【課題】既存の台数制御装置を変更することなく、段階値制御方式のボイラ及び比例制御方式のボイラが混在するボイラ群の燃焼状態を適切に制御可能なボイラシステムを提供すること。
【解決手段】燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラを少なくとも1台含むボイラ群2と、ボイラ群2に含まれるボイラの燃焼状態を複数の段階的な燃焼位置で制御する台数制御装置3と、を備えるボイラシステム1であって、比例制御ボイラのローカル制御部22は、変更可能な燃焼率のうちの所定燃焼率を第1燃焼位置として設定するとともに、比例制御ボイラが燃焼可能な最大燃焼率を第2燃焼位置として設定する第1設定部23を備え、台数制御装置3は、第1燃焼位置及び第2燃焼位置を含む複数の段階的な燃焼位置で燃焼するようにボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御する。
燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラを少なくとも1台含むボイラ群と、前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を複数の段階的な燃焼位置で制御する制御装置と、を備えるボイラシステムであって、
前記比例制御ボイラは、変更可能な燃焼率のうちの所定燃焼率を第1燃焼位置として設定するとともに、前記比例制御ボイラが燃焼可能な最大燃焼率を第2燃焼位置として設定する第1設定部を備え、
前記制御装置は、前記第1設定部が設定した前記第1燃焼位置及び前記第2燃焼位置を含む複数の段階的な燃焼位置で燃焼するように前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御する、
ボイラシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載された燃焼制御方法は、ボイラ群が段階値制御方式のボイラのみ又は比例制御方式のボイラのみで構成されている状態を想定しているものであり、段階値制御方式のボイラ及び比例制御方式のボイラが混在するボイラ群に適用することを想定していなかった。
【0007】
この点、近年では、段階値制御方式のボイラから比例制御方式のボイラへの切り替えが進められており、段階値制御方式のボイラの一部を比例制御方式のボイラへ切り替えた場合には、段階値制御方式のボイラ及び比例制御方式のボイラが混在してしまう。
ところで、このような両制御方式のボイラが混在する状態は、切り替えの途中段階に起こるものであり、両制御方式のボイラが混在する状態に好適な台数制御装置を開発し、かつ、既存の台数制御装置から切り替えることは、多額の費用がかかり好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、既存の台数制御装置(即ち、段階値制御方式のボイラに好適な台数制御装置)を変更することなく、段階値制御方式のボイラ及び比例制御方式のボイラが混在するボイラ群の燃焼状態を適切に制御可能なボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラを少なくとも1台含むボイラ群と、前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を複数の段階的な燃焼位置で制御する制御装置と、を備えるボイラシステムであって、前記比例制御ボイラは、変更可能な燃焼率のうちの所定燃焼率を第1燃焼位置として設定するとともに、前記比例制御ボイラが燃焼可能な最大燃焼率を第2燃焼位置として設定する第1設定部を備え、前記制御装置は、前記第1設定部が設定した前記第1燃焼位置及び前記第2燃焼位置を含む複数の段階的な燃焼位置で燃焼するように前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御する、ボイラシステムに関する。
【0010】
また、前記比例制御ボイラには、ボイラ効率が最も高くなる燃焼率であるエコ運転ポイントが設定されており、前記第1設定部は、前記エコ運転ポイントに対応する燃焼率を前記第1燃焼位置として設定し、前記制御装置は、燃焼停止、低燃焼及び高燃焼の3段階の燃焼位置で燃焼するように前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御するとともに、前記第1燃焼位置を前記低燃焼の燃焼位置、前記第2燃焼位置を前記高燃焼の燃焼位置として前記比例制御ボイラを制御することとしてもよい。
【0011】
また、前記比例制御ボイラは、給水温度に基づいて前記エコ運転ポイントに対応する燃焼率を設定する第2設定部を更に備えることとしてもよい。
【0012】
また、前記比例制御ボイラには、ボイラ効率が所定閾値よりも高くなる燃焼率の範囲であるエコ運転ゾーンが設定されており、前記第1設定部は、前記エコ運転ゾーンの上限値に対応する燃焼率を前記第1燃焼位置として設定し、前記制御装置は、燃焼停止、低燃焼、中燃焼及び高燃焼の4段階の燃焼位置で燃焼するように前記ボイラ群に含まれるボイラの燃焼状態を制御するとともに、前記第1燃焼位置を前記中燃焼の燃焼位置、前記第2燃焼位置を前記高燃焼の燃焼位置として前記比例制御ボイラを制御することとしてもよい。
