【解決手段】ライナ付キャップ1は、天面部41とその天面部41の周縁から略垂下されてなる円筒部42とを備えるキャップ本体4と、天面部41の内面に設けられたライナ5とを有し、ライナ5は、天面部41の内面側に配置され、その天面部41と摺動する円盤状の摺動層51と、摺動層51に積層され、その摺動層51よりも軟質でボトル缶2と接触する密封層52とを有し、密封層52は、少なくともボトル缶2の口金部21に当接可能で、かつ摺動層51よりも小径の円環状に形成されており、ライナ5がキャップ本体4に取り付けられた状態において、密封層52とその密封層52より半径方向内方部分又は半径方向外方部分とのL
容器の口金部に装着されて密栓するライナ付キャップであって、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けられたライナとを有し、前記ライナは、前記天面部の内面側に配置され該天面部と摺動する円盤状の摺動層と、前記摺動層に積層され該摺動層よりも軟質で前記容器と接触する密封層とを有し、前記密封層は、少なくとも前記容器の口金部に当接可能で、かつ前記摺動層よりも小径の円環状に形成されており、前記ライナが前記キャップ本体に取り付けられた状態において、前記密封層と該密封層より半径方向内方部分又は半径方向外方部分とのL*a*b*表色系における明度L*の差が10以上であることを特徴とするライナ付キャップ。
前記容器の口金部のカール高さをCとし、前記密封層の、前記口金部のカール頂部と前記密封層との当接位置から半径方向外側の幅をW1、該当接位置から半径方向内側の幅をW2としたときに、前記幅W1が(1/3)C以上C以下とされ、前記幅W2が0.4mm以上2.0mm以下とされることを特徴とする請求項1記載のライナ付キャップ。
【背景技術】
【0002】
スチールやアルミニウム合金等からなる容器に装着されるキャップとして、金属製のキャップ本体と、そのキャップ本体の天面部内面に設けられたライナとを備えたものが知られており、キャップの閉止時に、このライナが容器の口金部の頂部に当接し、容器内部を密封し得るようになされている。
【0003】
このようなライナを備えるキャップ(ライナ付キャップ)としては、例えば特許文献1に記載されるように、キャップ本体の天面部(天板部)近傍の側部(筒状周壁部)に、その内側に突出形成されたフック部(ライナー係止突起)を設けて、シート状に成形したライナをキャップ本体に係止するものが知られている。
この特許文献1に記載のライナは、天面部の内面に接着せずに、フック部と天面部の内面との間に配置させることにより、キャップ本体に取り付けられるようになっている。また、このライナは、摺動層(硬質シート)と密封層(軟質層)とにより構成されており、キャップ本体に摺動層となるポリプロピレン等の硬質シートを挿入した後で、その硬質シート上に密封層としてエラストマー等の樹脂をモールド成形して形成される。このライナの密封層は、摺動層と同心円であるとともに、少なくとも容器の口金部に当接可能に摺動層よりも小径な円環状又は円盤状に形成されている。
【0004】
このようなライナ付キャップは、キャップ付容器を開栓する過程において、開栓始めは、容器の口金部の開口端部にライナの密封層が密接しているが、ライナの摺動層とキャップ本体の天面部の内面とが摺動することにより、キャップ本体が開栓する。したがって、柔軟な密封層によって高いシール性が得られるとともに、硬質で滑性のある摺動層によって開栓時のトルクを飛躍的に下げることが可能となっており、優れた開栓性が得られる。
【0005】
このように、容器閉栓時の高いシール性を実現させるためには、ライナの密封層を容器口金部の開口端部に確実に密接させることが重要である。ところが、密封層は、コスト低減の観点から、できる限り使用材料を少なくすることが望ましい。このため、高いシール性を確保するために、容器の口金部付近のみを厚く形成したシール部を有する密封層が用いられるようになってきている。
