【解決手段】版胴11の外周面の一部にクランプ板16と跳ね上げ板21とを開閉可能に設けた際、跳ね上げ板21はクランプ板16によるクランプを解除された孔版原紙Gの先端部Gaを跳ね上げるための跳ね上げ面21aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面21aの両端を曲げ形成した一対の側面21bにカムフォロワー25が取り付けられており、孔版原紙Gの排版時に、跳ね上げ用カム42cによってカムフォロワー25を押圧する動作に伴って跳ね上げ板21の側面21bが版胴11の側面11b側に倒れるのを抑制する跳ね上げ板倒れ抑制部材26を版胴11の側面11b上に取り付けたことを特徴とする孔版印刷装置1を提供する。
前記跳ね上げ板倒れ抑制部材は、前記跳ね上げ用カムによって押圧された前記カムフォロワーと当接して回動することにより、前記跳ね上げ板の側面の倒れ方向とは反対方向に該跳ね上げ板の側面を押圧することを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された孔版原紙係止装置では、着版時に製版済みの孔版原紙の先端部を版取付座上の磁石板とクランプ板との間でクランプさせることができ、且つ、排版時にクランプ板によるクランプを解除された孔版原紙の先端部を跳ね上げ板で版取付座上から跳ね上げることができる。
【0009】
この際、一般的に使用されている孔版印刷装置において、円筒状の版胴は、用紙最大サイズとしてA3サイズ(420mm×297mm)の用紙を印刷するために、版胴の直径がA3サイズの用紙の長手方向の長さ420mmと対応してφ180mm程度に設定されており、且つ、版胴の軸方向の長さはA3サイズの用紙の短手方向の長さ297mmと対応して設定されている。
【0010】
一方、最近、A3サイズ(420mm×297mm)の用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズ(594mm×420mm)の用紙を印刷できる孔版印刷装置の開発が要望されている。
【0011】
この際、A2サイズの用紙への印刷を可能とする孔版印刷装置の開発にあたって、A2サイズ用の版胴の直径を大径化せずに、A2サイズ用の版胴の直径をA2サイズの用紙の短手方向の長さ(420mm)に対応させてA3サイズ用と同じ値であるφ180mm程度に設定した場合に、A2サイズ用の版胴の軸方向の長さはA2サイズの用紙の長手方向の長さ594mmと対応してA3サイズの約2倍程度長尺に設定されることになる。
【0012】
これに伴って、磁石板の長さ,クランプ板のクランプ面の長さ,跳ね上げ板の跳ね上げ面の長さは、A3サイズ用の場合に対して約2倍程度長尺になる。
【0013】
この際、A2サイズ用に対応して形成したクランプ板は、磁性を有して厚みが1mmのステンレス材(SUS400番台系)を用いて剛性を低く抑えて、着版時にクランプ板のクランプ面が孔版原紙を介して磁石板に吸着されているので、磁石板及びクランプ面の長さがA3サイズ用の場合よりも約2倍程度長くなっていても、クランプ面を第1カムにより開くことが可能である。
【0014】
一方、A2サイズ用に対応して形成した跳ね上げ板は、クランプ板よりも厚みを厚くして剛性を高めて孔版原紙の先端部を跳ね上げる必要があるが、跳ね上げ面の長さがA3サイズ用の場合よりも約2倍程度長くなると、跳ね上げ面の長手方向の中央部位の強度が弱くなるので、排版時に跳ね上げ板を第2カムにより開いたときに跳ね上げ面の長手方向の中央部位が版胴の外周面からから離間する方向に約2mm程度撓んでしまうという新たな問題が発生し、この原因について
図7を用いて説明する。
【0015】
即ち、
図7に示す如く、一般的な孔版印刷装置100において、例えばA2サイズの用紙と対応して版胴101は、軸方向の長さがA3サイズの用紙の場合よりも約2倍程度長尺に形成されているものとする。
【0016】
上記に伴って、版胴101の外周面101aの一部に開閉可能に設けた跳ね上げ板102もA2サイズの用紙と対応して跳ね上げ面102aが長尺に形成されている。
【0017】
