(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-143645(P2015-143645A)
(43)【公開日】2015年8月6日
(54)【発明の名称】光パルス試験装置および光パルス試験装置の光強度安定化方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20150710BHJP
【FI】
G01M11/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-16907(P2014-16907)
(22)【出願日】2014年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 太一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智英
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086CC03
(57)【要約】
【課題】
マルチモード光ファイバを測定対象とする光源機能付きの光パルス試験装置において、装置を大型化することなく測定光の光強度を安定化させることが可能な光パルス試験装置を提供する
【解決手段】
レーザダイオードから出射されるモニタ光を受光して電気信号に変換する第1の受光器と、光カプラを通過した出射光の他の一部を分岐光として受光して電気信号に変換する第2の受光器と、第1の受光器が受光したモニタ光のパワーを検出する第1のパワー検出部と、第2の受光器が受光した分岐光のパワーを検出する第2のパワー検出部と、モニタ光のパワーと分岐光のパワーとに基づいて、測定光の光強度が所定の値となるように出射光の光強度を安定化させる光強度制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定マルチモード光ファイバが接続可能な接続部(5)と、
所定波長の出射光を発生するレーザダイオード(3)と、マルチモード光ファイバから構成され、前記レーザダイオードから出射される前記出射光を受けて、当該出射光の一部を測定光として前記接続部を介して前記被測定マルチモード光ファイバに出射するとともに、前記被測定マルチモード光ファイバから前記接続部を介して入射される前記測定光の戻り光を受ける光カプラ(4)と、
前記光カプラから前記戻り光の一部を受光して電気信号に変換する戻り光受光器(6)と、
前記戻り光受光器が出力する電気信号に基づいて、前記被測定マルチモード光ファイバの特性を測定するOTDR(OpticalTimeDomainReflectometer)測定部(7)と
を備えた光パルス試験装置において、
前記レーザダイオードから出射されるモニタ光を受光して電気信号に変換する第1の受光器(8)と、
前記光カプラを通過した前記出射光の他の一部を分岐光として受光して電気信号に変換する第2の受光器(10)と、
前記第1の受光器が出力する電気信号に基づいて前記第1の受光器が受光した前記モニタ光のパワーを検出する第1のパワー検出部(9)と、
前記第2の受光器が出力する電気信号に基づいて前記第2の受光器が受光した前記分岐光のパワーを検出する第2のパワー検出部(11)と、
前記モニタ光のパワーと前記分岐光のパワーとに基づいて、前記接続部から出射される前記測定光の光強度が所定の値となるように前記出射光の光強度を安定化させる光強度制御部(2)と
を備える光パルス試験装置。
【請求項2】
前記光強度制御部が、
所定の定数αが乗算された前記モニタ光のパワーの、前記分岐光のパワーに対する差分を算出し、当該差分に対応する電圧を出力する減算器(21)と、
所定の基準電圧を供給する基準電圧供給部(22)と、
前記差分に対応する電圧を前記基準電圧供給部から供給された前記基準電圧と比較する比較器(23)と、
前記比較器による比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より小さい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を増加させ、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より大きい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を減少させる電流制御部(24)と
を備える、請求項1に記載の光パルス試験装置。
【請求項3】
レーザダイオードが連続光を出射する段階と、
前記レーザダイオードが出射する前記連続光をマルチモード光ファイバから構成される光カプラに導き、該光カプラが出力する前記連続光の一部を測定光として被測定マルチモード光ファイバに出射する段階と、
前記レーザダイオードが出射するモニタ光を受光して当該モニタ光のパワーを検出する段階と、
