【解決手段】 ワイヤリール28から繰り出されるワイヤ891を送り出す送給ローラ21A,21Bと、緩衝機構25と、を備え、緩衝機構25は、ワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでのワイヤ891の長さである部分経路長L1が変動している間、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持する。
前記緩衝機構は、前記ループの面積が大きくなるように、前記複数の掛け部の少なくともいずれかに対し力を与える力付与部材を含む、請求項10ないし請求項15のいずれかに記載の送給機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より安定してワイヤを送給できる送給機構を提供することをその主たる課題とする。
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、バッファ量を大きくできる送給機構を提供することをその主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、ワイヤ供給源から繰り出されるワイヤを送り出す送給ローラと、緩衝機構と、を備え、前記緩衝機構は、前記ワイヤ供給源から前記送給ローラまでの前記ワイヤの長さである部分経路長が変動している間、前記ワイヤのうち前記ワイヤ供給源から前記送給ローラまでの部分が緊張している状態を維持する、ワイヤの送給機構が提供される。
【0008】
好ましくは、前記ワイヤ供給源は、ワイヤが巻かれたワイヤリールであり、ワイヤが巻かれたワイヤリールを回転自在に保持する保持部材を更に備える。
【0009】
好ましくは、前記保持部材に保持されたワイヤリールは、前記送給ローラによって引っ張られたワイヤからの力によってのみ回転させられる。
【0010】
好ましくは、前記ワイヤ供給源は、パックワイヤである。
【0011】
好ましくは、前記送給ローラおよび前記保持部材は、互いに相対的に固定された位置関係にある。
【0012】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記ワイヤを掛けるための掛け部を含み、前記掛け部は、前記送給ローラおよび前記保持部材に対して相対移動可能である。
【0013】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記部分経路長が大きくなるように、前記掛け部に対し力を与える力付与部材を含む。
【0014】
好ましくは、前記力付与部材は、弾性力、重力、または、ガス圧力を利用して、前記掛け部に対し力を与える。
【0015】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記ワイヤがループをなしている状態で前記ワイヤを保持し、前記部分経路長の変化に応じて、前記ループの面積が変化する。
【0016】
好ましくは、前記緩衝機構は、基体と、前記ワイヤを掛けるための複数の掛け部と、を含み、前記複数の掛け部の少なくともいずれか1つは、前記基体に対し相対移動可能に支持されている。
【0017】
好ましくは、前記複数の掛け部のうちの複数個が、前記基体に対し相対移動可能に支持されている。
【0018】
好ましくは、前記複数の掛け部のうちある掛け部が前記ループの中心に接近する方向に移動した場合、他の掛け部は、前記ループの中心に接近する方向に移動し、前記複数の掛け部のうちある掛け部が前記ループの中心から離間する方向に移動した場合、他の掛け部は、前記ループの中心から離間する方向に移動する。
【0019】
好ましくは、前記複数の掛け部は、前記ループの周方向において互いに異なる位置に位置している。
【0020】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記基体に対して相対運動可能に支持された複数の支持部材を含み、前記複数の支持部材はそれぞれ、前記複数の掛け部を支持している。
【0021】
好ましくは、前記複数の支持部材はいずれも、前記基体に対して回動可能に支持されている。
【0022】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記ループの面積が大きくなるように、前記複数の掛け部の少なくともいずれかに対し力を与える力付与部材を含む。
【0023】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記複数の掛け部の動作を同期させる連結部材を含む。
【0024】
好ましくは、前記連結部材は、ベルト、あるいは、連結用ワイヤである。
【0025】
