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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-140946(P2015-140946A)
(43)【公開日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 7/02 20060101AFI20150707BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20150707BHJP
【FI】
   F24H7/02 601A
   F28D20/00 A
   F24H7/02 603B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-12873(P2014-12873)
(22)【出願日】2014年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】512140038
【氏名又は名称】株式会社育水舎アクアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】木村 太
(57)【要約】
【課題】 水を加温するのに好適な蓄熱システムを提供する。
【解決手段】 蓄熱システム300は、固体状の蓄熱部310と、蓄熱部310を加熱する加熱部320と、水が蒸発する温度に達しないように、蓄熱部310の熱を水に移行させる熱移行部330と、水が熱移行部320から熱を受けるための水流路350とを含む。蓄熱部310は、水よりも体積当たりの熱量が大きい材質、たとえば、レンガやセラミックスからなる。加熱部320は、抵抗体からなることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の蓄熱部と、
前記蓄熱部を加熱する加熱部と、
水が蒸発する温度に達しないように、前記蓄熱部の熱を水に移行させる熱移行部と、
水が前記熱移行部から熱を受けるための水流路とを含む、蓄熱システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記蓄熱部は、水よりも体積当たりの熱量が大きい材質からなる蓄熱システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記蓄熱部の温度を計測する第1の温度計測部と、
前記水流路に流れる水の流量を計測する流量計測部と、
前記水の温度を計測する第2の温度計測部とを含む、蓄熱システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記蓄熱部の温度、前記水の温度に基づいて、前記水流路に流れる水を制御する流量制御部を含む、蓄熱システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記流量制御部には、蓄熱部の温度と前記水流路に入る水の温度および水の流量に基づき、前記水流路から出る水の温度を導出するための対応データが記憶されている、熱蓄熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記水流路は、前記蓄熱部の周りに設けられ、
前記熱移行部は、前記水流路と前記蓄熱部との間に、空気層、液体層又は固体層からなる緩衝層を含んで構成され、
前記緩衝層は、前記水流路に流れる水に熱を所定の伝熱速度で熱を移行させるものである蓄熱システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記蓄熱部からの熱を受ける気体が流れる気体流路が設けられ、
前記気体流路は、気液接触装置に接続されている蓄熱システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記蓄熱部と水流路との間に、油層が設けられている蓄熱システム。
【請求項9】
請求項8において、
前記蓄熱部は、表面において凹凸形状を有する蓄熱システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
所定の時刻における前記蓄熱部の温度に基づき、前記蓄熱部の加熱を行うかどうかの判断部と、
