【解決手段】減衰機構を内蔵するシリンダ10と、シリンダ10から一部が突出したピストンロッド20と、ピストンロッド20のシリンダ10から突出した部分に配置され、耐水性表面層を有するポリウレタンフォームを備えるバンプラバー41と、を備える懸架装置100。
前記バンプラバーの前記耐水性表面層は、シリルイソシアネートとシリコーンポリオールの混合物=10/90〜40/60(質量比)を含む耐水・耐候性塗料を前記ポリウレタンフォームの表面に塗布することにより形成される請求項1に記載の懸架装置。
前記バンプラバーの前記耐水性表面層は、水系フッ素樹脂と架橋剤とを含む耐水・耐候性塗料を前記ポリウレタンフォームの表面に塗布することにより形成される請求項1に記載の懸架装置。
前記バンプラバーの前記耐水性表面層は、ビスフェノールAタイプのアルコキシシラン加水分解縮合物とシリカコロイドゾル及び硬化触媒を必須成分とするコーティング用組成物を前記ポリウレタンフォームの表面に塗布することにより形成される請求項1に記載の懸架装置。
前記バンプラバーの前記ポリウレタンフォームは、脂肪族系イソシアネートとポリオール成分とを触媒の存在下に反応させて得られる無黄変ポリウレタンを有する請求項1に記載の懸架装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る懸架装置100の概略構成を示す図である。
図1に示すように、懸架装置100は、減衰装置(不図示)を内蔵するシリンダ10と、このシリンダ10内に収納されたピストン(不図示)を支持するピストンロッド20と、このピストンロッド20の外側に配置されたスプリング30と、を備えている。ピストンロッド20は、円柱状の部材であり、円柱の軸方向の一方側の端部にピストンが取り付けられ、軸方向の他方側の端部にナット21が取り付けられている。
【0009】
尚、本実施の形態では、減衰装置(不図示)として、内部にオイル等の液体を封入した油圧緩衝装置を用いている。
また、以下の説明において、
図1に示す懸架装置100の軸方向の
図1下側を「一方側」と称し、軸方向の
図1上側を「他方側」と称して説明を行う。
【0010】
懸架装置100は、シリンダ10の外周に取り付けられてスプリング30の下端部を支持する下スプリングシート31と、ピストンロッド20の軸方向の他方の端部側における外周に取り付けられてスプリング30の上端部を支持する上スプリングシート32とを備えている。スプリング30の下端部と下スプリングシート31との間には下シートラバー35が介在し、スプリング30の上端部と上スプリングシート32との間には上シートラバー36が介在している。
【0011】
懸架装置100は、シリンダ10の下部に設けられた車輪側取付部40を備えている。一方、上スプリングシート32には、この懸架装置100を車体に取り付けるためのボルト33が取り付けられている。
【0012】
また、懸架装置100は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の外周に圧入されたポリウレタンフォームからなるバンプラバー41と、このバンプラバー41の外周部に配置されたバンプラバーカップ42と、を備えている。バンプラバーカップ42は、シリンダ10とバンプラバー41との間においてシリンダ10の外周をカバーしている。
【0013】
また、懸架装置100は、シリンダ10におけるピストンロッド20の摺動部に装着されたバンプストッパキャップ43を備えている。このバンプストッパキャップ43には、懸架装置100の最圧縮時にバンプラバー41が衝突するキャップ板43aが取り付けられている。
【0014】
懸架装置100は、バンプラバー41の一方の端部側に設けられる第1カバー部材51を有している。第1カバー部材51は、バンプラバー41およびピストンロッド20の一方側の外周、シリンダ10の他方側の外周を覆う。
【0015】
また、懸架装置100は、ピストンロッド20の上端部側において上下方向に配置され、振動を吸収する複数(本実施の形態においては2個)のマウントラバー61と、複数のマウントラバー61の内側に配置された円筒状のマウントカラー62と、バンプラバーカップ42の上面とともに複数のマウントラバー61を上下から挟む上座金63と、を備えている。複数のマウントラバー61の内の上側のマウントラバー61は、上スプリングシート32にその上端から凹むように形成された凹みに挿入されている。下側のマウントラバー61は、上スプリングシート32の下方に配置されたマウントラバーカップ65により、その上端および外周が覆われている。
【0016】
図2(a)は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の長さが最短となる縮み状態を示す図であり、
図2(b)は、シリンダ10から飛び出しているピストンロッド20の長さが最長となる伸び状態を示す図である。
【0017】