好ましくは、前記緩衝機構は、らせん状に巻かれた状態に前記ワイヤを保持する。
【0026】
好ましくは、前記緩衝機構は、らせん形状を構成する複数のループが互いに重なっている状態を維持しつつ、前記ループの面積を変化させる。
【0027】
本発明の第2の側面によると、ワイヤを送り出す第1送給ローラと、前記第1送給ローラよりもワイヤの送給方向前方に位置し、前記ワイヤを送り出す第2送給ローラと、前記ワイヤの送給経路において、前記第1送給ローラおよび前記第2送給ローラの間に配置された緩衝機構と、を備え、前記緩衝機構は、前記ワイヤのうち前記第1送給ローラから前記第2送給ローラまでの部分が緊張している状態を維持する、ワイヤの送給機構が提供される。
【0028】
本発明の第3の側面によると、ワイヤを送り出す第1送給ローラと、前記第1送給ローラよりもワイヤの送給方向前方に位置し、前記ワイヤを送り出す第2送給ローラと、前記ワイヤの送給経路において、前記第1送給ローラおよび前記第2送給ローラの間に配置された緩衝機構と、を備え、前記緩衝機構は、らせん状に巻かれた状態に前記ワイヤを保持する、ワイヤの送給機構が提供される。
【0029】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記第1送給ローラから前記第2送給ローラまでの前記ワイヤの長さである部分経路長が変動している間、前記ワイヤのうち前記第1送給ローラから前記第2送給ローラまでの部分が緊張している状態を維持する。
【0030】
好ましくは、前記緩衝機構は、らせん形状を構成する複数のループが互いに重なっている状態を維持しつつ、前記ループの面積を変化させる。
【0031】
好ましくは、前記緩衝機構は、基体と、前記ワイヤを掛けるための複数の掛け部と、を含み、前記複数の掛け部の少なくともいずれか1つは、前記基体に対し相対移動可能に支持されている。
【0032】
好ましくは、前記複数の掛け部のうちの複数個が、前記基体に対し相対移動可能に支持されている。
【0033】
好ましくは、前記複数の掛け部のうちある掛け部が前記ループの中心に接近する方向に移動した場合、他の掛け部は、前記ループの中心に接近する方向に移動し、前記複数の掛け部のうちある掛け部が前記ループの中心から離間する方向に移動した場合、他の掛け部は、前記ループの中心から離間する方向に移動する。
【0034】
好ましくは、前記複数の掛け部は、前記ループの周方向において互いに異なる位置に位置している。
【0035】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記基体に対して相対運動可能に支持された複数の支持部材を含み、前記複数の支持部材はそれぞれ、前記複数の掛け部を支持している。
【0036】
好ましくは、前記複数の支持部材はいずれも、前記基体に対して回動可能に支持されている。
【0037】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記ループの面積が大きくなるように、前記複数の掛け部の少なくともいずれかに対し力を与える力付与部材を含む。
【0038】
好ましくは、前記緩衝機構は、前記複数の掛け部の動作を同期させる連結部材を含む。
【0039】
好ましくは、前記連結部材は、ベルト、あるいは、連結用ワイヤである。
【0040】
本発明の第4の側面によると、本発明の第1の側面あるいは第2の側面によって提供される送給機構と、前記送給機構によって送給されたワイヤを用いてアーク処理を行うロボットと、を備える、アークシステムが提供される。
【0041】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0044】
<第1実施形態>
図1〜
図8を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0045】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるアークシステムの正面図である。
【0046】
同図に示すアークシステムA1は、ロボット1と、ワイヤの送給機構2と、を備える。
【0047】
ロボット1は母材Wに対してアーク処理を行う。このようなアーク処理としては、たとえば、溶接および溶射が挙げられる。本実施形態では、ロボット1は、母材Wに対して自動でアーク溶接を行う。ロボット1は、たとえば多関節ロボットである。ロボット1は、送給機構2によって供給されたワイヤ891を用いてアーク処理を行う。なお、アーク処理を行う際には、ロボット1を必ずしも用いる必要はない。
【0048】
送給機構2は、母材Wに向かってワイヤ891を送給するためのものである。
【0049】