しかしその一方で、密封層は、モールド成形により形成されることから、成形時における原料の充填不良等により成形不良を生じた場合は、良好なシール性能を維持することが困難となる。そこで、このような摺動層と密封層からなるライナを有するライナ付キャップにおいては、一般的に、製造時において画像検査機等で成形不良等を検出し、不良品を排斥する方法が取られている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るライナ付キャップの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のライナ付キャップ1は、
図1に示すように、例えば38mm口径のアルミニウム又はアルミニウム合金製のボトル缶2(本発明でいう、容器)の口金部21に装着されて密栓するピルファープルーフキャップ(以下、PPキャップとも称す。)である。
【0016】
ライナ付キャップ1は、アルミニウム又はアルミニウム合金の板材をカップ状に成形したものをボトル缶2に装着しており、装着前のライナ付キャップ1は、
図2に示すように、天面部41と、その天面部41の周縁から略垂下されてなる円筒部42とを備えるキャップ本体4と、そのキャップ本体4の内面に非接着状態に設けられたライナ5とを有する。
ライナ5は、キャップ本体4の天面部41の内面側に配置され、ボトル缶2のライナ付キャップ1による閉止時において口金部21に当接し、ボトル缶2の内部を密封し得るように形成されている。また、ライナ5は、キャップ本体4の天面部41の内面と摺動する摺動層51と、摺動層51よりも軟質でボトル缶2の口金部21と接触してシール機能を有する密封層52とを有する多重構造とされる。
【0017】
キャップ本体4を成形する板材は、内外面を塗装した塗装板を使用している。なお、内外面のトップコートには、必要に応じて各種滑剤添加タイプを使用する。例えば、天面部41の内面には、エポキシフェノール等の樹脂に滑剤が添加された塗料が焼付けられている。
【0018】
また、キャップ本体4の円筒部42は、その下端面に周方向に断続的に形成されたスリット43を介して上下に分割された筒上部44と筒下部45とを有し、隣接するスリット43間に形成される複数のブリッジ43aによって筒上部44と筒下部45とを連結した形状とされている。
【0019】
そして、
図1に示すように、このライナ付キャップ1が装着されるボトル缶2の口金部21には、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部22が形成され、その上方にボトル側ねじ部23、ボトル側ねじ部23の上方に開口端部を丸めてなるカール部24が形成されている。口金部21に被せられたライナ付キャップ1は、膨出部22、ボトル側ねじ部23、カール部24の形状に沿うように、例えば、ネジローラー(図示略)で円筒部42を内方に押圧することにより塑性変形される。これにより、ボトル側ねじ部23に倣うようにキャップ側ねじ部46が形成され、口金部21に装着されたライナ付キャップ1は、円筒部42の下端部が膨出部22の下面に係止され、ライナ5がカール部24に圧接されて、ボトル缶2を密封状態としてキャップ付ボトル缶3とされる。
【0020】
なお、キャップ本体4の円筒部42は、
図2に示すように、筒上部44の天面部41近傍に、周方向に複数並べられたナール凹部11と、開栓時に内圧を開放する開口部12を有するとともにライナ5を係止する複数のフック部13とが形成されている。
ナール凹部11及びフック部13は、円筒部42の外周面において凹形状をなしており、これらが間隔をあけて配置されることにより円筒部42の外周面に凹凸表面が形成され、開栓時にライナ付キャップ1を把持する指との間の摩擦抵抗を増大させることができる。これにより、手を滑らせることなく把持することが可能となり、容易に開栓することができる。
【0021】
また、フック部13は、円筒部42の周方向に沿って形成した切り込みの下方部分を半径方向内方に押し込むことによって形成されており、
図3に示すように、半径方向内方に山形(V字状)に突出形成されている。そして、切り込みが開くことにより、開口部12が形成されている。
また、フック部13の上端面15は、
図2に示すように、少なくともライナ5を構成する摺動層51の厚さ分だけ天面部41の内面から離れた位置に形成されている。そして、各フック部13により構成される内接円I(
図3参照)は、ライナ5の摺動層51の外径より小さく設定されており、この摺動層51がフック部13の上端面15と天面部41の内面との間に配置されることにより、ライナ5がキャップ本体4に取り付けられる。
