【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、有害事象の経験のより高い危険性を有することの予測とは違って、季節性アレルゲンに対するアレルギーの治療のために、粘膜投与による季節性アレルゲンを投与することを含むアレルゲン-特異的免疫療法は、シーズン前に始めたときと同様にシーズン内に始めても忍容性が良好で効果的であることを証明した。
【0015】
この発見は、季節性アレルゲンに対して、副作用を減少するため、特にアナフィラキシーショックのような重篤な副作用の危険性を避けるために、シーズンのかなりの前から粘膜アレルゲン-特異的免疫療法を始めることが必要であることがこれまで推奨されてきており、実際、実務を要求する意味から非常に驚くべきことである。有利には、免疫療法のシーズン内の開始は、投与量増加段階を用いないで行なうことができ、さらに重篤な有害事象が観察されなかった。したがって、該投与プログラムは、分離した投与量増加段階と維持段階を含まず、治療の期間をとおして、同じ治療用量(単一用量)が投与された。
【0016】
したがって、本発明の第1の観点は、粘膜投与により対象の季節性アレルゲン組成物に対するアレルギーを予防または治療するために、アレルゲン-特異的免疫療法に用いるための季節性アレルゲン組成物を含む、粘膜投与に適するように製剤化された固体の投与剤形に関し、該固体の投与剤形は、該対象への初回投与がアレルゲン組成物のアレルゲン シーズン内に行なわれる投与プログラムで投与される。さらなる利点として、前記アレルゲン-特異的免疫療法は、単一用量のプログラム、すなわち全治療期間をとおして、単一用量のアレルゲン組成物が用いられる投与プログラムで行なわれ得る。言い換えれば、投与プログラムは、投与量増加段階を含まない、すなわち初回の投与が投与量増加段階なしで行なわれる。
【0017】
代わりの言葉で表わすと、第1の観点は、固体の投与剤形が投与プログラムで投与され、その対象への初回投与がアレルゲン組成物のアレルゲン シーズン内に行なわれる、季節性アレルゲンを含む固体の投与剤形を、それを必要とする対象への粘膜投与により投与することを含む、季節性アレルゲン組成物に対するアレルギーを予防または治療するためのアレルゲン-特異的免疫療法を行なう方法に関する。
【0018】
さらに、固体の投与剤形でアレルゲンを投与して免疫療法を行なうための代わりに、本発明のもう一つの観点は、液体の投与剤形が投与プログラムで投与され、その対象への初回投与がアレルゲン組成物のアレルゲン シーズン内でかつ投与量増加段階なしで行なわれる、粘膜投与により対象における季節性アレルゲン組成物に対するアレルギーを予防または治療するために、アレルゲン-特異的免疫療法における使用のための季節性アレルゲン組成物を含む、粘膜投与に適するように製剤化された液体の投与剤形に関する。
【0019】
代わりの言葉で表わすと、もう一つの観点は、固体の投与剤形が投与プログラムで投与され、その対象への初回投与がアレルゲン組成物のアレルゲン シーズン内でかつ投与量増加段階なしで行なわれる、それを必要とする対象への粘膜投与により、季節性アレルゲンを含む液体の投与剤形を投与することを含む、季節性アレルゲン組成物に対するアレルギーを予防または治療するためのアレルゲン-特異的免疫療法を行なう方法に関する。
【0020】
詳細な説明
本発明に関連して、次の定義が用いられる:
「粘膜(mucosal)」の用語は、体のあらゆる免疫能力を有する粘膜に関することを意味する。
「口粘膜(oromucosal)」の用語は、頬側の口腔の粘膜、舌下粘膜および/または咽頭の粘膜に関することを意味する。
【0021】
「固体の投与剤形(solid dosage form)」の用語は、特に口粘膜投与、具体的には口腔の粘膜への投与または舌下投与によるような粘膜投与に適したあらゆる固体の投与剤形を意味する。
「液体の投与剤形」の用語は、特に口粘膜投与、具体的には口腔の粘膜への投与または舌下投与によるような粘膜投与に適したあらゆる液体の投与剤形を意味する。
【0022】
