特開2015-139145(P2015-139145A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-139145(P2015-139145A)
(43)【公開日】2015年7月30日
(54)【発明の名称】車載用スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20150703BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20150703BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20150703BHJP
【FI】
   H04R1/02 102B
   H04R1/00 311
   H04R1/28 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-10460(P2014-10460)
(22)【出願日】2014年1月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 雅美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D017AB06
5D017AE17
5D018AD13
5D018AD18
(57)【要約】
【課題】背圧調整用のダクトの開口端に雪や氷等が付着するのを防止できる「車載用スピーカ装置」を提供する。
【解決手段】自動車の車室外空間S1にスピーカユニット1を設置し、スピーカユニット1の生成する再生音を車室内空間S2へ放出すると共に、スピーカユニット1の背圧をフレーム2に突設された背圧調整用のダクト3を介して外部空間S3へ逃がすようにした車載用スピーカ装置において、ダクト3を外部空間S3と連通する開口部7aを網目状のメッシュカバー10によって被覆すると共に、このメッシュカバー10の網目体11の網目交点11aに固有振動数が異なる複数の振動バー13を片持ち梁状に取り付けた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットに背圧調整用のダクトが突設されていると共に、このスピーカユニットが設置される音響空間を外部空間と隔てている隔壁に開口部が設けられており、前記開口部を介して前記ダクトが前記外部空間と連通されている車載用スピーカ装置において、
前記開口部を網目状のメッシュカバーによって被覆し、このメッシュカバーに車両の振動を受けて動作する振動付与体を付設したことを特徴とする車載用スピーカ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記振動付与体が先端に錘を有する振動バーであり、この振動バーを前記メッシュカバーの網目交点に片持ち梁状に取り付けたことを特徴とする車載用スピーカ装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記振動バーが前記メッシュカバーの複数の網目交点にそれぞれ取り付けられており、これら振動バーの固有振動数を異ならせたことを特徴とする車載用スピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に向けて設置されたスピーカユニットの背圧を車室外に放出するようにした車載用スピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低音域用のサブウーファのように比較的大きな車載用スピーカを車室内に設置すると、車室内で利用可能な空間が狭くなってしまうため、従来より、自動車の車室外の空間にスピーカを設置し、このスピーカから発せられる再生音を車室壁部に設けた開口を介して車室内の空間へ放出させると共に、スピーカを収納するキャビネットに背圧調整用のダクトを突設し、このダクトを介してスピーカの背後に発生する背圧を車外空間へ逃がすようにした車載用スピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる従来の車載用スピーカ装置では、キャビネットに突設されたダクトの付加質量(ダクト内の空気抵抗)がスピーカの背圧に大きく影響するため、ダクトの付加質量を適正に設定することで、所望の低音域の音圧が高まるように背圧を調整することが可能となる。例えば、ダクトを長くまたは細く形成して付加質量を増やすと背圧は高まり、逆にダクトを短くまたは太く形成して付加質量を減らすと背圧は低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−121455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された従来例のように、キャビネットに突設されたダクトを車室壁部に設けた開口部に挿通し、この開口部を介してダクトが後部バンパー等の外部空間に連通するようになっていると、悪路や雪道等を走行することによってダクトの開口端に雪や氷等が付着してしまうことがある。