図2(a)に示す縮み状態では、ピストンロッド20に装着されたバンプストッパキャップ43のキャップ板43aがバンプラバー41の下端部に当接して、バンプラバー41が圧縮弾性変形する。このとき、シリンダ10の上部に設けたバンプストッパキャップ43のキャップ板43aがバンプラバー41に衝突し、バンプラバー41が圧縮変形することにより、減衰装置(不図示)の過度の収縮変位を規制している。また、
図2(b)に示す伸び状態で、バンプラバー41は、ピストンロッド20との摺動抵抗により、ピストンロッド20の円柱の軸方向に延伸変形する。
【0018】
以上のように構成された懸架装置100は、
図2(a)に示す縮み状態および
図2(b)に示す伸び状態に変化し、スプリング30にて路面からの衝撃を吸収したりシリンダ10が内蔵する減衰装置にてスプリング30の伸縮振動を制振したりすることで、路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車体を路面に対して押さえつける機能とを果たす。これにより、車両の乗り心地や操縦安定性が向上する。
【0019】
次に、バンプラバー41について説明する。
図1に示すように、バンプラバー41は、全体として筒状の形状を有し、ピストンロッド20を中心孔に挿通させている。本実施の形態では、バンプラバー41の外周面には複数の環状溝が形成されており、主として環状溝より下側の部分がシリンダ10の上面に当接して圧縮弾性変形する。また、本実施の形態では、バンプラバー41の下端部の内周側にも環状溝が形成されており、更にその外径も環状溝よりも上側の部分に対し小径とされていて、下端部全体が変形し易いものとされている。
【0020】
バンプラバー41は、ポリウレタンフォームを含む本体と、この本体の表面に設けられた耐水性表面層とを有している。ポリウレタンフォームは、通常用いられるポリオール成分とイソシアネート成分とから得ることができる。
ポリオール成分の例としては、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール等のポリエーテルポリオール、カルボン酸とポリオールの重縮合から得られるポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。その中でも、成形性及びコスト面で優位なポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0021】
イソシアネート成分の例としては、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI等の変性MDI、2,4−トリレン−ジイソシアナート(2,4−TDI)、2,6−トリレン−ジイソシアナート(2,6−TDI)等が挙げられる。その中でも、成形性、生産性、取扱い作業性の点で優位なポリメリックMDI等の変性MDIが好ましい。尚、本実施の形態では、イソシアネート成分としてナフチレン−ジイソシアネート(NDI)の使用は好ましくない。
上記ポリオール成分とイソシアネート成分との反応においては、触媒、架橋剤、発泡剤等を適宜用いることができる。
【0022】
また、バンプラバー41を構成するポリウレタンフォームは、耐水性、耐候性等が改良されたポリウレタン材料を採用することができる。このようなポリウレタン材料としては、例えば、イソシアネート成分として脂肪族系イソシアネートとポリオール成分とを触媒の存在下に反応、硬化させて得られる無黄変ポリウレタン(例えば、特開2001−72738号公報、特開2008−88375号公報参照);水酸基含有共役ジエンポリマー水素化物を含むポリオール成分とイソシアネート成分とから得られる耐候性等が改良されたポリウレタン(特開2011−231317号公報)等が挙げられる。
さらに、耐水性、耐候性に優れた樹脂材料とポリウレタン材料とを混合することも可能である。このような樹脂材料としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系フッ素樹脂等が挙げられる。
【0023】
バンプラバー41を構成するポリウレタンフォームの表面に設けられている耐水性表面層は、バンプラバー41の本体と比較して耐水性や耐候性に優れた材料を用いて形成される。また、耐スチーム性、水蒸気バリア性が良好な材料を用いることもできる。耐水性表面層が設けられることにより、泥水環境下の使用において、懸架装置100が備えるバンプラバー41の耐泥水含浸性が改良される。
【0024】
ポリウレタンフォームの表面に耐水性表面層を設ける方法は特に限定されない。本実施の形態では、例えば、以下の方法が挙げられる。具体的には、1)耐水・耐候性を有する他の樹脂または合成ゴムからなる表面層とポリウレタンフォーム(本体)との積層構造を形成する方法;2)耐水・耐候性塗料等を用いてポリウレタンフォーム(本体)の表面に耐水処理を施す方法;3)成形したポリウレタンフォーム(本体)の外周に、前述した耐水性や耐候性が改良されたポリウレタン材料からなる外層を設けた積層構造とする方法;4)ポリウレタンフォーム(本体)の表面に、水蒸気バリア性コーティング剤を塗布する方法、等が挙げられる。