本発明に関連して、「初回投与」の用語は、アレルゲンに感作された個体へ該アレルゲン組成物の用量を、舌下または頬側の投与のような粘膜への初めての投与、またはアレルゲンのアレルゲン シーズンの前の少なくとも6、9か月のような少なくとも6か月の期間後に、該アレルゲンに感作された個体へアレルゲン免疫療法のためのアレルゲン組成物のそのような最初の投与を意味する。
【0023】
「季節性アレルゲン」の用語は、生物学的アレルゲン放出源が起源である、あらゆる吸入性環境アレルゲンを意味し、それは各年の少なくともある期間に、少なくともいくらかの患者にアレルギーの症状を引き起こすのに十分な環境でのレベルを有し、各年の少なくともある期間に、少なくともいくらかの患者にアレルギーの症状を引き起こすのに不十分な環境でのレベルを有する。
「アレルゲン組成物」の用語は、生物学的および生物学的に由来する組成物ならびに合成アレルゲンを含む組成物を含む、1以上のアレルゲンを含むあらゆる組成物を意味する。
【0024】
「投与量増加段階」の用語は、その間に投与されるアレルゲン組成物の用量が、続く維持段階で使用される最大限の用量レベルに達するように徐々に増加される治療の期間を意味し、前記投与量増加段階は、前記最大限の用量レベルに達するとき、すなわち最初の最大限の用量の投与の直後に終了する。
「維持段階」の用語は、投与量増加段階に続く治療期間で、その間にアレルゲン組成物の最大限の用量が投与される治療期間を意味し、前記維持段階は、最初の最大限用量の投与直後に始まる。
【0025】
「アレルゲン シーズン」の用語は、その始まりが、地域または国の1以上の測定場所で、空中のアレルゲン含有粒子のレベルが、前の10年の平均ピーク値の5%である閾値を超える、3日の連続した日の第1日目であり、その終了が、地域または国の1以上の測定場所で、空中のアレルゲン含有粒子のレベルが、前の10年の平均ピーク値の5%である閾値より低い、3日の連続した日の最後の日である期間を意味する。
【0026】
「空中のアレルゲン含有粒子」の用語は、環境中のアレルゲンのレベルを測定するときに関係当局により用いられる、例えばイネ科草本、雑草、植物および木本からの花粉、真菌からの胞子および生物学的アレルゲン放出源からのその他のあらゆる生物学的破片を含む、生物学的アレルゲン放出源に由来するあらゆる空中のアレルゲン含有粒子を意味する。「地域または国」の表現は、環境中のアレルゲンのレベルをモニターするときに関係当局により用いられる地域または国を意味する。「ピーク値」の用語は、シーズンの最も高い値を有する3日間の平均を意味する。
【0027】
「SQ-u」の用語は、標準化クオリティ-単位を意味し、SQ-uは、アルク-アベッロ エイ/エス(ALK-Abello A/S)の「SQバイオ効力(biopotency)」標準化法にしたがって決定され、ここで100,000 SQ単位は、標準的な皮下維持量と等しい。通常、抽出物の1 mgは、それらが由来するアレルゲン供給源および用いられる製造法に依存し、100,000〜1,000,000 SQ-単位の間を含有する。正確なアレルゲンの量、すなわち全主要アレルゲンの含量および全アレルゲン活性は、免疫アッセイを用いて決定できる。
【0028】
「治療すること」の用語は、症状を部分的もしくは完全に治すこと、軽減すること、または症状の原因を阻害することを意味する。
「予防すること」の用語は、あらゆるタイプの予防的処置を意味する。
【0029】
「アレルギー」の用語は、免疫学的メカニズムによって介在される環境アレルゲンに対する、タイプI〜IVの過敏反応を含むあらゆるタイプの過敏反応を意味し、アレルギー性鼻炎、喘息およびアトピー性皮膚炎を含む。
「アレルゲン」の用語は、アレルギーを引き起こすことができるあらゆる化合物を意味する。
【0030】
季節性アレルゲン組成物
一般的に、季節性アレルゲンは、生物学的アレルゲン放出源が起源である、あらゆる吸入性環境アレルゲンを含み、それは各年の少なくともある期間に、少なくともいくらかの患者にアレルギーの症状を引き起こすのに十分な環境でのレベルを有し、各年の少なくともある期間に、少なくともいくらかの患者にアレルギーの症状を引き起こすのに不十分な環境でのレベルを有する。
【0031】