その場合、ダクト内の空気の流れが雪や氷等の付着物によって阻害されてしまうため、ダクトの付加質量が設計値に対して増加してしまい、本来発揮すべき低音再生能力が著しく劣化してしまうことになる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、背圧調整用のダクトの開口端に雪や氷等が付着するのを防止できる車載用スピーカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、スピーカユニットに背圧調整用のダクトが突設されていると共に、このスピーカユニットが設置される音響空間を外部空間と隔てている隔壁に開口部が設けられており、前記開口部を介して前記ダクトが前記外部空間と連通されている車載用スピーカ装置において、前記開口部を網目状のメッシュカバーによって被覆し、このメッシュカバーに車両の振動を受けて動作する振動付与体を付設する構成とした。
【0008】
このように構成された車載用スピーカ装置によれば、スピーカユニットの背圧はダクトからメッシュカバーを通過して外部空間へ放出されるが、その際、メッシュカバーに車両の振動を受けて動作する振動付与体が付設されており、走行中や停車中を問わずに車両の振動(例えば、走行時に路面から受ける振動やアイドリング時の振動等)を受けてメッシュカバーが振動するため、メッシュカバーに雪や氷等が付着して網目を塞いでしまうことを抑制することができ、スピーカユニットの背圧をメッシュカバーの網目から外部空間へスムーズに逃がすことができる。
【0009】
上記の構成において、振動付与体が先端に錘を有する振動バーであり、この振動バーをメッシュカバーの網目交点に片持ち梁状に取り付けると、振動バーの梁部分の剛性や錘の質量を適宜選択することにより、所望の固有振動数で共振する振動バーをメッシュカバーに付設することができて好ましい。
【0010】
この場合において、振動バーがメッシュカバーの複数の網目交点にそれぞれ取り付けられており、これら振動バーの固有振動数が異なるように設定されていると、車両に発生する様々な振動周波数に対応して任意の振動バーを共振させることができるため、メッシュカバーに雪や氷等が付着することを確実に防止することができて好ましい。なお、複数の振動バーの固有振動数を異ならせる手段は特に限定されないが、例えば、振動バーの固定端から錘に至る梁部分の長さや厚み(太さ)あるいは錘の質量等をパラメータとして適宜選択することにより、個々の振動バーの固有振動数を所望値に設定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車載用スピーカ装置では、スピーカユニットに背圧調整用のダクトが突設されており、このダクトを外部空間と連通する開口部が網目状のメッシュカバーによって被覆されていると共に、このメッシュカバーに車両の振動を受けて動作する振動付与体が付設されているため、走行中や停車中を問わずに車両の振動を受けてメッシュカバーが振動することで、メッシュカバーに雪や氷等が付着して網目を塞いでしまうことを抑制することができ、スピーカユニットの背圧をメッシュカバーの網目から外部空間へスムーズに逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態例に係る車載用スピーカ装置を車両に取り付けた状態を示す断面図である。
図2】該車載用スピーカ装置に備えられるメッシュカバーの斜視図である。
図3】該メッシュカバーの要部を示す斜視図である。
図4】該メッシュカバーの要部を示す分解斜視図である。
図5】該メッシュカバーの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明の実施形態例に係る車載用スピーカ装置は、自動車の車室外空間S1に設置されたスピーカユニット1と、このスピーカユニット1の構成部品であるフレーム2に突設された背圧調整用のダクト3とを備えている。スピーカユニット1は低音域用のサブウーファであり、このスピーカユニット1の生成する再生音が車室内空間S2へ放出されるようになっている。
【0014】
車室内空間S2は例えばステーションワゴンやミニバンのラゲッジルームであり、この車室内空間S2はフロアボード4やサイドトリム5によって区画され、フロアボード4の下方にスペアタイヤ6を収納できるようになっている。車室外空間S1はフェンダー等の外板パネル7の内側空間であり、これら車室外空間S1と車室内空間S2はサイドトリム5によって隔てられている。サイドトリム5には比較的大径の開口5aが設けられており、この開口5aを覆うようにサイドトリム5にスピーカグリル8が取り付けられている。一方、外板パネル7には開口5aに比べて小さめな開口部7aが設けられており、この開口部7aは後部バンパー9の内側の外部空間S3に連通している。