前記蓄熱部に対して加熱を行うと判断した場合に、加熱を開始し、所定の時間、加熱する加熱制御部がある蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱部を有する蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水に熱を蓄熱する水蓄熱システムが提案されている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−43292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、水を加温するのに好適な蓄熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の蓄熱システムは、
固体状の蓄熱部と、
前記蓄熱部を加熱する加熱部と、
水が蒸発する温度に達しないように、前記蓄熱部の熱を水に移行させる熱移行部と、
水が前記熱移行部から熱を受けるための水流路とを含む。
【0006】
通常、蓄熱は水蓄熱である。しかし、本発明は、蓄熱部は固体状の蓄熱部であり、水が蒸発する温度に達しないように熱を水に移行する熱移行部を含む。本発明は新しい着眼に基づくものであり、加温された水を利用するものに広く適用することができる。
【0007】
本発明において、前記蓄熱部は、水よりも体積当たりの熱量が大きい材質からなることができ、たとえば、融点が1000℃以上で、かつ、500℃以上の温度まで加熱され得る材質からなることができる。本発明によれば、蓄熱部に保持できる熱力を大きくすることができる。
【0008】
本発明において、
前記蓄熱部の温度を計測する第1の温度計測部と、
前記水流路に流れる水の流量を計測する流量計測部と、
前記水の温度を計測する第2の温度計測部とを含むことができる。
【0009】
本発明によれば、温度管理、流量管理をすることで、水の温度の制御がし易くなる。
【0010】
前記蓄熱部の温度、前記水の温度に基づいて、前記水流路に流れる水を制御する流量制御部を含むことができる。水量を調整することで、加温された温度を制御することができる。
【0011】
本発明において、前記流量制御部には、蓄熱部の温度と前記水流路に入る水の温度および水の流量に基づき、水流路から出る水の温度を導出するための対応データが記憶されていることができる。本発明によれば、加温された温度をより的確に制御することができる。
【0012】
本発明において、
前記水流路は、前記蓄熱部の周りに設けられ、
前記熱移行部は、前記水流路と前記蓄熱部との間に、空気層、液体層又は固体層からなる緩衝層を含んで構成され、
前記緩衝層は、前記水流路に流れる水に熱を所定の伝熱速度で熱を移行させるものであることができる。
【0013】
本発明によれば、蓄熱部の熱の放出スピードを調整することができる。
【0014】
本発明において、
前記蓄熱部からの熱を受ける気体が流れる気体流路が設けられ、
前記気体流路は、気液接触装置に接続されていることができる。
【0015】
本発明によれば、より容易に、蓄熱部の熱を水に移行させることができる。
【0016】
本発明において、前記蓄熱部と水流路との間に、油層が設けられていることができる。油層であることで、油層の形状や、取扱が容易である。
【0017】
本発明において、前記蓄熱部は、表面において凹凸形状を有することができる。本発明によれば、蓄熱部の表面積を確保することができ、多くの熱を熱移行部に移行させる場合に特に好適である。
【0018】
本発明において、
所定の時刻における前記蓄熱部の温度に基づき、前記蓄熱部の加熱を行うかどうかの判断部と、
前記蓄熱部に対して加熱を行うと判断した場合に、加熱を開始し、所定の時間、加熱する加熱制御部があることができる。
【0019】
本発明によれば、特に、夜間電力により蓄熱部に熱を蓄えたいときに好適である。
【0020】
本発明において、熱移行部は、
気体と液体との間で熱交換を行うための気液接触室と、
前記気液接触室内に液体を導入するための液体導入口と、
前記気液接触室内の液体を導出するための液体導出口と、
前記気液接触室内に気体を導入するための気体導入口と、
前記気液接触室内の気体を導出するための気体導出口と、
前記気液接触室内の気体の圧力、又は、前記気液接触室内に導入する気体の圧力を制御する圧力制御手段と、を含み、
前記圧力制御手段は、コンプレッサーを用いずに気体の圧力制御を行い、ブロワを含んで構成される。
