特開2015-143263(P2015-143263A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-143263製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用、L−リボザイムを含む製薬組成物およびL−リボザイムを含む製薬組成物を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-143263(P2015-143263A)
(43)【公開日】2015年8月6日
(54)【発明の名称】製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用、L−リボザイムを含む製薬組成物およびL−リボザイムを含む製薬組成物を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20150710BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20150710BHJP
【FI】
   A61K31/7105
   A61P39/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-84570(P2015-84570)
(22)【出願日】2015年4月16日
(62)【分割の表示】特願2011-548529(P2011-548529)の分割
【原出願日】2010年2月8日
(31)【優先権主張番号】102009007929.7
(32)【優先日】2009年2月6日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102009036965.1
(32)【優先日】2009年8月12日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】511188691
【氏名又は名称】フライエ ウニヴェルシテット ベルリン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】エルドマン,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ウィシュコ,エリザ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZC37
(57)【要約】
【課題】L−RNAを含む治療分子の投与に基づく望ましくない生理学的副反応に対処するための、製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用、L−リボザイムを含む製薬組成物、およびそのような製薬組成物を製造するための方法を提供する。
【解決手段】L−RNAの標的配列の範囲内でL−RNAを切断することができるL−リボザイムの使用に関する。あるいはまた、L−リボザイムによって内在性標的RNAを切断することもできる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用。
【請求項2】
前記L−リボザイムが、L−RNAの標的配列の範囲内でL−RNAを切断することができる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
遺伝子をコード化する内在性標的D−RNAの標的配列をL−リボザイムが切断することができる、少なくとも1つの内在性遺伝子の過剰発現を伴う疾患の治療または予防のための製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用。
【請求項4】
前記L−リボザイムが、ハンマーヘッド型リボザイムである請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記製薬組成物が、さらに、標的配列の範囲内で二本鎖D−RNAまたはL−RNAを溶解することができる核酸を含有する請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記核酸が、5〜20merである請求項5に記載の使用。
【請求項7】
遺伝子をコード化する内在性標的D−RNAの標的配列をL−リボザイムが切断することができる、少なくとも1つの内在性遺伝子の過剰発現を伴う疾患を治療または予防するためのL−リボザイムを含む製薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の製薬組成物を製造するための方法であって、L−ヌクレオチドからなる配列が生成されて合成され、前記配列が、L−リボヌクレオチドからなる所定の配列またはD−リボヌクレオチドからなる所定の配列を切断することができ、前記L−リボザイムが、薬理学的に有効な量で、投与のために準備されている方法。
【請求項9】
前記L−リボザイムが、生薬補助剤および/または担持剤と混合される請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用、そのようなL−リボザイムを含む製薬組成物、およびそのような製薬組成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アプタマーは、抗体/抗原反応と同様に任意の1つの標的分子に特異的に結合する、大抵は二本鎖のD−核酸である(Ellington,A.D.他、Nature 345:818−822(1990)(非特許文献1))。所与の標的分子に対して特異的なアプタマーは、例えば、SELEX法によって核酸ライブラリから単離される(Tuerk,C.他、Science 249:505−510(1990)(非特許文献2))。
