【解決手段】沈殿物掻き寄せ機は、沈殿槽1の底面に堆積した沈殿物を沈殿槽1の底面に設けられたピット10に掻き寄せる掻き寄せ台車5と、掻き寄せ台車5が所定の位置に達したか否かを検出する位置検出器31,32,33,34と、掻き寄せ台車5の走行を制御する制御部38と、を備える。所定の位置は、ピット10の上方にある沈殿物投入位置と、ピット10から離れる方向に走行している掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる複数の反転位置とを含み、制御部38は、沈殿物投入位置と、複数の反転位置から予め選択されたいずれか1つとの間で掻き寄せ台車5を往復走行させる。
前記位置検出器は、前記掻き寄せ台車に取り付けたストライカと、当該ストライカが接触する検出棒とを備えた接触式の位置検出器であることを特徴とする請求項1に記載の沈殿物掻き寄せ機。
前記ワイヤの送り量は、前記ワイヤが巻き付けられるリールの回転回数、または前記ワイヤを支持する、回転可能な滑車の回転回数から計算により求められることを特徴とする請求項6に記載の沈殿物掻き寄せ機。
前記位置検出器は、前記掻き寄せ台車の走行時間を計測するタイマーと、計測された走行時間と前記掻き寄せ台車の走行速度とから前記掻き寄せ台車の位置を決定する位置決定部であることを特徴とする請求項1に記載の沈殿物掻き寄せ機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、省エネルギーであり、消耗部品の寿命を伸ばすことができる沈殿物掻き寄せ機を提供することを目的とする。また、本発明は、沈殿物掻き寄せ方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、沈殿槽内に位置検出器を配置することなく、沈殿槽内の掻き寄せ台車の位置を検出することができ、所望の位置で掻き寄せ台車を逆走させることができる沈殿物掻き寄せ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、沈殿槽内を走行することで、前記沈殿槽の底面に堆積した沈殿物を当該沈殿槽の底面に設けられたピットに掻き寄せる掻き寄せ台車と、前記掻き寄せ台車が所定の位置に達したか否かを検出する位置検出器と、前記掻き寄せ台車の走行を制御する制御部と、を備え、前記所定の位置は、前記ピットの上方にある沈殿物投入位置と、前記ピットから離れる方向に走行している前記掻き寄せ台車の走行方向を反転させる複数の反転位置とを含み、前記制御部は、前記沈殿物投入位置と、前記複数の反転位置から予め選択されたいずれか1つとの間で前記掻き寄せ台車を往復走行させる掻き寄せ工程を少なくとも1回前記掻き寄せ台車に実行させることを特徴とする沈殿物掻き寄せ機である。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1回の掻き寄せ工程は、複数の掻き寄せ工程であり、前記複数の掻き寄せ工程は、前記掻き寄せ台車を、前記沈殿物投入位置と、前記複数の反転位置から予め選択された第1の反転位置との間で往復走行させる第1掻き寄せ工程と、前記掻き寄せ台車を、前記沈殿物投入位置と、前記複数の反転位置から予め選択された、前記第1の反転位置とは異なる第2の反転位置との間で往復走行させる第2掻き寄せ工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記位置検出器は、前記掻き寄せ台車に取り付けたストライカと、当該ストライカが接触する検出棒とを備えた接触式の位置検出器であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記位置検出器は、前記掻き寄せ台車が近接したことを電気的信号により検出する非接触式の近接センサであることを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記沈殿物掻き寄せ機は、前記掻き寄せ台車を牽引するためのチェーンをさらに備えており、前記位置検出器は、前記チェーンに取り付けられたストライカと、当該ストライカが接触する検出棒とを備えた接触式の位置検出器であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記沈殿物掻き寄せ機は、前記掻き寄せ台車を牽引するためのワイヤをさらに備えており、前記位置検出器は、前記ワイヤの送り量から前記掻き寄せ台車の走行位置を検出する走行位置検出器であることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤの送り量は、前記ワイヤが巻き付けられるリールの回転回数、または前記ワイヤを支持する、回転可能な滑車の回転回数から計算により求められることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記位置検出器は、重量の変化から前記掻き寄せ台車が存在するか否かを検出する重量センサであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記位置検出器は、前記掻き寄せ台車の走行時間を計測するタイマーと、計測された走行時間と前記掻き寄せ台車の走行速度とから前記掻き寄せ台車の位置を決定する位置決定部であることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、掻き寄せ台車を用いて沈殿槽の底面に堆積した沈殿物を当該沈殿槽に設けられたピットに掻き寄せる沈殿物掻き寄せ方法であって、前記ピットの上方にある沈殿物投入位置と、複数の反転位置から予め選択されたいずれか1つとの間で前記掻き寄せ台車を往復走行させる掻き寄せ工程を少なくとも1回実行することを特徴とする沈殿物掻き寄せ方法である。