特開2015-145480(P2015-145480A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理研ビタミン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015145480-ラウリン系油脂の結晶成長抑制剤 図000006
  • 特開2015145480-ラウリン系油脂の結晶成長抑制剤 図000007
  • 特開2015145480-ラウリン系油脂の結晶成長抑制剤 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-145480(P2015-145480A)
(43)【公開日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】ラウリン系油脂の結晶成長抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C11B 5/00 20060101AFI20150717BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
   C11B5/00
   A23D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-19092(P2014-19092)
(22)【出願日】2014年2月4日
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山根 晋哉
【テーマコード(参考)】
4B026
4H059
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG03
4B026DG04
4B026DH03
4B026DH05
4B026DK04
4H059BA33
4H059BA34
4H059BB06
4H059CA51
4H059DA22
4H059EA01
4H059EA40
(57)【要約】
【課題】ラウリン系油脂に添加することにより、その結晶成長を抑制できる結晶成長抑制剤を提供する。
【解決手段】下記条件(A)及び(B)を満たすソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とするラウリン系油脂の結晶成長抑制剤。
(A):構成脂肪酸中の炭素数10〜14の脂肪酸含有量が45%以上;
(B):エステル化率が35〜85%。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(A)及び(B)を満たすソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とするラウリン系油脂の結晶成長抑制剤。
(A):構成脂肪酸中の炭素数10〜14の脂肪酸含有量が45%以上;
(B):エステル化率が35〜85%。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶成長抑制剤を含有することを特徴とするラウリン系油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウリン系油脂の結晶成長抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤシ油やパーム核油等、炭素数12のラウリン酸を主要構成脂肪酸とするラウリン系油脂は、冷感を伴った良好な口融け及び淡白な風味を有しており、例えばチョコレート、アイスクリーム等の冷菓、マーガリン・ショートニング等の可塑性油脂組成物、起泡性クリーム、コーヒーホワイトナー・調整乳等の液状又は粉末状の乳製品又は油脂組成物等、種々の油脂含有食品に使用されている。
【0003】
しかし、ラウリン系油脂は特に低温下で結晶が成長し易く、ラウリン系油脂を使用した油脂含有食品は、その結晶成長に起因する品質悪化が生じることがある。例えば、ラウリン系油脂を使用したコーヒーホワイトナーは、冷蔵保存時に乳化状態が不安定になることが知られている。
【0004】
このような問題に対し、ラウリン系油脂を使用したコーヒーホワイトナーの技術分野では、乳化安定性向上のためにラウリン系油脂の分別液体部を使用する方法(特許文献1)、ラウリン系油脂と液体油脂を併用する方法(特許文献2及び3)等が提案されている。
【0005】
しかし、上記方法によるコーヒーホワイトナーは十分な粘性が得られず、クリーム感が劣り、コーヒーに添加した場合の分散性も悪い。しかも、上記方法は、コーヒーホワイトナー等の特定の技術分野での使用を想定しており、ラウリン系油脂を使用した油脂含有食品全般に応用可能なものではない。
【0006】
そこで、ラウリン系油脂の結晶成長を直接抑制すれば、ラウリン系油脂を原料とする様々な形態の油脂含有食品について、ラウリン系油脂の結晶成長に起因する好ましくない現象を抑制できると考えられる。従って、ラウリン系油脂に添加することにより、その結晶成長を抑制できる結晶成長抑制剤が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−204653号公報
【特許文献2】特開平07−079698号公報
【特許文献3】特許第4003804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ラウリン系油脂に添加することにより、その結晶成長を抑制できる結晶成長抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、脂肪酸組成及びエステル化率に特徴があるソルビタン脂肪酸エステルにより上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の(1)及び(2)からなっている。
(1)下記条件(A)及び(B)を満たすソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とすることを特徴とするラウリン系油脂の結晶成長抑制剤。
(A):構成脂肪酸中の炭素数10〜14の脂肪酸含有量が45%以上;
(B):エステル化率が35〜85%。
(2)前記(1)に記載の結晶成長抑制剤を含有することを特徴とするラウリン系油脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の結晶成長抑制剤を添加したラウリン系油脂組成物は、結晶成長が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例の結晶成長抑制剤(試作品F)を添加したラウリン系油脂組成物に生成した結晶の状態を示す光学顕微鏡写真(倍率500倍)である。
図2図2は、比較例の結晶成長抑制剤(試作品H)を添加したラウリン系油脂組成物に生成した結晶の状態を示す光学顕微鏡写真(倍率500倍)である。
図3図3は、比較例の結晶成長抑制剤(試作品L)を添加したラウリン系油脂組成物に生成した結晶の状態を示す光学顕微鏡写真(倍率500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、下記条件(A)及び(B)を満たすものである。
【0014】
[条件(A)について]
