【課題】片持ち支持されたワークの両面を樹脂モールドする際に、成形品に金型分割ラインが残らずしかも樹脂の充填バランスがよく成形品質を向上させたモールド金型を提供する。
【解決手段】ワークの一端側を起立姿勢で片持ち支持したまま金型をクランプしてポット6に供給されたモールド樹脂12をキャビティ凹部10aに収容されたワークを中心として対向位置から充填させて樹脂モールドされる。
熱硬化性のモールド樹脂が供給されるポット及び前記モールド樹脂を圧送りするプランジャを含むトランスファ機構が設けられ、板状のワークにおける一端側を挟み込んで他端側を起立姿勢で支持する一方の金型と、
前記ワークの他端を収容可能なキャビティ凹部が彫り込まれ、当該キャビティ凹部に前記ワークの両面側から連絡する複数の樹脂路が形成された他方の金型と、を具備し、
前記ワークの一端側を片持ち支持したまま前記一方の金型と前記他方の金型をクランプして前記ポットに供給されたモールド樹脂を前記キャビティ凹部に収容された前記ワークを中心として対向位置から充填させて樹脂モールドされることを特徴とするモールド金型。
前記一方の金型には、前記ワークにおける一端部を挟み込んで他端側を起立姿勢で支持する治具が、前記キャビティ凹部に対向するクランプ面に組み付けられる請求項1記載のモールド金型。
前記他方の金型には、前記キャビティ凹部に起立姿勢で収容された前記ワークの他端を押さえる押さえピンが出没可能に設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のモールド金型。
前記押さえピンは、前記キャビティ凹部の底部より突出する向きに押さえピン付勢手段により付勢されており、前記キャビティ凹部にモールド樹脂が充填される際に、前記押さえピン付勢手段の付勢力に抗して前記押さえピンを前記キャビティ凹部の底部と面一に退避させる押さえピン駆動機構を備えている請求項4記載のモールド金型。
前記押さえピンは、モールド金型が型開きする際に前記押さえピン付勢手段の付勢力により成形品を押圧して前記他方の金型より離型させる請求項4又は5記載のモールド金型。
前記他方の金型に設けられた前記キャビティ凹部にはエアーを排気若しくは給気するためのエアー給排路が接続され、当該エアー給排路の開口部を開閉する開閉ピンが進退可能に設けられている請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のモールド金型。
前記開閉ピンは、前記エアー給排路の開口部を開口する退避位置に退避するように開閉ピン付勢手段によって常時付勢されており、前記キャビティ凹部にモールド樹脂が充填される際に、前記開閉ピン付勢手段の付勢力に抗して前記開閉ピンを前記退避位置から前記キャビティ凹部の底部と面一となる突出位置までに突出させて前記開口部を閉止する開閉ピン駆動機構を備えている請求項7記載のモールド金型。
前記開閉ピンは、型閉じ状態で前記キャビティ凹部にモールド樹脂が充填されるまでは、前記開口部を開口してエアーを排気し続け、型開きする際に前記開口部を開口してエアーを圧入し続ける請求項7又は8記載のモールド金型。
前記モールド金型を型閉じする際に、起立姿勢で保持された前記ワークの他端部を前記キャビティ凹部の底部から突出させた押さえピンで押さえ、前記モールド樹脂が前記キャビティ凹部に充填される際に前記キャビティ凹部の底部と面一になる位置へ退避する工程を含む請求項10記載の樹脂モールド方法。
前記モールド金型を型開きする際に、前記押さえピンを前記キャビティ凹部内に突出させて成形品を前記他方の金型から離型させる工程を含む請求項10又は11記載の樹脂モールド方法。
前記モールド金型を型開きする際に、前記開口孔を開口させて圧縮空気を送り込んで前記成形品の離型を促進する工程を含む請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の樹脂モールド方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上型と下型でワークを水平支持したままクランプする場合、成形品に金型分割ラインに相当する分割ラインが凸部として残ってしまう。この凸部は、接続端子側に凸面となって形成されるためこれを除去する必要が生じる場合がある。特に、製品仕様によっては型ずれが発生し、金型分割ラインに沿ってフラッシュバリが発生する。配線基板の接続端子が露出する端子面にモールド樹脂が付着するとこれを除去する必要がある。
また、一端側を水平方向に片持ち支持された配線基板の他端側両面を含んで樹脂モールドされるが、キャビティに充填される樹脂の充填バランスが基板両面で均一にならずに未充填になるおそれがある。
また、水平方向に片持ち支持された配線基板の場合、金型セット時にキャビティ内で倒れ込みが発生しやすく、成形品質が低下するおそれがある。
更には、配線基板がガラスエポキシ基板などの有機基板であると、平面精度や厚み精度にばらつきが大きく、接続端子露出面には、絶縁樹脂層と接続端子(金属層)とが交互に形成された凹凸面が存在する。この部分をモールド金型でクランプする場合、樹脂漏れを防ぐためクランプ力を強めると、絶縁樹脂層や接続端子に傷がつきやすくなり、樹脂漏れが発生しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、片持ち支持されたワークの両面を樹脂モールドする際に、成形品に金型分割ラインが残らずしかも樹脂の充填バランスがよく成形品質を向上させたモールド金型及びこれを用いて片持ち支持されたワークの倒れ込みを防いで成形品質並びに生産性を向上させることが可能な樹脂モールド方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