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記少なくとも1回の掻き寄せ工程は、複数の掻き寄せ工程であり、前記複数の掻き寄せ工程は、前記掻き寄せ台車を、前記沈殿物投入位置と、前記複数の反転位置から予め選択された第1の反転位置との間で往復走行させる第1掻き寄せ工程と、前記掻き寄せ台車を、前記沈殿物投入位置と、前記複数の反転位置から予め選択された、前記第1の反転位置とは異なる第2の反転位置との間で往復走行させる第2掻き寄せ工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様は、沈殿槽の底面に堆積した沈殿物を当該沈殿槽の底面に設けられたピットに掻き寄せる掻き寄せ台車と、前記沈殿槽の底面上で前記掻き寄せ台車を走行させる駆動装置と、前記駆動装置の駆動軸に連結され、前記駆動軸の回転速度を減速させる減速装置と、前記減速装置に連結された移動機構と、前記掻き寄せ台車の走行と同期して、かつ前記掻き寄せ台車よりも遅い速度で前記移動機構によって移動される位置指示器と、前記位置指示器の位置を検出する位置検出器と、前記位置指示器の位置に基づいて前記掻き寄せ台車の走行方向を反転させる制御部とを備えたことを特徴とする沈殿物掻き寄せ機である。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記位置指示器は、前記沈殿槽の外に配置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記沈殿槽内には傾斜板が配置されており、前記掻き寄せ台車の走行方向を反転させる位置は、前記傾斜板の下方位置と前記ピットの上方位置との間にあることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記沈殿槽内に配置された沈降板と、前記沈降板を傾斜させる傾斜機構とをさらに備え、前記傾斜機構が前記沈降板を傾斜させた後に、前記掻き寄せ台車は、前記沈降板の下を走行することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記掻き寄せ台車の走行方向を反転させる位置は、前記沈降板の下方位置と前記ピットの上方位置との間にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、掻き寄せ台車が予め設定された反転位置に到達したときに掻き寄せ台車が反対方向に走行する。すなわち、予想される沈殿物の堆積分布に従って予め反転位置を設定することにより、沈殿槽の一端から他端まで往復移動する従来の掻き寄せ台車の動作に比べて、より短い距離で掻き寄せ台車が移動して沈殿物を効率よく掻き寄せることができる。その結果、掻き寄せ台車が無駄に動くことがなくなるので、省エネルギーであり、且つ、消耗部品の寿命を伸ばすことができる。
【0018】
また、本発明によれば、位置指示器は沈殿槽内の掻き寄せ台車と同期して、かつより遅い速度で移動する。したがって、制御部は、この位置指示器の位置に基づいて、沈殿槽内の掻き寄せ台車の位置を検出することができ、さらに掻き寄せ台車の動きを制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
以下で説明する実施形態は、上水あるいは下水の水処理に用いられる沈殿槽としての沈殿池であるが、本発明は、沈殿物が発生するのであれば他のタイプの沈殿槽にも適用が可能であり、例えば、食品製造工程で用いられる沈殿槽であってもよい。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る沈殿物掻き寄せ機の概略側面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る沈殿物掻き寄せ機の概略平面図である。
図1に示されるように、沈殿物掻き寄せ機は、液体(被処理液)中の不純物を沈降させ、沈殿物として堆積させるための沈殿槽1内に配置される。この沈殿槽1の壁には、液体(被処理液)を沈殿槽1内に導入するための複数の液体流入口2が設けられている。液体流入口2を通じて流入した液体は、この液体流入口2が設けられている壁の反対側の他方の壁に向かって流れる。液体がこのように流れていく過程で、液体に含まれる不純物が沈降し、沈殿槽1の底面に沈殿物として堆積する。
【0022】
図1および
図2に示されるように、沈殿物掻き寄せ機3は、沈殿槽1内を走行して、沈殿槽1の底面上の沈殿物を当該沈殿槽1の底面に設けられたピット10に掻き寄せるための掻き寄せ台車5と、掻き寄せ台車5を往復走行させるための牽引具としてのワイヤ6と、を備える。ピット10は、沈殿槽1の底面の一端に設けられており、液体流入口2が設けられた壁に隣接している。
【0023】
沈殿槽1の底面上には、互いに並列な2本のガイドレール12,12が水平に設置されている。掻き寄せ台車5は、回転可能な走行ホイール13を有しており、この走行ホイール13はガイドレール12,12上に置かれている。したがって、掻き寄せ台車5はガイドレール12,12上を走行することが可能となっている。掻き寄せ台車5は、沈殿槽1の底面上の沈殿物を掻き寄せるための掻き寄せ板7をさらに有している。この掻き寄せ板7は、掻き寄せ台車5のピボット軸9を中心に回動可能に構成されている。
【0024】
牽引具としてのワイヤ6は、複数の(図示した例では6つの)回転可能な滑車21,22,23,24,25,26に支持されている。ワイヤ6の一部は、掻き寄せ台車5の掻き寄せ板7に固定されている。さらに、ワイヤ6は、当該ワイヤ6を繰り出しおよび巻き取るための2つのリール16,17に巻き付けられている。これら2つのリール16,17はモータ15に連結された駆動軸51に取り付けられている。
【0025】
ワイヤ6は、滑車21,22,23,24,25,26に掛け渡されている。滑車21,26は、リール16,17から延びるワイヤ6を沈殿槽1内に案内し、滑車22,23,24,25は、滑車21,26から下方に延びてきたワイヤ6を、沈殿槽1の長手方向に沿って水平に案内する。なお、図示した例では、掻き寄せ台車5を牽引するための牽引具としてワイヤ6が使用されているが、ワイヤ6に代えてチェーンを用いることもできる。
【0026】
ワイヤ6の一端部は、2つのリール16,17の内の一方に右巻きに巻き付けられ、ワイヤ6の他端部は、2つのリール16,17の内の他方に左巻きに巻き付けられる。モータ15は、これらリール16,17を正逆方向に回転させることができるように構成されている。モータ15を正方向に回転させると、リール16がワイヤ6を巻き取る一方で、リール17がワイヤ6を繰り出し、その結果、掻き寄せ台車5がピット10に向かって引っ張られる。モータ15を逆方向に回転させると、リール16がワイヤ6を繰り出す一方で、リール17がワイヤ6を巻き取り、その結果、掻き寄せ台車5がピット10から離れる方向に引っ張られる。このように、モータ15を正方向および逆方向に回転させることにより、掻き寄せ台車5がガイドレール12,12上を往復移動することができる。
