【課題】適切なタイミングでキーレスエントリシステム及びTPMSの切り替えを行って、両システムで車両に搭載された無線通信器を共用することができる通信相手選択システムを提供する。
【解決手段】キーレスエントリシステムのための無線キー3と、TPMSのための車輪に設けられたセンサユニット6とが、車体に設けられたECU1との間で無線通信を行う。ECU1は、無線キー3との通信により車両のドアのロック/アンロックの制御を行う。ECU1は、センサユニット6との通信により車輪の装着位置を判定すると共に、空気圧の検知結果に応じた警告などを行う。またECU1は、車輪速センサ5にて車輪速を検知し、検知した車輪速に応じて無線通信の相手を選択する。ECU1は、例えば車輪速が所定速度を超える場合にセンサユニット6との無線通信を行い、車輪速が所定速度を超えない場合に無線キー3との無線通信を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようにキーレスエントリシステム等及びTPMSは、共に無線通信により車両に搭載された制御装置などとの情報交換を行う必要があり、車両には無線通信を行う装置を搭載する必要がある。キーレスエントリシステムとTPMSとをそれぞれ個別に車両に搭載した場合、車両には両システムのためにそれぞれ無線通信器を搭載する必要がある。そこでキーレスエントリシステム及びTPMSが車両の無線通信器を共用することによって、装置の小型化及び低コスト化等が期待できる。しかしながら無線通信器を共用とすることにより、キーレスエントリシステム及びTPMSを同時的に動作させることができないため、適切なタイミングでのシステム切替を行う必要がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、適切なタイミングでキーレスエントリシステム及びTPMSの切り替えを行って、両システムで車両に搭載された無線通信器を共用することができる通信相手選択システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信相手選択システムは、車両の車輪に設けられ、該車輪の空気圧を検知する空気圧検知手段、及び、該空気圧検知手段の検知結果を無線送信する検知結果送信手段を有する車輪側通信器と、前記車輪の車輪速を検知する車輪速検知手段と、前記車両の車体に搭載され、可搬型通信器又は前記車輪側通信器との無線通信を行う通信手段、該通信手段により行った前記可搬型通信器との通信結果に基づいて前記車両のドアの施錠/解錠制御を行う錠制御手段、前記車輪速検知手段の検知結果に基づいて、前記車輪の装着位置を判定する判定手段、及び、前記通信手段が前記可搬型通信器又は前記車輪側通信器のいずれと無線通信を行うかを前記車輪速検知手段の検知結果に応じて選択する選択手段を有する車体側通信器とを備えることを特徴とする
【0008】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記車輪速検知手段が、前記車体に設けられる第1の車輪速検知手段、及び、前記車輪に設けられる第2の車輪速検知手段を含み、前記車輪側通信器の前記検知結果送信手段は、前記空気圧検知手段の検知結果及び前記第2の車輪速検知手段の検知結果を無線送信するようにしてあり、前記判定手段は、前記第1の車輪速検知手段の検知結果、及び、前記通信手段により前記車輪側通信器から受信した前記第2の車輪速検知手段の検知結果に基づいて、前記車輪の装着位置を判定するようにしてあり、前記選択手段は、前記第1の車輪速検知手段の検知結果に応じて選択を行うようにしてあることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記選択手段が、前記車輪速検知手段が検知する車輪速が所定速度を超える場合に、前記通信手段の通信相手に前記車輪側通信器を選択するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記車体側通信器が、前記車両のイグニッションスイッチのオン/オフ状態を取得する取得手段を有し、前記選択手段は、前記車輪速が所定速度を超え、且つ、前記イグニッションスイッチがオン状態である場合に、前記通信手段の通信相手に前記車輪側通信器を選択するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記車体側通信器が、前記可搬型通信器との間で認証処理を行う認証手段、及び、該認証手段による認証処理の結果を記憶する記憶手段を有し、前記選択手段は、前記車輪速が所定速度を超え、且つ、前記記憶手段が認証成功の結果を記憶している場合に、前記通信手段の通信相手に前記車輪側通信器を選択するