特開2015-145429(P2015-145429A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-145429(P2015-145429A)
(43)【公開日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】外用医薬組成物を用いた貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20150717BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20150717BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150717BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20150717BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20150717BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150717BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20150717BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
   A61K31/55
   A61K9/06
   A61K47/14
   A61K9/70 401
   A61K47/16
   A61K47/36
   A61P25/04
   A61K31/137
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-101160(P2015-101160)
(22)【出願日】2015年5月18日
(62)【分割の表示】特願2011-540540(P2011-540540)の分割
【原出願日】2010年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2009-259073(P2009-259073)
(32)【優先日】2009年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(71)【出願人】
【識別番号】000231796
【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 郁郎
(74)【代理人】
【識別番号】100200470
【弁理士】
【氏名又は名称】佐名木 佑
(72)【発明者】
【氏名】古石 誉之
(72)【発明者】
【氏名】伴野 和夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊史
(72)【発明者】
【氏名】深水 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】國増 宏二
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD52P
4C076EE13
4C076EE38P
4C076EE48
4C076FF31
4C076FF34
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC32
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA11
4C086NA12
4C086ZA08
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA11
4C206NA12
4C206ZA08
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを配合したオルガノゲルである外用医薬組成物を用いた貼付剤、詳しくは、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤を有効成分とし、これに脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを配合したオルガノゲルの形態の新規な経皮吸収型の外用医薬組成物を用いた貼付剤及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明外用医薬組成物を用いた貼付剤は、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤の皮膚透過性が顕著に改善され、充分量の薬剤を持続的に皮膚透過させることができる。また、高い薬剤放出率を有するため、薬剤の有効利用等が図れ有用性が高いものである。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリー体のエプタゾシン又はトラマドール、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有するオルガノゲルである外用医薬組成物を用いて製剤化した貼付剤。
【請求項2】
オルガノゲル化剤を組成物の全重量に対して0.1乃至20重量%配合した請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
脂肪酸エステルが炭素数6乃至22の脂肪酸及び炭素数1乃至12のアルコールからなる脂肪酸エステルである請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル又はリノール酸イソプロピルである請求項3に記載の貼付剤。
【請求項5】
グリセリン脂肪酸エステルが、脂肪酸の炭素数が5乃至25のグリセリン脂肪酸エステルである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
グリセリン脂肪酸エステルがモノカプリル酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン又はモノラウリン酸グリセリンである請求項5に記載の貼付剤。
【請求項7】
オルガノゲルが、低分子化合物タイプのゲル化剤を用いたものである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項8】
オルガノゲルが、アミノ酸誘導体又はデキストリン誘導体のゲル化剤を用いたものである請求項7に記載の貼付剤。
【請求項9】
オルガノゲルが、N-アシルアミノ酸アミド又はデキストリン脂肪酸エステルの中の1種又は2種以上のオルガノゲル化剤を用いたものである請求項8に記載の貼付剤。
【請求項10】
オルガノゲルが、ジブチルラウロイルグルタミド及び/又はジブチルエチルヘキサノイルグルタミドのオルガノゲル化剤を用いたものである請求項9に記載の貼付剤。
【請求項11】
オルガノゲルが、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/エチルへキサン酸デキストリン及びミリスチン酸デキストリンの中の1種又は2種以上のオルガノゲル化剤を用いたものである請求項9に記載の貼付剤。
【請求項12】
リザーバ型貼付剤である請求項1乃至11のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項13】
マトリックス型貼付剤である請求項1乃至11のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項14】
マトリックス型貼付剤が、アクリル樹脂、シリコン樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合体、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジンエステル樹脂及びポリイソブチレン樹脂から選ばれる1種又は複数の粘着剤を組み合わせて作製されたものである請求項13に記載の貼付剤。
【請求項15】
徐放性製剤である請求項1乃至14のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項16】
1日に1回貼付するタイプである請求項1乃至15のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項17】
2日に1回貼付するタイプである請求項1乃至15のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項18】
フリー体のエプタゾシン又はトラマドール、脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びオルガノゲル化剤を混和することにより得られた外用医薬組成物を用いて、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の貼付剤を製造する方法。
【請求項19】
オルガノゲル化剤を添加する前に、フリー体のエプタゾシンを脂肪酸エステル、又は、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルと混合し、粉砕しながら混和することにより得られた外用医薬組成物を用いることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
フリー体のエプタゾシン又はトラマドール、脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びオルガノゲル化剤を混和し、さらに低級アルコールを添加することにより得られた外用医薬組成物を用いることを特徴とする請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
低級アルコールがエタノールである請求項20に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた薬剤皮膚透過性を有する外用医薬組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非麻薬性の鎮痛薬が経口剤、注射剤、坐剤等の剤形で患者に投与されている。しかし、経口剤の場合には、吸収が良くない或いはバイオアベイラビリティが低い等の問題が生じることがあり、注射剤は頻回投与が必要となり患者に苦痛と不便を与えるという欠点がある。一方、坐剤は、経口剤及び注射剤が有する上記欠点を改善する面があるものの、投与経路に起因する患者の不便・不快感が大きいという欠点がある。
【0003】
近年、上記のような各種剤形の欠点の解消を目的として、さらに、経皮投与製剤は注射剤や経口投与製剤に比べて、制御された速度で長時間薬物を送達できるという特徴があるため、薬剤を経皮吸収させる研究が種々行われている。しかし、薬剤を経皮的に投与する場合には、皮膚表面の角質層が薬剤透過に対するバリアー機能を有するため、薬剤の皮膚透過性を向上させることが難しいという基本的な問題がある。そのため、薬剤を効果的に経皮吸収させるためには、何らかの方法で薬剤の経皮吸収性を促進させることが不可欠である。この問題を解決すべく、吸収促進剤や経皮吸収デバイスの研究開発が進められている。
【0004】
例えば、非麻薬性鎮痛薬の一つであるエプタゾシンは、各種がん疼痛時や術後疼痛時等に使用されており、他の非麻薬性鎮痛薬と比較して、身体依存、呼吸抑制等の副作用が少ないという優れた特徴を有する薬剤である。現在、エプタゾシン製剤としては、エプタゾシン臭化水素酸塩の注射剤のみが市販されている。しかし、注射剤は血中半減期が短いため頻回投与が必要となり、投与時に患者に苦痛を与える問題があるのみならず、患者が通院する必要があるため利便性に劣っている。このため、治療上充分量の薬剤を持続的に経皮吸収できるような外用製剤の開発が望まれているが、これまでに実用レベルにまで持続的に経皮吸収性を高める技術は存在せず、外用製剤として実用化されているものはなかった。
【0005】
非麻薬性鎮痛薬の経皮吸収製剤については、ペンタゾシンに経皮吸収促進剤であるミリスチン酸イソプロピル及びカプリル酸モノグリセリド(モノカプリル酸グリセリン)を併用することにより皮膚透過性が向上することが特許文献1に開示されている。また、エプタゾシンに特許文献1で用いられている経皮吸収促進剤と同様のミリスチン酸イソプロピル及びグリセリン脂肪酸エステルを添加した組成物が学会で報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、両文献に記載されているように、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル及びカプリル酸モノグリセリド等のグリセリン脂肪酸エステルを吸収促進剤として使用したペンタゾシンやエプタゾシンを含有する医薬組成物は、いずれも液体(溶液又は懸濁液)の形態(剤形)である。液体の剤形の薬剤は皮膚透過性が優れている場合もあるが、そのままで長時間持続的に薬効を発揮する外用剤として適用することは困難である。