この際、跳ね上げ板102を開いて版胴100の外周面101aに巻き付けた不図示の孔版原紙を排版するときに、跳ね上げ板102の跳ね上げ面102aの長手方向の両端を曲げ形成した一対の側面102b,102bが、版胴101の軸方向と直交する一対の側面101b,101b側に取り付けた一対の回動軸103,103を介して回動可能に支持されている。
【0018】
そして、跳ね上げ板102の一対の側面102b,102bに一対の軸部104,104を介して取り付けた一対のカムフォロワー105,105に一対の第2カム106,106で押し下げ力を加えると、一対の第2カム106,106の押し下げ力により跳ね上げ板102の一対の側面102b,102bに版胴101の一対の側面101b,101b側に向かう方向の倒れが発生する。
【0019】
このとき、跳ね上げ板102の跳ね上げ面102aの長手方向の中央部位は強度が低下しているために、跳ね上げ板102の一対の側面102b,102bの倒れにより跳ね上げ板102の跳ね上げ面102aの長手方向の中央部位が版胴101の外周面101aから離間する方向に約2mm程度の撓みが生じる。
【0020】
これにより、跳ね上げ板102の跳ね上げ面102aが不図示の排版ユニット内の部材に衝突するなどの問題が発生し、孔版原紙を排版できなくなる。
【0021】
そこで、例えばA2サイズの用紙と対応して跳ね上げ板の跳ね上げ面を長尺に形成した際、使用済みの孔版原紙を排版するために跳ね上げ板の跳ね上げ面を開いたときに、跳ね上げ板の側面が版胴の側面側に倒れるのを抑制できる孔版印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、外周面が円筒状に形成され、中心軸を中心に回転する版胴と、
前記版胴の外周面の一部に開閉可能に設けられ、製版済みの孔版原紙の先端部をクランプして該孔版原紙を前記版胴の外周面に巻き付けるクランプ板と、
前記版胴の外周面の一部に開閉可能に設けられ、前記クランプ板によるクランプを解除された前記孔版原紙の先端部を跳ね上げるための跳ね上げ面が前記版胴の軸方向に沿って長尺に形成され、且つ、前記跳ね上げ面の両端を曲げ形成した一対の側面にカムフォロワーが取り付けられた跳ね上げ板と、
前記カムフォロワーに接離する跳ね上げ用カムを有するカム体と、を備えた孔版印刷装置において、
前記孔版原紙の排版時に、前記跳ね上げ用カムによって前記カムフォロワーを押圧する動作に伴って前記跳ね上げ板の側面が前記版胴の側面側に倒れるのを抑制する跳ね上げ板倒れ抑制部材を前記版胴の側面上に取り付けたことを特徴とする孔版印刷装置である。
【0023】
また、第2の発明は、上記した第1の発明の孔版印刷装置において、
前記跳ね上げ板倒れ抑制部材は、前記跳ね上げ用カムによって押圧された前記カムフォロワーと当接して回動することにより、前記跳ね上げ板の側面の倒れ方向とは反対方向に該跳ね上げ板の側面を押圧することを特徴とする孔版印刷装置である。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明の孔版印刷装置によると、A3サイズの用紙よりも大型サイズで例えばA2サイズの用紙を印刷可能とする孔版印刷装置を扱うにあたって、回転可能な版胴の外周面の一部に、クランプ板と跳ね上げ板とを開閉可能に取り付けた際、跳ね上げ板はクランプ板によるクランプを解除された孔版原紙の先端部を跳ね上げるための跳ね上げ面が版胴の軸方向に沿って長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面の両端を曲げ形成した一対の側面にカムフォロワーが取り付けられており、孔版原紙Gの排版時に、跳ね上げ用カムによってカムフォロワーを押圧する動作に伴って跳ね上げ板の側面が版胴の側面側に倒れるのを抑制する跳ね上げ板倒れ抑制部材を版胴の側面上に取り付けている。
【0025】
この結果、跳ね上げ板の跳ね上げ面がA2サイズに対応して長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面の長手方向の中央部位の強度が弱くなっていても、排版時に跳ね上げ板倒れ抑制部材によって跳ね上げ板の側面に版胴の側面に向かう方向の倒れが発生しないので、跳ね上げ面の長手方向の中央部位は撓むことがないために、跳ね上げ面は排版ユニット内の部材に衝突することなく、孔版原紙を排版ユニットに向けて確実に排版できる。
