【実施例】
【0033】
以下、実施例の撚り線導体および絶縁電線について、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0034】
(実施例1)
実施例1の撚り線導体および絶縁電線について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1および
図2に示すように、本例の撚り線導体1は、複数本の第1導体素線21と複数本の第2導体素線22とが混在した状態で撚り合わされている。第1導体素線21の断面形状および第2導体素線22の断面形状は、いずれも非円形状であり、かつ、互いに相似する。以下、これを詳説する。
【0035】
本例において、第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれも、円形状の断面を有する素線本体部201と、素線本体部201の周表面から外方に突出するとともに素線軸方向に延びる突出部202とを有している。第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれも突出部202を複数有しており、素線本体部201の周方向に各突出部202が等間隔で配置されている。より具体的には、第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれも突出部202を4つ有している。各突出部202は、素線本体部201の周方向を4等分した位置にそれぞれ配置されている。なお、突出部202の断面は、半円状とされている。
【0036】
第1導体素線21は、具体的には、素線本体部201の直径Rが0.32mmであり、素線本体部201の直径Rに対する突出部202の突出高さhの比率は10%である。第2導体素線は、具体的には、素線本体部201の直径Rが0.16mmであり、素線本体部201の直径Rに対する突出部202の突出高さhの比率は10%である。また、第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれもアルミニウム合金からなる。
【0037】
撚り線導体1は、具体的には、撚り線導体1の中心に配置された1本の第1導体素線21と、この第1導体素線21の外周に複数本の第2導体素線22が撚り合わされてなる第1層31と、この第1層31の外周に、第1導体素線21と第2導体素線22とが互いに交互に配置されて撚り合わされてなる第2層32とを有している。また、第1導体素線21の断面積は、第2導体素線22の断面積よりも大きい。本例では、第1層31は、6本の第2導体素線22を有している。第2層32は、6本の第1導体素線21と、6本の第2導体素線22とを有している。したがって、本例では、撚り線導体1は、第1導体素線21と第2導体素線22とを合計で19本有している。
【0038】
一方、本例の絶縁電線(不図示)は、撚り線導体1と、撚り線導体1の外周に被覆された絶縁体(不図示)とを有している。本例において、絶縁体は、具体的には、塩化ビニル樹脂より構成されている。
【0039】
次に、本例の撚り線導体、絶縁電線の作用効果について説明する。
【0040】
本例の撚り線導体1は、複数本の第1導体素線21と複数本の第2導体素線22とが混在した状態で撚り合わされている。そして、第1導体素線21の断面形状および第2導体素線22の断面形状は、いずれも非円形状である。
【0041】
そのため、撚り線導体1は、端子がかしめられた場合に、真円の断面形状を有する複数本の導体素線からなる撚り線導体に比べ、隣接する各導体素線21、22同士の間で引っ掛かりが生じやすくなる。その結果、撚り線導体1の外周面に近い外側の各導体素線21、22ばかりではなく、内側の各導体素線21、22も塑性変形しやすくなる。それ故、撚り線導体1に引張荷重がかかった場合に、内側の各導体素線21、22の滑りが抑制され、端子から各導体素線21、22が抜け難くなり、端子保持力が向上する。
【0042】
さらに、撚り線導体1は、第1導体素線21の断面形状および第2導体素線22の断面形状が互いに相似する。そのため、第1導体素線21および第2導体素線22のうち、断面積の大きい方が配置されて形成された隙間に、断面積の小さい方が充填される。なお、本例において、上記断面積の大きい方は第1導体素線21であり、上記断面積の小さい方は第2導体素線22である。それ故、撚り線導体1は、撚り線導体1の断面の外形が円形状になりやすい。
【0043】
よって、撚り線導体1によれば、端子保持力を向上させることができ、断面の外形を円形状にすることができる。
【0044】
また、本例では、第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれも、円形状の断面を有する素線本体部201と、素線本体部201の周表面から外方に突出するとともに素線軸方向に延びる突出部202とを有している。したがって、第1導体素線21および第2導体素線22は、いずれも、断面で見た場合に、円形状の素線本体部201の円周部から径外方に突出部202の断面を構成する突起部が突出する非円形状の断面形状となる。そのため、撚り線導体1に端子がかしめられた場合に、突出部202により、隣接する各導体素線21、22同士の間で引っ掛かりが生じやすくなる。その結果、撚り線導体1の外周面に近い外側の各導体素線21、22ばかりではなく、外側の各導体素線21、22よりも内側にある各導体素線21、22も塑性変形しやすい。それ故、撚り線導体1に引張荷重がかかった場合に、内側の各導体素線21、22の滑りが抑制され、端子から各導体素線21、22が抜け難くなる。よって、撚り線導体1は、端子保持力が一層向上する。