【0021】
本発明においては、圧力制御手段がコンプレッサーを用いずに気体の圧力制御を行い、ブロワを含んで構成されていることで、省エネルギー性能が向上した気体温度調整装置を実現することができる。
【0022】
本発明において、前記ブロワは、吐出圧が0.1〜2.0kgf/cmとすることができる。
【0023】
本発明において、前記ブロワは、前記気液接触室内に気体を導入する前において、当該気体を加圧することができる。これにより、気液接触室内の気体が加圧状態になり、気液接触室から導出された気体が外に排出される際に、断熱的に膨張するために気体の温度を低下させることができる。
【0024】
本発明において、前記ブロワは、前記気液接触室内の気体を吸引することができる。これにより、気液接触室内の圧力が負圧状態となりことから、気体が断熱的に膨張し、温度が低下し、飽和水蒸気量が低下する。このため、気体中に含まれる水蒸気の一部が液体の水となり、潜熱が発生し、その潜熱エネルギーが気体に取り込まれる。また、気体の圧力が負圧の状態になっているため、気体が外部に放出される際に、断熱的に加圧されるために、温度がその分だけ、向上することになる。
【0025】
本発明において、前記ブロワは、前記気体導入口および前記気体導出口に接続され、前記気体導入口と前記送風装置との間に第1の開閉部が設けられ、前記気体導出口と前記送風装置との間に第2の開閉部が設けられていることができる。これにより、開閉部を切り替えることで、ブロワを気液接触室の上流側と下流側との切り替えをすることができる。
【0026】
本発明に係る蓄熱システムにより加温された水は、種々の空調装置の熱源として利用することができる。
【0027】
本発明の室外機システムは、
一つ又は複数の空調装置の室外機と、
前記室外機において熱媒体と熱交換する気体の温度を調整する気体温度調整装置とを含むことができる。
【0028】
本発明によれば、気体温度調整装置により温度調整された気体が室外機に取り込まれ、熱媒体と熱交換することになる。このため、収容室内の気体の温度を制御することで、冷暖房平均エネルギー消費効率が高くなる温度にすることができ、空調システムの省エネルギー効果を高めることができる。
【0029】
本発明において、前記一つ又は複数の空調装置の室外機を収容する収容室を含むことができる。
【0030】
本発明によれば、室外機が収容室内に収容され、気体温度調整装置により、その収容室内の気体の温度を制御することができる。このため、室外機は収容室内の温度が制御された気体を取り込み、外気を直接に取り込むことにはならない。したがって、収容室内の気体の温度を制御することで、冷暖房平均エネルギー消費効率が高くなる温度にすることができ、空調システムの省エネルギー効果を高めることができる。
【0031】
また、室外機からの廃熱の過度な高温化、低温化を避けることができるため、夏場のヒートアイランド対策にもなる。また、冬場のデフロスト運転を回避することができる。
【0032】
本発明において、前記気体温度調整装置で温度調整された気体を、熱媒体と熱交換する気体を吸入する室外機の吸入部に向けて案内する案内路を含むことができる。
【0033】
本発明によれば、気体温度調整装置で温度調整された気体を室外機に向けて案内する案内路を設けている。熱交換する気体の温度を調整して、その気体が室外機に向けて供給されることになるため、気体温度調整装置により、室外機の吸入部から入る気体の温度を制御することができる。このため、室外機は気体温度調整装置によって温度が制御された気体を取り込むことになる。したがって、気体温度調整装置によって室外機に供給する気体の温度を制御することで、冷暖房平均エネルギー消費効率が高くなる温度にすることができ、空調システムの省エネルギー効果を高めることができる。
【0034】
また、室外機からの廃熱の過度な高温化、低温化を避けることができるため、夏場のヒートアイランド対策にもなる。また、冬場のデフロスト運転を回避することができる。
【0035】
本発明において、前記気体温度調整装置は、再生可能エネルギーに由来する電源により駆動されることができる。これにより、より省エネルギー化を図ることができる。
【0036】
本発明において、前記気体温度調整装置は、地下水と前記収容室の気体との間で熱交換を行うための熱交換器であることができる。これにより、より省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】蓄熱システムを模式的に示す図である。
