(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-141777(P2015-141777A)
(43)【公開日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】ジャイロトロンのコレクタ
(51)【国際特許分類】
H01J 25/00 20060101AFI20150707BHJP
【FI】
H01J25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-12984(P2014-12984)
(22)【出願日】2014年1月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】安武 浩人
(72)【発明者】
【氏名】満仲 義加
【テーマコード(参考)】
5C029
【Fターム(参考)】
5C029RR03
(57)【要約】
【課題】変形を防止できるジャイロトロンのコレクタを提供する。
【解決手段】ジャイロトロンのコレクタ20は、コレクタ本体24および補強部32を備える。コレクタ本体24は、軸方向の一端が開口され、他端が閉塞された円筒状に形成する。補強部32は、コレクタ本体24よりも強度が高く、コレクタ本体24の一部に周方向に沿って円筒状に設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端が開口され、他端が閉塞された円筒状のコレクタ本体と、
前記コレクタ本体の一部に周方向に沿って円筒状に設けられ、前記コレクタ本体よりも強度が高い補強部と
を具備することを特徴とするジャイロトロンのコレクタ。
【請求項2】
前記補強部は、前記コレクタ本体の軸方向の中央部に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のジャイロトロンのコレクタ。
【請求項3】
前記コレクタ本体は、軸方向に複数に分割された複数のコレクタ部品を有し、これらコレクタ部品間に補強部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載のジャイロトロンのコレクタ。
【請求項4】
前記補強部は、前記コレクタ本体の内側に臨む内周側に、前記コレクタ本体と同じ材質の覆い部を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のジャイロトロンのコレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ミリ波帯の電磁波を発生させるジャイロトロンのコレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核融合等において、プラズマを加熱、制御する手段として、例えばミリ波帯の電磁波を用いる方法が知られている。そして、ミリ波帯の電磁波を発振させるための発振源として大電力のジャイロトロンが有望視されている。
【0003】
ジャイロトロンは、真空で高磁場中の空胴共振器に中空旋回電子ビームを入射することによって発振を行っている。発振によって電子ビームはエネルギーの一部を失ってコレクタにおいて捕集される。ジャイロトロンの総合効率は50%前後なので、例えば出力1MWのジャイロトロンであれば、コレクタでも1MWのエネルギーが消費されることになる。ジャイロトロンの電子ビームは、コレクタに捕集され、熱エネルギーに変わる。そのため、コレクタは高温になる。このコレクタの熱を除去するために、コレクタの周囲を冷却ジャケットで覆い、コレクタと冷却ジャケットとの間に冷却水を流通させて冷却を行っている。
【0004】
一般的なジャイロトロンのコレクタには、導電率および熱伝導率が高く、真空中へのガス放出が少ない無酸素銅を使用している。しかし、無酸素銅の軟化温度は200℃程度とやや低く、ジャイロトロンの大電力動作時の発熱によるコレクタの強度の低下、およびコレクタに加わる冷却水の圧力により、コレクタの一部が変形するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−123658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジャイロトロンのコレクタが変形すると、コレクタの真空リークを引き起こす懸念がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、変形を防止できるジャイロトロンのコレクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のジャイロトロンのコレクタは、軸方向の一端が開口され、他端が閉塞された円筒状のコレクタ本体と、前記コレクタ本体の一部に周方向に沿って円筒状に設けられ、前記コレクタ本体よりも強度が高い補強部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態を示すジャイロトロンのコレクタの断面図である。
【
図4】第2の実施形態を示すジャイロトロンのコレクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1の実施形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0011】
