【実施例】
【0039】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
<調製例1>(葛花抽出物)
葛(Pueraria thomsonii)の花部を熱水で抽出して抽出液を得、それを乾燥して粉末状の葛花抽出物を得た。この抽出物は、下記試験例1に同定したイソフラボン類を組成物中に10質量%含有し、その他の炭水化物約38質量%、タンパク質約19質量%、灰分約14質量%、水分約6質量%、脂質約5質量%を含有する組成物であった。
【0041】
<調製例2>(イソフラボン含有組成物)
上記葛花抽出物を含水メタノールを用いたカラムクロマトグラフィーにより分離し、それを乾燥して粉末状のイソフラボン含有組成物を得た。この組成物は、組成物中のイソフラボン類含量が約61質量%にまで高められていた。
【0042】
<試験例1>(イソフラボンの同定・定量)
常法に従い、上記葛花抽出物及びイソフラボン含有組成物に含まれるイソフラボン類を、各イソフラボン標準品を濃度標準としたHPLC法等により、同定・定量した。
【0043】
その結果、葛花にはイソフラボンとしてテクトリゲニン(Tectorigenin)、テクトリゲニン7‐O‐キシロシルグルコサイド(Tectorigenin 7-O-xylosylglucoside)、6-hydroxygenistein、6-hydroxygenistein-6,7-di-O-glucoside、テクトリジン(Tectoridin)等が含まれることが確認された。また、熱水で抽出した葛花抽出物と、更に含水メタノールを用いたカラムクロマトグラフィーにより分離したイソフラボン含有組成物とで、イソフラボン類の組成比は、ほとんど相違がみられなかった。
【0044】
<試験例2>(PDE3B阻害実験)
上記葛花抽出物及びイソフラボン含有組成物について、それらを用いたPDE3B阻害実験を行った。また、下記に示す化合物についても、これらを用いたPDE3B阻害実験を行った。
・シロスタゾール(PDE3選択的阻害剤)
・6-hydroxygenistein(葛花イソフラボン)
・IBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine)(PDE阻害剤)
・ケルセチン(Quercetin)(植物フラボノイド;PDE阻害剤)
・テクトリゲニン(Tectorigenin)(葛花イソフラボン)
・ゲニステイン(Genistein)(大豆イソフラボン)
・ダイゼイン(Daidzein)(大豆イソフラボン)
・カフェイン
【0045】
PDE3B阻害実験は、PBS Bioscience社製キット「PDE3B Assay Kit」を使用して行った。まず上記各サンプルの10mMストック試料(葛花抽出物の場合は2mMストック試料)をキット付属のバッファーを使用して段階希釈して希釈サンプルを作成した。具体的には、葛花抽出物、イソフラボン含有組成物、シロスタゾール、6-hydroxygenisteinの場合には、0.5, 1, 5, 10, 25, 50, 100, 250μMの希釈シリーズを作成し、IBMX、ケルセチンの場合には、1, 10, 25, 50, 100, 200, 300, 600μMの希釈シリーズを作成し、テクトリゲニン、ゲニステインの場合には、10, 100, 250, 500, 1000, 2000, 3000, 6000μMの希釈シリーズを作成し、ダイゼインの場合には、500, 1000, 2000, 3000, 4000, 5000, 6000μMの希釈シリーズを作成し、カフェインの場合には、10, 33, 66, 100, 333, 666, 1000, 3333, 6666μMの希釈シリーズを作成した。
【0046】
次に、酵素液として4pg/μLのホスホジエステラーゼ3B(PDE3B)を20μLと、基質液として200nMのFAM-Cyclic-3’,5’-AMP(蛍光標識cAMP)を25μLと、上記希釈シリーズ各5μLとを、96穴マイクロプレートの各ウェルに入れ混合し1時間室温でインキュベートした。その後キット付属の結合試薬(「Binding Agent」)を100倍に希釈した溶液100μLを添加し、1時間振とうさせながらインキュベートした。
【0047】
蛍光偏光度測定装置(「Flex Station3」Molecular Devices社製)を使用し、上記反応後の各ウェル中のサンプルに、励起波長 485nmの偏光をあて、それによる蛍光波長538nmの蛍光を測定して、下記式(1)に示す偏光度Pを求めた。
【0048】
【数1】
【0049】