熱硬化性のモールド樹脂が供給されるポット及び前記モールド樹脂を圧送りするプランジャを含むトランスファ機構が設けられ、板状のワークにおける一端側を挟み込んで他端側を起立姿勢で支持する一方の金型と、前記ワークの他端を収容可能なキャビティ凹部が彫り込まれ、当該キャビティ凹部に前記ワークの両面側から連絡する複数の樹脂路が形成された他方の金型と、を具備し、前記ワークの一端側を片持ち支持したまま前記一方の金型と前記他方の金型をクランプして前記ポットに供給されたモールド樹脂を前記キャビティ凹部に収容された前記ワークを中心として対向位置から充填させて樹脂モールドされることを特徴とする。
上述したモールド金型を用いれば、ワークの一端側を起立姿勢で片持ち支持したまま金型をクランプしてポットに供給されたモールド樹脂をキャビティ凹部に収容されたワークを中心として対向位置から充填させて樹脂モールドされるので、モールド樹脂の充填バランスがよく、ワークのキャビティ内での倒れ込みは起こり難く、ワークの他端側を含んで形成される成形品に金型分割ラインが残らずに樹脂モールドすることができ、成形品質も向上する。
特に、前記キャビティ凹部に連絡する樹脂路は前記ワークが収容された前記キャビティ凹部の対向面に形成されていると、モールド樹脂の充填バランスがよく、片持ち支持されたワークが傾いたり変形したりするのを防ぐことができる。
【0008】
前記一方の金型には、前記ワークにおける一端部を挟み込んで他端側を起立姿勢で支持する治具が、前記キャビティ凹部に対向するクランプ面に組み付けられてもよい。
この場合には、ワークの一端側を治具に挟み込んで他端側を起立姿勢で支持した状態で治具が一方の金型に組み付けられるので、ワークのモールド金型への搬入搬出が治具の着脱により確実に行えるうえに、金型内に搬入されるワークの起立姿勢が安定する。
【0009】
前記他方の金型には、前記キャビティ凹部に起立姿勢で収容された前記ワークの他端を押さえる押さえピンが前記キャビティ凹部の底部から出没可能に設けられていることが好ましい。
これにより、モールド金型をクランプすると、キャビティ凹部の底部から押さえピンが突出してワークの他端を押さえるので、キャビティ内で片持ち支持されたワークの起立姿勢が安定し、モールド樹脂の充填が始まってもワークの倒れ込みが生じ難くなる。
【0010】
前記押さえピンは、前記キャビティ凹部の底部より突出する向きに押さえピン付勢手段により付勢されており、前記キャビティ凹部にモールド樹脂の充填が完了する前に、前記押さえピン付勢手段の付勢力に抗して前記押さえピンを前記キャビティ凹部の底部と面一に退避させる押さえピン駆動機構を備えていることが望ましい。
これにより、キャビティ凹部にモールド樹脂が充填される前からモールド樹脂充填完了直前まで片持ち支持されたワークの自由端を押さえピンで押さえることで、キャビティ内でワークの倒れ込みが発生しなくなり、成形品質が安定する。
【0011】
前記押さえピンは、モールド金型が型開きする際に前記押さえピン付勢手段の付勢力により成形品を押圧して他方の金型より離型させることが好ましい。
これにより、成形品を離型させるためのエジェクタピンを金型に設ける必要がなくなり金型構造が簡素化すると共に、ワークを起立姿勢で収容するキャビティ凹部の深さが深い成形品の離型が容易に行える。
【0012】
前記他方の金型に設けられた前記キャビティ凹部にはエアーを排気若しくは給気するためのエアー給排路が接続され、当該エアー給排路の開口部を開閉する開閉ピンが進退可能に設けられていることが好ましい。
これにより、開閉ピンにより開口部を開口してキャビティ内からエアーを吸引して排気することでキャビティ内を減圧することができ、キャビティ内に圧縮空気を供給することで成形品を冷却して離型を促進することができる。
【0013】
前記開閉ピンは、前記エアー給排路の開口部を開口する退避位置に退避するように開閉ピン付勢手段によって常時付勢されており、前記キャビティ凹部にモールド樹脂が充填される際に、前記開閉ピン付勢手段の付勢力に抗して前記開閉ピンを前記退避位置から前記キャビティ凹部の底部と面一となる突出位置までに突出させて前記開口部を閉止する開閉ピン駆動機構を備えていることが望ましい。
これにより、キャビティ凹部がモールド樹脂で満たされる直前までは開閉ピンを退避位置に配置して開口部を開口させてエアーを吸引して排気し続け、モールド樹脂の充填が完了すると開閉ピンを突出位置へ移動させて開口部を閉止して樹脂モールドすることができる。よって、成形品にボイドが発生し難くなり、成形品質を向上することができる。
【0014】
前記開閉ピンは、型閉じ状態で前記キャビティ凹部にモールド樹脂が充填されるまでは、前記開口部を開口してエアーを吸引し続け、型開きする際に前記開口部を開口してエアーを圧入し続けることが好ましい。