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図3は、本発明の第1実施形態にかかる送給機構を模式的に示す図である。
【0050】
送給機構2は、支持体20(
図2参照)と、送給ローラ21A,21Bと、駆動部24と、緩衝機構25と、保持部材27と、を含む。
【0051】
図2に示す支持体20は、たとえば金属よりなるフレームである。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、支持体20は底板および側板等を有する。各側板は、底板に立設されている。
【0052】
図2に示す保持部材27は、ワイヤ891が巻かれたワイヤリール28を保持するためのものである。保持部材27は、ワイヤ891が巻かれたワイヤリール28を回転自在に保持する。保持部材27は、支持体20に支持されている。
【0053】
ワイヤリール28(ワイヤ供給源)は、
図3の時計周りに回転しながらワイヤ891を繰り出すことができる。ワイヤリール28は、ワイヤ891の送り出しを停止する際に速やかに回転を停止させるために、摩擦等による一定の制動がかかっている。この制動力は、ワイヤリール28が一定の速度で回転するときには、送給ローラ21A,21Bがワイヤ891を引っ張る力と同一の大きさとなっている。保持部材27に保持されたワイヤリール28は、送給ローラ21Aによって引っ張られたワイヤ891からの力によってのみ回転させられる。すなわち、保持部材27に保持されたワイヤリール28は、ワイヤリール28用のモータによって回転させられるものではない。
【0054】
図3に示す送給ローラ21A,21Bは、少なくともいずれか一方が駆動部24(モータ)によって駆動される。送給ローラ21A,21B間にワイヤ891を挟みこんだ状態で、送給ローラ21A,21Bは互いに逆回転をする。これにより、送給ローラ21A,21Bは、ワイヤリール28から繰り出されるワイヤ891を送給方向前方F1に送り出す。本実施形態では、送給ローラ21A,21Bおよび保持部材27は、互いに相対的に固定された位置関係にある。
【0055】
なお、送給ローラ21A,21Bおよび保持部材27(ワイヤリール28、すなわちワイヤ供給源)は、互いに相対的に固定された位置関係にある必要は必ずしもない。送給ローラ21A,21Bは、保持部材27(ワイヤリール28、すなわちワイヤ供給源)に対し相対移動可能となっていてもよい。また、本実施形態では、送給ローラ21A,21Bはプッシュ装置におけるものであるが、本実施形態とは異なり、送給ローラ21A,21Bはプル装置におけるものであってもよい。
【0056】
図3に示す緩衝機構25は、部分経路長L1が変動している間、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持する。部分経路長L1は、ワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでのワイヤ891の長さである。
【0057】
本実施形態においては、緩衝機構25は、ワイヤ891がループR1をなしている状態で、ワイヤ891を保持する。そして、緩衝機構25は、ループR1の面積を変更させる。本実施形態においては更に、緩衝機構25は、らせん状に巻かれた状態にワイヤ891を保持する。緩衝機構25は、らせん形状を構成する複数のループR1が互いに重なっている状態を維持しつつ、ループR1の面積を変化させる。
【0058】
図4は、
図3に示した緩衝機構を示す正面図である。
図5は、
図4に示した緩衝機構の使用状態を示す正面図である。
図6は、
図4のVI−VI線に沿う部分断面図である。
図7は、
図4のVII−VII線に沿う部分断面図である。
【0059】
緩衝機構25は、基体41と、複数の掛け部(第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424)と、複数の軸(第1軸441と、第2軸442と、第3軸443と、第4軸444)と、複数の支持部材(第1支持部材451と、第2支持部材452と、第3支持部材453)と、複数の連結部材(第1連結部材461A,461Bと、第2連結部材462A,462B)と、力付与部材47と、を有する。
【0060】
図3〜
図7に示す第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424とはいずれも、ワイヤ891を掛けるためのものである。第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424とは、ループR1の周方向D1において互いに異なる位置に位置している。本実施形態では、第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424とはいずれも、ワイヤ891がループ状を維持するように、ワイヤ891を保持する。各掛け部は、ワイヤ891によって形成されるループR1の内側に位置する。
