの放熱を促進し、熱による悪影響を小さくすることのできるコンデンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のコンデンサは、コンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2に接続される電極板3と、コンデンサ素子2及び電極板3とは電気的に絶縁状態とされた伝熱体4とをケース5に収納し樹脂10を充填したコンデンサ1であって、上記伝熱体4は、一方が樹脂10に埋設され、他方が露出しケース5外方へと突出しており、上記ケース5には、上記伝熱体4の突出する側が被取付体11への設置側となるよう、取付手段54が設けられていることを特徴としている。
【0007】
伝熱体4は、電極板3に絶縁体を介して取り付けられた金属製の伝熱ブロック4Aであるのが好ましい。または、コンデンサ素子2の側面に近接且つ対向配置された金属製の伝熱板4Bであるのが好ましい。または、コンデンサ素子2の側面に近接且つ対向配置された金属製の伝熱板4Bと、この伝熱板4Bに取り付けられた金属製の伝熱ブロック4Aとからなるのが好ましい。
【0008】
本発明のコンデンサの設置方法は、コンデンサ素子2と、このコンデンサ素子2に接続される電極板3と、コンデンサ素子2及び電極板3とは電気的に絶縁状態とされた伝熱体4とをケース5に収納し樹脂10を充填したコンデンサの設置方法であって、上記伝熱体4は、一方が樹脂10に埋設され、他方が露出しケース5外方へと突出しており、上記伝熱体4の突出部が、被取付体11に当接するようにしてコンデンサ1を設置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明のコンデンサでは、コンデンサ素子と電気的に絶縁状態であって、一方が樹脂に埋設され、他方が露出しケース外方へと突出した伝熱体を有し、また、伝熱体の突出する側が被取付体への設置側(設置面、当接面)となるよう、取付手段を設けていることから、コンデンサを被取付体に取り付けると同時に、伝熱体を被取付体に当接させることができる。すると、コンデンサの熱は伝熱体を介して被取付体に伝達されることとなり、結果、コンデンサからの放熱が促進されることとなる。
【0010】
また、伝熱体として、電極板に絶縁体を介して金属製の伝熱ブロックを取り付けた場合には、電極板の熱を効率良く放熱させることができる。さらに、コンデンサ素子の側面に近接且つ対向配置させた金属製の伝熱板を伝熱体として用いた場合や、このように配置した伝熱板に金属製の伝熱ブロックを取り付けた場合には、コンデンサ素子の熱を効率良く放熱させることができる。
【0011】
また、この発明のコンデンサの設置方法では、ケースから突出する伝熱体を被取付体に当接させるようにしてコンデンサを設置することから、コンデンサの熱を、伝熱体を介して被取付体に伝達させることができ、結果、コンデンサからの放熱を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施形態に係るコンデンサを示す斜視図である。
【
図3】コンデンサの被取付体への取付状態を示す断面図である。
【
図4】この発明の異なる実施形態に係るコンデンサを示す分解斜視図である。
【
図5】コンデンサ素子と電極板と伝熱体とを一体とさせた状態を示す斜視図である。
【
図7】この発明のさらに異なる実施形態に係るコンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明のコンデンサ1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明のコンデンサ1は、
図1及び
図2に示すように、コンデンサ素子2と、電極板3と、伝熱体4とをケース5内に収納し、これらを樹脂モールドすることにより構成されている。以下、各構成部品について説明する。
【0014】
コンデンサ素子2は、例えばPP製のフィルム上に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回することで形成されたフィルムコンデンサであって、その両端部には、メタリコンを溶射してなる電極部21、22が設けられている。また、一方の電極部21には第1リード端子6が接続され、他方の電極部22には第2リード端子7が接続されている。なお、コンデンサ素子2は、
図2に示すように、コンデンサ素子2の軸方向及びそれと直交する方向に複数並設された状態で使用される。
【0015】