これにより、キャビティ内にモールド樹脂が充填されるまでは、開口部を開口してエアーを吸引し続けることで、キャビティ内にエアーが閉じ込められることがなく成形品にボイドが発生することはなくなる。また、型開きする際にエアーをキャビティ内に圧入することで、成形品の離型を促進することができる。特に、成形品を離型させるための押さえピンの先端を冷却することもできるので離型し易くなる。
【0015】
また、上述したいずれかのモールド金型を用いた樹脂モールド方法であって、板状のワークにおける一端側を挟み込んで他端側を一方の金型に起立姿勢で支持させる工程と、キャビティ凹部が形成された他方の金型と前記一方の金型をクランプすることで、前記ワークの他端側を前記キャビティ凹部に収容するように型閉じする工程と、前記モールド金型を型閉じする際に前記キャビティ凹部の開口孔よりエアーを吸引して排気し、モールド樹脂が充填される際に開口孔を閉止する工程と、前記キャビティ凹部に前記ワークを中心として対向位置からモールド樹脂を圧送りして充填する工程と、前記モールド樹脂を加熱硬化させて樹脂モールドする工程と、を含むことを特徴とする。
これにより、ワークの一端側を起立姿勢で片持ち支持した一方の金型とキャビティ凹部が形成された他方の金型とをクランプしてポットに供給されたモールド樹脂をキャビティ凹部に収容されたワークを中心として対向位置から充填して樹脂モールドされるので、モールド樹脂の充填バランスがよく、片持ち支持されたワークのキャビティ内での倒れ込みや変形は起こり難く、ワークの他端側を含んで形成される成形品に金型分割ラインが残らずに樹脂モールドすることができ、成形品質も向上する。
また、キャビティ凹部がモールド樹脂で満たされる直前までは開口部を開口させてエアーを吸引して排気し続け、モールド樹脂の充填が完了すると開口部を閉止して樹脂モールドするので、モールド樹脂に混入するエアーを排出して成形品にボイドが発生するのを抑え成形品質を向上させることができる。
【0016】
前記モールド金型を型閉じする際に、起立姿勢で保持された前記ワークの自由端を前記キャビティ凹部の底部から突出させた押さえピンで押さえ、前記モールド樹脂が前記キャビティ凹部に充填される際に当該キャビティ凹部の底部と面一になる位置へ退避する工程を含むことが望ましい。
これにより、ワークをモールド金型でクランプしてからモールド樹脂を充填するまでワークの自由端を押さえピンで押さえることで、キャビティ内でワークの倒れ込みが発生しなくなり、成形品質が安定する。また、押さえピンは、モールド樹脂がキャビティ凹部に充填される際に当該キャビティ凹部の底部と面一になる位置へ退避するので、成形品に押さえピンの跡は残らない。
【0017】
前記モールド金型を型開きする際に前記押さえピンを前記キャビティ凹部内に突出させて成形品を前記他方の金型から離型させる工程を含むことが好ましい。これにより、ワークを起立姿勢で収容するキャビティ凹部の深さが深い成形品の離型が金型構成を複雑にすることなく実現することができる。
【0018】
前記モールド金型を型開きする際に前記開口孔を開口させて圧縮空気を送り込んで前記成形品の離型を促進する工程を含むことが好ましい。これにより、成形品の金型接触面を冷却して離型を促進することができる。特に、押さえピンによる離型を併用する場合には、押さえピンの先端を冷却することで成形品の離型を促進することができる。
【0019】
前記ワークを起立姿勢で片持ち支持した治具を、型開きした前記一方の金型に前記キャビティ凹部に対向するクランプ面に組み付ける工程と、樹脂モールド後に型開きした前記一方の金型より成形品を前記治具とともに取り出す工程と、前記成形品を前記治具から分離して不要樹脂を除去する工程と、を備えることが望ましい。
これにより、ワークのモールド金型への搬入搬出が治具の着脱により確実に行えるうえに、金型内に搬入されたワークの起立姿勢が安定する。また、モールド金型から治具とともに成形品を取り出し、治具から成形品を取り出すことで、治具を分解清掃して再利用することができる。また、成形品から不要樹脂を容易に分離除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したモールド金型を用いれば、片持ち支持されたワークの両面を樹脂モールドする際に、成形品に金型分割ラインが残らずしかも樹脂の充填バランスがよく成形品質を向上させることができる。また、このモールド金型を使用する樹脂モールド方法を用いれば、片持ち支持されたワークの倒れ込みを防いで成形品質並びに生産性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るモールド金型及びこれを用いた樹脂モールド方法の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下では、ワークとして有機基板に配線パターンが形成された配線基板を用いるものとする。また、モールド金型は、一例として、下型を可動型、上型を固定型として説明するものとする。また、上型及び下型は、インサートブロックの構成を中心に説明するものとし、インサートを着脱可能に収納するチェイスブロックの構成は、省略してあるものとする。
【0023】
配線基板1は、例えば
図1に示すように矩形板状をした有機基板にECUを形成する電子部品1a(MPU、SRAM、パワー・トランジスタ等)が搭載されたものが用いられる。
図1(A)に示すように、配線基板1には、絶縁層から接続端子1bが複数本並列に露出形成された端子部が設けられている。
