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特開2015-146411太陽電池用バックシートおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-146411(P2015-146411A)
(43)【公開日】2015年8月13日
(54)【発明の名称】太陽電池用バックシートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20150717BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20150717BHJP
【FI】
   H01L31/04 R
   C08J7/04 PCES
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-19393(P2014-19393)
(22)【出願日】2014年2月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】座間 高広
【テーマコード(参考)】
4F006
5F151
【Fターム(参考)】
4F006AA14
4F006AA51
4F006AA55
4F006AA56
4F006AB20
4F006AB24
4F006AB32
4F006BA05
4F006CA05
4F006CA08
4F006EA03
5F151BA18
5F151JA05
(57)【要約】
【課題】光反射率および部分放電電圧が高く、また封止材に密着性よく接着させることができ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材との間の界面剥離が抑えられる太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートであって、接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されており、積層体の接着層側表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、積層体の接着層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであることを特徴とする太陽電池用バックシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートであって、
前記接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、
前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されており、
前記積層体の前記接着層側の表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、前記積層体の前記接着層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであることを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項2】
少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートであって、
前記接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、
前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されており、
前記積層体の前記接着層側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が存在せず、前記積層体の前記接着層と反対側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が設けられていることを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項3】
前記積層体の前記接着層側の表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、前記塗工層の前記基材層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記水溶性バインダーがアクリル酸エステル系樹脂およびポリエチレンイミン系樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物(B)が、帯電防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
前記積層体の前記接着層と反対側の表面に、帯電防止剤が被着していることを特徴とする請求項1または5に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
前記基材層の空孔率が、25〜53%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
前記基材層の厚みが、70〜250μmであることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
前記接着層の空孔率が、0〜3%であることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
前記接着層における熱可塑性樹脂が、融点150℃未満のポリエチレン樹脂、融点150℃未満のランダムポリプロピレン系樹脂、および融点150℃未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項11】
前記接着層における熱可塑性樹脂が、融点150℃以上のポリプロピレン系樹脂であり、前記積層体の接着層側表面に活性化処理が施されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項12】
前記積層体の表裏どちらか一方もしくは両方の表面に、更にポリエステル系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも1つを含む樹脂フィルム、またはアルミ箔を積層することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項13】
少なくとも接着層、基材層および塗工層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートの製造方法であって、
ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)をシート状に成形して基材層用シートを得るシート成形工程と、
前記シート成形工程で得た前記基材層用シートを少なくとも一軸方向に延伸して基材層を得る基材層形成工程と、
前記基材層形成工程で得た前記基材層の上に、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)をシート状に積層形成して接着層を得る接着層形成工程と、
少なくとも前記基材層の前記接着層と反対側の表面に活性化処理を行う活性化処理工程と、