【0003】
治療の分野において、アプタマーは、とりわけ望ましくない代謝産物に結合し、それによりその代謝産物を抑制するという目的を有する。一例にすぎないが、そのような代謝産物として腫瘍遺伝子産物が挙げられる。治療分野でのアプタマーの使用における欠点は、アプタマーが、不利な薬物動態を有すること、すなわち例えば内在性ヌクレアーゼによって非常に速く分解されることである。これとは無関係に、アプタマーは、いずれにせよ比較的小さい分子であり、したがって腎臓を通って比較的すぐに排泄される。
【0004】
シュピーゲルマー(Spiegelmer)は、本質的にはアプタマーであり、しかしL−ヌクレオチドから形成されている点が異なる。シュピーゲルマーは、一本鎖または二本鎖であることがある。L−ヌクレオチドの使用により、内在性ヌクレアーゼによる分解が妨げられ、したがって薬物動態がかなり改良され、すなわち血清中での滞留時間が長くなる。したがって、非機能的なシュピーゲルマーが代謝性であり、また2時間にわたって完全に安定であることが、Boisgard,R他、Eur Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging 32:470−477(2005)(非特許文献3)に記載されている。この文献には、診断分野でのシュピーゲルマーの使用も記載されており、その場合、シュピーゲルマーが例えば放射能レポータ物質と結合される。
【0005】
所与の標的分子に対する特異的なシュピーゲルマーの同定は、例えば、Klussmann,S.他、Nat Biotechnol 14:1112−1115(1996)(非特許文献4)に記載されているように行うことができる。シュピーゲルマーおよび治療分野でのその使用可能性に関して、Vater,A.他、Curr Opin Drug Discov Devel 6:253−261(2003)(非特許文献5)も参照されたい。
【0006】
治療分野でのシュピーゲルマーの使用においては、従来、シュピーゲルマーが免疫原性でないことを前提にしている(Wlotzka他、Proc Natl Acad Sci USA 99:8898−8902(2002)(非特許文献6))。しかしながら、本明細書に挙げる研究は、有機体中のL−核酸が絶対に副作用を受けないとは必ずしも言えないことを示している。したがって、シュピーゲルマーを使用するとき、患者への投与の際に、望ましくない生理学的副反応、例えば内在性RNA(調節RNAを含む)との免疫反応および/または望ましくない酵素反応の危険は決して無視できないものである。特に、第1相試験で起きたモノクローナル抗体TGN1412の治験事故に鑑みて、かつ上述した関係に基づいてシュピーゲルマーの滞留時間が比較的非常に長いという背景の下で、シュピーゲルマーの投与時に、望ましくない生理学的副反応が発生したときにすぐに解毒剤を投与し、それにより血清中のシュピーゲルマーレベルを短時間で下げることができるように、使用するシュピーゲルマーに対する解毒剤を用意しておくことが望ましい。
【0007】
他の関係、すなわちリボザイム−触媒立体選択的ディールス・アルダー反応から、L−リボザイムが知られており、これに関しては、Seelig,B.他、Angew.Chem.Int.,39:4576−4579(2000)(非特許文献7)およびSeelig,B.他、Angew.Chem.112:4764−4768(2000)(非特許文献8)を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ellington,A.D.他、Nature 345:818 −822(1990)
【非特許文献2】Tuerk,C.他、Science 249:505−510( 1990)
【非特許文献3】Boisgard,R他、Eur Journal of Nuc lear Medicine and Molecular Imaging 32 :470−477(2005)
【非特許文献4】Klussmann,S.他、Nat Biotechnol 1 4:1112−1115(1996)
【非特許文献5】Vater,A.他、Curr Opin Drug Disco v Devel 6:253−261(2003)
【非特許文献6】Wlotzka他、Proc Natl Acad Sci US A 99:8898−8902(2002)
【非特許文献7】Seelig,B.他、Angew.Chem.Int.,39: 4576−4579(2000)
【非特許文献8】Seelig,B.他、Angew.Chem.112:4764 −4768(2000)
