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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-140975(P2015-140975A)
(43)【公開日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20150707BHJP
【FI】
   F22B35/00 J
   F22B35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-14455(P2014-14455)
(22)【出願日】2014年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021CA06
3L021DA03
3L021EA04
3L021FA12
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】圧力安定性を高めることのできるフィードバック制御が可能なボイラシステムを提供すること。
【解決手段】燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラ20を備えるボイラ群2と、ボイラ群2から出力される蒸気出力のフィードバック制御によりボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4と、を備えるボイラシステム1であって、制御部4は、ボイラ群2の燃焼率を算出する燃焼率算出部41と、ボイラ群2の燃焼率が低いほど比例ゲインを低く調整し、ボイラ群2の燃焼率が高いほど比例ゲインを高く調整する比例ゲイン調整部42と、調整された比例ゲインに基づいてフィードバック制御によりボイラ群2の燃焼状態を制御するフィードバック制御部43と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、前記ボイラ群から出力される蒸気出力のフィードバック制御により前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、
前記制御部は、
前記ボイラ群の燃焼率を算出する燃焼率算出部と、
前記フィードバック制御に用いる比例ゲインを、算出した前記燃焼率に基づき調整する比例ゲイン調整部と、
調整された前記比例ゲインに基づいて前記フィードバック制御により前記ボイラ群の燃焼状態を制御するフィードバック制御部と、
を備え、
比例ゲイン調整部は、前記ボイラ群の燃焼率が低いほど前記比例ゲインを低く調整し、前記ボイラ群の燃焼率が高いほど前記比例ゲインを高く調整する、ボイラシステム。
【請求項2】
前記燃焼率算出部は、前記ボイラ群から出力される出力蒸気量を前記ボイラ群が出力可能な最大蒸気量で除算することで前記ボイラ群の燃焼率を算出する、請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記燃焼率算出部は、燃焼状態にあるボイラの台数に基づいて、前記ボイラ群の燃焼率を算出する、請求項1に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラを有するボイラ群を備えるボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のボイラと、蒸気使用設備の蒸気消費量(要求負荷)に応じてボイラの燃焼率を制御する制御部と、を備えたボイラシステムが知られている。このようなボイラシステムでは、蒸気ヘッダの蒸気圧力が蒸気消費量の変動に係わらず一定の目標圧力となるように、蒸気圧力のフィードバック制御を行うことでボイラの燃焼率が制御される。
即ち、目標圧力と蒸気ヘッダの蒸気圧力との偏差に比例ゲインを乗算した値を操作量(指示蒸気量)として算出し、この操作量に応じて複数のボイラから指示蒸気量分の蒸気が発生するように、ボイラの燃焼率を制御する。
【0003】
このようなフィードバック制御では、圧力安定性を高めるために比例ゲインを適切に設定する必要がある。この点、特許文献1には、燃焼するボイラの台数に応じて圧力制御比例帯を調整するボイラの台数制御方法が開示されている。この台数制御方法によれば、ボイラの台数に応じて圧力制御比例帯が変更されるため、結果として、燃焼台数によって比例ゲインも変更されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3808303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の台数制御方法では、PBa=PB(1+(Nc−1)K)により圧力制御比例帯(PBa)を算出するため、燃焼台数(Nc)が多いほど圧力制御比例帯(PBa)が広くなり、燃焼台数(Nc)が少ないほど圧力制御比例帯(PBa)が狭くなる。その結果、特許文献1の台数制御方法では、燃焼台数(Nc)が多い(高負荷時)ほど比例ゲインが低くなり、燃焼台数(Nc)が少ない(低負荷時)ほど比例ゲインが高くなる。
【0006】
この点、比例ゲインを高く設定すると偏差に対して大きな操作量が算出され、比例ゲインを低く設定すると偏差に対して小さな操作量が算出される。そのため、特許文献1の台数制御方法のように、蒸気使用設備が多くの蒸気を使用している高負荷時に比例ゲインを低く設定すると、高負荷時に操作量が過少に算出され、負荷追従が遅れ高負荷時の圧力安定性が低下してしまう。同様に、蒸気使用設備があまり蒸気を使用しない低負荷時に比例ゲインを高く設定すると、低負荷時に操作量が過剰に算出され、ハンチング等の発生により低負荷時の圧力安定性が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、圧力安定性を高めることのできるフィードバック制御が可能なボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、前記ボイラ群から出力される蒸気出力のフィードバック制御により前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、前記制御部は、前記ボイラ群の燃焼率を算出する燃焼率算出部と、前記フィードバック制御に用いる比例ゲインを、算出した前記燃焼率に基づき調整する比例ゲイン調整部と、調整された前記比例ゲインに基づいて前記フィードバック制御により前記ボイラ群の燃焼状態を制御するフィードバック制御部と、を備え、比例ゲイン調整部は、前記ボイラ群の燃焼率が低いほど前記比例ゲインを低く調整し、前記ボイラ群の燃焼率が高いほど前記比例ゲインを高く調整するボイラシステムに関する。