【0015】
スピーカユニット1は、磁気ギャップを有する磁気回路と、磁気ギャップに配置されて通電時に電磁相互作用で駆動されるボイスコイルと、ボイスコイルに連動して振動する振動板と、ボイルコイルと振動板を弾性的に支持するダンパと、これら各部材を保持する前記フレーム2とによって主に構成されており、このフレーム2の背面側に前記ダクト3が突設されている。スピーカユニット1は振動板をスピーカグリル8に向けた姿勢で車室外空間S1内に設置されており、フレーム2はサイドトリム5の開口5aの周囲にねじ止め等により固定されている。なお、スピーカユニット1を図示せぬ別部材のキャビネット内に収納し、このキャビネットにダクト3を突設するようにしても良い。
【0016】
ダクト3は断面円形や断面矩形等の筒状体として形成されており、その先端部を開口部7aに嵌合して外板パネル7に固定することにより、スピーカユニット1の背後に発生する背圧がダクト3を介して外部空間S3へ逃がされるようになっている。外板パネル7には開口部7aを被覆するようにメッシュカバー10が取り付けられており、このメッシュカバー10によってダクト3の開口端も覆われている。
【0017】
図2に示すように、メッシュカバー10は、線材を縦横に格子状に連続させた網目体11と、この網目体11を支持する枠体12と、網目体11の交点位置に取り付けられた複数の振動バー13とによって構成されており、枠体12を開口部7aの周囲にねじ止めやスナップ止め等の適宜手段で固定することにより、メッシュカバー10がダクト3の開口端を覆うようになっている。
【0018】
網目体11はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPP(ポリプロピレン)等の可撓性に優れた合成樹脂材料からなり、本実施形態例の場合、網目体11と枠体12は合成樹脂材材料を用いて一体形成されているが、両者を別々に形成してから後工程で一体化しても良い。なお、メッシュカバー10には、スピーカユニット1の背圧をスムーズに通過させる機能の他に、虫や泥等の異物がダクト3内に侵入するのを阻止する機能も要求されるため、空気の流動性と異物の侵入防止という両方を考慮して網目体11の目の粗さを設定することが好ましい。
【0019】
振動バー13は本発明の振動付与体に相当するものであり、図3図4に示すように、この振動バー13は、網目体11の線材が交差する網目交点11aから突出する棒状体14と、棒状体14の先端(自由端)に設けられた錘体15とによって構成されている。
【0020】
棒状体14の軸線方向の両端部にはそれぞれ二つ割形状のスナップ片14a,14bが形成されており、一方のスナップ片14aを網目体11の網目交点11aに設けられた段付き孔11bに嵌め込むことにより、棒状体14は網目体11の網目交点11aに片持ち梁状に取り付けられている。また、他方のスナップ片14bを錘体15に設けられた段付き孔15aに嵌め込むことにより、錘体15は棒状体14に一体的に取り付けられている。
【0021】
錘体15は棒状体14よりも比重の大きな材料からなり、棒状体14の長さや太さ(厚み)あるいは錘体15の質量等を変えることにより、振動バー13の固有振動数は任意の値に設定されている。ここで、網目体11の網目交点11aには固有振動数の異なる複数の振動バー13が取り付けられており、車両から様々な振動(例えば、走行時に路面から受ける振動やアイドリング時の振動等)が生起されると、その振動の振動周波数(例えば、アイドリング時の振動周波数は約16Hz)を受けて任意の振動バー13を共振させることができるため、車両の振動によってメッシュカバー10の網目体11が振動するようになっている。
【0022】
このように構成された車載用スピーカ装置において、スピーカユニット1のボイスコイルに音声電流が通電されると、公知の電磁相互作用によってボイスコイルが図1の左右方向に駆動されるため、ボイスコイルに連動する振動板によってフレーム2内の空気が振動し、再生音がスピーカグリル8から車室内空間S2へ放出される。その際、フレーム2内では振動板の背面側でも空気が振動するが、振動板の背面側の空間はダクト3を介して後部バンパー9の内側の外部空間S3に連通されているため、振動板の振動時に背圧が過度に高まることはない。それゆえ、この車載用スピーカ装置は、30〜300Hzの低音域における音圧を高めたサブウーファとして使用できる。
【0023】