【0006】
そこで、本発明者らは、非特許文献1の懸濁液形態のエプタゾシン含有医薬組成物について貼付剤化を試みた。懸濁液の場合には、均一な分散状態を保持した貼付剤化を行わなければならないという問題がある。そのため、薬剤を均一に分散させて保持することができる経皮投与製剤であるマトリックス型の貼付剤を作製した。マトリックスとして最も繁用されているアクリル系粘着剤について、様々なアクリル系粘着剤を用いたマトリックス型貼付剤を作製して経皮吸収性を試験したが、好ましい結果が得られなかった。すなわち、10重量%又は20重量%という高濃度のエプタゾシン含有マトリックスであっても、エプタゾシンの皮膚透過速度は2乃至23μg/cm2/hrであり(参考例1参照)、薬剤を満足できる透過性をもって体内に送達できるものは得られなかった。
【0007】
ところが、本発明者らは、フリー体のエプタゾシンを脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有するオルガノゲルに調製した場合、顕著な皮膚透過性を示すことを見出した。他方、市販の注射剤の有効成分と同じエプタゾシン臭化水素酸塩の場合には、オルガノゲルに調製しても、非特許文献1に記載された懸濁状態のものよりも低い皮膚透過特性しか得られなかった(実施例1参照)。このことから、単に液体形態の薬剤をオルガノゲルに適用するだけでは、必ずしも優れた皮膚透過性が得られるものではないことが判明した。
【0008】
ところで、このオルガノゲル形態の本発明外用医薬組成物は、フリー体のエプタゾシンだけでなく、フリー体のトラマドールやペンタゾシン等の他の薬剤についても同様に優れた皮膚透過性を示すことが明らかになった。さらに、通常、マトリックスやゲル形態の製剤においては、流動性がある液体形態の場合に比べて薬剤の放出が制限されて製剤からの薬剤放出率は低いと考えられていたが、驚くべきことに本発明外用医薬組成物は、液体形態を上回る非常に高い薬剤放出率を示した(実施例1参照)。これは、適用した組成物中に残存する薬剤が少ないということであり、実際使用される製剤においては非常に有利な特長である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2006/085521号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本薬学会第126年会講演要旨集 演題:P30[S]am-543「エプタゾシンの経皮吸収性に及ぼすカプリル酸モノグリセリドの影響」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、優れた薬剤皮膚透過性を有する外用医薬組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤の経皮吸収が、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを用いたオルガノゲルの形態にすることによって顕著に改善されるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る経皮吸収型の外用医薬組成物は、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤の皮膚透過性を顕著に改善するものであり、それ自体で持続的に充分量の薬剤を皮膚透過させることができるため、高い治療効果が実現できるものである。特に、本発明外用医薬組成物はゲル状の形態であるため、外用剤として種々の剤形に製剤化するのに好適であり、実用上非常に有利である。また、本発明外用医薬組成物は、製剤からの非常に高い薬剤放出率(すなわち、適用した組成物中に残存する薬剤が少ない)という利点も有する。これは薬剤の有効利用並びに管理上非常に重要である。さらに、本発明外用医薬組成物は溶液や懸濁液の形態の組成物のように薬剤を一気に放出せず、長時間持続的に放出できる特性を有することから、薬剤送達量を制御可能な製剤に応用することが容易である。これは鎮痛等の薬効を長時間持続的に発揮することを目的とする製剤にする場合に大きな利点となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、エプタゾシン含有アクリル系粘着剤を用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図2図2は、エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル(以下、本発明外用医薬組成物を、このように含有する薬剤と使用したオルガノゲル化剤の名称を冠したオルガノゲルとして呼ぶことがある。なお、GP-1は後述)、エプタゾシン臭化水素酸塩含有GP・1オルガノゲル、エプタゾシン含有懸濁液又はエプタゾシン臭化水素酸塩含有懸濁液の皮膚透過性試験において、各試料におけるエプタゾシンの累積皮膚透過量を比較した結果を経時的に示したグラフである。
図3図3は、調製法の異なるエプタゾシン含有GP-1オルガノゲルの皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図4図4は、調製法の異なるエプタゾシン含有EB-21オルガノゲルの皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである(EB-21は後述)。
図5図5は、エプタゾシン含有GP-1及びEB-21併用オルガノゲルの皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図6図6は、エプタゾシン含有レオパールKL2オルガノゲル又はレオパールKS2オルガノゲルの皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである(レオパールKL2及びレオパールKS2は後述)。
図7図7は、トラマドール含有GP-1オルガノゲル又はトラマドール塩酸塩含有GP-1オルガノゲルの皮膚透過性試験において、トラマドールの累積皮膚透過量を比較した結果を経時的に示したグラフである。
図8図8は、ペンタゾシン含有GP-1オルガノゲルの皮膚透過性試験において、ペンタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図9図9は、各種脂肪酸エステルを使用したエプタゾシン含有GP-1オルガノゲルの皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図10図10は、エプタゾシン含有EB-21オルガノゲルを用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性試験において、エプタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図11図11は、トラマドール含有EB-21オルガノゲルを用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性試験において、トラマドールの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
図12図12は、ペンタゾシン含有EB-21オルガノゲルを用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性試験において、ペンタゾシンの累積皮膚透過量を経時的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有するオルガノゲルである外用医薬組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤を有効成分とし、これを脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有したオルガノゲルの形態とした新規な経皮吸収型の外用医薬組成物及びその製造方法に関する。
【0016】
本発明外用医薬組成物の有効成分として利用できる薬剤としては、外用剤としての使用が望まれるあらゆる種類の薬剤が考えられるが、その中の一つが非麻薬性鎮痛薬である。具体的には、エプタゾシン、トラマドール、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール等が挙げられ、それらの立体異性体及び結晶多形も包含される。
【0017】
本発明における薬剤は、塩であることを否定されるものではないが、親水性の高い塩は不適当であり、例えば、エプタゾシン臭化水素酸塩やトラマドール塩酸塩等では、それぞれのフリー体に比して経皮吸収性が著しく劣り不適当である。また、本発明外用医薬組成物においては、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤を単独で若しくは適宜組み合わせて用いることができ、又、他の医薬活性成分との配合剤としてもよい。薬剤配合量は、薬剤の種類や後述する剤形などによって異なるが、例えば、薬剤が非麻薬性鎮痛薬の場合、その配合量は、組成物の全重量に対して、0.01乃至20重量%であり、好ましくは、0.05乃至15重量%であり、より好ましくは0.1乃至10重量%である。
【0018】
本発明において利用可能な脂肪酸エステルとしては、炭素数6乃至22の脂肪酸及び炭素数1乃至12のアルコールからなる脂肪酸エステル等が挙げられる。炭素数6乃至22の脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等のモノカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸等が挙げられる。一方、炭素数1乃至12のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等が挙げられる。従って、脂肪酸エステルとしては、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸へキシル、パルチミン酸オクチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸エチル、リノール酸イソプロピル等が挙げられる。好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル及びリノール酸イソプロピルが挙げられ、なかでも、ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルが特に好ましい。また、これらの脂肪酸エステルを単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。脂肪酸エステルの配合量は、後述する剤形などによって異なるが、組成物の全重量に対して、30乃至95重量%であり、好ましくは、50乃至95重量%である。
【0019】
本発明において利用可能なグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が5乃至25であるグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的には、カプリル酸グリセリン、カプリン酸グリセリン、ラウリン酸グリセリン、パルミチン酸グリセリン、オレイン酸グリセリン、ステアリン酸グリセリン、ジカプリル酸グリセリン、トリカプリル酸グリセリン等が挙げられる。好ましくは、モノカプリル酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン及びモノラウリン酸グリセリンが挙げられ、なかでも、モノカプリル酸グリセリン及びモノカプリン酸グリセリンが特に好ましい。また、これらのグリセリン脂肪酸エステルを単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。グリセリン脂肪酸エステルの配合量は、後述する剤形などによって異なるが、組成物の全重量に対して、1乃至20重量%であり、好ましくは、1乃至15重量%であり、より好ましくは2乃至10重量%である。
【0020】
本発明において、オルガノゲルとは、ゲル、すなわち液体よりむしろ弾性固体としての挙動を示す分散系のうち、溶媒が有機溶媒であるものをいい、オイルゲル、油ゲル、油性ゲル等とも呼ばれる。
【0021】
