【解決手段】RF電力制御部7はDC−DC変換部3の出力電圧を制御してDC−RF変換部4の出力電力を制御する。RF合成部5はDC−RF変換部4の2つの出力電圧の位相差θに応じた所定の割合で2つの出力電力P
を制御できる場合は、θ=0に設定してPWM信号のパルス幅を制御する第1の出力制御を行い、制御できない場合は、パルス幅を最小のオン時間に固定し、位相差θを制御する第2の出力制御を行う。
前記電力合成手段は、伝送トランスと電力消費用の抵抗を含むハイブリッド回路で構成され、前記複数の交流信号に位相差がある場合、各交流信号を当該位相差に応じた割合で合成して前記負荷に出力し、前記複数の交流信号の差分で電力消費用の負荷に電力消費をさせる、請求項2乃至4のいずれかに記載の高周波電源。
【背景技術】
【0002】
図19は、プラズマ処理システムに用いられる従来の高周波電源の内部構成の一例を示す図である。
【0003】
高周波電源100は、AC−DC変換部101、DC−DC変換部102、DC−RF変換部103、RF検出部104、制御部105、PWM信号生成部106及び高周波信号生成部107を含む構成である。高周波電源100には負荷としてプラズマ処理装置200が接続される。
【0004】
高周波電源100は、DC−RF変換部103において高周波電力(RF電力)を生成し、RF検出部104を介してその高周波電力を負荷となるプラズマ処理装置200に供給する。高周波電源100からプラズマ処理装置200に向かう高周波電力を進行波電力といい、プラズマ処理装置200側から反射されて高周波電源100に戻ってくる高周波電力を反射波電力という。DC−RF変換部103で生成され、RF検出部104を介してプラズマ処理装置200に出力される高周波電力P
outは進行波電力に相当する。本明細書では、DC−RF変換部103の出力電力P
outを「進行波電力P
f」と表記し、プラズマ処理装置200側から反射されて高周波電源100に戻ってくる高周波電力を「反射波電力P
r」と表記することがある。
【0005】
AC−DC変換部101は、商用電源から所定の直流電圧V
ccを生成するブロックであり、DC−DC変換部102は、AC−DC変換部101から出力される直流電圧V
ccを任意の直流電圧V
dcに変換して出力するブロックである。DC−DC変換部102は、トランジスタ等の半導体スイッチ素子をブリッジ接続したブリッジ回路を含み、入力される直流電圧V
ccを半導体スイッチ素子で断続することにより任意の直流電圧V
dcに変換する。
【0006】
DC−RF変換部103は、DC−DC変換部から出力される直流電圧V
dcを駆動用電源として高周波信号生成部107から入力される高周波信号vを増幅してプラズマ処理装置200に出力するブロックである。
【0007】
プラズマ処理装置200は、プラズマ処理中にプラズマの発生状態や半導体ウェハや液晶基板等の被加工物の状態が変化することによって高周波電源100から見た負荷インピーダンスZ
Lが変化する。負荷インピーダンスZ
Lが高周波電源100の出力インピーダンスZ
Gと整合していれば、高周波電源100から出力される進行波電力P
fは、プラズマ処理装置200に供給されるが、不整合の場合は、進行波電力P
fの一部が反射されて反射波電力P
rとして高周波電源100側に戻ってくる。
【0008】
RF検出部104は、高周波電源100からプラズマ処理装置200に向かう進行波電力P
f及びプラズマ処理装置200側から戻ってくる反射波電力P
rを検出する機能を有する。RF検出部104は、進行波電力P
fの検出値又は進行波電力P
fから反射波電力P
rを減算した負荷側電力P
loadの検出値を、検出電力P
oとして制御部105に出力するブロックである。RF検出部104の検出電力P
oを進行波電力P
fの検出値とするか、負荷側電力P
loadの検出値とするかは予め定めておく。以下では、検出電力P
oとして進行波電力P
fの検出値が出力される場合について説明する。
【0009】
制御部105は、DC−DC変換部102の出力電圧V
dcを制御して検出電力P
oが目標値(目標電力)P
cになるように制御するブロックである。制御部105は、所定の周期で目標電力P
cに対する検出電力P
oの偏差E=P
c−P
oに基づいて制御値C
oを算出し、その制御値C
oをPWM信号生成部106に出力する。PWM信号生成部106は、DC−DC変換部102内の半導体スイッチ素子のオン・オフ動作を制御するPWM(Pulse Width Modulatin)信号(パルス幅変調信号)を生成するブロックである。PWM信号生成部106は、例えば、制御部105から入力される制御値C
oと鋸波のキャリア信号S
Cのレベルを比較してS
C≦C
oの期間をパルス幅とするPWM信号S
PWMを生成し、DC−DC変換部102に出力する。
【0010】
負荷インピーダンスZ
Lは、実用上DC−RF変換部103から負荷側を見たインピーダンスと等しい見なすことができるので、DC−RF変換部103に接続されている負荷のインピーダンスを「Z
L」とし、DC−RF変換部103の動作状態によって決まる係数を「K」とすると、DC−DC変換部102の出力電圧V
dcとDC−RF変換部103の出力電力P
outとの間には、
P
out=K×(V
dc2/|Z
L|)…(1)
の関係がある。負荷インピーダンスZ
Lが固定であれば、DC−RF変換部103の出力電力P
outは、(1)式よりDC−DC変換部102の出力電圧V
dcの2乗に比例するので、DC−DC変換部102の出力電圧V
dcを制御することによってDC−RF変換部103の出力電力P
outを制御することができる。
【0011】
従って、高周波電源100は、P
c<P
oであれば、PWM信号S
PWMのパルス幅を小さくしてDC−DC変換部102の出力電圧V
dcを低下させ、P
c>P
oであれば、PWM信号S
PWMのパルス幅を広くしてDC−DC変換部102の出力電圧V
dcを上昇させて検出電力P
oが目標電力P
cとなるように制御する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。特に、プラズマ処理システムに適用される高周波電源を例に説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る高周波電源の内部構成を示すブロック図である。
【0034】
高周波電源1は、AC−DC変換部2、DC−DC変換部3、DC−RF変換部4、RF合成部5、RF検出部6及びRF電力制御部7を含む。DC−RF変換部4には同一構成の2つのDC−RF変換部4A,4Bが設けられている。第1のDC−RF変換部4Aから出力される電力P
1と第2のDC−RF変換部4Bから出力される電力P
2がRF合成部5で合成されて高周波電源1の出力端に接続されるプラズマ処理装置(図示省略)に出力される。DC−RF変換部4とRF合成部5を含む部分は負荷に高周波電力を出力する高周波生成部Uを構成し、プラズマ処理装置は高周波電源1に対する負荷に相当している。
【0035】
高周波電源1は、プラズマ処理が開始されると、RF合成部5から高周波電力P
outを出力し、RF検出部6を介して負荷となるプラズマ処理装置に供給する。プラズマ処理装置のインピーダンス(負荷インピーダンスZ
L)はプラズマ処理中に変動するから、高周波電源1とプラズマ処理装置のインピーダンス不整合によりRF合成部5の出力電力P
outの一部の電力が反射されて高周波電源1に戻ってくる。
【0036】
なお、高周波電源1からプラズマ処理装置に向かう高周波電力を進行波電力P
fといい、プラズマ処理装置側から反射されて高周波電源1に戻ってくる高周波電力を反射波電力P
rという。RF合成部5から出力される高周波電力P
outは進行波電力P
fに相当する。したがって、本明細書では、RF合成部5から出力される高周波電力P
outを「進行波電力P
f」と表記することがある。
【0037】
高周波電源1は、RF検出部6で検出される検出電力P
oが目標電力P
cとなるようにフィードバック制御する。高周波電源1は、フィードバック制御において、目標電力P
cに対する検出電力P
oの偏差E(=P
c−P
o)に基づいて第1制御指令値C
S1と第2制御指令値C
S2を生成する。高周波電源1は、第1制御指令値C
S1によりDC−DC変換部3へのPWM信号S