【0009】
また、前記燃焼率算出部は、前記ボイラ群から出力される出力蒸気量を前記ボイラ群が出力可能な最大蒸気量で除算することで前記ボイラ群の燃焼率を算出することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記燃焼率算出部は、燃焼状態にあるボイラの台数に基づいて、前記ボイラ群の燃焼率を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラ群の燃焼率に応じて比例ゲインを適切に調整するため、圧力安定性を高めることのできるフィードバック制御が可能なボイラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るボイラシステムの概略を示す図である。
図2】ボイラ群の概略を示す図である。
図3】制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図4】制御部の制御フローを示す説明図である。
図5】比例ゲイン(KP)の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、図1を参照しながら説明する。ボイラシステム1は、複数(5台)のボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
【0014】
ボイラ群2は、蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0015】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0016】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧に基づいて、各ボイラ20の燃焼状態を制御する。台数制御装置3の詳細については、後述する。
【0017】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御装置3は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0018】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量(後述の出力蒸気量)が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ7により測定された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて、蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要とされる蒸気量である必要蒸気量を算出する。
【0019】
ここで、本実施形態のボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。図2は、本実施形態に係るボイラ群2の概略を示す図である。
本実施形態のボイラ20は、燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラからなる。
比例制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、燃焼率の20%の燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼率が連続的に制御可能とされているボイラである。比例制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼率を調整するようになっている。
【0020】
また、燃焼率を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼率)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0021】
本実施形態では、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼率が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20それぞれには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変更可能となっている。
【0022】
単位蒸気量Uは、ボイラ20の最大燃焼状態S2における蒸気量(最大蒸気量)に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、ボイラ20の最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
尚、本実施形態のボイラ20の最大蒸気量は7000kg/hである(即ち、ボイラ20は7tボイラである)。また、出力蒸気量とは、ボイラ群2により出力される蒸気量を示し、この出力蒸気量は、複数のボイラ20それぞれから出力される蒸気量の合計値により表される。
【0023】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。図2に示すように、ボイラ20の1号機〜5号機のそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、5号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0024】
