【課題】 本発明の目的は、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)の電解質保持板用途として有用な細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを工業的に有利な方法で提供すること。
【解決手段】水酸化リチウム、アルミニウム源、MOH(式中、MはNa又はKを示す。)で表される水酸化アルカリ及び水溶媒を含み、M/Alのモル比が2以上で、Li/Alのモル比が1.7以上である原料混合液を加温して反応を行う反応工程を有することを特徴とする細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
水酸化リチウム、アルミニウム源、MOH(式中、MはNa又はKを示す。)で表される水酸化アルカリ及び水溶媒を含み、M/Alのモル比が2以上で、Li/Alのモル比が1.7以上である原料混合液を加温して反応を行う反応工程を有することを特徴とする細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
請求項1乃至3の何れか1項に記載の製造方法で得られることを特徴とする長径が3〜100μmで、アスペクト比が2.5〜25の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウム。
水酸化リチウム、アルミニウム源、MOH(式中、MはNa又はKを示す。)で表される水酸化アルカリ及び水溶媒を含み、M/Alのモル比が2以上で、Li/Alのモル比が1.7以上である原料混合液に、アルミン酸リチウム種結晶を添加し、加温下に反応を行う粒成長工程を有することを特徴とする細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
アルミン酸リチウム種結晶が、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムであることを特徴とする請求項5記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
アルミン酸リチウム種結晶が請求項4記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムであることを特徴とする請求項6記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
原料混合液へのアルミン酸リチウム種結晶の添加量がアルミ換算で5〜500質量%であることを特徴とする請求項7記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
粒成長工程により得られた細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムをアルミン酸リチウム種結晶として用いて粒成長工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項6記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
反応工程後又は粒成長工程後に、得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの焼成を行う焼成工程を設けることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
反応工程後又は粒成長工程後に、得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを水溶媒で洗浄し、次いで焼成工程に付すことを特徴とする請求項10記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
生成される細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムがγ―アルミン酸リチウムであることを特徴とする請求項10乃至12の何れか1項に記載の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の第1の発明に係る細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法は、水酸化リチウム、アルミニウム源、MOH(式中、MはNa又はKを示す。)で表される水酸化アルカリ(以下、単に「水酸化アルカリ」ということがある)及び水溶媒を含み、M/Alのモル比が2以上で、Li/Alのモル比が1.7以上である原料混合液を加温して反応を行う反応工程を有することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、この反応工程を行うことにより、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムとして粒子形状が繊維状のアルミン酸リチウム(以下、単に「繊維状のアルミン酸リチウム」ということがある。)を得ることが出来る。
なお、本発明において、繊維状の粒子形状とは、長径が3〜100μmで、アスペクト比(長径/短径の比)が2.5〜25のものを言う。
また、本発明において、アスペクト比は走査型電子顕微鏡写真から無作為に200個の粒子を選出し求めたものである。
【0017】
また、反応工程で得られる繊維状のアルミン酸リチウムは、その存在率が70%以上、好ましくは90%以上であることが好ましい。
繊維状のアルミン酸リチウムの存在率は、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5〜25の繊維状粒子の存在率[(繊維状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を示す。