【0061】
第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424とはいずれも、ワイヤ891がスムーズに送給されるように構成されている。本実施形態では、第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424とはいずれも、たとえば、滑車である。そして、第1掛け部421は、第1軸441を中心に回転可能に支持されている。同様に、第2掛け部422は、第2軸442を中心に回転可能に支持されている。同様に、第3掛け部423は、第3軸443を中心に回転可能に支持されている。同様に、第4掛け部424は、第4軸444を中心に回転可能に支持されている。
【0062】
図3、
図6、
図7等に示すように、本実施形態では、らせん状に巻かれた状態にワイヤ891を保持するべく、第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423と、第4掛け部424はそれぞれ複数設けられている。例えば、本実施形態では、ワイヤ891は5重の螺旋状であるので、第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423とはそれぞれ、5つずつ設けられている。第4掛け部424は6つ設けられている。複数の第1掛け部421は、第1軸441に支持されている。同様に、複数の第2掛け部422は、第2軸442に支持されている。同様に、複数の第3掛け部423は、第3軸443に支持されている。同様に、複数の第4掛け部424は、第4軸444に支持されている。
【0063】
緩衝機構25においては、送給方向前方F1に沿って言う場合、ワイヤ891は、第4掛け部424、第3掛け部423、第1掛け部421、第2掛け部422、第4掛け部424・・・第2掛け部422、第4掛け部424の順で、掛け回されている。
【0064】
図4等に示す第1支持部材451と、第2支持部材452と、第3支持部材453はいずれも、本実施形態では角柱状の部材である。第1支持部材451と、第2支持部材452と、第3支持部材453はいずれも、基体41に対し相対運動可能に支持されている。本実施形態では、第1支持部材451と、第2支持部材452と、第3支持部材453はいずれも、基体41に対し回動可能に支持されている。具体的には、第1支持部材451は第1回動軸451Aを軸として回動し、第2支持部材452は第2回動軸452Aを軸として回動し、第3支持部材453は第3回動軸453Aを軸として回動する。
【0065】
図4、
図6に示すように、第1支持部材451は、第1軸441を介して、第1掛け部421を回動可能に支持している。第1支持部材451が運動(回動)することにより、第1掛け部421が方向X11や方向X12に移動する。同様に、
図4、
図7に示すように、第2支持部材452は、第2軸442を介して、第2掛け部422を回動可能に支持している。第2支持部材452が運動(回動)することにより、第2掛け部422が方向X21や方向X22に移動する。同様に、第3支持部材453は、第3軸443を介して、第3掛け部423を回動可能に支持している。第3支持部材453が運動(回動)することにより、第3掛け部423が方向X31や方向X32に移動する。
【0066】
図4等に示す第1連結部材461A,461Bと、第2連結部材462A,462Bは、複数の掛け部421〜423の動作を同期させるためのものである。第1連結部材461A,461Bと、第2連結部材462A,462Bは、たとえば、ベルト、または、連結用のワイヤである。
【0067】
第1連結部材461A,461Bは、それぞれ、滑車781,782に掛け回された状態で、第1支持部材451および第2支持部材452を連結している。第1支持部材451が方向X11に回動したとき、第2支持部材452は、第1連結部材461Aに引っ張られ、方向X21に回動する。逆に、第1支持部材451が方向X12に回動したとき、第2支持部材452は、第1連結部材461Bに引っ張られ、方向X22に回動する。
【0068】
第2連結部材462Bは直接、第2支持部材452および第3支持部材453を連結している。第2連結部材462Aは、滑車782に掛け回された状態で、第2支持部材452および第3支持部材453を連結している。第2支持部材452が方向X21に回動したとき、第3支持部材453は、第2連結部材462Aに引っ張られ、方向X31に回動する。逆に、第2支持部材452が方向X22に回動したとき、第3支持部材453は、第2連結部材462Bに引っ張られ、方向X32に回動する。