したがって、季節性アレルゲンは、生物学的アレルゲン放出源に由来する、季節性、吸入性、環境性のあらゆるアレルゲンを含む。典型的には、そのような季節性アレルゲンは、木本、ハーブ、雑草および/またはイネ科草本の花粉アレルゲンのような花粉に由来するアレルゲンである。さらに、いくつかの真菌および糸状菌、例えばアルテルナリア属(Alternaria)およびクラドスポリウム属(Cladosporium)のアレルゲンは1年の間に季節的に起こる。
【0032】
木本、イネ科草本およびハーブに由来する重要な花粉アレルゲンは、分類学上の、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)およびスズカケノキ科(platanaceae)(とりわけ、カンバ(Birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属(Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))およびオリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)およびビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))が挙げられる)、イネ目(Poales)(とりわけ、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)のイネ科草本が挙げられる)、キク目(Asterales)およびイラクサ目(Urticales)(とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)およびヒカゲミズ属(Parietaria)のハーブが挙げられる)に由来するものである。
季節的に起こる真菌および糸状菌からの重要な吸入アレルゲンは、とりわけ、アルテルナリア属およびクラドスポリウム属に由来するものである。
【0033】
本発明の特定の実施態様において、アレルゲンは、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1およびCar b 1、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、Jun a 3、Ole e 1、Lig v 1、Pla l 1、Pla a 2、Amb a 1、Amb a 2、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Dac g 1、Fes p 1、Hol l 1、Lol p 1および5、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Alt a 1、Cla h 1、Asp f 1、Mal d 1、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5、またはこれらのいずれかの分子育種(Molecular Breeding)によるシャッフルハイブリッド(shufflant hybrid)である。
【0034】
本発明の好ましい実施態様において、アレルゲンは木本花粉アレルゲン、イネ科草本花粉アレルゲン、雑草花粉アレルゲン、ハーブ花粉アレルゲン、糸状菌季節性アレルゲンおよび真菌季節性アレルゲンからなる群より選択される。
本発明のなお別の実施態様において、組成物は、少なくとも2つの異なるタイプのアレルゲン(同じアレルゲン供給源に由来するかまたは異なるアレルゲン供給源に由来するもの)、例えば、異なるイネ科草本種からのイネ科草本グループ1アレルゲンおよびイネ科草本グループ5アレルゲン、ブタクサ(short ragweed)およびオオブタクサ(giant ragweed)からの雑草アレルゲン、アルテルナリア属菌およびクラドスポリウム属菌からの真菌アレルゲン、およびカンバ、セイヨウハシバミ、セイヨウシデ、オーク(oak)およびハンノキからの木本アレルゲンを含む。
【0035】