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記車体側通信器が、前記車両のシフトレバーの操作位置を取得する取得手段を有し、前記選択手段は、前記車輪速が所定速度を超え、且つ、前記取得手段が取得した操作位置がパーキング以外である場合に、前記通信手段の通信相手に前記車輪側通信器を選択するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る通信相手選択システムは、前記車体側通信器が、前記車両のサイドブレーキの作動/解除状態を取得する取得手段を有し、前記選択手段は、前記車輪速が所定速度を超え、且つ、前記サイドブレーキが解除状態である場合に、前記通信手段の通信相手に前記車輪側通信器を選択するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、キーレスエントリシステムのための可搬型通信器と、TPMSのための車輪に設けられた車輪側通信器とが、車体に設けられた車体側通信器との間でそれぞれ無線通信を行う。車体側通信器は、可搬型通信器との通信により車両のドアの施錠/解錠制御を行う。車体側通信器は、車輪側通信器との通信により車輪の装着位置を判定し、空気圧の検知結果に応じた警告などを行うことができる。
また車体側通信器は、車輪速を検知して、可搬型通信器との無線通信、又は、車輪側通信器との無線通信のいずれを行うかを判断し、無線通信の相手を選択する制御を行う。例えば、車輪速が所定速度を超える場合、車両は走行を開始しており、キーレスエントリシステムによるドアの施錠/解錠制御を行う必要はないため、車体側通信器はTPMSのために車輪側通信器との無線通信を行う。これ以外の場合には、車両が走行していないと判断でき、車体側通信器は、キーレスエントリシステムの可搬型通信器との無線通信を行う。これにより、適切なタイミングで無線通信の通信相手を選択でき、適切なタイミングでのシステムの切り替えを実現できる。
TPMSにおいて車輪の位置を判定するために車輪速の情報を用いる構成の場合、車体側通信器は車輪速を取得することができる。このため車輪速に基づいてキーレスエントリシステム又はTPMSの選択を行う構成とすることによって、新たなハードウェア資源を追加することなくシステム切替の制御を実現することができる。
【0015】
また、本発明においては、車両の車輪速に加えて、イグニッションスイッチのオン/オフ状態、キーレスエントリシステムに認証処理結果、車両のシフトレバーの操作位置、又は、サイドブレーキの操作状態等の条件を判断して、無線通信の相手を選択する。これにより、より精度のよいシステム切替の制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による場合は、車両の車輪速に応じて、車体に設けられた車体側通信器が、キーレスエントリシステムの可搬型通信器又はTPMSの車輪側通信器のいずれかと無線通信を行う構成とすることにより、適切なタイミングでキーレスエントリシステム及びTPMSの切り替えを行うことができ、両システムで車体側通信器の無線通信機能を共用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<システム構成>
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本実施の形態に係る通信相手選択システムの構成を示すブロック図である。図において100は車両であり、本実施の形態に係る車両100は前後左右に4つの車輪(タイヤ、ホイール)が装着されている。本実施の形態に係る通信相手選択システムは、車両100の車体に搭載されたECU(Electronic Control Unit)1と、車両100の各車輪に搭載されたセンサユニット6と、車両100の所有者などが所持する可搬型の無線キー3とを備えて構成されている。また車両100の車体には、各車輪の近傍に車輪速センサ5がそれぞれ搭載されており、各車輪速センサ5が検知した車輪速がECU1へ通知される。本通信相手選択システムは、ECU1がセンサユニット6又は無線キー3との無線通信を行うことによって、TPMS及びキーレスエントリシステムを実現するものである。
【0019】
図2は、本実施の形態に係るECU1の構成を示すブロック図である。ECU1は、制御部11、無線通信部12、記憶部13、入力I/F(インタフェース)部14及び出力I/F部15等を備えて構成されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成され、記憶部13などに記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、TPMSに関する演算処理、キーレスエントリシステムに関する演算処理及び両システムの切替処理等を行う。