オルガノゲル化剤としては、高分子化合物のものも多数存在するが、本発明に用いられるオルガノゲルを得るためのオルガノゲル化剤としては、低分子化合物タイプのものが適しており、N-アシルアミノ酸アミド等のアミノ酸誘導体、デキストリン脂肪酸エステル等のデキストリン誘導体、ジベンジリデンソルビトール誘導体等が挙げられる。なかでも、N-アシルアミノ酸アミド等のアミノ酸誘導体やデキストリン脂肪酸エステル等のデキストリン誘導体が好適である。N-アシルアミノ酸アミドとしては、例えば、ジブチルラウロイルグルタミド〔商品名:GP-1〕、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド〔商品名:EB-21〕(いずれも味の素株式会社製)等が挙げられる。また、デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば、パルミチン酸デキストリン〔商品名:レオパールKL2、レオパールKS2、レオパールTL2〕、(パルミチン酸/エチルへキサン酸)デキストリン〔商品名:レオパールTT2〕、ミリスチン酸デキストリン〔商品名:レオパールMKL2〕(いずれも千葉製粉株式会社製)等が挙げられる。ジベンジリデンソルビトール誘導体としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール〔商品名:ゲルオールD〕、メチルジベンジリデンソルビトール〔商品名:ゲルオールMD〕(いずれも新日本理化株式会社製)等が挙げられる。また、同種のオルガノゲル化剤を単独或いは2種以上を混合して用いてもよい。例えば、上記GP-1とEB-21を組合せることによって、ゲル強度や透明性を適宜調整することができる。オルガノゲル化剤の配合量は、使用するゲル化剤の種類及び後述する剤形などによって異なるが、組成物の全重量に対して、0.1乃至20重量%であり、好ましくは、1乃至15重量%である。
【0022】
本発明に係る外用医薬組成物は、薬剤、脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びオルガノゲル化剤を混和することにより製造することができる。オルガノゲル化剤によって通常行われている方法又は推奨されている方法等を利用できるが、薬剤やその他の成分を製剤中に均一に溶解又は分散させるために、必要に応じ低級アルコール(エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1乃至4のアルコール)、酢酸エチル、有機酸(ミリスチン酸、オレイン酸等の炭素数6乃至22の脂肪酸)等の適当な他の溶剤を用いることができる。混和された溶液は、加熱後に冷却してゲルを形成させる等、各オルガノゲル化剤に適した条件に従って最終的なオルガノゲルにすることができる。
【0023】
薬剤としては、上記したとおり、非麻薬性鎮痛薬その他、外用剤としての使用が望まれるあらゆる種類の薬剤が考えられる。エプタゾシン、トラマドール、ペンタゾシンでは、フリー体が適している。また、特にエプタゾシンのようにオルガノゲル組成物中で懸濁状態にある薬剤については、オルガノゲル化剤を添加する前に、適量のオルガノゲル化剤以外の成分(脂肪酸エステル、又は、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル)にエプタゾシンを加え、これを粉砕しながら混和することにより、得られる組成物における薬剤の経皮吸収性がさらに向上する。
【0024】
本発明に係る外用医薬組成物を用いて各種の外用製剤を製造することができる。すなわち、基剤、補助剤、添加剤などを必要に応じて組み合わせ、日本薬局方の製剤総則などに記載される通常の方法或いは各種オルガノゲル化剤に適した製造方法に従って、所望の外用製剤を製造することができる。
【0025】
本発明に係る外用医薬組成物の剤形は特に限定されるものでなく、貼付剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤等、薬剤を皮膚から吸収させる種々の外用製剤に製剤化することができる。例えば、貼付剤としては、本発明外用医薬組成物を内包するリザーバ型や本発明外用医薬組成物に粘着剤を添加したマトリックス型の経皮吸収型製剤とすること等ができる。特に本発明外用医薬組成物は、貼付剤にすることにより、薬剤の放出を制御した徐放性製剤にするのに適している。そのような徐放性製剤としては、1日に1回貼付するタイプや、2日に1回貼付するタイプのものが挙げられる。
【0026】
リザーバ型貼付剤は、薬物リザーバを有する形態である。通常、薬物リザーバは外側を支持体で覆われており、皮膚側を薬物放出膜(薬物制御膜)で覆われている。薬物の皮膚透過性に影響を与えるのは薬物放出膜であり、本発明外用医薬組成物は、多孔性ポリプロピレン膜やニトロセルロース膜、四フッ化エチレン樹脂等から成るメンブレンフィルターのような膜を通してゲル内の薬物が経皮吸収されることが確認された。従って、本発明外用医薬組成物は、各種の薬物放出膜を用いたリザーバ型製剤とすることができる。
【0027】
マトリックス型貼付剤は、支持体(バッキング)と粘着性基剤層を有する形態である。通常、薬剤はこの粘着性基剤層に含有されている。粘着性基剤における粘着剤としては、アクリル樹脂(アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー等)、シリコン樹脂、スチレンイソプレンブロック共重合体、脂肪族系炭化水素樹脂(C5留分から抽出された不飽和モノマーを重合して得られる石油樹脂)、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂(テルペン系水素添加樹脂等)、ロジンエステル樹脂(水素添加ロジンエステル樹脂等)、ポリイソブチレン樹脂等の1種又は複数を組み合わせて使用することができる。粘着性基剤は、粘着剤を薬剤含有オルガノゲルに添加して調製される。この粘着性基剤を、支持体(バッキング)に塗工法やキャスティング法等の通常行われている製法により積層してマトリックス型貼付剤を製造することができる。
【0028】
また、ゲル剤としては、少し粘度のある液剤に近いタイプからスティックタイプのハードゲル剤まで、固さや粘度が異なる種々の製剤にすることができ、O/Wエマルジョンのクリーム剤とすることもできる。これらの製剤に好適な組成物は、オルガノゲル化剤の種類及び濃度を適宜調整して製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例及び参考例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、実施例中の%は全て重量%を表す。また、以下、薬剤であるエプタゾシン、トラマドール、ペンタゾシン等について、特に塩であることを記載していない場合は、フリー体であることを意味する。なお、以下、エプタゾシンをEPZ、トラマドールをTRD、ペンタゾシンをPTZとだけ略記することがある。
【0030】
参考例1.マトリックス型貼付剤
1.アクリル系粘着剤の調製
アセトン21.0 g、エタノール11.7 g及び2-プロパノール2.3 gをビーカーに量り取り、撹拌して均一に混和した。ここに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE (Eudragit E PO、エボニックデグサジャパン社製)42.2 gを撹拌しながら少量ずつ加え、溶解させた。その後、可塑剤であるセバシン酸ジブチル19.0 gをすばやく加え、10分間撹拌した。最後に、架橋剤であるコハク酸3.8 gを撹拌しながら少量ずつ加えて固形成分を完全に溶解させ、Eudragit E粘着剤(固形成分含量65%)とした。
【0031】
2.貼付剤の調製
サンプル管にエプタゾシン(EPZ) 49.99 mg(10%)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)50.21 mg(10%)及びモノカプリル酸グリセリン(GEFA-C8)24.64 mg(5%)をそれぞれ秤取し、少量のアセトン又はメタノールを加えて溶解させた。ここに、上記のEudragit E粘着剤600.8 mg(固形成分390.5 mg)を加え、混合撹拌した。この溶液を平面ガラス板上に固定した支持体(Scotchpak 9732 Backing、スリーエムヘルスケア社製)上に、フィルムアプリケーターを用いて厚さ200μmで塗工した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃で20分間乾燥した後、剥離フィルム(Scotchpak 1022 Release Liner、スリーエムヘルスケア社製)のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、10% EPZ含有貼付剤とした。
【0032】
また、Eudragit E POの代わりにEudragit RS PO及びEudragit RL POを1対4の割合で混合したEudragit RS/RL (1 : 4)粘着剤、Eudragit RS PO及びEudragit RL PO を1対1の割合で混合したEudragit RS/RL (1 : 1)粘着剤、或いは他種のアクリル系粘着剤Duro-Tak 87-9301又はDuro-Tak 87-2677(ヘンケルジャパン社製)を用いて、上記と同様の方法でマトリックス型貼付剤を作製した。作製したマトリックス型貼付剤の処方を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
3.皮膚透過性試験
雄性へアレスマウス(4〜7週令)摘出皮膚をFranz型撹拌セルのレセプター相とドナー相の間にセットし、レセプター相にはMcIlvain緩衝液(pH 4.2)を加えた。撹拌子の回転速度は約650 rpm、実験温度は32℃とした。あらかじめMcIlvain緩衝液にて1時間水和させた皮膚の上(ドナー相)に直径12 mmの円形に切断した各種貼付剤を適用した。適用開始時点を0時間とし、8時間までは1時間ごとに、その後適用開始時点より24時間、30時間及び48時間にマニュアルにてサンプリングを行った。サンプリングは、Franz型撹拌セルのレセプター相に32℃に保温した緩衝液を0.5 mL加え、同量の試料を抜き取ることにより実施した。採取した試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量し、EPZの皮膚透過量(n=4)を求めた。
【0035】
〔HPLC条件〕
検出器:紫外可視検出器(測定波長:278 nm)
カラム:Inertsil ODS-3(φ4.6 mm×150 mm)
流速;1.0 mL/min
カラム温度:室温
移動相:50 mMリン酸緩衝水溶液 : アセトニトリル = 85 : 15
試料の注入量:10μL
(標準溶液の薬物濃度は0.2 mg/mLに調製し、各試料中の薬物濃度は絶対検量線法により算出した。)
【0036】
各マトリックス型貼付剤のEPZの皮膚透過量より、透過速度(Flux)及び遅延時間(Lag Time)を算出した。累積透過量(48時間後)と共に表2に示す。また、マトリックス型貼付剤No.1における経時的累積透過量のグラフを図1に示す。なお、本発明においては、少なくとも4測定時間(場合によっては3測定時間)における累積透過量から回帰直線を求めてその傾きの最大値を透過速度(Flux)とし、その回帰直線のX軸切片を求めてその値を遅延時間(Lag Time)とした。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例1.懸濁液とオルガノゲルの比較
1.各試料の調製
(1)エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ 63.56 mg(2%)、GP-1 124.73 mg(4%)及びGEFA-C8 153.47 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPM 2677.55 mgを加えて全量 3019.31 mgとした。試験管を130℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して、ボルテックスミキサーにて撹拌し、GP-1を均一に溶解させた。GP-1が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を80℃に設定し、時々撹拌して均一に混和しながら冷却した。90℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、撹拌しながら放冷しEPZ含有オルガノゲルとした。
【0039】
(2)エプタゾシン臭化水素酸塩含有GP-1オルガノゲル
エプタゾシン臭化水素酸塩(EPZ・HBr) 84.42 mg(EPZとして2%)、GP-1 120.85 mg(4%)、及びGEFA-C8 147.96 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPM 2632.08 mgを加えて全量 2985.31 mgとした。以下、上記1.(1)と同様に調製し、EPZ・HBr含有オルガノゲルとした。
