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特開2015-140304常温揮散性殺虫剤組成物、及びこれを用いた有害昆虫防除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-140304(P2015-140304A)
(43)【公開日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】常温揮散性殺虫剤組成物、及びこれを用いた有害昆虫防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/22 20060101AFI20150707BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20150707BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20150707BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20150707BHJP
   A01N 53/02 20060101ALI20150707BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20150707BHJP
【FI】
   A01N37/22
   A01P7/04
   A01N25/18 102C
   A01N53/00 506Z
   A01N53/00 502A
   A01M1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-12579(P2014-12579)
(22)【出願日】2014年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香谷 康幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 憲忠
(72)【発明者】
【氏名】南手 良裕
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA42
2B121CA51
2B121CC02
2B121CC06
2B121CC27
2B121CC31
2B121CC37
2B121EA01
2B121EA21
4H011AC02
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB15
4H011DA12
4H011DB04
4H011DF04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有害昆虫の防除に有用な常温揮散性殺虫剤組成物、及びこれを用いた有害昆虫防除方法を提供する。
【解決手段】アミド化合物(N,2−ジメチル−N−(p−トリル)−プロパンアミド、N,2−ジメチル−N−フェニル−ブタンアミド、N,2−ジメチル−N−(p−トリル)−ブタンアミド、又はN,2−ジメチル−N−フェニル−プロパンアミド)と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有することを特徴とする常温揮散性殺虫剤組成物、及びこれを用いた有害昆虫防除方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式 (I)
【化1】


(式中、R1はメチル基または水素原子であり、R2はメチル基または水素原子である)
で示されるアミド化合物と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有することを特徴とする常温揮散性殺虫剤組成物。
【請求項2】
前記アミド化合物が、前記式(I)において、R1がメチル基のときR2は水素原子であり、R1が水素原子のときR2はメチル基であることを特徴とする請求項1に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
【請求項3】
前記合成ピレスロイド系化合物が、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
【請求項4】
前記合成ピレスロイド系化合物がエムペントリン及び/又はトランスフルトリンであり、前記アミド化合物と、当該エムペントリン及び/又はトランスフルトリンとを質量比で10:1〜1:10の割合で含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
【請求項5】
下記式 (I)
【化2】

(式中、R1はメチル基又は水素原子であり、R2はメチル基又は水素原子である)
で示されるアミド化合物と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有する常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含むことを特徴とする有害昆虫防除方法。
【請求項6】
前記アミド化合物が、前記式(1)において、R1がメチル基のときR2は水素原子であり、R1が水素原子のときR2はメチル基である常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の有害昆虫防除方法。
【請求項7】
合成ピレスロイド系化合物が、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンから選ばれる1種以上である常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の有害昆虫防除方法。
【請求項8】