【0025】
(1)耐水・耐候性を有する他の樹脂または合成ゴムからなる表面層とポリウレタンフォーム(本体)との積層構造を形成する方法
ポリウレタンフォーム(本体)の表面層を形成する他の樹脂等としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリレフイン樹脂等が挙げられ、なかでもポリ塩化ビニル樹脂が好ましい。合成ゴムとしては、例えば、防水性ポリウレタンゴムが挙げられる。
防水性ポリウレタンゴムとしては、例えば、フッ素化ジオール化合物を含むポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、触媒の存在下に反応、硬化させて得られる防水性ポリウレタンゴムが挙げられる。
上記表面層とポリウレタンフォーム(本体)との積層構造の成形方法としては、例えば、2色成型法、押出し成形法等が挙げられる。
【0026】
(2)耐水・耐候性塗料等を用いてポリウレタンフォーム(本体)の表面に耐水処理を施す方法
耐水・耐候性塗料としては、シリルイソシアネートとシリコーンポリオールの混合物;水系樹脂を含むサスペンジョンまたはエマルジョン系塗料;アクリル系塗料;アクリルシリコン系塗料;ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とフッ素化ジオール化合物及び触媒を含むはっ水性ポリウレタン用組成物等が挙げられる。
【0027】
シリルイソシアネートとシリコーンポリオールの混合物=10/90〜40/60(質量比)のシリルイソシアネートとしては、例えば、メチルトリイソシアネートシラン、エチルトリイソシアネートシラン、イソプロピルトリイソシアネートシラン、ブチルトリイソシアネートシラン、フェニルトリイソシアネートシラン、ジメチルジイソシアネートシラン、ジエチルジイソシアネートシラン、テトライソシアネートシラン等が挙げられる。
【0028】
シリコーンポリオールとしては、少くとも1個の末端水酸基を分子中に有するポリシロキサンが挙げられる。具体的には、例えば、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等が用いられる。
このようなシリルイソシアネートとシリコーンポリオールの混合物の具体的なものとしては、マツモトファインケミカル株式会社製のオルガチックス(登録商標)SIC−330、SIC−434等が挙げられる。
【0029】
水系樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの1種又は2種以上の水系樹脂を混合して用いることができる。ここで、水系樹脂とは、溶媒が水であればよく、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、サスペンジョンタイプなど、どのようなタイプのものであってもよい。
【0030】
上記水系樹脂のなかでも、水系フッ素樹脂が好ましい。水系フッ素樹脂としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等が挙げられる。特にこれらの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が好ましく、更に好ましくは、ポリテトラフルオロエチレンの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が用いられる。フッ素樹脂微粒子の粒径は、通常、5μm以下、特に、0.05〜1μmである。
【0031】
上記水系樹脂を含む塗料には、通常、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、フェノール系等の架橋剤が添加される。架橋剤の添加量は、通常、樹脂100重量部に対して0.1重量部〜50重量部の範囲とされる。
【0032】
アクリル系塗料としては、例えば、水酸基を有する水性ポリウレタン樹脂及び炭素数が4以上の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマー、水酸基含有重合性不飽和モノマー、酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを共重合することにより得られるアクリル共重合体を中和剤にて中和することにより得られる水溶性アクリル樹脂を含有する水性アクリル系組成物等が挙げられる。
【0033】