前記活性化処理を行った前記基材層の前記接着層と反対側の表面のみに塗工層を形成する塗工層形成工程とを有することを特徴とする太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項14】
前記活性化処理工程において、活性化処理を、前記接着層の前記基材層と反対側の表面には行わず、前記基材層の前記接着層と反対側の表面のみに行うことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの保護に用いられるバックシートに関する。詳しくは、太陽電池モジュールの光入射面の反対側に設置され、太陽電池モジュールを通過した太陽光を発電素子側に反射して発電効率を向上させるとともに、発電した電気の漏洩や太陽電池モジュールへの水蒸気等の透過を抑制するバックシート、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、太陽電池を用いて太陽光のエネルギーを直接電力に変換する発電方式であり、廃棄物や排気などの発生がないクリーンなエネルギー源として、また電力会社の電力供給に依存しない電力源として、或いは非常用の電力源として注目を集め、近年では民生レベルでも普及が進んでいる。また、太陽光発電は保守の費用が安価であるため、世界的に需要が拡大している。
このような太陽光発電に用いられる太陽電池は、複数の光発電素子を配列してセルとし、これを封止材(充填材)で封止してユニット化した太陽電池モジュールを有する。このうち封止材としては、従来からエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂がよく用いられている。
しかしながら、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂からなる封止材は耐寒性や耐水性には優れるものの、酸素や水蒸気等のガス透過性が高いことから、封止材を透過したガスによって発電素子を腐食させやすい、該ガスにより充填材樹脂自体が劣化して変色しやすいという問題がある。また、この封止材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の融点が低いことから高温時に変形しやすい、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が極性樹脂であるために耐電圧が低いなどの問題点もある。このため、太陽電池では、太陽電池モジュールの表裏面に更に保護シートを設けることが通常である。なお、本明細書中では、太陽電池モジュールの裏面側(光入射側と反対側)に配置される保護シートを「バックシート」と称する。
【0003】
このような太陽電池用バックシートについては、水蒸気透過率、光反射率、寸法安定性、部分放電電圧、耐候試験後の変色量など様々な観点から改良が進められている。例えば、従来はポリエステル系フィルムを芯材として、表裏にフッ素系樹脂フィルムを積層した様態が多く用いられてきたが、フッ素系樹脂フィルムは柔軟で機械的強度が弱いことや高価であるという欠点がある。このため、近年では様々な性能を付与したポリエステル系フィルムの積層体がバックシートとして多く提案されている。
具体的には、耐候性を高めたポリエステル樹脂を用いるもの(例えば特許文献1参照)、防湿性を高めるためにガスバリア性フィルムを積層したものや、部分放電電圧を向上させるために電気絶縁性を有するフィルムや発泡層を積層したもの(例えば特許文献2参照)、フィルム表層に帯電防止層を設けることにより表面抵抗率値を下げて部分放電電圧を向上させたもの(例えば特許文献3参照)、および用いるポリエチレンテレフタレートの数平均分子量や酸化チタン粒子の含有量を調整してデラミネーション強度を向上させたもの(例えば特許文献4参照)等が提案されている。そして、これらの検討の結果、現在ではポリエステルフィルムを主に用いたバックシートが主流となっている。
【0004】
一方、太陽電池の普及や需要の拡大と共に、発電コスト低減に対する要求が高まっており、発電効率の更なる向上や太陽電池モジュールを構成する各部材の更なるコストダウン等が求められるようになっている。しかしながら、特許文献1〜4に記載されているような、ポリエステルフィルムを用いるバックシートではコスト低減が難しいのが実情である。
すなわち、太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールを電荷による破損から保護するために、発電容量に応じて、部分放電電圧700V以上、さらには1000V以上の耐電圧性が要求されている。しかし、特許文献1〜4のバックシートで用いられているポリエステルは分子構造内に極性を有する樹脂であることから誘電率が比較的高い。このため、要求される耐電圧性を満たすためには、ポリエステルフィルムと他素材のフィルムを積層したり、ポリエステルフィルム自体の厚みを厚くしたりする必要があり、必然的にコストが高くなりやすいといった問題点がある。
【0005】
また、太陽電池は長期間屋外で使用されることから、気温の日中変動や季節変動に伴う部材間の熱膨張、収縮などの寸法変化の差異により、太陽電池の封止材とバックシートとの間で界面剥離が起こりやすいことが問題点となっている。封止材とバックシートとの間で界面剥離が起これば、太陽電池モジュールはバックシートによる保護機能を失い、例えばモジュール内に水分が浸透して太陽電池セルの部分に劣化が起こってしまう。
これに対して、バックシートと封止材の密着性を上げるためにポリエステルフィルムにシランカップリング剤、ポリオール、イソシアネート化合物を含んだプライマーを設けたバックシートなど(例えば特許文献5参照)が提案されている。
【0006】
また、さらに、特許文献6には、接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含み、空孔率が0〜3%であり、基材層が、ポリプロピレン系樹脂を30〜95質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を5〜70質量%含み、少なくとも1軸延伸されており、且つ空孔率が25〜53%であり、積層体のJIS−Z8722の条件dに記載の方法に従って測定した波長750nmの光の反射率が93%以上であり、IEC−60664−1に記載の方法に従って測定した部分放電電圧が積層体の厚み当り換算で7.5V/μm以上である太陽電池用バックシートが提案されている。
特許文献6では、このバックシートは光反射率に優れ、基材層が非極性のポリプロピレン系樹脂からなることから単体でも十分に高い部分放電電圧を有しており、シートの薄肉化が可能であるとされており、これにより、バックシートのコストを削減することができるとされている。また、接着層を構成する樹脂に特定の熱可塑性樹脂を用い、或いはこれに表面処理層を設けることで封止材との接着性を改善し、また接着層の空孔率を所定の範囲に制御することにより、太陽電池用バックシートとしての強度を維持することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−134771号公報
【特許文献2】特開2006−253264号公報
【特許文献3】特開2009−147063号公報
【特許文献4】特開2010−254779号公報
【特許文献5】特開2012−33595号公報