図2】蓄熱システムを模式的に示す図である。
図3】蓄熱システムを模式的に示す図である。
図4】蓄熱システムを模式的に示す図である。
図5】気液接触装置を模式的に示す図である。
図6】気液接触装置の説明図である。
図7】第1の空調システムおよび室外機システムを模式的に示す図である。
図8】第2の空調システムおよび室外機システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0039】
1.蓄熱システム
(1)構成
実施の形態に係る蓄熱システム300は、図1図3に示すように、固体状の蓄熱部310と、蓄熱部310を加熱する加熱部320と、水が蒸発する温度に達しないように、蓄熱部310の熱を水に移行させる熱移行部330と、水が熱移行部330から熱を受けるための水流路340とを含む。
【0040】
蓄熱部310は、水よりも体積当たりの熱量が大きい材質からなることができ、たとえば、融点が1000℃以上で、かつ、500℃以上の温度まで加熱され得る材質からなり、より具体的には、セラミックスやレンガなどからなることができる。このような材質からなることにより、熱の保持量を高めることができる。
【0041】
加熱部320は、蓄熱部310させることができるものであれば特に限定されず、たとえば、抵抗体からなるヒーターを挙げることができる。
【0042】
蓄熱システム300は、蓄熱部310の温度を計測する第1の温度計測部(図示せず)と、水流路に流れる水の流量を計測する流量計測部(図示せず)と、水の温度を計測する第2の温度計測部(図示せず)とを含むことができる。第1の温度計測部は、たとえば熱電対などにより構成することができる。第2の温度計測部は、たとえば、流体計測用の温度センサーにより構成することができる。流量計測部は、たとえばピトー管などにより構成することができる。
【0043】
蓄熱システム300は、蓄熱部310の温度、水の温度に基づいて、水流路に流れる水を制御する流量制御部(図示せず)を含むことができる。流量制御部には、蓄熱部310の温度と水流路350に入る水の温度および水の流量に基づき、水流路から出る水の温度を導出するための対応データが記憶されている。これにより、水の流量を制御することで、熱が移行された水の温度を制御することができる。流量制御部は、たとえば、開閉弁の開閉度合いを制御して、流量を制御することができる。
【0044】
水流路350は、蓄熱部310の周りに設けられている。熱移行部330は、水流路350と蓄熱部310との間に、空気層、液体層又は固体層からなる緩衝層を含んで構成されている。緩衝層は、水流路に流れる水に熱を所定の伝熱速度で熱を移行させるものである。
【0045】
図2に示すように、蓄熱部310を囲むように気体流路340が設けられ、気体流路340を囲むように水流路350を設けてもよい。気体流路340、気体流路340の気体および気体流路340と接する水流路350により熱移行部330が実現される。
【0046】
蓄熱部310からの熱を受ける気体が流れる気体流路340が設けられ、気体流路340は、熱を移行させたい水が流れる気液接触装置に接続されていることができる。この気液接触装置が熱移行部330として機能させることができる。
【0047】
蓄熱部310と水流路350との間に、油層を設けてもよい。
【0048】
蓄熱部310は、表面において凹凸形状を有することができる。これにより、蓄熱部310の表面積を大きくすることができ、効率的に水に熱移行を行うことができる。
【0049】
蓄熱システム300は、所定の時刻における蓄熱部310の温度に基づき、蓄熱部310の加熱を行うかどうかの判断部(図示せず)と、蓄熱部310に対して加熱を行うと判断した場合に、加熱を開始し、所定の時間、加熱する加熱制御部があってもよい。
【0050】
加熱制御部や流量制御部の演算装置や、上記の加熱を行うかどうかの判断部は、CPU、ROM、RAMなどにより、その機能を実現することができる。
【0051】
(2)作用効果
昨今、「電力の平準化」に関する機運が高まっている。夜間電力の有効利用によるピークカットがその解答の一つである。施設向け夜間電力利用技術として、水蓄熱方式が普及し、ニーズが高まっている。
【0052】