【0018】
また、反応工程で得られる繊維状のアルミン酸リチウムのその他の諸物性として、平均長径が3〜100μm、好ましくは5〜50μmで、アスペクト比の平均が2.5〜25、好ましくは3〜20であることが好ましい。
【0019】
反応工程に係るアルミニウム源としては、水酸化アルミニウム、アルミナ等を用いることができる。アルミナには、γ 、δ 、θ 、α などの種々の結晶型があるが、本発明では、何れの結晶型のアルミナであってもよい。本製造方法において、アルミニウム源は、水酸化アルミニウムが反応性及び汎用性の観点から好ましく用いられる。
【0020】
反応工程に係る水酸化アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムであり、この中で水酸化ナトリウムが汎用性の観点から好ましい。また、水酸化アルカリは、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用して用いてもよい。
【0021】
反応工程に係る水溶媒は、水だけに限らず、水と親水性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0022】
本発明の反応工程でのアルミニウム源と水酸化アルカリの原料混合液への配合量は、M/Alのモル比が2以上となるよう添加することが必要である。この理由は、アルミニウム源と水酸化アルカリの原料混合液への配合量がM/Alのモル比で2未満では、アスペクト比の低い形状となるからである。なお、M/Liのモル比の上限値は6とすることが経済性な観点から好ましい。本発明では、特にM/Liのモル比は3〜5とすることが経済的にアスペクト比の高い形状のものを得るという観点から好ましい。
【0023】
また、本発明の反応工程での水酸化リチウムとアルミニウム源の原料混合液への配合量は、反応混合液中のLi/Alのモル比が1.7以上となるように添加することが必要である。この理由は、水酸化リチウムとアルミニウム源の原料混合液への配合量がLi/Alのモル比で1.7未満では、アスペクト比が低い形状となるからである。なお、Li/Alのモル比の上限値は3とすることが経済的な観点から好ましい。本発明では、特にLi/Alのモル比は1.7〜2.5とすることが経済的にアスペクト比の高い形状のものを得るという観点から好ましい。
【0024】
原料混合液の水酸化リチウムの濃度はリチウム換算で0.5〜5質量%、好ましくは1〜3質量%とすることが反応性及びスラリーの粘度を適切に保つという観点から好ましい。また、原料混合液のアルミニウム源の濃度はアルミ換算で0.5〜5質量%、好ましくは1〜3質量%とすることが反応性及びスラリーの粘度を適切に保つという観点から好ましい。
【0025】
反応工程に係る反応は、前記原料混合液を加温し反応を行う。本発明の反応工程では100〜150℃でも反応は進行するが、特に本反応は120℃以下でも反応が進行することから、工業的な有利性を考慮して100〜120℃、いっそ好ましくは100〜115℃で反応を行うことが好ましい。
本発明において、オートクレーブ等の耐圧密閉容器を用い、反応系を密閉状態にして反応を行ってもよいが、120℃以下で反応を行う場合は開放状態にして大気圧下で反応を行うことができ、工業的に有利となる利点も有する。
【0026】
反応工程での反応時間は本製造方法において臨界的ではなく、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムが生成するまで十分な時間反応を行う。多くの場合、1時間以上、好ましくは2〜8時間で満足の行く諸物性の繊維状のアルミン酸リチウムを生成させることが出来る。
【0027】
反応工程の反応終了後、反応液から常法により固液分離し、必要により水等で洗浄、乾燥を行い、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムとして粒子形状が繊維状のアルミン酸リチウムを得ることが出来る。
【0028】
本発明の第2の発明に係る細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムの製造方法では、前記反応工程の原料混合液に、アルミン酸リチウム種結晶を添加し、粒成長工程により、アルミン酸リチウム種結晶の粒成長を促進し、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムとして粒子形状が棒状のアルミン酸リチウムを得るものである。
本発明に係る粒成長工程では、例えば、アルミン酸リチウム種結晶として本発明の反応工程で得られる繊維状のアルミン酸リチウムを用いた場合には、1回の反応で、通常、繊維状のアルミン酸リチウム種結晶を長軸方向に、更に3〜15μm粒成長させることが出来る。従って、粒成長工程を繰り返し行うことにより、段階的に粒成長させて所望の長径の大きさの棒状のアルミン酸リチウムを得ることが出来る。
なお、本発明では、粒成長工程を行った細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを便宜上、棒状のアルミン酸リチウムと言う。
【0029】
本発明の粒成長工程に係るアルミン酸リチウム種結晶は、その粒子形状や製造履歴は特に制限されるものではないが、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを用いると効率的に棒状のアルミン酸リチウムを得ることが出来る点で好ましい。