【0045】
また、本例では、第1導体素線21および第2導体素線22は、突出部202を複数有しており、各突出部202は、素線本体部201の周方向に等間隔で配置されている。そのため、上記作用効果が一層向上する。さらに、各導体素線21、22の表面のひずみが大きくなるので、各導体素線21、22がより大きく変形しやすくなる。そのため、各導体素線21、22の表面に形成された酸化被膜が壊れやすく、各導体素線21、22同士の電気的接触が得られやすくなる。それ故、撚り線導体1の電気接続特性が安定化しやすい。
【0046】
また、本例では、撚り線導体1は、撚り線導体1の中心に配置された1本の第1導体素線21と、この第1導体素線21の外周に複数本の第2導体素線22が撚り合わされてなる第1層31と、この第1層31の外周に、第1導体素線21と第2導体素線22とが互いに交互に配置されて撚り合わされてなる第2層32とを有している。また、第1導体素線21の断面積は、第2導体素線22の断面積よりも大きい。
【0047】
そのため、撚り線導体1は、撚り線導体1の中心に配置された1本の第1導体素線21を中心として同心円状に第1層31、第2層32を配置しやすくなる。また、太径の第1導体素線21同士の間に形成される隙間が、細径の第2導体素線22によって充填されやすい。そのため、撚り線導体1の断面の外形をより一層円形状にしやすくなる。それ故、撚り線導体1は、絶縁体の厚みをより一層薄肉化しやすくなる。また、絶縁電線の電線径のサイズアップも抑制しやすくなる。
【0048】
また、本例では、撚り線導体1は、第1導体素線21および第2導体素線22がアルミニウム合金より構成されている。さらに、上述したように、素線本体部201の周表面には突出部202を有している。したがって、撚り線導体1は、端子でかしめられた際に、各導体素線21、22の表面のひずみが大きくなる。そのため、かしめ力によって各導体素線21、22がより大きく変形しやすく、これにより各導体素線21、22表面に形成されている硬い酸化被膜が壊れやすくなる。その結果、各導体素線21、22同士の電気的接触が十分に得られる。したがって、各導体素線21、22がアルミニウム合金より構成されている場合でも、撚り線導体1の電気接続特性が安定化しやすい。また、アルミニウム合金は、銅または銅合金に比べ、軽量であるので、撚り線導体1の軽量化を図ることができる。
【0049】
一方、本例の絶縁電線は、撚り線導体1と、この撚り線導体1の外周に被覆された絶縁体とを有している。
【0050】
よって、本例の絶縁電線は、電線端末部の絶縁体が剥ぎ取られ、露出した撚り線導体1に端子がかしめられた際に、端子保持力を向上させることができる。さらに、本例の絶縁電線は、撚り線導体1の断面の外形が円形状であるため、撚り線導体1の外周に被覆される絶縁体の厚みを薄肉化することができる。
【0051】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0052】
−撚り線導体の作製−
試料1の撚り線導体として、実施例1の撚り線導体に従う撚り線導体を作製した。また、直径0.32mmの真円状の断面を有する導体素線を19本撚り合わせることにより、比較試料1の撚り線導体を作製した。また、実施例1で説明した第1導体素線のみを19本撚り合わせることにより、比較試料2の撚り線導体を作製した。なお、各導体素線は、いずれも純度99.7%のアルミニウムにFeおよびMgを添加して引張強さを120MPaとしたアルミニウム合金からなる。
【0053】
−絶縁電線の作製−
試料1、比較試料1、および、比較試料2の撚り線導体の外周に、それぞれ塩化ビニル樹脂を押し出し被覆することにより、試料W1、比較試料W1、および、比較試料W2の絶縁電線を作製した。
【0054】
−端子保持力および電気接続性−
各絶縁電線に端子を圧着し、端子を固定した状態で絶縁電線を引っ張った際の端子保持力と、端子と絶縁電線との接触部における電気抵抗(電気接続性)とを評価した。なお、端子の圧着は、圧着前の撚り線導体の断面積を100とした場合に、圧着後の撚り線導体の断面積が約60程度となるように行った。
【0055】
上記評価において、導体素線の滑りがなく、端子保持力が60N以上であった場合を「A」、導体素線の滑りがほとんどなく、端子保持力が50N以上60N未満であった場合を「B」、導体素線の滑りが発生し、端子保持力が50N未満であった場合を「C」とした。また、接触部における電気抵抗が1mΩ以下であった場合を「A」、接触部における電気抵抗が1mΩ超3mΩ以下であった場合を「B」、接触部における電気抵抗が3mΩ以上であった場合を「C」とした。
【0056】
上記評価の結果、比較試料W1の絶縁電線は、端子保持力の評価が「C」、接触部における電気抵抗の評価が「C」であった。比較試料W2の絶縁電線は、端子保持力の評価が「A」、接触部における電気抵抗の評価が「A」であった。これらに対し、試料W1の絶縁電線は、端子保持力の評価が「A」、接触部における電気抵抗の評価が「A」であった。
【0057】
−断面観察−
各絶縁電線を、電線軸方向と垂直に切断し、各撚り線導体の断面を観察した。その結果、比較試料W2の絶縁電線が有する比較試料2の撚り線導体は、第1導体素線のみから撚り合わされているので、断面の外形が円形状ではなかった。これに対し、試料W1の絶縁電線が有する試料1の撚り線導体は、
図2に示されるように、断面の外形が円形状であり、さらに各導体素線が同心円状に配置されていることが確認された。
【0058】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。