【0027】
図3は、
図1および
図2で示した沈殿物掻き寄せ機における掻き寄せ台車が沈殿物をピットに掻き寄せている状態を示した概略側面図である。掻き寄せ台車5には、ストッパ8が設けられている。
図3に示されるように、掻き寄せ台車5がワイヤ6によってピット10に向かって引っ張られると、ワイヤ6に接続された掻き寄せ板7は、ストッパ8に当接するまでピボット軸9を中心に回転される。掻き寄せ板7がストッパ8に当接すると、掻き寄せ板7は鉛直姿勢となる。この状態で、掻き寄せ台車5をピット10に向かって移動させると、掻き寄せ板7は沈殿槽1の底面に堆積している沈殿物をピット10まで掻き寄せる。
【0028】
図4は、
図1および
図2で示した沈殿物掻き寄せ機における掻き寄せ台車がピットから離れる方向に走行している状態を示した概略側面図である。
図4に示されるように、掻き寄せ台車5がワイヤ6によってピット10から離れる方向に引っ張られる場合、ワイヤ6に接続された掻き寄せ板7はストッパ8から離れる方向にピボット軸9を中心に回転される。このとき、掻き寄せ板7は、ワイヤ6に引っ張られて鉛直姿勢から水平姿勢に変換させられる。その結果、掻き寄せ板7と沈殿槽1の底面との間に間隙が生じ、沈殿物がピット10とは逆側に集められることが防止される。
【0029】
本実施形態の沈殿物掻き寄せ機3では、
図1および
図2に示されるように、掻き寄せ台車5の位置を検出する複数の(図示の例では4つの)位置検出器31,32,33,34が、掻き寄せ台車5の走行方向に沿って配置されている。沈殿槽1は、位置検出器31,32,33,34により、掻き寄せ台車5の走行方向に沿ってエリア1、エリア2、およびエリア3に分割される。ここに図示した実施形態では、位置検出器は4つ設けられるが、本発明では、少なくとも3つの位置検出器が設けられればよく、位置検出器が3つの場合、沈殿槽1は2つのエリアに分割される。
【0030】
4つの位置検出器31,32,33,34のうちの2つの位置検出器31,34は、沈殿槽1の液体流入口2が形成されている壁と、この壁の反対側に配置された壁に隣接してそれぞれ配置されている。位置検出器34はピット10の上方に配置されている。したがって、この位置検出器34は、掻き寄せ台車5が、ピット10の上方にある所定の沈殿物投入位置に到達したか否かを検出するための位置検出器である。この沈殿物投入位置は、掻き寄せ台車5がその掻き寄せ板7で掻き寄せた沈殿物をピット10内に投入する位置である。
【0031】
他の3つの位置検出器31,32,33は、掻き寄せ台車5が所定の3つの反転位置に到達したか否かを検出するための位置検出器である。各反転位置は、ピット10から離れる方向に走行している掻き寄せ台車5がその走行方向を反転させる位置である。沈殿物投入位置は位置検出器34の設置位置に対応し、複数の反転位置は、位置検出器31,32,33の設置位置に対応する。
図1および
図2から分かるように、沈殿物投入位置および複数の反転位置は、掻き寄せ台車5の走行方向に沿って配列されている。
【0032】
沈殿物掻き寄せ機3は、位置検出器31,32,33,34によって検出された掻き寄せ台車5の位置に基づいて、掻き寄せ台車5の走行を制御する制御部38をさらに備えている。この制御部38は、掻き寄せ台車5を、上記沈殿物投入位置と、上記複数の反転位置から予め選択されたいずれか1つとの間で往復走行させる掻き寄せ工程を掻き寄せ台車5に少なくとも1回実行させるように構成される。例えば、制御部38は、掻き寄せ台車5が沈殿物投入位置に達したことを位置検出器34が検出したときに、モータ15を逆転させて掻き寄せ台車5の進行方向を反転させる。さらに、制御部38は、ピット10から離れる方向に走行する掻き寄せ台車5が予め選択された反転位置に達したことを位置検出器31が検出したときに、モータ15を逆転させて掻き寄せ台車5の進行方向を反転させる。
【0033】
制御部38には、どの反転位置で掻き寄せ台車5の走行方向を反転させるかが予めプログラムされている。制御部38は、予め選択された反転位置で掻き寄せ台車5がその進行方向を反転するように、モータ15の正逆回転方向を制御する。例えば、掻き寄せ台車5は、沈殿物投入位置(すなわち位置検出器34の設置位置)とピット10から最も遠い第1の反転位置(すなわち位置検出器31の設置位置)との間を往復する第1掻き寄せ工程を少なくとも1回実施し、第1掻き寄せ工程の後、沈殿物投入位置と第2の反転位置(すなわち位置検出器32の設置位置)との間を往復する第2掻き寄せ工程を少なくとも1回実施し、さらに、第2掻き寄せ工程の後、沈殿物投入位置とピット10から最も近い第3の反転位置(すなわち位置検出器33の設置位置)との間を往復する第3掻き寄せ工程を少なくとも1回実施する。このような掻き寄せ工程の順序および反転位置は、制御部38に予め設定された動作レシピに従って決定される。
【0034】
次に、掻き寄せ台車5の走行動作の具体例を
図5乃至
図8を用いて説明する。
図5および
図6は、従来の掻き寄せ工程を示した概略図であり、
図7および
図8は、本実施形態の掻き寄せ工程を示した概略図である。エリア3は液体流入口2に最も近く、エリア1は液体流入口2に最も遠く、エリア2はエリア1とエリア3の間に位置している。したがって、
図5乃至
図8に示されるように、エリア2内の沈殿物の量は、エリア1内の沈殿物の量よりも多く、エリア3内の沈殿物の量は、エリア2内の沈殿物の量よりも多い。
図5乃至
図8では、沈殿物の量を模式的に表現している。
【0035】
図5および
図6に示される従来の掻き寄せ工程では、掻き寄せ台車5は単に沈殿槽1の一端と他端との間を往復走行する。すなわち、ステップ1では、掻き寄せ台車5は、エリア1、エリア2、およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。その後、ステップ2で、エリア3、エリア2、およびエリア1をこの順に横切って移動し、ステップ3で、エリア1、エリア2、およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。このステップ3では、エリア1内の沈殿物は既になく、掻き寄せ台車5は無駄にエリア1内を走行することになる。