【0026】
また、第2の発明の孔版印刷装置によると、跳ね上げ板倒れ抑制部材は、跳ね上げ用カムによって押圧されたカムフォロワーと当接して回動することにより、跳ね上げ板の側面の倒れ方向とは反対方向に跳ね上げ板の側面を押圧している。これにより、上記第1の発明の効果に加え、カムフォロワーを押圧する動作に伴う跳ね上げ板と跳ね上げ板倒れ抑制部材との摩擦による磨耗を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明に係る孔版印刷装置の一実施形態について、
図1〜
図6を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明に係る孔版印刷装置の全体構成を示している。また、
図2は
図1に示したカム体駆動部の構成を示している。
【0030】
まず、
図1(a)に示す如く、本発明に係る孔版印刷装置1は、箱状に形成された筐体2内の略中央部位に印刷ユニット10が設置されている。
【0031】
この印刷ユニット10では、円筒状の版胴11が中心軸12を中心してこの中心軸12に連結されたエンコーダ付き版胴用モータ13によって反時計方向に回転可能に設けられており、且つ、版胴11の外周面11aが後述するインクIKを浸み出せるように多孔性を有して形成されている。尚、版胴11の中心軸12の一端面側には、インクIKを挿入するためのインク挿入口12aが形成されている。
【0032】
また、版胴11の下方で用紙搬送方向の上流側には、例えばA2サイズ(594mm×420mm)の未印刷の用紙Pを給紙するための給紙ユニット3が設置され、一方、版胴11の下方で用紙搬送方向の下流側には印刷ユニット10で印刷された印刷済みの用紙Pを排紙するための排紙ユニット4が設置されている。
【0033】
また、筐体2内で版胴11の上方部位の右方には、孔版原紙Gを製版するための製版ユニット5が設置されており、この製版ユニット5で製版された製版済みの孔版原紙Gの先端部Gaが版胴11の外周面11aの上方部位に向けて搬送されるようになっている。
【0034】
また、筐体2内で版胴11の上方部位の左方には、使用済みの孔版原紙Gを版胴11の外周面11aから取り外して排版するための排版ユニット6が設置されている。
【0035】
また、筐体2内で版胴11の外周面11aの下方中央部位には、プレスローラ7が版胴11側に対して接離可能に設けられており、このプレスローラ7は用紙Pを印刷するときに用紙Pを介して版胴11側に押圧するようになっている。
【0036】
また、筐体2内で版胴11の外周面11aの外側の下方部位には、印刷終了時に用紙Pを版胴11側から分離するための用紙分離爪8が版胴11の外周面11aに接近して設置されている。
【0037】
更に、筐体2内の適宜な場所に孔版印刷装置1を全体的に制御する制御部9が設置されている。
【0038】
上記から本発明に係る孔版印刷装置1では、A3サイズ(420mm×297mm)の用紙よりも大型サイズで給紙ユニット3から搬送される例えばA2サイズ(594mm×420mm)の用紙Pを印刷ユニット10で印刷可能に構成されている。
【0039】
上記に伴って、版胴11の直径φDは、A2サイズの用紙Pの短手方向の長さ420mmと対応してφ180mm程度に設定されている。また、版胴11の軸方向の長さは、A2サイズの用紙Pの長手方向の長さ594mmと対応して630mm程度に長尺に設定されている。
【0040】
また、
図1(b)、及び、後述する
図3(a),
図5(a)に拡大して示す如く、版胴11の外周面11aの一部には、版取付座14がこの版胴11の軸方向に沿って長尺に取り付けられており、且つ、版取付座14上にゴム製の磁石板15が取り付けられている。
【0041】
また、着版時に製版ユニット5で製版した孔版原紙Gをクランプするためのクランプ板16は、平坦なクランプ面16aを版取付座14上の磁石板15と対向させて開閉可能に設けられている。
【0042】