アレルゲン組成物は、アレルゲン抽出物、アレルゲン抽出物の精製画分、改変アレルゲン、組換えアレルゲンおよび組換えアレルゲンの変異体であり得る。アレルゲン抽出物は、天然に、同じアレルゲンの1以上のアイソフォームを含み得る、一方、組換えアレルゲンは、典型的にはアレルゲンの唯1つのアイソフォームを表わす。変異アレルゲンは、低IgE結合性変異体、例えばWO 99/47680、WO 02/40676またはWO 03/096869 A2による低IgE結合性アレルゲンである。改変アレルゲンは、例えば化学的、物理的または酵素的な処理によって改変されたあらゆるアレルゲン誘導体であり得、例えばアレルゴイド(allergoids)を含む。好ましい実施態様において、アレルゲン組成物は、抽出物の形態である。もう1つの好ましい実施態様において、アレルゲン組成物は組換えアレルゲンである。さらに好ましい実施態様において、アレルゲン組成物はアレルゴイドである。さらに好ましい実施態様において、アレルゲン組成物は天然に存在する低IgE結合性変異体または組換えの低IgE結合性変異体である。さらに、アレルゲン組成物は、多くのアレルゲンの混合物、例えば2〜10のアレルゲン、特に3〜9のアレルゲン、さらに特に4〜8、最も特に5〜7のアレルゲンの混合物であり得る。
【0036】
アレルゲン組成物が1より多いアレルゲンを含むとき、該アレルゲンは等モル量で存在してもよいし、または存在するアレルゲンの比は、好ましくは1:20まで変化してもよい。
単一用量(mono-dose)製剤の好ましい効力は、100〜1000000 SQ-u、より好ましくは500〜500000 SQ-u、さらに好ましくは1000〜300000 SQ-u、さらに好ましくは10000〜200000 SQ-u、さらに好ましくは25000〜150000 SQ-uおよび最も好ましくは50000〜100000 SQ-uである。
【0037】
効力の既定レベルに相当するアレルゲンの量は、アレルゲン種によって強く変化する。本発明のさらなる実施態様において、単一用量中の主要アレルゲンの濃度は、0.05〜50 μg、より好ましくは0.05 μg〜30 μg、さらに好ましくは0.06 μg〜25 μg、さらに好ましくは0.07 μg〜20 μg、さらに好ましくは0.08 μg〜15 μg、さらに好ましくは0.09μg〜10 μg、そして最も好ましくは0.1 μg〜7 μgである。
【0038】
アレルギー抽出物の分野において、国際的に認められた標準化法はない。抽出物強度、すなわちバイオ効力(bio-potency)の多くの異なる単位が存在する。用いられる方法および用いられる単位は、通常、アレルゲン含量および生物学的活性を測定する。この例は、SQ-単位(標準化クオリティ単位(Standardised Quality units))、BAU(生物学的アレルゲン単位(Biological Allergen Units))、BU(生物学的単位(biological units))、UM(重さの単位(Units of Mass))、IU(国際単位(International Units))およびIR(反応性の指標(Index of Reactivity))である。それゆえ、本明細書に開示された以外の起源の抽出物が用いられれば、それらは、SQ単位または上記のいずれかの単位でのそれらの効力を決定するために、本明細書に開示された抽出物に対して標準化される必要がある。本主題は、「Allergenic extracts」, H. Ipsenら, chapter 20 in Allergy, principle and practise (Ed. S. Manning) 1993, Mosby-Year Book, St. Louis and Lowenstein H. (1980) Arb Paul Ehrlich Inst 75:122で処理される。
既定の抽出物のバイオ効力、すなわちインビボでのアレルギー活性は、多くのファクターに依存し、最も重要なものは抽出物中の主要アレルゲンの含量であり、それは生物学的供給源物質の組成で変化する。
【0039】
所望のバイオ効力を得るために用いられるアレルゲン抽出物のグラムでの量は、問題となる抽出物のタイプで変化し、抽出物の既定のタイプに対して、アレルゲン抽出物の量は、抽出物の実際のバイオ効力により1つのバッチ〜もう1つのバッチごとで変化する。
【0040】
抽出物の既定のバッチに対して、所望のバイオ効力を得るために用いられるアレルゲン抽出物のグラムでの量は、次の手順を用いて決定され得る:
