【課題】圧力センサアレイが形成されたセンサチップを動脈が通る被測定部位に押しつけて、非観血式に脈波を検出する脈波検出装置であって、動脈の血管壁の外向き部分を精度良く平坦化できるものを提供する。
【解決手段】センサチップは、X方向に細長く延在する形状をもち、動脈に対して交差して配置される基板10を備える。基板10に、X方向に沿って並ぶ複数の圧力センサ素子41からなる圧力センサアレイ40が形成されている。基板10上で圧力センサアレイ40の端部に対向する領域に、複数の圧力センサ素子41の出力をチップ外へ取り出すための電極端子アレイ50Bが形成されている。基板10上で圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bは、電極端子が存在しない平坦面になっている。
【背景技術】
【0002】
この種の脈波検出装置としては、例えば特許文献1(特開2011−239840号公報)に示すように、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって圧力センサ(歪みセンサ)アレイが形成されたセンサチップを動脈が通る被測定部位に押しつけて、トノメトリ法により非観血式に、上記動脈の内圧の変化、つまり脈波を測定するものが知られている。
【0003】
トノメトリ法により非観血式に血圧(動脈の内圧の変化を含む。)を測定するための市販品では、
図16(A)に示すようにパターンレイアウトされたセンサチップを備えたものがある。この例では、センサチップ101は、一方向(X方向)に細長い略平板状のシリコン基板102と、このシリコン基板102のY方向(X方向に対して垂直な方向)に関して略中央に形成された圧力センサアレイ110と、Y方向に関して両側の長辺102a,102bに沿って形成された電極端子アレイ120A,120Bとを備えている。圧力センサアレイ110は、X方向に沿って一定ピッチで並ぶ複数の圧力センサ(歪みセンサ)素子111からなっている。電極端子アレイ120A,120Bは、それぞれX方向に沿って一定ピッチで並ぶ複数の金バンプ電極121,121,…からなっている。圧力センサアレイ110の各圧力センサ素子111は、シリコン基板102上に形成された図示しない配線を介して、電極端子アレイ120A,120Bの対応する金バンプ電極121と接続されている。
図16(B)(
図16(A)におけるB−B線断面)に示すように、圧力センサアレイ110は、シリコン基板102の裏面側(−Z側)を凹状に削って設けられた薄厚領域119に形成されている。シリコン基板102の裏面側は、ガラス板103によって支持されている。ガラス板103には、圧力センサ素子111のZ方向の撓みを妨げないように、薄厚領域(凹部)119と外部との空気の流通を許す貫通孔103A,103Bが設けられている。
【0004】
図17中に示すように、センサチップ101を実装した製品では、電極端子アレイ120A,120Bの金バンプ電極121,121にフレキシブル配線板130A,130Bが接続されている。フレキシブル配線板130A,130Bには、各圧力センサ素子111からの信号を処理する処理回路(図示せず)が搭載されている。また、センサチップ101の表面全域を覆う樹脂からなる保護シート140が設けられている。
【0005】
トノメトリ法による血圧測定時には、
図18中に示すように、センサチップ101は、動脈91が通る被測定部位90に対して押しつけられる。これにより、センサチップ101を介して外圧Poによって動脈91を圧迫して、動脈91を完全に潰しきることなく、動脈91の血管壁の一部(センサチップ101に対向する体表面90aに近い部分。以下「外向き部分」という。)91aのみを平坦な状態にする。すなわち、その外向き部分91aの血管壁の曲率半径を無限大にする。このとき、センサチップ101の長手方向、すなわち、圧力センサアレイ110の延在方向(X方向)が、動脈91に対して交差する向きに配置される。この配置で、圧力センサアレイ110が含む複数の圧力センサ素子111,111,…の出力に基づいて、圧力センサアレイ110の中で適切な圧力センサ素子111が選択される。そして、その選択された圧力センサ素子111の出力に基づいて、動脈91の内圧の変化が測定される。
【0006】
具体的には、
図19(B)に模式的に示すように、外圧Poと血管の内圧Piとの平衡を保ちながら、外圧Poに抗して拍動する内圧(血圧脈波)Piが求められる。なお、
図19(A)に模式的に示すように、動脈91に平坦な部分が形成されない場合は、外圧Poと内圧Piとの関係式
Po=Pi+T/r
において、血管壁の曲率半径(rとする。)が比較的小さくなる。このため、外圧Poと血管の内圧Piとが実質的に一致せず、正確な測定が行われない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の市販品では、