上記したクランプ板16は、磁性を有して厚みが1mmのステンレス材(SUS400番台系)を用いて剛性を低く抑えて形成されている。
【0043】
また、クランプ板16は、孔版原紙Gの先端部Gaをクランプするためのクランプ面16aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成され、且つ、クランプ面16aの長手方向の両端に一対の側面16b,(16b…図示せず)が版胴11の軸方向と直交する一対の側面11b,(11b…図示せず)を跨ぐように曲げ形成されている。
【0044】
また、クランプ板16の一対の側面16b,(16b)は、版胴11の一対の側面11b,(11b)側にこの軸方向と平行に横設した一対の第1回動軸17,(17…図示せず)を中心にして第1引張バネ18により閉じ方向に付勢されて回動可能に設けられている。
【0045】
更に、クランプ板16の一対の側面16b,(16b)には、一対の第1軸19,(19…図示せず)を介して一対の第1カムフォロワー20,(20…図示せず)が版胴11の一対の側面11b,(11b)よりも外側に突出して取り付けられている。
【0046】
一方、排版時にクランプ板16によるクランプを解除された使用済みの孔版原紙Gを版取付座14上から跳ね上げるための跳ね上げ板21は、平坦な跳ね上げ面21aを版取付座14と対向させて開閉可能に設けられている。
【0047】
上記した跳ね上げ板21は、非磁性で厚みが1.2mmのSUS304を用いてクランプ板16よりも厚みを厚くして剛性を高めて形成されている。
【0048】
また、跳ね上げ板21は、孔版原紙Gの先端部Gaを跳ね上げるための跳ね上げ面21aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面21aの長手方向の両端に一対の側面21b,(21b…図示せず)が版胴11の軸方向と直交する一対の側面11b,(11b…図示せず)を跨ぐように曲げ形成されている。
【0049】
また、跳ね上げ板21の一対の側面21b,(21b)は、版胴11の一対の側面11b,(11b)側にこの軸方向と平行に横設した一対の第2回動軸22,(22…図示せず)を中心にして第2引張バネ23により閉じ方向に付勢されて回動可能に設けられている。
【0050】
更に、跳ね上げ板21の一対の側面21b,(21b)には、一対の第2軸24,(24…図示せず)を介して一対の第2カムフォロワー25,(25…図示せず)が版胴11の一対の側面11b,(11b)よりも外側で且つ一対の第1カムフォロワー20,(20)よりも外側に突出して取り付けられている。
【0051】
また、版胴11の一対の側面11b,(11b)上で、跳ね上げ板21の一対の側面21b,(21b)の下端21b1,(21b1)近傍には、第1実施形態又は第2実施形態の跳ね上げ板倒れ抑制部材26又は27が取り付けられており、これらの跳ね上げ板倒れ抑制部材26又は27については第1実施形態又は第2実施形態にて後述する。
【0052】
図1(a)に戻り、版胴11の上方部位には、クランプ板16及び跳ね上げ板21を開閉するためのカム体駆動部30が版胴11の一対の側面11b,(11b)よりも外側にそれぞれ設置されている。
【0053】
上記したカム体駆動部30は、
図2(a),(b)に示す如く、基台となるブラケット31上に、カム体駆動源となるエンコーダ32aを有するエンコーダ付きパルスモータ32と、このエンコーダ付きパルスモータ32の軸に固着されたウォーム歯車33と、このウォーム歯車33に噛み合いながら軸34の下方に軸支されたウォームホイール35と、このウォームホイール35と一体的に形成されて軸34の上方に軸支された小径な第1歯車36と、この第1歯車36と噛み合いながら軸37に軸支された大径な第2歯車38と、この第2歯車38に噛み合いながら軸39に軸支されて扇型カム片40aを一体的に形成した第3歯車40とが設けられている。
【0054】
また、第3歯車40の扇型カム片40aには、回動軸41を中心に回動するカム体42に形成したアーム当接部42aが接離自在になっている。
【0055】
また、カム体42は、アーム当接部42aの下方にクランプ板16(