前記合成ピレスロイド系化合物がエムペントリン及び/又はトランスフルトリンであり、前記アミド化合物と、当該エムペントリン及び/又はトランスフルトリンとを質量比で10:1〜1:10の割合で含有する常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の有害昆虫防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温揮散性殺虫剤組成物、及びこれを用いた有害昆虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有害昆虫に対して優れたノックダウンと致死効力を有し、しかも人畜に優れた安全性を持つ化合物の代表的な例として除虫菊花に含まれるピレトリン類及びピレトリン類に構造を模して人工的に合成された合成ピレスロイド系化合物が挙げられる。しかし、合成ピレスロイド系化合物は高価であり、その使用量を抑えても同程度以上の殺虫活性を示すような殺虫剤組成物の開発が求められている。
【0003】
また近年、防虫剤や殺虫剤の有効成分としてエムペントリン、トランスフルトリンなどの常温で揮散性を有する合成ピレスロイド系化合物が用いられており、これらと共に用いて相乗効果を奏するような常温揮散性の殺虫剤組成物の開発は重要である。
【0004】
アミド化合物の中には殺虫、忌避活性を有するものがあることが知られている。例えば、ディート(N,N−ジエチル−m−トルアミド)は害虫忌避剤として広く知られており、非特許文献1にはN,N−ジエチル−ベンズアミドが殺虫活性を有することが記載されている。
【0005】
また、特許文献1には、ロテノン、ピレトリンなどの天然物由来の殺虫性化合物にアミド化合物を少量添加すると殺虫活性が相乗効果的に向上することが記載されている。しかしながら、これらのアミド化合物の常温での揮散性に由来した殺虫活性増強作用については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2386779号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Meditsinskaya Parazitologiya i Parazitarnye Bolezni (1974), 43(5), 573-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、より優れた相乗効果を奏し有害昆虫の防除に有用な常温揮散性殺虫剤組成物、および当該殺虫剤組成物を用いた有害昆虫防除方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために種々検討した結果、特定のアミド化合物と、ある種の合成ピレスロイド系化合物との混合使用が、高い相乗効果を生みだし、とりわけ高いノックダウン活性を示すことを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成に係るものである。
(1)下記式 (I)
【化1】
(式中、R1はメチル基または水素原子であり、R2はメチル基または水素原子である)
で示されるアミド化合物と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有する常温揮散性殺虫剤組成物。
(2)前記アミド化合物が、前記式(I)において、R1がメチル基のときR2は水素原子であり、R1が水素原子のときR2はメチル基である(1)に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
(3)前記合成ピレスロイド系化合物が、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンから選ばれる1種以上である(1)又は(2)に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
(4)前記合成ピレスロイド系化合物がエムペントリン及び/又はトランスフルトリンであり、前記アミド化合物と、当該エムペントリン及び/又はトランスフルトリンとを質量比で10:1〜1:10の割合で含有する(2)又は(3)に記載の常温揮散性殺虫剤組成物。
(5)下記式 (I)
【化2】
(式中、R1はメチル基又は水素原子であり、R2はメチル基又は水素原子である)
で示されるアミド化合物と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有する常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含む有害昆虫防除方法。
(6)前記アミド化合物が、前記式(I)において、R1がメチル基のときR2は水素原子であり、R1が水素原子のときR2はメチル基である常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含む(5)に記載の有害昆虫防除方法。
(7)合成ピレスロイド系化合物が、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンから選ばれる1種以上である常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含む(5)又は(6)に記載の有害昆虫防除方法。
(8)前記合成ピレスロイド系化合物がエムペントリン及び/又はトランスフルトリンであり、前記アミド化合物と、当該エムペントリン及び/又はトランスフルトリンとを質量比で10:1〜1:10の割合で含有する常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露する工程を含む(6)又は(7)に記載の有害昆虫防除方法。
【発明の効果】
【0011】
特定のアミド化合物と、合成ピレスロイド系化合物から選ばれる1種以上とを有効成分として含有する本発明の常温揮散性殺虫剤組成物を有害昆虫に曝露すると、殺虫剤単独で用いる場合と比べて短い時間でノックダウンに至らせることができる。また、本発明で用いるアミド化合物は、グレープフルーツ様の芳香剤として用いられており、含浸、塗布または散布などの形態で好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いる特定のアミド化合物は、
下記式 (I)
【化3】
(式中、R1はメチル基又は水素原子であり、R2はメチル基又は水素原子である)で示されるものである。具体的な化合物名を示せば以下のとおりである。
化合物A
N,2−ジメチル−N−(p−トリル)−プロパンアミド
化合物B
N,2−ジメチル−N−フェニル−ブタンアミド
