【解決手段】複数の不織布が積層された不織布積層体から構成される遮音材であって、前記不織布が表皮材不織布と該表皮材不織布よりも目付の大きい基材不織布とを有し、少なくとも、前記基材不織布が第一基材不織布31と第二基材不織布32を有し、前記表皮材不織布2を前記第一基材不織布31と前記第二基材不織布32の間に配置して遮音材1を構成し、該遮音材1をワイヤーハーネス7と一体化して遮音材付きワイヤーハーネス6を構成した。
前記ワイヤーハーネスが、前記不織布の間に挟まれた状態で、前記遮音材と前記ワイヤーハーネスが一体化されていることを特徴とする請求項4記載の遮音材付きワイヤーハーネス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に自動車等の車両用では、外部の騒音を遮断して室内の静粛性を向上させて、室内の環境を快適にすることが望ましい。そのため、従来の吸音性能を有する吸音材以外に、遮音性能が優れた遮音材が要求されている。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、遮音性能の優れた遮音材、及び遮音材付きワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遮音材は、
複数の不織布が積層された不織布積層体から構成される遮音材であって、
前記不織布が表皮材不織布と該表皮材不織布よりも目付の大きい基材不織布とを有し、
少なくとも、前記基材不織布が第一基材不織布と第二基材不織布を有し、前記表皮材不織布が前記第一基材不織布と前記第二基材不織布の間に配置されていることを要旨とするものである。
【0007】
上記遮音材において、少なくとも前記不織布積層体の最表面の一面に、前記表皮材不織布とは別の表皮材不織布を有することが好ましい。
【0008】
上記遮音材において、前記表皮材不織布の目付が10〜100g/m
2の範囲内であり、前記基材不織布の目付が100〜600g/m
2の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明の遮音材付きワイヤーハーネスは、上記の遮音材とワイヤーハーネスが一体化されていることを要旨とするものである。
【0010】
上記遮音材付きワイヤーハーネスにおいて、上記の遮音材が前記不織布の間に挟まれた状態で、前記遮音材と前記ワイヤーハーネスが一体化されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遮音材は、複数の不織布が積層された不織布積層体から構成される遮音材であって、前記不織布が表皮材不織布と該表皮材不織布よりも目付の大きい基材不織布とを有し、少なくとも、前記基材不織布が第一基材不織布と第二基材不織布を有し、前記表皮材不織布が前記第一基材不織布と前記第二基材不織布の間に配置されている構成を有することにより、低周波から高周波まで幅広い周波数の音を遮音することが可能である。
【0012】
また本発明の遮音材付きワイヤーハーネスは、上記の遮音材とワイヤーハーネスが一体化されている構成を採用したことにより、低周波から高周波まで幅広い周波数の音を遮音することが可能な遮音材をワイヤーハーネスと別に取り付ける手間を省くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の遮音材の一例を示す外観斜視図であり、
図2は
図1のA−A線縦断面図である。
図1及び
図2に示す遮音材1は、複数の不織布が積層された不織布積層体から構成されている。
【0015】
図1及び
図2に示すように遮音材1は、表皮材不織布2と該表皮材不織布2よりも目付の大きい基材不織布3とを有している。基材不織布3は、第一基材不織布31と、第二基材不織布32の2枚の不織布が用いられる。表皮材不織布2は、第一基材不織布31と、第二基材不織布32の間に配置されている。
【0016】
第一基材不織布31又は第二基材不織布32等の基材不織布3は、表皮材不織布2よりも目付が大きく形成されている。
図1の態様の遮音材において、第一基材不織布31及び第二基材不織布32は、同一の構成の基材不織布3を用いた。このように第一基材不織布31及び第二基材不織布32の目付は、同じであっても良いが、異なっていても良い。第一基材不織布31及び第二基材不織布32の目付が異なる場合は、目付の小さい方の基材不織布が、表皮材不織布2よりも目付が大きければよい。
【0017】
遮音材1は、基材不織布3(31、32)と表皮材不織布2の目付が異なり、2枚の基材不織布31、32の間に表皮材不織布2が配置されている構成により、優れた遮音効果が得られる。
【0018】
遮音材を構成する各不織布は、単に重ね合わせただけでも良いし、熱融着、接着等により一体化させても、いずれでもよい。好ましくは、熱溶着やニードルパンチ等である。
【0019】
また、各不織布の間は密着していても、或いは多少の空間が設けられていても、いずれでもよい。
【0020】
図3は、本発明遮音材の他の例を示す断面図である。遮音材1は
図2に示す第一基材不織布31、表皮材不織布2(第一表皮材不織布21)、第二基材不織布32が順次積層されている不織布積層体の最表面に、
図3に示すように、更に前記第一表皮材不織布21とは別の表皮材不織布2(第二表皮材不織布22)を有するように構成してもよい。
【0021】
不織布積層体の最表面に有する表皮材不織布2は、
図3に示すように遮音材1の最表面の一方の面だけでも良いが、特に図示しないが、遮音材の最表面の一方の面と他方の面に設けて、最表面の表皮材不織布が遮音材1の表裏両面に積層されているように構成してもよい。