図1)を開くためにこのクランプ板16の側面16bに取り付けた第1カムフォロワー20に接離するクランプ用カム42bと、跳ね上げ板21(
図1)を開くためにこの跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25に接離する跳ね上げ用カム42cとが版胴11(
図1)側に向かってそれぞれ奥行き高さを違えて形成されている。
【0056】
この際、カム体42は、版胴11(
図1)の軸方向と平行に回動可能に設けた長尺な回動軸41の両端側に一対のカム体42,(42…図示せず)が位相を合わせて固着されているものである。
【0057】
また、カム体42は、ブラケット31とこのカム体42のアーム当接部42aの左端との間に掛け渡した引張バネ43によって上方に向かって付勢されている。
【0058】
そして、
図2(a)に示すように、エンコーダ32aが初期位置(待機位置)に至ってエンコーダ付きパルスモータ32が停止している初期時(待機時)に、回転停止中の第3歯車40の扇型カム片40aがカム体42のアーム当接部42aから離間しているので、カム体42が引張バネ43の付勢力によって回動軸41を中心にして時計方向に回動して、ブラケット31のストッパ部31aで位置規制されている。
【0059】
これにより、カム体42は版胴11から離間するように上昇して停止している。
【0060】
一方、
図2(b)に示すように、エンコーダ32aからのパルス数が予め設定した所定のパルス数になるまでエンコーダ付きパルスモータ32を動作させた時には、第3歯車40の扇型カム片40aが回転してカム体42のアーム当接部42aに当接する。これにより、カム体42は引張バネ43の付勢力に抗して回動軸41を中心にして反時計方向に回動して、版胴11側に向かって下降した後に停止している。
【0061】
そして、下降したカム体42のクランプ用カム42b及び跳ね上げ用カム42cに版胴11と一体に回転するクランプ板16の側面16bに取り付けた第1カムフォロワー20及び跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25が当接することで、クランプ板16及び跳ね上げ板21を上方に向かって開くことができるようになっている。
【0062】
以下、本発明に係る孔版印刷装置1における第1,第2実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図3は本発明に係る孔版印刷装置の第1実施形態を示している。また、
図4は本発明に係る孔版印刷装置の第1実施形態において、跳ね上げ板の動作を示している。
【0063】
図3(a)に示す如く、本発明に係る孔版印刷装置1の第1実施形態では、A2サイズ用としてクランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成されている。
【0064】
そして、印刷ユニット10(
図1)で多数枚の用紙Pに対して印刷が終了した後、使用済みの孔版原紙Gを排版するために跳ね上げ板21を排版時に開いたときに、跳ね上げ面21aの長手方向の両端に曲げ形成した一対の側面21b,(21b…図示せず)が版胴11の一対の側面11b,(11b…図示せず)側に倒れるのを一対の跳ね上げ板倒れ抑制部材26,(26…図示せず)で抑制するように構成されている。
【0065】
この第1実施形態では、一対の跳ね上げ板倒れ抑制部材26,(26)が、跳ね上げ板21の一対の側面21b,(21b)の下端21b1,(21b1)の近傍で、版胴11の軸方向と直交する一対の側面11b,(11b)上に固定して取り付けられている。
【0066】
上記した跳ね上げ板倒れ抑制部材26は、表面26aとこの表面26aよりも少し大径な裏面26bとで台形円板状に形成されており、且つ、表面26aと裏面26bとの間の厚みTが、版胴11の側面11bと、跳ね上げ板21の側面21bのうちで版胴11の側面と対向する裏面との間の間隔よりも僅かに薄い寸法で形成されている。
【0067】
上記から跳ね上げ板倒れ抑制部材26は、版胴11の側面11bと、跳ね上げ板21の側面21bのうちで版胴11の側面11bと対向する裏面との間に設けた板部材であるので、跳ね上げ板倒れ抑制部材26の構造が簡単である。