図17に示すように圧力センサアレイ110の延在方向に対して垂直な断面(実質的に動脈91に沿った断面)を見た場合、センサチップ101の両側の長辺102a,102bの近傍に、金バンプ電極121,121とそれに接続されたフレキシブル配線板130A,130Bが存在するため、保護シート140のうち両側の長辺102a,102b近傍の部分140a,140bが矢印Eで示すように外(被測定部位90)へ向かって凸状に盛り上がっている。このため、動脈91の血管壁の外向き部分91aを平坦化するのに、その凸状に盛り上がった部分140a,140bが障害になるという問題がある。この結果、曲率半径を無限大にすることが出来ず、血管壁張力の影響を受けて、測定精度が低下する可能性がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、圧力センサアレイが形成されたセンサチップを動脈が通る被測定部位に押しつけて、非観血式に脈波を検出する脈波検出装置であって、動脈の血管壁の外向き部分を精度良く平坦化でき、したがって血管の内圧を正確に求めることができるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の脈波検出装置は、
圧力センサアレイが形成されたセンサチップを動脈が通る被測定部位に押しつけて、非観血式に脈波を検出する脈波検出装置であって、
上記センサチップは、
一方向に細長く延在する形状をもち、上記動脈に対して交差して配置される基板と、
この基板に形成された、上記一方向に沿って並ぶ複数の圧力センサ素子からなる圧力センサアレイと、
上記基板上で上記圧力センサアレイの端部に対向する領域に形成された、上記複数の圧力センサ素子の出力をチップ外へ取り出すための、上記一方向に対して垂直な方向に沿って並ぶ複数の電極端子からなる電極端子アレイとを備え、
上記基板上で上記圧力センサアレイの両側に相当する領域は、電極端子が存在しない実質的な平坦面になっていることを特徴とする。
【0011】
本明細書で「実質的な平坦面」とは、センサチップを動脈が通る被測定部位に押しつけるときに平坦であると感じられれば足り、ミクロンオーダの微細な凹凸(例えばセンサチップを作製する半導体プロセスで生じるような薄膜の段差)を許容する意味である。
【0012】
この発明の脈波検出装置では、血圧測定時には、上記センサチップは、動脈が通る被測定部位に対して押しつけられる。このとき、上記センサチップの長手方向、すなわち、上記圧力センサアレイの延在方向が、上記動脈に対して交差して配置される。そして、上記圧力センサアレイが含む複数の圧力センサ素子の出力に基づいて、上記圧力センサアレイの中で適切な圧力センサ素子(例えば、最も大きい脈波信号を出力するもの)が選択される。そして、その選択された圧力センサ素子の出力に基づいて、上記動脈の内圧の変化(つまり、脈波)が測定される。
【0013】
ここで、この脈波検出装置では、上記複数の圧力センサ素子の出力は、上記基板上で上記圧力センサアレイの端部に対向する領域に形成された電極端子アレイを介して、チップ外へ取り出される。上記基板上で上記圧力センサアレイの両側に相当する領域は、電極端子が存在しない実質的な平坦面になっている。したがって、上記圧力センサアレイの延在方向に対して垂直な断面(実質的に上記動脈に沿った断面)では、上記動脈の血管壁の外向き部分を平坦化するのに障害が存在しない。この結果、上記動脈の血管壁の外向き部分を精度良く平坦化できる。したがって、血管壁の影響を受けず、上記動脈の内圧の変化を正確に求めることができる。
【0014】
なお、上記圧力センサアレイの延在方向に沿った断面(上記動脈を横切る断面)では、上記基板上で上記圧力センサアレイの端部に対向する領域に電極端子が存在する。しかし、この電極端子は上記動脈から外れた領域に存在するので、上記動脈の血管壁の外向き部分を平坦化するのに障害にはならない。
【0015】
また、上記センサチップの上記基板上で上記圧力センサアレイの両側に相当する領域には、電極端子アレイが存在しない。したがって、上記圧力センサアレイの延在方向に対して垂直な断面(実質的に上記動脈に沿った断面)において、上記圧力センサアレイの両側に相当する領域の寸法を小さくすることができる。この結果、被測定部位に対する圧迫力を小さくでき、したがって被測定者に対する苦痛を低減できる。
【0016】
一実施形態の脈波検出装置では、上記電極端子アレイは、上記一方向に対して垂直な方向に沿って並ぶ複数の電極端子を含むことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の脈波検出装置では、複数の電極端子を上記一方向に沿って並べる配置に比して、上記センサチップの上記一方向の寸法が大きくなるのを抑制できる。
【0018】
一実施形態の脈波検出装置では、上記基板の上記圧力センサアレイの両側に相当する領域に、上記圧力センサアレイの上記圧力センサ素子の出力を処理して、上記電極端子アレイの電極端子へ送出する処理回路が一体に形成されていることを特徴とする。
【0019】
この一実施形態の脈波検出装置では、上記基板の上記圧力センサアレイの両側に相当する領域に、上記圧力センサアレイの上記圧力センサ素子の出力を処理して、上記電極端子アレイの電極端子へ送出する処理回路が一体に形成されている。したがって、上記処理回路をチップ外に設ける必要が無くなり、チップ外の回路が簡素化される。
【0020】
一実施形態の脈波検出装置では、上記処理回路は、上記圧力センサアレイの上記複数の圧力センサ素子の出力を選択して、低減された数の圧力センサ素子の出力を時分割で取り出すマルチプレクサを含むことを特徴とする。
【0021】