【0020】
無線通信部12は、車両100の適所に配設されたアンテナ12aを用いて、無線キー3又はセンサユニット6との無線通信を行うものである。無線通信部12は、無線キー3又はセンサユニット6から受信した無線信号を2値の情報に変換して制御部11へ与えると共に、制御部11から与えられた送信用の情報を無線信号に変換して無線キー3又はセンサユニット6へ送信する。また本実施の形態に係る無線通信部12は、制御部11により無線通信の通信相手の選択がなされている。記憶部13は、フラッシュメモリなどの不揮発性のメモリ素子で構成されており、制御部11にて実行される制御プログラム及び実行に必要な各種のデータ等が記憶されている。本実施の形態において記憶部13には、無線キー3との間で認証処理を行うための認証情報が記憶されている。
【0021】
入力I/F部14は、車両100に搭載された各種の機器から入力される信号を取得し、2値の情報として制御部11へ与える。本実施の形態においてECU1には、車輪速センサ5、IG(イグニッション)スイッチ21、シフトレバー22及びサイドブレーキ23からの信号が入力I/F部14へ入力されている。本実施の形態において車両100には各車輪に対応付けて4つの車輪速センサ5が搭載されている。車輪速センサ5は、例えば車輪の位相角度を検知し、位相角度に応じた電気信号を出力する。ECU1の制御部11は、各車輪速センサ5から入力された電気信号をサンプリングして各車輪の位相角度を取得し、取得した位相角度の変化を算出することで、車両100の各車輪の回転速度(車輪速)を取得することができる。
【0022】
IGスイッチ21は、例えば車両100のエンジン始動などの際に運転者によって切り替えられるスイッチであり、IGスイッチ21がオン状態の場合には車両100に搭載された各種の電子機器へバッテリなどからの電力供給がなされる。IGスイッチ21は、オン/オフ状態を示す2値信号をECU1へ入力する。シフトレバー22は、運転者が運転の際などに切り替えを行うレバーであり、例えば「P(パーキング)」、「D(ドライブ)」及び「N(ニュートラル)」等の状態に切り替えられる。シフトレバー22は、切り替え状態を示す信号をECU1へ入力する。サイドブレーキ23は、運転者が駐車の際などに操作するブレーキであり、ブレーキのオン(作動)/オフ(解除)状態を示す信号をECU1へ入力する。
【0023】
出力I/F部15は、制御部11から与えられた制御情報に基づいて、表示装置24又はドアロック機構25に対する制御信号を生成して出力する。表示装置24は、例えばカーナビゲーション装置などと共用の液晶ディスプレイなどであってもよく、報知のためのLEDランプなどであってもよい。表示装置24は、ECU1の制御に応じて、車両100の運転者などに対する報知を行う。ドアロック機構25は、車両100の各ドアのロック(施錠)/アンロック(解錠)を行うものである。ドアロック機構25は、ドアのロック/アンロックを行うための機械機構、及び、この機械機構を動作させるためのアクチュエータ等を含む。ドアロック機構25は、ECU1から与えられた制御信号に応じて、ドアのロック/アンロックを行う。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る無線キー3の構成を示すブロック図である。無線キー3は、制御部31、無線通信部32、記憶部33及び操作部34等を備えて構成されている。制御部31は、操作部34に対する操作に応じて、車両100のECU1との無線通信を行って情報交換を行うことにより、車両100のドアをロック/アンロックするための処理を行う。無線通信部32は、アンテナ32aを用いて、車両100に搭載されたECU1との無線通信を行うものである。無線通信部32は、ECU1から受信した無線信号を2値の情報に交換して制御部31へ与えると共に、制御部31から与えられた送信用の情報を無線信号に変換してECU1へ送信する。記憶部33は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性のメモリ素子を用いて構成され、ECU1との間で認証処理を行うための認証情報などが記憶されている。操作部34は、例えばプッシュ式のスイッチなどで構成され、車両100のドアのロック/アンロック操作を受け付けるためのものである。操作部34は、ユーザによる操作がなされた場合に制御部31への通知を行う。
【0025】