細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムは、本発明の反応工程を経て得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを好ましく用いることが出来る。また、この粒成長工程は、所望の大きさのものが得られるまで、粒成長工程により得られた細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを種結晶として用いて繰り返し行うことが出来る。
また、本発明の反応工程や粒成長工程を経て得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを種結晶として用いることにより、所望の大きさの棒状のアルミン酸リチウムの存在率が高いものが得られる観点からも本発明の反応工程や粒成長工程を経て得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを種結晶として用いることが特に好ましい。
【0030】
粒成長工程を繰り返し行う方法としては、例えば、以下の2つの方法を用いることができる。
(A);第1回目の粒成長工程終了後、得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウム(1)を反応液から一旦回収し、新たに原料混合液を調製し、この原料混合液に、種結晶としてアルミン酸リチウム(1)を添加し粒成長工程を行う方法。更に、繰り返す場合は同様な操作を行えばよい。
(B);第1回目の粒成長工程終了後、得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウム(1)を含む反応スラリーに、水酸化リチウム、アルミニウム源及び必要により水酸化アルカリ及び水溶媒を更に添加して原料混合液を調製し、粒成長工程を行う方法。更に、繰り返す場合は同様な操作を行えばよい。
本発明において、粒成長工程を繰り返して行う場合には、前記(B)の方法が経済的観点から好ましいが、使用する設備等を考慮して適宜有利な方法を選択すればよい。
【0031】
粒成長工程において、アルミン酸リチウム種結晶の原料混合液への添加量は、粒成長工程を繰り返し行う回数や用いるアルミン酸リチウム種結晶の大きさに応じて、適宜好適な範囲の添加量を選択することが好ましい。多くの場合、アルミン酸リチウム種結晶の原料混合液への添加量は、アルミ換算で5〜500質量%の範囲である。具体的には、例えば、本発明の反応工程で得られる繊維状のアルミン酸リチウムを種結晶として用いる場合は、第1回目の反応では、アルミン酸リチウム種結晶の原料混合液への添加量はアルミ換算で、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは7〜20質量%とすることが、棒状のアルミン酸リチウム(1)の存在率が高くなる観点及び経済的観点から好ましい。
また、第2回目の繰り返し反応では、例えば、第1回目の反応により得られる棒状のアルミン酸リチウム(1)を種結晶として用いる場合は、アルミン酸リチウム種結晶の原料混合液への配合量はアルミ換算で、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜50質量%とすることが、棒状のアルミン酸リチウム(2)の存在率が高くなる観点及び経済的観点から好ましい。
また、第3回目の繰り返し反応では、例えば、第2回目の反応により得られる棒状のアルミン酸リチウム(2)を種結晶として用いる場合は、アルミン酸リチウム種結晶の原料混合液への配合量はアルミ換算で、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜90質量%とすることが、棒状のアルミン酸リチウム(3)の存在率が高くなる観点及び経済的観点から好ましい。
【0032】
本発明の粒成長工程に係る他の反応条件は、前述した本発明の反応工程と同様な反応条件で行うことができる。
【0033】
粒成長工程の反応終了後、反応液から常法により固液分離し、必要により水等で洗浄、乾燥を行い、細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムとして棒状のアルミン酸リチウムを得ることが出来る。
【0034】
本発明に係る反応工程及び粒成長工程で得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムは、β−アルミン酸リチウムであるが、該β−アルミン酸リチウムを焼成工程に付すことによりγ―アルミン酸リチウムに転換することが出来る。この焼成工程により得られるγ―アルミン酸リチウムはβ―アルミン酸リチウムに比べて熱安定性及び化学的安定性にも優れているため、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)の電解質保持板用として一層好適に用いることが出来る。
【0035】
なお、本製造方法では、反応工程及び粒成長工程で得られた細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムは、焼成工程に付すに先立って、得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムを水溶媒で洗浄し、過剰のリチウム、ナトリウム、カリウムのアルカリ分を該アルミン酸リチウムから除去しておくことがβ―アルミン酸リチウムから効率的にγ―アルミン酸リチウムへ転換でき、また高純度のアルミン酸リチウムを得る観点から好ましい。洗浄で用いる水溶媒としては、水だけに限らず、水と親水性有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
【0036】
なお、洗浄方法としては、例えばデカンテーシュンを繰り返して洗浄する方法やリパルブ等の方法を適宜用いることが出来るが、アルミン酸リチウムから過剰のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ分を除去できる方法であれば特にこれらの洗浄方法に限定されるものではない。