なお、開口部12は、ライナ付キャップ1がブリッジ43aを破断しつつ回転操作された際、ボトル缶2の内部のガスを外部に放出するためのベントホールとして機能する。
【0022】
また、上述したように、ライナ5は、キャップ本体4の天面部41の内面側に配置される。そして、ライナ5は、キャップ本体4の天面部41の内面と摺動する摺動層51と、摺動層51に直接又はバリア層等の中間層を介して積層され、摺動層51よりも軟質でボトル缶2の口金部21と接触し、シール機能を有する密封層52とから構成される多重構造とされる。
【0023】
摺動層51は、ポリプロピレン等により円盤状に形成され、摺動層51の外径は、キャップ本体4の寸法に応じて決定される。
また、密封層52は、摺動層51よりも軟質のエラストマー樹脂等により形成され、少なくともボトル缶2の口金部21に当接可能なように、摺動層51に対し同軸で、かつ摺動層51より小径の円環状に形成されている。このように、密封層52は円環状に形成されていることから、密封層52の半径方向内方部分においては、摺動層51の表面が露出した状態とされる。
【0024】
なお、本実施形態のライナ付キャップ1のように、密封層を有するライナ付キャップにおいては、ボトル缶の口金部と直接接触して配置される密封層に、開栓時にボトル缶の口金部との離脱性を向上させるための滑剤等が添加される。このため、密封層にボトル缶内部の内容物が接触することで滑剤成分等が内容物に移り、内容物表面に浮くことがある。また、内容物の種類によっては、その内容物のフレーバー成分やクラウディ成分等が密封層52に吸着され、内容物の風味を損なうこともある。そこで、密封層52の容積は、可能な限り最小に抑えるべきである。この観点において、本実施形態のような円環状の密封層52においては、内容物との接触面積を比較的小さくできることから(接触しても小面積であることから)、密封層に含まれる滑剤成分等が内容物に移ることや、内容物のフレーバー成分及びクラウディ成分等が密封層52に吸着されて内容物の風味を損なうことを極力回避することができる。したがって、ライナ5による内容物への影響を飛躍的に軽減することができる。
しかしその一方で、ボトル缶2とのシール性能を確保するために必要な密封層52の大きさは確保しなければならない。
【0025】
これらの観点から、密封層52は、
図4に示すように、ボトル缶2の口金部21のカール高さをCとし、密封層52の、口金部21のカール頂部24tと密封層52との当接位置から半径方向外側の幅(当接位置から外周面52oまでの距離)をW1、その当接位置から半径方向内側の幅(当接位置から内周面52iまでの距離)をW2としたときに、幅W1が(1/3)C以上C以下とされ、幅W2が0.4mm以上2.0mm以下となるように設定されている。
なお、円環状の密封層52においては、密封層を円盤状に形成する場合と比べて軽量化を図ることができる。
【0026】
つまり、密封層52の半径方向外側の幅W1がカール高さCの1/3未満であると、キャッピング後の断面でカール部の外周面と密封層とが密着する長さが短くなり、閉栓時にボトル缶2の密封性を損なうおそれがある。また、幅W1がカール高さCより大きいと、密封層52の容積が大きくなることで、ボトル缶2内部の内容物のフレーバー成分及びクラウディ成分等が密封層52に吸着される量が増加し、内容物の風味を損なうおそれがある。
一方、密封層52の半径方向内側の幅W2については、ライナ付キャップ1をボトル缶2に被着する際に、ライナ付キャップの中心軸と口金部の中心軸とがずれて芯ずれを生じるおそれがあることを考慮し、下限が0.4mmとされる。幅W2が0.4mm未満では、芯ずれが生じた場合に、ボトル缶2の密封性を損なうおそれがある。また、幅W2が2.0mmより大きいと、幅W1の上限と同様に、密封層52の容積が大きくなることにより内容物のフレーバー成分及びクラウディ成分等が密封層52に吸着される量が増加し、内容物の風味を損なうおそれがある。
なお、摺動層51の厚み51t及び密封層52の厚み52tは、キャップ本体4の寸法に応じて決定される。例えば、摺動層51の厚み51tは0.1mm以上1mm以下とされ、密封層52の厚み52tに関しては、さらにライナ5による内容物への影響及びボトル缶2との密封性を考慮して決定され、例えば0.3mm以上1.2mm以下とされる。
