【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、上記記載の欠点を示さない高純度のHFO−1234yfの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの調製方法は、以下の段階:
(i)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを得る、ヘキサフルオロプロピレンの気相水素化の段階;
(ii)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンを得る、前段階において得られた1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(iii)反応器において超化学量論的量の水素および触媒の存在下で1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンを得る、前段階において得られた1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの気相水素化の段階;
(iv)前段階において得られた1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの精製の段階;
(v)脱フッ化水素化触媒の存在下でまたは水および水酸化カリウムの混合物を使用して2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを得る、精製した1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンの脱フッ化水素化の段階;
(vi)前段階において得られた2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの精製の段階
を含む。
【0020】
本発明の方法は、以下の特徴:
−水素化段階(i)および/または(iii)は、単一段階もしくは多段階の断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施されること;
−HFC−236eaおよび未反応水素を含む、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(i)にリサイクルされること;
−水素化段階(i)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−236eaの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付されること;
−HFC−245ebおよび未反応水素を含む、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(iii)にリサイクルされること;
−水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−245ebの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付されること;
−水酸化カリウムは、水およびKOH混合物の重量に対して、20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で段階(ii)および/または(v)の反応媒質に存在すること;
−水酸化カルシウムによる、脱フッ化水素化段階(ii)および/または(v)において共生成されるフッ化カリウムの処理の段階;
−脱フッ化水素化段階(ii)において得られる1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペンの精製の段階
の少なくとも1つを追加的に含むことができる。
【0021】
本発明により得られる2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの純度は、好ましくは99.5重量%を超え、有利には99.8重量%を超える。
【0022】
精製段階(iv)の目的は、脱フッ化水素化段階(v)のために意図される好ましくは98重量%を超える純度を有するHFC−245ebを得る目的のために、水素化段階(iii)からのHFC−245ebを含む流れを精製することである。
【0023】
この精製段階は、好ましくは、HFO−1234yfと同様の沸点(±10℃)を有する化合物を除去すること、またはHFC−245ebよりも少なくとも20℃低い、さらには少なくとも10℃低い沸点を有する前記化合物の前駆体を除去することから構成される。
【0024】
精製段階(iv)において除去される化合物は、好ましくは、ヘキサフルオロプロペン、シクロヘキサフルオロプロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(ZおよびE異性体)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,2−トリフルオロエタン(HFC−143)および1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンから選択される。
【0025】
精製段階(iv)において除去される化合物は、有利には、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(ZおよびE異性体)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)から選択される。
【0026】
本発明の方法は、バッチ様式、半連続的または連続的に実施することができる。好ましくは、本発明の方法は、連続的に実施され、前段階からの流れは、任意の精製の後、続く段階に直接運ばれる。このようにして、高純度の化合物HFO−1234yfを調製するための経済的な方法が得られ、出発物質であるHFPは、低価格で商業的に容易に入手可能である。
【0027】
水素化段階(i)
水素化段階は、モル比が1.1から40、好ましくは2から15のH
2/HFPの存在下で実施することができる。