図4は、本実施の形態に係るセンサユニット6の構成を示すブロック図である。センサユニット6は、制御部61、無線通信部62、空気圧センサ63及び車輪速センサ64等を備えて構成され、車両100の各車輪にそれぞれ1つずつ搭載される。制御部61は、空気圧センサ63が検知する車輪の空気圧及び車輪速センサ64が検知する車輪速を取得して、無線通信により車両100のECU1へ送信する処理を行う。無線通信部62は、アンテナ62aを用いて、車両100に搭載されたECU1との無線通信を行うものである。無線通信部62は、ECU1から受信した無線信号を2値の情報に交換して制御部61へ与えると共に、制御部61から与えられた送信用の情報を無線信号に変換してECU1へ送信する。
【0026】
空気圧センサ63は、車輪(タイヤ)のエアバルブなどに設けられ、車輪の空気圧に応じて電気信号を出力するセンサである。制御部61は、空気圧センサ63が出力する電気信号をサンプリングして車輪の空気圧を取得し、ECU1へ送信する。車輪速センサ64は、車輪の位相角度に応じた電気信号を出力する。制御部61は、車輪速センサ64が出力する電気信号をサンプリングして車輪の位相角度を取得し、ECU1へ送信する。
【0027】
<TPMS>
本実施の形態に係るECU1は、車両100の各車輪に設けられたセンサユニット6から無線により受信した情報に基づいて、各車輪の空気圧を監視し、空気圧に異常が発生した場合に表示装置24による警告を行う。これはいわゆるTPMSの機能であり、ECU1は、センサユニット6から受信した情報に含まれる空気圧センサ63の検知結果に基づき、車輪の空気圧が許容範囲外である場合に警告を行う。
【0028】
車両100は4つの車輪を有しているが、ECU1は、いずれの車輪の空気圧が許容範囲外であるかをユーザが区別可能なように警告を行う。このためECU1は、4つのセンサユニット6から受信した情報が、いずれの車輪に関するものであるかを区別する処理を行う必要がある。本実施の形態に係るECU1は、各センサユニット6からの受信情報に車輪の空気圧と共に含まれる車輪の位相角度と、車両100の車体に設けられた各車輪速センサ5が検知した車輪の位相角度との相関関係に基づいて、センサユニット6からの受信情報がいずれの車輪に関するものであるかを区別する。
【0029】
例えばECU1は、センサユニット6にて検出された車輪の位相角度について、時刻t1における位相角度と所定時間経過後の時刻t2における位相角度との差分を算出する(又は、センサユニット6がこの差分を送信してもよい)。またECU1は、車輪速センサ5が検知した位相角度についても同様に、時刻t1における位相角度と時刻t2における位相角度との差分を算出する。これによりECU1は、4つのセンサユニット6にて検知された車輪の位相角度の4つの差分値と、4つの車輪速センサ5にて検知された車輪の位相角度の4つの差分値とを取得することができる。ECU1は、センサユニット6による4つの差分値と、車輪速センサ5による4つの差分値とを比較し、その値が最も近い差分値の組み合わせを4組決定する。ECU1は、車輪速センサ5の配置を把握しているため、対応する差分値からセンサユニット6の受信情報がいずれの車輪に関するものであるかを区別することができる。
【0030】
なお本実施の形態においては、センサユニット6にて検知された車輪の位相角度と、車輪速センサ5にて検知された位相角度とに基づいて、車両100の各車輪の装着位置を判定する構成とするが、車輪の装着位置の判定方法はこれに限らず、その他の種々の方法を採用してよい。
【0031】
<キーレスエントリシステム>
また本実施の形態に係るECU1は、無線キー3との間で無線通信を行い、その結果に応じて車両100のドアのロック/アンロックの制御を行う。これはいわゆるキーレスエントリシステムの機能であり、ECU1は、記憶部13に記憶した認証情報を用いて無線キー3との間で認証処理を行い、認証処理に成功した場合に無線キー3からの要求に応じたドアのロック/アンロックを行う。
【0032】
例えば無線キー3の操作部34には、車両100のドアのロックスイッチ及びアンロックスイッチが設けられている。これらのスイッチに対してユーザが操作を行った場合、操作部34から制御部31へ操作がなされた旨の通知が与えられる。この通知に応じて、制御部31は記憶部33に記憶された認証情報を読み出し、読み出した認証情報に基づき暗号化などの処理を行った送信用情報を生成し、生成した情報を無線通信部32にて無線信号に変換して車両100へ送信する。無線キー3から車両100への送信情報には、無線キー3に対して付された識別情報及びロック/アンロックの要求情報等が含まれる。
【0033】