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸100%中、炭素数10〜14の脂肪酸(好ましくは飽和脂肪酸)の含有量が45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。炭素数10〜14の脂肪酸の含有量が45%未満であると、ラウリン系油脂の結晶成長抑制効果が十分に得られず、好ましくない。炭素数が10〜14の脂肪酸としては、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)及びミリスチン酸(炭素数14)が挙げられ、好ましくはラウリン酸である。
【0015】
ここで、条件(A)の構成脂肪酸の含有量とは、ソルビタン脂肪酸エステルの製造の原料となる脂肪酸100%中の含有量を指すが、この含有量は、製造されたソルビタン脂肪酸エステルについて下記工程(1)〜(3)を実施して測定しても良い。
(1)試料の調製
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.1.2−1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)]に準じて試料を調製する。
(2)測定方法
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.2.2−1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)]に準じて測定する。
(3)定量
データ処理装置により記録されたピーク面積の総和に対する各ピーク面積の百分率をもって構成脂肪酸の含有量とする。
【0016】
[条件(B)について]
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルのエステル化率は35〜85%であり、より好ましくは50〜80%である。エステル化率が35%未満であると、ラウリン系油脂の収縮抑制効果が十分に得られず、好ましくない。またエステル化率が85%を超えるソルビタン脂肪酸エステルは、反応時間が著しく延長することや、得られるソルビタン脂肪酸エステルが着色するなどの問題があるため、工業的な生産又は商業的に販売されている市販品の入手が困難であるため好ましくない。
【0017】
ここで、エステル化率(%)は下記式により算出される。なお、下記式中のエステル価及び水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3−1996 エステル価]及び[2.3.6−1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【0018】
【数1】
【0019】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの原料として用いられるソルビトールとしては、例えば、D−ソルビトールを50.0〜70.0質量%含有するD−ソルビトール液或いは白色粉末又は粒状のD−ソルビトールが挙げられる。
【0020】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、上記条件(A)を満たすものが好ましく用いられる。
【0021】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの製造(エステル化反応)において、ソルビトールに対する脂肪酸の仕込み量は、ソルビトール1モルに対して1.4〜3.5モル程度であるのが好ましい。
【0022】
本発明で用いられるソルビタン脂肪酸エステルの製造方法は特に限定されないが、例えばソルビトールと脂肪酸とのエステル化反応は無触媒で行って良く、又は酸触媒あるいはアルカリ触媒を用いて行っても良いが、アルカリ触媒の存在下で行われるのが好ましい。酸触媒としては、例えば、濃硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、全仕込み量(乾燥物換算)の0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0023】
上記製造に用いる製造装置としては特に限定されないが、例えば上記エステル化反応は、例えば攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板、不活性ガス吹き込み管、温度計及び冷却器付き水分分離器などを備えた通常の反応容器に、ソルビトール、脂肪酸、及び触媒を供給して攪拌混合し、窒素又は二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で一定時間加熱して行われる。反応温度は通常、180〜260℃の範囲、好ましくは200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は0.5〜15時間、好ましくは1〜4時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、10以下を目安に決められる。
【0024】
エステル化反応終了後、触媒を用いた場合は、反応混合物中に残存する触媒を中和しても良い。その際、エステル化反応の温度が200℃以上の場合は液温を180〜200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また反応温度が200℃以下の場合は、そのままの温度で中和処理を行って良い。中和後、その温度で好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1〜10時間放置する。未反応のソルビトール又はソルビトール分子内縮合物が下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0025】
本発明においてラウリン系油脂とは、油脂の構成脂肪酸組成において炭素数12の飽和脂肪酸含量が50質量%以上である油脂をいい、具体的にはヤシ油、パーム核油、さらには、これらの油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いても良く、又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明のラウリン系油脂の結晶成長抑制剤(以下、単に「結晶成長抑制剤」ともいう)は、上記条件(A)及び(B)を満たすソルビタン脂肪酸エステルを有効成分とするものである。本発明の結晶成長抑制剤は、上記条件(A)及び(B)を満たすソルビタン脂肪酸エステルをそのままラウリン系油脂に添加して用いても良く、又は該ソルビタン脂肪酸エステルを含有する製剤を調製し、これを結晶成長抑制剤としてラウリン系油脂に添加して用いても良い。その添加方法に特に制限はないが、例えば本発明の結晶成長抑制剤をラウリン系油脂に加え、これを約60〜120℃に加熱して混合溶解することにより容易に実施することができる。
【0027】