【0040】
(3)エプタゾシン含有懸濁液
EPZ 18.43 mg(0.6%)及びGEFA-C8 156.84 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3000 mgとした。この混液をよく撹拌した後、20分間の超音波処理で均一に分散させ、EPZ懸濁液とした。
【0041】
(4)エプタゾシン臭化水素酸塩含有懸濁液
EPZ・HBr 24.82 mg(EPZとして0.6%)及びGEFA-C8 149.60 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3000 mgとした。以下、上記1.(3)と同様に調製し、EPZ・HBr懸濁液とした。
【0042】
2.マウス皮膚透過性試験
(1)オルガノゲルのマウス皮膚透過性試験
雄性へアレスマウス(4〜7週令)摘出皮膚をFranz型撹拌セルのレセプター相とドナー相の間にセットし、レセプター相にはMcIlvain緩衝液を加えた。撹拌子の回転速度は約650 rpm、実験温度は32℃とした。予めMcIlvain緩衝液にて1時間水和させた皮膚の上(ドナー相)に上記1.(1)及び(2)で調製した各オルガノゲルを約280 mg適用した。適用開始時点を0時間とし、8時間までは1時間ごとに、8〜48時間は4時間ごとに自動経皮吸収試験器(商品名:Microette Plus、ハンソンリサーチ社製)によりサンプリングを行った。サンプリングは、Franz型撹拌セルのレセプター相から試料2.0 mLを抜き取り、32℃に保温した同量の緩衝液を補充することにより実施した。採取した試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量し、EPZの皮膚透過量(n=5)を求めた。なお、HPLC条件は上記参考例1と同様である。
【0043】
(2)懸濁液のマウス皮膚透過性試験
上記2.(1)と同様に、上記1.(3)及び(4)で調製したEPZ含有懸濁液及びEPZ・HBr含有懸濁液を1mL(比重:約0.85)適用してマウス皮膚透過性試験を行った。
【0044】
上記実施例1の1.(1)乃至(4)で調製した4種の組成物について、上記2.(1)及び(2)にて測定した各EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出した。累積透過量(48時間後)と共に表3に示す。また、各EPZ含有オルガノゲル及び懸濁液における経時的累積透過量のグラフを図2に示す。更に、薬剤適用量を薬剤放出量(48時間後)で除した「製剤からの薬剤放出率」を表4に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
実施例2.オルガノゲルの調製
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル(第1法)
EPZ 60.52 mg(2%)、GP-1 121.1 mg(4%)及びGEFA-C8 151.5 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3000.8 mgとした。試験管を予め130℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、GP-1を均一に溶解させた。GP-1が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を80℃に設定し、時々撹拌して薬物を均一に分散させながら冷却した。90℃位まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、撹拌しながら放冷しオルガノゲルとした。
【0048】
(2)エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル(第2法)
EPZ 100.53 mg、GEFA-C8 251.6 mg及びIPM 2011.9 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1912.4 mg〔EPZ 81.32 mg(2%)、GEFA-C8 203.5 mg(5%)含有〕及びGP-1 160.1 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 4021.2 mgとした。試験管を予め130℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、GP-1を均一に溶解させた。GP-1が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を90℃に設定し、時々撹拌して薬物を均一に分散させながら冷却した。100℃位まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまでゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置しオルガノゲルとした。
【0049】
(3)エプタゾシン含有EB-21オルガノゲル(第1法)
EPZ 60.20 mg(2%)、EB-21 121.5 mg(4%)及びGEFA-C8 153.9 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 2999.3 mgとした。試験管を予め140℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、EB-21を均一に溶解させた。EB-21が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を100℃に設定し、時々撹拌して均一に混和しながら冷却した。120℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、撹拌しながら放冷しオルガノゲルとした。
【0050】
(4)エプタゾシン含有EB-21オルガノゲル(第2法)
EPZ 100.11 mg、GEFA-C8 250.9 mg及びIPM 2151.3 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 2009.7 mg〔EPZ 80.40 mg(2%)、GEFA-C8 201.5 mg(5%)含有〕及びEB-21 160.0 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 4000.1 mgとした。試験管を予め140℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、EB-21を均一に溶解させた。EB-21が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を100℃に設定し、時々撹拌して薬物を均一に分散させながら冷却した。120℃位まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまでゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置しオルガノゲルとした。
【0051】
(5)エプタゾシン含有GP-1及びEB-21併用オルガノゲル
EPZ 60.03 mg(2%)、GP-1 89.7 mg(3%)、EB-21 30.7 mg(1%)及びGEFA-C8 150.8 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3004.5 mgとした。試験管を130℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して、ボルテックスミキサーにて撹拌し、GP-1及びEB-21を均一に溶解させた。GP-1及びEB-21が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を80℃に設定し、時々撹拌して均一に混和しながら冷却した。90℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、撹拌しながら放冷しオルガノゲルとした。
【0052】
(6)エプタゾシン含有レオパールKL2 オルガノゲル
EPZ 59.76 mg(2%)、レオパールKL2 298.8 mg(10%)及びGEFA-C8 153.4 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3002.9 mgとした。試験管を95℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して、ボルテックスミキサーにて撹拌し、レオパールKL2を均一に溶解させた。レオパールKL2が溶解した後、ヒーティングブロックより取り出して、撹拌しながら放冷しオルガノゲルとした。
【0053】
(7)エプタゾシン含有レオパールKS2 オルガノゲル
EPZ 60.20 mg(2%)、レオパールKS2 297.7 mg(10%)及びGEFA-C8 153.2 mg(5%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3005.8 mgとした。以下、上記1.(6)と同様に調製し、オルガノゲルとした。
【0054】
2.トラマドール含有オルガノゲルの調製
(1)トラマドール含有GP-1オルガノゲル
トラマドール(TRD) 60.76 mg(2%)、GEFA-C8 150.4 mg(5%)及びGP-1 120.8 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3007.2 mgとした。試験管を予め135℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、混合溶液を均一に溶解させた。均一に混和した後、ヒーティングブロックの温度設定を90℃に設定し、時々撹拌し100℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまで室温にてゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置しオルガノゲルとした。
【0055】
(2)トラマドール塩酸塩含有GP-1オルガノゲル
トラマドール塩酸塩(TRD・HCl) 91.23 mg(TRDとして2%)、GEFA-C8 199.0 mg及びIPM 1602.4 mgを取り、乳鉢上にてTRD・HClを粉砕しながら混和し、TRD・HCl 懸濁液とした。この懸濁液 1438.1 mg(TRD・HCl 69.32 mg[TRDとして60.89 mg](2%)、GEFA-C8 151.2 mg(5%)含有)及びGP-1 121.3 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3020.0 mgとした。試験管を予め135℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、GP-1を均一に溶解させた。GP-1が溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を90℃に設定し、時々撹拌して薬物を均一に分散させながら冷却した。105℃位まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまで室温にてゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置しオルガノゲルとした。
【0056】
3.ペンタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)ペンタゾシン含有GP-1オルガノゲル
ペンタゾシン(PTZ) 79.86 mg(2%)、GEFA-C8 204.0 mg(5%)及びGP-1 162.7 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3998.3 mgとした。試験管を予め135℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、混合溶液を均一に溶解させた。均一に混和した後、ヒーティングブロックの温度設定を90℃に設定し、時々撹拌し100℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまで室温にてゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置しオルガノゲルとした。