車両100のECU1は、無線通信部12にて無線キー3からの無線信号を受信した場合、記憶部13に記憶した認証情報を読み出し、読み出した認証情報に基づき受信情報の複合化などの処理を行い、受信情報に含まれる識別情報などの情報に基づいて、受信情報に係る無線キー3が正当なものであるか否かを判定する。無線キー3が正当なものであると判定した場合、ECU1は、受信情報に含まれるロック/アンロックの要求に従い、ドアロック機構25に車両100のドアのロック/アンロックを行わせる。
【0034】
<通信相手選択>
上記のように、本実施の形態に係るECU1は、TPMSに関する処理と、キーレスエントリシステムに関する処理とを行う。ECU1は、TPMSに関してセンサユニット6との無線通信を行う必要があり、キーレスエントリシステムに関して無線キー3との無線通信を行う必要があるが、これらを共に無線通信部12を用いて行う。ただし無線通信部12は、センサユニット6との無線通信と、無線キー3との無線通信とを同時的に行うことはできず、いずれか一方との無線通信を行う。このためECU1の制御部11は、無線通信部12の通信相手をセンサユニット6又は無線キー3のいずれとするかを選択する処理を行う。
【0035】
本実施の形態に係るECU1の制御部11は、車両100の車体に設けられた車輪速センサ5が検知する車輪速が所定速度を超えるか否かに応じて、無線通信部12の通信相手の選択を行う。車輪速センサ5は車輪の位相角度に応じた電気信号を出力し、ECU1が入力I/F部14にて車輪速センサ5の出力信号をサンプリングすることで制御部11が車輪の位相角度を取得し、この位相角度の変化を算出することで車輪速を取得する。制御部11は、例えば車輪速が所定速度(例えば3km/hなど)以下である場合、車両100が走行状態ではないと判断し、キーレスエントリシステムに関する処理を行うため、無線通信部12の通信相手に無線キー3を選択する。車輪速が所定速度を超える場合、車両100が走行状態であると判断し、TPMSに関する処理を行うため、無線通信部12の通信相手にセンサユニット6を選択する。
【0036】
<フローチャート>
図5は、本実施の形態に係るECU1が行う通信相手の選択処理の手順を示すフローチャートである。ECU1の制御部11は、車両100の車体に設けられた車輪速センサ5が検知する車輪速を、入力I/F部14を介して取得する(ステップS1)。制御部11は、取得した車輪速が所定速度を超えるか否かを判定する(ステップS2)。車輪速が所定速度を超える場合(S2:YES)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手にセンサユニット6を選択し(ステップS3)、ステップS1へ処理を戻す。車輪速が所定速度を超えない場合(S2:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS4)、ステップS1へ処理を戻す。
【0037】
図6は、本実施の形態に係るECU1が行うキーレスエントリシステムに関する処理の手順を示すフローチャートである。ECU1の制御部11は、無線通信部12にて無線キー3からの情報を受信したか否かを判定し(ステップS11)、情報を受信していない場合には(S11:NO)、情報を受信するまで待機する。無線キー3から情報を受信した場合(S11:YES)、制御部11は、受信情報に基づいて認証処理を行い(ステップS12)、認証に成功したか否かを判定する(ステップS13)。認証に成功した場合(S13:YES)、制御部11は、受信情報に含まれるロック/アンロックの要求に基づいてドアロック機構25を動作させ、車両100のドアのロック/アンロック処理を行い(ステップS14)、ステップS15へ処理を進める。認証に失敗した場合(S13:NO)、制御部11は、ロック/アンロックの処理を行わずに、ステップS15へ処理を進める。制御部11は、ステップS12での認証処理の結果を記憶部13などに記憶し(ステップS15)、ステップS11へ処理を戻す。
【0038】
図7は、本実施の形態に係るECU1が行うTPMSに関する処理の手順を示すフローチャートである。ECU1の制御部11は、無線通信部12にてセンサユニット6からの情報を受信すると共に(ステップS21)、入力I/F部14を介して車輪速センサ5の検知結果を取得する(ステップS22)。制御部11は、センサユニット6からの受信情報に含まれる車輪の位相角度から所定時間における位相角度の差分値を算出すると共に、車輪速センサ5にて検知した車輪の位相角度から同様に差分値を算出する(ステップS23)。制御部11は、センサユニット6に関する差分値と、車輪速センサ5に関する差分値との相関を調べることによって、車輪の装着位置を判定する(ステップS24)。
【0039】