ここでPDE3Bにより酵素分解されたFAM-Cyclic-3’,5’-AMP(蛍光標識cAMP)の酵素分解産物は、上記結合試薬に結合して、蛍光の偏光度が増加する。一方、PDE3Bの活性が阻害剤により低下すれば、その酵素分解産物の量も少なくなる。そのため、上記結合試薬に結合する酵素分解産物の量も少なくなり、結果として、蛍光の偏光度は阻害剤を入れない場合に比較して低下することになる。したがって、このキットでは偏光度を反応進行の指標とでき、その低下を反応阻害の指標とできる。そこで縦軸にこの偏光度をとり、横軸に阻害物質濃度をとり、上記被検物質ごとの希釈シリーズの結果をプロットして、常法に従いIC50値を求めた。その結果を表1にまとめて示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、葛の花部から熱水抽出して得られた葛花抽出物は、PDE3の選択的阻害剤であるシロスタゾールよりも高いPDE3B阻害活性を示した。また、葛花抽出物からイソフラボン画分を抽出したイソフラボン含有組成物も、シロスタゾールに匹敵するPDE3B阻害活性を示した。その阻害活性は、一般的なPDE阻害剤として知られているIBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine)やケルセチン(Quercetin)よりも高かった。更に、葛花に含有されるイソフラボンである、6-hydroxygenistein やテクトリゲニン(Tectorigenin)は、それ自体でPDE3B阻害活性を示すことが明らかとなった。特に、6-hydroxygenistein のPDE3B阻害活性は、顕著に高かった。
【0052】
一方、大豆イソフラボンであるゲニステイン(Genistein)やダイゼイン(Daidzein)は、PDE3B阻害活性を検出できなかった。よって、上記葛花抽出物やイソフラボン含有組成物によるPDE3B阻害活性には、葛花に特有のイソフラボンが寄与していることが示唆された。
【0053】
<製造例1>
下記表2の配合にて、調製例1で得られた葛花抽出物を含有する粉末飲料を製造した。
【0054】
【表2】
【0055】
<製造例2>
下記表3の配合にて、調製例2で得られたイソフラボン含有組成物を含有する粉末飲料を製造した。
【0056】
【表3】
【0057】
<製造例3>
下記表4の配合にて、調製例1で得られた葛花抽出物を含有するソフトカプセルを製造した。
【0058】
【表4】
【0059】
<製造例4>
下記表5の配合にて、調製例2で得られたイソフラボン含有組成物を含有するソフトカプセルを製造した。
【0060】
【表5】
【0061】
<製造例5>
下記表6の配合にて、調製例1で得られた葛花抽出物を含有する錠剤を製造した。
【0062】
【表6】
【0063】
<製造例6>
下記表7の配合にて、調製例2で得られたイソフラボン含有組成物を含有する錠剤を製造した。
【0064】
【表7】
【0065】
<製造例7>
下記表8の配合にて、調製例1で得られた葛花抽出物を含有するドリンク剤を製造した。
【0066】
【表8】
【0067】
<製造例8>
下記表9の配合にて、調製例2で得られたイソフラボン含有組成物を含有するドリンク剤を製造した。
【0068】
【表9】
【0069】
<製造例9>
下記表10の配合にて、6-hydroxygenistein(葛花イソフラボン;アグリコン)を含有する粉末飲料を製造した。なお、6-hydroxygenisteinとしては、葛花抽出物からカラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより得られたものを用いた。
【0070】
【表10】
【0071】
<製造例10>
下記表11の配合にて、テクトリゲニン(Tectorigenin)(葛花イソフラボン;アグリコン)を含有するソフトカプセルを製造した。なお、テクトリゲニンとしては、葛花抽出物からカラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより得られたものを用いた。
【0072】
【表11】
【0073】
<製造例11>
下記表12の配合にて、6-hydroxygenistein-6,7-di-O-glucoside(葛花イソフラボン;配糖体)を含有する錠剤を製造した。なお、6-hydroxygenistein-6,7-di-O-glucosideとしては、葛花抽出物からカラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより得られたものを用いた。
【0074】
【表12】
【0075】
<製造例12>
下記表13の配合にて、テクトリゲニン7‐O‐キシロシルグルコサイド(Tectorigenin 7-O-xylosylglucoside)(葛花イソフラボン;配糖体)を含有するドリンク剤を製造した。なお、テクトリゲニン7‐O‐キシロシルグルコサイドとしては、葛花抽出物からカラムクロマトグラフィーを用いて分離・精製することにより得られたものを用いた。
【0076】
【表13】