【0068】
上記の厚みTに形成された跳ね上げ板倒れ抑制部材26は、版胴11の側面11b上で、孔版原紙Gへの排版時に跳ね上げ板21の側面21bの下端の裏面が表面26aに当接できる位置に取り付けられている。
【0069】
そして、
図3(b)及び
図4(a)に示す如く、孔版印刷装置1の初期時(待機時)には、先に
図2(a)を用いて説明したようにカム体42が上昇しているので、クランプ板16の側面16bに第1軸19を介して取り付けた第1カムフォロワー20及び跳ね上げ板21の側面21bに第2軸24を介して取り付けた第2カムフォロワー25はカム体42から離間している。
【0070】
これにより、初期時には、クランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが第1引張バネ18及び第2引張バネ23の各付勢力により閉じていると共に、跳ね上げ板21の側面21bの下端21b1は、版胴11の側面11bに固定して取り付けた跳ね上げ板倒れ抑制部材26から離間している。
【0071】
従って、初期時には、跳ね上げ板21の側面21bにカム体42の跳ね上げ用カム42cからの押し下げ力が加わらないので、跳ね上げ板21の側面21bは版胴11の側面11b側に倒れることはないために、跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位は撓むことがない。
【0072】
一方、
図3(c)及び
図4(b)に示す如く、孔版原紙Gを排版する排版時には、先に
図2(b)を用いて説明したようにカム体42が下降しているので、版胴11と一体に回転するクランプ板16の側面16bに取り付けた第1カムフォロワー20及び跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25がカム体42のクランプ用カム42b及び跳ね上げ用カム42cに当接する。
【0073】
これにより、クランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが、第1回動軸17及び第2回動軸22を中心にして第1引張バネ18及び第2引張バネ23の各付勢力に抗して上方に向かって共に開く。
【0074】
この排版時に、カム体42の跳ね上げ用カム42cによって跳ね上げ板21の側面21bの下端21b1は下方に押し下げられるので、この下端21b1の裏面が版胴11の側面11bに取り付けた跳ね上げ板倒れ抑制部材26の表面26aに当接する。
【0075】
即ち、前記した厚みTに形成された跳ね上げ板倒れ抑制部材26は、版胴11の側面11bと跳ね上げ板21の側面21bの下端21b1の裏面との間に挟まれた状態になっているので、排版時に跳ね上げ板21の側面21bにカム体42の跳ね上げ用カム42cからの押し下げ力が加わっても、この側面21bが版胴11の側面11b側に倒れるのを跳ね上げ板倒れ抑制部材26により規制されるために、跳ね上げ板21の側面21bの倒れが発生しない。
【0076】
これにより、跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aがA2サイズに対応して長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位の強度が弱くなっていても、排版時に跳ね上げ板倒れ抑制部26材によって跳ね上げ板21の側面21bに版胴11の側面11bに向かう方向の倒れが発生しないので、跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位は撓むことがないために、跳ね上げ面21aは排版ユニット6内の部材に衝突することなく、孔版原紙Gを排版ユニット6に向けて確実に排版できる。
[第2実施形態]
図5は本発明に係る孔版印刷装置の第2実施形態を示している。また、
図6は本発明に係る孔版印刷装置の第2実施形態において、跳ね上げ板の動作を示している。
【0077】