【0024】
この配線基板1を、接続端子1b側から上治具3のスリット3aを挿通させることで、上治具3に配線基板1が組み付けられる。上治具3には配線基板1を挿通するスリット3aと、後述する下治具2の一部を収容する爪収容部3bが設けられている。スリット3a及び爪収容部3bは、配線基板1の数に対応して複数箇所(例えば3カ所)に設けられている。また、配線基板1の接続端子1b側には、当該接続端子1bを挿通可能なスリット2fが形成されたプレート2gと、環状のシール材2e(耐熱弾性体;シリコンゴム等)とがそれぞれの貫通孔に接続端子1bを挿通させることで組み付けられる。これらを配線基板1に組み付けた状態を
図1(C)(D)に示す。
【0025】
下治具本体2aには、複数箇所に一対の開閉爪2bが支点2cを中心に各々開閉可能に設けられている。また、下治具本体2aの開閉爪2bどうしの間には、貫通孔2dが設けられていてもよい。例えば、貫通孔2dへ突起などのアクチュエータを挿入することにより、一対の開閉爪2bを支点2cを中心として各々両側へ開放させることができる。
図1(E)(F)に示すように、配線基板1は、一端側に露出形成された接続端子1b側を一対の開閉爪2bに噛み込ませて支持され、環状のシール材2e(耐熱弾性体;シリコンゴム等)を介して配線基板1を挿通するスリット2fが形成されたプレート2gを一対の開閉爪2bに各々重ね合わせて起立姿勢で支持される。
【0026】
次にモールド金型の構成について
図2及び
図3を参照して説明する。
下型5(一方の金型)は、モールド樹脂が供給されるポット6及びモールド樹脂を圧送りするプランジャ7を含むトランスファ機構が設けられている。トランスファ機構は、駆動源(サーボモータ)を起動してポット6内をプランジャ7が昇降することができるようになっている。また、ワーク(配線基板1)の一端側を挟み込んで支持する治具4が組み付けられる治具セット部(凹部)8が設けられている。治具4は、ワーク(配線基板1)を起立姿勢に支持したまま治具セット部8に供給されて組み付けられる。
【0027】
上型9(他方の金型)は、上型キャビティブロック10及び上型ブロック11が積層されている。上型キャビティブロック10には、治具4に起立姿勢で支持されたワーク(配線基板1)の他端(自由端)を収容するキャビティ凹部10aが複数箇所に彫り込まれている。
また、
図2(A)及び
図3(A)に示すように上型キャビティブロック10には、ポット6に対向して上型カル10b、上型ランナゲート10cがキャビティ凹部10aに接続するように彫り込まれている。上型ランナゲート10cは、キャビティ凹部10aに収容されるワーク(配線基板1)の両面側から接続するようになっている(
図3(B)参照)。ゲート位置は、特に限定されるものではないが、配線基板1を収容したモールド樹脂の充填バランスを考慮すると、各キャビティ凹部10aの対向位置に設けることが望ましい。即ち、配線基板1を中心として対向位置にゲートを設けることで、モールド樹脂の注入圧力による配線基板1の撓みや変形を効果的に抑えることができる。また、各キャビティ凹部10aにおいて成形品の厚みを構成する辺(短辺)において対向位置にゲートを位置させることもできる。この場合、この辺における中央にゲートを位置させるのが好ましい。また、同図に示すようにキャビティにモールド樹脂が充填されるまでに移動する距離(換言すればランナの長さ)を均一にすることで充填バランスをさらに向上させることができる。ただし、ゲート位置やゲート数は、ワークの構成などに応じて任意の位置に配置でき、ゲート数は、ワーク(配線基板1)の両面側で対向位置に複数箇所に設けてもよい。
【0028】
このように、ワーク(配線基板1)の一端側を片持ち支持した治具4をモールド金型でクランプして、ポット6に供給されたモールド樹脂12を、上型カル10b、上型ランナゲート10cを通じてキャビティ凹部10aに収容されたワーク(配線基板1)の両面側へ充填することで樹脂モールドされる。
これにより、モールド樹脂12の充填バランスがよく、ワークのキャビティ内での倒れ込みや変形は起こり難く、ワークの他端側を含んで形成される成形品に金型分割ラインが残らずに樹脂モールドすることができ、成形品質も向上する。
【0029】
また、
図3(A)に示すように、上型9にはキャビティ凹部10aに起立姿勢で収容されたワーク(配線基板1)の他端(自由端)を押さえる押さえピン13がキャビティ凹部10aの底部から出没可能に設けられている。これにより、モールド金型をクランプすると、キャビティ凹部10の底部から押さえピン13が突出してワーク(配線基板1)の自由端を押さえるので、ワークの起立姿勢が安定し、モールド樹脂11の充填が始まってもワークの倒れ込みや変形が生じ難くなる。押さえピン13は上型ブロック11に設けられた押さえピンプレート14に支持されている。押さえピンプレート14には、駆動ピン15が隙間を設けて連繋している。駆動ピン15は図示しない駆動手段(シリンダ、ソレノイド、モータなど)によって昇降するようになっている(押さえピン駆動機構)。
【0030】