次いで制御部11は、センサユニット6からの受信情報に含まれる車輪の空気圧を取得する(ステップS25)。制御部11は、取得した空気圧が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS26)。空気圧が許容範囲内でない場合(S26:NO)、制御部11は、表示装置24を用いた警告表示を行い(ステップS27)、ステップS21へ処理を戻す。空気圧が許容範囲内である場合(S26:YES)、制御部11は、警告表示を行わずに、ステップS21へ処理を戻す。
【0040】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る通信相手選択システムは、キーレスエントリシステムのための無線キー3と、TPMSのための車輪に設けられたセンサユニット6とが、車体に設けられたECU1との間で無線通信を行う。ECU1は、無線キー3との通信によりドアロック機構25を動作させ、車両のドアのロック/アンロックの制御を行う。ECU1は、センサユニット6との通信により車輪の装着位置を判定すると共に、空気圧の検知結果に応じた警告などを行う。またECU1は、車輪速センサ5にて車輪速を検知し、検知した車輪速に応じて無線通信の相手を選択する。ECU1は、例えば車輪速が所定速度を超える場合、TPMSのためにセンサユニット6との無線通信を行う。車輪速が所定速度を超えない場合、ECU1は、キーレスエントリシステムのため無線キー3との無線通信を行う。
【0041】
これにより本実施の形態に係る通信相手選択システムは、無線通信部12の通信相手を選択し、適切なタイミングでキーレスエントリシステム及びTPMSのシステム切替を実現することができる。また通信相手の選択に車輪速の情報を用いる構成とすることにより、TPMSを搭載した車両では、新たなハードウェア資源を追加することなく、システム切替の制御を実現することができる。
【0042】
なお本実施の形態においては、車両100に4つの車輪が装着される構成としたが、これに限るものではなく、3つ以下又は5つ以上の車輪を車両に装着する構成であってもよい。またECU1がキーレスエントリシステムに関する処理及びTPMSに関する処理等をすべて行う構成としたが、これに限るものではなく、これらを複数の装置にて分散処理する構成としてもよい。例えばロック制御用ECU、TPMS用ECU及び無線通信装置等の複数の装置が車内ネットワークなどを介して情報交換を行うことで、本実施の形態に係るECU1が行う処理を分散して行う構成としてもよい。またECU1は、車輪速センサ5、IGスイッチ21、シフトレバー22及びサイドブレーキ23からの信号を入力I/F部14を介して取得する構成としたが、これに限るものではなく、例えば車内ネットワークなどを介して取得する構成としてもよい。またECU1は、IGスイッチ21、シフトレバー22及びサイドブレーキ23からの入力信号が必要でなければ、これらを取得しない構成としてもよい。またECU1は、無線キー3との無線通信に応じたいわゆるキーレスエントリシステムを実現するものとしたが、これに限るものではなく、いわゆるスマートエントリシステムを実現するものであってもよい。またECU1は、車両100の車輪速に応じて無線通信の相手を選択する構成としたが、例えば以下の変形例に示すように、更に他の条件を考慮して無線通信の相手を選択する構成としてもよい。
【0043】
(変形例1)
変形例1に係る通信相手選択システムのECU1は、車両100の車輪速に加えて、車両のIGスイッチ21の切替状態に基づいて、無線通信部12の通信相手を選択する。
図8は、変形例1に係るECU1が行う通信相手の選択処理の手順を示すフローチャートである。変形例1に係るECU1の制御部11は、車輪速センサ5が検知する車輪速を取得し(ステップS31)、取得した車輪速が所定速度を超えるか否かを判定する(ステップS32)。車輪速が所定速度を超えない場合(S32:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS36)、ステップS31へ処理を戻す。
【0044】
車輪速が所定速度を超える場合(S32:YES)、制御部11は、入力I/F部14を介してIGスイッチ21の切替状態を取得し(ステップS33)、IGスイッチ21がオン状態であるか否かを判定する(ステップS34)。IGスイッチがオン状態である場合(S34:YES)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手にセンサユニット6を選択し(ステップS35)、ステップS31へ処理を戻す。IGスイッチがオフ状態である場合(S34:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS36)、ステップS31へ処理を戻す。
【0045】
(変形例2)