前記光カプラが出力する前記連続光の他の一部を分岐光として受光して当該分岐光のパワーを検出する段階と、
前記モニタ光のパワーと前記分岐光のパワーとに基づいて、前記被測定マルチモード光ファイバに出射される前記測定光の光強度が所定の値となるように前記連続光の光強度を制御する段階と
を備える光パルス試験装置の光強度安定化方法。
【請求項4】
前記連続光の光強度を制御する段階は、
所定の基準電圧を供給する段階(S2)と、
所定の定数αが乗算された前記モニタ光のパワーの、前記分岐光のパワーに対する差分を算出し、当該差分に対応する電圧を出力する段階(S3)と、
前記差分に対応する電圧を前記基準電圧と比較する段階(S4)と、
前記比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より小さい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を増加させる段階(S5)と、
前記比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より大きい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を減少させる段階(S6)と
を備える、請求項3に記載の光パルス試験装置の光強度安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光ファイバ等の長手方向の特性を測定する光パルス試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルス試験装置はパルス光を光ファイバに入射し、その際に生じる戻り光の時間変化を測定することにより、光ファイバの長手方向の特性を把握する試験装置である。この光パルス試験装置には、大別して、建物内に設置され、継続的に光ファイバの特性を測定する据え置き型の試験装置と、光ファイバの設置・保守等の現場において、作業員が持ち運べるように構成された携帯型の試験装置とがある。
【0003】
後者の携帯型の光パルス試験装置に対しては、光ファイバの設置・保守の便宜のために、連続光の光源としての機能が組み込まれていることがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の、光源機能を有する光パルス試験装置の例を
図4に示す。
図4の光パルス試験装置は、タイミング発生部41と、レーザモジュール42と、光カプラ43と、接続部44と、受光器45と、測定部46と、表示部47と、光強度制御部48と、ダミーファイバ49とを備えている。測定部46は、OTDR測定部46_1と、光強度算出部46_2とを備えている。なお、OTDRはOptical Time Domain Reflectometerの略である。
【0005】
特許文献1に記載の光パルス試験装置では、OTDR測定部46_1で測定された接続部44における反射光の光レベルと、予め求められた接続部44の反射減衰量とに基づいて、光強度算出部46_2がレーザモジュール42から出射される測定光の光強度を算出し、更に光強度制御部48が光強度算出部46_2で算出された光強度が所定の値となるようにレーザモジュール42から出射される測定光の光強度を安定化させることにより、光源としての機能を実現していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−140120号公報
【特許文献2】特開平3−144337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いっぽう、光パルス試験装置には、シングルモード光ファイバを測定対象とするものと、マルチモード光ファイバを測定対象とするものがある。例えば、マルチモード光ファイバを測定対象とする光パルス試験装置においては、内部の構成部品もマルチモード光ファイバで構成される。
【0008】
通常レーザモジュールから出射されたレーザ光のマルチモード光ファイバ中の伝搬モードは十分にモードが励振された定常モードをなしておらず、偏りを持つ。この場合、温度やレーザモジュール42の駆動電流などの変動によりマルチモード光ファイバ中の光の伝搬モードが変化すると、光カプラ43の分岐比も大きく変動する。このように光カプラ43の分岐比が変動してしまうと、光強度算出部46_2が正しく光強度を算出することができなくなり、レーザモジュール42から出射される測定光の光強度を安定化させることができない。
【0009】
このような伝搬モードの変化に起因する光カプラ43の分岐比の変動を抑制するための技術として、レーザモジュール42の直後に、500m〜1kmほどの長さのステップインデックスファイバや圧電素子を用いた励振器を挿入し、定常モードを励振する方法もある(例えば特許文献2)。
【0010】
しかし励振器を挿入する方法では光パルス試験装置が大型化してしまい、携帯型の光パルス試験装置としては適当でない。