【非特許文献9】Usman,N.他、The Journal of Clini cal Investigation,106(10):1197−1201(20 00)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の技術的な課題は、治療分野で使用されるシュピーゲルマーに対する解毒剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術的課題を解決するために、本発明は、L−リボザイムがL−RNAの標的配列の範囲内でL−RNAを切断することができる、製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用を教示し、特に、L−RNAを含む治療分子の投与に基づく望ましくない生理学的副反応、特に内在性RNA(調節RNAを含む)との免疫反応および/または望ましくない酵素反応に対処するための製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用を教示する。
【0011】
始めに、本発明は、従来の推測とは異なり、シュピーゲルマーが副作用のないものとは必ずしも限らず、有機体中で自然に生じる核酸を切断し、したがって予想不能な副作用を生み出す可能性があるという意外な認識に基づく。本発明は、この認識に基づき、投与されるシュピーゲルマーを特異的に切断し、それにより特に望ましくない副反応に関わるシュピーゲルマーの生理学的効力をなくすL−リボザイムを利用可能にするという技術的な教示を基礎とする。シュピーゲルマーの例としては以下のものがある。シュピーゲルマーNOXC89、NOXA42、NOXA50、NOXB11、N0XA12、NOXE36、NOXF37(すべてNOXXON AG)、Eli Lilly & Co.のシュピーゲルマー、NU172(ARCA biopharma Inc.)、ARCHEMIX、ARC1905、ARC1779、ARC183、ARC184、E10030、NU172、REG2、REGl(すべてArchemix Corp.)、AS1411、AS1405(どちらもAntisoma Research Ltd.)、DsiRNA(Dicerna Pharmaceuticals Inc.)、RNAアプタマーBEXCORE(BexCore Inc.)、ELAN(Elan Corp Plc.)、またはMacugen。したがって、シュピーゲルマーを投与したときに、望ましくない副反応の観察の過程でそのようなリボザイムを投与するにより、望ましくない副作用の原因を代謝から迅速に、効果的に、高い選択性で取り除くことができ、他方でまたL−リボザイムの投与の副作用の危険は非常に低い。これは、L−ヌクレオチドからL−リボザイムが構成されていることに基づくだけでなく、さらに、L−リボザイムの高い選択性、すなわちシュピーゲルマーの標的配列に向けられる高い選択性にも基づく。その結果、治療分野で使用されるシュピーゲルマーに対する高い有効性および高い選択性をもつ解毒剤が得られ、シュピーゲルマーの望ましくない副反応を効果的に、迅速に、副作用なしで防ぐことができる。
【0012】
基本的には、D−ヌクレオチドから構成されたものであれL−ヌクレオチドから構成されたものであれ各RNA分子に対して、特異的なリボザイムを形成することができ、このリボザイムは、RNA分子の標的配列を切断し、したがってそれを切断する。すなわち、リボザイムの重要な特性は、標的配列へのリボザイムの配列特異的結合である。しかし、これはまた、各任意の標的配列に関してリボザイムの部分配列を生成することができることを意味する。これは、切断箇所を含むリボザイムの部分配列が標的配列とハイブリダイゼーションすることによって行われる。したがって、本発明の範囲内では、特定のリボザイム部分配列のみを特定の標的配列に関して構造的に提供することは妥当でない。したがって、実施例で提示する標的配列およびリボザイム部分配列は例にすぎず、当業者は、シュピーゲルマーの各所与の標的配列に関して適切なリボザイム部分配列、すなわちハイブリダイゼーションするリボザイム部分配列を容易に特定し、リボザイム部分配列に関する情報に基づいて、当技術分野で一般的な手段を用いてリボザイムを合成することができる。
【0013】
基本的には、治療分子がシュピーゲルマーでよく、またはL−RNAがアプタマーと共有結合することができる。後者は、例えばヌクレアーゼに対して安定なアプタマーの場合に行うことができる。ここで、治療分野での本発明の利点は、L−RNAを切断することによってヌクレアーゼに対するアプタマーを得ることができることにあり、このとき、最終的には、やはり副作用を引き起こす可能性があるアプタマーも血清から比較的短時間で排除することができる。
【0014】
しかしまた、L−リボザイムをアプタマーまたは抗体と共有結合させることもできる。この場合、例えば、細胞表面とのアプタマーまたは抗体の相互作用によりL−リボザイムとアプタマーまたは抗体からなる全体構造が細胞内に導入されるようにアプタマーまたは抗体が選択される。
【0015】
好ましくは、L−リボザイムはハンマーヘッド型リボザイムである。ハンマーヘッド型リボザイムは、とりわけトリプレットGUH(Hはグアニンでなく、好ましくはCである)またはデュプレットUH(Hは同上)を有する保存領域を有する。前者については図1を参照されたい。後者については、Usman,N.他、The Journal of Clinical Investigation,106(10):1197−1201(2000)(非特許文献9)を参照されたい。ここで、ヌクレオチドN’およびNは、標的配列の条件に従ってStem I〜IIIの範囲内で選択される任意の塩基である。本質的には、ある標的配列に対してL−リボザイムを構成するとき、まず、例えばシュピーゲルマーの標的配列を規定する。この標的配列は、トリプレットGUHまたはデュプレットUHを含まなければならない。次いで、トリプレットGUHまたはデュプレットUHの両端に、典型的にはそれぞれ4〜10個または4〜11個、特に6〜8個または6〜9個のヌクレオチドが付加され、その配列は標的配列の配列に相当する。すなわち、11〜23個のヌクレオチドを含有する、トリプレットGUHまたはデュプレットUHを含む標的配列のコピーを得る。次いで、図1で見られるように、コピーの両端の間に触媒ハンマーヘッド配列が追加される。適切な触媒ハンマーヘッド配列の例は以下のものである。