アクリルシリコン系塗料としては、例えば、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー又はポリシロキサンマクロモノマーと、その他の重合性不飽和モノマーとからなるモノマー混合物の重合体;アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサンと水酸基含有アクリル樹脂とを脱アルコール反応させてなる縮重合体、を樹脂成分として含有する塗料を挙げることができる。
アクリルシリコン系塗料は、例えば、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を含有していてもよい。上記塗料は、バインダ成分以外に有機溶剤、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類、硬化触媒、塗面調整剤、たれ止め剤などの塗料添加剤などを含有することができる。
【0034】
はっ水性ポリウレタン用組成物に含まれるフッ素化ジオール化合物は、例えば、HOCH
2(CF
2)
3CH
2OH,HOCH
2(CF
2)
5CH
2OH,HOCH
2(CF
2)
8CH
2OH,HOCH
2(CF
2)
12CH
2OH,HOCH
2(CF
2)
15CH
2OH,HO(CH
2)
2CF(CF
2)
4CF(CH
2)
2OHなどを挙げることができる。また、触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等が挙げられる。
【0035】
上記塗料を用いてポリウレタンフォーム(本体)に表面層を形成する方法は、特に限定されない。本実施の形態では、例えば、上記各成分を含む塗料を調製し、この塗料をディッピング法やスプレー法によりポリウレタンフォーム(本体)の表面に塗布し、乾燥・硬化する方法等が挙げられる。
【0036】
(3)成形したポリウレタンフォーム(本体)の外周に、前述した耐水性や耐候性が改良されたポリウレタン材料からなる外層を設けた積層構造とする方法
内層側のポリウレタンフォーム(本体)の表面に、外層側の表面層を形成するポリウレタン材料としては、前述したように、イソシアネート成分として脂肪族系イソシアネートとポリオール成分とを触媒の存在下に硬化反応させて得られる無黄変ポリウレタン、水酸基含有共役ジエンポリマー水素化物を含むポリオール成分とイソシアネート成分とから得られるポリウレタンが挙げられる。これらの積層構造の製法は、例えば、2色成型法、押出し成形法等が挙げられる。
【0037】
(4)ポリウレタンフォーム(本体)の表面に、水蒸気バリア性コーティング剤を塗布する方法
水蒸気バリア性コーティング剤としては、例えば、ビスフェノールAタイプのアルコキシシラン加水分解縮合物とシリカコロイドゾル及び硬化触媒を必須成分とするコーティング用組成物;1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび硬化触媒を含むシリコーン樹脂組成物が挙げられる。
【0038】
上記コーティング用組成物のビスフェノールAタイプのアルコキシシラン加水分解縮合物は、2つ以上のフェノール基を有する化合物と、アリル化合物又はメタリル化合物とを反応させて、アリル基又はメタリル基を有するフェノキシエーテル化合物を合成した後、ヒドロシリル基を有するアルコキシシランを、白金触媒の存在下で反応させることにより調製される。
【0039】
2つ以上のフェノール基を有する化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。アリル基又はメタリル基を有するフェノキシエーテル化合物としては、アリルクロライド、アリルブロマイド、アリルヨージド等のアリル化合物と、メタリルクロライド、メタリルブロマイド、メタリルヨージド等のメタリル化合物とを、アルカリ金属水酸化物等の塩基の存在下に、反応に不活性な溶媒中で反応させることにより調製される。ヒドロシリル基を有するアルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
上記シリコーン樹脂組成物の1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R)
2SiO
2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R)
3SiO
1/2単位)で封鎖された直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンである。
1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、成分中のケイ素原子に結合した水素原子と前述したオルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基とが付加反応することにより硬化物を形成する。
【0041】