ここで、ダクト3の開口端は網目体11を有するメッシュカバー10によって覆われているため、スピーカユニット1の背圧を網目体11の隙間から外部空間S3へスムーズに逃がすことができると共に、虫や泥等の異物がダクト3内に侵入することをメッシュカバー10によって抑止することができる。また、メッシュカバー10の網目体11の網目交点11aに複数の振動バー13が片持ち梁状に取り付けられており、これら振動バー13の固有振動数が異なるように設定されているため、車両に発生する様々な振動周波数に対応して任意の振動バー13を共振させて、メッシュカバー10に雪や氷等が付着することを阻止することができる。しかも、振動バー13はスピーカユニット1の背圧によっても振動するため、メッシュカバー10に雪や氷等の付着物が残っていたとしても、その付着物をスピーカユニット1の動作時に背圧によって振るい落とすことができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態例に係る車載用スピーカ装置は、スピーカユニット1に背圧調整用のダクト3が突設されており、このダクト3を外部空間S3と連通する開口部7aが網目状のメッシュカバー10によって被覆されていると共に、このメッシュカバー10の網目体11に振動付与体としての振動バー13が付設されているため、走行中や停車中を問わずに車両の振動を受けて網目体11が振動することで、網目体11に雪や氷等が付着して網目を塞いでしまうことを防止でき、スピーカユニット1の背圧をメッシュカバー10の網目から外部空間へスムーズに逃がすことができる。
【0025】
また、本実施形態例では、複数の振動バー13がメッシュカバー10の網目体11の網目交点11aに片持ち梁状に取り付けられており、これら振動バー13の固有振動数が異なるように設定されているため、車両に発生する様々な振動周波数に対応して任意の振動バー13を共振させることができ、メッシュカバー10に雪や氷等が付着することを確実に防止することができる。
【0026】
しかも、振動バー13を着脱可能な棒状体14と錘体15とで別体構成にすると共に、棒状体14を網目体11の網目交点11aに対して後付け可能としたので、棒状体14の長さや厚み(太さ)あるいは錘体15の質量等をパラメータとして振動バー13の固有振動数が調整可能となり、固有振動数の異なる複数の振動バー13を網目体11の所定位置に容易に取り付けることができる。ただし、予め網目体11に複数の棒状体14を一体形成し、これら棒状体14の先端に質量の異なる錘体15を後付けしたり、全ての棒状体14と錘体15を網目体11に一体形成するようにしても良い。
【0027】
なお、上記の実施形態例では、メッシュカバー10の網目体11の交点位置に振動付与体としての振動バー13を片持ち梁状に取り付けた場合について説明したが、振動付与体は車両の振動を受けてメッシュカバーを振動させるものであれば良く、図5に示す変形例のように、振動バー13と構成の異なる振動付与体をメッシュカバーに付設することも可能である。
【0028】
図5に示すメッシュカバー10では、枠体16の内周面に網目体17が支持されており、この網目体17に振動付与体としての錘体18が取り付けられている。枠体16はダクト3の断面形状に合わせて筒状に形成されているため、枠体16をダクト3の開口端に嵌め込むことにより、メッシュカバー10をダクト3の開口端に直接取着できるようになっている。ただし、前述した実施形態例と同様に、枠体16を開口部7aの周囲に固定することにより、メッシュカバー10でダクト3の開口端を覆うようにしても良い。網目体17は波形状にフォーミングした線材を縦横に格子状に編んだものであり、ダクト3の奥行方向へ変形し易い全体形状となっている。錘体18は網目体17の任意箇所に直接取り付けられており、図示省略されているが、網目体17には質量の異なる複数の錘体18が取り付けられている。
【0029】
このように構成されたメッシュカバー10においても、網目体17に振動付与体としての錘体18が付設されているため、走行中や停車中を問わずに車両の振動を受けて網目体18が振動することで、網目体18に雪や氷等が付着して網目を塞いでしまうことを防止でき、スピーカユニット1の背圧をメッシュカバー10の網目から外部空間へスムーズに逃がすことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 スピーカユニット
2 フレーム
3 ダクト
4 フロアボード
5 サイドトリム
5a 開口
7 外板パネル
7a 開口部
8 スピーカグリル
9 後部バンパー
10 メッシュカバー
11 網目体
11a 網目交点
11b 段付き孔
12 枠体
13 振動バー(振動付与体)
14 棒状体
14a,14b スナップ片
15 錘体
15a 段付き孔
16 枠体
17 網目体
18 (振動付与体)
S1 車室外空間
S2 車室内空間
S3 外部空間
図1
図2
図3
図4
図5