図3に示すように、ジャイロトロン10は、管本体11の軸方向の一端部に設けられた電子銃12から出射された電子ビーム13により、空胴共振器(キャビティ)14で、準光学的なミリ波またはマイクロ波である電磁波15が生起させる。生起された電磁波15は、モード変換器16と伝送ミラー系17(伝送ミラー17a〜17d)により平行ビーム状に変換され、伝送ミラー17dで出力導波管の出力窓18に向けて反射され、ジャイロトロン10の外部に出力波19として導出される。
【0012】
電磁波15の生起に利用された後の電子ビーム13は、図示しないスイープ(掃引)コイルにより掃引され、管本体11の軸方向の他端側に設けられたコレクタ20に捕捉される。
【0013】
なお、ジャイロトロン10の内部は真空状態にあり、また、空胴共振器14の外側の管本体11の周囲には例えば超伝導電磁石等からなる磁界発生装置21が設けられている。
【0014】
また、
図1および
図2に示すように、コレクタ20は、軸方向の一端が開口され、他端が閉塞された円筒状のコレクタ本体24を備えている。
【0015】
コレクタ本体24の一端には、管本体11に結合するためのフランジ25がろう付け接合されている。フランジ25は例えばステンレス材料によって形成されている。
【0016】
コレクタ本体24の外周面には、複数のフィン26がコレクタ20の軸方向に沿って突設されている。
【0017】
出力1MW級のジャイロトロン10のコレクタ20は、内径が360mm程度であるが、長さが1m以上になるため、一体構造だと製造が難しく高価になる。そのため、コレクタ20は、軸方向に複数のコレクタ部品27,28,29,30に分割され、これらコレクタ部品27,28,29,30が一体的に組み立てられている。コレクタ部品27,28,29,30は、それぞれ円筒状で外周面に複数のフィン26が突設され、また、先端部のコレクタ部品30のみには閉塞部31が形成されている。そして、コレクタ部品27,28,29,30間は、互いに凹凸嵌合され、ろう付け接合されている。
【0018】
コレクタ本体24すなわちコレクタ部品27,28,29,30は、導電率および熱伝導率が高く、真空中へのガス放出が少ない無酸素銅で形成されている。
【0019】
コレクタ20の軸方向の中央部であって中央のコレクタ部品28,29間には、円筒状の補強部32が一体的に設置されている。補給部32は、コレクタ本体24の材質である無酸素銅に比べて、軟化温度が高く、強度が高い例えばステンレスによって形成されている。補強部32は、円筒状で外周面にコレクタ本体24のフィン26に連続する複数のフィン33が突設されており、コレクタ部品27,28,29,30と同じ断面形状に形成されている。補強部32は、コレクタ部品28,29に対して凹凸嵌合されるとともにろう付け接合して組み立てられている。
【0020】
補強部32の軸方向における幅に関しては、ステンレスの熱伝導率が無酸素銅ほどではないため、その幅が大きすぎると、コレクタ20からの放熱性に影響し、一方、その幅が小さすぎると、コレクタ20の十分な補強性能が得られないため、放熱性と強度とを考慮して最適な幅に設定される。
【0021】
このように構成されたジャイロトロン10では、コレクタ20に捕集された電子ビームが熱エネルギーに変わり、コレクタ20が高温になる。このコレクタ20の熱を除去するために、コレクタ20の周囲を冷却ジャケットで覆い、コレクタ20と冷却ジャケットとの間に冷却水を流通させて冷却を行っている。そして、ジャイロトロン10の通常使用では、コレクタ20の温度が200℃〜300℃まで上昇し、コレクタ20には冷却水の圧力が10kPa程度加わる。
【0022】
ここで、コレクタ20が補強部32を備えない場合、コレクタ20の材質である無酸素銅の軟化温度は200℃程度とやや低いため、コレクタ20の温度上昇によって強度が低下し、冷却水の圧力により、コレクタ20の軸方向の中央部分においてコレクタ20の中心側に凹む変形が生じやすい。この変形が例えばコレクタ部品28,29の接合部付近で起こると、コレクタ20の真空リークを引き起こしてしまう。
【0023】
本実施形態では、コレクタ20が補強部32を備えるため、コレクタ本体24の温度上昇によって強度が低下しても、冷却水の圧力を補強部32で支え、コレクタ20の変形を防止することができる。これにより、長期間安定的にコレクタ20を使用することができる。
【0024】
なお、コレクタ本体24の一部を外側に厚くして強度を確保しようとすると、コレクタ20の冷却構造が複雑になり、また、コレクタ本体24の全体を厚くして強度を確保しようとすると、放熱性が低下するため、コレクタ20が補強部32を備えることが有効となっている。
【0025】
次に、
図4に第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0026】
補強部32の内周面に、コレクタ本体24(コレクタ部品27,28,29,30)と同じ材質である無酸素銅の覆い部35を形成する。
【0027】
補強部32の内周面の電子ビームの当たる部分も、コレクタ本体24(コレクタ部品27,28,29,30)と同じ材質である無酸素銅とすることにより、コレクタ20の内側での導電率および熱伝導率を高くでき、真空中へのガスの放出を少なくすることができる。
【0028】
なお、補強部32は、コレクタ20の1箇所に設ける場合に限らず、複数箇所に設けてもよい。例えば、各コレクタ部品27,28,29,30の間にそれぞれ補強部32を設ける。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10 ジャイロトロン
20 コレクタ
24 コレクタ本体
27,28,29,30 コレクタ部品
32 補強部
35 覆い部