【解決手段】電線モジュール10は、複数の板状部分32と、前記複数の板状部分32の間に介在しそれらの間に中空構造を形成する介在部分36とを含むプロテクタ30と、撚り合わされた複数の電線12を含み、プロテクタ30の中空構造内に収容されたツイスト線11とを備える。好ましくは、介在部分36は、複数の板状部分32の間で、並行状に延在する複数の空間を形成する仕切部分36aを含んでおり、ツイスト線11と他のツイスト線又は電線12とが、並行状態で中空構造内に収容されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る電線モジュールについて説明する。
図1は電線モジュール10を示す概略斜視図であり、
図2は電線モジュール10のうちプロテクタ30部分を示す概略正面図であり、
図3はプロテクタ30を形成するための中空板材30Bの一例を示す概略斜視図である。
【0016】
電線モジュール10は、プロテクタ30と、ツイスト線11とを備える。
【0017】
ツイスト線11は、複数の電線12が撚り合わされることによって構成されている。電線12は、導線の周囲に押出被覆等によって樹脂被覆が施されたものである。通常、ツイスト線11は、2本の電線12が撚り合わされたツイストペア電線の形態で用いられるが、より多数の電線が撚り合わされたものであってもよい。かかるツイスト線11は、ノイズ耐性に優れるため、高周波信号の伝送路として用いるのに適している。
【0018】
電線モジュール10は、撚り合わされない電線12を備えていてもよく、本実施形態においても、電線モジュール10は、撚り合わされない電線12を備えている。
【0019】
上記ツイスト線11の各電線12の端部及び電線12の端部には、圧着端子が接続され、当該圧着端子はコネクタ16内に組込まれている。そして、本電線モジュール10が車両等に取付けられた状態で、コネクタ16が車両に搭載された電子制御ユニット、各種センサ等の電気部品に接続される。これにより、本電線モジュール10は、車両に搭載された各種電気部品同士を電気的に接続する配線材として用いられる。
【0020】
プロテクタ30は、複数の板状部分32と、介在部分36とを備え、全体として板状に形成されている。介在部分36は、複数の板状部分32間に介在し、複数の板状部分32の間に、ツイスト線11を収容可能な中空構造を形成するように構成されている。
【0021】
このプロテクタ30の中空構造内に、少なくとも1つのツイスト線11の延在方向の少なくとも一部が収容されることで、電線モジュール10が構成される。プロテクタ30は、ツイスト線11を外部(例えば、配線経路の周辺にあるエッジ部分等)から保護する役割、ツイスト線11を所定の配線経路に沿って維持する役割等を果す。また、本プロテクタ30に、複数のツイスト線11及び電線12が収容される場合には、それらを配線経路における経路スペースに応じた形状に維持する役割、即ち、複数のツイスト線11及び電線12を偏平な並列状態に維持する役割をも果す。なお、車両への配設状態において、プロテクタ30が曲げられていてもよい。
【0022】
プロテクタ30についてより具体的に説明すると、プロテクタ30は、複数(ここでは2つ)の板状部分32と、複数の板状部分32の間に設けられた介在部分36とを備える。
【0023】
複数の板状部分32及び介在部分36を形成する材質は特に限定されない。複数の板状部分32及び介在部分36は、紙によって形成されていてもよいし、樹脂(ポリプロピレン等)によって形成されていてもよいし、また、これらの組合わせによって構成されていてもよい。複数の板状部分32及び介在部分36の少なくとも1つを紙によって形成する場合には、その表面に撥水処理等を施すことが好ましい。ここでは、複数の板状部分32と介在部分36とが樹脂によって一体成型された例で説明する。
【0024】
板状部分32は、平板状に形成されている。複数の板状部分32が介在部分36を介して間隔をあけた状態で連結されている。
【0025】
介在部分36は、複数の仕切部分36aを備える。各仕切部分36aは、細長い帯板状に形成されている。複数の仕切部分36aは、板状部分32の間で、当該板状部分32に対し直交し、かつ、相互間に間隔をあけた並列状態で設けられている。各仕切部分36aの両側部は、板状部分32の内向き面に連結されている。これにより、複数の板状部分32が間隔をあけた状態で支持されている。また、複数の板状部分32の間であって各仕切部分36aの間に、並行状に延在する複数の空間(ツイスト線11を収容可能な空間)が形成される。
【0026】
かかるプロテクタ30を、仕切部分36aの延在方向に対して直交する面で切断すると、2つの板状部分32の間に複数の仕切部分36aが介在するはしご状断面を示す。
【0027】
このようなプロテクタ30は、例えば、前記はしご状断面に応じた押出孔から樹脂を押出す押出成型装置によって、中空板材30Bを連続的に押出成型し、この中空板材30Bを、保護対象となるツイスト線11の本数、当該ツイスト線11において保護すべき距離等に応じて切断する(