【0027】
なお、摺動層51の材料としては、合成樹脂、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PA(ポリアマイド、通称ナイロン)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PVC(ポリ塩化ビニル)等を使用することができる。
また、密封層52の材料としては、TPS(スチレン系エラストマー)、TPO(オレフィン系エラストマー)、TPU(ウレタン系エラストマー)、TPEA(ポリアミド系エラストマー)、TPEE(ポリエステル系エラストマー)、PVC‐TPE(ポリ塩ビエラストマー)等を使用することができる。
【0028】
また、ライナ付キャップ1は、ライナ5がキャップ本体4に取り付けられた状態において、密封層52と、その密封層52より半径方向内方部分又は半径方向外方部分とのL
*a
*b
*表色系における明度L
*の差が10以上とされる。すなわち、密封層52とその円環状の密封層52より半径方向内方部分又は半径方向外方部分に露出する摺動層51との明度L
*の差が10以上とされる。また、摺動層51が透明色や半透明色のポリプロピレン等で形成される場合には、摺動層51の背面に配置されるキャップ本体4の天面部41の内面が摺動層51越しに透けて見えることから、摺動層51の明度L
*は天面部41の内面の状態に影響を受ける。この場合においても、摺動層51は、天面部41の内面と組み合わされた状態で、密封層52との明度L
*の差が10以上とされる。これらの明度L
*の差については、後に詳述する。
【0029】
なお、本実施形態のライナ付キャップ1は、例えば次のようにして製造される。
まず、キャップ本体4を開口端部が上向きとなるように載置した状態で、上方から摺動層51を挿入して、摺動層51を天面部41の内面に接して配置する。この際、摺動層51の端面(外周縁)がフック部13に当接するが、さらに摺動層51を下向きに押し込むことで、摺動層51の端面がフック部13を乗り越えて組み付けられる。
次に、密封層52は、キャップ本体4内に摺動層51が挿入された状態で、モールド成形用の金型をキャップ本体4内に挿入し、摺動層51上にエラストマー樹脂等を樹脂成形することにより密封層52が形成される。また、密封層52の外径は、フック部13の内接円Iよりも小さく形成されているので、開栓時に密封層52がフック部13に引っ掛かることにより開栓トルクが上昇したり、ライナ5がフック部13から外れたりすることを抑制することができる。
【0030】
なお、モールド成形用の金型の外径は、フック部13の内接円I(
図3参照)よりも小さく設定されており、フック部13の先端が、金型を挿入する際のガイドの役割を果たすことにより、金型のセンタリング(位置決め)が行われる。
また、押出機から押し出され溶融したエラストマー等の軟質樹脂の一定量を、キャップ本体4に支持される摺動層51上に円環状に供給(滴下)し、直ちに冷却された金型で押圧する。これにより、密封層52が成形され、摺動層51と密封層52とからなるライナ5が形成され、ライナ5がキャップ本体4内に非接触状態に設けられたライナ付キャップ1が製造される。
【0031】
そして、製造されたライナ付キャップ1について、画像検査機による検査が行われ、成形不良等が生じた不良品が排斥される。
画像検査においては、キャップ本体4の内部を撮影した画像を用いて、密封層52の外形形状を他の部分との対比により検出する。このため、密封層とその他の部分とのコントラストが十分に得られない場合には、ボトル缶2の口金部21のシール性能に重要な役割を担う密封層52の成形不良を確実に検出することが難しくなる。
そこで、本実施形態のライナ付キャップ1においては、密封層52とその他の部分とのL
*a
*b
*表色系における明度L
*の差を10以上とすることで、画像検査におけるコントラストを十分に確保することができるようにしている。
なお、明度L
*は、明るさの度合いを示すものであり、100〜0の値で評価されるものである。そして、明度L
*の値が大きいほど明るいことを表している。したがって、明度L
