(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-141849(P2015-141849A)
(43)【公開日】2015年8月3日
(54)【発明の名称】高周波入力結合器
(51)【国際特許分類】
H05H 7/02 20060101AFI20150707BHJP
H05H 7/18 20060101ALI20150707BHJP
H05H 13/04 20060101ALI20150707BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20150707BHJP
H01P 7/06 20060101ALI20150707BHJP
【FI】
H05H7/02
H05H7/18
H05H13/04 D
H01P5/08 J
H01P7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-15028(P2014-15028)
(22)【出願日】2014年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】青木 延忠
【テーマコード(参考)】
2G085
5J006
【Fターム(参考)】
2G085AA13
2G085BA05
2G085BA08
2G085BB02
2G085BB17
2G085BE06
2G085EA01
2G085EA04
5J006HC01
5J006LA02
5J006LA08
5J006LA09
5J006LA13
5J006NA02
(57)【要約】
【課題】内導体と外導体との同軸性を確保し、ループと内導体および外導体とを隙間なく接続できる高周波入力結合器を提供する。
【解決手段】高周波入力結合器10は、同軸配置する内導体20および外導体21を備える。ループ22によって内導体20の先端部と外導体21の先端部とを接続する。ねじ28,29がループ22に挿通し、内導体20および外導体21にループ22をそれぞれ締め付けて固定する。覆い部36,37がループ22に挿通したねじ28,29を覆う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸配置される内導体および外導体と、
前記内導体の先端部と前記外導体の先端部とを接続するループと、
このループに挿通し、前記内導体および前記外導体に前記ループをそれぞれ締め付けて固定するねじと、
前記ループに挿通した前記ねじを覆う覆い部と
を具備することを特徴とする高周波入力結合器。
【請求項2】
前記覆い部は、前記ループにろう付けによって接合されているとともに前記ループの表面に沿って面一に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の高周波入力結合器。
【請求項3】
前記ループは、前記ねじが挿通する挿通孔が形成され、
前記覆い部は、前記ねじが挿通された前記挿通孔に埋め込まれている
ことを特徴とする請求項1または2記載の高周波入力結合器。
【請求項4】
前記ループ、前記ねじおよび前記キャップは、銅材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の高周波入力結合器。
【請求項5】
前記ねじは、前記外導体と前記ループとの締め付け固定に2本以上備えている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の高周波入力結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波増幅器から放出された高周波(マイクロ波)を加速空洞に入射する高周波入力結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷電粒子(電子、イオン)加速器において、クライストロン等の高周波増幅器から放出された高周波(マイクロ波)を加速空洞に入射するのに高周波入力結合器が用いられている。
【0003】
高周波入力結合器は、同軸配置される内導体および外導体、およびこれら内導体の先端部と外導体の先端部とを接続するループを備え、さらに、高周波が通過してくる導波管の内部の大気圧と加速空洞内の高真空とを隔絶し、高周波を効率良く透過する高周波入力窓を備えた構造となっている。
【0004】
ループは内導体の先端部と外導体の先端部とにろう付けによって接合して組み立てているが、内導体と外導体との同軸性を確保することに加え、ループと内導体および外導体との間に隙間を生じさせないことが重要となっている。ループと内導体および外導体との間に隙間があると、高周波電界の不均一、集中が発生し、放電を誘発することが懸念されるからである。そのため、ループの接合時には、様々な治具を用いて内導体と外導体との同軸性を保ちながら、質量が大きいウェイトをループ上に載せてループと内導体および外導体との間に隙間が発生するのを防ぐような工夫がなされている。
【0005】
また、ループと内導体および外導体との接合部分を凹凸形状の嵌合構造とすることにより、ループと内導体および外導体とのずれの発生を抑制することが可能となるが、ループ上に載せるウェイトのずれ等により、ループと内導体および外導体との間の隙間の発生を確実に防ぐことは困難なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−60500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の高周波入力結合器では、内導体と外導体との同軸性を確保し、ループと内導体および外導体との間を隙間なく接続することが難しい問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、内導体と外導体との同軸性を確保し、ループと内導体および外導体とを隙間なく接続できる高周波入力結合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の高周波入力結合器は、同軸配置される内導体および外導体と、前記内導体の先端部と前記外導体の先端部とを接続するループと、このループに挿通し、前記内導体および前記外導体に前記ループをそれぞれ締め付けて固定するねじと、前記ループに挿通した前記ねじを覆う覆い部とを具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態を示す高周波入力結合器の断面図である。
