【解決手段】使用者の前頭部に被着可能な可撓性を有する基材であるに台金2に、日本髪かつらの前髪に相当する前髪部3と、左右の鬢の少なくとも前側部分に相当する一対の鬢部4とを取り付けた綿帽子用簡易日本髪かつらであり、その台金2の中央部から後方に延びる帯状支持片5と、その帯状支持片5から上方に延びるステイ6によって支持され、左右方向に延びて上方に凸に湾曲した綿帽子頂部支持部材7と、帯状支持片5の後端部に取り付けられた綿帽子後部支持部材8と設けている。台金2には左右の両側部間を狭める方向の弾性復元力を持たせ、レバー11が操作されることによって、その弾性復元力に抗して両側部間を拡げるように台金2を変形させるレバー機構10を備えた。
請求項1に記載の綿帽子用簡易日本髪かつらにおいて、前記基材の前記両側部間を可変長さで接続可能な伸縮性を有するベルトを設けたことを特徴とする綿帽子用簡易日本髪かつら。
前記綿帽子頂部支持部材を支持するステイが、前記帯状支持片が延びる前後方向に傾くように該帯状支持片に可動に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の綿帽子用簡易日本髪かつら。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、予め花嫁の頭部に合ったサイズの日本髪かつらを準備しておく必要があり、それでも、実際にそのかつらを着用させて綿帽子を被せるのに最低でも10分は要していた。また、地毛をまとめて下地を作るため、髪に癖がついてしまう可能性があった。
さらに、日本髪かつらは重いため、花嫁の負担が大きいという問題もあった。
この発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、きわめて短時間で簡単に、日本髪に綿帽子を被ったのと同じ状態を実現できるようにし、地毛に癖が付く恐れもなく、花嫁の負担も軽くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記の目的を達成するため、次のような綿帽子用簡易日本髪かつらを提供する。
その綿帽子用簡易日本髪かつらは、使用者の前頭部に被着可能な可撓性を有する基材に、日本髪かつらの前髪に相当する前髪部と、左右の鬢(びん)の少なくとも前側部分に相当する一対の鬢部とを取り付け、
上記基材の上記前髪部を装着した中央部から後方に延びる帯状支持片と、その帯状支持片から上方に延びるステイによって支持され、上記帯状支持片と直交する左右方向に延びて上方に凸に湾曲した綿帽子頂部支持部材と、上記帯状支持片の後端部に取り付けられた綿帽子後部支持部材とを設け、
上記基材自体又は別の弾性材によって該基材に上記左右の両側部間を狭める方向の弾性復元力を持たせ、レバーが操作されることによって該弾性復元力に抗して上記両側部間を拡げるように上記基材を変形させるレバー機構を備えたことを特徴とする。
【0005】
上記綿帽子用簡易日本髪かつらにおいて、上記基材の両側部間を可変長さで接続可能な伸縮性を有するベルトを設けるよい
さらに、上記綿帽子頂部支持部材を支持するステイを、上記帯状支持片が延びる前後方向に傾くように帯状支持片に可動に取り付けるのが望ましい。
また、上記綿帽子後部支持部材が、綿帽子の後部内面に接触する曲面を有するのが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
この発明による綿帽子用簡易日本髪かつらを使用すれば、使用者が洋髪のまま(下地を作ることなく)、左右の鬢間を拡げるようにレバーを操作して前頭部に装着してレバーを離せば、きわめて短時間で誰でも簡単に装着することができる。そして、その上から綿帽子を被れば、その頂部が綿帽子頂部支持部材に、後部が綿帽子後部支持部材にそれぞれ支持されて形が整えられるので、髷や「たぼ」がなくても高島田のかつらを着用して綿帽子を被った場合と同様な外観になる。