【0036】
ステップ4では、エリア3、エリア2、およびエリア1をこの順に横切って移動し、ステップ5で、エリア1、エリア2、およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。このステップ5でも、エリア1内の沈殿物は既になく、掻き寄せ台車5は無駄にエリア1内を走行することになる。さらにステップ6でエリア3、エリア2、およびエリア1をこの順に横切って移動し、ステップ7で、エリア1、エリア2、およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。このステップ7では、エリア1,2内の沈殿物は既になく、掻き寄せ台車5は無駄にエリア1,2内を走行することになる。
【0037】
さらに、ステップ8からステップ11まで、エリア3内の沈殿物がすべてピット10内に排出されるまで、掻き寄せ台車5は沈殿槽1の一端から他端まで往復走行する。最後のステップ12では、掻き寄せ台車5がエリア1内の初期位置に戻される。このように、従来の掻き寄せ工程では、掻き寄せるべき沈殿物が堆積していないエリアまで掻き寄せ台車5は走行しており、掻き寄せ台車5は、合計で36エリア分の距離を走行していることになる。
【0038】
これに対し、
図7および
図8に示される本実施形態の掻き寄せ工程では、制御部38に予めプログラミングされた動作レシピに従って、掻き寄せ台車5が往復走行する。具体的には、ステップ1で、掻き寄せ台車5は、エリア1、エリア2、およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。その後、ステップ2で、掻き寄せ台車5は、エリア3およびエリア2をこの順に横切って移動する。すなわち、位置検出器32の設置位置に相当する反転位置で掻き寄せ台車5はその走行方向を反転させる。したがって、このステップ2では掻き寄せ台車5は、エリア1内を走行しない。
【0039】
ステップ3では、掻き寄せ台車5は、エリア2およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。ステップ4で、掻き寄せ台車5は、エリア3およびエリア2をこの順に横切って移動し、位置検出器32の設置位置に相当する反転位置で掻き寄せ台車5はその走行方向を反転させる。そして、ステップ5で、掻き寄せ台車5は、エリア2およびエリア3をこの順に横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。次に、ステップ6で、掻き寄せ台車5は、エリア3のみを横切って移動し、位置検出器33の設置位置に相当する反転位置で掻き寄せ台車5はその走行方向を反転させる。その後、ステップ7で、掻き寄せ台車5は、エリア3を横切って移動して沈殿物をピット10に掻き寄せる。さらに、ステップ8からステップ11まで、エリア3内の沈殿物がすべてピット10内に排出されるまで、掻き寄せ台車5はエリア3内で往復走行を繰り返す。最後のステップ12では、掻き寄せ台車5がエリア1内の初期位置に戻される。
【0040】
このような掻き寄せ方法によれば、掻き寄せ台車5は、掻き寄せるべき沈殿物が堆積していないエリアを走行することがなくなり、掻き寄せ台車5は、合計で20エリア分の走行距離のみを走行することになる。すなわち、位置検出器32,33による位置検出と、掻き寄せ台車5の反転動作により、掻き寄せ台車5は、沈殿槽1の部分掻き寄せを実行することが可能なる。その結果、掻き寄せ台車5が無駄に動くことがなくなるので、省エネルギーであり、且つ、消耗部品の寿命を伸ばすことができる。図示した例では、従来の36エリア分の走行距離に対して、20エリア分の走行距離しか掻き寄せ台車5は走行しないため、掻き寄せ台車5を走行させるためのエネルギーを約45%低減している。
【0041】
ピット10から離間する方向に走行している掻き寄せ台車5を反転させる反転位置を決定するための位置検出器(符号31,32,33で示される)の数は2つでもよく、または3以上でもよい。位置検出器の数が多ければ多いほど、より細やかな掻き寄せ工程を実施することができる。掻き寄せ台車5の反転位置および対応する往復回数は、沈殿槽1内の沈殿物の量に基づいて予め決定され、制御部38に予め設定される。
【0042】
掻き寄せ台車5が沈殿槽1の壁に衝突することを避けるために、位置検出器31,34の設置位置は固定であることが好ましいが、一方で位置検出器32,33の配置位置を変更可能にしておくことが好ましい。位置検出器32,33の配置位置を変更可能にしておけば、季節変動や一時的な豪雨などがあったために変動した沈殿物の堆積状況に応じて、走行する掻き寄せ台車5の反転位置を容易に変更することができる。
【0043】
上述した位置検出器(符号31,32,33,34で表される)として、様々なタイプの機器を用いることができる。例えば、位置検出器は、掻き寄せ台車5に取り付けたストライカと、当該ストライカが接触する検出棒とを備えた接触式の位置検出器であってもよい。この検出棒は、ストライカが接触したことで傾き、当該傾いた検出棒がスイッチを押すことで電気信号を発するようになっている。
【0044】
位置検出器として、掻き寄せ台車5が近接したことを電気的信号により検出する非接触式の近接センサを用いることもできる。本明細書において、近接センサとは、検出対象、すなわち、掻き寄せ台車5に接触することなく、掻き寄せ台車5の位置を検出することができる非接触センサの総称である。近接センサにおける検出方式には、電磁誘導により金属体に発生する渦電流を利用する方式、掻き寄せ台車5の接近による電気的な容量の変化を捉える方式、掻き寄せ台車5の接近によって励磁する磁石を利用する方式などがある。これら以外にも、沈殿槽1の底面から上方に光を発する投光部と、投光部からの光を受光する受光部とで近接センサを構成してもよい。この場合は、掻き寄せ台車5が投光部からの光を遮ったときに、受光部は掻き寄せ台車5の位置を検出することができる。超音波発信機と超音波受信機とで近接センサを構成してもよい。