5’−CUGANGAGN’CN’NNNNNGNCGAAAC−3’、または
5’−CUGANGAGN’CN’NNNNNGNCGAAAN−3’
(N=任意の塩基。図1において、対置するNとN’は、強制的に同じ塩基対から形成されるか、または異なる塩基対から形成される)。
【0016】
これに続いて、3’末端では、トリプレットGUHまたはデュプレットUHの5’側での標的配列を補完して配列中にヌクレオチドが位置し、5’末端では、トリプレットGUHまたはデュプレットUHの3’側での標的配列に対応して配列中にヌクレオチドが位置する。
【0017】
好ましい実施形態では、触媒ハンマーヘッドは、配列
5’−CUGANGAGNUCGGAAACGACGAAAC−3’、または
5’−CUGANGAGNUCGGAAACGACGAAAN−3’
(N=任意の塩基。ここで、図1において、対置するNとN’は、強制的に同じ塩基対から形成されるか、または異なる塩基対から形成される)である。さらに、触媒ハンマーヘッド配列の5’末端に、配列
3’−(N)4〜6GGUAUAGAGUGCUGAAUCC−5’
を設けることができ、それにより比較的低いMgイオン濃度しか必要としないハンマーヘッド型リボザイムが得られる。
【0018】
この製薬組成物は、少なくともL−RNAの投与量に相当する投与量、好ましくは分子数またはモルに関してL−RNAの投与量の2〜10倍に相当する投与量でL−リボザイムを含有する。L−RNAの投与量に比べた過剰投与が、すべての排除すべきL−RNAを確実に反応させて除去するために推奨される。ここで、本発明に従って提供される絶対投与量は、提示される相対量比で、厳密に所与のL−RNA投与量に適合され、したがってL−RNAに関する所与の投与量を知っていれば当業者が容易に決定して用意することができるものである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、製薬組成物が、さらに、標的配列の範囲内で二本鎖L−RNAを溶解することができる核酸、特に5〜20merを含有する。これは、標的配列に隣接する部分配列とハイブリダイゼーションする配列である。それにより、L−RNAの立体構造に基づき、通常は空間配置上の理由から到達することができないL−RNAのGUC領域にL−リボザイムが到達することができるようになる。
【0020】
さらに、本発明は、L−RNAを含む治療分子の投与に基づく望ましくない生理学的副反応、特に免疫反応に対処するための、L−リボザイムを含む製薬組成物に関する。
【0021】
この製薬組成物に関して、すべての前述および後述の実施形態が同様に当てはまる。
【0022】
最後に、本発明は、そのような製薬組成物を製造するための方法であって、L−ヌクレオチドからなる配列が生成されて合成され、その配列が、L−リボヌクレオチドからなる所定の配列を切断することができ、特にトリプレットGUCと、トリプレットの5’側および3’側に付加されたその他の点では任意の配列とを含む配列を切断することができ、L−リボザイムが、薬理学的に有効な量で、投与のために準備されている方法に関する。ここで、L−リボザイムは、典型的には生薬補助剤および/または担持剤と混合される。
【0023】
基本的には、1つまたは複数の生理学的に許容できる補助剤および/または担持剤をL−リボザイムと混合することができ、混合物は、生薬的に、局所または全身投与、特に経口投与、非経口投与用、または目標臓器への点滴もしくは注入用、注射用(例えば、経静脈投与(i.v.)、筋肉内投与(i.m.)、嚢内、または腰椎内)、歯周ポケット(歯根と歯肉の間の空間)への投与用、および/または吸入用に準備される。添加剤および/または補助剤の選択は、選択される投与形態に応じてなされる。ここで、本発明による製薬組成物の生薬投与は、当技術分野で一般的な方法で行うことができる。イオン結合のための対イオンとしては、例えばMg++、Mn++、Ca++、CaCl、Na、K、Li、またはシクロヘキシルアンモニウム、またはCl、Br、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミンなどがある。適切な固体状または液体状の生薬調剤形態としては、例えば、顆粒、粉末、糖衣錠、錠剤、(マイクロ)カプセル、座薬、シロップ、ジュース、懸濁液、エマルジョン、滴剤、または注射溶液(経静脈投与(i.v.)、腹腔内投与(i.p.)、筋肉内投与(i.m.)、皮下投与(s.c.))、または霧化(エーロゾル)、乾燥粉末吸入用の調剤形態、経皮システム、および作用剤の遅延解放を伴う薬剤があり、その製造においては、一般的な補助剤、例えば担持剤、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、潤滑剤、調味料、甘味料、溶解補助剤が使用される。