【0057】
実施例3.オルガノゲルのマウス皮膚透過性試験
(1)エプタゾシン含有オルガノゲルのマウス皮膚透過性試験
雄性へアレスマウス(4〜9週令)摘出皮膚をFranz型撹拌セルのレセプター相とドナー相の間にセットし、レセプター相にはMcIlvain緩衝液(pH 4.2)を加えた。撹拌子の回転速度は約650 rpm、実験温度は32℃とした。予めMcIlvain緩衝液にて1時間水和させた皮膚の上(ドナー相)に上記実施例2の1.で調製した各EPZ含有オルガノゲルを約300 mg適用した。適用開始時点を0時間とし、8時間までは1時間ごとに、20〜30時間、44〜48時間は2時間ごとにマニュアルにてサンプリングを行った。サンプリングは、Franz型撹拌セルのレセプター相に32℃に保温したMcIlvain緩衝液を0.5 mL加え、同量の試料を抜き取ることにより実施した。採取した試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量し、EPZの皮膚透過量(n=4)を求めた。なお、HPLC条件は上記参考例1と同様である。
【0058】
(2)トラマドール含有オルガノゲルのマウス皮膚透過性試験
上記(1)と同様に、上記実施例2の2.で調製したTRD(フリー体又は塩酸塩)含有オルガノゲルノゲルについて、TRDの皮膚透過量(n=4)を求めた。
【0059】
〔HPLC条件〕
検出器:紫外可視検出器(測定波長:271 nm)
カラム:Inertsil ODS-3(φ4.6 mm×150 mm)
流速:1.0 mL/min
カラム温度:40℃
移動相:トリフルオロ酢酸緩衝水溶液(1 → 2000): アセトニトリル = 80 : 20試料の注入量:10μL
(標準溶液の薬物濃度は0.25 mg/mLに調製し、各試料中の薬物濃度は絶対検量線法により算出した。)
【0060】
(3)ペンタゾシン含有オルガノゲルのマウス皮膚透過性試験
レセプター相にPBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩液)(pH 7.5)を用いた以外は上記(1)と同様にして、上記実施例2の3.で調製したPTZ含有オルガノゲルを約300 mg適用し、PTZの皮膚透過量(n=4)を求めた。
【0061】
〔HPLC条件〕
検出器:紫外可視検出器(測定波長:278 nm)
カラム: Capcell pak C18(φ4.6 mm×150 mm)
流速:1.0 mL/min
カラム温度:室温
移動相:50 mMリン酸緩衝水溶液 : アセトニトリル = 77 : 23
試料の注入量:10μL
(標準溶液の薬物濃度は0.1 mg/mLに調製し、各試料中の薬物濃度は絶対検量線法により算出した。)
【0062】
上記実施例2の1.乃至3.で調製した10種の組成物について、上記実施例3の(1)乃至(3)にて測定した薬物の皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出した。累積透過量(48時間後)と共に表5に示す。また、各薬剤含有オルガノゲルにおける経時的累積透過量のグラフを図3乃至図8に示す。なお、PTZについては、GP-1(4%)に代えてEB-21(4%)のオルガノゲルを調製して皮膚透過性試験を行った結果、GP-1の場合とほぼ同等の皮膚透過性(透過速度、遅延時間、累積透過量)が得られた。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例4.各種脂肪酸エステルを使用したオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)ミリスチン酸イソプロピル(IPM)オルガノゲル
IPMオルガノゲルは上記実施例2の1.(2)で調製したものを用いた。
【0065】
(2)パルミチン酸イソプロピル(IPP)オルガノゲル
EPZ 80.19 mg、GEFA-C8 199.9 mg及びIPP 1729.1 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1501.2 mg〔EPZ 59.92 mg(2%)、GEFA-C8 149.4 mg(5%)含有〕及びGP-1 120.9 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPPを加えて全量 3002.4 mgとした。以下、上記実施例2の1.(2)と同様に調製し、IPPオルガノゲルとした。
【0066】
(3)パルミチン酸2-エチルヘキシル(EHP)オルガノゲル
IPPの代わりにEHPを用いて、上記(2)と同様に調製し、EHPオルガノゲルとした。
【0067】
(4)ステアリン酸エチル(ETS)オルガノゲル
IPPの代わりにETSを用いて、上記(2)と同様に調製し、ETSオルガノゲルとした。
【0068】
(5)オレイン酸エチル(ETO)オルガノゲル
IPPの代わりにETOを用いて、上記(2)と同様に調製し、ETOオルガノゲルとした。
【0069】
(6)リノール酸イソプロピル(IPLi)オルガノゲル
IPPの代わりにIPLiを用いて、上記(2)と同様に調製し、IPLiオルガノゲルとした。
【0070】
(7)アジピン酸ジイソプロピル(DIAd)オルガノゲル
IPPの代わりにDIAdを用いて、上記(2)と同様に調製し、DIAdオルガノゲルとした。
【0071】
(8)セバシン酸ジエチル(DESe)オルガノゲル
IPPの代わりにDESeを用いて、上記(2)と同様に調製し、DESeオルガノゲルとした。
【0072】
2.マウス皮膚透過性試験
上記1.で調製した各種脂肪酸エステルを用いたEPZ含有オルガノゲル(1)乃至(8)について、上記実施例3(1)と同様にマウス皮膚透過性試験を行い、EPZの皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表6に示す。また、経時的累積透過量のグラフを図9に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
実施例5.各種グリセリン脂肪酸エステルを添加したオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)5%モノカプリル酸グリセリン(GEFA-C8)添加オルガノゲル
5%GEFA-C8添加オルガノゲルは上記実施例2の1.(2)で調製したものを用いた。
【0075】
(2)5%モノカプリン酸グリセリン(GEFA-C10)添加オルガノゲル
GEFA-C8の代わりにGEFA-C10を用いて、上記(1)と同様に調製し、5%GEFA-C10添加オルガノゲルオルガノゲルとした。
【0076】
(3)5%モノラウリン酸グリセリン(GEFA-C12)添加オルガノゲル
GEFA-C8の代わりにGEFA-C12を用いて、上記(1)と同様に調製し、5%GEFA-C12添加オルガノゲルとした。
【0077】
(4)5%モノオレイン酸グリセリン(GEFA-C18:1)添加オルガノゲル
GEFA-C8の代わりにGEFA-C18:1を用いて、上記(1)と同様に調製し、5%GEFA- C18:1添加オルガノゲルとした。
【0078】
(5)5%ジカプリル酸グリセリン(GEFA-diC8)添加オルガノゲル
GEFA-C8の代わりにGEFA-diC8を用いて、上記(1)と同様に調製し、5%GEFA-diC8添加オルガノゲルとした。
【0079】
(6)5%トリカプリル酸グリセリン(GEFA-triC8)添加オルガノゲル
GEFA-C8の代わりにGEFA-triC8を用いて、上記(1)と同様に調製し、5%GEFA-triC8添加オルガノゲルとした。
【0080】
(7)グリセリン脂肪酸エステル無添加オルガノゲル
EPZ 80.25 mg及びIPM 1919.0 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1614.4 mg〔EPZ 64.80 mg(2%)含有〕及びGP-1 120.0 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3017.5 mgとした。以下、上記実施例2の1.(2)と同様に調製し、グリセリン脂肪酸エステル無添加オルガノゲルとした。
【0081】
(8)2.5%モノカプリル酸グリセリン(GEFA-C8)添加オルガノゲル
EPZ 80.59 mg、GEFA-C8 101.5 mg及びIPM 1825.1 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1502.4 mg〔EPZ 60.32 mg(2%)、GEFA-C8 75.97 mg(2.5%)含有〕及びGP-1 121.4 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3003.2 mgとした。以下、上記実施例2の1.(2)と同様に調製し、2.5%GEFA-C8添加オルガノゲルとした。
【0082】
(9)7.5%モノカプリル酸グリセリン(GEFA-C8)添加オルガノゲル
GEFA-C8 最終濃度が7.5%となるように、上記(8)と同様に調製し、7.5%GEFA-C8添加オルガノゲルとした。
【0083】
(10)10%モノカプリル酸グリセリン(GEFA-C8)添加オルガノゲル
GEFA-C8 最終濃度が10%となるように、上記(8)と同様に調製し、10%GEFA-C8オルガノゲル添加とした。
【0084】
2.マウス皮膚透過性試験
上記1.で調製した各種グリセリン脂肪酸エステルを用いたEPZ含有オルガノゲル(1)乃至(10)について、上記実施例3(1)と同様にマウス皮膚透過性試験を行い、EPZの皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表7に示す。
【0085】
【表7】
【0086】
実施例6.各種濃度の薬剤を含有するオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)0.5%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ 40.17 mg、GEFA-C8 400.3 mg及びIPM 3559.6 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1518.8 mg〔EPZ 15.25 mg(0.5%)、GEFA-C8 152.0 mg(5%)含有〕及びGP-1 120.5 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3008.6 mgとした。以下、上記実施例2の1.(2)と同様に調製し、0.5%EPZ含有GP-1オルガノゲルとした。
【0087】
(2)1%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ が最終濃度1%となるように、上記(1)と同様に調製し、1%EPZ含有GP-1オルガノゲルとした。
【0088】
(3)2%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
2%EPZ含有GP-1オルガノゲルは上記実施例2の1.(2)で調製したものを用いた。
【0089】
(4)5%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ が最終濃度5%となるように、上記(1)と同様に調製し、5%EPZ含有GP-1オルガノゲルとした。
【0090】
(5)10%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ が最終濃度10%となるように、上記(1)と同様に調製し、10%EPZ含有GP-1オルガノゲルとした。
【0091】
(6)15%エプタゾシン含有GP-1オルガノゲル
EPZ が最終濃度15%となるように、上記(1)と同様に調製し、15%EPZ含有GP-1オルガノゲルとした。
【0092】
2.トラマドール含有オルガノゲルの調製
(1)2%トラマドール含有EB-21オルガノゲル
TRD 60.25 mg (2%) 、GEFA-C8 153.5 mg (5%) 及びEB-21 119.1 mg (4%) を試験管に加え、更にIPMを加えて全量 3002.0 mgとした。試験管をあらかじめ145℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌し、均一に溶解させた。均一に溶解した後、ヒーティングブロックの温度設定を100℃に設定し、時々撹拌し120℃以下まで冷却したとき、ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまで室温にてゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置し、2%TRD含有EB-21オルガノゲルとした。