【0037】
焼成工程において、X線回折的に単相のγ−アルミン酸リチウムを得ることが、熱安定性ならびに化学的安定性の優れたものを得る観点から重要である。焼成工程に係る焼成温度は、700〜900℃、好ましくは750〜850℃である。この理由は、焼成温度が700℃未満ではβ相とγ相の混相となる傾向があり、一方、焼成温度が900℃を超えると粒状に形状が変化する傾向があり好ましくないためである。
【0038】
なお、焼成温度と焼成時間との関係で、焼成時間は適宜決定することが好ましい。高い温度で行うほど短時間でγ型が生成されやすい傾向がある。このため、適宜、X線回折分析を行い単相のγ−アルミン酸リチウムが得られているかどうか確認しながら焼成を行うことが好ましい。通常は、上記した焼成温度で0.5〜40時間焼成を行えば、単相のγ−アルミン酸リチウムを生成させることができる。
【0039】
焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中の何れであってもよい。
【0040】
焼成は所望により何度行ってもよい。また、焼成後、得られる焼成品を必要により粉砕及び/又は解砕を行うことができる。
【0041】
前記焼成工程を得た細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムは、好ましくはβ型からγ型の結晶形に転換させたものであるが、粒子形状は焼成前と焼成後ではほとんど変化はない。
【0042】
本発明の製造方法で得られるアルミン酸リチウムは、繊維状乃至棒状の細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムであり、MCFCの溶融炭酸塩中において、熱安定性ならびに化学的安定性にも優れる。このため本発明の製造方法で得られる細長い粒子形状を有するアルミン酸リチウムは、MCFCの電解質保持板として好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。しかし、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
{実施例1}
(反応工程)
水酸化リチウム1水塩69g、水酸化アルミニウム61.2g、25wt%水酸化ナトリウム600g、イオン交換水100mlをテフロン(登録商標)の容器に仕込み、原料混合液を調製した。次いで攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過し、120℃で乾燥を行って、試料48.0gを得た。
【0044】
{実施例2}
(反応工程)
水酸化リチウム1水塩11.8g、水酸化アルミニウム12.2g、25wt%水酸化ナトリウム120g、イオン交換水20mlをテフロン(登録商標)の容器に仕込み、原料混合液を調製した。次いで攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過し、120℃で乾燥を行って、試料9.6gを得た。
【0045】
{比較例1}
(反応工程)
水酸化リチウム1水塩19.8g、水酸化アルミニウム12.2g、イオン交換水120mlをテフロン(登録商標)の容器に仕込み、原料混合液を調製した。次いで攪拌下に6℃/hの昇温速度で115℃まで昇温し、115℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過して、120℃で乾燥を行って、試料25.1gを得た。
【0046】
{比較例2}
(反応工程)
水酸化リチウム1水塩9.9g、水酸化アルミニウム12.2g、25wt%水酸化ナトリウム120g、イオン交換水20mlをテフロン(登録商標)の容器に仕込み、原料混合液を調製した。次いで攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過して、120℃で乾燥を行って、試料10.3gを得た。
【0047】
【表1】
【0048】
<アルミン酸リチウムの物性評価>
実施例及び比較例で得られたアルミン酸リチウム試料について、BET比表面積、長径の長さ、アスペクト比の平均及び繊維状のアルミン酸リチウムの存在率を測定した。その結果を表2に示した。
また、
図1〜
図4に、実施例1(
図1〜2)、比較例1(
図3)及び比較例2(
図4)で得られたアルミン酸リチウムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
また、実施例及び比較例で得られたアルミン酸リチウムをXRDにより、その結晶系を確認した。実施例1で得られたアルミン酸リチウムのX線回折図を
図5に示した。
なお、アスペクト比の平均は走査型電子顕微鏡写真から無作為に200個の粒子を選出し、それぞれの長径と短径の長さを測定し、この測定した長径(A)と短径(B)の比(A/B)を粒子ごとに求め、その平均値から算出した。また、長径、平均長径も同様に200個の粒子の測定値である。
また、繊維状のアルミン酸リチウムの存在率は、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について長径が3〜100μmでアスペクト比(長径/短径の比)が2.5以上の繊維状粒子の存在率[(繊維状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
{実施例3}
(粒成長工程;1回目)
テフロン(登録商標)の容器に、水酸化リチウム69g、水酸化アルミニウム61.2g、25wt%水酸化ナトリウム600g、イオン交換水100ml及び実施例1で得られた繊維状のアルミン酸リチウムをアルミ換算で原料混合液に対して8質量%になるように仕込んだ。次に、攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過してアルミン酸リチウムを回収し、120℃で乾燥を行って、棒状のアルミン酸リチウム試料51.9gを得た。