PWMのパルス幅を制御することによってDC−DC変換部3の出力電圧V
dcを制御し(以下、この制御を「第1の出力制御」という。)、第2制御指令値C
S2によりDC−RF変換部4への2つの高周波信号v
1,v
2の相互の位相差θを制御することによってRF合成部5の2つの電力P
1,P
2の合成割合η(θ)を制御する(以下、この制御を「第2の出力制御」という。)ことによってRF合成部5の出力電力P
outを制御する。
【0038】
そして、高周波電源1は、後述するように、PWM信号S
PWMのパルス幅がDC−DC変換部3内の半導体スイッチ素子Q
A(
図3参照)のオン最小時間T
min以上となる場合は、第1の出力制御によってRF合成部5の出力電力P
outを変化させて目標電力P
cに制御し、PWM信号S
PWMのパルス幅がオン最小時間T
minよりも小さくなる場合は、第2の出力制御によってRF合成部5の出力電力P
outを変化させて目標電力P
cに制御する。第1の出力制御と第2の出力制御の詳細は後述する。
【0039】
AC−DC変換部2は、商用電源からDC−DC変換部3への入力電圧(直流電圧)V
ccを生成する回路ブロックである。AC−DC変換部2は、例えば、
図2に示す4個の半導体整流素子Dをブリッジ接続した整流回路201と平滑回路202とからなる周知の電源回路で構成される。
【0040】
DC−DC変換部3は、AC−DC変換部2から入力される直流電圧V
ccを任意の電圧値の直流電圧V
dcに変換してDC−RF変換部4に入力する回路ブロックである。DC−DC変換部3は、DC−RF変換部4内の第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bからそれぞれ出力される交流電力P
1,P
2を制御する機能を果たす。
【0041】
DC−DC変換部3は、例えば、
図3に示す、インバータに整流回路を組み合わせた周知のDC−DCコンバータで構成される。
図3の回路例は、4個の半導体スイッチ素子Q
Aをブリッジ接続したフル・ブリッジ回路からなるインバータ301を、トランスT1を介して整流回路302に接続した回路である。整流回路302は、4個の半導体整流素子D
Aをブリッジ接続し、その出力に平滑用のコンデンサCを接続した回路である。半導体スイッチ素子Q
Aには、バイポーラトランジスタ、電界効果型トランジスタ、IGBT等が用いられ、半導体整流素子D
Aにはダイオードが用いられる。
【0042】
トランスT1の一次巻線が接続されるインバータ301の出力ラインには、フェーズ・シフト・フル・ブリッジPWM制御方式によりインバータ301のソフトスイッチングを実現するために、インダクタL1が挿入されている。このため、トランスT1の一次巻線の両端の電圧レベルは、出力端子a,a’の出力レベルからインダクタL1の両端の電圧レベルの分だけ低下する。負荷インピーダンスZ
Lの変動によってトランスT1の一次巻線に流れる負荷電流は変動するから、インバータ301の出力端子a,a’から出力される矩形波のレベルが一定であってもトランスT1の一次巻線の両端の電圧レベルは負荷インピーダンスZ
Lの変動によって変動し、DC−DC変換部3の出力電圧V
dcも変動する。
【0043】
DC−DC変換部3の出力電圧V
dcは、RF電力制御部7で生成されるPWM信号S
PWMによってインバータ301の4個の半導体スイッチ素子Q
Aのオン・オフ動作を制御することにより、制御される。本実施形態では、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONが半導体スイッチ素子Q
Aのオン最小時間T
minよりも小さくならないように制御されるが、後述するように、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONがオン最小時間T
minに固定されてもDC−DC変換部3から出力される電圧V
dcは、負荷インピーダンスZ
Lの変動によって変動する。
【0044】
本実施形態では、フェーズ・シフト・フル・ブリッジPWM制御方式によりインバータ301をソフトスイッチングするために、インバータ301とトランスT1の間にインダクタL1を挿入しているが、インダクタL1を除いた回路でもよい。
【0045】
DC−RF変換部4は、DC−DC変換部3から入力される直流電力を予め設定された高周波の交流電力に変換する回路ブロックである。予め設定された高周波は、2.0MHz、13.56MHz、40.68MHzなどのプラズマ処理用に規定された周波数である。
【0046】
第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bは、
図4に示すハーフ・ブリッジ型のスイッチング・アンプで構成される。同図に示すスイッチング・アンプは、一対の電源端子b,b’の間に2つの同一タイプの半導体スイッチ素子Q
Bの直列回路を接続し、2つの半導体スイッチ素子Q
Bの接続点nと出力端子cとの間にフィルタ回路401を接続して出力回路が構成されている。フィルタ回路401は、コンデンサC
1とインダクタが直列接続された共振回路と、インダクタとコンデンサC
2がL型接続されたインピーダンス変換回路とを接続した回路である。なお、
図4のインダクタL2は、共振回路のインダクタとインピーダンス変換回路のインダクタを合成したものである。トランスTは、一次巻線に入力される高周波信号v
1(電圧信号)から一対の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を行う互いに極性が反転した2つの駆動信号v
1’,−v
1’を生成する。すなわち、トランスTは、一対の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を行うドライブ回路を構成している。
【0047】
一方の電源端子bにDC−DC変換部3から出力される直流電圧V
dcが入力され、他方の電源端子b’は接地されている。本実施形態では、他方の電源端子b’を接地しているが、DC−DC変換部3から出力される直流電圧V
dcの逆極性の電圧−V
dcを他方の電源端子b’に入力するようにしてもよい。一対の半導体スイッチ素子Q
BにはNチャネル型のMOSFETが用いられるが、バイポーラトランジスタ等の他の種類のトランジスを用いることができる。また、一対の半導体スイッチ素子Q
BをNチャネル型とPチャネル型を組み合わせたコンプリメンタリ型にしてもよい。この場合は、トランスT2を省いて高周波信号vをそれぞれNチャネル型のMOSFETとPチャネル型のMOSFETのゲートに入力してもよい。
【0048】
第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの各トランスT2の一次巻線に入力される高周波信号v
1,v
2は、RF電力制御部7で生成される。高周波信号v
1,v
2をv
1=A
1・sin(ω・t+φ
1)、v
2=A
2・sin(ω・t+φ
2)(ω=2・π・f)で表わすと、PWM信号S
PWMのパルス幅が半導体スイッチ素子Q
Aのオン最小時間T
min以上の場合は、φ
1=φ
2=0として両者の位相差が無い高周波信号v
1,v
2が第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bに入力されるが、PWM信号S
PWMのパルス幅を半導体スイッチ素子Q
Aのオン最小時間T
minにしても、検出電力P
o>目標電力P
cの場合は、第1のDC−RF変換部4Aにv
1=A・sin(ω・t)(φ
1=0)の高周波信号v
1が入力され、第2のDC−RF変換部4Bにv
2=A・sin(ω・t+θ)(φ
2=θ≠0)の高周波信号v
2が入力される。高周波信号v
1,v
2の生成方法については後述する。
【0049】
第1のDC−RF変換部4Aでは、高周波信号v
1=A・sin(ω・t)がトランスT2の一次巻線に入力されると、トランスT2の一方の二次巻線から同相の高周波信号v
1’=A’・sin(ω・t)が出力され、トランスT2の他方の二次巻線から逆相の高周波信号−v
1’=−A’・sin(ω・t)が出力される。同相の高周波信号v
1’は、一方の半導体スイッチ素子Q
B(