電極板3は、コンデンサ素子2の一方の電極部21に接続される第1電極板8と、コンデンサ素子2の他方の電極部22に接続される第2電極板9とからなる。
【0016】
第1電極板8は、
図2に示すように、上記複数並設されたコンデンサ素子2の一側面を覆うことができる程度の大きさ及び形状(平面視略長方形状)とされた例えば銅板である。第1電極板8には、コンデンサ素子2の一方の電極部21に接続された第1リード端子6と接続可能なように、第1リード端子6と対向する位置に接続孔81が設けられ、また
、コンデンサ素子2の他方の電極部22に接続された第2リード端子7と接続されないよう、第2リード端子7と対向する位置に接続回避孔82が設けられている。また、板の一辺からは外部の電気機器と接続するための外部接続部83が延設されている。
【0017】
第2電極板9は、
図2に示すように、上記第1電極板8をコンデンサ素子2の軸方向に延設したような形状とされている。また、コンデンサ素子2の他方の電極部22に接続された第2リード端子7と接続可能なように、第2リード端子7と対向する位置に接続孔91が設けられ、コンデンサ素子2の一方の電極部21に接続された第1リード端子6との接続を避けるため、第1リード端子6と対向する位置に接続回避孔92が設けられている点で、第1電極板8と大きく相違している。なお、材質や外部接続部93を延設している点については第1電極板8と同様である。
【0018】
伝熱体4は、
図2に示すように、例えばアルミや銅等の熱伝導率の高い金属製の伝熱ブロック4Aであって、当接面となる部分の面積が大きくなるよう扁平とされている。
【0019】
ケース5は、
図3に示すように、第1電極板8や第2電極板9よりも平面視大とされた底面部51と、この底面部51の外周端からそれぞれ立ち上がるようにして設けられた側壁部52とを備えており、上面には複数並設されたコンデンサ素子2や第1、第2電極板8、9を内部に入れ込むための開口部53が設けられている。また、開口部53が設けられた面が被取付体11への設置面(当接面)となるよう、開口部53側に、ボルト孔を有する取付足(取付手段)54が複数設けられている。
【0020】
ケース5内に充填される樹脂10は、例えばエポキシ樹脂等からなるが、絶縁を確保できるものであれば種々の樹脂を使用可能である。なお、
図1及び
図2においては、樹脂10を図示していない。
【0021】
以上に、本発明のコンデンサ1の構成部品について説明したが、次に、本発明のコンデンサ1の組立手順について詳細に説明する。コンデンサ1の組立にあたっては、まず、第1電極板8と第2電極板9とを絶縁紙等の絶縁体(図示しない)を介して重ね合わせる。この際、第1電極板8の接続孔81と第2電極板9の接続回避孔92とが対向するように、且つ第1電極板8の接続回避孔82と第2電極板9の接続孔91とが対向するようにして両者を重ね合わせる。
【0022】
次に、第1リード端子6を第1電極板8の接続孔81に挿通させるとともに、第2リード端子7を第2電極板9の接続孔91に挿通させ、それぞれ半田等によって接続させる。なお、コンデンサ素子2と電極板3とを接続させるにあたっては、負極となる電極板(本実施形態では第1電極板8)が、正極となる電極板(本実施形態では第2電極板9)とコンデンサ素子2との間に位置せず、外側(ケース開口部53側)に位置するように接続する。
【0023】
次に、第2電極板9よりも外側に配置された第1電極板8に伝熱ブロック4Aを取り付けていく。取り付けにあたっては、第1電極板8と伝熱ブロック4Aとの間に絶縁体(図示しない)を介在させ、伝熱ブロック4Aの電気的な絶縁を確保しておく。なお、例えば絶縁性の接着剤を用いて伝熱ブロック4Aを電極板3に接着させれば、固定と絶縁の双方を同時に行え、作業の効率化及びコスト削減を図ることができる。ただ、確実な絶縁を実現するために、予め伝熱ブロック4Aの第1電極板8と当接する面に絶縁体を取り付けておいても良い。また、伝熱ブロック4Aの取り付けのタイミングは、これに限らず、第1電極板8と第2電極板9を重ね合わせる前に、予め第1電極板8に取り付けておいても良い。
【0024】
第1電極板8に伝熱ブロック4Aを取り付けた後、これら一体となったコンデンサ素子2、電極板3、伝熱ブロック4Aをケース5内に収納する。この際、コンデンサ素子2が底面部51側に位置するようにし、伝熱ブロック4Aが開口部53側に位置するようにする。また、
図3に示すように、伝熱ブロック4Aが側壁部52よりも僅かに開口部53から突出するように配置する。そして、ケース5内に樹脂10を充填し、コンデンサ素子2、電極板3を樹脂モールドすることで組立を完了する。なお、伝熱ブロック4Aは、一部が樹脂10に埋設されるが、その他は樹脂10から露出した状態となる。