また、押さえピンプレート14には、バックプレート16が重ねて設けられている。バックプレート16と上型ブロック11との間にはコイルばね17(押さえピン付勢手段)が弾挿されている。このコイルばね17によりバックプレート16及び押さえピンプレート14は常時下方に付勢されており、押さえピン13はキャビティ凹部10aの底部より突出する向きに常時付勢されている。このとき、駆動ピン15は、押さえピンプレート14と隙間を設けて連繋した状態にある。このように、押さえピン13を付勢して配置することによってたとえ配線基板1の高さがばらついたとしても配線基板1を押さえたときに過剰に加圧し座屈させてしまうことはない。なお、配線基板1の自由端における板厚分を挿入可能な先端が断面凹状に形成された押さえピンを用いてもよい。この場合には、押さえピンを付勢する必要がなく、構成も簡素化できる。
【0031】
後述するように、押さえピン13は、キャビティ凹部10aにモールド樹脂11が充填される際に、コイルばね17の付勢力に抗して図示しない押さえピン駆動機構を作動させてキャビティ凹部10aの底部と面一に退避させられる。
また、押さえピン13は、モールド金型が型開きする際に、駆動ピン15で付勢することにより成形品を押圧して離型させるようになっている。
これにより、成形品を離型させるためのエジェクタピンを別途金型に設ける必要がなくなり金型構造が簡素化すると共に、ワークを起立姿勢で収容するキャビティ凹部10aの深さが深い成形品の離型が容易に行える。
【0032】
また、
図3(B)に示すように、上型キャビティブロック10には、キャビティ凹部10aにエアーを排出若しくは供給するためのエアー給排路10dが形成されている。各キャビティ凹部10aの底部には、エアー給排路10dに接続する開口部10eが各々設けられている。これらの開口部10eを各々開閉する開閉ピン18が上型ブロック11に進退可能に設けられている。
これらの開閉ピン18により各開口部10eを開閉することで開口部10eへのモールド樹脂の進入を防止しながらキャビティ内からエアーを吸引することでキャビティ内を減圧することができ、キャビティ内にエアーを圧入することで成形品の表面と型面とを分離すると共に成形品を冷却させ収縮させることにより、離型を容易にすることができる。
【0033】
複数の開閉ピン18は、上型ブロック11内に設けられた開閉ピンプレート19に吊り下げ支持されている。開閉ピンプレート19と上型ブロック11との間にはコイルばね20(開閉ピン付勢手段)が弾挿されている。複数の開閉ピン18は、コイルばね20によってエアー給排路10dに接続する開口部10eを開口する退避位置に退避するように常時付勢されている(
図3(A)参照)。
【0034】
図3(A)に示すように、開閉ピンプレート19には、複数の駆動ピン21が連結されている。各駆動ピン21は、図示しない駆動手段(シリンダ、ソレノイド、モータなど)によって昇降するようになっている(開閉ピン駆動機構)。
キャビティ凹部10aにモールド樹脂12が充填される際に、図示しない開閉ピン駆動機構を作動させて駆動ピン21がコイルばね20の付勢力に抗して開閉ピンプレート19を押し下げて、開閉ピン18を退避位置からキャビティ凹部10aの底部と面一となる突出位置までに突出させて開口部10eを閉止するようになっている。
これにより、キャビティ凹部10aがモールド樹脂12で満たされる直前までは開閉ピン18を退避位置に配置して開口部10eを開口させてエアーを吸引して排気し続け、モールド樹脂12の充填が完了すると開閉ピン18を突出位置へ移動させて開口部10eを閉止して樹脂モールドすることができる。
【0035】
開閉ピン18は、型閉じ状態でキャビティ凹部10aにモールド樹脂12が充填されるまでは、開口部10eを開口してエアーを吸引し続け、型開きする際にも開口部10eを開口してエアーを圧入する。
これにより、キャビティ凹部10aにモールド樹脂12が充填されるまでは、開口部10eを開口してエアーを吸引することで、キャビティ凹部10a内にエアーが閉じ込められることがなく成形品にボイドが発生することはなくなる。また、型開きする際にエアーをキャビティ凹部10a内に圧入することで、成形品の離型を促進することができる。特に、成形品を離型させるための押さえピン13を併用する場合には、押さえピン13によって機械的に離型された成形品と型面との隙間にエアーを圧入することで離型し易くすることができる。
【0036】
次に、上述したモールド金型を用いた樹脂モールド方法について
図1及び
図3乃至
図13を参照して説明する。
まず、
図1(A)〜(D)に示すように、配線基板1を接続端子1bが形成された矩形状の一端側(露出端側)から、上治具3のスリット3aに挿通することで、3つの配線基板1が上治具3にセットされる。また、上治具3の3つの爪収容部3bに収容される接続端子1bに各々プレート2gとシール材2eを順に貫通させて組み合わせて収容する(
図1(C)(D)参照)。この後、治具本体2a上に設けられた一対の開閉爪2bの間に各々挿入する。これにより、配線基板1の一端側を開放状態にあった一対の開閉爪2bに噛み込ませ、一対の開閉爪2bとプレート2gとで環状シール材2eを挟み込むことで樹脂漏れを防ぐようになっている。この場合、一対の開閉爪2bとプレート2gとで環状シール材2eを挟み込んで押し潰すことで接続端子1bや絶縁層1cにおける段差に押し付けて隙間を無くすことで、接続端子1b側への樹脂漏れを防止している。なお、同図に示すように一対の開閉爪2bが開閉する開閉面の先端側に互いに交差する傾斜面を設けることで環状シール材2eを挟み込んだときに接続端子1bや絶縁層1cに押し付けることもできる。また、開閉爪2bには閉止状態で配線基板1の接続端子1b側を覆うことができるように上面視で凹形状の弾性体(例えばフッ素樹脂やシリコーン樹脂やエンジニアリングプラスチック)を挟み込む構成としてもよい。これによれば、配線基板1において接続端子1bによって形成される段差を潰すように変形し接続端子1bの成形面における樹脂漏れによる接触不良の発生を防止することができる。