図4では上側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力され、逆相の高周波信号−v
1’は、他方の半導体スイッチ素子Q
B(
図4では下側の半導体スイッチ素子Q
B)に入力される。2つの半導体スイッチ素子Q
Bは、Nチャネル型MOSFETであるから、一方の半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波信号v
1’のハイレベル期間にオン動作をし、他方の半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波信号−v
1’のハイレベル期間にオン動作をする。すなわち、2つの半導体スイッチ素子Q
Bは、高周波信号v
1’の半周期毎に交互にオン・オフ動作を繰り返す。
【0050】
2つの半導体スイッチ素子Q
Bが交互にオン・オフ動作を繰り返すことによって接続点nの電圧はv
1’>0の期間に「V
dc」となり、v
1’≦0の期間に接地レベルとなるように矩形波状に変化し、その矩形波がフィルタ回路401で直流分とスイッチングノイズが除去されて出力端子c,c’から出力される。出力端子c,c’から出力される電圧v
1outは、高周波信号v
1の振幅を増幅した電圧である。出力電圧v
1outの振幅は、電源端子bに入力される直流電圧V
dcによって決まるから、DC−DC変換部3の出力電圧V
dcの変化に応じて出力電圧v
1outの振幅は変化する。
【0051】
第2のDC−RF変換部4Bでは、入力される高周波信号v
2が高周波信号v
1に対して位相差θを有する点が異なるだけで、上述した第1のDC−RF変換部4Aと同様の動作を行う。
【0052】
なお、本実施形態では、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bをハーフ・ブリッジ型のスイッチング・アンプで構成しているが、フル・ブリッジ型やプッシュ・プル型のスイッチング・アンプで構成してもよい。また、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bは、スイッチング・アンプに限定されず、A級、B級、C級、D級、E級等のアンプの方式も限定されることはない。
【0053】
RF合成部5は、DC−RF変換部4から出力される2つの電力P
1,P
2を合成する回路ブロックである。RF合成部5は、第1のDC−RF変換部4Aから出力される高周波電圧v
1outと第2のDC−RF変換部4Bから出力される高周波電圧v
2outとに位相差θ(=φ
2−φ
1≠0)があると、入力電力(P
1+P
2)のうち位相差θに応じた一部の電力P
Rを内部の抵抗Rで熱消費し、残りの電力P
out(=P
1+P
2−P
R)を出力する機能を有する。
【0054】
RF合成部5は、例えば、
図5に示す伝送トランスT3と抵抗Rとからなるハイブリッド回路によって構成される。ハイブリッド回路は、1つの出力ポートN
Sと2つの入力ポートN
A,N
Bを有し、ハイブリッド回路内の抵抗Rは、入力電力(P
1+P
2)のうち位相差θに応じた一部の電力P
Rを熱消費するための電力消費素子として機能する。高周波電源1の伝送系の特性インピーダンスを「R
o」(例えば、50[Ω])とすると、入力ポートN
A,N
BのインピーダンスR
A,R
Bと出力ポートN
SのインピーダンスR
Sと抵抗Rは、R
A=R
B=R
o、R=2・R
o、R
S=R
o/2の関係を満たすように設計されている。
【0055】
図5に示すように、第1のDC−RF変換部4Aの出力電圧v
1outは、入力ポートN
A,N
Bの一方のポートN
Aに入力され、第2のDC−RF変換部4Bの出力電圧v
2outは、他方のポートN
Bに入力され、出力ポートN
Sから出力電圧v
1outと出力電圧v
2outを合成した電圧v
outが出力される。
【0056】
出力ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」の場合(RF合成部5と負荷とがインピーダンス整合をしている場合)のRF合成部5の電力合成動作は、出力電圧v
1out,v
2outをそれぞれv
1out=V・sin(ω・t)、v
2out=V・sin(ω・t+θ)とすると、下記のようになる。
【0057】
抵抗Rの両端の電圧v
Rは、
v
R=v
1out−v
2out=V・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)] …(2)
であり、ポートN
A,N
Bから伝送トランスT2に流れ込む電流i
1,i
2と抵抗Rを流れる電流i
Rは、
i
1=v
1out/R
o=V・sin(ω・t)/R
o…(3)
i
2=v
2out/R
o=V・sin(ω・t+θ)/R
o…(4)
i
R=v
R/(2・R
o)=V・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(5)
である。
【0058】
従って、伝送トランスT1の一次巻線と二次巻線に流れる電流i
L1,i
L2は、
i
L1=i
1−i
R=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(6)
i
L2=i
2+i
R=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/(2・R
o)…(7)
で表わされ、出力ポートN
Sから出力される電流i
outと電圧v
outは、
i
out=i
L1+i
L2=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/R
o …(8)
v
out=i
out・(R
o/2)=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/2
=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)] …(9)
となる。
【0059】
出力ポートN
Sから出力される電力P
outと抵抗Rで消費される電力P
Rを求めると、
P
out=v
out2/(R
o/2)=2・v
out2/R
o
=V
2・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]
2/(2・R
o)…(10)
=2・[V・cos(θ/2)]
2・sin
2(ω・t+θ/2)/R
o…(10’)
P
R=v
R2/(2・R
o)
=V
2・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)]
2/(2・R
o)…(11)
=2・[V・sin(θ/2)]
2・cos
2(ω・t+θ/2)/R
o…(11’)
となる。
【0060】
入力ポートN
A,N
Bから入力される電力P
1,P
2は、P
1=V
2・sin
2(ω・t)/R
o、P
2=V
2・sin
2(ω・t+θ)/R
oであるから、RF合成部5に入力される電力P
inは、
P
in=P
1+P
2=V
2・[sin
2(ω・t)+sin
2(ω・t+θ)]/R
o
である。一方、RF合成部5から出力される電力P
outと抵抗Rで熱消費される電力P
Rの合計電力P
sumは、
P
sum=V
2・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]
2/(2・R
o)
+V
2・[sin(ω・t)−sin(ω・t+θ)]
2/(2・R
o)
=V
2・[sin
2(ω・t)+sin
2(ω・t+θ)]/R
o
であるから、P
in=P
sumである。
【0061】
従って、θ=0であれば、P
R=0より、入力電力P
inがそのままRF合成部5から出力され、θ≠0であれば、入力電力P
1,P
2を位相差θに応じた所定の割合η(θ)で合成した合成電力P
outRF合成部5から出力されることになる。
【0062】
位相差θに応じた所定の割合η(θ)は、(10’)式に示されるようにcos
2(θ/2)であり、この特性は、
図6の特性(イ)に示すようになる。位相差θをゼロから増加させると、電力の合成割合η(θ)は、cos
2(θ/2)の特性で単調に減少し、位相差θ=180[deg]でゼロになる。従って、位相差θをゼロから180[deg]の範囲で変化させることにより、RF合成部5から出力される電力P