【0069】
図5に示すように、ある掛け部(たとえば第1掛け部421)がループR1の中心C1に接近する方向(方向X11)に移動した場合、他の掛け部(たとえば第2掛け部422および第3掛け部423)は、ループR1の中心C1に接近する方向(方向X21,X31)に移動する。一方、ある掛け部(たとえば第1掛け部421)がループR1の中心C1から離間する方向(方向X12)に移動した場合、他の掛け部(たとえば第2掛け部422および第3掛け部423)は、ループR1の中心C1から離間する方向(方向X22,X32)に移動する。このようにして、複数の掛け部(第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423)の動作が同期される。
【0070】
本実施形態では、第1掛け部421の移動ストロークの大きさは、第2掛け部422や第3掛け部423の移動ストロークの大きさよりも、大きく、2倍である。これは、重力によるワイヤ891の垂れを考慮したためである(
図4では、図下方が重力方向下方である)。本実施形態とは異なり、第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423の各々の移動ストロークの大きさは、互いに同一でもよい。
【0071】
力付与部材47は、ループR1の面積が大きくなるように、複数の掛け部(第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423)の少なくともいずれかに対し力を与える。すなわち、力付与部材47は、部分経路長L1が長くなるように、複数の掛け部(第1掛け部421と、第2掛け部422と、第3掛け部423)の少なくともいずれかに対し力を与える。本実施形態では、
図4に示すように、力付与部材47は、基体41および第1支持部材451に連結されている。そして、力付与部材47は、第1支持部材451を介して第1掛け部421に力を与える。力付与部材47は、第1支持部材451と第2支持部材452とを介して、第2掛け部422に力を与える。力付与部材47は、第1支持部材451と第2支持部材452と第3支持部材453とを介して、第3掛け部423に力を与える。本実施形態では、力付与部材47はコイルばねである。本実施形態とは異なり、力付与部材47は、ゴムなどの弾性部材であってもよい。または、力付与部材47は、重力やガス圧力を利用して、第1掛け部421等に対し力を与えるものであってもよい。
【0072】
次に、緩衝機構25の動作について説明する。
【0073】
<ワイヤ891の送給停止時>
図8(a)に示すように、ワイヤ891の送給停止時には、まず、時刻t1において、送給ローラ21A,21Bの回転速度の減少が開始し、時刻t2において、送給ローラ21A,21Bの回転が停止する。その結果、時刻t2において、送給ローラ21A,21Bによるワイヤ891の送給が停止する。しかしながら、同図(a)にて点線で示すように、時刻t2において送給ローラ21A,21Bの回転が停止した後も、慣性によってワイヤリール28はしばらく回転を続ける。そして、その後の時刻t3において、ワイヤリール28の回転が停止し、ワイヤリール28からのワイヤ891の送り出しが停止する。よって、同図(b)に示すように、時刻t3においてワイヤリール28が回転を停止した時には、送給ローラ21A,21Bと、ワイヤリール28の間の部分経路長L1は、アーク処理の定常時の値(時刻t1以前)よりも大きくなる。そのため、ループR1の面積は、アーク処理の定常時の値よりも大きくなっている。
【0074】
<ワイヤ891の送給開始時>
次に、同図(a)に示すように、時刻t4において、送給ローラ21A,21Bの回転を開始し、送給ローラ21A,21Bによるワイヤ891の送給を開始する。ワイヤ891の送給開始時には、同図(b)に示すように、部分経路長L1は、時刻t3時点の値のままである。上述のように、緩衝機構25は、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持している。そのため、同図(a)にて点線で示すように、送給ローラ21A,21Bの回転の開始と同時(時刻t4)に、ワイヤリール28が、ワイヤ891から力を受け、回転を開始する。このようにして、ワイヤリール28によるワイヤ891の送り出しが開始する。同図(b)に示すように、時刻t4〜時刻t5の間、送給ローラ21A,21Bにワイヤ891が引っ張られることにより、部分経路長L1が徐々に小さくなる。このとき、ループR1の面積も、徐々に小さくなっている。そして、時刻t5において、ワイヤリール28によるワイヤ891の送り出し速度が、送給ローラ21A,21Bによるワイヤ891の送給速度と同一になると、部分経路長L1は変動しなくなり、ループR1の面積は一定に保たれる。そして、時刻t5以降、所望のアーク処理が行われる。