a) バイオ効力と参照抽出物の量との関係を確立するために、参照抽出物の種々の量のバイオ効力が、インビボでの1以上の免疫学的テストを用いて測定される。該インビボでの免疫学的テストの例は、皮刺試験(Skin Prick Test)(SPT)、結膜誘発試験(Conjunctival Provocation Test)(CPT)、アレルゲンでの気管支攻撃(Bronchial Challenge with Allergen)(BCA)および1以上のアレルギー症状が測定される種々の臨床試験であり、例えばHaugaardら, J Allergy Clin Immunol, Vol. 91, No. 3, pp 709-722, March 1993を参照されたい。
【0041】
b) バイオ効力と参照抽出物との間の確立された関係に基づいて、本発明の投与剤形で用いられる1以上の関連用量のバイオ効力は、i) アレルギーの症状を治療するかまたは軽減する効果、ii) インビボでの免疫学的テストで記録された副作用、およびiii) 一人〜もう一人の個体ごとのi)およびii)の変動性のファクターのバランスを十分考慮して、選択される。バランスを取ることは、許容できない副作用のレベルを経験することなしに、最大の適切な治療効果を得るために行なわれる。ファクターのバランスを取ることの方法は、当業者によく知られている。
見出された1以上の関連用量のバイオ効力は、上記参照のSQ単位、BAU、IR単位のような利用可能ないずれかのバイオ効力で表わされ得る。
【0042】
c) 参照抽出物から、1以上のバイオ効力参照標準抽出物が作製され、もし用いられるなら、参照標準抽出物のバイオ効力単位値が、1以上の関連用量に割り当てられたバイオ効力単位値に基づいて計算され、例えばBAUに対するそのような標準は、下記のようにFDAから入手することができる。
【0043】
d) 各抽出物タイプの参照基準抽出物に対して、抽出物のバイオ効力を評価するための多くのパラメータが選択される。そのような評価パラメータの例は、全アレルギー活性、規定された主要アレルゲンの量および抽出物の全部の分子の組成である。全アレルギー活性は、標準法を用いて得られる抽出物に対して惹起された(raised)標準化抗体混合物、例えばマウスもしくはウサギで惹起された抗体、またはアレルギー患者の血清のプール(pool)を用い、ELISAおよびMagicLite(登録商標) 発光イムノアッセイ(LIA)のような、インビトロでの競合免疫アッセイを用いて測定され得る。主要アレルゲンの含量は、例えばロケット免疫電気泳動(RIE)により定量化され、参照標準と比較され得る。全部の分子の組成は、例えば交差免疫電気泳動法(CIE)およびドデシル硫酸ナトリウム ポリアクリルアミド ゲル電気泳動(SDS-PAGE)を用いて分析され得る。
【0044】
e) 未知のバイオ効力の抽出物(テスト抽出物)の既定のバッチに対して、所望のバイオ効力レベルを得るために用いられる抽出物の量(本発明の固体の投与形態に用いられる効果的な用量)は、次のように測定され得る:選択される各評価パラメータに対して、テスト抽出物が、上記の関連測定法を用いて、参照標準抽出物と比較され、測定結果に基づいて、所望のバイオ効力を有する抽出物の量が計算される。
【0045】
SQ-単位:SQ単位は、アルク-アベッロ エイ/エス(ALK-Abello A/S)の「SQバイオ効力」標準化法にしたがって決定され、ここで100,000 SQ単位は、標準的な皮下維持量と等しい。通常、抽出物の1 mgは、それらが由来するアレルゲン供給源および用いられる製造法に依存し、100,000〜1,000,000 SQ-単位の間を含有する。正確なアレルゲンの量、すなわち全主要アレルゲンの含量および全アレルゲン活性は、免疫アッセイを用いて決定できる。
【0046】
BAU(生物学的アレルゲン単位)は、「Quantitative determination of relative potency of allergenic extracts」(「Methods of the allergen products testing Laboratory」 「ELISA competition assay」. 15頁, #49N-0012, FDA, 10月 1993)に記載されたアレルゲン物質に対するFDAの要求にしたがって決定された生物学的効力である。イネ科草本抽出物を含む100,000 SQ-単位用量は、前記方法により、2600-4700 BAUの含量に等しい。同様に、その他の抽出物は、前記方法により評価され得る。