【0093】
(2)10%トラマドール含有EB-21オルガノゲル
TRD 300.21 mg (10%) 、GEFA-C8 150.2 mg (5%) 及びEB-21 120.8 mg (4%) を試験管に加え、更にIPMを加えて全量 3001.7 mgとした。以下、上記(1)と同様に調製し、10%TRD含有EB-21オルガノゲルとした。
3.マウス皮膚透過性試験
上記1.で調製したEPZ含有オルガノゲルについては上記実施例3(1)と同様に、また、上記2.で調製したTRD含有オルガノゲルについては上記実施例3(2)と同様に、各々、マウス皮膚透過性試験を行い、薬剤の皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、薬剤の皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表8に示す。
【0094】
【表8】
【0095】
実施例7.各種濃度のゲル化剤を用いたオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)2%GP-1オルガノゲル
EPZ 200.78 mg、GEFA-C8 500.4 mg及びIPM 4302.9 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1504.7 mg〔EPZ 60.37 mg(2%)、GEFA-C8 150.5 mg(5%)含有〕及びGP-1 60.8 mg(2%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3001.0 mgとした。以下、上記実施例2の1.(2)と同様に調製し、2%GP-1オルガノゲルとした。
【0096】
(2)4%GP-1オルガノゲル
4%GP-1オルガノゲルは上記実施例2の1.(2)で調製したものを用いた。
【0097】
(3)6%GP-1オルガノゲル
GP-1が最終濃度6%となるように、上記(1)と同様に調製し、6%GP-1オルガノゲルとした。
【0098】
(4)10%GP-1オルガノゲル
GP-1が最終濃度10%となるように、上記(1)と同様に調製し、10%GP-1オルガノゲルとした。
【0099】
2.マウス皮膚透過性試験
上記1.で調製した各種濃度のGP-1を用いたオルガノゲル(1)乃至(4)について、上記実施例3(1)と同様にマウス皮膚透過性試験を行い、EPZの皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表9に示す。
【0100】
【表9】
【0101】
実施例8.低級アルコールを添加して調製したオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
(1)20%エタノールを添加して調製した GP-1オルガノゲル
EPZ 159.15 mg、GEFA-C8 400.5 mg及びIPM 3446.2 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1519.1 mg〔EPZ 60.35 mg(2%)、GEFA-C8 151.9 mg(5%)含有〕及びGP-1 120.2 mg(4%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3092.2 mgとした。ここに99.5% エタノール 760μL(20%)を加え、試験管を予め100℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。時々、試験管をヒーティングブロックより取り出して撹拌し、均一に溶解させた。そのまま加熱を続け、エタノールを一部留去した。ヒーティングブロックより取り出して、ゲル化が開始するまでゆっくり撹拌した。ゲル化が始まった時点で撹拌をやめて静置して、40℃にて終夜乾燥し、20%エタノールを添加して調製した GP-1オルガノゲルとした。
【0102】
(2)50%エタノールを添加して調製した GP-1オルガノゲル
混合溶液の50%のエタノールを加えて、上記(1)と同様に調製し、50%エタノールを添加して調製した GP-1オルガノゲルとした。
【0103】
(3)30%エタノールを添加して調製したゲルオールDオルガノゲル
EPZ 79.95 mg、GEFA-C8 600.6 mg及びIPM 1719.1 mgを取り、乳鉢上にてEPZを粉砕しながら混和し、EPZ懸濁液とした。この懸濁液 1505.9 mg〔EPZ 60.21 mg(2%)、GEFA-C8 151.1 mg(5%)含有〕及びゲルオールD 9.08 mg(0.3%)を試験管に加え、さらにIPMを加えて全量 3007.6 mgとした。ここに99.5% エタノール 1200μL(30%)を加え、試験管を予め100℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱した。以下、上記(1)と同様に調製し、30%エタノールを添加して調製したゲルオールDオルガノゲルとした。
【0104】
2.マウス皮膚透過性試験
上記1.でエタノールを添加して調製したEPZ含有オルガノゲル(1)乃至(3)について、上記実施例3(1)と同様にマウス皮膚透過性試験を行い、EPZの皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表10に示す。
【0105】
【表10】
【0106】
実施例9.薬物放出膜又はメンブレンフィルターを通してのオルガノゲルの皮膚透過性
1.エプタゾシン含有オルガノゲルの調製
上記実施例2の1.(2)と同様に調製したEPZ含有GP-1オルガノゲルを用いた。
【0107】
2.マウス皮膚透過性試験
ヘアレスマウス摘出皮膚の上(ドナー相)に、薬物放出膜(多孔性ポリプロピレン膜 4×4cm、商品名:Celgard2400、ポリポア社製)、又は、3種のメンブレンフィルターA〔ニトロセルロース、0.20μm、133μm〕、メンブレンフィルターB〔四フッ化エチレン樹脂、0.20μm、80μm 〕、メンブレンフィルターC〔親水性特殊処理四フッ化エチレン樹脂、0.20μm、35μm〕(各々括弧内は、材質、孔径、厚さを示す。いずれもADVANTEC社製。)の各々を載せてからオルガノゲルを適用する以外は上記実施例3(1)と同様に、上記1.で調製したEPZ含有GP-1オルガノゲルのEPZの皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、EPZの皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(48時間後)と共に表11に示す。
【0108】
【表11】
【0109】
実施例10.オルガノゲルを用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性
1.粘着剤の調製
本実施例で使用する粘着剤のうち、Eudragit E 粘着剤(アクリル系粘着剤、EVONIC DEGUSSA JAPAN社製)については、以下の通りに調製したもの粘着剤として使用した。アセトン、エタノール及び2-プロパノールをそれぞれ19.9g、11.1g及び2.2gをビーカーに量り取り、撹拌して均一に混和した。ここに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Eudragit E PO、EVONIC DEGUSSA JAPAN社製)37.5gを撹拌しながら少量ずつ加え、溶解させた。その後、可塑剤であるセバシン酸ジブチル19.9gをすばやく加え、10分間撹拌した。最後に、架橋剤であるコハク酸3.4gを撹拌しながら少量ずつ加えて固形成分を完全に溶解させ、Eudragit E粘着剤 (固形成分含量64.7%) とした。
【0110】
また、その他の粘着剤のDuro-Tak 87-9301(アクリル系粘着剤、ヘンケル社製)、BIO-PSA 7-4202(シリコン系粘着剤、東レ・ダウコーニング社製)、Quintone M100(脂肪族系炭化水素樹脂粘着剤、日本ゼオン社製)、Quintac 3421(スチレンイソプレンブロック共重合体、日本ゼオン社製)、クリアロン P125(テルペン系水素添加樹脂粘着剤、ヤスハラケミカル社製)、エステルガムH(水素添加ロジンエステル樹脂、荒川化学社製)については、適宜、溶剤に溶解し、必要に応じて可塑剤や架橋剤を添加して使用した。
【0111】
2.エプタゾシン含有オルガノゲルマトリックス型貼付剤の調製
A.GP-1オルガノゲルマトリックス型貼付剤(粘着剤、塗工厚)
(1)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、250μm)
EPZ 20.27 mg (2%) 、GEFA-C8 52.1 mg (5%) 、GP-1 39.6 mg (4%) 及びIPM 388.4 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤785.7 mg (固形成分500.5 mg) を加えて全量 (固形成分1000.87 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。試験管を予め90℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液を平面ガラス板上に固定した支持体 (商品名:Scotchpak 9732 Backing、3M社製) 上に、フィルムアプリケーター(商品名:MULTICATOR 411、ERICHSEN Gmbh & Co. KG製)を用いて厚さ250μmで塗工した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃で30分間乾燥した。乾燥後、剥離フィルム (商品名:Scotchpak 1022 Release Liner、3M社製) のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0112】
(2)2%エプタゾシン含有貼付剤(Duro-Tak 87-9301 50%、250μm)
EPZ 20.72 mg (2%) 、GEFA-C8 50.3 mg (5%) 、GP-1 41.3 mg (4%) 及びIPM 396.8 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Duro-Tak 87-9301粘着剤1239.9 mg (固形成分496.0 mg) を加えて全量 (固形成分1005.1 mg) とした後、エタノール700μLを加えた。以下、上記(1)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Duro-Tak 87-9301 50%) とした。
【0113】
(3)2%エプタゾシン含有貼付剤(BIO-PSA 7-4202 50%、250μm)
EPZ 20.17 mg (2%) 、GEFA-C8 49.9 mg (5%) 、GP-1 41.0 mg (4%) 及びIPM 390.4 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、BIO-PSA 7-4202粘着剤837.6 mg (固形成分502.6 mg) を加えて全量 (固形成分1004.1 mg) とした後、エタノール700μLを加えた。以下、上記(1)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (BIO-PSA 7-4202 50%) とした。
【0114】
(4)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、400μm)
EPZ 20.32 mg (2%) 、GEFA-C8 50.4 mg (5%) 、GP-1 40.8 mg (4%) 及びIPM 393.1 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤787.8 mg (固形成分501.8 mg) を加えて全量 (固形成分1006.4 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。以下、塗工の厚さを400μmとする以外は、上記(1)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0115】
(5)5%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、400μm)