この一実施形態の脈波検出装置では、上記処理回路は、上記圧力センサアレイの上記複数の圧力センサ素子の出力を選択して、低減された数の圧力センサ素子の出力を時分割で取り出すマルチプレクサを含む。これにより、上記電極端子アレイが含む電極端子の数を低減することが可能になる。したがって、上記電極端子アレイを上記基板上で上記一方向(上記センサチップの長手方向)に対して垂直な方向に沿って配置するレイアウトが容易になるとともに、製造歩留が向上する。また、上記圧力センサ素子の出力信号数が低減されて、チップ外の回路が簡素化されるので、コストダウンが可能となる。
【0022】
一実施形態の脈波検出装置では、
上記センサチップを搭載して支持する配線基板を備え、
上記センサチップの上記電極端子アレイの電極端子は、上記配線基板上の対応する電極パッドに、ワイヤを介して接続されていることを特徴とする。
【0023】
この一実施形態の脈波検出装置では、上記センサチップの上記電極端子アレイの電極端子は、上記配線基板上の対応する電極パッドに、ワイヤを介して接続されている。このワイヤは、公知のワイヤボンディング技術によって、金バンプによる接続に比して精度良く設けられる。この結果、実装工程の歩留りが向上する。
【0024】
一実施形態の脈波検出装置では、上記ワイヤは樹脂で封止されていることを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の脈波検出装置では、上記ワイヤは樹脂で封止されている。したがって、上記ワイヤが上記樹脂によって保護される。
【発明の効果】
【0026】
以上より明らかなように、この発明の脈波検出装置によれば、動脈の血管壁の外向き部分を精度良く平坦化でき、したがって血管の内圧を正確に求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1および
図2は、この発明の一実施形態の脈波検出装置100の外観を示している。この脈波検出装置100は、手首の動脈における脈波を検出するために手首表面に装着されるセンサユニット1と、脈波検出のために手首を固定するための固定台2と、脈波検出に関する各種情報を入出力するための表示ユニット3(
図9参照)とを備える。
図1ではセンサユニット1は略J字状の筐体1M内に収容されており、
図2ではスライド溝9を介して筐体1M内から外部にスライド移動されて、窓1Wを通して手首の被測定部位(橈骨動脈が通っている手のひら側の表面)90上に位置している状態が示される。
【0030】
固定台2は固定台ユニット7を内蔵しており、固定台ユニット7と表示ユニット3とはUSB(Universal Serial Bus)ケーブル4を介して通信可能に接続される。また、固定台ユニット7とセンサユニット1とは通信ケーブル5とエア管6とを介して接続される。
【0031】
脈波検出時には、
図2に示すように、ユーザは手首を固定台2の所定位置に載置した状態で、センサユニット1をスライド移動により手首の被測定部位90に位置させてセンサユニット1の筐体1Mと固定台2とをベルト8を介して締めて、手首上のセンサユニット1がずれないように止める。
【0032】
図3に示すように、センサユニット1の手首に当接される側(
図1、2におけるセンサユニット1の裏側)には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって圧力センサ(歪みセンサ)アレイ40が形成されたセンサチップ19と、このセンサチップ19を手首の被測定部位90へ向けて押圧するための押圧カフ18とが設けられている。
【0033】
押圧カフ18は、後述の加圧ポンプ15および負圧ポンプ16によるカフ圧の調整を受けて、このカフ圧レベルに応じた量だけセンサチップ19をセンサユニット1から突出する向き(またはその逆の向き)に移動させる。これにより、センサチップ19は、筐体1Mの予め設けられた開口部10から突出して被測定部位90に押圧される。
【0034】
図5は、上記センサチップ19の平面レイアウトを模式的に示している。このセンサチップ19は、一方向(X方向)に細長い略平板状の基板としてのシリコン基板10を備え、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されている。シリコン基板10のX方向の寸法は10mm程度、X方向に対して垂直なY方向の寸法は3mm程度、X,Y方向に対して垂直なZ方向の寸法(厚さ)は0.4mm程度に設定されている。このシリコン基板10のY方向に関して略中央に、X方向に沿って延在する圧力センサアレイ40が形成されている。この圧力センサアレイ40の両側に、それぞれX方向に沿って平行に延在するマルチプレクサ20A,20B(適宜、符号20で総称する。)が形成されている。シリコン基板10上で圧力センサアレイ40の端部に対向する領域、すなわち、この例ではX方向に関して両側の短辺10c,10dに沿った領域(2点鎖線で示す)に、電極端子アレイ50A,50Bが形成されている。
図5において+X側の電極端子アレイ50Bの近傍に、ローパスフィルタ(LPF)42と、増幅器(以下「アンプ」という。)21とが形成されている。また、シリコン基板10には、これらの各部40,20A,20B,42,21,50A,50Bを接続する図示しない配線が設けられている。Y方向に関して圧力センサアレイ40の両側に相当する領域(破線で示す)10A,10Bは、電極端子が存在しない実質的な平坦面になっている。
【0035】
圧力センサアレイ40は、X方向に沿って一定ピッチ(この例では0.2mmピッチ)で並ぶ複数(この例では46個)の圧力センサ(歪みセンサ)素子41,41,…を含んでいる。例えば