図3の2点鎖線参照)ことで形成することができる(
図3参照)。これにより、プロテクタ30を容易に低コストで製造することができる。
【0028】
なお、上記板状部分32及び介在部分36の少なくとも一方には、アルミ箔又は銅箔等によるシールド層が設けられていてもよい。
【0029】
なお、プロテクタ30の厚み寸法は、1.5mm〜15.0mmであることが好ましい。また、プロテクタ30において並列状に形成された空間を仕切る仕切部分36aのピッチは、4mm〜20mmであることが好ましい。
【0030】
本実施形態の例では、プロテクタ30には、8個の細長状の収容空間が並列状に形成されている。そして、その一側よりの2つの収容空間のそれぞれにツイスト線11が収容されている。また、残りの収容空間に適宜電線12が収容されている。従って、プロテクタ30内には複数のツイスト線11が並行状態で中空構造内に収容されている。また、ツイスト線11と電線12とが並行状態で中空構造内に収容されている。
【0031】
なお、複数の電線12が撚り合わされてツイスト線11としての形態をなした状態で、当該ツイスト線11がプロテクタ30の収容空間に挿通されてもよい。あるいは、複数の電線12がプロテクタ30のいずれかの収容空間に収容された後に撚り合わされることでツイスト線11としての形態をなすものであってもよい。
【0032】
そして、プロテクタ30の一端部から延出するツイスト線11及び電線12が共通するコネクタ16に接続されている。勿論、これらはツイスト線11と電線12とは別々のコネクタに接続されていてもよい。
【0033】
以上のように構成された電線モジュール10によると、ツイスト線11を板状部分32間の中空構造内に収容するため、ツイスト線11をより確実に設計上の狙いとされた一定の経路に沿って維持することができる。このため、ツイスト線11がプロテクタ30の厚み方向において位置ぶれし難くなり、ツイスト線11とその周辺部材(特に、導電体)との間隔を一定に維持し易い。これにより、ツイスト線11による信号伝送特性を向上させることができる。また、ツイスト線11がプロテクタ30の細長い空間内に収容されるため、ツイスト線11の撚りの乱れが生じ難い。この点からもツイスト線11による信号伝送特性を向上させることができる。
【0034】
また、介在部分36は、複数の板状部分32の間で、並行状に延在する複数の空間を形成する仕切部分36aを含んでおり、ツイスト線11と、他のツイスト線11又は電線12とが、並行状態でプロテクタ30の中空構造内に収容されている。これにより、ツイスト線11と、他のツイスト線11又は電線12とを並行状態に保ちつつ、一定の経路に沿って保持できる。これにより、ツイスト線11同士の位置関係、ツイスト線11と電線12との位置関係とを安定化させることができ、この点からも、信号伝送特性を向上させることができる。
【0035】
なお、ツイスト線11及び電線12は、並行状に延在する複数の空間において、隣合う収容空間に収容されていてもよいし、隣合わない収容空間に収容されていてもよい。
【0036】
また、プロテクタ30自体は、板状形態であるため、効率よく保管、輸送することができるという利点がある。また、上記中空板材30Bを適宜切断して、必要に応じた幅、長さのプロテクタ30を製造することができるため、汎用性に優れるという利点もある。
【0037】
{変形例}
上記実施形態を前提として各種変形例について説明する。
【0038】
図4は第1変形例に係る電線モジュール110を示す部分平面図である。本変形例では、プロテクタ30に対応するプロテクタ130において、複数の板状部分32に対応する複数の板状部分132が透明又は半透明を呈する部分とされている。板状部分132は、内部のツイスト線11の撚り具合を確認できる程度に、透明又は半透明を呈していればよい。
【0039】
この変形例によると、透明又は半透明である板状部分132を通じてツイスト線11の撚り具合を確認できる。また、仮にプロテクタ130の端部から端子のみしか出ていないような場合でも、電線11の被覆の色を確認できるため、回路の識別が可能となる。
【0040】
なお、後述するように、プロテクタとしては、3枚以上の板状部分を備える場合が想定され、この場合には、複数の板状部分のうち最も外側に位置するものの少なくとも1つが透明又は半透明を呈していればよい。これにより、少なくとも当該透明又は半透明の板状部分の内側のツイスト線のより具合を確認できるからである。もっとも、全ての板状部分及び介在部分が透明又は半透明を呈していれば、そのさらに内側についてもツイスト線の撚り具合を確認できる。
【0041】
図5は第2変形例に係る電線モジュールに適用されるプロテクタ230を示す斜視図である。このプロテクタ230では、その端部に、ツイスト線11に含まれる電線12のうちの1つを挟込み可能なスリット231が形成されている。ここでは、板状部分32に対応する板状部分232の端縁部を複数の仕切部分36a間の位置で切込むことで、スリット231が形成されている(