変形例2に係る通信相手選択システムのECU1は、車両100の車輪速に加えて、キーレスエントリシステムにおいて無線キー3との間で行った認証処理の結果に基づいて、無線通信部12の通信相手を選択する。
図9は、変形例2に係るECU1が行う通信相手の選択処理の手順を示すフローチャートである。変形例2に係るECU1の制御部11は、車輪速センサ5が検知する車輪速を取得し(ステップS41)、取得した車輪速が所定速度を超えるか否かを判定する(ステップS42)。車輪速が所定速度を超えない場合(S42:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS46)、ステップS41へ処理を戻す。
【0046】
車輪速が所定速度を超える場合(S42:YES)、制御部11は、記憶部12に記憶された認証処理の結果を読み出し(ステップS43)、認証処理の結果が認証成功であるか否かを判定する(ステップS44)。認証処理の結果が認証成功である場合(S44:YES)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手にセンサユニット6を選択し(ステップS45)、ステップS41へ処理を戻す。認証処理の結果が認証失敗である場合(S44:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS46)、ステップS41へ処理を戻す。
【0047】
(変形例3)
変形例3に係る通信相手選択システムのECU1は、車両100の車輪速に加えて、車両のシフトレバー22の操作位置に基づいて、無線通信部12の通信相手を選択する。
図10は、変形例3に係るECU1が行う通信相手の選択処理の手順を示すフローチャートである。変形例3に係るECU1の制御部11は、車輪速センサ5が検知する車輪速を取得し(ステップS51)、取得した車輪速が所定速度を超えるか否かを判定する(ステップS52)。車輪速が所定速度を超えない場合(S52:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS56)、ステップS51へ処理を戻す。
【0048】
車輪速が所定速度を超える場合(S52:YES)、制御部11は、入力I/F部14を介してシフトレバー22の操作位置を取得し(ステップS53)、シフトレバー22の操作位置がパーキングであるか否かを判定する(ステップS54)。シフトレバー22の操作位置がパーキングでない場合(S54:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手にセンサユニット6を選択し(ステップS55)、ステップS51へ処理を戻す。シフトレバー22の操作位置がパーキングである場合(S54:YES)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS56)、ステップS51へ処理を戻す。
【0049】
(変形例4)
変形例4に係る通信相手選択システムのECU1は、車両100の車輪速に加えて、車両のサイドブレーキ23のオン/オフ状態に基づいて、無線通信部12の通信相手を選択する。
図11は、変形例4に係るECU1が行う通信相手の選択処理の手順を示すフローチャートである。変形例4に係るECU1の制御部11は、車輪速センサ5が検知する車輪速を取得し(ステップS61)、取得した車輪速が所定速度を超えるか否かを判定する(ステップS62)。車輪速が所定速度を超えない場合(S62:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS66)、ステップS61へ処理を戻す。
【0050】
車輪速が所定速度を超える場合(S62:YES)、制御部11は、入力I/F部14を介してサイドブレーキ23のオン/オフ状態を取得し(ステップS63)、サイドブレーキ23がオフ状態であるか否かを判定する(ステップS64)。サイドブレーキ23がオフ状態である場合(S64:YES)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手にセンサユニット6を選択し(ステップS65)、ステップS61へ処理を戻す。サイドブレーキ23がオン状態である場合(S64:NO)、制御部11は、無線通信部12の無線通信の相手に無線キー3を選択し(ステップS66)、ステップS61へ処理を戻す。
【0051】
以上の変形例1〜4に示すように、ECU1が無線通信の相手を選択する条件は、車両100の車輪速が所定速度を超えるか否かの条件のみでなく、その他の条件を加えてもよい。ECU1は、変形例1〜4に示した条件を複数組み合わせて無線通信の相手を選択してもよく、変形例1〜4以外の条件を更に組み合わせて選択を行ってもよい。