【0013】
また、前記第1設定部は、前記エコ運転ゾーンの下限値に対応する燃焼率を第3燃焼位置として設定し、前記制御装置は、前記第3燃焼位置を前記低燃焼の燃焼位置として前記比例制御ボイラを制御することとしてもよい。
【0014】
また、前記第1設定部は、前記比例制御ボイラが燃焼可能な最小燃焼率を第3燃焼位置として設定し、前記制御装置は、前記第3燃焼位置を前記低燃焼の燃焼位置として前記比例制御ボイラを制御することとしてもよい。
【0015】
また、前記比例制御ボイラは、給水温度に基づいて前記エコ運転ゾーンに対応する燃焼率を設定する第2設定部を更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、段階値制御方式のボイラに好適な台数制御装置を用いて、段階値制御方式のボイラ及び比例制御方式のボイラが混在するボイラ群の燃焼状態を適切に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るボイラシステムの概略を示す図である。
ボイラシステム1は、
図1に示すように、複数(3台)のボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
【0019】
ボイラ群2は、蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0020】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0021】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧に基づいて、各ボイラ20の燃焼位置を制御することにより、ボイラ群2の燃焼状態を制御する。この台数制御装置3は、記憶部5と、制御部4と、を備える。
【0022】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼位置等の情報、後述する燃焼パターンや優先順位の設定情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示(台数制御信号)を行ったり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、3台のボイラ20の燃焼状態や優先順位を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。
【0023】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御装置3は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼位置を制御する。
【0024】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、供給蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、供給蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ7により測定された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要となる蒸気量(必要蒸気量)を算出し、当該必要蒸気量の蒸気が蒸気ヘッダ6に供給されるようにボイラ群2を燃焼させる。
【0025】
ここで、本実施形態のボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るボイラ群2の概略を示す図である。
本実施形態のボイラ群2は、複数の段階的な燃焼位置を有する段階値制御ボイラと燃焼率を連続的に変更可能な比例制御ボイラとが混在してなる。
図2では、1号機ボイラ及び2号機ボイラが段階値制御ボイラであり、3号機ボイラが比例制御ボイラである。
【0026】
ここで、段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整したりすること等により複数段階の燃焼位置で燃焼するN位置ボイラをいい、このような段階値制御ボイラでは、燃焼率が段階的に変更される。なお、N位置制御とは、段階値制御ボイラの燃焼量を、燃焼停止位置を含めてN位置に段階的に制御可能なことを表す。
図2では、燃焼停止位置(−)、低燃焼位置(L)、高燃焼位置(H)の3位置ボイラが図示されているものの、燃焼位置の個数は、4位置(燃焼停止位置、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)以上でもよい。
【0027】