【0037】
このように一対の開閉爪2bとプレート2gとで環状シール材2eを挟み込むように重ね合わせて組み付けることで、複数の配線基板1を上治具3と下治具2とで各々起立姿勢で樹脂漏れ防止可能な状態で片持ち支持する(
図1(E)(F)参照)。これにより、上治具3の上面がキャビティに臨むようにクランプされるため、起立姿勢で片持ち支持された配線基板1の接続端子1b側の端部に沿って漏れ出すおそれがある樹脂漏れの発生を防止している。即ち、キャビティに向けられる面を構成する上治具3が分割されず一体に形成されるため上述したような樹脂漏れを防止可能となる。
【0038】
次に
図3(A)(B)に示すように、配線基板1を支持した治具4を型開きした下型5の治具セット部8に組み付ける。また、ポット6にはモールド樹脂12(
図4(A)参照;例えばタブレット状樹脂、顆粒状樹脂、粉状樹脂、液状樹脂等)が供給される。
【0039】
次に
図4(A)(B)に示すように、下型5にセットされた配線基板1(ワーク)及び治具4を、キャビティ凹部10aが形成された上型9とでクランプする。可動型である下型5が上昇して、上型9とで治具4をクランプする。このとき、治具4から起立姿勢で露出した配線基板1(ワーク)の他端側(自由端側)がキャビティ凹部10aに収容される。また、押さえピン13は、コイルばね17の付勢により、キャビティ凹部10aの底部より突出した位置にある。よって、
図4(A)に示すように、上型9と下型5が型閉じすると、押さえピン13は配線基板1の自由端に押し当てられて起立姿勢を保持する。尚、押さえピン13はコイルばね17を介して配線基板1の端面に弾性的に押し当てられるため、配線基板1への押圧が強まるとコイルばね17が撓むことで配線基板1が座屈するのを防いでいる。
【0040】
また、
図4(B)に示すように、開閉ピン18は退避位置にあり、キャビティ凹部10aに接続するエアー給排路10dの開口部10eは開口した状態にある。モールド金型が型閉じする前後或いは同時でもよいが、図示しないエアー吸排機構によりエアーの吸引を開始し、型閉じするとキャビティ内を減圧することが好ましい。
【0041】
図5(A)(B)において、トランスファ機構が作動してプランジャ7が上昇してポット6内で溶融したモールド樹脂12を上型カル10b(
図5(A)参照)、上型ランナゲート10c(
図5(B)参照)を通じて各キャビティ凹部10aへ圧送りする。モールド樹脂12は、キャビティ凹部10aに対向配置された上型ランナゲート10cより、配線基板1の両面側に充填され始める。尚、図示しないエアー吸排機構によりキャビティ内の減圧は継続している。
【0042】
図6(A)(B)は、
図5(A)(B)に続いてモールド樹脂12がキャビティ内に途中まで充填された状態を示す。配線基板1(ワーク)の自由端が押さえピン13に押さえられ、図示しないエアー吸排機構によりキャビティ内の減圧は継続したままモールド樹脂12の充填が継続して行われる。同図に示すように、モールド樹脂12は、キャビティ凹部10aに対向配置された上型ランナゲート10cより、配線基板1の両面側にバランスよく充填される。例えば一方側の面だけからモールド樹脂が充填されるような構成を想定すると、配線基板1の一方の面にのみモールド樹脂による樹脂圧が加わるため他方側に押し倒されてしまうおそれがある。これに対して、配線基板1の両面側にモールド樹脂12がバランスよく充填され配線基板1の両面側で樹脂圧を均衡させることで、配線基板1の倒れこみを防止することができる。
【0043】
図7(A)(B)は、
図6(A)(B)に続いてモールド樹脂12がキャビティ凹部10aの底部近傍まで充填された状態を示す。モールド樹脂12がキャビティ凹部10aの底部に到達する前に、図示しない押さえピン駆動機構を作動させて駆動ピン15を引き上げてバックプレート16に係止したまま当該バックプレート16と一体に重ね合わせた押さえピンプレート14をコイルばね17の付勢力に抗して上方に引き上げて、押さえピン13をキャビティ凹部10aの底部と面一となるまで退避させる。また、図示しない開閉ピン駆動機構を作動させて駆動ピン21を押し下げて開閉ピンプレート19をコイルばね20の付勢力に抗して押し下げて開閉ピン18を退避位置からキャビティ凹部10aの底部と面一となる突出位置までに突出させて開口部10eを閉止し、エアー給排出路10dを通じたエアー吸引動作を停止する。
【0044】
次に
図8(A)(B)は
図7(A)(B)に続いてモールド樹脂12がキャビティ内に充填された状態を示す。押さえピン13はコイルばね17の付勢力に抗してキャビティ凹部10aの底部と面一となるまで退避させた状態で、開閉ピン18を退避位置からキャビティ凹部10aの底部と面一となる突出位置までに突出させた状態で開口部10eを閉止したまま、キャビティ内でモールド樹脂12を加熱硬化させる。