【0047】
投与の様式
述べたように、本発明によれば、アレルゲン組成物は粘膜投与に適するように製剤化され、投与のこの経路が皮下の免疫療法より安全で便利と認められるので、粘膜投与により患者に投与される。
粘膜投与は、体のあらゆる免疫能力を有する粘膜経由で行なわれ得る。粘膜投与は、口、鼻、膣、舌下、眼、直腸、尿路(urinal)、乳房内(intramammal)、肺、耳(すなわち耳経由)、頬側投与を含み、好ましくは頬側もしく舌下投与である。
【0048】
本発明の特定の実施態様において、粘膜投与は口粘膜投与、すなわち頬側、舌下および/または咽頭粘膜経由での投与である。口粘膜投与は、製剤が患者の口腔および/または咽頭の粘膜に一部または全部接触するあらゆる投与方法を含む。口粘膜投与法は、舌下投与および頬側投与を含む。したがって、本発明の具体的な実施態様において、粘膜投与は舌下投与である。
【0049】
アレルゲンの舌下投与は、既知の投与経路である。投与は、舌下に該ワクチン製剤を置くことによって行なわれ得、それは、そこに該製剤が短期間、例えば30〜300秒、好ましくは45〜240秒、より好ましくは60〜180秒、さらに好ましくは90〜150秒、最も好ましくは90〜120秒、とどまることを可能にする。
【0050】
投与プログラム
本発明で用いられる投与プログラムは、用量、1日当たりの投薬回数、治療の期間および投与の頻度の選択に関して、粘膜アレルゲン-特異免疫療法で用いられるあらゆる通常の投与プログラムであり得る。
しかしながら、本発明の粘膜アレルゲン-特異的免疫療法によれば、初回の投与はアレルゲン組成物のアレルゲン シーズン内に行なわれる。この関連で、「初回の投与」の表現は、特に舌下または頬側投与のような粘膜投与に適した、アレルゲン組成物を含むアレルギーワクチンの用量の初めての投与を意味するか、または該シーズン前の6または3か月のような少なくとも9か月の期間後のそのような最初の投与を意味する。
【0051】
初回の投与は、アレルゲン シーズンの始まりまたは該シーズンの始まり後に行なわれる。特に、初回の投与は、アレルゲン シーズンの始まり後、1週間を超えて、特に2週間を超えて、特に3週間を超えて、特に4週間を超えて、特に5週間を超えて、特に6週間を超えて、特に10週間を超えて行なわれる。
投与プログラムは、アレルゲン組成物の単一用量が治療期間全体を通して用いられる、単一用量のプログラムであり得る。あるは、投与プログラムは、投与量増加段階、続いての維持段階を含んでもよい。しかしながら、本発明の有利な実施態様において、投与プログラムは投与量増加段階を含まない、すなわち、初回の投与が投与量増加段階なしに行なわれる。
【0052】
本発明の1つの実施態様において、対象は、該投与剤形の1日に1または2(2回)を含む投与プログラムに付される。本発明のもう1つの実施態様において、投与プログラムは、2日目毎、3日目毎または4日目毎の該ワクチンの投与を含む。例えば、投与プログラムは、4週間より長い、好ましくは8週間より長い、より好ましくは12週間より長い、さらに好ましくは16週間より長い、さらに好ましくは20週間より長い、さらに好ましくは24週間より長い、さらに好ましくは30週間より長い、そして最も好ましくは36週間より長い期間の該ワクチンの投与を含む。本発明の特定の実施態様において、投与プログラムは、少なくともアレルゲンシーズンの期間の該ワクチンの投与を含む。本発明の特定の実施態様において、投与プログラムは、12か月〜48か月、好ましくは24か月〜42か月、より好ましくは30か月〜40か月、そして最も好ましくは34か月〜38か月である。
【0053】
投与プログラムの投与期間は、連続期間であり得る。あるいは、投与の期間は、1以上の非投与期間で中断された不連続期間である。好ましくは、非投与の(全)期間は、投与の(全)期間より短い、本発明の好ましい実施態様において、投与プログラムは、少なくとも連続3年のアレルギー シーズンでの投与を含む。
【0054】
投与剤形