図5等では、一部のスリット231を図示)。スリット231は、板状部分232の両端縁部のうちいずれか一方に形成されていればよい。板状部分232自体は樹脂等で形成されある程度弾性変形可能であるため、スリット231を広げるように、板状部分232の端縁部を変形させ、もって、当該スリット231に電線12を挟込んで保持できる。もっとも、スリット231は、所定幅で切除された形状、或は、V字状に切り欠かれたような形状であってもよい。
【0042】
本プロテクタ230を用いると、ツイスト線11の電線12の識別が容易となる。これを、
図6〜
図8を参照して説明する。
【0043】
すなわち、
図6に示すように、ツイスト線11を構成する2つの電線12のうちの1つを、プロテクタ230の1つの収容空間内に挿入し、電線12の両端部を当該収容空間の両側開口から延出させる。そして、電線12の一端部をスリット231に挟込む。また、電線12の他端部については、他の電線12から識別可能なようにしておく。電線12の他端部を識別可能にするためには、当該電線12の他端部にラベルLを取付けておくとよい。あるいは、2つの電線12の他端部を、電線端部保持部材によって保持した状態で、モータ等によって当該電線端部保持部材を回転させて、2つの電線12を撚り合わせる場合には、電線端部保持部材における電線12の端部保持部分に、保持した電線12の端部を識別可能な目印、形状等を付与しておくとよい。
【0044】
次に、
図7に示すように、ツイスト線11を構成する2つの電線12のうちの他の電線12をプロテクタ230の上記収容空間内に挿入する。すると、2つの電線12が1つの収容空間内で並行に延在する状態となる。
【0045】
この後、
図8に示すように、プロテクタ230の収容空間の一方側開口から延出する2つの電線12の端部を公転不能な状態で保持すると共に、当該収容空間内で2つの電線12を撚り合わせるように、当該収容空間の他方側開口から延出する2つの電線12の他端部を公転させる。なお、各個別の電線12は、自己の中心軸周りに回転してもよい。
【0046】
これにより、収容空間内において2つの電線12が撚り合わされたツイスト線11が製造される。そして、ツイスト線11を構成する2つの電線12のうちスリット231に挟込まれている端部に端子を接続し、この端子をコネクタの所定の位置にあるキャビティに挿入する等して、当該コネクタの所定位置に組込む。また、この電線12に対応する他方の端部(ここでは、上記ラベルLが付された端部)に端子を接続し、この端子をコネクタの所定の位置にあるキャビティに挿入する等して、当該コネクタの所定位置に組込む。他の1つの電線12についても、同様の各端部に端子を接続して、この端子をコネクタの所定位置に組込む。
【0047】
このように、ツイスト線11を構成する2つの電線12を互いに区別しつつ、各端部をコネクタの所定位置に組込む作業を実施できることになる。
【0048】
このため、ツイスト線11を構成する2つの電線12として、同色のものを用いた場合であっても、各電線12を区別しつつ電線モジュールを製造することができ、低コストで電線モジュールを製造することができる。もっとも、ツイスト線11を構成する2つの電線12が別々の色を呈していてもよい。
【0049】
また、中空構造を有する板状のプロテクタとしては、上記構成の他、各種構成を採用することができる。
【0050】
図9は第3変形例に係るプロテクタ330を製造するための中空板材330Bを示す一部切欠斜視図である。この中空板材330Bは、複数(ここでは2つ)の板状部分332の間に介在部分336が設けられた構成とされている。
【0051】
介在部分336は、凹凸形状を呈する板状に形成された部材である。かかる介在部分336が、複数の板状部分332の間に挟み込まれた状態で、当該板状部分332の内向き面に接合される。板状部分332と介在部分336との接合は、例えば、接着剤、粘着剤等により行われる。これにより、介在部分336が呈する凹凸形状に応じた中空構造が、複数の板状部分332の間に形成される。
【0052】
ここでは、介在部分336は、山部336aと谷部336bとが波状に連続する形状に形成されている。山部336aの延在方向と谷部336bの延在方向とは、平行な位置関係にあり、従って、介在部分336を平面視すると、複数の山部336aと複数の谷部336bとが交互に並列状に形成された構成とされている。山部336aの頂部と谷部336bの底部とは、湾曲していてもよいし、所定の角度をなして曲っていてもよい。山部336aと谷部336bとのうち板状部分332の間に配設される部分が、並行状に延在する複数の空間を形成する仕切部分となる。
【0053】
そして、介在部分336が複数の板状部分332の間に挟み込まれ、谷部336bの底部の下面と下側の板状部分332とが接合されると共に、山部336aの頂部の上面と上側の板状部分332とが接合されている。