【0011】
本願発明は、マルチモード光ファイバを測定対象とする光源機能付きの光パルス試験装置において、装置を大型化することなく測定光の光強度を安定化させることが可能な光パルス試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の光パルス試験装置は、被測定マルチモード光ファイバが接続可能な接続部と、所定波長の出射光を発生するレーザダイオードと、マルチモード光ファイバから構成され、前記レーザダイオードから出射される前記出射光を受けて、当該出射光の一部を測定光として前記接続部を介して前記被測定マルチモード光ファイバに出射するとともに、前記被測定マルチモード光ファイバから前記接続部を介して入射される前記測定光の戻り光を受ける光カプラと、前記光カプラから前記戻り光の一部を受光して電気信号に変換する戻り光受光器と、前記戻り光受光器が出力する電気信号に基づいて、前記被測定マルチモード光ファイバの特性を測定するOTDR測定部とを備えた光パルス試験装置において、前記レーザダイオードから出射されるモニタ光を受光して電気信号に変換する第1の受光器と、前記光カプラを通過した前記出射光の他の一部を分岐光として受光して電気信号に変換する第2の受光器と、前記第1の受光器が出力する電気信号に基づいて前記第1の受光器が受光した前記モニタ光のパワーを検出する第1のパワー検出部と、前記第2の受光器が出力する電気信号に基づいて前記第2の受光器が受光した前記分岐光のパワーを検出する第2のパワー検出部と、前記モニタ光のパワーと前記分岐光のパワーとに基づいて、前記接続部から出射される前記測定光の光強度が所定の値となるように前記出射光の光強度を安定化させる光強度制御部とを備える。
【0013】
本願発明によれば、光カプラの分岐比が変動しても、第1のパワー検出部と第2のパワー検出部がそれぞれ検出したパワーに基づいて、接続部から出射される測定光の光強度を安定化させることができる。
【0014】
本願発明は、前記光強度制御部が、所定の定数αが乗算された前記モニタ光のパワーの、前記分岐光のパワーに対する差分を算出し、当該差分に対応する電圧を出力する減算器と、所定の基準電圧を供給する基準電圧供給部と、前記差分に対応する電圧を前記基準電圧供給部から供給された前記基準電圧と比較する比較器と、前記比較器による比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より小さい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を増加させ、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より大きい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を減少させる電流制御部とを備えるように構成してもよい。
【0015】
比較器の比較結果に応じて、自動的にレーザモジュールが出射する測定光のパワーを安定化させることができる。
【0016】
上記目的を達成するために、光本願発明のパルス試験装置の光強度安定化方法は、レーザダイオードが連続光を出射する段階と、前記レーザダイオードが出射する前記連続光をマルチモード光ファイバから構成される光カプラに導き、該光カプラが出力する前記連続光の一部を測定光として被測定マルチモード光ファイバに出射する段階と、前記レーザダイオードが出射するモニタ光を受光して当該モニタ光のパワーを検出する段階と、前記光カプラが出力する前記連続光の他の一部を分岐光として受光して当該分岐光のパワーを検出する段階と、前記モニタ光のパワーと前記分岐光のパワーとに基づいて、前記被測定マルチモード光ファイバに出射される前記測定光の光強度が所定の値となるように前記連続光の光強度を制御する段階とを備える。
【0017】
本願発明によれば、光カプラの分岐比が変動しても、第1のパワー検出部と第2のパワー検出部がそれぞれ検出したパワーに基づいて、接続部から出射される測定光の光強度を安定化させることができる。
本願発明の前記連続光の光強度を制御する段階は、所定の基準電圧を供給する段階と、所定の定数αが乗算された前記モニタ光のパワーの、前記分岐光のパワーに対する差分を算出し、当該差分に対応する電圧を出力する段階と、前記差分に対応する電圧を前記基準電圧と比較する段階と、前記比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より小さい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を増加させる段階と、前記比較の結果、前記差分に対応する電圧が前記基準電圧より大きい場合、前記レーザダイオードに供給する駆動電流を減少させる段階とを備えてもよい。
【0018】