化合物C
N,2−ジメチル−N−(p−トリル)−ブタンアミド
化合物D
N,2−ジメチル−N−フェニル−プロパンアミド
このうち、化合物Cは新規アミド化合物であり、一方、化合物A、B及びDは公知のアミド化合物である。また、前記式(I)において、R1がメチル基のときR2は水素原子である化合物A、又はR1が水素原子のときR2はメチル基である化合物Bが好ましい。
【0013】
本発明では、前記アミド化合物の常温揮散性殺虫剤組成物中の含有量は、当該組成物が適用される製剤にもよるが0.01〜50質量%が適当である。
【0014】
一方、本発明で用いることができる合成ピレスロイド系化合物としては、揮散性の高いエムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、及びプロフルトリンなどが挙げられ、なかでもエムペントリン及びトランスフルトリンが好適である。
かかる合成ピレスロイド系化合物の常温揮散性殺虫剤組成物中の含有量も同様に0.01〜50質量%が適当である。
【0015】
本発明は、前記特定のアミド化合物と合成ピレスロイド系化合物を好適な割合で組合せて配合し、顕著な相乗効果に基づく、とりわけ高いノックダウン活性を生起せしめたことに特徴を有するものである。
ここで、アミド化合物と合成ピレスロイド系化合物との質量比は、10:1〜1:10程度が適当である。
【0016】
本発明の常温揮散性殺虫剤組成物が効力を有する有害昆虫としては、具体的には例えば以下の害虫等があげられる。
双翅目害虫:
アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ノミバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類、ヌカカ類等;
網翅目害虫:
チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等;
膜翅目害虫:
アリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、カブラハバチ等のハバチ類等;
隠翅目害虫:
イヌノミ、ネコノミ、ヒトノミ等;
シラミ目害虫:
ヒトジラミ、ケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ等;
等翅目害虫:
ヤマトシロアリ、イエシロアリ等;
鞘翅目害虫:
ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、コクゾウムシ、イネミズゾウムシ、ワタミゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、ウリハムシ等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ属 (Epilachna spp.)、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ等;
ダニ類:
コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サナアシニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等のハダニ類、フタトゲチマダニ等のマダニ類。
【0017】
本発明の常温揮散性殺虫剤組成物は、そのまま使用に供してもよいが、通常下記のような製剤に調製して使用するのが一般的である。そのような製剤としては、例えば、油剤、乳剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、ファン式製剤、自然蒸散製剤(樹脂蒸散剤、紙蒸散剤、不織布蒸散剤、編織物蒸散剤、昇華性錠剤等)、ピエゾ式殺虫製剤、直接接触剤(シート状接触剤、テープ状接触剤、ネット状接触剤等)、及び毒餌などが挙げられる。
【0018】
前記各種製剤を調製するにあたっては、必要に応じ溶剤(エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、灯油等の炭化水素類、グリコール類、エステル類など)、希釈剤(ケイ酸、カオリン、タルク等の各種鉱物質粉末や、木粉、小麦粉等の各種植物質粉末など)、界面活性剤、分散剤、徐放化剤、噴射剤などを用いることができ、また、従来から知られている各種処理手段を採用して製することができる。また、前記組成物に、安定剤、香料、着色剤、帯電防止剤などを適宜配合してもよく、更に、前記組成物の揮散性能に支障を来たさない限りにおいて、揮散性の高い他の忌避成分(例えば、ディート、ヒノキチオール、カルボン、サフロール、シトロネラール、ケイ皮アルデヒドなどの防虫香料など)、殺ダニ剤、殺菌剤、消臭剤などを適宜添加して多目的組成物とすることもできる。
【0019】
次に、本発明組成物の適用が特に有用なファン式製剤、自然蒸散製剤について述べる。ファン式製剤は、本発明組成物を薬剤担持体に担持させ、この薬剤担持体に遠心力及び/又はファンによる風力を作用させて有効成分を揮散させる形態である。一方、自然蒸散製剤は、薬剤担持体が相応の表面積を有し有効成分を自然揮散させるものである。
【0020】
前者のファン式製剤では、例えば、ハニカム状に形成した紙、パルプ等のセルロース系もしくは多孔質セラミック系の薬剤担持体に、そのまま静止状態でファンからの風力を当ててもよいが、好ましくは粒径2〜8mmのセルロース製(紙、パルプ、ビスコース等)ビーズ、もしくは樹脂繊維製シートからなる薬剤担持体を開口部が設けられたカートリッジに収納し、このカートリッジを回転させる方式を採用する。このように、遠心力が作用する状況下で薬剤を揮散させることによって、より効率的な揮散性能を奏しえる。なお、カートリッジをドーナツ状とし、その内側にファンを一体的に形成すると、揮散性能の点で一層有利となり成型上の問題も生じない。カートリッジの材質はポリエステルなどの薬剤非吸着性のものが好ましく、また、ファンやカートリッジを回転させるモーター駆動用の電源としては、乾電池が使いやすいが、太陽電池や蓄電池、あるいは交流電源も採用しうる。
【0021】