【0028】
水素化段階は、0.5から20バールの絶対圧、好ましくは1から5バールの絶対圧で実施することができる。
【0029】
水素化段階に使用することができる触媒として、例えば炭素、炭化ケイ素、アルミナまたはフッ化アルミニウムに場合により支持されているVIII族の金属またはレニウムに基づいた触媒を、特に記述することができる。
【0030】
金属として、有利には炭素またはアルミナに支持されたプラチナまたはパラジウム、特にパラジウムを使用することができる。この金属を、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデンおよびタリウムなどの別の金属と組み合わせることも可能である。
【0031】
触媒は、押出物、ペレットまたはビーズの、あらゆる適切な形態で存在することができる。
【0032】
好ましくは、アルミナまたは炭素に支持されたパラジウムを0.05から10重量%、有利には0.1から5重量%含む触媒が使用される。
【0033】
水素化段階は、反応器の入口温度が30から200℃、好ましくは30から100℃であり、反応器の出口温度が50から250℃、好ましくは80から150℃であるような条件下において、実施することができる。
【0034】
接触時間(標準温度および圧力条件下での触媒と総気体流の容積比)は、好ましくは0.2から10秒、有利には1から5秒である。
【0035】
この水素化段階は、場合により多段階断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施することができる。
【0036】
HFPの水素化の段階は、実質的に定量である。
【0037】
好ましくは、HFC−236eaおよび未反応水素を含む、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(i)にリサイクルされる。
【0038】
有利には、水素化段階(i)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(i)において形成されたHFC−236eaの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付される。
【0039】
好ましくは、凝縮段階は、0から50℃の温度、0.5から20バールの絶対圧、有利には1から5バールの絶対圧で実施される。
【0040】
好ましくは、凝縮段階は、段階(i)の出口において1から30%のHFC−236eaが凝縮され、有利には2から10%が凝縮されるような条件下において実施される。
【0041】
非凝縮画分は、場合により加熱された後、続いて水素化段階(i)にリサイクルされる。
【0042】
脱フッ化水素化段階(ii)
段階(i)において形成されたHFC−236eaは、任意の凝縮および蒸発の後、続いて、好ましくは水酸化カリウムを使用し、有利には撹拌反応器において実施される脱フッ化水素化の段階に付される。水酸化カリウムは、好ましくは、水およびKOH混合物の重量に対して20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で反応媒質に存在する。
【0043】
脱フッ化水素化段階のKOHを含む水性反応媒質は、好ましくは80から180℃の温度、有利には125から180℃の温度に維持される。反応媒質の特に好ましい温度は、145から165℃である。
【0044】
KOHを使用する脱フッ化水素化の段階は、0.5から20バールの圧力で実施することができるが、0.5から5バールの絶対圧、より有利には1.1から2.5バールの絶対圧で稼働することが好ましい。
【0045】
フッ化カリウムは、KOHを使用する脱フッ化水素化の段階において形成される。
【0046】
本発明の方法は、脱フッ化水素化段階において共生成されたフッ化カリウムが、水性反応媒質中の水酸化カルシウムと好ましくは50から150℃の温度、有利には70から120℃の温度、より有利には70から100℃の温度で接触する、処理段階を含むことができる。
【0047】
この処理段階は、任意の希釈の後、好ましくは、フッ化カリウム、水酸化カリウムおよび水を含む脱フッ化水素化段階からの反応媒質の一部を含む反応器に、水酸化カルシウムを導入することによって実施される。
【0048】
フッ化カリウムは、好ましくは、脱フッ化水素化段階からの反応媒質に対して4から45重量%、有利には7から20重量%で存在する。
【0049】
処理の反応媒質は、好ましくは、媒質中の水酸化カリウムおよび水の総重量に対して4から50重量%の水酸化カリウム、有利には10から35重量%の水酸化カリウムを含む。
【0050】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、脱フッ化水素化段階にリサイクルすることができる水酸化カリウムの再生を可能にし、例えば濾過および沈降による分離後に価値を回収することができる商業品質のフッ化カルシウムを得ることを可能にする。
【0051】
平均粒径が20から35μm(粒径分布の50重量%での平均寸法)のフッ化カルシウムが、この処理段階の好ましい条件下で得られる。
【0052】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、当業者に既知のあらゆる種類の反応器、例えば撹拌反応器において実施することができる。
【0053】
水素化段階(iii)
段階(ii)において得られたHFO−1225yeは、場合により精製の後、触媒の存在下で水素化の段階に付される。
【0054】
HFO−1225yeの精製は、第1の蒸留における軽い不純物の除去および第2の蒸留における重い不純物の除去の二重蒸留を含むことができる。
【0055】
水素化段階は、モル比が1.1から40、好ましくは2から15のH
2/HFO−1225yeの存在下で実施することができる。
【0056】
水素化段階は、0.5から20バールの絶対圧、好ましくは1から5バールの絶対圧で実施することができる。
【0057】
水素化段階に使用することができる触媒として、例えば炭素、炭化ケイ素、アルミナまたはフッ化アルミニウムに場合により支持されているVIII族の金属またはレニウムに基づいた触媒を、特に記述することができる。