EPZ 50.20 mg (5%) 、GEFA-C8 51.5 mg (5%) 、GP-1 40.1 mg (4%) 及びIPM 376.8 mg (36%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤789.2 mg (固形成分502.7 mg) を加えて全量 (固形成分1021.3 mg) とした後、エタノール1500μLを加えた。以下、上記(4)と同様に調製し、5%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0116】
B.EB-21オルガノゲルマトリックス型貼付剤
(1)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、400μm)
EPZ 20.27 mg (2%) 、GEFA-C8 52.1 mg (5%) 、EB-21 39.6 mg (4%) 及びIPM 388.4 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤785.7 mg (固形成分500.5 mg) を加えて全量 (固形成分1000.87 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。以下、上記A.(4)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0117】
(2)5%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、400μm)
EPZ 50.68 mg (5%) 、GEFA-C8 49.6 mg (5%) 、EB-21 40.5 mg (4%) 及びIPM 360.0 mg (36%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤786.4 mg (固形成分500.9 mg) を加えて全量 (固形成分1001.7 mg) とした後、エタノール1000μLを加えた。以下、上記A.(4)と同様に調製し、5% EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0118】
(3)10%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、400μm)
EPZ 99.90 mg (10%) 、GEFA-C8 50.6 mg (5%) 、EB-21 40.7 mg (4%) 及びIPM 310.6 mg (31%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤790.1 mg (固形成分503.3 mg) を加えて全量 (固形成分1005.1 mg) とした後、エタノール2500μLを加えた。以下、上記A.(4)と同様に調製し、10%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E粘着剤50%) とした。
【0119】
(4)15%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 40%、400μm)
EPZ 151.66 mg (15%) 、GEFA-C8 49.6 mg (5%) 、EB-21 40.8 mg (4%) 及びIPM 363.8 mg (36%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤636.3 mg (固形成分405.3 mg) を加えて全量 (固形成分1011.2 mg) とした後、エタノール3300μLを加えた。試験管を予め90℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液100 μLをアルミ箔で覆った鋳型 (φ15×1 mm) に分注した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃で3時間、40℃ で15時間乾燥した。乾燥後、剥離フィルム (Scotchpak 1022 Release Liner) のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、15%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 40%) とした。
【0120】
(5)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%、250μm)
EPZ 40.72 mg (2%) 、GEFA-C8 101.4 mg (5%) 、EB-21 80.5 mg (4%) 及びIPM 782.5 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤1566.1 mg (固形成分1003.9 mg) を加えて全量 (固形成分2008.9 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。試験管を予め90℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液を平面ガラス板上に固定した支持体 (Scotchpak 9732 Backing) 上に、フィルムアプリケーター(MULTICATOR 411)を用いて厚さ250μmで塗工した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃で1.5時間、40℃で15時間乾燥した。乾燥後、剥離フィルム (Scotchpak 1022 Release Liner) のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0121】
(6)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 70%、250μm)
EPZ 40.66 mg (2%) 、GEFA-C8 100.9 mg (5%) 、EB-21 80.7 mg (4%) 及びIPM 382.5 mg (19%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤2186.0 mg (固形成分1401.3 mg) を加えて全量 (固形成分2006.0 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。以下、上記(5)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 70%) とした。
【0122】
(7)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%+Duro-Tak 87-9301 10%、250μm)
EPZ 20.77 mg (2%) 、GEFA-C8 49.8 mg (5%) 、EB-21 41.4 mg (4%) 及びIPM 288.7 mg (29%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤775.7 mg (固形成分497.2 mg) 及びDuro-Tak 87-9301 (固形成分含量 60%) 277.7 mg (固形成分 111.1 mg) を加えて全量 (固形成分1009.0 mg) とした後、エタノール500μLを加えた。以下、上記(5)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%+Duro-Tak 87-9301 10%) とした。
【0123】
(8)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 50%+Quintone M100 10%、250μm)
EPZ 20.48 mg (2%) 、GEFA-C8 53.0 mg (5%) 、EB-21 40.3 mg (4%) 及びIPM 289.6 mg (29%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤797.8 mg (固形成分511.4 mg) 及びエタノール500μLを加えた。試験管を予め90℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。ここにQuintone M100を99.4 mg (10%) を加えて全量 (固形成分1014.1 mg) とした後、さらに酢酸エチル 1000μLを加えた。以下、上記(5)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%+Quintone M100 10%) とした。
【0124】
(9)2%エプタゾシン含有貼付剤(Quintone M100 27%+Quintac 3421 22%、250μm)
EPZ 21.51 mg (2%) 、GEFA-C8 50.7 mg (5%) 、EB-21 41.7 mg (4%) 及びIPM 401.1 mg (40%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここにエタノール500 μLを加え、試験管を予め120℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。ここにQuintone M100 269.3 mg (27%) 及びQuintac 3421 220.6 mg (22%) を加えて全量 (固形成分1004.8 mg) とした後、さらにトルエン 1500μLを加えた。120℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。以下、上記(5)と同様に調製し、2% EPZ含有貼付剤 (Quintone M100 27%+Quintac 3421 22%) とした。
【0125】
(10)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 35%+Quintone M100 6%+Quintac 3421 5%、250μm)
EPZ 23.0 mg (2%) 、GEFA-C8 51.5 mg (5%) 、EB-21 40.3 mg (4%) 及びIPM 430.9 mg (43%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤552.1 mg (固形成分353.9 mg) 及びエタノール500μLを加えた。試験管を予め120℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。ここにQuintone M100 62.4 mg (6%) 及びQuintac 3421 53.9 mg (5%) を加えて全量 (固形成分1015.8 mg) とした後、さらにトルエン 1500μLを加えた。以下、上記(9)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 Eudragit E 35%+Quintone M100 6%+Quintac 3421 5%) とした。
【0126】
(11)2%エプタゾシン含有貼付剤(Eudragit E 30%+Quintac 3421 10%+クリアロン P125 10%、250μm)
EPZ 20.76 mg (2%) 、GEFA-C8 51.7 mg (5%) 、EB-21 39.8 mg (4%) 及びIPM 389.3 mg (39%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤488.1 mg (固形成分309.5 mg) 及びエタノール200μLを加えた。試験管を予め100℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。ここにQuintac 3421 104.6 mg (10%) 及びクリアロン P125 100.8 mg (10%) を加えて全量 (固形成分1016.4 mg) とした後、さらにトルエン 1000 μLを加えた。以下、上記(9)と同様に調製し、2% EPZ含有貼付剤(Eudragit E 30%+Quintac 3421 10%+クリアロン P125 10%) とした。
【0127】
(12)2%エプタゾシン含有貼付剤(Quintac 3421 27%+エステルガムH 27%、250μm)