また、比例制御ボイラとは、少なくとも、ボイラの燃焼を維持可能な最小燃焼状態S1からボイラを安全に燃焼可能な最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。なお、燃焼量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が所定単位刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0028】
比例制御ボイラの燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼量が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、比例制御ボイラには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、比例制御ボイラは、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変動可能となっている。単位蒸気量Uは、比例制御ボイラの最大燃焼状態S2における蒸気量(最大蒸気量)に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、比例制御ボイラの最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
【0029】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。
図2に示すように、ボイラ20の1号機〜3号機のそれぞれに「1」〜「3」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、3号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0030】
以上のボイラ群2には、各ボイラ20とその各燃焼位置との組み合わせからなる複数の燃焼パターンが設定されている。
図3は、本発明の一実施形態に係る各ボイラの燃焼パターンと、圧力制御範囲における蒸気ヘッダ6の蒸気圧帯との関係を示す図である。
燃焼パターンは、ボイラの種別と当該ボイラの燃焼位置とからなる。
図3では、ボイラ20を高燃焼位置で燃焼させる状態にする場合を「H」、低燃焼位置で燃焼させる状態にする場合を「L」、燃焼停止位置にする場合を「−」とし、ボイラ20の優先順位に従い当該燃焼位置を左から順に示している。即ち、燃焼パターンEの[(H)(L)(L)]は、優先順位1位のボイラ20を高燃焼位置で燃焼させる状態とし、優先順位2位のボイラ20を低燃焼位置で燃焼させる状態とし、優先順位3位のボイラ20を低燃焼位置で燃焼させる状態とすることを示す。
【0031】
燃焼パターンは、蒸気ヘッダ6の圧力が高くなるほど、即ち要求負荷が小さくなるほどボイラ群2から出力される蒸気量が小さいパターンが選択され、また、蒸気ヘッダ6の圧力が低くなるほど、即ち要求負荷が大きくなるほどボイラ群2から出力される蒸気量が大きいパターンが選択される。
【0032】
そして、台数制御装置3は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧が属する蒸気圧帯に対応する燃焼パターンでボイラ群2の燃焼状態を制御する。
なお、
図3では、7の蒸気圧帯に対応して7パターンの燃焼パターンを設定することとしているが、これは段階値制御ボイラを3位置ボイラとしているためであり、段階値制御ボイラを4位置ボイラ等にした場合には、対応する燃焼位置に応じた数の燃焼パターンが設定される。
【0033】
図1に戻り、複数のボイラ20のそれぞれは、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、を備える。
ボイラ本体21は、水管やバーナを備え、図示せぬ水源(給水タンク)から供給された缶水を水管内で加熱し、蒸気を生成する。
ローカル制御部22は、要求負荷に応じてボイラ20の燃焼状態を制御する。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼位置、及びその他のデータが挙げられる。
【0034】
ここで、台数制御装置3から台数制御信号が送信された場合のローカル制御部22の制御について説明する。
図4は、台数制御信号に基づくローカル制御部22によるボイラ20の制御を示す説明図である。なお、
図4では、燃焼パターンE[(H)(L)(L)]の台数制御信号が送信されているものとする。
【0035】
燃焼パターンEでは、優先順位1位のボイラ20を高燃焼位置(H)で燃焼させ、優先順位2位及び3位のボイラ20を低燃焼位置(L)で燃焼させる。ここで、
図2に示すように優先順位1位及び2位のボイラ20は、1号機ボイラ及び2号機ボイラであり、燃焼停止位置(−)、低燃焼位置(L)、高燃焼位置(H)が設定された段階値制御ボイラである。そのため、台数制御装置3からの信号に基づいて、1号機ボイラのローカル制御部22は、1号機ボイラを高燃焼位置(H)で燃焼させ、2号機ボイラのローカル制御部22は、2号機ボイラを低燃焼位置(L)で燃焼させる。
【0036】