本発明のラウリン系油脂組成物は、本発明の結晶成長抑制剤を添加したラウリン系油脂及び該ラウリン系油脂を原料として製造される油脂組成物である。具体的には、本発明の結晶成長抑制剤をラウリン系油脂に直接添加してなる油脂組成物の他、該油脂組成物を原料として製造される食用油脂組成物が挙げられ、そのような食用油脂組成物としては、例えばチョコレート類、ホイップクリーム用油脂組成物(起泡性水中油型乳化組成物)、サンドクリーム用油脂組成物、冷菓の被覆用油脂組成物、菓子又はパンの被覆用油脂組成物、マーガリン、ファットスプレッド又はショートニング等の可塑性油脂組成物、コーヒーホワイトナー・調整乳等の液状又は粉末状の乳製品又は油脂組成物等が挙げられる。これら食用油脂組成物の製造方法に特に制限はなく、これらは、慣用の装置を用いて、常法により製造することができる。
【0028】
本発明のラウリン系油脂組成物中の上記ソルビタン脂肪酸エステルの含有量は、該油脂組成物の形態、該油脂組成物中のラウリン系油脂の含有量、目的とする結晶成長抑制効果の程度等により異なり一様ではないが、例えば該油脂組成物に含有されるラウリン系油脂100質量部に対して、通常0.1〜2.0質量部、好ましくは0.2〜1.2質量部となるように調整することができる。
【0029】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
[製造例1]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを428g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)330.5g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)264.4g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)66.1gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.38gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品A;エステル化率35%)約850gを得た。
【0031】
[製造例2]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを367g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)446.0g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)356.8g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)89.2gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.58gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約3.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品B;エステル化率60%)約1070gを得た。
【0032】
[製造例3]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを342g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)543.3g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)434.6g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)108.7gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.54gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約4時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品C;エステル化率80%)約1210gを得た。
【0033】
[製造例4]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを361g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)740.7g及びステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)185.2gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.59gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約4.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品D;エステル化率75%)約1090gを得た。
【0034】
[製造例5]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを458g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)571.1g、ベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)30.0gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.29gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品E;エステル化率35%)約825gを得た。
【0035】
[製造例6]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを409g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)679.1g、ベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)35.7gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.45gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品F;エステル化率45%)約890gを得た。
【0036】
[製造例7]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを356g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)914.8g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)48.1gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.61gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約4.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品G;エステル化率80%)約1120gを得た。
【0037】