図6(A),
図6(B)中に示すように、圧力センサアレイ40は、シリコン基板10の裏面側(−Z側)を凹状に削って設けられた薄厚領域49に形成されている。各圧力センサ素子41は、ホイーストンブリッジを含む公知のタイプのものである。
【0036】
図8に示すように、マルチプレクサ20は、後述のCPU11による制御を受けて、圧力センサアレイ40に含まれた複数の圧力センサ素子41,41,…の出力A,B,C,…を選択して、低減された個数の圧力センサ素子の出力(圧力信号)Ps1,Ps2,…を時分割で取り出す。この取り出される圧力信号の数を「チャネル数」と呼ぶ。この例では、チャネル数を40チャネルとする(圧力センサアレイ40の両端の3個ずつの圧力センサ素子41が使用されない。)。
【0037】
なお、例えば圧力センサアレイ40に含まれ46個の圧力センサ素子41,41,…を2個おきに使用して、チャネル数を15チャネルとしてもよい(圧力センサアレイ40の端部の1個の圧力センサ素子41が使用されない。)。その場合、使用される圧力センサ素子41,41,…のピッチは、実質的に0.6mmピッチとなる。
【0038】
ローパスフィルタ42は、この例では遮断周波数500kHzのものであり、マルチプレクサ20の出力から500kHzを超える高周波ノイズを除去して、500kHz以下の信号をアンプ21へ送る。
【0039】
アンプ21は、マルチプレクサ20からローパスフィルタ42を通して受けた圧力信号をPs1,Ps2,…を増幅する。増幅された圧力信号Ps1,Ps2,…は、電極端子アレイ(この例では、
図5中の電極端子アレイ50B)を介してチップ外へ出力される。なお、アンプ21はチョッパアンプであるため、アンプ21の後段には、チョッパに伴う雑音を低減するためのローパスフィルタ(図示せず)が含まれている。
【0040】
図5中に示すように、電極端子アレイ50Aは、Y方向に沿って1列に並ぶ複数の電極端子E1,E2,…,E11を含んでいる。同様に、電極端子アレイ50BはY方向に沿って1列に並ぶ複数の電極端子E12,E13,…,E28を含んでいる。このように、複数の電極端子をY方向に沿って1列に並べることによって、X方向寸法の増加を抑制している。この例では、各電極端子は、X,Y方向の寸法が100μm程度の平坦なアルミニウム電極パッドの形態を有している。
【0041】
例えば、電極端子E1は、後述のCPU11から、全ての圧力センサ素子41,41,…(のホイーストンブリッジ)を活性化(電力を供給)する信号を受ける端子である。電極端子E2は、マルチプレクサ20およびアンプ21に電力を供給する端子である。電極端子E3は、接地電位が供給される端子である。電極端子E6〜E11は、CPU11からマルチプレクサ20の動作を制御する信号を受ける端子である。電極端子E6〜E11に受ける信号のコード(高レベル、低レベルの組み合わせ)によって、複数の圧力センサ素子41,41,…の出力(圧力信号)のうちマルチプレクサ20が選択して取り出すべき圧力信号が定まる。電極端子E12,E13は、後述のマルチスキャンモードで、マルチプレクサ20によって選択された(アンプ21による増幅後の)圧力信号Ps1,Ps2,…をチップ外へ出力する端子である。また、電極端子E12,E13は、複数のチャネルのうち最適チャネルとして決定されたチャネルの圧力信号を、後述のチャネル固定モードでチップ外へ出力する端子である。
【0042】
上述のように、このセンサチップ19では、シリコン基板10の圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bに、圧力センサアレイ40の圧力センサ素子41の出力を処理して、電極端子アレイ50Bの電極端子へ送出する処理回路20,42,21が一体に形成されている。したがって、その処理回路をチップ外に設ける必要が無くなり、チップ外の回路が簡素化される。
【0043】
また、その処理回路は、圧力センサアレイ40の複数の圧力センサ素子41の出力を選択して、低減された数の圧力センサ素子41の出力(圧力信号)Ps1,Ps2,…を取り出すマルチプレクサ20を含んでいる。これにより、電極端子アレイ50A,50Bが含む電極端子の数を低減することが可能になる。したがって、電極端子アレイをシリコン基板10上でセンサチップ19の長手方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に沿って配置するレイアウト(
図5のレイアウト)が容易になるとともに、製造歩留が向上する。また、圧力センサ素子41の出力信号数が低減されて、チップ外の回路が簡素化されるので、コストダウンが可能となる。
【0044】
なお、電極端子アレイ50A,50Bが含む電極端子のうち用途を説明していないものの中には、センサチップ19の試作段階における特性テスト用の端子も含まれている。それらの特性テスト用端子は、製品段階では省略され得る。
【0045】
図7は、上記センサチップ19の実装手順を示している。
i) まず、
図7のステップS1に示すように、この例では
図4中に示すようなセラミック基板30の上面30aに、X,Y方向にそれぞれ一定ピッチでセンサチップ19,19,…を、ダイボンド樹脂(図示せず)を用いてダイボンドする。
【0046】
なお、
図6(A)(圧力センサアレイ40の延在方向に沿った断面)および