outの大きさを制御することができる。
【0063】
なお、特性(イ)は、出力ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」の場合の例であるが、出力ポートN
Sに接続される負荷のインピーダンスが「R
o/2」と異なる場合でも位相差θをゼロから180[deg]の範囲で変化させることにより、RF合成部5から出力される電力P
outの大きさを制御することができる。
【0064】
RF合成部5に用いるハイブリッド回路は、
図5に示した回路構成に限られない。例えば、
図7に示す回路構成のハイブリッド回路をRF合成部5に用いることができる。
図7に示すハイブリッド回路は、伝送トランスT3の一次巻線と二次巻線の両端をそれぞれコンデンサC’で接続した回路構成を有し、一次巻線の両端と二次巻線の両端の4つの端子が不平衡の入出力端子となっている。RF合成部5として用いる場合は、一次巻線の一方の端子p1が合成電力の出力端子となり、一次巻線の他方の端子p2と二次巻線の一方の端子p3が入力端子となり、二次巻線の他方の端子p4は熱消費用の抵抗Rを接続する端子となる。
【0065】
図5に示す回路構成では位相差θが「0°」の場合は抵抗Rでの消費電力P
Rがゼロになったが、
図7に示す回路構成では、位相差θが「90°」の場合に抵抗Rでの消費電力P
Rがゼロになり、位相差θが「90°」からずれると、そのずれ分に応じた電力P
Rが抵抗Rで消費される。すなわち、
図7に示す回路構成の場合は、電力合成の割合η(θ)が
図5に示す回路構成に対して「90°」進むので、
図6の特性(ロ)に示すように、cos
2(θ/2+π/2)=sin
2(θ/2)の特性になる。
【0066】
RF合成部5は、ハイブリッド回路と同様の機能を果たすものであれば、他の回路であってもよい。例えば、特開2008−28923号公報に記載の高周波電力合成器や実開平4−48715号公報に記載の出力合成回路を用いることができる。
【0067】
RF検出部6は、RF合成部5から負荷(プラズマ処理装置)に向かう進行波電力P
fと負荷(プラズマ処理装置)側から戻ってくる反射波電力P
rを検出する機能を有する。そして、進行波電力P
fの検出値を進行波電力P
oとして検出する。または、進行波電力P
fの検出値から反射波電力P
rの検出値を減算した負荷側電力P
loadの検出値を検出電力P
o(=P
f−P
r)として出力する。検出電力P
oはRF電力制御部7に入力される。進行波電力P
fの検出値を検出電力P
oとするか、負荷側電力P
loadの検出値を検出電力P
oとするかは、予め定めておく。本実施形態では、進行波電力P
fの検出値を検出電力P
oとして出力する例を示す。なお、進行波電力P
fの検出値を検出電力P
oとして出力する場合は、反射波電力P
rを検出する機能を有しなくてもよい。
【0068】
従って、RF電力制御部7は、RF検出部6から検出電力P
oとして出力される進行波電力P
fが制御目標の電力P
c(以下、「目標電力P
c」という。)に一致するように、DC-DC変換部3のPWM信号S
PWMのパルス幅とDC-RF変換部4から出力される高周波電圧v
1out,v
2outの位相差θを制御する。目標電力P
cは、予め設定されている出力電力のプロファイルに基づいてプラズマ処理中にRF電力制御部7に設定される。
【0069】
RF電力制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えるマイクロコンピュータによって構成される。CPUがROMに記憶された所定の制御プログラムを実行することにより、PWM信号S
PWMのパルス幅と高周波電圧v
1out,v
2outの位相差θが制御される。
【0070】
ここで、RF電力制御部7による高周波電源1の出力制御について説明する。
【0071】
負荷インピーダンスZ
L(プラズマ処理装置のインピーダンス)の値は、一定ではなく、プロセスの進行に伴い変動する。負荷インピーダンスZ
Lが変動すると、フィルタ回路401を構成する素子や配線における電圧降下の度合いが変動するため、仮にDC−RF変換部4の2つの半導体スイッチ素子Q
Bの接続点nにおける電圧値(矩形波なので平均値などで表した電圧値)が一定であっても、DC−RF変換部4の出力端における電圧値が変動する。そのため、DC−RF変換部4から出力される2つの電力P
1,P
2も変動する。従って、第1の出力制御だけでRF合成部5の出力電力P
outを制御した場合、出力電力P
outの制御範囲は負荷インピーダンスZ
Lの値によって異なる。
【0072】
図8は、高周波電源に接続される負荷のインピーダンスが変動した場合のDC−DCコンバータの出力電流と出力電圧の関係をシミュレーションした一例である。シミュレーションは、
図1の回路構成でDC−RF変換部4には同相の高周波信号v
1,v
2を入力し、DC−DC変換部3に入力するPWM信号S
PWMのパルス幅を変化させてRF検出部6の検出電力P
oを目標電力P
cに一致させる制御(第1の出力制御)をした場合のDC−DC変換部3の出力電圧V
dcと出力電流I
dcを、負荷に接続するA〜Iの負荷インピーダンスについて調べたものである。
【0073】
A〜Iの負荷インピーダンスは、
図8に示すスミスチャート上の点A〜Iにプロットされるインピーダンスで、高周波電源1の出力インピーダンス(特性インピーダンスR
o)に対して、(反射係数Γ,位相ψ[deg])がA=(0.00,不定)、B=(0.99,±180),C=(0.99,+135),D=(0.99,+90),E=(0.99,+45),F=(0.99,±0),G=(0.99,−45),H=(0.99,−90),I=(0.99,−135)となるインピーダンスである。
【0074】
各特性曲線に付した符号A〜Iは、上記の負荷インピーダンスA〜Iに対応している。特性曲線Aは、負荷インピーダンスが高周波電源1の出力インピーダンスと整合している場合のシミュレーション結果で、目標電力P
cを減少させるのに応じてPWM信号S
PWMのパルス幅を減少させると、DC−DC変換部3の出力電圧V
dcと出力電流I
dcが特性曲線Aの右端から当該特性曲線Aに沿って変化することを示している。
【0075】
特性曲線Aの左端は、PWM信号S
PWMのパルス幅がオン最小時間T
minになる点である。PWM信号S
PWMのパルス幅はオン最小時間T
minよりも小さく制御できないので、特性曲線Aの左端(「●」の点)より左側の領域は、第1の出力制御では出力制御ができない領域である。特性曲線Aの左端に付した数値「100」は、PWM信号S
PWMのパルス幅をオン最小時間T
minに設定したときに高周波電源1から負荷に出力される出力電力P
out[W]を示している。特性曲線B〜Iについても同様である。
【0076】
同図に示されるように、第1の出力制御ではPWM信号S
PWMのパルス幅がオン最小時間T
minに制限されたときに高周波電源1が出力可能な出力電力P
outは、負荷インピーダンスの値によって異なることが分かる。同図のシミュレーション結果によれば、負荷インピーダンスB〜Iはいずれも全反射負荷であるが、負荷インピーダンスB,Cでは出力電力P
outを100[W]以下に制御することができるのに対し、負荷インピーダンスE〜Hでは出力電力P
outを370[W]以下に制御することはできない。このため、例えば、負荷インピーダンスがスミスチャート上のB,Cの辺りにあり、高周波電源1の出力電力P
outが第1の出力制御によって200[W]の目標電力P
cに制御できていても負荷インピーダンスがスミスチャート上のE〜Iの辺りに急変すると、第1の出力制御では高周波電源1の出力電力P
outを目標電力P
cに制御できない状態が生じる。
【0077】
そこで、本実施形態に係る高周波電源1では、目標電力P
cに対するRF検出部6の検出電力P
o(出力電力P
outの検出値)の偏差E(=P
c−P
o)に基づいてPWM信号S
PWMのパルス幅を操作する制御値C
oを設定し、その制御値C
oによって決定されるパルス幅がオン最小時間T
minよりも小さくなる場合は、PWM信号S
PWMのパルス幅をオン最小時間T
minに固定し、DC−RF変換部4への2つの高周波信号v
1,v