【0022】
不織布積層体の最表面の一面のみに第二表皮材不織布21を設ける場合、
図3に示すように第一基材不織布31の表面に第二表皮材不織布22を設けてもよいが、特に図示しないが第二基材不織布32側の表面に設けてもよい。
【0023】
図3に示すように、遮音材1は、不織布積層体の最表面に第二表皮材不織布22を有するように構成した場合、
図1に示す遮音材と比較して更に良好な遮音効果が得られる。
【0024】
表皮材不織布2は、目付10〜100g/m
2の範囲内であるのが好ましい。表皮材不織布2の目付が大きくなりすぎると、表皮材としての遮音効果が得られ難くなる虞がある。表皮材不織布2の目付が小さくなりすぎると、表皮材の遮音効果が十分発揮されない虞がある。
【0025】
表皮材不織布2は、厚みが0.1〜3mmの範囲内が好ましい。表皮材不織布2の厚みが厚くなりすぎると、表皮材不織布2の遮音効果が得られ難くなる虞がある。表皮材不織布2の厚みが薄くなりすぎると、表皮材不織布2の遮音効果が発揮されない虞がある。
【0026】
表皮材不織布2に用いる繊維の繊維径は、1〜50μmの範囲内が好ましい。繊維径が細くなりすぎると、遮音性能は高いが材料が脆くなる虞がある。また、繊維径が太くなりすぎると、表皮材不織布2の遮音効果が発揮されない虞がある。
【0027】
表皮材不織布2に用いる繊維の形状は、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドサイドバイ型、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用してもよい。表皮材不織布2に用いる繊維は、短繊維、長繊維、いずれでもよい。
【0028】
表皮材不織布2の繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ、ガラス等が挙げられる。
【0029】
表皮材不織布2は、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、メルトブローン等で作製された不織布を使用することができる。
【0030】
基材不織布3は、目付が100〜600g/m
2の範囲内が好ましい。基材不織布3の目付が大きくなると、遮音率が高くなり、目付が小さくなると、遮音率が低くなる傾向がある。
【0031】
また基材不織布3は、厚みが5〜40mmの範囲内であるのが好ましい。
【0032】
また基材不織布3に用いる繊維の繊維径は、9〜100μmの範囲内が好ましい。基材不織布3に用いる繊維の繊維径が細くなると、遮音性能が高くなり、繊維径が太くなると遮音性能が低くなる傾向がある。
【0033】
基材不織布3に用いる繊維の形状は、芯鞘型、円筒型、中空型、サイドサイドバイ型、通常の繊維とは形状の異なる異型断面繊維を使用してもよい。基材不織布3に用いる繊維は、短繊維、長繊維、いずれでもよい。
【0034】
基材不織布3の繊維の素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、レーヨン、アクリル、アクリロニトリル、セルロース、ケナフ、ガラス等が挙げられる。
【0035】
基材不織布3は、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、メルトブローン等で作製された不織布を使用することができる。
【0036】
表皮材不織布2又は基材不織布3を構成する各不織布の目付は、遮音性能等に応じて、適宜選択することができる。
【0037】
遮音材1を車両等に設置する場合、音源側に最も近い位置に配置される表皮材不織布2は、密度が最も高くなるように構成することが好ましい。これは、遮音材1に入射した音が内部で反射した際に、表皮材不織布2を通して再度音源側に出て行くのを防止することができるからである。
【0038】
不織布の密度は、見掛け密度(嵩密度)のことであり、目付と厚みの値から求めることができる。目付の測定は、JIS L1913の単位面積当たりの質量を求める試験方法を用いることができる。また厚みは、圧力0.1kPaで加圧時の厚みを用いることができる。
【0039】
図4は、本発明の遮音材付きワイヤーハーネスの一例を示す外観斜視図である。
図4に示すように遮音材付きワイヤーハーネス6は、
図3に示す遮音材1とワイヤーハーネス7を組み合わせた例である。遮音材付きワイヤーハーネス6は、遮音材1とワイヤーハーネス7が一体化されている。ワイヤーハーネス7は、その一部が遮音材1の第一基材不織布31と第一表皮材不織布21の間に挟まれた状態で一体化されている。
【0040】
遮音材付きワイヤーハーネス6は、ワイヤーハーネス7を固定する位置は、上記形態に特に限定されない。ワイヤーハーネス7は、遮音材1を構成する不織布積層体のどの位置に配置してもよい。このようにワイヤーハーネスを遮音材の不織布積層体の内部に位置するように、不織布でワイヤーハーネスを挟み込まれた状態となるように形成した場合は、不織布による緩衝効果が得られる。
【0041】
ワイヤーハーネス7は、例えば、芯線の周囲を絶縁体により被覆した電線を複数本束にした電線束の周囲をワイヤーハーネス保護材により被覆したもの等が挙げられる。ワイヤーハーネス7は、特に上記構成に限定されず、1本の電線のみから構成してもよいし、ワイヤーハーネス保護材を使用せずに、結束材等で複数の電線を一纏めにしたものでもよい。
【0042】