【0025】
上記構成のコンデンサ1は、伝熱ブロック4Aが突出する側(具体的には、開口部53側)が被取付体(例えば電気機器のケース)11への設置側(当接面)となるように、伝熱ブロック4Aが突出する側(具体的には、開口部53側)に取付足54が設けられていることから、この取付足54を用いてインバータ等の電気機器のケース11にコンデンサ1を取り付けると、
図3に示すように、伝熱ブロック4Aとケース11とが自ずと当接することになる。一般に、電気機器のケース11は金属製であって熱伝導率が高く、また熱容量や表面積もコンデンサ単体に比べて格段に大きいことから、ケース11が放熱器(ヒートシンク)として機能することとなり、コンデンサ1の電極板3で生じた熱は伝熱ブロック4Aを介してケース11に伝達され、結果、コンデンサ1からの放熱が促進されることとなる。また、このような放熱方法を採ることにより、別途、専用のヒートシンクを設ける必要が無くなることから、低コスト化や装置の小型化にも寄与することになる。
【0026】
次に、本発明の異なる実施形態について詳細に説明する。この実施形態のコンデンサ1Aは、
図4乃至
図6に示すように、ケース底面部51側に電極板3が配置され、ケース開口部53側にコンデンサ素子2が配置されている。また、伝熱体4として、伝熱ブロック4Aの他に、金属製の伝熱板4Bが用いられている点で上記実施形態とは大きく相違している。
【0027】
伝熱板4Bは、例えばアルミや銅等の熱伝導率の高い金属薄板を断面略U字状に折曲形成することで構成されている。この伝熱板4Bは、コンデンサ素子2や電極板3と当接せず電気的に絶縁状態で、コンデンサ素子2の周りを覆うようにして、コンデンサ素子2の側面に近接且つ対向配設されている。
【0028】
また、伝熱板4Bのケース開口部53側に伝熱ブロック4Aが取り付けられており、この伝熱ブロック4Aが樹脂10から露出しケース開口部53からケース5外方へと突出している。そして、ケース開口部53側に設けられた取付足54を用いて、コンデンサ1を電気機器のケース11に取り付ければ、ケース開口部53から突出した伝熱ブロック4Aが自ずとケース11に当接するようになっている。
【0029】
そのため、本実施形態においても上記実施形態と同様に、電気機器のケース11をヒートシンクとして用いることができ、コンデンサ1からの放熱を促進させることができる。また、専用のヒートシンクを設けなくても良いことから、低コスト化や小型化を図ることができる。
【0030】
以上に、この発明の代表的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0031】
例えば、上記実施例においては、伝熱ブロック4Aを樹脂10から突出させ、伝熱ブロック4Aを電気機器のケース11に当接させていたが、
図7に示すように、伝熱ブロック4Aを用いず、伝熱板4Bを樹脂10から突出させ、伝熱板4B自体をケース11に当接させるようにしても良い。このようなコンデンサ1Bでは、伝熱ブロック4Aが必要なくなるため、作業の効率化や低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、上記実施例においては、第1電極板8と第2電極板9とを重ね合わせていたが、必ずしも重ね合わせる必要はない。また、電極板3をケース開口部53または底面部51のどちらかに配置していたが、これに限らず、側壁部52と対向させるようにして配置するようにしても良い。この場合、断面略U字状の伝熱板4Bによって、コンデンサ素子2と電極板3の双方を覆うことができ、両者からの放熱を促進させることができる。なお、伝熱板4Bの形状としては、断面略U字状に限らず、L字状等、種々の形状を用いても良い。ただ、コンデンサ素子2と対向する面及び被取付体11と当接する面が大きくなるような形状が好ましい。また、伝熱体4は、ケース開口部53からケース5の外方へと突出するように構成されていたが、ケース底面部51やケース側壁部52から突出するように構成しても良い。この場合、アウトサート等の方法でケース底面部51やケース側壁部52の樹脂壁面に予め伝熱体4を取り付けておき、コンデンサ素子2及び電極板3をケース5内に収納すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1・・コンデンサ、2・・コンデンサ素子、3・・電極板、4・・伝熱体、4A・・伝熱ブロック、4B・・伝熱板、5・・ケース、53・・ケース開口部、54・・取付手段、10・・樹脂