*の差が大きいほど、コントラストが高い画像となる。
【0032】
また、画像検査に際して、ライナ付キャップ1は、ライナ5の密封層52が、ボトル缶2の口金部21と当接可能な範囲において摺動層51よりも小径の円環状に形成されていることから、密封層52の円環形状の両端部(外周面52o及び内周面52i)が、露出する摺動層51の表面との対比(明度L
*の差)により区別しやすく、画像検査機における検出を良好に行うことができる。
また、摺動層51との対比だけではなく、摺動層51が透明色や半透明色のポリプロピレン等で形成される場合には、その摺動層51の背面に配置されるキャップ本体4の天面部41の内面の状態が透けて見えることから、天面部41の内面と摺動層51とが組み合わされた状態の対比により検出を行うことができる。
このように、画像検査は、ライナ5をキャップ本体4に取り付けた状態において行われることから、円環状の密封層52と、その円環状の密封層52の半径方向内方部分又は半径方向外方部分との明度L
*の差を10以上に確保することにより、画像検査機において密封層52の外形形状をその他の部分との対比により確実に検出することができ、密封層52の成形不良が生じた不良品を確実に排斥することができる。
【0033】
なお、上記画像検査を通過したライナ付キャップ1については、ボトル缶2の口金部21に被せた状態でキャッピング加工を施すことにより、ライナ付キャップ1が口金部21に巻締められた状態で被着され、キャップ付ボトル缶3が形成される。
【0034】
このように構成されたキャップ付ボトル缶3及びライナ付キャップ1においては、開栓前は、ボトル缶2の口金部21とライナ5の密封層52とを確実に密接させて密封状態を良好に維持することができるとともに、開栓時においては、摺動層51がキャップ本体4の天面部41の内面と滑ることにより開栓トルクを比較的低い状態とし優れた開栓性が得られる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の効果を確認するために、複数のライナ付キャップを作製して画像検査を行った。また、本実施形態のライナ付キャップを用いてキャップ付ボトル缶を作製し、ライナによるボトル缶内部の内容物への影響及びライナ付キャップとボトル缶との密封性について評価を行った。
各ボトル缶は、38mm口径の口金部を有するアルミニウム製のボトル缶とされ、口金部のカール高さCが2.0mm、カール頂部が直径32.8mmとされるものを用いた。
【0036】
また、キャップ本体は、アルミニウムの板材をキャップ状に形成したものであり、キャップ本体の天面部内面にエポキシフェノール系塗料が焼き付けられたものを用いた。なお、このエポキシフェノール塗料は、150℃〜210℃の焼付温度で、5分〜20分の焼付時間で焼き付けを行うことにより、焼付後の膜厚が約6μmとなるように形成した。
【0037】
(ライナ付キャップの画像検査)
まず、上記のキャップ本体に摺動層を挿入して、この摺動層上に密封層をモールド成形することにより、ライナ付キャップを複数作製した。
ライナ付キャップのライナを構成する摺動層は、透明色のポリプロピレン(PP)により、厚み0.45mm、直径37.8mmの円盤状に形成し、キャップ本体の内径よりも0.1mm〜0.3mm程度小さい寸法とした。
また、密封層は、白色のスチレン系エラストマー(TPS)により、ボトル缶の口金部に沿って厚み0.75mmの円環状に形成し、その円環形状の幅W1及び幅W2を表1に示すとおり、試料毎に異なる寸法とした。なお、比較例1は、
図5に示すように、密封層53が円盤状とされ、ボトル缶2の口金部21に沿って周縁部の厚みを厚くしたシール部53sを形成したものであり、従来のライナ付キャップと同様の構成のものを用いた。
【0038】
なお、摺動層は、上述したように透明色のポリプロピレン(PP)により形成されており、摺動層の背面に配置されるキャップ本体の天面部内面が摺動層越しに透けて見える状態とされる。また、実施例3と実施例4のライナ付キャップにおいては、天面部内面に印刷を施した場合を想定し、キャップ本体の天面部内面とライナの摺動層との間に色紙を挟んだ構成とし、これらの色紙が摺動層越しに透けて見える状態で画像検査を行った。そして、天面部内面の印刷色による違いを比較するため、実施例3は白色の色紙を用い、実施例4は黒色の色紙を用いてライナ付キャップを作製した。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、各試料の設計寸法に基づいて複数作成したライナ付キャップの中から、