次に、本実施形態のボイラシステム1による複数のボイラ20の燃焼状態の制御の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(後述のローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。より詳細には、台数制御装置3は、蒸気使用設備18に応じて予め設定された目標圧力と蒸気ヘッダ6内の蒸気圧力(ヘッダ圧力)との偏差に対して、所定のPIDアルゴリズムに基づくフィードバック制御を行うことで、ヘッダ圧力が目標圧力となるために必要な総蒸気量(操作量)を算出し、算出した総蒸気量分の蒸気がボイラ群2から出力されるようにボイラ20の燃焼状態を制御する。
この台数制御装置3は、図1に示すように、記憶部5と、制御部4と、を備える。
【0025】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数のボイラ20の燃焼パターンの設定条件等の情報、複数のボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。また、記憶部5は、比例ゲインを算出するために必要な情報(後述の最大比例ゲイン等)も記憶する。
【0026】
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示を行ったり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、5台のボイラ20の燃焼状態や優先順位を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。
【0027】
ボイラ20は、図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、を備える。
ローカル制御部22は、要求負荷に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。
また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、及びその他のデータが挙げられる。
【0028】
図3は、台数制御装置3の制御部4の構成を示す機能ブロック図である。制御部4は、燃焼率算出部41と、比例ゲイン調整部42と、フィードバック制御部43と、を含んで構成される。
【0029】
燃焼率算出部41は、ボイラ群2の燃焼率を算出する。ここで、燃焼率算出部41が算出する燃焼率は、ボイラ群2の燃焼率である。例えば、5台のボイラ20の全てが100%の燃焼率で燃焼している状態では、ボイラ群2の燃焼率は100%になり、5台のボイラ20のうち3台のボイラ20が100%で燃焼し、その他のボイラ20が燃焼していない状態では、ボイラ群2の燃焼率は60%になる。
尚、燃焼率の算出は、任意の方法により行うこととしてよく、燃焼率算出部41は、例えば、ボイラ群2から出力される出力蒸気量をボイラ群2が出力可能な最大蒸気量で除算することで、ボイラ群2の燃焼率を算出することとしてもよい。本実施形態では、5台のボイラ20は7tボイラであるため、ボイラ群2が出力可能な最大蒸気量は35000kg/hである。そのため、例えば、ボイラ群2から出力される出力蒸気量が21000kg/hである場合には、燃焼率算出部41は、ボイラ群2の燃焼率を60%と算出する。
また、燃焼率算出部41は、燃焼状態にあるボイラ20の台数に基づいて、ボイラ群の燃焼率を算出することとしてもよい。具体的には、ボイラ20に対して1台当たりの燃焼率を予め設定しておき、この設定した燃焼率を燃焼状態にあるボイラ20の台数分だけ加算することで、ボイラ群2の燃焼率を算出することとしてもよい。本実施形態では、5台のボイラ20でボイラ群2を構成することとしているため、1台当たりの燃焼率は、20%以下であることが好ましい。一例として、1台当たり15%と設定していた場合には、燃焼状態にあるボイラ20の台数が2台であるときボイラ群2の燃焼率は30%となり、燃焼状態にあるボイラ20の台数が3台であるときボイラ群2の燃焼率は45%となる。
【0030】
比例ゲイン調整部42は、ボイラ20の燃焼状態を制御するフィードバック制御に用いる比例ゲインを、算出したボイラ群2の燃焼率に基づいて調整する。詳細については、後述するが、比例ゲイン調整部42は、ボイラ群2の燃焼率が低いほど比例ゲインを低く調整し、ボイラ群2の燃焼率が高いほど比例ゲインを高く調整する。
【0031】
フィードバック制御部43は、調整された比例ゲインに基づいてフィードバック制御によりボイラ群2の燃焼状態を制御する。即ち、フィードバック制御部43は、目標圧力とヘッダ圧力との偏差に対して、比例ゲインに基づく所定の演算を行うことで(P制御)、ヘッダ圧力が目標圧力となるために必要な総蒸気量(操作量)を算出し、この操作量に基づいてボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0032】
続いて、図4を参照して制御部4の動作について説明する。図4は、制御部4の制御フローを示す説明図である。
【0033】
初めに、燃焼率算出部41がボイラ群2の燃焼率を算出すると、算出した燃焼率が比例ゲイン調整部42に供給され、比例ゲインの演算が行われる。比例ゲインの演算では、比例ゲイン調整部42は、記憶部5から比例ゲイン最大値及び比例ゲイン最小値を読み出す。
【0034】
尚、比例ゲイン最大値(KPmax)は、ボイラ群2の燃焼率が100%である場合の比例ゲインである。比例ゲイン最大値(KPmax)は、ボイラ群2の最大蒸気量(35000kg/h)を比例帯及びフルスケール圧力から算出される制御幅で除算することで算出され、本実施形態では予め設定しておくものとする。
比例ゲイン最大値(KPmax)=最大蒸気量/(比例帯×フルスケール圧力)
比例帯×フルスケール圧力=制御幅
【0035】