ワイヤーハーネス7を遮音材1に固定して一体化する手段として、上記のワイヤーハーネス保護材等と遮音材を、接着剤を介して接着する方法が挙げられる。また
図4に示すように不織布31、21の間にワイヤーハーネス7を挟んだ場合は、ワイヤーハーネスの保護材と不織布を熱溶着して一体化することも可能である。また特に図示しないが、別体の取り付け部材等を用いて、遮音材1にワイヤーハーネス7を固定して一体化してもよい。ワイヤーハーネス7は、第一表皮材不織布21、第二表皮材不織布22、第一基材不織布31、第二基材不織布32のいずれの不織布に固定してもよい。
【0043】
図5は、遮音材付きワイヤーハーネスを車体に取り付けた状態を示す断面図である。
図5に示すように、遮音材付きワイヤーハーネス6は、車体8に遮音材1の一方の面が接触した状態で固定されている。図中上方が、エンジンルーム等の音源となる方向であり、図中下方が室内側となる方向である。遮音材1を車体8に取り付けるには、車体8に設置した支持部材(図示せず)にワイヤーハーネス7又は遮音材1のいずれか一方、或いはワイヤーハーネス7及び遮音材1の両方を固定することができる。
【0044】
遮音材1又は遮音材付きワイヤーハーネス6は、自動車等のダッシュボードの内側等、自動車のエンジンルームと室内との間のように騒音を遮断しようとする箇所に設置することができる。
【0045】
本発明の遮音材は自動車等の車両用遮音材として好適に用いることができる。本発明の遮音材付きワイヤーハーネスは、自動車用ワイヤーハーネスとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
実施例1〜2、比較例
実施例1の遮音材は
図3に示すように基材不織布32、表皮材不織布21、基材不織布31、表皮材不織布22の4層積層構造した。また実施例2の遮音材は
図1にように基材不織布32、表皮材不織布2、基材不織布31の3層積層構造とした。また
図6に示すように比較例の遮音材101は、基材不織布103に表皮材不織布102を積層した積層体を用いた。実施例1、2及び比較例の遮音材について、JIS A 1411−1に準拠して遮音性能を測定した。遮音性能の測定結果を
図7に示す。実施例、比較例の遮音材の構成及び遮音性能試験方法の詳細は以下の通りである。
【0047】
各遮音材における音源側からの不織布の配置は下記の通りである。
実施例1:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み22mm
実施例2:基材不織布(厚み10mm)/表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み21mm
比較例:表皮材不織布(厚み1mm)/基材不織布(厚み10mm)、全厚み11mm
【0048】
表皮材不織布と基材不織布は、積層した後、180℃で貼り合わせて一体化して遮音材とした。
【0049】
[表皮材不織布]
・繊維の種類:ポリオレフィン長繊維、繊維径4μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:50g/m
2
・厚み:1mm
【0050】
[基材不織布]
・繊維の種類:ポリエステル短繊維、繊維径20μm
・作成方法:ニードルパンチ又はスパンボンドで作成
・目付:300g/m
2
・厚み:10mm
【0051】
[遮音性能測定方法]
遮音性能の測定は、JIS A 1441−1のに準拠して試験を行い、音響透過損失の値により評価した。試験は
図8に示すように、音源室となる残響室51と、受音室となる無響室52との間を樹脂板53(t=1mm)で仕切り、残響室51に実施例、比較例の遮音材を配置して音響透過損失を測定した。残響室51には、音源となるスピーカー54を配置し音波(入射音)を発生させ、無響室52に試料55と樹脂板53を透過してきた音(透過音)の音圧レベルを測定するためのマイクロホン56を配置して、音圧(透過音)を測定した。遮音材の試験片(試料)の寸法は、縦×横=596mm×596mmとした。入射音の音圧レベルに対する透過音の音圧レベルを測定して、下記の(2)式から音響透過損失の値を得た。測定は実施例1、2、比較例の各遮音材を用いた場合と、遮音材を用いない場合(材料無し)について行った。
【0052】
音響透過損失(TL)は、試料に入射する音響パワー(W
1)と試料を透過する音響パワー(W
2)との比の常用対数の10倍で、下記(1)式で与えられる。
TL=10log
10(W
1)/(W
2)・・・(1)
TLは、残響室51が完全な拡散音場で、試料だけを通して無響室52へ音が透過すると仮定することによって下記(2)式より求めることができる。
TL=SPL
0−PWL
i+10log
10S−6・・・(2)
TL:音響透過損失[dB]
SPL
0:残響室における室内平均音圧レベル[dB]
PWL
i:無響室における室内平均音圧レベル[dB]
S:試料の面積[m
2]
【0053】
[音響透過損失の測定結果について]
図7のグラフに示すように、比較例1の材料の透過損失は、材料無しの場合と比較して少しだけ大きくなっていたがほとんど変化がなかった。これに対し、実施例1、2の場合、材料無し、比較例と比較して、周波数帯のほぼ全域において、透過損失の値が大きく変化していて、遮音性能が向上していることが確認できた。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0055】
本発明の遮音材は、例えば、3枚以上の基材不織布を用いて構成してもよいし、3枚以上の表皮材不織布を用いて構成してもよい。