図6(a)に示すように、密封層52の円環形状(シール部)に部分欠損54を生じたライナ付キャップを目視で確認することにより選別し、成形不良を生じたライナ付キャップを50個収集した。なお、各密封層52の部分欠損54の形態は、
図6(b)に示すように、円環形状又はシール部の内周面52iからの欠損幅54wが0.1mm〜0.5mm、円環形状又はシール部の先端面52aからの欠損深さ54hが0.2mm〜0.75mmとされるものであった。
そして、これら成形不良を生じた50個のライナ付キャップについて、20回ずつ画像検査を行い(画像検査数N=1000)、画像検査による排斥率を確認した。排斥率は、(画像検査による不良品検出数)/(画像検査数N)×100(%)の式から算出した。結果を表2に示す。
【0041】
また、各試料のライナ付キャップをモノクロカメラで撮影し、その255階調の画像から、
図3に示す位置a,b,cにおける輝度を確認した。なお、位置bは密封層の円環形状表面、位置aは密封層(シール部)の円環形状より半径方向内方部分の表面、位置cは密封層(シール部)の円環形状より半径方向外方部分の表面を示す。
また、各試料の摺動層表面及び密封層表面のL
*a
*b
*表色系における明度L
*を、MINOLTA製の分光測色計(CM‐503d)により測定した。これらの結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2からわかるように、円環状に形成された密封層を有する実施例1〜7のライナ付キャップにおいては、成形不良を生じたライナ付キャップを100%の排斥率で検出することができた。また、実施例1〜7のライナ付キャップにおいては、密封層(位置b)とその他の部分(位置a,b)との輝度差が全て100諧調以上あった。このことから、画像検査機においては、密封層とその他の部分との輝度差が100諧調以上あれば、ノイズ等の影響を受けることなく密封層の外形形状を確実に検出可能であると考えられる。また、この場合の密封層と、その密封層の円環形状より半径方向内方部分の表面(摺動層の表面)との明度L
*の差は10以上であり、このように明度L
*の差が10以上あれば、密封層の外形形状を確実に検出可能であることがわかった。
なお、密封層が円盤状とされ、ボトル缶の口金部に沿って周縁部の厚みを厚くしたシール部を形成した比較例1については、成形不良を生じたライナ付キャップを全て検出することができなかった。この場合の密封層のシール部(位置b)と、その円環形状より半径方向内方部分の表面(位置a)との輝度差は100階調より小さく、明度L
*の差が10より小さかった。
【0044】
(ボトル缶内部の内容物への影響及びライナ付キャップとボトル缶との密封性)
次に、上記の画像検査に用いたライナ付キャップとは別に、表1に示す各試料の設計寸法通りに作成した各試料のライナ付キャップを用いて、内容物を充填したキャップ付ボトル缶を作製し、ライナの違いによるボトル缶内部の内容物への影響(ライナへの吸着影響及び、滑剤溶出によるフレーバー評価)及びライナ付キャップとボトル缶との密封性について評価した。なお、実施例3と実施例4のライナ付キャップについては、画像検査(輝度及び明度の測定)において天面部内面に印刷を施した場合を想定したものであり、ボトル缶内部の内容物の影響及びボトル缶の密封性の評価を行う際には、キャップ本体の天面部内面とライナの摺動層との間に色紙を挟んでいないライナ付キャップを用いてキャップ付ボトル缶を作製した。これらの結果を表3に示す。
【0045】
ライナへの吸着影響の評価は、内容物としてナトリウム等のミネラル成分や各種ビタミン、香料等を含む乳白色を有するスポーツドリンクを充填したキャップ付ボトル缶を、倒置(キャップを下にした状態)にて常温保管し、20日後の内容物の色の変化を確認することにより行った。内容物の色の変化は、スガ試験機株式会社製の多光源分光測色計(型式MSC‐P)を用いて、透過測定方法によりL値を測定した。