差分に対応する電圧と基準電圧との比較結果に応じて、自動的にレーザモジュールが出射する測定光のパワーを安定化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、マルチモード光ファイバを測定対象とする光源機能付きの光パルス試験装置において、装置を大型化することなく測定光の光強度を安定化させることが可能な光パルス試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る光パルス試験装置の構成を示す。
【
図2】実施形態に係る光パルス試験装置において、光強度制御部の構成を示す。
【
図3】実施形態に係る光パルス試験装置の、光強度を制御する方法を示す。
【
図4】従来の光パルス試験装置の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本願発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本願発明の実施の例であり、本願発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0022】
(実施形態1)
図1に、本実施形態に係る光パルス試験装置の一例を示す。本実施形態に係る光パルス試験装置は、タイミング発生部1、光強度制御部2、レーザモジュール12、光カプラ4、接続部5、戻り光受光部6、OTDR測定部7、第1のパワー検出部9、第2の受光部10、第2のパワー検出部11を備える。レーザモジュール12はレーザダイオード(LD)3及び第1の受光部8を備える。接続部5には、被測定物であるマルチモード光ファイバ(不図示)が接続されている。
【0023】
タイミング発生部1は、ユーザの設定又は被測定物であるマルチモード光ファイバの長さに応じて、パルス光を出射する繰返し周期を決定し、パルス光を出射するタイミングを光強度制御部2に指示する。なお、LD3が連続光を出力する場合は、タイミング発生部1は動作しないように設定される。
【0024】
光強度制御部2はタイミング発生部1からの指示によってLD3を駆動する。LD3が連続光を出力する場合の安定化制御については後述する。
【0025】
LD3は半導体レーザダイオードから構成され、所定の波長で出射光を出射する。ここで、LD3は前面と後面の2方向に光を出射する。以下では、前面に出射された光を出射光と記載し、後面に出射された光をモニタ光と記載する。出射光は、マルチモード光ファイバを経由して光カプラ4に導かれる。モニタ光は、別のマルチモード光ファイバを経由して第1の受光部8に導かれる。なお、光を1方向にのみ出射するようなレーザダイオードを用いる場合は、ハーフミラー等を用いて測定光を分岐させ、分岐した一方を出射光とし、他方をモニタ光として用いても良い。
【0026】
光カプラ4は、入力2ポート、出力2ポートのものが用いられる。なお、光カプラの性質上、入力ポートと出力ポートの物理的な区別はなく、入力ポート/出力ポートという名前は便宜上のものである。また、本実施の形態に係る光パルス試験装置はマルチモード光ファイバを測定する用途で用いられるものであるので、光カプラ4もマルチモード光ファイバから構成されている。
【0027】
光カプラ4の入力ポートの1端はLD3に接続されている。光カプラ4の入力ポートの他の1端は戻り光受光器6に接続されている。光カプラ4の出力ポートの1端は接続部5に接続されている。光カプラ4の出力ポートの他の1端は第2の受光部10に接続されている。以下では、LD3からの出射光のうち、光カプラ4で分岐されて接続部5に向かう光を測定光と記載し、第2の受光部10に向かう光を分岐光と記載する。
【0028】
接続部5には、被測定物であるマルチモード光ファイバ(不図示)が接続される。マルチモード光ファイバに測定光が入射すると、測定光は光ファイバ内の各点において散乱を受け、散乱光の一部は接続部5に戻ってくる。以下では、この接続部5に戻ってきた散乱光を戻り光と記載する。接続部5は、被測定物であるマルチモード光ファイバからの戻り光を受けて光カプラ4に戻す。光カプラ4は、接続部5からの戻り光を受けて、その一部を戻り光受光器6に出射する。
【0029】
戻り光受光器6は光カプラ4を経由した戻り光を受光し、電気信号に変換する。
【0030】
OTDR測定部7は、戻り光受光器6が出力する電気信号に基づいて、被測定物であるマルチモード光ファイバの特性を測定する。
【0031】
なお、本実施形態に係る光パルス試験装置は、ユーザが各種設定を行うための入力手段や、OTDR測定部7による測定結果を表示するための表示手段を備えていても良い。また、これら入力手段や表示手段を備えた外部の制御装置を接続し、光パルス試験装置との間で入出力を行うように構成しても良い。
【0032】
第1の受光器8は、LD3のモニタ光を受光し、電気信号に変換する。
【0033】
第1のパワー検出部9は、第1の受光器8が出力する電気信号に基づいて、第1の受光器8が受光したモニタ光のパワー(以下、モニタ光パワーと記載する)を測定する。