図5(a)に示す如く、本発明に係る孔版印刷装置1の第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、A2サイズ用としてクランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが版胴11の軸方向に沿って長尺に形成されている。
【0078】
そして、印刷ユニット10(
図1)で多数枚の用紙Pに対して印刷が終了した後、使用済みの孔版原紙Gを排版するために跳ね上げ板21を排版時に開いたときに、跳ね上げ面21aの長手方向の両端に曲げ形成した一対の側面21b,(21b…図示せず)が版胴11の軸方向と直交する一対の側面11b,(11b…図示せず)側に倒れるのを一対の跳ね上げ板倒れ抑制部材27,(27…図示せず)で抑制するように構成されている。
【0079】
この第2実施形態では、一対の跳ね上げ板倒れ抑制部材27,(27)が、跳ね上げ板21の一対の側面21b,(21b)に一対の第2軸24,(24)を介して取り付けた一対の第2カムフォロワー25,(25)及び一対の側面21b,(21b)の下端21b1,(21b1)の近傍で、版胴11の一対の側面11b,(11b)上に回動可能に取り付けられている。
【0080】
上記した跳ね上げ板倒れ抑制部材27は、版胴11の側面11bに沿って垂下されて跳ね上げ板21の側面21bのうちで版胴11の側面と対向する裏面を接離自在に押圧する押圧片27aと、この押圧片27aの下端に一端を水平に連接して他端を跳ね上げ板21の側面21bに第2軸24を介して取り付けた第2カムフォロワー25に向かって突出させた板状の連結板27bと、この連結板27bの他端から上方に向かい且つ上部が第2カムフォロワー25に接離自在に当接する当接片27cとで上向きコ字状に一体形成されている。
【0081】
また、跳ね上げ板倒れ抑制部材27の押圧片27aと連結板27bとが交差する部位に回動軸28とネジリバネ29とが嵌め込まれており、且つ、回動軸28は版胴11の側面11bに取り付けた一対のブラケットBR,BR間に軸支されている。
【0082】
上記から跳ね上げ板倒れ抑制部材27は、跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25が当接する当接片27cと、跳ね上げ板21の側面21bのうちで版胴11の側面11bと対向する裏面を押圧する押圧片27aとを間隔を隔てて対向させて連結板27bで連結した状態で回動する回動部材であるので、後述するように跳ね上げ板倒れ抑制部材27の押圧片27aにより跳ね上げ板21の側面21bに対して倒れが生じない方向に押圧することができる。
【0083】
そして、
図5(b)及び
図6(a)に示す如く、孔版印刷装置1の初期時(待機時)には、先に説明した第1実施形態と同様に、カム体42{
図2(a)}が上昇しているので、クランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが第1引張バネ18及び第2引張バネ23の各付勢力により共に閉じている。
【0084】
この時、跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25及び跳ね上げ板21の側面21bの下端は、版胴11の側面11bに回動可能に設置した跳ね上げ板倒れ抑制部材27から離間している。
【0085】
また、跳ね上げ板倒れ抑制部材27は、初期時に回動軸28を中心にしてネジリバネ29の付勢力によって押圧片27aが版胴11の側面11bに当接することで回動を規制されていると共に、連結板27bが版胴11の側面11bよりも外側に向かって水平に突出して当接片27cが第2カムフォロワー25の下方で待機している。
【0086】
従って、初期時には、跳ね上げ板21の側面21bにカム体42の跳ね上げ用カム42cからの押し下げ力が加わらないので、跳ね上げ板21の側面21bは版胴11の側面11b側に倒れることはないために、跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位は撓むことがない。
【0087】
一方、
図5(c)及び
図6(b)に示す如く、孔版原紙Gを排版する排版時には、先に説明した第1実施形態と同様に、カム体42{