一方、自然蒸散製剤の場合には、十分量の薬剤を揮散させるために、薬剤担持体の表面積として10〜2000cm程度確保するのが好ましい。そして、薬剤担持体は、通常、空気の移動を受けて薬剤が揮散しやすいように設計され、例えば、紙、織布、不織布、セルロース基材、もしくはポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック基材からなるシート状、ハニカム構造体、段ボール積層体等に薬剤を含浸させたものや、あるいは、網状、ネット状、もしくは立体構造体の樹脂成型体に薬剤を練り込みや塗布等の手段で担持させたものであってもよい。ここで、練り込みタイプの樹脂成型体を構成する樹脂の種類としては、ポリエチレンに必要に応じてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)やEMMA(エチレンメタクリル酸メチル共重合体)を配合したものが、薬剤の揮散を安定してコントロールできるほか、屋外使用に際し薬剤の耐光性、耐雨性にも優れるので好ましい。
更に、アダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピル−トリオキサン等の昇華性担体やポリビニルアルコール、アルギン酸、カラギーナン等のゲル化剤を用いた形態に調製することもできる。
【0022】
薬剤担持体に担持させる本発明組成物の薬剤量は、担持体の材質、使用場所、使用期間などを考慮して適宜決定すればよいが、通常20〜2000mgが適当である。組成物の担持量が20mgより少ないと、有害昆虫防除効果の持続性に不足を生じる場合があり、一方、2000mgを超えても使用期間が必要以上に延長されるだけで格別のメリットはない。なお、薬剤担持量と連動する着色剤を担持させ、薬剤の揮散終了を示すインジケーターとして利用することも可能である。
【0023】
こうして得られた本発明の自然蒸散製剤は、モーター等の駆動装置を使用せずに外部から受ける風力、例えば、エアーコンディショナー、扇風機のエアーや、屋外の風あるいは窓を通して入り込む風を利用して薬剤担持体から薬剤を揮散させて有害昆虫防除効果を奏することはもちろん、タンスやクローゼットのような風通しの少ない場面でも有効に有害昆虫防除効果を発揮しうるものである。ここで、有害昆虫防除効果とは致死に至る殺虫作用を必然とせず、蚊などに対する刺咬阻止、忌避作用、あるいは衣料害虫の衣類に対する食害防止効果を含めた広義の防虫効果を意味する。なお、有効成分の揮散量は使用場所や使用条件等にもよるが、1時間当たり0.01〜0.5mg程度が適当である。
【0024】
本発明の有害昆虫防除方法によれば、屋内はもちろん屋外においても、蚊や蚋、ハエ、ユスリカ、衣料害虫のイガやカツオブシムシなどをはじめ、前記した各種有害昆虫に対し、簡便でしかも長期間にわたり優れた有害昆虫防除効果を示すので極めて実用性が高い。
【0025】
以下、合成例及び試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
まず、化合物Cの合成例を示す。
合成例1
トルエン4mlに2−メチル−ブタン酸500mg、ピリジン0.5mlを溶解し、氷冷下でオキサリルクロライド622mgをトルエン4mlに溶解させた溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。その後、氷冷下でトルエン4mlにN、4−ジメチル−アニリン594mg、ピリジン0.5mlを溶解させた溶液を滴下し、さらに室温で5時間攪拌した。その後、反応液を5%塩酸約10mlに注加し、酢酸エチル20mlで2回抽出した。有機層を合わせて3.5%炭酸カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付して、化合物Cで示されるN,2−ジメチル−N−(p−トリル)−ブタンアミド474mgを得た。
【化4】
【0027】
化合物Cの物性値
H−NMR(CDCl3, TMS)δ(ppm):0.78(t,3H)、1.01(d,3H)、1.65(m,2H)、2.31(m,1H)、2.38(s,3H)、3.24(s,3H)、7.04(d,2H)、7.21(d,2H)
【0028】
試験例1 アミド化合物とエムペントリンとの混合剤のアカイエカに対する常温揮散性試験
ガラスシャーレ(直径:9cm、高さ:1.9cm)にアカイエカ雌成虫を10頭放飼し、16メッシュの金網で蓋をする。同じサイズのガラスシャーレ(直径:9cm、高さ:1.9cm)に表1のように調製した薬剤のアセトン溶液(比較化合物1、2及び殺虫剤組成物1、2、3)を滴下し、アセトンを風乾した。ついで、このガラスシャーレを上記金網の上に倒置した。そして、5分後および10分後にノックダウンしたアカイエカ雌成虫の数を調査し、ノックダウン率を求めた。
試験結果を表2に示す。
【化5】
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
試験の結果、本殺虫剤組成物1、2及び3は、比較化合物1(前記化合物A)及び比較化合物2(エムペントリン)をそれぞれ単独で用いる場合に比べて、とりわけ高いノックダウン活性を示すことが明らかとなった。
【0032】
試験例2 アミド化合物とトランスフルトリンとの混合剤のアカイエカに対する常温揮散性試験
ガラスシャーレ(直径:9cm、高さ:1.9cm)にアカイエカ雌成虫を10頭放飼し、16メッシュの金網で蓋をする。同じサイズのガラスシャーレ(直径:9cm、高さ:1.9cm)に表3のように調製した薬剤のアセトン溶液(比較化合物3、4及び殺虫剤組成物4、5)を滴下し、アセトンを風乾した。
ついで、このガラスシャーレを上記金網の上に倒置した。そして、5分後、10分後にノックダウンしたアカイエカ雌成虫の数を調査し、ノックダウン率を求めた。
試験結果を表4に示す。
【化6】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
試験の結果、本殺虫剤組成物4及び5は比較化合物3(前記化合物A)及び比較化合物4(トランスフルトリン)をそれぞれ単独で用いる場合に比べて、とりわけ高いノックダウン活性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、広範な有害昆虫防除を目的として利用可能である。