したがって、これを使用すれば、かつらと綿帽子の着脱時間が約20秒程度で済み、お色直しの際のクイックチェンジが可能になる。
しかも、取り外した後の地毛の髪型に影響がなく、軽いので花嫁の負担も少なくて済む。
【0007】
また、上記基材の両端部間を可変長さで接続可能な伸縮性を有するベルトを設ければ、そのベルトを後頭部に沿わせて締めることによって、この綿帽子用簡易日本髪かつらを使用者の頭部に確実に装着することができる。
さらに、上記ステイを上述したように帯状支持片に可動に取り付けることによって、綿帽子頂部支持部材を前後方向に傾けてその前後位置及び高さを変更し、綿帽子の被り具合を容易に調整することができる。
上記綿帽子後部支持部材が、綿帽子の後部内面に接触する曲面を有するようにすれば、綿帽子の後方に下る部分の布を傷める恐れがなく、自然な形にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明による綿帽子用簡易日本髪かつらの一実施形態の全体を示す側面図である。
図2はそのレバー機構を拡大して後方から見た図である。
この綿帽子用簡易日本髪かつら1は、使用者の前頭部に被着可能な可撓性を有する基材である台金2に、日本髪かつらの前髪に相当する前髪部3と左右の鬢(びん)の少なくとも前側部分に相当する一対の鬢部4とを取り付けている。
図1には示されていない、向かって右側の鬢部4は
図6を参照されたい。
【0010】
その台金2の前髪部3を装着した部位から後方に長く延びる帯状支持片5と、その帯状支持片5から上方に延びるステイ6によって支持され、帯状支持片5と直交する左右方向に延びて上方に凸に湾曲した綿帽子頂部支持部材7と、上記帯状支持片5の後端部に取り付けられた綿帽子後部支持部材8とを設けている。
【0011】
この実施形態では、基材である台金2は、アルミニウムの可撓性を有する薄板で
図2に示すように円弧面状に形成されており、それ自体も若干弾性復元力を有するが、後端縁2aに沿ってピアノ線等のバネ性を有する弾性材を取り付けて、台金2に両側部2b,2c間を狭める方向の復元力を持たせている。台金2の内面には合成皮革シート21を張って、それを後方へ少し延ばしている。
【0012】
前髪部3と鬢部4は樹脂製の人工毛髪で形成され、前髪部3は形を維持するためのアルミニウム薄板を内蔵しており、正面から見える中間部を膨らませてU字状に折り返した多数の毛髪の下端側3aを左右二つに分けて束ね、それを一緒に蝶ネジ22で台金2に固定して取り付けている。上端側3bは一つに束ねて、後述するレバー11の基部上に接着している。
左右一対の鬢部4は、列をなす多数の人工毛髪の一端部をそれぞれ台金2に被着するネット布23に結び付けて前方に凸状に湾曲させ、後端部側を2枚の紙の間にアルミニウムのネットを挟んだ補強シート(図示していない)に貼り付けて成形している。
【0013】
台金2の中央部上面の前髪部3を装着した部位の後方にベースプレート24が固着され、その上にレバー機構10が設けられている。そのベースプレート24上に、レバー機構10のL型ガイド金具12を、長手方向を左右方向に向けて固着している。
そのL型ガイド金具12の水平部12a上とスペーサ25を挟んでベースプレート24上に跨って、帯状支持片5の前端部5aをネジ止め固着している。
帯状支持片5はアルミニウム等の剛性を有する厚さの細幅板材で、
図1に示すように幾分上方に湾曲して後方が高くなる形状に形成されており、後端部5bは自由端になっている。
【0014】
その帯状支持片5の最も高くなった部分の上面に軸受部5cを設け、その軸受部5cに綿帽子頂部支持部材7を支持するY字状のステイ6の基部を、
図1に矢示Aで示すように回動可能にネジ止めしている。すなわち、綿帽子頂部支持部材7を支持するステイ6を、帯状支持片5が延びる前後方向に傾くように可動に取り付けている。
したがって、綿帽子頂部支持部材7に前後方向の力を加えるとステイ6が回動して前後方向に傾き、綿帽子頂部支持部材7の前後方向の位置及び高さが変化する。