実施例1〜2と同様に得られたアルミン酸リチウム試料について、BET比表面積、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について長径の長さ、アスペクト比の平均及び長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。その結果を表3に示した。また、
図6に得られたアルミン酸リチウムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0051】
{実施例4}
(粒成長工程;2回目)
テフロン(登録商標)の容器に、水酸化リチウム69g、水酸化アルミニウム61.2g、25wt%水酸化ナトリウム600g、イオン交換水100ml及び実施例3で得られた棒状のアルミン酸リチウムをアルミ換算で原料混合液に対して50質量%になるように仕込んだ。次に、攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーを一部ろ過してアルミン酸リチウムを回収し、120℃で乾燥を行って、更に粒成長させた棒状のアルミン酸リチウム試料72.6gを得た。
実施例1〜2と同様に得られたアルミン酸リチウム試料について、BET比表面積、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について、長径の長さ、アスペクト比の平均及び長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。その結果を表3に示した。また、
図7に得られたアルミン酸リチウムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0052】
{実施例5}
(粒成長工程;3回目)
テフロン(登録商標)の容器に、水酸化リチウム69g、水酸化アルミニウム61.2g、25wt%水酸化ナトリウム600g、イオン交換水100ml及び実施例4で得られた棒状のアルミン酸リチウムをアルミ換算で原料混合液に対して80質量%になるように仕込んだ。次に、攪拌下に6℃/hの昇温速度で105℃まで昇温し、105℃で大気圧下に8時間反応を行った。
反応終了後、得られたスラリーをろ過してアルミン酸リチウムを回収し、120℃で乾燥を行って、更に粒成長させた棒状のアルミン酸リチウム試料86.8gを得た。
実施例1〜2と同様な手法で得られたアルミン酸リチウム試料について、BET比表面積、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について、長径の長さ、アスペクト比の平均及び長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。その結果を表3に示した。また、
図8に得られたアルミン酸リチウムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0053】
{実施例6}
(洗浄工程)
実施例5で得られた反応終了後のスラリー200gを1時間静置後、テフロン(登録商標)の容器から上澄み液を除去した。次いで、イオン交換水をテフロン(登録商標)の容器に150g添加し、デカンテーションを行い、上澄み液を除去した。この操作をもう2回繰り返した後、ろ過して棒状のアルミン酸リチウムを回収し、120℃で乾燥を行った。
(焼成工程)
前記で得た棒状のアルミン酸リチウムを大気雰囲気で800℃で7時間焼成した。
実施例1〜2と同様に焼成工程後の棒状のアルミン酸リチウム試料について、BET比表面積、倍率1500倍で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した200個について、長径の長さ、アスペクト比の平均及び長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。その結果を表3に示した。また、
図9に得られたアルミン酸リチウムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。また、XRD分析の結果、γ型の単相のものが得られていることが確認できた。
図10に得られた棒状のアルミン酸リチウムのX線回折図を示す。
【0054】
【表3】
【0055】
<安定性の評価>
実施例6で得られたγ−アルミン酸リチウム試料について、熱安定性及び化学的安定性を評価した。
【0056】
<熱安定性試験>
実施例6で得られたγ−アルミン酸リチウム試料10gを大気雰囲気にて電気炉に入れ、750℃で200時間加熱し、加熱処理後のアルミン酸リチウム試料について、長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。また、加熱処理後のγ−アルミン酸リチウムについて、X線回折分析を行って異相の存在の有無を確認した。
【0057】
<化学的安定性試験>
実施例6で得られたγ−アルミン酸リチウム試料と電解質(成分組成Li
2CO
3:K
2CO
3=53:47mol%) を重量比1:2で混合し、体積比で空気/窒素/CO
2=50/40/10に混合された雰囲気に保持された電気炉中で670℃の温度に20時間加熱した試料を酢酸と無水酢酸を等量混合した溶液で洗浄し、炭酸塩を除去し、ろ過後エタノールで洗浄し、乾燥し、得られた棒状のアルミン酸リチウムについて、長径が3〜100μmでアスペクト比が2.5以上の棒状粒子の存在率[(棒状粒子の個数/測定粒子の総数)×100]を求めた。また、加熱処理後のγ−アルミン酸リチウムについて、X線回折分析を行って異相の存在の有無を確認した。
【0058】
【表4】