図6(B)(圧力センサアレイ40の延在方向に垂直な断面)に示すように、セラミック基板30(および後述のフレキシブル配線板31)には、各センサチップ19に対応して、圧力センサ素子41のZ方向の撓みを妨げないように、薄厚領域(凹部)49と外部との空気の流通を許す貫通孔39が形成されている。
【0047】
ii) 次に、
図7のステップS2に示すように、キュア(熱処理)を行って、上記ダイボンド樹脂を硬化させる。これにより、セラミック基板30上にセンサチップ19,19,…を固定する。
iii) 次に、
図6(A)に示すように、電極端子アレイ50A,50Bの各電極端子とセラミック基板30の上面30aに形成された電極パッド(この例ではAu/Cr/Niの積層からなる)37とを、例えば金ワイヤ32を用いてワイヤボンドする(
図7のステップS3)。これにより、センサチップ19とセラミック基板30とを電気的に接続する。この金ワイヤ32は、金バンプによる接続に比して、精度良く設けられる。この結果、この実装工程の歩留りが向上する。
【0048】
なお、セラミック基板30の下面30bには、後述のフレキシブル配線板31との接続のための電極パッド38が形成されている。セラミック基板30の上面、下面の電極パッド37,38は、図示しないバイアホール(貫通孔)を通して互いに電気的に接続されている。
【0049】
iv) 次に、
図6(A)に示すように、センサチップ19のX方向両側の短辺10c,10dに沿って、金ワイヤ32を保護するように、流れ防止用の樹脂(ダム樹脂)33,34を塗布する(
図7のステップS4)。ダム樹脂33はセンサチップ19の上面19aに塗布される一方、ダム樹脂34はセラミック基板30の上面30aに塗布される。ダム樹脂33,34の頂部の高さは、金ワイヤ32のループの頂部の高さを僅かに超えるように設定される。
【0050】
v) 次に、
図6(A)に示すように、それぞれのダム樹脂33,34の間の隙間を充填して金ワイヤ32を包むように、ワイヤ保護用の樹脂(フィル樹脂)35を塗布する(
図7のステップS5)。これにより、金ワイヤ32がフィル樹脂35に包まれて保護される。
【0051】
vi) 次に、
図6(A),
図6(B)に示すように、セラミック基板30をX,Y方向にそれぞれダイシングラインDLに沿って切断して、セラミック基板30とセンサチップ19とを一体にして個片化する(
図7のステップS6)。
【0052】
vii) 次に、
図6(A),
図6(B)に示すように、リフロー(半田付け)を行って、個片のセラミック基板30の下面30bの電極パッド30とフレキシブル配線板(FPC)31の対応する面31aに設けられた電極端子36とを電気的に接続する(
図7のステップS7)。このフレキシブル配線板31が取り付けられた状態のものを「サブアセンブリ」と呼ぶ。なお、フレキシブル配線板31のうちセラミック基板30が搭載された領域以外の領域に、電極端子36と電気的につながるコネクタ51が設けられている。
【0053】
次に、
図7のステップS8で、このサブアセンブリをセンサユニット1(
図3参照)に搭載する。このとき、上記フレキシブル配線板(FPC)31のコネクタ51を、センサユニット1の対応するコネクタ(図示せず)に電気的に接続する。この例では、セラミック基板30とフレキシブル配線板(FPC)31とが配線基板を構成している。
【0054】
この後、
図7のステップS9で、センサユニット1、特にセンサチップ19を覆うように、保護シート60(例えば
図11中に示す)を取り付ける(実装完了)。この例では、保護シート60は、厚さ150μm〜300μm程度のシリコーン樹脂のシートからなっている。
【0055】
実装状態では、
図11に示す圧力センサアレイ40の延在方向に対して垂直な断面では、センサチップ19の圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bは電極端子が存在しない平坦面になっていることから、被測定部位90に対して押圧される保護シート60の外面60aも平坦面になっている。
図12に示す圧力センサアレイ40の延在方向に沿った断面では、センサチップ19の圧力センサアレイ40の端部に対向する領域に電極端子アレイ50A,50Bが存在し、センサチップ19の両端近傍でフィル樹脂35およびダム樹脂33,34(以下「フィル樹脂35等」という。)が外(被測定部位90)へ向かって凸状に盛り上がっていることから、保護シート60のうちフィル樹脂35等に対応する部分60c,60dも外へ向かって凸状に盛り上がっている。
図11および
図12中に示すように、測定時には、センサチップ19の長手方向、すなわち、圧力センサアレイ40の延在方向が、動脈91に対して交差して配置される。
【0056】
図9は、上記脈波検出装置100の機能的なブロック構成を示している。この脈波検出装置100のブロック構成は、既述のセンサユニット1と、固定台2に含まれた固定台ユニット7と、表示ユニット3とに大別されている。
【0057】
表示ユニット3は、外部から操作可能に設けられて脈波検出に関する各種情報を入力するために操作される操作部24と、動脈位置検出結果や脈波測定結果などの各種情報を外部に出力するためのLED(Light Emitting Diode)やLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部25とを含む。
【0058】