【0015】
この実施形態では、軸受部5cはアルミニウムで、ステイ6と綿帽子頂部支持部材7は真鍮の細幅板材で形成され、綿帽子頂部支持部材7の両端部7aは、綿帽子を損傷しないように内側に丸めて折り返されている。
帯状支持片5の後端部5bには、綿帽子の後部内面に接触する曲面を有する綿帽子後部支持部材8が取り付けられている。この綿帽子後部支持部材8は、アクリル等の合成樹脂によって形成されている。
【0016】
この実施形態のレバー機構10は、
図2に明示するように構成されている。
L型ガイド金具12の垂直部12bに、直角に折れ曲がったジョイントアングル13が固着され、その前後方向に延びる面に、レバー11の前半部下面から垂直に延びる垂下片11aの前端部をネジ14によって軸支し、レバー11を矢示B方向に回動可能に支持している。
【0017】
一方、L型ガイド金具12の長手方向の両端部には、上方へ折れ曲がってガイド孔を形成した一対のガイド部12cを設けており、台金2の両側部(鬢部4のもみあげに対応する部分)にもそれぞれガイド孔を形成したガイド金具15を固着している。
そのガイド部12cとガイド金具15の各ガイド孔を通して、一対の細長いアーム杆16を設け、その各上端の立ち上がり部16aを、レバー11の垂下片11aの後端部側にネジ17によって回動可能に軸支している。
この実施形態では、ベースプレート24、レバー11、L型ガイド金具12、ジョイントアングル13、およびガイド金具15はいずれもアルミニウム板で形成され、一対のアーム杆16は真鍮の細幅板材で形成されている。
【0018】
台金2には前述したピアノ線等の弾性材によって、両側部2b,2c間を狭める方向の復元力を持たせているので、常時は、台金2の両側部2b,2cの間隔が狭くなっている。そのため、このレバー機構10の一対のアーム杆16が幾分立ち上がって、各上端の立ち上がり部16aが上昇し、レバー11の自由端部側を押し上げている。
そこで、この綿帽子用簡易日本髪かつら1を花嫁等の使用者の頭部に装着する際には、その世話をする者が、
図3に示すように、手50の親指51と中指52で帯状支持片5のレバー11の下方部分を押さえて、この綿帽子用簡易日本髪かつら1を保持する。
【0019】
そして、人指し指53でレバー11を押さえて矢示C方向へ回動させると、そのレバー11における垂下片11aの一対のアーム杆16を軸支する部分が、
図4に矢示Dで示すように押し下げられる。そのため、一対のアーム杆16が
図3に矢示Eで、
図4に矢示Fで示すように変位して、
図4に仮想線で示すように両側部が開いた状態になる。
【0020】
この一対のアーム杆16の変位によって、
図2に示した台金2が、両側部2b,2c間を狭める方向の弾性復元力に抗して、左右のもみあげ位置に相当する両側部2b,2c間を拡げるように変形される。
したがって、使用者の頭部の大きさに係りなく、この綿帽子用簡易日本髪かつら1を短時間で簡単に装着することができる。
その後、レバー11から指を離せば、一対のアーム杆16を変位させる力がなくなるため、台金2はその弾性復元力によって、両側部2b,2c間を狭める状態に戻り、使用者のもみあげ部に当って停止し、綿帽子用簡易日本髪かつら1が使用者の頭部に保持される。一対のアーム杆16も
図4に実線で示した元の状態に近づき、レバー11を押し上げる。
【0021】
さらに、この実施形態の綿帽子用簡易日本髪かつら1は、
図2に示すように、基材である台金2の両側部2b,2c間を可変長さで接続可能な伸縮性を有するベルトを設けている。すなわち、台金2の一方の側部2bに長いベルト9Aの一端を、他方の側部2cに短いベルト9Bの一端をそれぞれ若干回動可能にネジ留めしている。
このベルト9A,9Bのうち、少なくとも長いベルト9Aを平ゴムのような伸縮性を有するベルトにするとよい。そして、ベルト9Aと9Bが重なり合う面の一方に短冊状面ファスナのメスを、他方にそのオスを縫い付けている。
【0022】