【
図3】同上高周波入力結合器の分解状態の断面図である。
【
図4】第2の実施形態を示す高周波入力結合器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1の実施形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0012】
高周波入力結合器10は、例えばクライストロン等の高周波増幅器から放出された高周波を伝送する導波管11と高周波空洞装置12の加速空洞13との間を結合するとともに、導波管11内の大気圧と加速空洞13内の高真空とを隔絶し、高周波を加速空洞13に入射するのに用いられる。
【0013】
高周波入力結合器10は、結合器本体16、およびこの結合器本体16の軸方向の一端に設置される窓ユニット17を備えている。高周波入力結合器10は、一例として、全長600mm程度、直径100〜200mm程度に形成されている。
【0014】
そして、結合器本体16は、同軸配置される円柱状の内導体20および円筒状の外導体21を備えている。結合器本体16の一端側において内導体20と外導体21とが窓ユニット17によって同軸に固定され、結合器本体16の他端側において内導体20の先端部と外導体21の先端部とがループ22によって同軸に固定されている。これら内導体20、外導体21およびループ22を含む結合器本体16は、内部を通過する高周波によって表面を電流が流れやすくすること等を考慮して、例えば銅材料によって形成されている。
【0015】
内導体20および外導体21の先端部には、それぞれねじ孔等の取付孔23,24が形成されている。内導体20の先端部は外導体21の先端部よりも突出されている。
【0016】
ループ22は、内導体20の先端部に接合される接合部25、外導体21の先端部に接合される接合部26、およびこれら接合部25と接合部26とを連結する連結部27を備えている。接合部25,26は連結部27から突出されているとともに、内導体20の先端部と外導体21の先端部との突出量が異なっているのに対応して連結部27からの接合部26の突出量が接合部25の突出量よりも大きくなっている。
【0017】
ループ22は、ねじ28,29によって内導体20の先端部および外導体21の先端部に締め付けて固定されている。ねじ28,29は、軸部30および頭部31を有している。内導体20用のねじ28と外導体21用のねじ29とは、内導体20の先端部と外導体21の先端部との突出量が異なっているのに対応して軸部30の長さが異なっている。ねじ28,29は、例えばステンレスまたは銅材料によって形成されている。これらステンレスと銅は熱膨張率があまり変わらないため、ねじ28,29の材料として何れを用いても構わない。
【0018】
接合部25,26には、それぞれねじ28,29が挿通する挿通孔32,33が貫通形成されている。挿通孔32,33は、軸部30が挿通する小径孔部34、および頭部31が配置される大径孔部35を有している。
【0019】
ねじ28,29の頭部31がそれぞれ配置される挿通孔32,33の大径孔部35を覆って覆い部36,37が用いられる。覆い部36,37は、例えば銅材料によって形成されており、ループ22にろう材を挟んで溶着するろう付け(ろう接合)によって接合されているとともにループ22の表面に沿って面一に形成されている。
【0020】
外導体21の外側には、結合器本体16の他端側が加速空洞13に配置されるように高周波空洞装置12に取り付けるためのフランジ38が固定されている。
【0021】
また、窓ユニット17は、内導体20に接合される円筒状の内導体部40、外導体21に接合される円筒状の外導体部41、およびこれら内導体部40と外導体部41との間に接合される高周波入力窓42を備えている。
【0022】
高周波入力窓42は、セラミックス製で、中央に孔43を設けた円板状(円環状)に形成されている。高周波入力窓42の孔43に内導体部40が挿入され、高周波入力窓42が外導体部41の内側に挿入され、高周波入力窓42と内導体部40および外導体部41との接合面がろう付けによって気密に接合されている。そして、高周波入力窓42によって、内導体部40と外導体部41とを同軸に固定している。
【0023】
内導体部40および外導体部41は、内部を通過する高周波によって表面を電流が流れやすくすることと、高周波入力窓42のろう付け・昇温時に高周波入力窓42との膨張差で生じる応力を吸収できること等を考慮して、銅材料によって形成されている。
【0024】
窓ユニット17を結合器本体16に取り付けることにより、内導体部40が内導体20に組み合わされて内導体20の外面に面一となり、外導体部41が外導体21に組み合わされて外導体21の内面に面一となり、これら内導体部40および外導体部41がそれぞれ内導体20および外導体21の一部として構成されている。
【0025】
そして、このように構成された高周波入力結合器10は、外導体21に取り付けられたフランジ38によって高周波空洞装置12に設置され、内導体20と外導体21との間で高周波入力窓42までの部分が真空状態となる。また、高周波入力結合器10は、同軸型の導波管11をねじで固定して取り付け、大気圧の内部を通ってきた高周波を高周波入力窓42の方向に導くものとなっている。