【0075】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0076】
本実施形態においては、緩衝機構25は、部分経路長L1が変動している間、ワイヤ891のうちワイヤリール28(ワイヤ供給源)から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持する。このような構成によると、送給ローラ21A,21Bの回転開始時からワイヤ891をすべりなく加速させ、安定して送給することができる。特に、本実施形態においては、送給ローラ21A,21Bの回転の開始時において、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態とすることができる。そうすると、送給ローラ21A,21Bの回転が開始すると即座に、ワイヤリール28の回転を開始することができる。よって、送給ローラ21A,21Bの回転中に、ワイヤリール28の回転が開始することを防止できる。そのため、送給ローラ21A,21Bの回転中に、送給方向前方F1とは反対方向の力がワイヤ891に対し急に付与されることを、回避できる。したがって、送給ローラ21A,21Bの回転中に、送給ローラ21A,21Bと、ワイヤ891との間にすべりが生じることを防止できる。その結果、送給ローラ21A,21Bの回転開始時からワイヤ891をすべりなく加速させ、安定して送給することができる。
【0077】
本実施形態では、ワイヤ供給源の一例として、ワイヤ891が巻かれたワイヤリール28を示したが、本実施形態とは異なり、ワイヤ供給源として、パックワイヤを用いてもよい。
【0078】
送給ローラ21A,21Bと、ワイヤ891との間にすべりが生じることを防止できることにより、司令速度に応じたワイヤ891の送給速度を得ることが可能となる。また、本実施形態の構成によると、ワイヤリール28の回転速度の立ち上げ時間を延ばすことができ、送給ローラ21A,21Bにかかる負荷を低減することができる。
【0079】
本実施形態においては、緩衝機構25は、ワイヤ891がループR1をなしている状態で、ワイヤ891を保持する。緩衝機構25は、ループR1の面積を変更させる。このような構成によると、部分経路長L1が変化した場合に、ワイヤ891が変形してしまうことを防止可能である。
【0080】
本実施形態においては、複数の掛け部(第1掛け部421と第2掛け部422と第3掛け部423)が、基体41に対し相対移動可能に支持されている。緩衝機構25は、複数の掛け部(第1掛け部421と第2掛け部422と第3掛け部423)の動作を同期させる第1連結部材461A,461Bおよび第2連結部材462A,462Bを含む。このような構成によると、部分経路長L1が変化した場合に、ワイヤ891が変形してしまうことを、より好適に防止することができる。
【0081】
なお、本実施形態とは異なり、第1掛け部421のみが基体41に対し相対移動可能に支持されていてもよい。あるいは、第1掛け部421と第2掛け部422と第3掛け部423と第4掛け部424のいずれもが、基体41に対し相対移動可能に支持されていてもよい。
【0082】
本実施形態においては、緩衝機構25は、らせん状に巻かれた状態にワイヤ891を保持する。このような構成によると、部分経路長L1の変動可能量を、より大きくすることが可能となる。これにより、定常時にワイヤリール28が非常に高速で回転していたとしても、ワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を保ちつつ、緩衝機構25がワイヤ891を保持することが可能となる。このことは、送給ローラ21A,21Bによる高速送給に好適である。また、部分経路長L1の変動可能量がより大きい本実施形態の構成によると、ワイヤリール28の回転を停止するための摩擦等による制動力を小さくすることが、可能である。このことは、ワイヤリール28の回転負荷の低減に適する。その結果、ワイヤ891の安定送給が可能となる。
【0083】
<第1実施形態の第1変形例>
図9を用いて、本発明の第1実施形態の第1変形例について説明する。
【0084】
なお、以下の説明では、上記と同一または類似の構成については上記と同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0085】