固定台ユニット7は、この脈波検出装置100を制御するためのデータやプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)12およびRAM(Random Access Memory)13と、この脈波検出装置100を集中的に制御するために演算を含む各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)11と、加圧ポンプ15と、負圧ポンプ16と、切換弁17と、CPU11からの制御信号を受けて加圧ポンプ15,負圧ポンプ16,切換弁17を制御するための制御回路14と、特性可変フィルタ22と、A/D変換部23とを備える。
【0059】
CPU11は、ROM12にアクセスしてプログラムを読出してRAM13上に展開して実行するとともに、操作部24よりユーザからの操作信号を受取り、その操作信号に基づいてこの脈波検出装置100全体の制御を行う。特に、CPU11は、操作部24から入力された操作信号に基づいて、加圧ポンプ15,負圧ポンプ16,切換弁17を制御するための制御信号を制御回路14へ送出する。また、CPU11は、脈波測定結果などを表示部25に表示させる。
【0060】
加圧ポンプ15は、押圧カフ(空気袋)18の内圧(以下、「カフ圧」という)を加圧するためのポンプであり、負圧ポンプ16は、カフ圧を減圧するためのポンプである。切換弁17は、これらの加圧ポンプ15と負圧ポンプ16とのいずれかを選択的にエア管6に切換接続する。そして、制御回路14は、CPU11からの制御信号に基づいて、これらの加圧ポンプ15,負圧ポンプ16,切換弁17を制御する。
【0061】
センサユニット1は、既述のセンサチップ19と、このセンサチップ19を手首上に押圧させるために加圧調整される空気袋を含む押圧カフ18とを備える。
【0062】
固定台ユニット7に含まれた特性可変フィルタ22は、遮断周波数fc以上の信号成分を遮断するための低域通過フィルタである。この例では、特性可変フィルタ22は、CPU11からのフィルタ特性制御電圧によって容量が制御される可変容量ダイオードを含み、遮断周波数fcが異なる2つの特性(それぞれ「特性A」、「特性B」と呼ぶ。)をとり得る。
【0063】
詳しくは、特性Aは、遮断周波数fcが、複数の圧力センサ素子41,41,…をスキャンする際の切替周波数fx(この例では20kHzとする。)以上の値fcAに設定された状態である。特性Bは、遮断周波数fcが、1個の圧力センサ素子からの圧力信号のサンプリング周波数fsの1/2よりも低い値fcBに設定された状態である。例えば、40チャネルの圧力センサ素子41,41,…からの圧力信号Ps1,Ps2,…,Ps40をスキャンする際の切替周波数fxを20kHzとすると、1個の圧力センサ素子からの圧力信号のサンプリング周波数fsは、500Hzとなる。その場合、例えばfcA=250kHzとして設定される。また、fcBは、30Hz<fcB<250Hz(=fs/2)の範囲内で、例えばfcB=100Hzとして設定される。
【0064】
A/D変換部23は、センサチップ19から導出されたアナログ信号である圧力信号をデジタル情報に変換して、CPU11に与える。この結果、CPU11は、センサチップ19に含まれた複数の圧力センサ素子41,41,…が出力する圧力信号Ps1,Ps2,…を、マルチプレクサ20を介して時分割で取得することができる。
【0065】
図10は、上記脈波検出装置100による測定処理のフローを示している。このフローに示される測定処理は、CPU11が、ROM22にアクセスしてプログラムを読出してRAM23上に展開して実行することによって実現される。
【0066】
始めに、電源スイッチ(図示せず)がONされると、CPU11は、制御回路14に対して負圧ポンプ16を駆動するように指示し、制御回路14はこの指示に基づいて切換弁17を負圧ポンプ16側に切換えて、負圧ポンプ16を駆動する(S101)。負圧ポンプ16が駆動されることで、切換弁17を介してカフ圧が大気圧よりも十分に低くするように作用され、センサユニット1からセンサチップ19が不用意に突出して誤動作や故障するのを回避できる。
【0067】
その後、センサユニット1が被測定部位90に移動される、あるいは操作部24に含まれる測定開始スイッチ(図示せず)が押される、などを検知して、測定の開始を判断する(S103)。前者の場合、筐体1Mはセンサユニット1の移動を検知するための図示されないマイクロスイッチなどを備え、CPU11は該マイクロスイッチの検出信号に基づいてセンサユニット1が移動したか否かを判定する。
【0068】
測定の開始を判断すると(S103でYES)、CPU11は、圧力センサ素子41,41,…からの圧力信号を得るために、マルチプレクサ20を動作させてチャネルスキャンを開始する(S105)。これをマルチスキャンモードと呼ぶ。そして、このマルチスキャンモードでは、CPU11は、フィルタ特性制御信号によって、特性可変フィルタ22を特性Aに切り替えて、その遮断周波数をfcAとする(S107)。このfcAは複数の圧力センサ素子41,41,…からの圧力信号の切替周波数fx以上の値であるから、波形の復元に際してなまりが生じるのを防止できる。
【0069】
次に、CPU11は制御回路14に対し、加圧ポンプ15を駆動させるよう制御信号を送出する。制御回路14は、この制御信号に基づいて切換弁17を加圧ポンプ15側に切換えて、加圧ポンプ15を駆動する(S109)。これにより、カフ圧が上昇して、センサユニット1のセンサチップ19が被験者の被測定部位90の表面に押圧される。