2の相互の位相差θを変化させる制御に切り換えて検出電力P
oが目標電力P
cに一致するように制御する。すなわち、第1の出力制御を第2の出力制御に切り換えて負荷への出力電力P
outを目標電力P
cに制御する。
【0078】
RF電力制御部7には、上記の出力制御をするために、偏差演算部701、制御値演算部702、制御指令値出力部703、第1の制御信号生成部704及び第2の制御信号生成部705が含まれる。
【0079】
偏差演算部701には所定の出力電力のプロファイルに基づいて目標電力P
cが設定される。偏差演算部701は、目標電力P
cに対するRF検出部6の検出電力P
oの偏差E=P
c−P
oを演算する。
【0080】
制御値演算部702は、偏差演算部701で演算された偏差Eに対してPI補償演算を行って制御値C
oを演算する。制御指令値出力部703は、第1制御指令値C
S1と第2制御指令値C
S2を生成し、第1制御指令値C
S1を第1の制御信号生成部704に出力し、第2制御指令値C
S2を第2の制御信号生成部705に出力する。制御指令値出力部703には、第1の出力制御と第2の出力制御を切り換えるための閾値C
thが入力される。
【0081】
閾値C
thは、第1の制御信号生成部704で生成されるPWM信号S
PWMのパルス幅がオン最小時間T
minとなる値である。本実施形態では、後述するように、第1の制御信号生成部704で鋸波のキャリア信号S
Cと制御値C
oのレベルを比較し、S
C≦C
oの期間をパルス幅とするPWM信号S
PWMを生成するので、閾値C
thは、PWM信号S
PWMのパルス幅がオン最小時間T
minとなる制御値C
oのレベルである。
【0082】
制御指令値出力部703は、制御値C
oと閾値C
thを比較し、C
th<C
oであれば、第1の出力制御で検出電力P
oの制御が可能と判断し、制御値C
oを第1制御指令値C
S1に設定して第1の制御信号生成部704に出力するとともに、「ゼロ」を第2制御指令値C
S2に設定して第2の制御信号生成部705に出力する。一方、C
o≦C
thであれば、第2の出力制御に切り換えなければ検出電力P
oの制御が不可と判断し、閾値C
thを第1制御指令値C
S1に設定して第1の制御信号生成部704に出力し、閾値C
thと制御値C
oの差分に所定のゲインβを乗じた値(β×(C
th−C
o))を第2制御指令値C
S2に設定して第2の制御信号生成部705に出力する。
【0083】
第1の制御信号生成部704は、三角波比較法によりDC−DC変換部3の駆動を制御するPWM信号S
PWMを生成し、そのPWM信号S
PWMをDC−DC変換部3に出力する。第2の制御信号生成部705は、第1のDC−RF変換部4A内の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を制御する高周波信号v
1と第2のDC−RF変換部4B内の半導体スイッチ素子Q
Bの駆動を制御する高周波信号v
2を生成し、高周波信号v
1を第1のDC−RF変換部4Aに出力し、高周波信号v
2を第2のDC−RF変換部4Bに出力する。
【0084】
図9は、第1の制御信号生成部704の内部構成とPWM信号の生成方法を示す図であり、
図10は、第2の制御信号生成部705の内部構成と高周波信号の生成方法を示す図である。
【0085】
第1の制御信号生成部704には、例えば、鋸波のキャリア信号S
cを発生するキャリア信号発生回路704aと、そのキャリア信号S
cと制御指令値出力部703から入力される第1制御指令値C
S1のレベルを比較してS
c≦C
S1の期間をパルス幅T
ONとするPWM信号S
PWMを生成するPWM信号生成回路704bとが含まれる。キャリア信号発生回路704aは、例えば、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザー(Direct Digital Synthesizer)で構成される。
【0086】
キャリア信号発生回路704aは、
図9(b)に示すように、[n・T〜(n+1)・T](T:周期、n=0,1,2,…)の波形がα・t(α:係数)で表わされるキャリア信号S
cを生成する。従って、PWM信号生成回路704bで生成されるPWM信号S
PWMのパルス幅T
ONは、T
ON=C
S1/αで表わされる。C
th<C
oでは、第1制御指令値C
S1は制御値C
oに設定され、その制御値C
oは偏差Eによって変動するから、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ON=C
o/αは偏差Eの変動に応じて変化するが、C
o≦C
thでは、第1制御指令値C
S1は閾値C
thに固定されるから、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONはT
min=C
th/αに固定される。
【0087】
第1制御指令値C
S1は、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONがオン最小時間T
minとなる閾値C
thよりも大きい値であるから、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONは、オン最小時間T
minより小さい値に設定されることはない。このため、DC−DC変換部3は安定出力可能な範囲で出力電圧V
dcが制御される。
【0088】
第2の制御信号生成部705には、正弦波の高周波信号v
1を発生する第1の正弦波発生回路705aと、制御指令値出力部703から入力される第2制御指令値C
S2を用いて高周波信号v
1に対して位相差θを有する正弦波の高周波信号v
2を発生する第2の正弦波発生回路705bとが含まれる。第1の正弦波発生回路705a及び第2の正弦波発生回路705bもダイレクト・ディジタル・シンセサイザー(Direct Digital Synthesizer)で構成される。
【0089】
第1の正弦波発生回路705aには、高周波信号v
1の振幅A、周波数f及び初期位相φ
1の情報が入力される。これらの情報は予め設定された固定の情報で、周波数fは、上述したようにプラズマ処理システムに規定された2.0MHz、13.56MHz、40.68MHz等の周波数である。初期位相φ
1は任意の値に設定可能であるが、本実施形態では、「0」に設定される。第2の正弦波発生回路705bにも高周波信号v
2の振幅A、周波数f及び初期位相φ
2の情報が入力されるが、θ=φ
2−φ
1、φ
1=0より、制御指令値出力部703から出力される第2制御指令値C
S2が初期位相φ
2=θの情報として入力される。φ
1≠0に設定した場合は、制御指令値出力部703から出力される第2制御指令値C
S2に初期位相φ
1を加算した値(C
S2+φ
1)が初期位相φ
2の情報として入力される。振幅A及び周波数fの情報は、第1の正弦波発生回路705aに入力される振幅A及び周波数fの情報と同一である。
【0090】
第1の正弦波発生回路705aは、振幅A、周波数f及び初期位相φ
1の情報を用いてA・sin(2πf・t)で表わされる高周波信号v
1(
図10(b)のv
1参照)を生成する。同様に、第2の正弦波発生回路705bは、振幅A、周波数f及び第2制御指令値C
S2の情報を用いてA・sin(2πf・t+θ)(θ=C
S2=β×(C
th−C
o))で表わされる高周波信号v
2(
図10(b)のv
2参照)を生成する。
【0091】
次に、RF電力制御部7による高周波電源1の検出電力P
oの制御動作について、
図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0092】
図11に示すフローチャートは、高周波電源1にプラズマ処理装置を接続したプラズマ処理システムのプラズマ処理中におけるRF電力制御部7の制御手順を示すフローチャートである。RF電力制御部7は、予め設定された周期で
図11に示す処理手順を繰り返し行う。
【0093】
RF電力制御部7は、プラズマ処理用に予め設定された出力電力のプロファイルに基づいて目標電力P
cを設定する(S1)。出力電力のプロファイルは、プラズマ処理システムの作業者によってプラズマ処理の処理内容毎に作成される。続いて、RF電力制御部7は、RF検出部6で検出される検出電力P
oを読み込み(S2)、目標電力P