しかし、水蓄熱方式は、蓄熱温度が最大でも90℃程度までが限度で、昼間の熱需要をまかなうためには非常に大きな水槽が必要である。これにより、都市部ではスペースが取りにくく、また設備更新は現実的に難しい。
【0053】
一方、家庭用ではセラミック蓄熱式の夜間蓄熱暖房器が、提案されている。蓄熱セラミックは800℃程度の高温まで対応するため、多量の熱保有が可能である。
【0054】
しかし、セラミック式では熱置換を直接空気に行うため、大型設備を検討した場合、ダクトの設置や放熱ロスにより導入が難しい。また大型施設では、冷温水系統による空調設備が主流であり、法域の普及を考えると、蓄熱した熱を水に置換することが望ましい。
【0055】
本実施の形態によれば、大型のヒーター付蓄熱セラミックユニットからロスなく空調冷温水への熱置換を行うことができる。
【0056】
セラミックから水への熱置換は、直接接触式とすることで、極めて効率よく行うことが可能となる。ファンコイルユニット状の熱交換機でも代替可である。
【0057】
セラミックユニットを水槽で覆い、この水も冷温水として循環させることで、放熱ロスを逃がすことなく水に置換することができる
温度調整は、置換部の熱風の送風量をコントロールすることで可能となる。
【0058】
冷温水系統には、中継冷温水タンクを設ける。これにより、複数の熱源を組み合わせ、さらに効率よく運用できるようになる。
【0059】
所定の時間(たとえば電気料金が安い夜間)に、蓄熱部を熱して蓄えられた熱をタイムシフトさせて、その熱を利用することができる。また、一般的に二酸化炭素の排出係数は夜間は低く設定されている。二酸化炭素の排出量削減に繋がる。
【0060】
夜間電力を利用して水を加温して、昼間にその加温された水を熱源に、その水の熱を利用する場合がある。この場合は、水を貯留するタンクが大きく、大型の施設が必要となる。しかし、本実施の形態によれば、高温に耐えられる材質からなる固体状の蓄熱部310を利用することで、保持する熱量も大きくすることができるため、水蓄熱に比べて、施設を小型化することができる。水蓄熱の場合には、水が蒸発しない温度までしか熱を加えることができないので、100℃以上にすることはできず、その分、水の量を確保する必要がある。
【0061】
本実施の形態によれば、蓄熱部310は、直接に水と接触しない。すなわち、水を蒸発させることなく、熱移行部320を通じて蓄熱部310から熱を水に移行している。このため、高い温度で蓄熱しつつ、水を蒸発させることなく、水に熱を移行させることができる。
【0062】
2.熱移行部
(1)構成
次に、加熱された気体の熱を水に移行させる好適な熱交換装置について説明する。熱交換装置として気液接触装置10を例にとり、温度調整装置を説明する。
【0063】
気液接触装置10は、冷房又は暖房装置として機能することができる。気液接触装置10は、気体と液体との間で熱交換を行うための気液接触室20と、気液接触室20内に液体を導入するための液体導入口30と、気液接触室20内の液体を導出するための液体導出口32と、気液接触室20内に気体を導入するための気体導入口40と、気液接触室20内の気体を導出するための気体導出口42と、気液接触室20の気体の圧力を制御する圧力制御手段50と、を含む。
【0064】
気液接触室20は、たとえば、直接気液接触塔により構成することができる。気液接触室20内には、ラシヒリングなどの充填材22を設けてもよい。気液接触室20内の圧力を計測するための圧力計24を設けることができる。
【0065】
圧力制御手段50は、コンプレッサーを用いずに圧力制御を行い、ブロワB1により構成されている。ブロワB1は、吐出圧がたとえば気圧の2倍前後、具体的には、0.1〜2.0kgf/cm、好ましくは0.1〜1.5kgf/cm、より好ましくは0.1〜1.0kgf/cmとすることができる。ブロワB1は、気液接触室20内に気体を導入する前において気体を加圧する機能、及び、気液接触室20内の気体を吸引する機能の少なくとも一方の機能を有する。ブロワB1は、ターボ機能を有するターボブロワであってもよい。
【0066】
気液接触装置10は、第1〜第5の管路70a〜70eおよび第1〜7の開閉装置60a〜60gを有する。第1〜第5の管路70a〜70eは、気体が通過する管路であり、公知の管を適用することができる。第1〜第7の開閉装置60a〜60gは、たとえば、開閉バルブなどから構成され、開いていたときには気体又は液体が通過させ、閉じたときには気体又は液体を通過させないようにするものである。