図9は、本発明の第1実施形態の第1変形例にかかる送給機構を模式的に示す図である。
【0086】
本変形例は、送給機構2における緩衝機構25の構成が、上述の実施形態におけるものと異なっている。本変形例では、緩衝機構25は、基体51と、掛け部52と、軸54と、支持部材55と、力付与部材57と、を有する。
【0087】
本変形例においても、緩衝機構25は、部分経路長L1(
図9では図示していない。第1実施形態と同義)の長さが変動している間、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持する。
【0088】
本変形例においては、リンク機構によって、掛け部52を移動させる。具体的には、以下の通りである。
【0089】
掛け部52は、ワイヤ891を掛けるためのものである。掛け部52はワイヤ891がスムーズに送給されるように構成されている。本実施形態では、掛け部52は、たとえば、滑車である。そして、掛け部52は、軸54を中心に回転可能に支持されている。掛け部52は、送給ローラ21A,21Bおよび保持部材27に対して相対移動可能である。
【0090】
支持部材55は基体51に対し相対運動可能に支持されている。本実施形態では、支持部材55は、基体51に対し回動可能に支持されている。具体的には、支持部材55は回動軸55Aを軸として回動する。
【0091】
支持部材55は、軸54を介して、掛け部52を回動可能に支持している。支持部材55が運動(回動)することにより、掛け部52が方向X11や方向X12に移動する。
【0092】
力付与部材57は、掛け部52に対し力を与える。力付与部材57は、部分経路長L1が長くなるように、掛け部52に対し力を与える。力付与部材57は、弾性力を利用して、掛け部52に対し力を与える。本実施形態では、力付与部材57はコイルばねである。本実施形態とは異なり、力付与部材57は、ゴムなどの弾性部材であってもよい。
図9に示すように、力付与部材57は、基体51および支持部材55に連結されている。
【0093】
本変形例においては、緩衝機構25は、部分経路長L1が変動している間、ワイヤ891のうちワイヤリール28から送給ローラ21A,21Bまでの部分が緊張している状態を維持する。このような構成によると、上述したのと同様に、送給ローラ21A,21Bの回転開始時からワイヤ891をすべりなく加速させ、安定して送給することができる。
【0094】
<第1実施形態の第2変形例>
図10を用いて、本発明の第1実施形態の第2変形例について説明する。
【0095】
図10は、本発明の第1実施形態の第2変形例にかかる送給機構を模式的に示す図である。
【0096】
本変形例は、緩衝機構25の構成が、上述の第1変形例におけるものと異なっている。本変形例では、掛け部52を支持している支持部材55aが、X11−X12方向に並進移動可能となっている。本変形例においても、力付与部材57が掛け部52に対し力を与えることは、上述の第1変形例と同様である。このような構成によっても、上述の第1変形例と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0097】
<第1実施形態の第3変形例>
図11を用いて、本発明の第1実施形態の第3変形例について説明する。
【0098】
図11は、本発明の第1実施形態の第3変形例にかかる送給機構を模式的に示す図である。
【0099】
本変形例は、緩衝機構25における力付与部材57が重りである点において、上述の第1変形例や第2変形例とは異なる。力付与部材57(重り)は、滑車784に掛け回された紐やベルトを介して、掛け部52に連結されている。そして、部分経路長L1が長くなるように、掛け部52には、力が与えられている。このような構成によっても、上述の第1変形例と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0100】
<第1実施形態の第4変形例>
図12を用いて、本発明の第1実施形態の第4変形例について説明する。
【0101】
図12は、本発明の第1実施形態の第4変形例にかかる送給機構を模式的に示す図である。
【0102】
本変形例は、らせん形状を構成する複数のループR1が互いに重なっている状態で、ワイヤ891が掛け部52に掛け回されている点において、上述の第1変形例とは異なる。本変形例では、緩衝機構25は、らせん形状を構成する複数のループR1が互いに重なっている状態を維持しつつ、ループR1の面積を変化させる。ループR1の面積を変化させて、部分経路長L1を変化させることは、第1実施形態にて説明したとおりである。このような構成によっても、上述の第1変形例と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0103】