述べたように、本発明での使用のための投与剤形は、好ましくは、頬側投与または舌下投与によるような、粘膜組織への投与に適したあらゆる固体の投与剤形のような、固体の投与剤形であり、それは圧縮錠剤、非圧縮錠剤、コーティング錠剤、非コーティング錠剤、散剤、ゲル剤、坐剤、カプセル剤およびペーストを含む。
【0055】
非圧縮固体剤形の例は、Zydis(登録商標)の名前で市販されている投与剤形およびWO 04/047794に開示された投与剤形のような、凍結乾燥され、速溶解性の固体の投与剤形である。そのような投与剤形は、例えばマトリックス形成剤と活性物質との溶液を調製し、多層ラミネートブリスターシートのくぼみに溶液を満たし、充填されたシートを凍結させ、そして凍結乾燥に付すことによって製造され得る。非圧縮、速溶解性剤形は、特に口粘膜投与に適する。
あるいは、粘膜投与は、液滴またはスプレーのような液体の投与剤形を用いて行なわれ得る。特に、液体の投与剤形は、特に舌下的のような口の粘膜に対するような口粘膜への投与に適したものである。
【0056】
本発明の投与剤形は、あらゆるアジュバントおよび固体または液体の投与剤形に適したその他の賦形剤をさらに含み得る。そのような賦形剤は、当業者によく知られており、例えば湿潤剤、可塑剤、着色物質、充填剤、保存剤、粘度調整剤、緩衝剤、pH調整剤、等張性調整剤、粘膜付着性物質等を含む。製剤化の方策の例は、当業者によく知られている。
【0057】
アジュバントは、粘膜投与用の固体の投与剤形に適したあらゆるアジュバントであり得、それは、酸素含有金属塩、例えば酸化アルミニウム、易熱性エンテロトキシン(LT)、コレラトキシン(CT)、コレラトキシン B サブユニット(CTB)、ポリマー化リポソーム、変異トキシン、例えばLTK63およびLTR72、マイクロカプセル、インターロイキン(例えば、IL-1β、IL-2、IL-7、IL-12、INFγ)、GM-CSF、MDF誘導体、CpG オリゴヌクレオチド、LPS、MPL、ホスファゼン、Adju-Phos(登録商標)、グルカン、抗原製剤(antigen formulation)、リポソーム、DDE、DHEA、DMPC、DMPG、DOC/Alum コンプレックス、フロイント不完全アジュバント、ISCOMs(登録商標)、LT経口アジュバント、ムラミル ジペプチド、モノホスホリル脂質A、ムラミル トリペプチドおよびホスファチジルエタノールアミンを含む。
【0058】
一般的に、酸素含有金属塩の水溶液はゲルの形態を有する。酸素含有金属塩の水溶液から、例えば凍結乾燥によって固体の形態に変換することは可能であり、それは、対象への投与時に再度湿らされ、再度可溶化される。酸素含有金属塩を凍結乾燥に付すとき、例えばWO 2007/038926に記載されているように、サッカライド、糖-アルコールおよび/またはアミノ酸のような保護剤を用いることは一般的な実務である。
【0059】
本発明の特定の実施態様において、本発明の剤形は、酸素含有金属塩アジュバントを含む。好ましくは、酸素含有金属塩の金属カチオンは、Al、K、Ca、Mg、Zn、Ba、Na、Li、B、Be、Fe、Si、Co、Cu、Ni、Ag、AuおよびCrからなる群から選択される。
酸素含有化合物のアニオンは、あらゆる酸素含有アニオンであり得、それは、有機もしくは無機アニオン、または有機および無機アニオンとの組合せを含む。適当な酸素含有金属塩の例は、例えば、アニオンがサルフェート、ヒドロキシド、ホスフェート、ナイトレート、イオデート、ブロメート、カーボネート、ハイドレート、アセテート、シトレート、オキサレートおよびタートレートからなる群ならびにそれらの混合された形態から選択されるものである。酸素含有金属塩は、配位錯体をさらに含む。配位錯体の定義は、例えば、The Handbook of Chemistry and Physics 第56版, B節, 第7章 (197576)に示される。
【0060】
本文脈において、「混合された形態」の表現は、種々のアニオンの組み合わせ、ならびに、例えばクロライド及びスルフィドとの組み合わせを含むことが意図される。