【0067】
第1の管路70aは、一方の端が気液接触室20の気体導入口40に接続されている。第2の管路は、一方の端が気液接触室20の気体導出口42に接続されている。
【0068】
第3の管路70cは、第1の管路70aと第2の管路70bとをつないでいる。第3の管路70cには、ブロワB1が設けられている。ブロワB1と第1の管路70aとの間の第3の管路70cの途中に第1の開閉装置60aが設けられている。ブロワB1と第2の管路70bとの間の第3の管路70cの途中に第2の開閉装置60bが設けられている。第1の管路70aにおいて、第3の管路70cとの接続箇所を基準に気液接触室20とは逆側に、第3の開閉装置60cが設けられている。第2の管路70bにおいて、第3の管路70cとの接続箇所を基準に気液接触室20とは逆側に、第4の開閉装置60dが設けられている。
【0069】
第4の管路70dは、第1の管路70aとブロワB1との間の第3の管路70cに接続されている。第4の管路70dには、第5の開閉装置60eが設けられている。第5の管路70eは、第1の管路70aとブロワB1との間の第3の管路70cに接続されている。第5の管路70eには、第6の開閉装置60fが設けられている。
【0070】
気液接触室20には、液体(たとえば水、特に地下水)を導入するための液体導入管70fが設けられている。必要に応じて、ポンプにより液体を気液接触室に導入することができる。液体の導入の仕方は、特に限定されず、たとえば導入管から公知の噴霧装置により霧状にして導入してもよいし、噴霧装置を介さずに導入管から直接導入してよい。噴霧装置を介さずに導入管から直接導入する場合には、ラシヒリングなどの充填材や多層の接触板などに液体を供給し、気液接触を図ってもよい。このようにすることで、気液接触の熱交換効率を高めることができる。
【0071】
気液接触室20には、下に貯まった液体を排出するための液体排出管70gが設けられている。液体排出管70gに、第7の開閉装置60gが設けられている。
【0072】
(2)動作原理
蓄熱部310で加温された気体の熱を水に移行する場合には、第2の開閉装置60b、第3の開閉装置60cおよび第5の開閉装置60eを開くと共に、第1の開閉装置60a、第4の開閉装置60d、第6の開閉装置60fを閉じる。
【0073】
ポンプP1を稼働させ液体(たとえば地下水)を気液接触室20内に導入し、第7の開閉装置60gを開き、気液接触室20に導入された液体を排出する。液体は、気液接触室20内に霧状で導入することができる。
【0074】
ブロワB1を稼働させ、第1の管路70aを通じて、加温された気体を気液接触室20内に導入する。
【0075】
気体は、液体と直接に接触し、熱交換が行われ、液体により加温される。気体は減圧された状態で液体の温度と同じかその温度に近い温度まで加温される。加温された気体は、ブロワB1により吸引され、第2の管路70b、第3の管路70cおよび第4の管路70dを通じて、排出される。ブロワB1により、気液接触室20内から気体が吸引されることで、気液接触室20内の気体が減圧下(負圧状態)におかれる。気液接触室20内の気体が減圧した分だけ、気液接触室20内で気体が断熱的に膨張することになり、気体の温度が低下し、飽和水蒸気量が低下する。その結果、気体中に含まれる水蒸気の一部が液体の水になり、潜熱が発生する。その潜熱は気体に取り込まれる。
【0076】
ブロワB1を通じて、気体は加圧され温度が上がると共に、第4の管路70dを通じて排出された加温された減圧状態の気体は、断熱的に圧縮して放出されるため、気体の温度がさらに上昇することになる。
【0077】
地下水の温度をたとえば15℃とし、導入する気体の温度を60℃としたとき、気体は地下水の温度がたとえば50℃まで加温される。一方で、減圧状態の気体は、ブロアB1により加圧され、かつ、排出される際に断熱的に圧縮されるため、気体温度は地下水に熱を渡した後に一旦は低下するものの、その断熱圧縮の分だけ上昇することになる。排出された気体の湿度は、たとえば95%以下となる。
【0078】
(3)作用効果