cに対する検出電力P
oの偏差E=P
c−P
oを演算する(S3)。
【0094】
続いて、RF電力制御部7は、演算した偏差Eに所定のPI補償演算を行って制御値C
oを算出するとともに(S4)、予め設定された閾値C
thを読み込み(S5)、制御値C
oと閾値C
thを比較する(S6)。RF電力制御部7は、C
th<C
oであれば(S6:NO)、第1制御指令値C
S1に制御値C
oを設定し(S7)、第2制御指令値C
S2に「0」を設定して(S8)、ステップS11に移行する。一方、C
o≦C
thであれば(S6:YES)、RF電力制御部7は、第1制御指令値C
S1に閾値C
thを設定し(S9)、第2制御指令値C
S2に閾値C
thと制御値C
oの差分にゲインβを乗じた値(β×(C
th−C
o))を設定して(S10)、ステップS11に移行する。
【0095】
RF電力制御部7は、ステップS11に移行すると、第1制御指令値C
S1を第1の制御信号生成部704に出力するとともに第2制御指令値C
S2を第2の制御信号生成部705に出力してPWM信号S
PWMと高周波信号v
1,v
2を生成する。すなわち、RF電力制御部7は、キャリア信号S
cの瞬時値α・tを生成し、その瞬時値と第1制御指令値C
S1とを比較してS
c≦C
S1のときはハイレベルとなり、C
S1<S
cのときはローレベルとなるPWM信号S
PWMを生成する。また、RF電力制御部7は、振幅A、周波数f及び初期位相φ
1=0の情報を用いて高周波信号v
1=A・sin(2πf・t)の瞬時値を生成するとともに、振幅A、周波数f及び第2制御指令値C
S2の情報を用いて高周波信号v
1=A・sin(2πf・t+C
S2)=A・sin(2πf・t+β×(C
th−C
o))の瞬時値を生成する。
【0096】
そして、RF電力制御部7は、PWM信号S
PWMをDC−DC変換部3に出力し、高周波信号v
1と高周波信号v
2をそれぞれ第1のDC−RF変換部4aと第2のDC−RF変換部4Bに出力してステップS1に戻る。
【0097】
上記の出力電力の制御では、C
th<C
oであれば、DC−DC変換部3には制御値C
oとキャリア信号S
cのレベル比較によって生成されたPWM信号S
PWMが入力される。また、第1のDC−RF変換部4Aと第2のDC−RF変換部4Bには同相(位相差θ=0)の高周波信号v
1=v
2=A・sin(2πf・t)が入力される。RF合成部5には同相の出力電圧v
1out,v
2outが入力されるから、RF合成部5では出力電力P
1,P
2がそのまま合成されてプラズマ処理装置に出力される。
【0098】
一方、C
o≦C
thであれば、DC−DC変換部3には閾値C
Sとキャリア信号S
cのレベル比較によって生成されたPWM信号S
PWM(パルス幅T
ONがオン最小時間T
minに固定されたPWM信号S
PWM)が入力される。また、第1のDC−RF変換部4Aと第2のDC−RF変換部4Bには位相差θのある高周波信号v
1==A・sin(2πf・t)、v
2=A・sin(2πf・t+θ)が入力される。RF合成部5に位相差θのある出力電圧v
1out,v
2outが入力されと、RF合成部5では出力電力P
1,P
2がその位相差θに応じた1より小さい合成割合ηで合成されてプラズマ処理装置に出力される。
【0099】
従って、C
th<C
oでは、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONは、オン最小時間T
min以上の値となるから、第1の出力制御によって検出電力P
oが目標電力P
cに制御され、C
o≦C
thになると、第2の出力制御によって検出電力P
oが目標電力P
cに制御される。
【0100】
プラズマ処理システムでは、プラズマ処理中にプラズマ処理装置のインピーダンスが変動するため、第1の出力制御だけでは検出電力P
oを目標電力P
cに制御できない状態が容易に生じ得るが、本実施形態によれば、第1の出力制御では制御できなくなると、第2の出力制御に切り換えるので、プラズマ処理装置のインピーダンスが変動しても検出電力P
oの制御を安定して好適に行うことができる。
【0101】
また、
図8に示したように、第1の出力制御では出力制御ができない領域は高周波電源1に対する負荷インピーダンスによって変化するが、本実施形態によれば、プラズマ処理装置のインピーダンスが変動しても(負荷インピーダンスが変動しても)、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONがオン最小時間T
min以上となる場合は、第2の出力制御を行わず、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONがオン最小時間T
minより小さくなる場合にだけ第2の出力制御に切り換えるので、RF合成部5で不必要に電力ロスをすることがない。
【0102】
例えば、DC−DC変換部3が
図8に示す出力特性を有している場合、プラズマ処理中におけるプラズマ処理装置のインピーダンスの変動の影響を受けないようにするために、第1の出力制御から第2の出力制御に切り換える切換制御を、本実施形態とは異なり、例えば、目標電力P
cが400[W]より小さくなる場合に行うようにしたとする。この切換制御では、
図12に示すように、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONをオン最小時間T
minに制御したときの出力電力P
minが400[W]以下となる場合でも出力電力P
minから400Wの領域Wでは第2の出力制御が行われるため、RF合成部5でDC−RF変換部4から出力される電力の一部を不必要に熱消費させることになる。本実施形態では、領域Wでも第1の出力制御をするので、RF合成部5で無駄に熱損失を生じさせることがない。
【0103】
上記実施形態では、PWM信号S
PWMを三角波比較法により生成していたので、キャリア信号S
cとレベル比較をする制御値C
oによって第1の出力制御と第2の出力制御の切換を制御していたが、PWM信号S
PWMのパルス幅T
ONに、オン最小時間T
minに対応する閾値T
thを設け、
図11のステップS4〜S6で直接パルス幅T
ONの制御値T
oを演算し、その制御値T
oを閾値T
thと比較するようにしてもよい。或いは、PWM信号S
PWMのデューティ比Dに、オン最小時間T
minのデューティ比D
minに対応する閾値D
thを設け、
図11のステップS4〜S6でデューティ比Dの制御値D
oを演算し、その制御値D
oを閾値D
thと比較するようにしてもよい。
【0104】
上記実施形態では、DC−RF変換部4として同一構成の第1のDC−RF変換部4Aと第2のDC―RF変換部4Bを設け、両DC−RF変換部4A,4Bの出力電力P
1,P
2をRF合成部5で合成する構成としていたが、3個以上のDC−RF変換部を設け、各DC−RF変換部の出力電力を合成する構成にしてもよい。
【0105】
図13,
図14は、高周波生成部U’に同一構成の3個のDC−RF変換部を設ける場合のDC−RF変換部4’とRF合成部5’の回路構成を示す図である。DC−RF変換部4’には第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bと同一構成の第3のDC−RF変換部4Cが追加され、RF合成部5’にはRF合成部5と同一構成の第1のRF合成部5Aと第2のRF合成部5Bが設けられている。
【0106】
図13,
図14の回路構成は、
図1に示すDC−RF変換部4とRF合成部5に第3のDC−RF変換部4Cと第2のRF合成部5Bを追加し、RF合成部5の出力電力と第3のDC−RF変換部4Cの出力電力を第2のRF合成部5Bで合成する構成と見ることができる。
【0107】
同一構成の3個のDC−RF変換部を設ける場合の第2の出力制御は、DC−RF変換部4’内の第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの出力電圧v
1out,v
2outを位相差θ=0で駆動し、第3のDC−RF変換部4Cの出力電圧v
3outを出力電圧v
1out,v
2outに対して位相差θを設けて駆動するように制御する第1の位相差制御方法と、第2のDC−RF変換部4Bの出力電圧v