【0045】
これにより、配線基板1(ワーク)を治具4を用いて起立姿勢で片持ち支持したままモールド金型を型閉じしてポット6に供給されたモールド樹脂12をキャビティ凹部10aに収容された配線基板1(ワーク)の両面側へ充填して樹脂モールドされるので、モールド樹脂12の充填バランスがよく、配線基板1(ワーク)のキャビティ内での倒れ込みや変形は起こり難く、配線基板1(ワーク)の自由端側含んで形成される成形品に金型分割ラインが残らずに樹脂モールドすることができ、成形品質も向上する。また、キャビティ凹部10aがモールド樹脂12で満たされる直前までは開口部10eを開口させてエアーを吸引して排気し続け、モールド樹脂12の充填が完了するまでに開口部10eを閉止して樹脂モールドするので、モールド樹脂12に混入するエアーを排出してボイドの発生を抑え成形品質を向上させることができる。
【0046】
図9(A)(B)は
図8(A)(B)に続いて樹脂モールド後の成形品の離型工程を開始した状態を示す。図示しない押さえピン駆動機構による駆動ピン15による引き上げ動作を反転し押し下げ動作させることによって、バックプレート16及び押さえピンプレート14を介して押さえピン13をキャビティ凹部10aの底部より成形品に向かって突き出すように付勢する。また、図示しない開閉ピン駆動機構による駆動ピン21の押し下げを停止し、コイルばね20の弾性力によって開閉ピンプレート19を押し上げ、開閉ピン18を突出位置から退避位置へ退避させて開口部10eを開口し、図示しないエアー吸排装置によりエアー吸排路10dを通じて圧縮エアーを送り込み各キャビティ凹部10aに接続する開口部10eから噴出させる。
【0047】
図10(A)(B)は
図9(A)(B)に続いてモールド金型の型開きを続行し、成形品の離型動作が進行した状態を示す。下型5が下降して上型9との型開きが進むと、成形品22をコイルばね17に付勢された押さえピン13が押し下げ、かつ開口部10eより圧縮エアーが噴出するため、成形品22がキャビティ凹部10aより離型する。この圧縮エアーの吹き出しにより、成形品の表面と型面との間に進入してこれらを分離させると共に成形品22の表面温度を低下させて収縮させ、さらにエアーによる加圧によって成形品22の離型が促進される。これにより、配線基板1(ワーク)を起立姿勢で収容するキャビティ凹部10aの深さが深い成形品22の離型動作を金型構成が複雑にならずに実現することができる。
【0048】
図11(A)(B)は
図10(A)(B)に続いてモールド金型の型開きが完了し、成形品22がモールド金型より取り出された状態を示す。型開きした下型5の治具セット部8より、治具4及び成形品22を取り外す。
【0049】
ここで、成形品22を治具4から分離し不要樹脂23を除去する工程について、
図12(A)〜(F)に示す。下型5から取りだされた成形品22及び治具4を
図12(A)(B)に示す。成形品22には不要樹脂23が一体となって取り出される。
【0050】
次いで、
図12(C)(D)に示すように、成形品22及び不要樹脂23が一体となった上治具3から下治具4を分離する。具体的には、下治具本体2aの貫通孔2dから図示しないアクチュエータを進入させて、一対の開閉爪2bを各々支点2cを中心として両側へ開くようにわずかに回転させ、配線基板1の一端側の噛み込みを解除する。これにより、配線基板1の一端側が開放されるため、下治具2より配線基板1が上治具3とともに取り外すことができる。
【0051】
次に、
図12(E)(F)に示すように、上治具3のスリット3aより配線基板1を引き抜いて分離する。上治具3には成形品22どうしを連結する不要樹脂23(成形品カル、成形品ランナゲート)も一体に貼り付いているが、配線基板1を上方に引き抜くことで成形品22とともに不要樹脂23も上治具3から分離することができる。なお、分離されたプレート2g、環状シール材2e及び上治具3は各々クリーニングした後で再利用することができる。
【0052】
最後に、成形品22どうしを連結する不要樹脂23をゲートブレイクして除去することにより、
図13に示す成形品22が得られる。成形品22は、樹脂モールド部22aとそこから露出する接続端子1bが形成された基板部22bを有している。基板部22bには、絶縁層1cより接続端子1bが並列に露出形成されている。樹脂モールド部22aは、キャビティに収容された配線基板1の両面側からモールド樹脂が充填されており、金型分割ラインが形成されないため、成形品質が向上する。
【0053】
以上説明した樹脂モールド方法を用いると、キャビティ内へのモールド樹脂の充填バランスがよく、片持ち支持されたワークのキャビティ内での倒れ込みや変形は起こり難く、ワークの自由端側を含んで形成される樹脂モールド部22aに金型分割ラインが残らずに樹脂モールドすることができ、成形品質も向上する。また、キャビティ凹部10aがモールド樹脂12で満たされる直前までは開口部10eを開口させてエアーを吸引して排気し続け、モールド樹脂12の充填が完了するまでに開口部10eを閉止して樹脂モールドするので、モールド樹脂12に混入するエアーを排出してボイドの発生を抑え成形品質を向上させることができる。
【0054】
上述した実施例で用いる治具4は、上治具3と下治具2を用い、ワークを起立姿勢で保持するため一対の開閉爪2bを用いていたが、治具はキャビティに臨む面が一体に形成されていればこれらの構成に限定されるものではない。