この気液接触装置10によれば、気体を流すための動力源としてブロワB1を利用するのみで足りるため、消費電力が極端に少なく、地下水を汲むためのポンプと合わせても、大幅な省エネルギー効果を実現することができる。コンプレッサーを使用せず、動力はブロワのみで大量の空気を熱交換できるため、最小の電力で大きな熱エネルギーの移動を成し遂げることが可能となるシステムである。つまり、この気液接触装置10によれば、地下水をヒートポンプの冷却水として用いる方式に比べて、コンプレッサーを使用せず、動力は送風装置(ブロワ)のみで大量の空気を熱交換できるため、最小の電力で大きな熱エネルギーの移動を成し遂げることが可能となるシステムである。
【0079】
また、動力源はブロワ程度のごく小電力の装置を使うだけなので、省エネルギー効果は極めて大きい。コンプレッサーを使用せず、大量の空気を熱交換できるため、最小の電力で大きな熱エネルギーの移動を成し遂げることができるシステムである。
【0080】
さらに、気液接触室を接触塔形状とすることで、耐圧性を付与することができ、断熱膨張、圧縮による昇温、冷却効果も付加することができる。これはフェーン現象による昇温効果を塔内で再現することとなる。
【0081】
ブロワ送風方式のために気体を排出する排出出口部に高性能フィルターをつけることも可能である。空気清浄器と同じレベルでの浄化空気を施設内に送ることが可能である。この気液接触装置10によれば、冷房運転時と暖房運転時は空気の入口をバルブ操作で切り替える事のみで行うことが可能で、暖房運転時は、送風装置(ブロワ)は気体導出口から吸引することで気液接触室内は弱い負圧状態となる、冷気は接触等で地下水温(一般的に15〜18℃)に限りなく近づき、出口において気体は送風装置の加圧により若干昇温する。その後、フェーン現象が装置内で再現され、潜熱による温度上昇も加わることとなる。
【0082】
この気液接触装置10によれば、収容室112内の外気の温度調整するに当たって、電気消費量を格段に低減することができる。
【0083】
3.応用例
加温された水は、ファンコイルユニットの空調装置に適用されることもできる。また、次の空調システムの気体温度調整装置116の熱源として適用してもよい。
【0084】
空調システムおよび室外機システムの一例として、第1の空調システムおよび第1の室外機システムを説明する。
【0085】
(1)第1の空調システム
第1の空調システム100は、空調室122内にある室内機120と、室外機システム110とを含む。第1の室外機システム110は、一つ又は複数の空調装置の室外機112と、一つ又は複数の空調装置の室外機112を収容する収容室114と、気体温度調整装置116とを含む。
【0086】
室内機120と室外機112との間に熱媒体が循環している。室内機120および室外機112は特に限定されず、空調装置の公知の室内機および室外機を適用することができる。
【0087】
室内機120において、熱媒体と室内機120のある空調室122内の気体との間で熱交換が行われる。室外機112において、熱媒体と収容室114内の気体との間で、熱交換が行われる。
【0088】
気体温度調整装置116は、室外機112において熱媒体と熱交換する気体の温度を調整するものである。第1の空調システムおよび第1の室外機システムにおいて、気体温度調整装置116は、具体的には、収容室114の気体の温度を冷却又は加温する。気体温度調整装置116は、気体温度を調整することができるものであれば特に限定されないが、後述する地下水などを利用した気液接触装置、再生可能エネルギーに由来する電源により駆動される空調装置、または、太陽熱、地熱、排熱、地下水熱などの熱源を利用する空調装置であることが好ましい。再生可能エネルギーに由来する電源により駆動される空調装置としては、再生可能エネルギーに由来する電源を駆動源とした、公知の空調装置を適用することができる。再生可能エネルギーに由来する電源としては、たとえば、太陽光エネルギー、風力エネルギー、地熱エネルギーなどの再生エネルギーを利用した電源を挙げることができる。
【0089】
収容室114は、建屋であっても、ビニールハウスなどのシート状のハウスであってもよく、室外機112が覆われていればよい。収容室114には、必要に応じて、開閉可能な通気口(図示せず)を設けてもよい。収容室114内の気体の温度を計測するための温度計測器(図示せず)を設けてもよい。収容室114は、公知の断熱材からなるとができる。収容室114は、密閉されていても、又は、開口部により一部開放されていてもよい。
【0090】
以下、第1の室外機システム110および第1の空調システム100の作用効果を説明する。