図2(b)}が下降しているので、クランプ板16のクランプ面16a及び跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aが、第1回動軸17及び第2回動軸22を中心にして第1引張バネ18及び第2引張バネ23の各付勢力に抗して上方に向かって共に開く。
【0088】
この時、下降しているカム体42の跳ね上げ用カム42cで跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25を下方に押し下げるので、第2カムフォロワー25が跳ね上げ板倒れ抑制部材27の当接片27cの上部に当接する。
【0089】
これに伴って、跳ね上げ板倒れ抑制部材27は、回動軸28を中心してネジリバネ29の付勢力に抗して当接片27cが下がる方向に回動するので、この当接片27cと連結板27bを介して対向した押圧片27aが跳ね上げ板21の側面21bの下端の裏面を版胴11の側面11bから離間する方向に押圧する。
【0090】
上記した跳ね上げ板倒れ抑制部材27の動作を言い換えると、跳ね上げ板倒れ抑制部材27は、カム体42の跳ね上げ用カム42cによって押圧された第2カムフォロワー25と当接して回動することにより、跳ね上げ板21の側面21bの倒れ方向とは反対方向に跳ね上げ板21の側面21bを押圧していることになる。
【0091】
これにより、第2カムフォロワー25を押圧する動作に伴う跳ね上げ板21と跳ね上げ板倒れ抑制部材27との摩擦による磨耗を軽減することができる。
【0092】
従って、排版時に跳ね上げ板21の側面21bにカム体42の跳ね上げ用カム42cからの押し下げ力が加わっても、この側面21bが版胴11の側面11b側に倒れるのを跳ね上げ板倒れ抑制部材27の押圧片27aにより規制されるので、跳ね上げ板21の側面21bの倒れが発生しない。
【0093】
これにより、跳ね上げ板21の跳ね上げ面21aがA2サイズに対応して長尺に形成され、且つ、跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位の強度が弱くなっていても、排版時に跳ね上げ板倒れ抑制部材27によって跳ね上げ板21の側面21bに版胴11の側面11bに向かう方向の倒れが発生しないので、跳ね上げ面21aの長手方向の中央部位は撓むことがないために、跳ね上げ面21aは排版ユニット6内の部材に衝突することなく、孔版原紙Gを排版ユニット6に向けて確実に排版できる。
【0094】
更に、
図6(c)に示す如く、孔版原紙Gへの排版が終了したときには、カム体42の跳ね上げ用カム42cが上昇して跳ね上げ板21の側面21bに取り付けた第2カムフォロワー25から離間するので、跳ね上げ板倒れ抑制部材27はネジリバネ29の付勢力で初期状態に戻ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…孔版印刷装置、2…筐体、3…給紙ユニット、4…排紙ユニット、
5…製版ユニット、6…排版ユニット、7…プレスローラ、8…用紙分離爪、
9…制御部、10…印刷ユニット、
11…版胴、11a…外周面、11b…側面、12…中心軸、
13…エンコーダ付き版胴用モータ、14…版取付座、15…磁石板、
16…クランプ板、16a…クランプ面、16b…側面、17…第1回動軸、
18…第1引張バネ、19…第1軸、20…第1カムフォロワー、
21…跳ね上げ板、21a…跳ね上げ面、21b…側面、21b1…側面の下端、
22…第2回動軸、23…第2引張バネ、24…第2軸、25…第2カムフォロワー、
26…第1実施形態における跳ね上げ板倒れ抑制部材、26a…表面、
27…第2実施形態における跳ね上げ板倒れ抑制部材、27a…押圧片、
27b…連結板、27c…当接片、28…回動軸、29…ネジリバネ、
31…ブラケット、32…エンコーダ付きパルスモータ、32a…エンコーダ、
33…ウォーム歯車、35…ウォームホイール、36…第1歯車、38…第2歯車、
40…第3歯車、40a…扇型カム片、41…回動軸、
42…カム体、42a…アーム当接部、42b…クランプ用カム、
42c…跳ね上げ用カム、43…引張バネ、
G…孔版原紙、Ga…先端部、IK…インク、P…用紙。