本実施形態においては、緩衝機構25は、らせん状に巻かれた状態にワイヤ891を保持する。このような構成によると、部分経路長L1の変動可能量を、より大きくすることが可能となる。このような構成は、第1実施形態で述べたのと同様に、送給ローラ21A,21Bによる高速送給に好適であり、また、ワイヤ891の安定送給に資する。
【0104】
<第2実施形態>
図13〜
図14を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0105】
図13は、本発明の第2実施形態にかかる送給機構を模式的に示す図である。
図14は、
図13に示した緩衝機構を示す正面図である。
【0106】
本実施形態の送給機構2は、第1送給ローラ22A,22Bと、第2送給ローラ23A,23Bと、駆動部241,242と、緩衝機構25と、保持部材27と、を含む。なお、送給機構2は、
図1等に示したロボット1とともに用いることが可能である。
【0107】
保持部材27は、第1実施形態の説明を適用できるから、説明を省略する。
【0108】
第1送給ローラ22A,22Bは、少なくともいずれか一方が駆動部241(モータ)によって駆動される。第1送給ローラ22A,22B間にワイヤ891を挟みこんだ状態で、第1送給ローラ22A,22Bは互いに逆回転をする。これにより、第1送給ローラ22A,22Bは、ワイヤリール28から繰り出されるワイヤ891を送給方向前方F1に送り出す。
【0109】
第2送給ローラ23A,23Bは、第1送給ローラ22A,22Bよりも、ワイヤ891の送給方向前方F1に位置する。第2送給ローラ23A,23Bは、少なくともいずれか一方が駆動部242(モータ)によって駆動される。第2送給ローラ23A,23B間にワイヤ891を挟みこんだ状態で、第2送給ローラ23A,23Bは互いに逆回転をする。これにより、第2送給ローラ23A,23Bは、第1送給ローラ22A,22Bから送られたワイヤ891を送給方向前方F1に送り出す。
【0110】
緩衝機構25は、ワイヤ891のバッファ機構として機能する。緩衝機構25は、ワイヤ891の送給経路P1において、第1送給ローラ22A,22Bおよび第2送給ローラ23A,23Bの間に配置されている。第1送給ローラ22A,22Bによって送られたワイヤ891は、緩衝機構25に蓄えられ、その後、第2送給ローラ23A,23Bに向かう。緩衝機構25は、部分経路長L2が変動している間、ワイヤ891のうち第1送給ローラ22A,22Bから第2送給ローラ23A,23Bまでの部分が緊張している状態を維持する。また、本実施形態では、緩衝機構25は、力付与部材47を有していない。
【0111】
なお、緩衝機構25のその他の説明は、第1実施形態で述べた説明を適用できるから、本実施形態では説明を省略する。
【0112】
第1送給ローラ22A,22Bによるワイヤ891の送給速度よりも第2送給ローラ23A,23Bによるワイヤ891の送給速度が小さい場合には、ループR1の面積が大きくなる(すなわち、部分経路長L2が大きくなる)。逆に、第2送給ローラ23A,23Bによるワイヤ891の送給速度が第1送給ローラ22A,22Bによるワイヤ891の送給速度よりも大きい場合には、ループR1の面積が小さくなる(すなわち部分経路長L2が小さくなる)。部分経路長L2は常時監視され、第1送給ローラ22A,22Bによる送給速度を調整するなどして、部分経路長L2が一定するように制御される。
【0113】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0114】
本実施形態によっても、第1実施形態で述べたのと同様に、ワイヤ891のすべりを防止でき、ワイヤ891を安定して送給することができる。
【0115】
本実施形態においては、バッファ機構たる緩衝機構25は、らせん状に巻かれた状態にワイヤ891を保持する。このような構成によると、部分経路長L2の変動可能量を、より大きくすることが可能となる。これは、緩衝機構25のバッファ量を大きくできることを意味する。したがって、高速にワイヤ891を送給するアーク処理(溶接や溶射)や、急激なワイヤ891の速度変化に対応することができる。また、アーク処理中にてワイヤ891切れが生じることを防止できる。また、緩衝機構25は、コンパクトであり、シンプルであり、低コストであるが、高品位なアーク処理が実現される。
【0116】
本実施形態では、ワイヤリール28に巻かれたワイヤ891を用いる例を示したが、本実施形態とは異なり、パックワイヤを用いてもよい。
【0117】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。