【0055】
例えば
図14及び
図15に示すように、他例としての治具24は、上面が開放され下面の中央部が開口した収納部24bを有する治具本体24a、ワーク(配線基板1)の一端を噛み込むスリット24cを有し、分割された割面がシート状の弾性体24dで覆われた割型24e、配線基板1を挿通するスリット24fが設けられ、外周側に段付き部24gが設けられた中蓋24h、治具本体24aに重ね合わされ、中空枠体状をした中孔周縁部に中蓋24hの段付き部24gと噛み合う段付き部24iが設けられた上蓋24jを備えていてもよい。
【0056】
配線基板1の接続端子1bが露出形成された一端側を、中蓋24hのスリット24fを挿通して割型24eに重ね合わせ、割型24eのスリット24cに挿入したままこれらを治具本体24aの収納部24bに嵌め込む。割型24eの外周面はテーパー状の傾斜が設けられた傾斜面24e1が形成されており、これを収納する収納部24bにも同様の傾斜面が設けられている。よって、割型24を治具本体24aに収納すると、割型24eの割幅が狭まりスリット24cも狭まるため配線基板1の一端側が弾性体24dを介してシールされたまま起立姿勢で保持される。最後に配線基板1の他端側を上蓋24jの中空孔を挿通して段付き部24iを中蓋24hの段付き部24gと噛み合うように治具本体24aに重ね合わせて起立姿勢で保持される。配線基板1を起立姿勢で治具24に保持した状態を
図16に示す。矩形状の配線基板1は、接続端子1bが形成された一端側は治具24に挟み込まれており、電子部品1aが搭載された他端側(自由端側)のみが治具24より露出して起立姿勢で保持されている。なお、治具24保持される配線基板1は2つ以上であってもよく、この場合には上蓋24jと治具本体24aが接続された構成とすることで一括して取扱うことができる。
【0057】
また、治具24の変形例としての治具25は、ワーク(配線基板1)の態様に応じた挟み込み構造を備えていてもよい。たとえば、
図17に示すように、矩形状の配線基板1の一端側に複数の接続端子部1b1,1b2が分割されて形成されている場合には、割型24eに替えて割型25aを用いることができる。この場合には、配線基板1の表面側と裏面側との2面に向けられるように2つに分割された割型25aの分割された割面に向かい合わせるように凹部が形成されている。また、割型25aには分割面を含んで弾性体25cが貼り付けられて形成される。弾性体25cは、接続端子部1b1,1b2間の空間の位置に合わせて突起部25dが形成されている。これにより、配線基板1の一端側に形成された接続端子部1b1,1b2の間に突起部25dを挿入して隙間を埋めることでモールド樹脂がこの隙間から漏出するのを確実に防止することができる。
【0058】
上記モールド金型は、上型9が固定型、下型5が可動型として説明したが、上型9が可動型、下型5が固定型であってもよく、双方が可動型であってもよい。また、キャビティ凹部10aは、上型9に設けられているものとして説明したが、下型5に設けてもよい。また、押さえピン13と開閉ピン18とを別途設ける構成について説明したが、1つのピンを押さえピン13と開閉ピン18として併用してもよい。
【0059】
また、樹脂圧によって配線基板1が倒れてしまうのを防止するために配線基板1を中心としたときにキャビティ凹部10aの対向する辺において対向位置に設ける例について説明したが、樹脂圧によって配線基板1が押し倒されるのを防止できるような他の構成を採用することもできる。例えば、成形品の厚みを構成する辺において配線基板1を挟む一対の角部にゲート位置を設けてもよい。このような構成でも、配線基板1に対しては、厚み方向における両側から同等の樹脂圧が加えられるため、樹脂圧によって配線基板1が倒れ込みを防止することができる。
【0060】
また、1つのキャビティ凹部10aで1つの配線基板1を樹脂モールドする例について説明したが、1つのキャビティ凹部10aに複数の配線基板1を収容して一括して樹脂モールドするような構成としてもよい。この場合、複数の配線基板1を含む成形品として用いてもよい。また、樹脂モールドされた成形品を配線基板1ごとに分割するようにモールド樹脂を切断することで1回の樹脂モールドで多数の成形品を製造することができる。また、これによれば抜き勾配のない成形品を製造することができるため、成形品を薄型化でき、さらに成形品を重ねて使用することも容易となる。
【0061】
また、下治具2及び上治具3を主体として構成される治具を用いて配線基板1を挟み込んで他端側を起立姿勢で支持し、配線基板1を片持ち支持した治具を型開きした下型5に組み付ける構成例について説明したが、これ以外の構成でもよい。即ち、配線基板1を起立姿勢で支持可能な構成を有する下型5を用いることもできる。この場合、配線基板1における接続端子1b側を挿入可能な貫通孔が形成された板部材の下方に樹脂漏れ防止用のシール材や配線基板1保持用の開閉部材などを配置することで樹脂漏れ防止を図りながら配線基板1を下型5に起立姿勢で支持することができる。以上説明したモールド金型の構成によれば、成形後に下型5をクリーニングするための構成が複雑となりやすいが、モールド前後の治具を用いた処理が不要となるため、装置全体としては簡易な構成とすることができる。