【0058】
金属として、有利には炭素またはアルミナに支持されたプラチナまたはパラジウム、特にパラジウムを使用することができる。この金属を、銀、銅、金、テルル、亜鉛、クロム、モリブデンおよびタリウムなどの別の金属と組み合わせることも可能である。
【0059】
触媒は、押出物、ペレットまたはビーズの、あらゆる適切な形態で存在することができる。
【0060】
好ましくは、アルミナまたは炭素に支持されたパラジウムを0.05から10重量%、有利には0.1から5重量%含む触媒が使用される。
【0061】
水素化段階は、反応器の入口温度が50から200℃、好ましくは80から140℃であり、反応器の出口温度が80から250℃、好ましくは110から160℃であるような条件下において、実施することができる。
【0062】
接触時間(標準温度および圧力条件下での触媒と総気体流の容積比)は、好ましくは0.2から10秒、有利には1から5秒である。
【0063】
この水素化段階は、場合により多段階断熱反応器においてまたは直列にした少なくとも2つの断熱反応器において実施することができる。
【0064】
HFO−1225yeの水素化の段階は、実質的に定量である。
【0065】
好ましくは、HFC−245ebおよび未反応水素を含む、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流の一部は、段階(iii)にリサイクルされる。
【0066】
有利には、水素化段階(iii)からもたらされる気体出力流は、未反応水素が凝縮されず、段階(iii)において形成されたHFC−245ebの一部が凝縮されるような条件下の凝縮段階に付される。
【0067】
好ましくは、凝縮段階は、0から50℃の温度、0.5から20バールの絶対圧、有利には1から5バールの絶対圧で実施される。
【0068】
好ましくは、凝縮段階は、段階(iii)の出口において1から30%のHFC−245ebが凝縮され、有利には2から10%が凝縮されるような条件下において実施される。
【0069】
非凝縮画分は、場合により加熱された後、続いて水素化段階(iii)にリサイクルされる。
【0070】
精製段階(iv)
水素化段階(iii)において得られたHFC−245ebは、任意の凝縮の後、脱フッ化水素化段階(v)のために意図される好ましくは98重量%を超える純度を有するHFC−245ebを得る目的のために、精製段階に付される。
【0071】
この精製段階は、好ましくは、HFO−1234yfと同様の沸点を有する化合物を除去すること、またはHFC−245ebよりも少なくとも20℃低い、それどころか、さらには少なくとも10℃低い沸点を有する前記化合物の前駆体を除去することから構成される。
【0072】
これらの化合物は、この方法の多様な段階からの副産物、この方法の多様な段階の未反応反応体および/または中間体であることができる。
【0073】
この精製段階は、好ましくは、1から20バールの絶対圧、有利には5から10バールの絶対圧で実施される少なくとも1つの従来の蒸留段階を含む。
【0074】
脱フッ化水素化段階(v)
好ましくは98重量%を超える純度の段階(iv)において精製されたHFC−245ebは、続いて、好ましくは水酸化カリウムを使用し、有利には撹拌反応器において実施される脱フッ化水素化の段階に付される。水酸化カリウムは、好ましくは、水およびKOH混合物の重量に対して、20から75重量%の量、有利には55から70重量%の量で反応媒質に存在する。
【0075】
脱フッ化水素化段階のKOHを含む水性反応媒質は、好ましくは80から180℃の温度、有利には125から180℃の温度に維持される。反応媒質の特に好ましい温度は、145から165℃である。
【0076】
脱フッ化水素化段階は、0.5から20バールの圧力で実施することができるが、0.5から5バールの絶対圧、より有利には1.1から2.5バールの絶対圧で稼働することが好ましい。
【0077】
フッ化カリウムは、KOHを使用する脱フッ化水素化の段階において形成される。
【0078】
本発明の方法は、脱フッ化水素化段階において共生成されたフッ化カリウムが、水性反応媒質中の水酸化カルシウムと好ましくは50から150℃の温度、有利には70から120℃の温度、より有利には70から100℃の温度で接触する、処理段階を含むことができる。
【0079】
この処理段階は、任意の希釈の後、好ましくは、フッ化カリウム、水酸化カリウムおよび水を含む脱フッ化水素化段階からの反応媒質の一部を含む反応器に、水酸化カルシウムを導入することによって実施される。
【0080】
フッ化カリウムは、好ましくは、脱フッ化水素化段階からの反応媒質に対して4から45重量%、有利には7から20重量%で存在する。
【0081】
処理の反応媒質は、好ましくは、媒質中の水酸化カリウムおよび水の総重量に対して4から50重量%の水酸化カリウム、有利には10から35重量%の水酸化カリウムを含む。
【0082】
水酸化カルシウムによる処理の段階は、脱フッ化水素化段階にリサイクルすることができる水酸化カリウムの再生を可能にし、例えば濾過および沈降による分離後に価値を回収することができる商業品質のフッ化カルシウムを得ることを可能にする。
【0083】
平均粒径が20から35μm(粒径分布の50重量%での平均寸法)のフッ化カルシウムが、この処理段階の好ましい条件下で得られる。
【0084】
水酸化カルシウムによる処理の段階を、当業者に既知のあらゆる種類の反応器、例えば撹拌反応器において実施することができる。
【0085】
精製段階(vi)
HFO−1234yf、未反応HFC−245ebおよび副産物を含む脱フッ化水素化段階(v)の終結時の気体流は、少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.8重量%の純度を有するHFO−1234yfを得る精製段階に付される。
【0086】
精製は、好ましくは、軽い不純物、特にトリフルオロプロピンを分離する第1蒸留段階および重い不純物、特にHFC−245ebからHFO−1234yfを分離する第2蒸留段階を含む。