【0070】
このとき、
図11および
図12中に示したように、センサチップ19の長手方向、すなわち、圧力センサアレイ40の延在方向が、動脈91に対して交差して配置される。
【0071】
センサチップ19が被測定部位90に押圧されると、センサチップ19に含まれた圧力センサ素子41,41,…からの圧力信号がマルチプレクサ20において時分割され、ローパスフィルタ42を通して、アンプ21において増幅される。その後、増幅された圧力信号は特性可変フィルタ22に入力される。そして、特性可変フィルタ22において濾波された圧力信号は、A/D変換部23に送出される。そして、A/D変換部23でデジタル情報に変換されて、CPU11に入力される。CPU11は、これらのデジタル情報を用いてトノグラム(圧力信号の交流成分(脈波信号)の振幅を表すヒストグラム)を作成し、表示部25に表示する(
図10のS111)。
【0072】
例えば
図13(A)は、40チャネルの圧力信号Ps1,Ps2,…,Ps40の波形を示している。なお、
図13(A)では、理解の容易のために、圧力信号Ps1,Ps2,…,Ps40の波形は、縦方向に少しずつずらして描かれている。トノグラムは、
図13(B)に示すように、それらの圧力信号Ps1,Ps2,…,Ps40の交流成分(脈波信号)の振幅(脈波振幅)を表すヒストグラムとして得られる。なお、
図13(B)の縦軸は、各圧力信号Ps1,Ps2,…,Ps40に対応するチャネル番号を表している。
【0073】
次に、CPU11は、
図10のステップS111で作成したトノグラムに基づいて、複数の圧力センサ素子41,41,…のうち脈波振幅の最大値を示す圧力センサ素子(13(B)の例ではチャネル8)を動脈91上に位置するものとして検出する。そして、その動脈91上に位置する圧力センサ素子を最適チャネルとして選択するための処理を実行する(S113)。なお、最適チャネルを選択する処理については、特開2004−222847号公報に記載の公知技術などを用いることができる。この例では、最適チャネルとして、一つの圧力センサ素子(Diとする。)が選択されることとする(なお、二つ以上の最適チャネルが採用されることとしてもよい。)。
【0074】
同時に、CPU11は、押圧カフ18の最適押圧力を決定するために、各圧力センサ素子41,41,…から入力される圧力信号から、その直流成分を抽出する(S115)。例えば
図14に示すように、圧力信号Psは、直流成分Pdcと、交流成分(脈波信号)Pacとを含んでいる。
【0075】
直流成分Pdcは、圧力信号の一定時間の平均値、または圧力信号の低域通過フィルタを通過した成分(脈波除去した成分)、または脈波立上り点(脈波成分が混入する直前)の圧力信号レベルにより求められる。
【0076】
より具体的には、
図10のステップS115において、圧力信号の出力変化を一定時間ごとのウィンドウ(区間)に分割し、各ウィンドウ内の平均を算出することで、直流成分Pdcを抽出することができる。あるいは、各ウィンドウ内の最大値と最小値との中間値を算出する、低域通過フィルタを用いて所定の周波数以下の値を抽出する、などを行っても、同様に直流成分Pdcを抽出することができる。なお、上述の一定時間は、被験者の脈拍に拠らない予め脈波検出装置100に設定されている時間間隔であって、一般的な一脈拍時間が含まれる1.5秒程度であることが好ましい。
【0077】
次に、CPU11は、各圧力センサ素子41,41,…から入力される圧力信号に基づいて、ステップS115において抽出した直流成分Pdcが安定している箇所を検出する(S117)。直流成分Pdcが安定している箇所が検出されない場合には(S117でNO)、加圧ポンプ15による押圧カフ18に対する加圧を継続しながら、直流成分Pdcが安定している箇所が検出されるまで、上述のステップS111〜S117の処理を繰り返す。
【0078】
そして、CPU11は、最適チャネルの選択が完了し、直流成分Pdcが安定している箇所を検出すると(S117でYES)、マルチプレクサ20に対し最適チャネルとして決定した圧力センサ素子Diからの圧力信号を選択して送出させるようにチャネルを固定する(S119)。これをチャネル固定モードと呼ぶ。このチャネル固定モードでは、CPU11は、フィルタ特性制御信号によって、特性可変フィルタ22を特性Bに切り替えて、その遮断周波数をfcB(例えばfcB=100Hz)にする(S121)。このfcBは1個の圧力センサ素子からの圧力信号のサンプリング周波数fsの1/2よりも低い値であるから、エイリアシングノイズ(すなわち、サンプリング定理により、アナログ信号をデジタル信号に変換する場合、サンプリング周波数の1/2以上の周波数成分を持つノイズが、折り返し現象により、サンプリング周波数の1/2以下の領域に出現してしまうもの)を除去することができる。このエイリアシングノイズを除去する技術は、例えば特開2005−341994号公報に記載されている。
【0079】
続いて、ステップS117で検出された直流成分Pdcが安定している箇所を一旦押圧カフ18の最適押圧力とし、押圧カフ18の圧力を調整するよう、制御回路14に対し制御信号を送出する(S123)。例えば
図14の例では、枠APの範囲内に最適押圧力が得られる。