上記水蒸気バリア性コーティング剤を、バンプラバー41のポリウレタンフォーム(本体)の表面に塗布し、硬化することにより表面層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、スプレー、浸漬等が挙げられる。
【0042】
本実施の形態において、バンプラバー41を構成するポリウレタンフォームからなる本体の表面に設けられた耐水性表面層の厚さは特に限定されない。本実施の形態では、1μm〜1mmの範囲で選択される。
【0043】
本実施の形態が適用される懸架装置100のバンプラバー41は、耐泥水含浸性が改良されることにより、内部に泥水が含浸することが低減し、ピストンロッド等の鉄製部品が腐食されることが防止される。
また、耐水性表面層を設けたバンプラバー41を備えた懸架装置100は、後述する第3実施形態のように、バンプラバー41の外側に第2カバー部材52(
図4参照)を設ける必要がなくなる。そのため、懸架装置100の径方向の大きさのコンパクト化を図ることが出来、車体のレイアウトに制限を受けにくい。また、本実施の形態では、バンプラバー41の大部分が露出しているが、第1カバー部材51を取り付けることにより、バンプラバー41とピストンロッド20の間から泥水が侵入することが防止される。
【0044】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態が適用される懸架装置100について説明する。
図3は、第2実施形態に係る懸架装置100の概略構成を示す図である。尚、第2実施形態において、上述した第1実施形態(
図1参照)における部材等と同様な構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態の懸架装置100は、第1実施形態のように、バンプラバー41の外周を覆う第1カバー部材51(
図1参照)を有していない。
このように、本実施の形態に係る懸架装置100では、耐泥水含浸性が改良されたバンプラバー41を設けることにより、第1実施形態における第1カバー部材51(
図1参照)と後述する第3実施形態における第2カバー部材52(
図4参照)を設ける必要がなくなる。このため、車体レイアウトの自由度がさらに向上し、部品点数を削減できる。
【0045】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態が適用される懸架装置100について説明する。
図4は、第3実施形態に係る懸架装置100の概略構成を示す図である。尚、第3実施形態において、上述した第1実施形態(
図1参照)における部材等と同様な構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
図4に示すように、第3実施形態の懸架装置100は、バンプラバー41の一方側に設けられる第1カバー部材51と、バンプラバー41の他方側に設けられる第2カバー部材52とを有している。第2カバー部材52は、他方側が上スプリングシート32に固定される。そして、第2カバー部材52は、バンプラバー41、シリンダ10およびピストンロッド20における他方側の外周を覆う。
【0047】
本実施の形態では、第1カバー部材51は、バンプラバー41の端部に取り付けられている。そして、第1カバー部材51は、シリンダ10とバンプラバー41との間においてシリンダ10の外周をカバーしている。
本実施の形態が適用される懸架装置100のバンプラバー41は、耐泥水含浸性が改良されることにより、たとえバンプラバー41と第1カバー部材51との間に浸水した場合であっても、バンプラバー41の内部に泥水が含浸することが低減する。
【0048】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態が適用される懸架装置100について説明する。
図5は、第4実施形態に係る懸架装置100の概略構成を示す図である。尚、第4実施形態において、上述した第1実施形態(
図1参照)における部材等と同様な構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
図5に示すように、第4実施形態の懸架装置100は、上端部がバンプラバーカップ42の外周に装着されるとともに下端部が下スプリングシート31に装着され、この間のシリンダ10およびピストンロッド20の外周を一体的に覆う蛇腹状のダストカバー50を備えている。本実施形態では、ダストカバー50の下端部は、下スプリングシート31に締結されている。尚、本実施の形態において、ダストカバー50は下スプリングシート31に締結されているが、これに限定されず、ダストカバー50は下スプリングシート31に締結されていなくてもよい。
本実施の形態が適用される懸架装置100のバンプラバー41は、耐泥水含浸性が改良されることにより、たとえバンプラバーカップ42が損傷した場合であっても、バンプラバー41の内部に泥水が含浸することが低減する。