【0054】
この中空板材330Bを、収容対象となるツイスト線11の本数、収容すべき長さ寸法等に応じて適宜切断してプロテクタ330を構成し、各山部336a及び各谷部336bの内側に形成される細長い空間にツイスト線11及び必要に応じて電線12を収容することで、電線モジュールが構成される。
【0055】
このプロテクタ330を備える電線モジュールによっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
図10は第4変形例に係るプロテクタ430を製造するための中空板材430Bを示す一部切欠斜視図であり、
図11は中空板材430Bを示す部分断面図である。この中空板材430Bは、複数(ここでは2つ)の板状部分432の間に介在部分436が設けられた構成とされている。
【0057】
すなわち、介在部分436は、凹凸形状を呈する板状に形成された部材であり、より具体的には、介在部分436の平面視において点在するように複数の突部437が形成された構成とされている。ここでは、介在部分436を平面視した状態において、複数の突部437が縦横に一定間隔で並ぶように形成されている。突部437は、介在部分436のうち平板状に延在する基板部438より一方主面側に突出するように形成されており、筒の上端部が閉じられた形状を呈している。ここでは、突部437は、上方に向けて徐々に狭まる形状、即ち、錐台形状に形成されている。突部437は、円錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台形状に形成されていてもよいし、角錐台の角を丸めた形状に形成されていてもよい。
【0058】
そして、介在部分436が複数の板状部分432の間に挟み込まれ、基板部438の下面が下側の板状部分432に接合され、突部437の頂部が上側の板状部分432に接合されている。
【0059】
この中空板材430Bを、収容対象となるツイスト線11の本数、収容すべき長さ寸法等に応じて適宜切断してプロテクタ430を構成し、各突部437間の空間にツイスト線11及び必要に応じて電線12を収容することで、電線モジュールが構成される。
【0060】
なお、第4変形例を、
図12に示す第5変形例のように変更してもよい。この中空板材530Bでは、介在部分536として、上記介在部分436を2つ組合わせたものが用いられる。すなわち、下側の板状部分432の上面に介在部分436の基板部438が接合されており、その上方に突部437が突出している。また、上側の板状部分432の下面に介在部分436の基板部438が接合されており、その下方に突部437が突出している。そして、複数の突部437の頂部同士が接合されることで、2つの板状部分432の間に、2つの介在部分436が組合わされた介在部分536が介在している。
【0061】
このような構成の中空板材430B、530Bによって構成されるプロテクタ430を備える電線モジュールによっても、仕切部分36a等を形成することによる作用効果を除いて、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0062】
また、上記実施形態等では、1つのプロテクタ30を備える電線モジュール10に係る構成を説明したが、電線モジュールは、複数のプロテクタを備えていてもよい。
【0063】
図13に示す第6変形例に係る電線モジュール610では、複数のツイスト線11及び複数の電線12の延在方向中間部が共通する1つのプロテクタ630Aによって収容されている。当該プロテクタ630Aの一端部(
図13の左側)から延出する複数のツイスト線11が他のプロテクタ630Bによって収容され、残りの複数の電線12がプロテクタによって保護されることなく外部に延出している。また、プロテクタ630Bの他端部(
図13の右側)から延出する一部のツイスト線11と一部の電線12とがさらに他のプロテクタ630Cによって収容され、残りのツイスト線11と残りの電線12とがさらに他のプロテクタ630Dによって収容される。なお、複数のツイスト線11及び複数の電線12の端部には、コネクタ650が接続され、当該コネクタ650が車両における電気部品にコネクタ接続される。なお、電線モジュールは、ツイスト線を収容しないプロテクタを含んでいてもよい。
【0064】
これにより、複数のツイスト線11を分岐させたり、また、プロテクタが無い箇所で曲げたりして、電線モジュールを容易に車両に配設することができる。
【0065】
なお、上記実施形態及び各変形例において、板状部分が3枚以上設けられていてもよい。この場合、板状部分の各間に介在部分が設けられていることが好ましい。
【0066】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0067】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。