これに対して優先順位3位のボイラ20は、比例制御ボイラであり、1号機ボイラ及び2号機ボイラのように燃焼停止位置(−)、低燃焼位置(L)、高燃焼位置(H)が設定されていない。そのため、3号機ボイラのローカル制御部22は、台数制御装置3から低燃焼位置(L)で燃焼するように指示されても、3号機ボイラを適切に燃焼させることができない。
【0037】
そこで、本実施形態の比例制御ボイラ(3号機ボイラ)のローカル制御部22は、ボイラ20が変更可能な燃焼率のうちの所定燃焼率を段階値制御ボイラの燃焼位置として設定し、台数制御装置3からの信号に対して当該燃焼率でボイラ20を燃焼させる。
これにより、台数制御装置3に変更を加えることなく、台数制御装置3は、段階値制御ボイラ及び比例制御ボイラが混在するボイラ群の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0038】
図5は、比例制御ボイラのローカル制御部22の機能構成を示す図である。比例制御ボイラのローカル制御部22は、第1設定部23と、第2設定部24と、を含んで構成される。
【0039】
第1設定部23は、比例制御ボイラが燃焼可能な最大燃焼率(最大燃焼状態S2)を段階値制御ボイラの高燃焼位置(H)として設定するとともに、比例制御ボイラが燃焼可能な燃焼率のうちの所定燃焼率を段階値制御ボイラの所定の燃焼位置として設定する。第1設定部23による設定は、任意に行うことができるが、比例制御ボイラの効率と、台数制御装置3による台数制御の容易性(圧力安定性)とを考慮して設定することが好ましい。
【0040】
ここで、
図6,7を参照して、第1設定部23による設定の一例について説明する。
図6(1)を参照して、通常、ボイラ20は燃焼率によって燃効率が異なる。以下では、ボイラ20が最も効率よく燃焼する燃焼率をエコ運転ポイントと呼び、ボイラ20の熱効率が所定値(例えば、最高効率の所定割合)よりも高くなる燃焼率の範囲をエコ運転ゾーンと呼ぶ。
【0041】
図6(2a、2b)を参照して、比例制御ボイラを3位置の段階値制御ボイラとして設定する場合、燃焼停止位置(−)は燃焼率0%、高燃焼位置(H)は最大燃焼率(100%)に設定すればよいため、低燃焼位置(L)の設定が問題となる。
【0042】
図6(2a)を参照して、比例制御ボイラの熱効率はエコ運転ポイントが最も高いため、第1設定部23は、低燃焼位置(L)としてエコ運転ポイントに対応する燃焼率を設定する。これにより、比例制御ボイラの効率を高めることができる。
【0043】
図6(2b)を参照して、ボイラ群2の圧力安定性を高めるためには、ボイラ群2の燃焼率を細やかに変更可能であることが好ましい。そこで、第1設定部23は、低燃焼位置(L)として比例制御ボイラが燃焼可能な最小燃焼率(最小燃焼状態S1に対応する燃焼率)を設定する。これにより、ボイラ群2の圧力安定性を向上させることができる。
【0044】
図7(3a,3b,3c)を参照して、比例制御ボイラを4位置の段階値制御ボイラとして設定する場合、低燃焼位置(L)、中燃焼位置(M)の設定が問題となる。
【0045】
図7(3a)を参照して、エコ運転ゾーンは、比例制御ボイラが所定効率以上の効率で燃焼する燃焼率の範囲である。そこで、第1設定部23は、エコ運転ゾーンの上限値に対応する燃焼率を中燃焼位置(M)として設定する。これにより、中燃焼位置(M)で燃焼する場合であっても、所定効率以上の効率で燃焼することになり、比例制御ボイラの効率を高めることができる。
【0046】
図7(3b)を参照して、同様に、第1設定部23は、エコ運転ゾーンの下限値に対応する燃焼率を低燃焼位置(L)として設定する。これにより、低燃焼位置(L)で燃焼する場合であっても、所定効率以上の効率で燃焼することになり、比例制御ボイラの効率を高めることができる。
【0047】
図7(3c)を参照して、第1設定部23は、エコ運転ゾーンの下限値ではなく、比例制御ボイラが燃焼可能な最小燃焼率を低燃焼位置(L)として設定する。これにより、ボイラ群2の燃焼率を細やかに変更することができ、ボイラ群2の圧力安定性を高めることができる。
【0048】
なお、
図6,7に示す設定例は一例に過ぎず、比例制御ボイラのその他の燃焼率を段階値制御ボイラにおける燃焼位置として設定することとしてもよい。例えば、段階値制御ボイラの複数の燃焼位置の間隔が均等になるように、比例制御ボイラの燃焼率に対して所定の燃焼位置を設定することとしてもよい。即ち、比例制御ボイラを3位置の段階値制御ボイラとして設定する場合には、燃焼率0%を燃焼停止位置(−)、燃焼率50%を低燃焼位置(L)、燃焼率100%を高燃焼位置(L)として設定し、4位置の段階値制御ボイラとして設定する場合には、燃焼率0%を燃焼停止位置(−)、燃焼率33%を低燃焼位置(L)、燃焼率67%を中燃焼位置(M)、燃焼率100%を高燃焼位置(L)として設定することとしてもよい。
【0049】
図4に戻り、第2設定部24は、ボイラ20への給水温度に基づいて、エコ運転ポイントに対応する燃焼率、及びエコ運転ゾーンの上限値及び下限値に対応する燃焼率を設定する。通常、ボイラ20への給水温度によってボイラ20の熱効率は異なる。給水温度によって燃焼ガスの温度が低下する程度が異なり、結露水(ドレン水)の発生しやすさが異なるからである。