【0045】
牽引具6がチェーンから構成されている場合、位置検出器は、チェーンに取り付けられたストライカと、当該ストライカが接触する検出棒とを備える接触式の位置検出器であってもよい。この検出棒は、ストライカが接触したことで傾き、当該傾いた検出棒がスイッチを押すことで電気信号を発する。
【0046】
牽引具6が図示されるようにワイヤとして構成される場合、位置検出器は、ワイヤ6の送り量から掻き寄せ台車5の位置を検出する走行位置検出器であってもよい。例えば、走行位置検出器は、リール16および/またはリール17の回転回数から、あるいは、ワイヤ6を支持する、回転可能な滑車(例えば滑車21または滑車26)の回転回数から、ワイヤ6の送り量を計算し、この送り量から掻き寄せ台車5の位置を検出する。この場合は、位置検出器は、沈殿槽1内には設置されない。
【0047】
図示した掻き寄せ台車5は、走行ガイドレール12,12上を走行する走行ホイール13を備えている。この場合、位置検出器は、この走行ホイール13の回転方向および回転回数から掻き寄せ台車5の位置(すなわち、掻き寄せ台車5の走行距離)を検出する走行位置検出器であってもよい。この場合も、沈殿槽1内には、位置検出器は設置されない。
【0048】
位置検出器は、重量の変化から掻き寄せ台車5が存在するか否かを検出する重量センサであってもよい。この重量センサは、掻き寄せ台車5が重量センサ上に載ったときの重量の変化を検出するように構成される。
【0049】
位置検出器は、掻き寄せ台車5の走行時間を計測するタイマーと、計測された走行時間と掻き寄せ台車5の走行速度とから掻き寄せ台車5の走行距離、すなわち掻き寄せ台車5の位置を決定する位置決定部とから構成されてもよい。この場合も、沈殿槽1内には、位置検出器は設置されない。
【0050】
図9は、沈殿槽に傾斜板が取り付けられた実施形態を示す概略側面図である。
図10は、
図9に示された沈殿槽を、当該沈殿槽の液体流入口側から眺めた概略側面図である。
図10の下方には、掻き寄せ板7が鉛直姿勢にある掻き寄せ台車5の概略図が描かれている。
図9および
図10に示されるように、沈殿槽1のエリア3とエリア2には、複数の傾斜板40が設けられている。このような傾斜板40が設けられていると、流入した液体中に含まれる不純物(沈殿物)が当該傾斜板40に接触するため、エリア3およびエリア2において、不純物の沈殿槽1の底面へ沈降が促進される。その結果、エリア3およびエリア2で沈殿物がより多く堆積し、エリア1では、殆ど沈殿物が発生しない。
【0051】
このような沈殿槽1では、傾斜板40が設けられていないエリア1では掻き寄せ台車5の走行回数を少なくする。その結果、掻き寄せ台車5の走行距離をさらに短縮することが可能になり、省エネルギー化を達成することができる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図11は、本発明の他の実施形態に係る沈殿物掻き寄せ機の概略平面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0053】
図11に示すように、本実施形態の沈殿物掻き寄せ機は、沈殿槽1の底面に堆積した沈殿物を沈殿槽1の底面に設けられたピット10に掻き寄せる掻き寄せ台車5と、沈殿槽1の底面上で掻き寄せ台車5を走行させる駆動装置50と、駆動装置50の駆動軸51に連結された減速装置53と、減速装置53に連結された移動機構55と、掻き寄せ台車5の走行と同期して、かつ掻き寄せ台車5よりも遅い速度で移動機構55によって移動される位置指示器56を備えている。位置指示器56および移動機構55は、沈殿池1の外に配置されている。
【0054】
駆動装置50は、モータ15、モータ15に連結された駆動軸51、駆動軸51に固定されたリール16,17、滑車21〜26、牽引具としてのワイヤ6から構成されている。上述した実施形態と同様に、モータ15を駆動すると、ワイヤ6が引っ張られ、ワイヤ6に接続された掻き寄せ台車5が沈殿槽1の底面上を走行する。
【0055】
減速装置53は、減速ギヤ、チェーンとスプロケット、ベルトとプーリなどから構成されている。本実施形態では、減速装置53の入力軸53aは駆動装置50の駆動軸51に直接連結されているが、ギヤなどの動力伝達装置を介して駆動軸51に間接的に連結されていてもよい。減速装置53は、駆動軸51の回転速度を減速させる装置であり、したがって、減速装置53の出力軸53bは、駆動軸51よりも低い回転速度で回転する。例えば、駆動軸51の回転速度を100分の1に減速するように構成される。この場合、減速装置53の入力軸53aに対する出力軸53bの減速比は、1/100である。ただし、減速装置53の減速比は1/100に限られず、適宜選択される。
【0056】
減速装置53は、移動機構55に連結されている。この移動機構55は、減速装置53の出力軸53bに連結された回転軸58と、回転軸58に固定された2つのリール60,61と、これらのリール60,61に巻き付けられた牽引具としてのワイヤ63と、ワイヤ63を支持する2つの滑車65,66を備えている。位置指示器56は、ワイヤ63に取り付けられている。移動機構55が位置指示器56を移動させるメカニズムは、駆動装置50が掻き寄せ台車5を走行させるメカニズムと同じである。すなわち、回転軸58が一方向に回転すると、リール60がワイヤ63を巻き取る一方で、リール61がワイヤ63を繰り出し、その結果、位置指示器56が一方向に移動される。回転軸58が逆方向に回転すると、リール60がワイヤ63を繰り出す一方で、リール61がワイヤ63を巻き取り、その結果、位置指示器56が逆方向に移動される。
【0057】
図12は、移動機構55の他の構成例を示す図である。この例では、移動機構55は、減速装置53の出力軸53bに連結された回転軸58と、回転軸58に固定された駆動スプロケット67と、図示しない支持軸に回転自在に支持された従動スプロケット68と、駆動スプロケット67および従動スプロケット68に掛け渡された牽引具としてのチェーン69とを備えている。位置指示器56は、チェーン69に取り付けられている。回転軸58が一方向に回転すると、駆動スプロケット67および従動スプロケット68が回転するとともにチェーン69が一方向に循環し、その結果、位置指示器56が一方向に移動される。回転軸58が逆方向に回転すると、駆動スプロケット67および従動スプロケット68が回転するとともにチェーン69が逆方向に循環し、その結果、位置指示器56が逆方向に移動される。