【0026】
次に、ループ22と内導体20および外導体21との組み立てについて説明する。ループ22の接合部25,26をそれぞれ内導体20の先端部および外導体21の先端部にろう材を挟んで配置し、後の接合工程でろう付けできるようにしておく。このとき、内導体20、外導体21の高さが規定の公差に収まらず、ループ22が傾いてしまう場合には、ループ22の接合部25,26のどちらかを予め切削して突出量を調整しておく。
【0027】
ねじ28,29をループ22の挿通孔32,33に挿通して内導体20および外導体21の取付孔23,24に螺着し、ねじ28,29によってループ22を内導体20および外導体21に締め付けて固定する。このねじ28,29の締め付けは、内導体20と外導体21との同軸性および傾き等を調整した後に強固に締め付けて固定する。このとき、ねじ28,29の緩みを防止するために、ねじ28,29の頭部31とループ22との間にろう材を挟み、後の接合工程でろう付けできるようにしておく。
【0028】
覆い部36,37をループ22の挿通孔32,33に嵌め込む。このとき、覆い部36,37とループ22との間にろう材を挟み、後の接合工程でろう付けできるようにしておく。また、覆い部36,37は、
図3に2点鎖線で示すように、ループ22の挿通孔32,33に挿入される高さよりも高い初期形状のものが用いられる。そのため、覆い部36,37をループ22の挿通孔32,33に嵌め込んだ状態では、覆い部36,37をループ22の表面から突出している。
【0029】
接合工程において、ろう材を配置しておいたループ22の接合部25,26と内導体20および外導体21との間、ねじ28,29の頭部31とループ22との間、覆い部36,37とループ22との間を、それぞれろう材を挟んで溶着するろう付けによって接合する。
【0030】
接合工程の後に、ループ22の表面から突出する覆い部36,37の突出部分を切削・研磨し、ループ22の表面に面一となるようにする。
【0031】
このように、高周波入力結合器10では、ねじ28,29でループ22を内導体20および外導体21を締め付けて固定するため、内導体20と外導体21との同軸性を確保し、ループ22と内導体20および外導体21とを隙間なく接続できる。
【0032】
しかも、ループ22を挿通したねじ28,29を覆い部36,37で覆うため、ねじ28,29がループ22に埋め込まれた状態となり、ループ22の表面で高周波電界を乱すことを回避することができる。仮に、ループ22の表面にねじ28,29の頭部31が露出していると、頭部31の部分で局所的な電界集中が発生し、頭部31が発熱するおそれがある。
【0033】
さらに、覆い部36,37をねじ28,29が挿通されたループ22の挿通孔32,33に埋め込み、覆い部36,37をループ22の表面に面一にしているため、ループ22の表面で高周波電界を乱すことを回避することができる。
【0034】
また、ねじ28,29および覆い部36,37を用いることで組立工数が増加することになるが、ろう付け後に、ループ22の傾き、ろう材の流れ出し、内導体20と外導体21との同軸度に不良が生じた場合には、修正がほとんど不可能となることを考慮すると、予め内導体20および外導体21の同軸性および傾きを調整してねじ28,29でループ22を内導体20および外導体21に固定した後に、ろう付けを行うことは有効なものとなる。
【0035】
また、高周波入力結合器10において、内導体20、外導体21およびループ22は、高周波にさらされることによる温度上昇がある。これら構造物の温度上昇は熱膨張による変形、ディメンジョンの変異、さらに構造物の表面からのガス放出を招くことになり、機器の正常な機能発揮に少なからず影響をもたらすことが懸念される。そのため、大入力の高周波入力結合器10では、外導体21の外周部に水冷ジャケットを設け、さらに内導体20も先端付近まで冷却管を導入して熱を除去する構成が採られている。しかし、ループ22の部分に水冷機構を設けることはサイズの点で難しいものとなるため、ループ22の部分で発生した熱は伝導により内導体20および外導体21に逃がすものとしている。そして、内導体20、外導体21およびループ22は熱伝導性に優れた銅製とすることが一般的なものとなっており、ねじ28,29についても同様の考え方に基づき銅製のものとすることが好ましい。
【0036】
次に、
図4に第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を用い、その構成および作用効果についての説明を省略する。
【0037】
高周波入力結合器において、ループ22を内導体20および外導体21にろう付けする際、それぞれを固定するねじ28,29を締め込んでも、ろう付けの温度上昇(銀ろう付けでは800℃程度)によりループ22と内導体20および外導体21とに微小なずれが発生する可能性がある。このずれに関しては、ねじ28,29の締め付け時の回転応力を考慮すると、ループ22と外導体21との接合面で回転ずれが出ることが最も起きやすいものと考えられる。
【0038】
このようなずれを防止するために、ループ22と外導体21とを接続する部分で周方向の少なくとも2箇所をねじ29で固定する。これにより、ループ22の回転方向のずれの発生を抑えることが可能となる。
【0039】
なお、ループ22と内導体20との接合面でずれが発生する可能性もあるが、ループ22と外導体21との間での回転ずれの発生が防止できるため、ループ22と内導体20とを固定するねじ28の数を増加しなくてもよい。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 高周波入力結合器
20 内導体
21 外導体
22 ループ
28,29 ねじ
32,33 挿通孔
36,37 覆い部