本発明による酸素含有金属塩の例は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸カルシウム、酒石酸カルシウム、Maalox (水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの混合物)、水酸化ベリリウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛および硫酸バリウムである。
最も好ましいのは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸カルシウム、酒石酸カルシウムおよび硫酸亜鉛である。
【0061】
酸素含有金属塩のpIは、典型的には、2〜11の範囲である。アレルゲンタンパク質についてのpIは、典型的には、4〜9の範囲である。好ましくは、アレルゲンおよび酸素含有金属塩は、アレルゲンのpIが酸素含有金属塩のpIより低くなるように選択される。
酸素含有金属塩として例えば水酸化アルミニウムを用いるとき、凍結乾燥用に用いられる溶液中の水酸化アルミニウムの濃度は、好ましくは0.035〜1000 mg/ml、より好ましくは0.10〜100 mg/ml、さらに好ましくは0.25〜10 mg/ml、最も好ましくは0.5〜5 mg/mlである。その他の酸素含有金属塩に対して、金属塩の濃度は、好ましくは0.035〜1000 mg/ml、より好ましくは0.35〜100 mg/ml、さらに好ましくは0.7〜50 mg/ml、最も好ましくは1.0〜20 mg/mlである。溶液中のアレルゲンの濃度は、好ましくは0.01〜100 mg/ml、より好ましくは0.1〜10 mg/mlである。アレルゲンに対する酸素含有金属塩の比は、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜20である。酸素含有金属塩に吸着されるアレルゲンの程度は、加えられた量の、典型液には5〜99 %、より好ましくは10〜99 %である。酸素含有金属塩へのアレルゲンの吸着は、緩衝系ならびに吸着が起こる温度および反応時間を含む反応条件に依存する。
【0062】
酸素含有金属塩は、吸着、溶解度(solubility)および溶解(dissolution)特性、等電点 pI (解離可能な化合物に対して、物質の正味電荷が0であるpH)として測定されるイオン電荷、解離定数、錯体配位、電子配置、原子価、結合軌道および反結合軌道、デポ作用(depot properties)、接着性、表面特性、粒子特性およびアジュバント活性のような、種々の物理的-化学的パラメータによって特徴付けられ得る。
【0063】
生物学的に活性な物質は、酸素含有金属塩に吸着(または結合)されることが考えられ、この吸着がワクチンの有効性に寄与する。いくつかのファクターが重要であり得るし、または活性物質と酸素含有金属塩との吸着に影響を及ぼし得る(例えば、P. M. Callahanら,Pharmaceutical Research Vol. 8, No. 7,851-858 (1991), およびVaccine Design. The Subunit and Adjuvant Approachを参照)。これらのファクターは、pH、吸着が行なわれる時間の長さ、混合条件、ワクチン中の種々の成分の濃度、容器、温度、保存、緩衝剤および賦形剤を含む。活性物質の吸着は、両方ともpHに依存する、金属塩の正味/全電荷および活性物質の電荷によって影響を及ぼされる得ることがさらに見出された。重要であると考えられるさらなる特徴は、酸素含有金属塩の溶解度である。
【0064】
酸素含有塩のもう1つの特徴は、微小環境中での活性物質に対して、望ましいpHを維持すること、それゆえ酸分解を防ぐか、または酵素的分解に対して活性物質を保護すること、それによって該物質が送達されることを可能にするのいずれかによって、活性物質を保護する。
さらに、酸素含有金属塩のいくつかは、緩衝能を有する。このことは、ワクチン製剤内にインビボの微小環境をもたらし得る、そして、それは分解性の環境から活性物質を保護する。
【0065】
酸素含有金属塩のさらなる特徴は、それらの粘膜への付着能力である。このことが、粘膜を通してのアレルゲンの吸収を増加すると考えられる。
酸素含有金属塩のいくつか(例えば、Al(OH)
3、AlPO
4、Ca
3PO
4)に対して、その粒子サイズは0.5〜15 μmの間である。