【0058】
回転軸58は駆動軸51と同じ方向に回転される。回転軸58の回転速度は駆動軸51の回転速度よりも低いので、位置指示器56は、掻き寄せ台車5の走行と同期して、かつ掻き寄せ台車5よりも遅い速度で移動する。したがって、位置指示器56の移動幅は、掻き寄せ台車5の移動幅よりも短い。例えば、掻き寄せ台車5の移動幅が40mであり、減速装置53の減速比が1/100である場合、位置指示器56の移動幅は40cmである。
【0059】
沈殿物掻き寄せ機は、位置指示器56の位置を検出する2つの位置検出器71,72と、位置指示器56の位置に基づいて掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる制御部38とを備えている。位置検出器71,72は、制御部38に接続されており、位置検出器71,72から出力された位置検出信号は制御部38に送信される。位置検出器71,72は、位置指示器56に隣接して配置されている。位置検出器71,72は、接触式位置センサでもよいし、非接触式位置センサでもよい。1つの位置検出器のみを配置してもよく、または3つ以上の位置検出器を配置してもよい。
【0060】
位置検出器71は、掻き寄せ台車5が所定の反転位置に到達したか否かを検出するための位置検出器である。この反転位置は、ピット10に向かって走行している掻き寄せ台車5がその走行方向を反転させる位置である。位置検出器72も、掻き寄せ台車5が所定の反転位置に到達したか否かを検出するための位置検出器である。この反転位置は、ピット10から離れる方向に走行している掻き寄せ台車5がその走行方向を反転させる位置である。
【0061】
位置指示器56は、掻き寄せ台車5の走行に同期して移動するので、制御部38は位置指示器56の位置に基づいて掻き寄せ台車5の位置を検出し、さらに掻き寄せ台車5の走行を制御することができる。具体的には、位置指示器56が位置検出器71によって検出されると、すなわち、位置指示器56が上記所定の反転位置に対応する位置に達したことを位置検出器71が検出すると、制御部38は掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる。同様に、位置指示器56が位置検出器72によって検出されると、すなわち、位置指示器56が上記所定の反転位置に対応する位置に達したことを位置検出器72が検出すると、制御部38は掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる。
【0062】
上述の実施形態と同様に、掻き寄せ台車5の動作は、制御部38に予め設定された動作レシピに従って実行される。3つまたはそれよりも多い位置検出器を設置することにより、
図7および
図8に示すような掻き寄せ工程を実行することも当然に可能である。
【0063】
位置指示器56は、沈殿池1の外に配置されているので、沈殿池1内に位置検出器を配置する必要がない。したがって、位置検出器の設置が容易で、設置位置の変更も容易である。また、位置検出器として防水型位置検出器を使用する必要がなく、さらに浸水による位置検出器の故障のおそれもない。さらに、位置指示器56の移動幅は、掻き寄せ台車5の走行幅に比べて小さいので、位置検出器71,72の配線コストを低減させることができる。
【0064】
図11に示すように、掻き寄せ台車5を沈殿池1内の初期位置(待機位置)で停止させるためのストッパ75が沈殿池1内に配置されている。沈殿物掻き寄せ工程を終了した掻き寄せ台車5は初期位置に戻される。このとき、掻き寄せ台車5がストッパ75に衝突すると、モータ15への負荷が増え、結果としてモータ15に流れる電流が増加する。制御部38は、この電流の増加を検出することにより、掻き寄せ台車5がストッパ75に衝突したこと、すなわち、掻き寄せ台車5が初期位置に戻ったことを検出することができる。したがって、掻き寄せ台車5が初期位置に戻ったことを検出するための位置検出器は不要である。
【0065】
掻き寄せ台車5を牽引するワイヤ6には大きな負荷が掛かるため、ワイヤ6が伸びることがある。ワイヤ6が伸びると、位置指示器56の位置が掻き寄せ台車5の位置に対応しなくなる。そこで、掻き寄せ台車5の実際の位置を検出するために、
図11に示すように、少なくとも1つの位置検出器34を沈殿池1内に設置することが好ましい。この位置検出器34は、接触型の位置センサでもよく、または非接触型の位置センサでもよい。
【0066】
図13は、
図11に示す実施形態に、
図9および
図10に示す傾斜板40を組み入れた実施形態を示す図である。掻き寄せ台車5は、傾斜板40の下を走行し、沈殿池1の底面上の沈殿物をピット10に掻き寄せる。沈殿池1の底面上の沈殿物を効率よくピット10に移送するために、掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる位置は、傾斜板40の下方位置とピット10の上方位置との間にあることが好ましい。したがって、
図11に示す位置検出器71の設置位置、すなわち位置検出器71によって検出される位置指示器56の位置は、傾斜板40の下方位置とピット10の上方位置との間にある掻き寄せ台車5の反転位置に対応した位置であることが好ましい。
【0067】
図14は、
図11に示す実施形態に沈降板80,81を組み入れた実施形態を示す図である。沈降板80,81は、
図9および
図10に示す傾斜板40と同じ機能を有するものであり、液中に含まれる不純物(沈殿物)の沈殿を促進する機能を有する。しかしながら、沈降板80,81は、その傾斜角度が可変に構成されている点で、上述した傾斜板40と異なっている。
図14に示すように、沈降板80,81は傾斜機構79に連結されており、沈降板80,8は傾斜機構79によって所望の角度に傾斜できるようになっている。
【0068】
図15は、