また、例えば吸入用の調剤を製造するために、作用剤を、好ましくは生分解性ナノカプセルとしてカプセル化することもできる。補助剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、および他の糖、滑石粉、乳タンパク質、ゼラチン、澱粉、セルロース、およびその誘導体、動物油および植物油、例えば肝油、ヒマワリ油、落花生油、またはゴマ油、ポリエチレングリコールおよび溶剤、例えば滅菌水、および1価または2価アルコール、例えばグリセリンが挙げられる。本発明による製薬組成物は、少なくとも1つの本発明に従って使用される物質の組合せを、既定の投与量で、製薬的に適切であり生理学的に許容できる担体、および場合によっては既定の投与量でのさらなる適切な作用剤、添加剤、または補助剤と混合し、望ましい投与形態にすることによって製造可能である。希釈剤としては、ポリグリコール、水、および緩衝溶液がある。適切な緩衝物質は、例えばN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、N−ベンジルフェンエチルアミン、ジエチルアミン、リン酸塩、炭酸水素ナトリウム、または炭酸ナトリウムである。しかしまた、希釈剤なしで用いることもできる。生理学的に許容できる塩は、無機酸または有機酸、例えば乳酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、p−トルオールスルホン酸との塩、または無機もしくは有機塩基、例えばNaOH、KOH、Mg(OH)/ジエタノールアミン、エチレンジアミンとの塩、またはアミノ酸、例えばアルギニン、リジン、グルタミン酸などとの塩、または無機塩、例えばCaCl、NaCl、またはその遊離イオン、例えばCa2+、Na、Cl、SO2−、もしくはそれらに対応する塩、およびMg++またはMn++の遊離イオンとの塩、またはそれらの組合せである。これらは標準的な方法に従って製造される。好ましくは、5〜9の範囲、特に6〜8の範囲のpH値に調整される。
【0024】
遺伝子をコード化する内在性標的D−RNAの標的配列をL−リボザイムが切断することができる、少なくとも1つの内在性遺伝子の過剰発現を伴う疾患の治療または予防のための製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用を含む本発明の変形形態が、独自の意義をもつ。それ以外は、上記の実施形態が同様に当てはまる。これに関係して、微生物の遺伝子をコード化する標的D−RNAの標的配列をL−リボザイムが切断することができる、哺乳類の微生物感染に関わる疾患の治療または予防のための製薬組成物を製造するためのL−リボザイムの使用を含む本発明の上述の態様のさらなる変形形態が重要である。対象となる微生物としては、とりわけウィルス、バクテリア、および菌類を挙げることができる。基本的には、少なくとも一部は分かっている遺伝子配列を有する任意の微生物を切断するためにリボザイムを使用することができ、ここで切断のための遺伝子配列の領域が選択され、これは例えば、微生物の活動および/またはその複製能力を弱化または抑制し、かつ/または細胞表面への結合を弱化または抑制する。
【0025】
この変形形態では、例えばD−RNA、特にmRNAまたは調節RNA、さらにはsiRNA、microRNA、shRNA、ncRNA、tRNA、rRNAなどの切断にもL−リボザイムを使用することができることが活用される。それにより、遺伝子またはそれによってコード化されたタンパク質を抑制することができる。これは、罹患していない有機体の発現に比べて特定の遺伝子の過剰発現を伴うすべての疾患に関して治療上有用である。
【0026】
この変形形態は、一方では、標的配列の切断が非常に高い特異性で行われ、したがってまた調節系とのその他の干渉が生じないという利点を有する。さらに、例えばsiRNAなど阻害D−核酸の使用に関わる副作用が確実に回避される。
【0027】
以下、図面および実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1a】標的配列への結合前(a)の最小ハンマーヘッド型リボザイムを示す図で ある。
図1b】標的配列への結合後(b)の最小ハンマーヘッド型リボザイムを示す図で ある。
図2】一方としてL−標的とD−リボザイムの反応、他方としてD−標的とL−リ ボザイムの反応のMgCl濃度依存の比較分析図である。
図3】一方としてL−標的とD−リボザイムの反応、他方としてD−標的とL−リ ボザイムの反応の、10mM MgClでの時間依存比較分析図である。
図4】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、10倍のL−リボザイム過剰状態でのMgCl濃度依存(1〜 25mM)の比較分析図である。
図5】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、10倍のL−リボザイム過剰状態でのMgCl濃度依存(0. 1〜1mM)の比較分析図である。
図6】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、10mM MgClで、10倍のL−リボザイム過剰状態での 時間依存比較分析図である。
図7】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、0.1mM MgClで、10倍のL−リボザイム過剰状態で の時間依存比較分析図である。