2outを第1のDC−RF変換部4Aの出力電圧v
1outに対して位相差θ
1を設けて駆動し、第3のDC−RF変換部4Cの出力電圧v
3outを第1のRF合成部5Aの出力電圧v
4outに対して位相差θ
2を設けて駆動するように制御する第2の位相差制御方法が考えられる。
【0108】
図13は、第1の位相差制御方法で第2の出力制御を行う場合のDC−RF変換部4’とRF合成部5’の回路構成を示し、
図14は、第2の位相差制御方法で第2の出力制御を行う場合のDC−RF変換部4’とRF合成部5’の回路構成を示している。
【0109】
図13に示す第1の位相差制御方法は、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bと第1のRF合成部5Aの部分を等価な1つのDC−RF変換部に置き換えることができるので、第2の出力制御での位相差θの制御内容は上述した位相差θの制御内容と実質的に同じとなる。すなわち、第1のRF合成部5Aは第1のDC−RF変換部4Aの出力電力P
1と第2のDC−RF変換部4Bの出力電力P
2をそのまま合成する機能を果たし、第2のRF合成部5Bが負荷への出力電力P
outを位相差θに応じて調整する機能を果たす。
【0110】
第1,第2,第3のDC−RF変換部4A,4B,4Cに入力する高周波信号v
1,v
2,v
3の波形をv
1=A
1・sin(ω・t+φ
1)、v
2=A
2・sin(ω・t+φ
2)、v
3=A
3・sin(ω・t+φ
3)とすると、
図13に示す第1の位相差制御方法では、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bに、例えば、v
A=A・sin(ω・t)(A
1=A
2=A、φ
1=φ
2=0)の高周波信号が入力される。
【0111】
RF合成部5A,5Bの入力ポートと出力ポートが整合しているとすると、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの出力電圧v
1out,v
2outは、v
1out=v
2out=V・sin(ω・t)で表されるから、第1のRF合成部5Aの出力電圧v
4outは、(9)式より、
v
4out=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t)]/2
=V・sin(ω・t)
で表される。従って、第3のDC−RF変換部4Cにv
B=A・sin(ω・t+θ)(A
3=A、φ
3=θ)の高周波信号を入力し、第3のDC−RF変換部4Cからv
3out=V・sin(ω・t+θ)を出力させると、第2のRF合成部5Bから、
v
out=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t+θ)]/2
=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)
の出力電圧v
outが出力される。
【0112】
第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの出力電力P
1,P
2は第1のRF合成部5Aで熱消費されることなく合成されるから、第1のRF合成部5Aから(P
1+P
2)の電力P
4が出力されるが、第2のRF合成部5Bではその出力電力P
4と第3のDC−RF変換部4Cの出力電力P
3が(10’)式に示す合成式により合成され、
P
out=2・[V・cos(θ/2)]
2・sin
2(ω・t+θ/2)/R
o
で表される電力P
outが出力される。
【0113】
従って、
図13に示す回路構成では、第2の出力制御において、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bの出力電力P
1,P
2の合計電力P
4=(P
1+P
2)と第3のDC−RF変換部4Cの出力電力P
3との合成量を位相差θによって調整することにより、負荷への出力電力P
outが制御される。
【0114】
一方、
図14に示す第2の位相差制御方法は、第1のRF合成部5Aと第2のRF合成部5Bの両方で負荷への出力電力P
outが調整される。第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bにそれぞれv
A=A・sin(ω・t)(φ
1=0)とv
B=A・sin(ω・t+θ)(φ
2=θ)の高周波信号を入力し、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bからそれぞれ出力電圧V
1out=V・sin(ω・t)、V
2out=V・sin(ω・t+θ)が出力されるとすると、第1のRF合成部5Aの出力電圧V
4outは、(9)式より
V
4out=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)
で表される。
【0115】
第3のDC−RF変換部4Cに位相差θに応じて振幅A
3を調整したv
C=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2+ψ)(A
3=V・cos(θ/2)、φ
3=θ/2+ψ)の高周波信号を入力し、第3のDC−RF変換部4CからV・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2+ψ)の出力電圧v
3outを出力させるように制御すれば、第2のRF合成部5Bから
v
out=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2+ψ/2)
で表される出力電圧v
outが出力され、
P
out=2・[V・cos(θ/2)・cos(ψ/2)]
2・sin
2(ω・t+θ/2+ψ/2)/R
o
で表される出力電力P
outが出力される。
【0116】
従って、
図14に示す第2の位相差制御方法では、第2の出力制御において、位相差θに基づく第1のRF合成部5Aでの出力電力P
1と出力電力P
2の合成量と位相差ψに基づく第2のRF合成部5Bでの出力電力P
4と出力電力P
3の合成量を調整することにより負荷への出力電力P
outが制御される。
【0117】
図15,
図16は、高周波生成部U”に同一構成の4個のDC−RF変換部を設ける場合のDC−RF変換部4”とRF合成部5”の回路構成を示す図である。DC−RF変換部4”には第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bと同一構成の第3のDC−RF変換部4Cと第4のDC−RF変換部4Dが追加され、RF合成部5”にはRF合成部5と同一構成の第1のRF合成部5Aと第2のRF合成部5Bと第3のRF合成部5Cが設けられている。
【0118】
RF合成部5”内の第1のRF合成部5Aは、DC−RF変換部4”内の第1のDC−RF変換部4Aの出力電力P
1と第2のDC−RF変換部4Bの出力電力P
2を合成し、第2のRF合成部5Bは、DC−RF変換部4”内の第3のDC−RF変換部4Cの出力電力P
3と第4のDC−RF変換部4Dの出力電力P
4を合成する。また、RF合成部5”内の第3のRF合成部5Cは、第1のRF合成部5Aの出力電力P
5と第2のRF合成部5Bの出力電力P
6を合成する。
【0119】
同一構成の4個のDC−RF変換部を設ける場合の第2の出力制御でも2つの位相差制御方法が考えられる。第1の位相差制御方法は、第1のDC−RF変換部4Aの出力電圧v
1outと第2のDC−RF変換部4Bの出力電圧v
2outとの間に位相差θ
1を設けるとともに、第3のDC−RF変換部4Cの出力電圧v
3outと第4のDC−RF変換部4Dの出力電圧v
4outとの間に位相差θ
2を設け、その位相差θ
2を制御して第2の出力制御における負荷への出力電力P
outを制御する方法である。第1の位相差制御方法は、
図1に示すDC−RF変換部4とRF合成部5の構成を2つ設け、両構成から出力される2つの電力P
outを第3のRF合成部5Cで合成する方法に相当する。
【0120】
図15は、第1の位相差制御方法で第2の出力制御を行う場合のDC−RF変換部4”とRF合成部5”の回路構成を示している。
図15では、制御を簡単にするため、第1乃至第4のDC−RF変換部4A,4B,4C,4Dに入力する高周波信号v