【0034】
第2の受光器10は、光カプラ4の出力ポートの他の1端に接続され、光カプラ4からの分岐光を受光して電気信号に変換する。
【0035】
第2のパワー検出部11は、第2の受光器10が出力する電気信号に基づいて、第2の受光器10が受光した分岐光のパワー(以下、分岐光パワーと記載する)を測定する。
【0036】
図2に、光強度制御部2の具体的な構成の一例を示す。本実施形態に係る光強度制御部2は、減算器21、基準電圧供給部22、比較器23、電流制御部24を備える。
【0037】
減算器21は、モニタ光パワーと分岐光パワーの差分を、電圧として出力する。ただし、後述するように、モニタ光パワーには比例定数αが乗算されている。
【0038】
基準電圧供給部22は、本実施形態に係る光パルス試験装置が連続光の光源として用いられる場合に、ユーザが所望する連続光のパワーに対応した基準電圧を供給する。
【0039】
比較器23は、減算器21が出力する差分電圧を、基準電圧供給部22が出力する基準電圧と比較する。
【0040】
電流制御部24は、比較器23の比較結果を受けて、LD3に供給する駆動電流を制御する。
【0041】
以下、
図3を用いて、本実施形態に係る光パルス試験装置が連続光の光源として用いられる場合の、光強度制御部2の動作について説明する。
【0042】
まず、第1のパワー検出部9が測定したモニタ光パワーをP1とし、第2のパワー検出部11が測定した分岐光パワーをP2とし、接続部5から出力される測定光のパワーをP0とすると、これらのパワーには以下の関係が成立する。
【0043】
P0 + P2 = αP1 (式1)
ここで、αは本実施形態に係る光パルス試験装置に固有の比例定数である。
【0044】
比例定数αを決定するために、接続部5に受光器を接続し、光強度制御部2を任意の強度に設定して、P0、P1、P2を測定する。この測定により、以下の式から、比例定数αが決定される(S1)。
【0045】
α = (P0 + P2) / P1 (式2)
αの決定は、本実施形態に係る光パルス試験装置を製造した時点で行っても良いし、本実施形態に係る光パルス試験装置を実際に使用する直前に行っても良い。
【0046】
本実施形態に係る光パルス試験装置が連続光の光源として用いられる場合に、ユーザが所望する測定光のパワーP0を入力する。基準電圧供給部22は、P0に対応した基準電圧を供給する(S2)。
【0047】
減算器21は、第1のパワー検出部9が測定したP1及び第2のパワー検出部11が測定したP2に基づいて、以下の式により、接続部5から現在出力されている測定光のパワーP0を算出し、このP0に対応する電圧を出力する(S3)。
【0048】
P0 = αP1 − P2 (式3)
比較器23は、減算器21から出力されるP0に対応した電圧を、基準電圧供給部22から供給される基準電圧と比較する(S4)。
【0049】
P0に対応した電圧が基準電圧より小さい場合(S4でYes)、電流制御部24は、LD3に供給する駆動電流を増加させる(S5)。
【0050】
P0に対応した電圧が基準電圧より大きい場合(S4でNo)、電流制御部24は、LD3に供給する駆動電流を減少させる(S6)。なお、駆動電流の増加又は減少は、あらかじめ決められたステップ幅で変化させても良いし、P0に対応した電圧と基準電圧との差に応じてステップ幅を可変としても良い。
【0051】
電流制御部24がLD3に供給する駆動電流を増加又は減少させた後は、S3に戻り、以後、比較と制御を繰り返す。以上の動作により、本実施形態に係る光パルス試験装置が連続光の光源として用いられる場合に、接続部5から出力される測定光のパワーP0は、ユーザが所望するパワーに常に保持される。
【0052】
このように、本願発明に係る光パルス試験装置は、連続光の光源として用いられる場合に常に一定のパワーに保持されるため、マルチモード光ファイバを測定対象とする光源機能付きの光パルス試験装置において、装置を大型化することなく測定光の光強度を安定化させることができる。
【0053】
(実施形態2)
OTDR測定におけるパルス光を出力する場合でも、本発明を適用して安定したパルス光を出射することができる。この場合は、光強度制御部2においてモニタ光パワーP1および分岐光パワーP2のパルスのピークを、タイミング発生部1の指示に合わせてサンプルホールド回路などによってサンプルするようにすればよい。安定化制御については、連続光を出力する場合と同じ制御方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:タイミング発生部
2:光強度制御部
3:レーザダイオード(LD)
4:光カプラ
5:接続部
6:戻り光受光器
7:OTDR測定部
8:第1の受光器
9:第1のパワー検出部
10:第2の受光器
11:第2のパワー検出部
12:レーザモジュール
21:減算器
22:基準電圧供給部
23:比較器
24:電流制御部