図8】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、1mM MgClで、1倍のL−リボザイム過剰状態での時間 依存比較分析図である。
図9】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD−リ ボザイムの反応の、0.1mM MgClで、10分の1のL−リボザイム過少状 態での時間依存比較分析図である。
図10】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD− リボザイムの反応の、1mM MgClで、10分の1のL−リボザイム過少状態 での時間依存比較分析図である。
図11】一方としてL−標的とL−リボザイムの反応、他方としてD−標的とD− リボザイムの反応の、5mM MgClで、10分の1のL−リボザイム過少状態 での時間依存比較分析図である。
図12】ヒト血清中のL−リボザイムによるL−標的の切断の試行を示す図である 。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施例1:劈開分析
L−リボザイムとD−リボザイムの活性を様々な条件下で測定した。基本条件は以下のようにした。0.02μMの標的RNAを、10μlの反応混合物と共に、50mMのTris−HCL緩衝液(pH7.5)中で0.002μM、0.02μM、および2μMのリボザイムの存在下で、20℃で2時間培養した(したがってリボザイム/標的の比率は、10:1、1:1、および1:10)。反応前に、標的RNAとリボザイムを2分間70℃で変性させて、加熱ブロック内でゆっくりと(1℃/分)冷却した。0.1〜25mMの濃度でMg2+イオンの影響を調べた。切断生成物を、0.09MのTris−ホウ酸緩衝液(pH8.3)中で8Mの尿素の存在下で、20%のポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した。蛍光の分析を、ホスホイメージャFuji Film FLA 5100で行った。プログラムFuji Analysis Programを用いてデータを取得した。Excelでグラフを作成した。
【0030】
実施例2:標的配列およびリボザイムの生成
標的配列として、カスタム合成の過程で、ChemGenes Corporation(米国Wilmington)によって以下のものが生成された。
配列ID1:5’−FAM−ACAGUCGGUCGCC−3’
(RNA、D−ヌクレオチドもL−ヌクレオチドも含む)、および
配列ID2:5’−FAM−ACAGTCGGTCGCC−3’
(RNA、D−ヌクレオチドもL−ヌクレオチドも含む)
【0031】
合成生成物は90%超の純度を有していた。
【0032】
リボザイム配列として、標的配列の条件に従って、トリプレットGUCの周りのハンマーヘッド型リボザイムの変更可能な範囲を選択し、GhemGenes Corporation(米国Wilmington)によって以下のリボザイム配列を生成された。
配列ID3:5’−FAM−GGCGACCCUGAUGAGGCCGAAAGGCCGAAACUGU−3’
(RNA、D−ヌクレオチドもL−ヌクレオチドも含む)
【0033】
合成生成物は85%超の純度を有していた。
【0034】
すべての合成生成物に、5’末端でフルオレセインで標識した。
【0035】
実施例3:L−核酸とD−核酸の相互作用
図2に、L−リボザイムによるD−標的の切断、およびその逆の切断の濃度依存を示す。Cは対照標準(L−標的+L−リボザイム)であり、痕跡1〜5は、リボザイムなしでの標的に関する、グラフに示される様々なMgCl濃度(0〜25mM)を表し、痕跡6〜9は、0.2μMの標的と2μMのリボザイムに関するものである。
【0036】
D−リボザイムはL−標的を切断しないが、その逆ではかなりの代謝が行われることが分かる。これは、例えばL−ヌクレオチドからなるシュピーゲルマーが、特定の3次元構造に対して特異的なアプタマーとしてのその作用の他に、従来の見解に反して、例えばリボザイムとしてのさらなる生理学的相互作用を及ぼす可能性がありえることを示唆する。
【0037】
上記のことから、シュピーゲルマーは、有機体への投与の際に望ましくない副作用の危険がある。
【0038】
しかしまた、上記のことから、L−リボザイムを内在性D−RNAの切断に使用することができ、それにより、D−RNA、例えばmRNAによってコード化された遺伝子またはタンパク質の治療的抑制が行われる。
【0039】
図3は、L−リボザイムによるD−標的の切断生成物の割合が時間と共に増加し、L−標的の切断生成物の割合よりも常にかなり大きいことを示す(痕跡C:上記と同様に対照標準。痕跡1〜10は、グラフの時間0〜256分)。
【0040】
実施例4:L−リボザイムによるL−標的の切断
図4図11のグラフから、L−リボザイムが、すべての一般的な条件下で、対応する標的配列を有するL−標的を効果的に切断することが見て取れ、すなわち代謝率は、D−リボザイムとD−標的での代謝率に少なくとも相当する。
【0041】
図12は、L−リボザイムによるL−標的の切断が、ヒト血清の条件下でも効果的に機能することを裏付ける。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12