【0080】
この後、CPU11は、押圧カフ18の押圧力が最適押圧に保たれた状態で最適チャネルとして選択された圧力センサ素子Diから出力された圧力信号、すなわち
図15に例示するような波形データの立上がり点の先鋭度(MSP)が適切であるか否か(S125)、さらに、波形歪みがあるか否か(S127)を判定する。なお、
図15では、P1が駆出波のピーク、P2が反射波のピークをそれぞれ示している。
【0081】
波形データの立上がり点の先鋭度(MSP)が不適切である場合(
図10のS125でNO)、あるいは波形歪みが検出される場合(S127でNO)には、波形データの立上がり点の先鋭度が適切になるまで、あるいは波形歪みが検出されなくなるまで、ステップS123の押圧力の調整を繰り返す。
【0082】
そして、波形データの立上がり点の先鋭度(MSP)が適切であり(S125でYES)、かつ波形歪みが検出されない場合(S127でYES)には、CPU11は、マルチプレクサ20、アンプ21、特性可変フィルタ22およびA/D変換部23を介して、その時点の波形データを取得する(S129)。
【0083】
この後、CPU11は、取得した波形データより脈波を検出し、脈波検出終了の所定条件の成立を判定する(S131)。ステップS131で脈波検出を終了するための条件は、予め設定された所定時間(例えば30秒)の経過であってもよいし、ユーザからの終了(あるいは中断)指示などであってもよい。すなわち、所定条件が成立するまで、上述のステップS129の脈波データの転送処理が繰り返される。
【0084】
そして、脈波検出終了の所定条件が成立したときは(S131でYES)、CPU11は切換弁17を介して負圧ポンプ16を駆動するよう、制御回路14に対し制御信号を送出する(S133)。これにより、被測定部位90に対するセンサチップ19の押圧状態は解かれて、一連の脈波測定処理は終了する。
【0085】
このようにして脈波測定が行われる場合、
図11に示す圧力センサアレイ40の延在方向に対して垂直な断面(動脈91に沿った断面)では、センサチップ19の圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bは電極端子が存在しない平坦面になっていることから、被測定部位90に対して押圧される保護シート60の外面60aも平坦面になっている。したがって、動脈91の血管壁の外向き部分91aを平坦化するのに障害が存在しない。この結果、動脈91の血管壁の外向き部分91aを精度良く平坦化できる。したがって、血管壁の影響を受けず、動脈91の内圧の変化を正確に求めることができる。
【0086】
なお、
図12に示す圧力センサアレイ40の延在方向に沿った断面(動脈91を横切る断面)では、センサチップ19の圧力センサアレイ40の端部に対向する領域に電極端子アレイ50A,50Bが存在し、センサチップ19の両端近傍でフィル樹脂35等が外(被測定部位90)へ向かって凸状に盛り上がっている。しかし、この電極端子アレイ50A,50Bやフィル樹脂35等は、動脈91から外れた領域に存在するので、動脈91の血管壁の外向き部分91aを平坦化するのに障害にはならない。
【0087】
また、
図11に示したように、センサチップ19のシリコン基板10上で圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bには、電極端子アレイが存在しないので、圧力センサアレイ40の両側に相当する領域10A,10Bの寸法を小さくすることができる。その場合、例えばローパスフィルタ42とアンプ21をチップ外に設けて、センサチップ19内の処理回路を簡素化してもよい。この結果、被測定部位90に対する圧迫力を小さくでき、したがって被測定者に対する苦痛を低減できる。
【0088】
この実施形態では、センサチップ19をなす基板としてシリコン基板10を用いたが、これに限られるものではない。上記基板は、MEMS技術によって圧力センサ(歪みセンサ)アレイが形成され得るものであればよく、他の材料の基板であってもよい。
【0089】
また、この実施形態では、配線基板としてセラミック基板30とフレキシブル配線板31とを用いたが、これに限られるものではない。上記配線基板は、上記基板を支持し得るとともに、上記基板上の電極端子と接続される配線が設けられたものであればよく、他の材料の基板であってもよい。例えば、フレキシブル配線板31の一部を剛に構成し、その剛の部分に直接センサチップ19を搭載してもよい。
【0090】
また、この実施形態では、センサチップ19を覆うように保護シート60を設けたが、これに限られるものではない。金ワイヤ32とともにセンサチップ19の表面を樹脂で実質的に平坦にコーティングして保護してもよい。
【0091】
また、この実施形態では、電極端子アレイ50A,50Bが含む電極端子は、それぞれY方向に沿って1列に並ぶものとしたが、これに限られるものではない。電極端子アレイ50A,50Bは、圧力センサアレイ40の端部に対向する領域に設けられていればよい。例えば、電極端子アレイ50A,50Bは、それぞれY方向に沿って2列で、互いに1/2ピッチずつずれた配列(いわゆる千鳥状の配列)になっていてもよい。そのようにした場合、1列の場合に比して、センサチップ19のY方向寸法を縮小できる。
【0092】
上述の実施形態は例示に過ぎず、この発明の範囲から逸脱することなく種々の変形が可能である。