図14に示すA−A線断面図である。沈殿池1には、複数段(図示した例では7段)の沈降板80,81が配置される。沈降板80,81は、奇数段目に位置する奇数段沈降板80からなる群と、偶数段目に位置する偶数段沈降板81からなる群とで構成される。最上段に位置する沈降板は、1段目の沈降板、すなわち奇数段沈降板80である。奇数段沈降板80および偶数段沈降板81は、鉛直方向に沿って所定の間隔で交互に配列されている。沈降板80,81はそれぞれ矩形状の形状を有している。沈降板80,81は、横方向に複数列(図示した例では4列)配置される。沈降板80,81は、矩形状のフレーム83に固定された支持機構85により回転自在に支持されている。
【0069】
図16は、鉛直方向に沿って配列された沈降板80,81の列を示す斜視図である。
図15および
図16に示されるように、沈降板80,81は、これら沈降板80,81の両側に配置された2つの支持機構85によって回転自在に支持されている。これらの支持機構85は、沈降板80,81の両側で鉛直方向に延びる2つの支持ロッド86と、沈降板80,81の短辺それぞれの中央部と2つの支持ロッド86とを回転可能に連結する中央ジョイント87とを備えている。支持ロッド86の両端部は、フレーム83に固定されている。中央ジョイント87は、水平に延びる回転軸まわりに沈降板80,81が回転することを許容する。
【0070】
図15に示すように、複数列の沈降板80,81は、複数の支持機構85を介してフレーム83に連結されており、1つの沈降板ユニットを構成する。
図14では、1つ沈降板ユニットが沈殿池1内に配置されているが、2つ以上の沈降板ユニットを配置してもよい。
【0071】
沈降板80,81の両側には、奇数段リンク機構90および偶数段リンク機構93が設けられている。奇数段リンク機構90は奇数段沈降板80の両方の短辺に連結され、偶数段リンク機構93は偶数段沈降板81の両方の短辺に連結されている。
【0072】
奇数段リンク機構90は、奇数段沈降板80の両側に配置された鉛直方向に延びる2つの奇数段ロッド101と、これら2つの奇数段ロッド101を奇数段沈降板80の両短辺それぞれの端部に回転可能に連結する奇数段ジョイント102とを備えている。奇数段ジョイント102は、奇数段沈降板80が奇数段ロッド101に対して相対的に回転することを許容する。
【0073】
偶数段リンク機構93は、偶数段沈降板81の両側に配置された鉛直方向に延びる2つの偶数段ロッド104と、これら2つの偶数段ロッド104を偶数段沈降板81の両短辺それぞれの端部に回転可能に連結する偶数段ジョイント105とを備えている。偶数段ジョイント105は、偶数段沈降板81が偶数段ロッド104に対して相対的に回転することを許容する。
【0074】
奇数段リンク機構90を動作させるための奇数段アクチュエーター110が、当該奇数段リンク機構90に連結されている。奇数段アクチュエーター110が奇数段リンク機構90を動作させると、複数の奇数段沈降板80が同時に傾斜させられる。同様に、偶数段リンク機構93を動作させるための偶数段アクチュエーター111が、当該偶数段リンク機構93に連結されている。偶数段アクチュエーター111が偶数段リンク機構93を動作させると、複数の偶数段沈降板81が同時に傾斜させられる。本実施形態では、沈降板80,81を傾斜させる傾斜機構79は、奇数段リンク機構90、偶数段リンク機構93、奇数段アクチュエーター110、偶数段アクチュエーター111を少なくとも含んで構成される。
【0075】
本実施形態では、奇数段アクチュエーター110および偶数段アクチュエーター111は、奇数段リンク機構90および偶数段リンク機構93をそれぞれ動作させるためのエアシリンダーとして構成されている。以下、奇数段アクチュエーター110および偶数段アクチュエーター111を、それぞれ奇数段エアシリンダー110および偶数段エアシリンダー111ということがある。
【0076】
奇数段エアシリンダー110および偶数段エアシリンダー111は、圧縮空気貯留タンク120に接続されており、この圧縮空気貯留タンク120に溜められた圧縮空気で動作する。圧縮空気貯留タンク120にはコンプレッサー121が接続されている。
【0077】
次に、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81の傾斜動作について
図17乃至
図19を用いて説明する。
図17は、水平状態にある沈降板80,81を、沈降板短辺側から見た図である。
図18は、奇数段沈降板80のみが傾斜した状態を示す図である。
図19は、偶数段沈降板81のみが傾斜した状態を示す図である。
図17乃至
図19は、複数列のうちの一列の沈降板80,81のみを示している。
【0078】
図17に示されるように、沈降板80,81が水平状態にあるとき、沈殿面積が最大となる。沈降板80,81の初期状態は水平状態であり、初期状態にある沈降板80,81の上面に沈殿物が堆積する。沈降板80,81の上面は沈降板80,81の沈殿面80a,81aを構成する。
【0079】
被処理液が液体流入口2を通じて沈殿池1に導入されてから所定時間が経過したとき、まず奇数段沈降板80のみを傾斜させて、奇数段沈降板80上の沈殿物を滑落させ、偶数段沈降板81の沈殿面81a上と沈殿池1の底に移動させる。奇数段沈降板80のみが傾斜した状態が
図18に示される。
図18は一列の奇数段沈降板80が傾斜した状態を示しているが、複数列の奇数段沈降板80が同時に傾斜する。
【0080】
奇数段沈降板80のみが傾斜した状態は、奇数段アクチュエーター110を動作させることによって達成される。奇数段沈降板80の中央部は、支持機構85の中央ジョイント87によって回転可能に支持され、支持機構85はフレーム83に固定されている。したがって、奇数段アクチュエーター110によって奇数段リンク機構90を下方に移動させると、中央ジョイント87を中心に奇数段沈降板80が回動し、
図18に示されるように奇数段沈降板80のみを傾斜させることができる。
【0081】
沈殿物が沈殿面80a上を滑落することが可能であれば、奇数段沈降板80の傾斜角度は特に制限されない。沈殿物を確実に滑落させるために、奇数段沈降板80の傾斜角度は、
図18に示されるように、水平方向に対して略90°であることが好ましい。奇数段沈降板80の傾斜角度は、奇数段アクチュエーター110として構成されたエアシリンダーの動作距離(ストローク)を調整することで、変更することができる。