また、透過測定方法では、透明な液体のL値は100であり、L値が小さくなるほど液体が濁っていることを示す。このため、内容物に含まれる乳化分散している濁り成分が密封層に吸収されると内容物の濁りが薄くなり、L値が100に近づく。なお、表3に示す「イニシャル」は充填当初の内容物のL値であり、内容物はイニシャルが80であることから、濁りのある液体であることがわかる。
また、本実施形態においては、イニシャルのL値と20日後のL値との差が5より大きくなった場合を、内容物の風味を損なうものと評価される。
【0046】
また、滑剤溶出によるフレーバー評価は、内容物として純水を充填したキャップ付ボトル缶を、123℃で20分加熱するレトルト処理を施した後、1日放置し、5‐2法(5本の試験紙のうち2本にレトルト処理後の純水を付け、どれが匂うかを判定する手法)にて13人を対象に行った。
13人中4人以上において匂いを識別することが可能であったものについては、滑剤溶出による影響が大きいものとして「×」と評価し、識別が困難であったものを「○」として評価した。なお、「×」の評価をした正解者においては、樹脂臭や油脂臭を識別していた。
【0047】
また、ライナ付キャップとボトル缶との密封性について評価は、落下衝撃性能の評価により行った。落下衝撃性能は、キャッピング、レトルト処理、1日放置した後、キャップ付ボトル缶を30cmと40cmの高さからそれぞれ垂直に10°の角を持った鉄盤上に倒立落下させ、落下前後の内圧の差を調べ、内容物の漏れの発生数を調べた。なお、各試料においては、30cmと40cmの高さからそれぞれ10個ずつ、合計20個について評価を行った。また、表3においては、各試料の試料数10個のうち、内容物の漏れの発生数を記載した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3からわかるように、実施例6と比較例1の試料においては、イニシャルのL値と20日後のL値との差が5より大きくなっており、内容物の風味を変化させる結果となった。この実施例6の試料においては、表1からわかるように、密封層の幅W2の値が他の試料と比べて最も大きく、密封層の容積が他の実施例の試料と比較して大きい。また、比較例1の試料においては、密封層が円盤状とされていることから、実施例6の試料と同様に密封層の容積が他の試料と比較して大きい。このため、フレーバー成分及びクラウディ成分等の吸着量が増加する結果となった。さらに、比較例1の試料においては、樹脂臭や油脂臭が識別される結果となった。
【0050】
また、密封性の評価では、各試料を30cmの高さから落下させた場合は、実施例1〜7及び比較例1の各試料の試験数の全てにおいて内容物の漏れが生じることなく良好なシール性能を有することが確認でき、製品として問題なく使用できる基準であることがわかった。
ところが、各試料を40cmの高さから落下させた過酷試験では、内容物の漏れが生じる試料があった。特に、内容物の漏れが3個以上確認された実施例5及び実施例7の試料においては、従来品である比較例1よりも内容物の漏れが生じるリスクが高い結果となった。これら実施例5及び実施例7の試料においては、表1からわかるように、実施例5の試料は密封層の幅W1の値が他の試料と比べて最も小さく、また実施例7の試料は密封層の幅W2の値が他の試料と比べて最も小さくなっていた。このため、ボトル缶の口金部との密着する部分を十分に確保できなかったことが考えられる。
【0051】
これらの結果から、密封層の半径方向外側の幅W1及び半径方向内側の幅W2については、幅W1を0.7mm以上2.0mm以下、幅W2を0.4mm以上2.0mm以下とすることにより、ボトル缶内部の内容物への影響を軽減することができるとともに、ボトル缶の良好な密封性を確実に確保できることがわかった。
また、幅W1については、カール高さCとの関係では、(1/3)C以上C以下となる範囲であれば、良好と認められるものと考えられる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、キャップ付ボトル缶及びボトル缶に装着されるライナ付キャップについて説明を行ったが、本発明でいうキャップ付容器の容器は、ボトル缶に限定されるものではなく、ボトル缶の他、ガラスビンやPETボトル等の容器も含まれる。