したがって、その面ファスナの重なり位置によってベルトの有効長さを可変調整して、ベルト9A,9Bを接続することができる。
そこで、上述のようにして綿帽子用簡易日本髪かつら1を使用者の頭部に被せた後、ベルト9Aを使用者の後頭部に沿わせて少し伸ばしながら、その自由端部側をベルト9Bに重ねて、面ファスナによって接続することによってベルトを締め、この綿帽子用簡易日本髪かつら1を使用者の頭部に確実に装着することができる。
台金2の両側部2b,2c間にベルトを可変長さで接続する手段としては、面ファスナが最も操作性がよいが、孔明きバンド式、スライドバンド式、多段フック式など種々の方式のものを採用可能である。
【0023】
図5は、
図1に示した綿帽子用簡易日本髪かつら1を使用者70が装着して、綿帽子60を被った状態を透視して示す斜視図であり、
図6はその正面図である。これらの図は透視図であるため、綿帽子60は細い実線で示している。
この綿帽子用簡易日本髪かつら1は、
図5に示すように使用者70が地毛による洋髪71のまま装着することができる。そして、その綿帽子用簡易日本髪かつら1の上から綿帽子60を被ると、その頂部は綿帽子頂部支持部材7によって、後部は綿帽子後部支持部材8によって、それぞれ滑らかに支持され、手前側は、前髪部3と左右の鬢部4によって支持される。それによって、
図5に示すように側面から見ても、
図6に示すように正面から見ても、高島田の日本髪かつらを着用して綿帽子を被った場合と同様な美しい外観が得られる。
【0024】
このように、この発明による綿帽子用簡易日本髪かつら1を使用すれば、花嫁などの使用者が地髪の洋髪のまま(下地を作ることなく)、頭部のサイズに係らず、きわめて短時間で誰でも簡単に装着することができる。そして、その上から綿帽子を被れば、高島田のかつらを着用して綿帽子を被った場合と同様な美しい外観になる。
したがって、これを使用すれば、かつらと綿帽子の着脱時間が約20秒程度で済み、お色直しの際のクイックチェンジが可能になる。しかも、特別な技術を必要としない。
【0025】
また、台金2の内面には合成皮革シート21を張ってあるので、装着したときの感触が良く、頭髪を傷める恐れもない。そして、取り外した後の地毛の髪型に影響がなく、重さが普通の日本髪かつらと比べて半分以下で軽いため、花嫁の負担が少なくて済む。
また、綿帽子頂部支持部材を前後方向に傾けてその前後位置及び高さを変更できるので、綿帽子の被り具合を容易に調整することができる。
上記綿帽子後部支持部材が、綿帽子の後部内面に曲面で接触するので、綿帽子の後方に下る部分の布を傷める恐れがなく、自然な形にすることができる。
【0026】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、その実施形態の各部の具体的な構成や形状及び材料等は、そこに記載したものに限るものではない。
また、この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された技術的特徴を有する以外は、何ら限定されるものではないことは言うまでもない。
さらに、以上説明してきた実施形態の構成例等は、適宜変更又は追加したり、一部を削除してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1:綿帽子用簡易日本髪かつら 2:台金(基材) 2a:台金の後端縁部
2b,2c:台金の両側部 3:前髪部 3a:下端側 3b:上端側
4:鬢部 5:帯状支持片 6:ステイ 7:綿帽子頂部支持部材
8:綿帽子後部支持部材 10:レバー機構 11:レバー 11a:垂下片
12:L型ガイド金具 12a:水平部 12b:垂直部 12c:ガイド部
13:ジョイントアングル 14,17:ネジ 15:ガイド金具 16:アーム杆
21:合成皮革シート 22:蝶ネジ 23:ネット布 24:ベースプレート
25:スペーサ 50:手 60:綿帽子 70:使用者