そこで、第2設定部24は、給水温度に基づいてエコ運転ポイントやエコ運転ゾーンに対応する燃焼率を設定する。具体的には、
図8に示すように、第2設定部24は、給水温度が低い場合(例えば、15℃程度)のエコ運転ポイントやエコ運転ゾーンに対応する燃焼率を、給水温度が通常である場合(例えば、40℃程度)のエコ運転ポイントやエコ運転ゾーンに対応する燃焼率よりも低く設定する(
図8(1)(2)参照)。
そして、第1設定部23は、第2設定部24の設定に応じて、比例制御ボイラの燃焼率に対して所定の燃焼位置を設定する。
【0050】
なお、給水温度の取得は、給水タンク等の水源に水温測定計を備え、この水温測定計が測定した水温情報を通信回線を介して取得することで実現することができる。
【0051】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0052】
(1)本実施形態のボイラシステム1においては、段階値制御ボイラ及び比例制御ボイラを混在してボイラ群2を構成し、比例制御ボイラのローカル制御部22に、所定燃焼率を第1燃焼位置として設定するとともに、最大燃焼率を第2燃焼位置として設定する第1設定部23を備える。そして、ボイラ群2の燃焼状態を制御する台数制御装置3は、第1設定部23が設定した第1燃焼位置及び第2燃焼位置を含む複数の段階的な燃焼位置で燃焼するように比例制御ボイラの燃焼状態を制御する。
このような構成によれば、比例制御ボイラが第1燃焼位置及び第2燃焼位置を含む複数の段階的な燃焼位置で燃焼する段階値制御ボイラとして扱われることになるため、台数制御装置3に何らの変更を加えることなく、段階値制御ボイラ及び比例制御ボイラが混在するボイラ群2の燃焼状態を適切に制御することができる。
【0053】
(2)比例制御ボイラには、ボイラ効率が最も高くなる燃焼率であるエコ運転ポイントが設定されており、第1設定部23は、エコ運転ポイントに対応する燃焼率を第1燃焼位置として設定し、台数制御装置3は、第1燃焼位置を低燃焼の燃焼位置、第2燃焼位置を高燃焼の燃焼位置として比例制御ボイラを制御する構成とした。
このような構成によれば、比例制御ボイラを3位置ボイラとして扱うことができるとともに、エコ運転ポイントを低燃焼の燃焼位置として設定するため、比例制御ボイラを効率よく燃焼させることができる。
【0054】
(3)比例制御ボイラのローカル制御部22に、給水温度に基づいてエコ運転ポイントに対応する燃焼率を設定する第2設定部24を備える構成とした。
このような構成によれば、給水温度に応じたエコ運転ポイントが第1燃焼位置として設定されるため、給水温度に関わらず比例制御ボイラを効率よく燃焼させることができる。
【0055】
(4)比例制御ボイラには、ボイラ効率が所定閾値よりも高くなる燃焼率の範囲であるエコ運転ゾーンが設定されており、第1設定部23は、エコ運転ゾーンの上限値に対応する燃焼率を第1燃焼位置として設定し、台数制御装置3は、第1燃焼位置を中燃焼の燃焼位置、第2燃焼位置を高燃焼の燃焼位置として前記比例制御ボイラを制御する構成とした。
このような構成によれば、比例制御ボイラを4位置ボイラとして扱うことができるとともに、所定効率以上の燃焼率(エコ運転ゾーンの上限値)を中燃焼の燃焼位置として設定するため、比例制御ボイラを効率よく燃焼させることができる。
【0056】
(5)第1設定部23は、エコ運転ゾーンの下限値に対応する燃焼率を第3燃焼位置として設定し、台数制御装置3は、第3燃焼位置を低燃焼の燃焼位置として比例制御ボイラを制御する構成とした。
このような構成によれば、所定効率以上の燃焼率(エコ運転ゾーンの下限値)を低燃焼の燃焼位置として設定するため、比例制御ボイラを効率よく燃焼させることができる。
【0057】
(6)第1設定部23は、比例制御ボイラが燃焼可能な最小燃焼率を第3燃焼位置として設定し、台数制御装置3は、第3燃焼位置を低燃焼の燃焼位置として比例制御ボイラを制御する構成とした。
このような構成によれば、ボイラ群2全体における燃焼率を細やかに変更することができ、ボイラ群2の圧力安定性を高めることができる。
【0058】
(7)比例制御ボイラのローカル制御部22に、給水温度に基づいてエコ運転ゾーンに対応する燃焼率を設定する第2設定部24を備える構成とした。
このような構成によれば、給水温度に応じたエコ運転ゾーンの上限値や下限値が所定の燃焼位置として設定されるため、給水温度に関わらず比例制御ボイラを効率よく燃焼させることができる。
【0059】
以上、本発明のボイラの好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、3台のボイラ20からなるボイラシステム1について説明したが、ボイラシステム1が備えるボイラ20の台数は3台に限られず、2又は4以上の複数台のボイラ20を備えることとしてもよい。また、比例制御ボイラの台数も1台に限られるものではなく、段階値制御ボイラと比例制御ボイラとが混在していれば足り、2台以上の比例制御ボイラを備えることとしてもよい。