【0082】
奇数段沈降板80を傾斜させた後で、これら奇数段沈降板80は、初期状態である水平状態に復帰させられる。具体的には、奇数段アクチュエーター110を動作させて、奇数段リンク機構90を上方に移動させる。この場合も、上述したように、奇数段沈降板80は、中央ジョイント87を中心に回動する。その結果、
図17に示されるように、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81全てが水平状態となる。
【0083】
次いで、偶数段沈降板81のみを傾斜させる。偶数段沈降板81のみが傾斜した状態が
図19に示される。偶数段沈降板81のみが傾斜した状態は、偶数段アクチュエーター111を動作させることによって達成される。偶数段沈降板81の中央部は、支持機構85の中央ジョイント87によって回転可能に支持され、支持機構85はフレーム83に固定されている。したがって、偶数段アクチュエーター111によって偶数段リンク機構93を上方に移動させると、中央ジョイント87を中心に偶数段沈降板81が回動し、
図19に示されるように偶数段沈降板81のみを傾斜させることができる。
【0084】
沈殿物が沈殿面81a上を滑落することが可能であれば、偶数段沈降板81の傾斜角度は特に制限されない。確実に沈殿物を滑落させるために、偶数段沈降板81の傾斜角度は、
図19に示されるように、水平方向に対して略90°であることが好ましい。偶数段沈降板81の傾斜角度は、偶数段アクチュエーター111として構成されたエアシリンダーの動作距離(ストローク)を調整することで、変更することができる。
【0085】
偶数段沈降板81を傾斜させた後で、これら偶数段沈降板81は、水平状態に復帰させられる。具体的には、偶数段アクチュエーター111は、偶数段リンク機構93を下方に移動させる。この場合も、上述したように、偶数段沈降板81は、中央ジョイント87を中心に回動する。その結果、
図17に示されるように、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81全てが水平状態となる。
【0086】
このように、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81は、交互に傾斜させられる。最も上に位置する奇数段沈降板80上に堆積した沈殿物を、沈殿池1の底まで移動させるために、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81の傾斜動作は繰り返し行われる。図示した例では、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81は、合計で7回傾斜させることになる。具体的には、奇数段沈降板80が4回傾斜させられ、偶数段沈降板81が3回傾斜させられる。つまり、沈降板80,81が合計でn段配置されているとすると、奇数段沈降板80と偶数段沈降板81との傾斜動作は合計でn回実施される。
【0087】
このように、奇数段沈降板80と偶数段沈降板81とを独立して交互に傾斜させるので、鉛直方向に隣接する沈降板80,81は同時には傾斜しない。したがって、沈殿物が落下する距離を小さくすることが可能となる。その結果、落下した沈殿物が破壊されることが防止される。また、沈殿物を滑落させる際に、奇数段沈降板80または偶数段沈降板81のいずれか一方は水平状態を保ったままであるため、沈殿物が沈殿池1内で舞い上がることを効果的に防止することができる。さらに、奇数段沈降板80または偶数段沈降板81のいずれか一方のみが傾斜するので、沈殿池1における沈殿物の沈降促進機能を維持することができる。
【0088】
本実施形態では、奇数段沈降板80および偶数段沈降板81は、当該沈降板80,81の沈殿面80a,81aに対して垂直に延びる補助沈降板122を有している。沈殿面80a,81a上への沈殿物の沈殿を妨げないように、補助沈降板122は奇数段沈降板80および偶数段沈降板81から下方に延びている。
【0089】
補助沈降板122は、沈降板80,81が傾斜した際に、被処理液に含まれる沈殿物を堆積することができる補助沈殿面122aを有する(
図18および
図19参照)。各補助沈殿面122aの面積は、沈殿面80a,81aの各面積の1/5以上であるのが好ましい。このように補助沈降板122を設けておけば、奇数段沈降板80または偶数段沈降板81いずれか一方が傾斜させられても、沈殿物を沈降させるために有効な沈殿面積を補助沈殿面122aによって確保することができる。
【0090】
沈降板装置をメンテナンスしたり、沈殿池1内を清掃したりするために、沈殿池1内の被処理液を全て抜く水抜きが行われることがある。この場合、沈殿池1内で沈殿物が舞い上がっても問題が発生しないので、奇数段沈降板80と偶数段沈降板81とを同時に傾斜させてもよい。
【0091】
沈降板80,81を傾斜させる傾斜機構79の動作は制御部38によって制御される。沈降板80,81が傾斜した結果、これら沈降板80,81上に堆積した沈殿物が全て沈殿池1の底面に移動した後に、
図14に示す掻き寄せ台車5が沈降板80,81の下を走行し、沈殿物をピット10に掻き寄せる。沈殿池1の底面上の沈殿物を効率よくピット10に移送するために、掻き寄せ台車5の走行方向を反転させる位置は、沈降板80,81の下方位置とピット10の上方位置との間にあることが好ましい。したがって、
図11に示す位置検出器71の設置位置、すなわち位置検出器71によって検出される位置指示器56の位置は、沈降板80,81の下方位置とピット10の上方位置との間にある掻き寄せ台車5の反転位置に対応した位置であることが好ましい。
【0092】
これまで沈殿物掻き寄せ機の好適な実施形態について、説明してきたが、図示したような沈殿槽1が並列して複数設けられる場合は、複数の沈殿槽1に、複数の沈殿物掻き寄せ機3をそれぞれ設けることができる。沈殿槽1の大きさが大きい場合には、1つの沈殿槽1に複数の沈殿物掻き寄せ機3を配置することもできる。
【0093】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。