また、比例ゲイン最小値(KPmin)は、ボイラ群2の燃焼率が0%である場合、即ち、ボイラ20の全てが燃焼を停止している場合の比例ゲインである。比例ゲイン最小値(KPmin)は、比例ゲイン最大値(KPmax)に対して補正係数(A)を乗算することで算出される。尚、補正係数(A)は、0.1〜1.0までの間の任意の値であり、予め設定しておくものとする。
比例ゲイン最小値(KPmin)=比例ゲイン最大値(KPmax)×補正係数(A)
【0036】
これら比例ゲイン最大値(KPmax)及び比例ゲイン最小値(KPmin)を記憶部5から読み出すと、比例ゲイン調整部42は、ボイラ群2の燃焼率(F)、比例ゲイン最大値(KPmax)及び比例ゲイン最小値(KPmin)により、現在の燃焼率(F)に基づいて比例ゲイン(KP)を算出(調整)する。
【0037】
ここで、比例ゲイン(KP)の算出方法について図5を参照して具体的に説明する。図5は、比例ゲイン調整部42による比例ゲイン(KP)の算出方法を示す説明図である。
図5(1)を参照して、現在の燃焼率(F)に応じた比例ゲイン(KP)は、比例ゲイン最大値(KPmax)及び比例ゲイン最小値(KPmin)の2点を通る直線を用いて算出する。即ち、現在の燃焼率(F)に応じた比例ゲイン(KP)は、以下の式により算出する。
【数1】
ここで、燃焼率(F)は、「出力蒸気量/最大蒸気量」により算出されるため、上記式は、以下のように表される。
【数2】
【0038】
尚、図5(1)では、比例ゲイン最大値(KPmax)及び比例ゲイン最小値(KPmin)の2点を通る「直線」を用いて現在の燃焼率(F)に応じた比例ゲイン(KP)を算出することとしているが、これに限られるものではなく、図5(2)に示すように2点を通る任意の曲線L1,L2により算出することとしてもよい。
【0039】
これにより、比例ゲイン調整部42は、ボイラ群2の燃焼率(F)が低いほど比例ゲイン(KP)を低く調整し、ボイラ群2の燃焼率(F)が高いほど比例ゲイン(KP)を高く調整することができる。
【0040】
図4に戻り、ボイラ群2の燃焼率(F)に応じて比例ゲイン(KP)を調整すると、フィードバック制御部43は、目標圧力とヘッダ圧力との偏差と比例ゲイン(KP)とから操作量(出力すべき蒸気量)を算出し、この操作量に基づいて各ボイラ20の燃焼状態を制御する。これにより、蒸気ヘッダ6内の蒸気圧力が目標圧力と略一致するようにボイラ20の燃焼状態を制御することができる。
【0041】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0042】
(1)本実施形態のボイラシステム1においては、目標圧力とヘッダ圧力との偏差に基づくフィードバック制御によりボイラ群2の燃焼状態を制御するところ、フィードバック制御に用いる比例ゲイン(KP)をボイラ群2の燃焼率(F)に応じて調整する。具体的には、台数制御装置3の制御部4は、ボイラ群2の燃焼率(F)が低いほど比例ゲイン(KP)を低く調整し、ボイラ群2の燃焼率(F)が高いほど比例ゲイン(KP)を高く調整する。
これにより、高負荷時には、目標圧力とヘッダ圧力との偏差に対して大きな操作量が算出されることになるため、早急な負荷追従を実現でき、圧力安定性が向上する。また、低負荷時には、目標圧力とヘッダ圧力との偏差に対して小さな操作量が算出されることになるため、制御の安定性が向上しハンチング等の発生を防止でき、圧力安定性が向上する。
【0043】
(2)制御部4は、ボイラ群2から出力される出力蒸気量をボイラ群2が出力可能な最大蒸気量で除算することでボイラ群2の燃焼率(F)を算出する。このような構成によれば、ボイラ群2の燃焼率(F)を正確に算出することができるため、比例ゲイン(KP)をより適切に調整することができる。
【0044】
(3)制御部4は、燃焼状態にあるボイラ20の台数に基づいて、ボイラ群2の燃焼率(F)を算出する。このような構成によれば、ボイラ群2の燃焼率(F)を直接算出できない場合であっても、燃焼状態にあるボイラ20の台数から間接的にボイラ群2の燃焼率(F)を算出することができ、好適である。
【0045】
以上、本発明のボイラシステム1の好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態ではフィードバック制御についてP制御についてのみ説明し、その他の制御(I制御及びD制御)についての詳細を省略している。この点、フィードバック制御部43が実行するフィードバック制御は、P制御に限らずPI制御やPID制御等であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、複数のボイラ20を比例制御ボイラにより構成することとしているが、ボイラ20は比例制御ボイラに限らず、段階値制御ボイラにより構成することとしてもよい。尚、段階値制御ボイラとは、複数の段階的な燃焼位置を有し、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整したりすること等により燃焼量を制御して、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能なボイラである。一例として、複数のボイラ20を、燃焼停止位置、低燃焼位置及び高燃焼位置の3位置を有する3位置ボイラにより、構成することとしてもよい。もちろん、ボイラ20は、3位置に限らず、任意のN位置の燃焼位置を有することとしてもよい。
【0047】
また、例えば、本実施形態では、本発明を、5台のボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステムに適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、6台以上のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、2台のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
20 ボイラ
3 台数制御装置
4 制御部
41 燃焼率算出部
42 比例ゲイン調整部
43 フィードバック制御部
図1
図2
図3
図4
図5