1,v
2,v
3,v
4の波形をv
A=A・sin(ω・t)(A
1=A,φ
1=0)、v
B=A・sin(ω・t+θ)(A
2=A,φ
2=θ)、v
A=A・sin(ω・t)(A
3=A,φ
3=0)、v
B=A・sin(ω・t+θ)(A
4=A,φ
4=θ)としている。
【0121】
図15に示す回路構成では、第2の出力制御において、第1のRF合成部5Aで第1のDC−RF変換部4Aの出力電力P
1と第2のDC−RF変換部4Bの出力電力P
2とが位相差θに基づく所定の割合で合成され、第2のRF合成部5Bで第3のDC−RF変換部4Cの出力電力P
3と第4のDC−RF変換部4Dの出力電力P
4とが位相差θに基づく所定の割合で合成される。
【0122】
RF合成部5A,5B,5Cの入力ポートが整合しているとすると、第1のRF合成部5Aの出力電力P
5と第2のRF合成部5Bの出力電力P
6は、(10’)式より
P
5=P
6=2・V
2・cos
2(θ/2)・sin
2(ω・t+θ/2)/R
o
で表される。そして、第3のRF合成部5Cでは出力電力P
5と出力電力P
6が熱消費されることなく合成されるから、第3のRF合成部5Cからは、
P
out=P
5+P
6=4・V
2・cos
2(θ/2)・sin
2(ω・t+θ/2)/R
o
の出力電力P
outが負荷に出力される。
【0123】
図15に示す回路構成では、位相差θによって出力電力P
1,P
2の合成量が調整され、位相差θによって出力電力P
3,P
4の合成量が調整されるので、きめ細かい制御が可能になる。
【0124】
第2の位相差制御方法は、第1のDC−RF変換部4Aの出力電圧v
1outと第2のDC−RF変換部4Bの出力電圧v
2outを同一の位相で制御し、第3のDC−RF変換部4Cの出力電圧v
3outと第4のDC−RF変換部4Dの出力電圧v
4outを同一の位相で制御し、第1のRF合成部5Aの出力電圧v
5outと第2のRF合成部5Bの出力電圧v
6outとの間に位相差θを設ける方法である。
【0125】
図16は、第2の位相差制御方法で第2の出力制御を行う場合のDC−RF変換部4”とRF合成部5”の回路構成を示している。
図16に示す回路構成では、第2の出力制御において、第1のRF合成部5Aで第1のDC−RF変換部4Aの出力電力P
1と第2のDC−RF変換部4Bの出力電力P
2とがそのまま合成され、第2のRF合成部5Bで第3のDC−RF変換部4Cの出力電力P
3と第4のDC−RF変換部4Dの出力電力P
4とがそのまま合成される。そして、第3のRF合成部5Cで第1のRF合成部5Aの出力電力P
5と第2のRF合成部5Bの出力電力P
6とが位相差θに基づく所定の割合で合成される。
【0126】
例えば、第1,第2のDC−RF変換部4A,4Bに入力する高周波信号v
1,v
2の波形をv
A=A・sin(ω・t)(A
1=A
2=A,φ
1=φ
2=0)とすると、第1のRF合成部5Aの出力電圧v
5outは、
v
5out=V・[sin(ω・t)+sin(ω・t)]/2
=V・sin(ω・t)
で表される。また、第3,第4のDC−RF変換部4C,4Dに入力する高周波信号v
3,v
4の波形をv
B=A・sin(ω・t+θ)(A
3=A
4=A,φ
3=φ
4=θ)とすると、第2のRF合成部5Bの出力電圧v
6outは、
v
6out=V・[sin(ω・t+θ)+sin(ω・t+θ)]/2
=V・sin(ω・t+θ)
で表される。
【0127】
従って、第3のRF合成部5Cからは、(9)式より、
v
out=V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)]
の出力電圧v
outが出力され、(10’)式より、
P
out=2・[V・cos(θ/2)]
2・sin
2(ω・t+θ/2)/R
o
の出力電力v
outが負荷に出力される。
【0128】
図16に示す回路構成では、位相差θだけで第1のRF合成部5Aの出力電力P
5(=P
1+P
2)と第2のRF合成部5Bの出力電力P
6(=P
3+P
4)の合成量が調整されるので、合成量の調整が簡単になる。
【0129】
図1に示した実施形態では、第1のDC−RF変換部4Aの出力電圧v
1outの初期位相φ
1を固定し、第2のDC−RF変換部4Bの出力電圧v
2outの初期位相φ
2を変化させることによって位相差θ=φ
2−φ
1を変化させるようにしたが、初期位相φ
2を固定し、初期位相φ
1を変化させることによって位相差θ=φ
2−φ
1を変化させるようにしてもよい。また、初期位相φ
1,φ
2の両方を変化させることによって位相差θ=φ
2−φ
1を変化させるようにしてもよい。
【0130】
初期位相φ
1を固定し、初期位相φ
2を変化させる方法では、RF合成部5の出力電圧v
outは(9)式より2・V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)で表わされるので、出力電圧v
outの位相(ω・t+θ/2)も変化することになるが、初期位相φ
1,φ
2の両方を変化させて位相差θ=φ
2−φ
1を変化させる方法では、出力電圧v
outの位相が位相差θの影響を受けないようにさせることができる利点がある。
【0131】
すなわち、
v
out=2・V・cos(θ/2)・sin(ω・t+θ/2)
=2・V・cos[(φ
1−φ
2)/2]・sin[ω・t+(φ
1−φ
2)/2]
であるから、出力電圧v
1,v
2の初期位相φ
1,φ
2を互いに逆方向に同一の大きさで変化させると、φ
1=−φ
2、θ=φ
1−φ
2=2・φ
1となり、v
out=2・V・cos(φ
1)・sin(ω・t)となるから、出力電圧v
outの位相を位相差θ=φ
2−φ
1の影響を受けないようにすることができる。
【0132】
上記実施形態では、RF合成部5が2つのRF電力を合成する回路構成の場合について説明したが、RF合成部5を3つ以上のRF電力を合成する回路で構成してもよい。3つ以上のRF電力を合成する回路としては、例えば、
図17に示す回路を用いることができる。
【0133】
例えば、
図17(b)の電力合成回路を用いて3つのRF電力を合成する場合、入力端子1,2,3にそれぞれ入力される入力電圧v
a,v
b,v
cをv
a=A・sin(ω・t+φ
a)、v
b=B・sin(ω・t+φ
b)、v
c=C・sin(ω・t+φ
c)、実効値をV
arms,V
brms,V
crmsとすると、電力合成回路には、入力電力P
a=V
arms2/R、P
b=V
brms2/R、P
c=V
crms2/Rが入力される。v
a=v
b=v
cでなければ、回路内の3個の抵抗Rには差分電圧v
ab=v
a−v
b、v
bc=v
b−v
c、v
ca=v
c−v
aがそれぞれ生じるので、差分電圧v
ab、v
bc、v
caの実効値をV
abrms、V
bcrms、V
carmsとすると、3つの抵抗RでそれぞれP
ab=V
abrms2/R、P
bc=V
bcrms2/R、P
ca=V
carms2/Rの電力が熱消費される。
【0134】
従って、入力電圧v
a,v
b,v
cの間で相互に位相差θ
ab,θ
bc,θ
caを設けることにより、電力合成回路から入力電力P
in=P
a+P
b+P
cの一部の電力(P
ab+P
bc+P
ca)を熱消費させ、残りの電力P
in−(P
ab+P
bc+P
ca)を負荷に出力させることができる。4つ以上のRF電力を入力する場合についても同様である。
【0135】
上記実施形態では、高周波電源1に負荷としてプラズマ処理装置を接続したプラズマ処理システムを例に高周波電源1の出力制御を説明したが、本発明は、
図18に示すように、高周波電源1とプラズマ処理装置8との間にインピーダンス整合装置9を設けた場合にも適用することができる。
【0136】
インピーダンス整合装置9を設ける場合は、プラズマ処理装置8のインピーダンス(負荷インピーダンス)が変動してもインピーダンス整合装置9によって高周波電源1とプラズマ処理装置8とのインピーダンス整合が行われるが、インピーダンス整合装置9がインピーダンス整合処理をしている過渡的な期間は不整合状態であるから、インピーダンス整合装置9を備えたプラズマ処理システムでも本発明に係る高周波電源1の出力制御方法は、有効である。