【0091】
第1の室外機システム110および第1の空調システム100において、室外機112が収容室114内にあり、その収容室114内にある気体の温度を調整する気体温度調整装置116が設けられている。室外機112が収容室114内にあることで、室外機112は、収容室114の気体と熱媒体との間で、熱交換されることになる。空調システムが冷房運転の場合、室外機において熱媒体と熱交換する外気の温度が高いと、冷暖房平均エネルギー消費効率(COP)が低くなる。一方、暖房運転の場合、室外機112において熱媒体と熱交換する外気の温度が低いと冷暖房平均エネルギー消費効率(COP)が低くなる。
【0092】
第1の室外機システム110および第1の空調システム100においては、室外機112が収容室114内に収容され、気体温度調整装置116により、その収容室114内の気体の温度を制御することができる。このため、室外機112は収容室114内の温度が制御された気体を取り込み、外気を直接に取り込むことにはならない。したがって、収容室114内の気体の温度を制御することで、冷暖房平均エネルギー消費効率が高くなる温度にすることができ、空調システム100の省エネルギー効果を高めることができる。
【0093】
また、室外機112からの廃熱の過度な高温化、低温化を避けることができるため、夏場のヒートアイランド対策にもなる。また、冬場のデフロスト運転を回避することができる。
【0094】
(2)第2の空調システムおよび室外機システム
空調システムおよび室外機システムの一例として、第1の空調システムおよび第1の室外機システムを説明する。
【0095】
第2の空調システム200および第2の室外機システム210は、収容室を設けずに、気体温度調整装置116で温度調整された気体を室外機112の気体吸入部112aに向けて案内する案内路220を設けている点で、第1の空調システム100および室外機システム110と異なり、それ以外の点については基本的に同様である。
【0096】
第2の空調システムおよび第2の室外機システムは、気体温度調整装置で温度調整された気体を室外機の気体吸入部(熱媒体と熱交換する気体を吸入する室外機の吸入部)112aに向けて送るための送風装置(ファンなど)230を設けてもよい。案内路は、たとえば、ダクトや、筒状のもので構成することができる。
【0097】
第2の空調システム200および第2の室外機システム210において、気体温度調整装置116で温度調整された気体を室外機112に向けて案内する案内路220を設けている。熱交換する気体の温度を調整して、その気体が室外機112に向けて供給されることになるため、気体温度調整装置116により、室外機112の気体吸入部112aから入る気体の温度を制御することができる。このため、室外機112は気体温度調整装置116によって温度が制御された気体を取り込むことになる。したがって、気体温度調整装置116によって室外機112に供給する気体の温度を制御することで、冷暖房平均エネルギー消費効率が高くなる温度にすることができ、空調システム100の省エネルギー効果を高めることができる。
【0098】
また、室外機112からの廃熱の過度な高温化、低温化を避けることができるため夏場のヒートアイランド対策にもなる。また、冬場のデフロスト運転を回避することができる。
【0099】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、加温された水を利用した暖房装置などの空調装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 気液接触装置
20 気液接触室
30 液体導入口
32 液体導出口
40 気体導入口
42 気体導出口
50 送風装置
60a〜60g 第1〜第7の開閉部
70a〜70e 第1〜第5の管路
80 液体導入管
82 液体排出管
100 第1の空調システム
110 第1の室外機システム
112 室外機
112a 吸入部
114 収容室
116 気体温度調整装置
120 室内機
122 空調室
200 第2の空調システム
210 第2の室外機システム
220 案内路
230 送風装置
300 蓄熱システム
310 蓄熱部
320 加熱部
330 熱移行部
340 気体流路
350 水流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8