EPZ 20.05 mg (2%) 、GEFA-C8 51.0 mg (5%) 、EB-21 40.2 mg (4%) 及びIPM 349.8 mg (35%)をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここにエタノール400μLを加え、試験管を予め120℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。ここにQuintac 3421 268.0 mg (27%) 及びエステルガムH 270.5 mg (27%) を加えて全量 (固形成分999.4 mg) とした後、さらにトルエン 1500μLを加えた。以下、上記実施例(9)と同様に調製し、2%EPZ含有貼付剤 (Quintac 3421 27%+エステルガムH 27%) とした。
【0128】
3.トラマドール含有オルガノゲルマトリックス型貼付剤の調製
TRD 100.38 mg (10%) 、IPM 312.8 mg (31%) 、GEFA-C8 51.30 mg (5%) 及びEB-21 43.40 mg (4%) をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤790.5 mg (固形成分507.3 mg) を加えて全量 (固形成分1015.2 mg) とした後、エタノール300μLを加えた。試験管をあらかじめ100℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液を平面ガラス板上に固定した支持体 (Scotchpak 9732 Backing) 上に、フィルムアプリケーター(MULTICATOR 411)を用いて厚さ250μmで塗工した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃で1時間、40℃で終夜乾燥した。乾燥後、剥離フィルム (Scotchpak 1022 Release Liner) のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、10%TRD含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0129】
4.ペンタゾシン含有オルガノゲルマトリックス型貼付剤の調製
PTZ 101.00 mg (10%) 、IPM 320.1 mg (31%) 、GEFA-C8 61.1 mg (5%) 及びEB-21 40.6 mg (4%) をそれぞれ秤取し、試験管に加えた。ここに、Eudragit E粘着剤783.5 mg (固形成分502.2 mg) を加えて全量 (固形成分1025.0 mg) とした後、エタノール300μLを加えた。試験管を予め90℃に加熱したヒーティングブロックに入れ、混合溶液を加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液を平面ガラス板上に固定した支持体 (Scotchpak 9732 Backing) 上に、フィルムアプリケーター(MULTICATOR 411)を用いて厚さ250μmで塗工した。次に、送風定温乾燥器内で、60℃ で1時間、40℃で15時間乾燥した。乾燥後、剥離フィルム (Scotchpak 1022 Release Liner) のフッ素樹脂加工面を製剤の接着面と張り合わせ、10%PTZ含有貼付剤 (Eudragit E 50%) とした。
【0130】
5.マウス皮膚透過性試験
ヘアレスマウス摘出皮膚の上(ドナー相)に、オルガノゲルの代わりに上記2.乃至4.で調製した各薬剤含有貼付剤(φ12mm)を適用する以外は、上記1.で調製したEPZ含有貼付剤については上記実施例3(1)と同様に、また、上記3.で調製したTRD含有貼付剤ついては上記実施例3(2)と同様に、また、上記4.で調製したPTZ含有オルガノゲルについては上記実施例3(3)と同様に、各々、マウス皮膚透過性試験を行い、各薬剤の皮膚透過量(n=4)を測定した。各々、薬剤の皮膚透過量より、透過速度及び遅延時間を算出し、累積透過量(上記2.B.(5)乃至(12)は28時間後、その他は48時間後)と共に表12及び表13に示す。また、上記2.B.(1)乃至(4)のEPZ含有貼付剤、上記3.のTRD含有貼付剤及び上記4.のPTZ含有貼付剤について、各々、経時的累積透過量のグラフを図10乃至12に示す。
【0131】
【表12】
【0132】
【表13】
【0133】
結果
参考例1において示したとおり、表1に処方を示した種々のアクリル系粘着剤を使用したマトリックス型貼付剤では、図1及び表2に示した結果のように、好ましいEPZの皮膚透過性は得られなかった。すなわち、10%又は20%という高濃度の薬剤含有マトリックスであっても、2%EPZ含有のオルガノゲルと比べて、透過速度及び累積透過量は極めて低かった(表2、表5)。
【0134】
これに対して、フリー体のEPZを脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有するオルガノゲルに調製した場合、ヘアレスマウスの摘出皮膚を用いた皮膚透過性試験において、皮膚透過速度及び製剤からの薬剤放出率において優れた皮膚透過性を示すことが見出された(表3及び4)。
また、へアレスマウスよりも皮膚の形態や薬物透過性がヒトに近いとされるブタ(ユカタンミニブタ)の表皮(肩部)を用いてEPZ含有オルガノゲル(実施例2の1.(2))の皮膚透過性試験を行った結果においても、ヘアレスマウスの皮膚と比較して48時間後の累積透過量で62%の皮膚透過量が認められ、EPZが確実にブタ皮膚を透過することが示された。
【0135】
懸濁液の場合は、図2に示したように、フリー体(0.6%EPZ)及び臭化水素酸塩(EPZとして0.6%)共に、極めて迅速に皮膚透過されて4時間後には、ほぼ薬剤放出が完了した状態に至っている。これに対して、EPZ含有オルガノゲルの場合は、持続的に薬剤が放出されるので、薬剤濃度等を調整することによって、体内への薬剤送達を適宜制御可能である。経皮投与製剤は、注射剤や経口投与剤に比べて、制御された速度で長時間薬物を体内に送達できることが望まれることがあるが、本発明外用医薬組成物は、このような目的に合致したものである。しかも、EPZ・HBrやTRD・HClの場合には、オルガノゲルに調製しても非常に低い皮膚透過性しか得られず、単に液体形態のものをオルガノゲルにするだけでは、必ずしも優れた皮膚透過性が得られるものではなかった。
【0136】
加えて、上記EPZ含有オルガノゲルとEPZ含有懸濁液の48時間後の製剤からの薬剤放出率を比較した結果、懸濁液では適用したEPZの約92%が放出されたのに対して、オルガノゲル製剤(GP-1使用)では約96%のEPZが放出された。通常、流動性がある液体形態の場合に比べて、マトリックスやゲル形態の製剤においては、薬剤の放出が制限されて製剤からの薬剤放出率は低いと考えられたが、本発明外用医薬組成物は、液体形態を上回る非常に高い薬剤放出率を示した。このことから、本発明外用医薬組成物を用いて製造される製剤は、使用後に製剤中に残存する薬剤がより少量となり、医薬製剤として非常に効率的且つ経済的で、薬剤管理上も有利である。
【0137】
図3乃至図6及び表5に示したように、N-アシルアミノ酸アミド(GP-1、EB-21)やデキストリン脂肪酸エステル(レオパールKL2、レオパールKS2)等の種々のオルガノゲル化剤によって製造したEPZ含有オルガノゲルは、優れた皮膚透過性を示した(実施例3参照)。また、図3及び図4には調製法の異なるEPZ含有GP-1又はEB-21オルガノゲルの皮膚透過性試験の結果を示した。第1法の調製法は、組成成分を全て混和してゲル化を行う方法であり、第2法の調製法は、オルガノゲル化剤を添加する前に、オルガノゲル化剤以外の成分(脂肪酸エステル、又は、脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステル)の適量にEPZを加え、これを粉砕しながら混和する方法である。この第2法の調製法によれば、EPZのように本発明外用医薬組成中で懸濁状態にある薬剤については、より優れた皮膚透過性が得られることが明らかになった。
【0138】
また、その他の非麻薬性鎮痛薬においても、TRD(図7)やPTZ(図8)を含有したオルガノゲルは、EPZ含有オルガノゲルと同様に、優れた経皮吸収を示す結果が得られた(表5)。またTRDについては、EPZ・HBrと同様に、TRD・HCl含有GP-1オルガノゲルでは皮膚透過性が極めて低く、親水性の高い塩は不適当であることが示された(実施例3参照)。
【0139】
以上の結果より、GEFA-C8等のグリセリン脂肪酸エステル及びIPM等の脂肪酸エステルを組み合わせて用いた本発明外用医薬組成物は、EPZだけでなく各種の非麻薬性鎮痛薬の経皮吸収を顕著に亢進させることが明らかとなった。
【0140】
本発明は脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有するオルガノゲルである外用医薬組成物であるが、表6及び図9に示したように、各種の脂肪酸エステルを用いることができる。特にミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル及びリノール酸イソプロピルを添加して製造したEPZ含有オルガノゲル組成物は、優れた皮膚透過性を示した(実施例4参照)。
また同様に、表7に示したように、本発明は各種のグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。特にモノカプリル酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン及びモノラウリン酸グリセリンを添加して製造したEPZ含有オルガノゲル組成物は、優れた皮膚透過性を示した。グリセリン脂肪酸エステルの添加濃度については、表7の(1)及び(8)乃至(10)のモノカプリル酸グリセリンの結果に示されるように、7.5%まで濃度依存的に皮膚透過性が向上し、10%では7.5%と同程度の皮膚透過性を示した(実施例5参照)。
【0141】
本発明外用医薬組成物の薬物濃度については、表8に示したように、EPZの濃度が上昇するとともに、皮膚透過性も向上し、15%という高濃度においても良好な皮膚透過性を示すことが確認された(実施例6参照)。また、TRDについても、2%及び10%の両濃度において、濃度依存的に良好な皮膚透過性が示された。
【0142】
また、本発明外用医薬組成物のオルガノゲル化剤の濃度については、表9に示したように、GP-1ゲル化剤では2%乃至10%の濃度範囲で特に皮膚透過性に差はなく、良好な皮膚透過性を示した(実施例7参照)。
【0143】
本発明においては、エタノール等の低級アルコールを添加してオルガノゲル組成物を調製することができる(実施例8参照)。表10に示したように、低級アルコールを添加した場合、これを添加しない場合と同様に良好なEPZ皮膚透過性を示した。このように、低級アルコールを添加することにより調製時の温度を100℃以下に下げることが可能となるので、実際の製造工程上で熱媒体として水蒸気を使用でき、実用上大変有利である。なお、本実施例8では、ゲル化剤としてGP-1又はゲルオールDを用いてオルガノゲル組成物を調製したが、EB-21等他のゲル化剤を用いることもできる。また、低級アルコールの添加は、本発明外用医薬組成物に粘着剤を添加したマトリックス型貼付剤を調製する際にも応用することができる。
【0144】
リザーバ型貼付剤を想定した薬物放出膜等を用いた本発明外用医薬組成物の皮膚透過性試験では(実施例9参照)、表11に示したように、薬物放出膜等を使用しなかった場合と比較して、EPZの皮膚透過速度は低下したものの、利用可能な皮膚透過性が得られた。これらの結果から、本発明外用医薬組成物は、リザーバ型貼付剤への適用が可能であることが示された。
【0145】
本発明外用医薬組成物を用いたマトリックス型貼付剤の皮膚透過性試験では(実施例10参照)、表12、表13及び図10乃至12に示したように、粘着剤を用いて調製したマトリックス型貼付剤は、適度な皮膚透過速度で持続的に薬物を体内に送達できることが示された。マトリックス型での薬物の皮膚透過性は、各種の粘着剤を使用したオルガノゲル組成物で認められ、またEPZの他、TRDやPTZでも皮膚透過性が示された。これらの結果から、本発明外用医薬組成物は、各種の粘着剤を用いたマトリックス型貼付剤への適用が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明外用医薬組成物は、非麻薬性鎮痛薬等の薬剤の皮膚透過性を顕著に改善するものであり、持続的に充分量の薬剤を皮膚透過させることができるため、高い治療効果が実現されるものである。また、本発明外用医薬組成物用は、薬剤の放出が徐々になされるため、薬剤送達量を制御可能な製剤に応用し易い。特に、本発明外用医薬組成物は、貼付剤やゲル剤等の実際の製剤として実用化しやすいオルガノゲルの形態であるため、実用上非常に有利で、非常に高い薬剤放出率を有するため、適用した薬剤を有効に利用し且つ管理することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12