[製造例8]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトール347gを仕込み、次にステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)1035.4gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.65gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約3.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品H;エステル化率65%)約1140gを得た。
【0038】
[製造例9]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを355g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)126.6g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)682.0g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)165.6gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.62gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約3.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品I;エステル化率60%)約1130gを得た。
【0039】
[製造例10]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを443g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)188.6g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)377.3g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)62.9gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.33gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品J;エステル化率30%)約830gを得た。
【0040】
[製造例11]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを337g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)341.1g及びステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)682.1g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)113.7gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム0.70gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約4.0時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品K;エステル化率80%)約1250gを得た。
【0041】
[製造例12]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトール550gを仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)295.6g、ステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)172.4g及びベヘニン酸85(商品名;ベヘニン酸含有量90%;アラキジン酸含有量8%;ステアリン酸含有量2%;ミヨシ油脂社製)24.6gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.13gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品L;エステル化率23%)約800gを得た。
【0042】
[製造例13]
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、ソルビトールを492g仕込み、次にラウリン酸L−98(商品名;脂肪酸組成:ラウリン酸98%、ミリスチン酸2%;丸善薬品産業社製)523.7g及びステアリン酸65(商品名;ステアリン酸含有量65%;パルミチン酸含有量35%;ミヨシ油脂社製)27.6gを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム1.22gを加え、常圧下、窒素ガス気流中、235℃で酸価10以下となるまで約1.5時間エステル化反応を行った。得られた反応生成物を冷却し、ソルビタン脂肪酸エステル(試作品M;エステル化率30%)約810gを得た。
【0043】
ここで、製造例1〜13で製造したソルビタン脂肪酸エステル(試作品A〜M)の構成脂肪酸100%中、炭素数10〜14、炭素数16〜18及び炭素数20〜22の脂肪酸含有量(%)並びにこれらのエステル化率を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
なお、表1に示したソルビタン脂肪酸エステルのうち、試作品A〜G(製造例1〜7)は、本発明に係る実施例であり、試作品H〜M(製造例8〜13)は、これらに対する比較例である。
【0046】
[試験例]
[ラウリン系油脂の結晶成長抑制試験]
ヤシ硬化油(商品名:硬化ヤシ油;不二製油社製)50g及びキャノーラ油(日清オイリオグループ社製)50gからなる配合油に、製造例1〜13で得たソルビタン脂肪酸エステル(試作品A〜M)各0.5gを結晶成長抑制剤として添加し、これを80℃に加熱して混合・溶解し、ラウリン系油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物の適量をカバーガラス上にサンプリングし、その上に別のカバーガラスをかぶせて油脂組成物を挟み込んだ。次に、顕微鏡用加熱冷却ステージ(LINKAM社製)を用いて該油脂組成物を10℃/分の速度で60℃まで昇温し、3分間保持した後、10℃/分の速度で20℃まで冷却した。続いて、20℃に設定した恒温器内に該油脂組成物を2週間保存し、その結晶状態を偏光顕微鏡(NIKON社製)で観察し、下記評価基準により記号化した。また、対照として、結晶成長抑制剤無添加のものも同様に試験した。結果を表2に示す。
○:ほとんどが10μm以下の大きさの結晶
△:半数以上が10〜20μmの大きさの結晶
×:ほとんどが20μm以上の大きさの結晶
【0047】
【表2】
【0048】
表2の結果から明らかなように、本発明の結晶成長抑制剤(試作品A〜G)を添加したラウリン系油脂組成物は、結晶の成長が十分に抑制されていた。これに対し、比較例の結晶成長抑制剤(試作品H〜M)を添加したラウリン系油脂組成物及び対照のラウリン系油脂組成物では、比較的大きな結晶が見られ、本発明のものに比べて劣っていた。
図1
図2
図3