【特許文献6】特開2013−33959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが、特許文献6に記載の太陽電池用バックシートについて、120℃−100%相対温度下での保管試験(PCT試験:加圧蒸気による促進試験)を行ったところ、バックシートと封止材との密着性が早期に低下し、バックシートと封止材との間で界面剥離が生じることが判明した。これは、このバックシートでは融点150℃未満のポリエチレン樹脂、ランダムポリプロピレン系樹脂、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂を含む接着層の表面に、更にアクリル酸エステル系樹脂またはポリエチレンイミン系樹脂を主とする表面処理層を設けており、この表面処理層が接着層と封止材との接着を阻害していることによるものと推測された。
【0009】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、光反射率および部分放電電圧が高く、また封止材に密着性よく接着させることができ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材との間の界面剥離が抑えられる太陽電池用バックシートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の組成とされた基材層と接着層との積層体によってバックシートを構成するとともに、積層体の両面の表面抵抗率をそれぞれ規定すること、または、積層体の接着層と反対側の面のみに水溶性バインダーを含む塗工層を設けることにより、光反射率および部分放電電圧が高く、また封止材に対して密着性よく接着させることができ、高温高湿度環境下においても封止材からの界面剥離が抑えられるバックシートが得られることを見出した。具体的に、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
[1] 少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートであって、前記接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、
前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されており、前記積層体の前記接着層側の表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、前記積層体の前記接着層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであることを特徴とする太陽電池用バックシート。
[2] 少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートであって、前記接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、
前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されており、前記積層体の前記接着層側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が存在せず、前記積層体の前記接着層と反対側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が設けられていることを特徴とする太陽電池用バックシート。
[3] 前記積層体の前記接着層側の表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、前記塗工層の前記基材層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであることを特徴とする[2]に記載の太陽電池用バックシート。
[4] 前記水溶性バインダーがアクリル酸エステル系樹脂およびポリエチレンイミン系樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする[2]または[3]に記載の太陽電池用バックシート。
[5] 前記熱可塑性樹脂組成物(B)が、帯電防止剤を含有することを特徴とする請求項[1]〜[4]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[6] 前記積層体の前記接着層と反対側の表面に、帯電防止剤が被着していることを特徴とする[1]または[5]に記載の太陽電池用バックシート。
[7] 前記基材層の空孔率が、25〜53%であることを特徴とする[1]〜[6]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[8] 前記基材層の厚みが、70〜250μmであることを特徴とする[1]〜[7]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[9] 前記接着層の空孔率が、0〜3%であることを特徴とする[1]〜[8]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[10] 前記接着層における熱可塑性樹脂が、融点150℃未満のポリエチレン樹脂、融点150℃未満のランダムポリプロピレン系樹脂、および融点150℃未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の少なくとも1つであることを特徴とする[1]〜[9]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[11] 前記接着層における熱可塑性樹脂が、融点150℃以上のポリプロピレン系樹脂であり、前記積層体の接着層側表面に活性化処理が施されていることを特徴とする[1]〜[10]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[12] 前記積層体の表裏どちらか一方もしくは両方の表面に、更にポリエステル系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも1つを含む樹脂フィルム、またはアルミ箔を積層することを特徴とする[1]〜[11]の何れか一項に記載の太陽電池用バックシート。
[13] 少なくとも接着層、基材層および塗工層を有する積層体からなる太陽電池用バックシートの製造方法であって、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)をシート状に成形して基材層用シートを得るシート成形工程と、前記シート成形工程で得た前記基材層用シートを少なくとも一軸方向に延伸して基材層を得る基材層形成工程と、前記基材層形成工程で得た前記基材層の上に、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)をシート状に積層形成して接着層を得る接着層形成工程と、少なくとも前記基材層の前記接着層と反対側の表面に活性化処理を行う活性化処理工程と、前記活性化処理を行った前記基材層の前記接着層と反対側の表面のみに塗工層を形成する塗工層形成工程とを有することを特徴とする太陽電池用バックシートの製造方法。
[14]前記活性化処理工程において、活性化処理を、前記接着層の前記基材層と反対側の表面には行わず、前記基材層の前記接着層と反対側の表面のみに行うことを特徴とする[13]に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光反射率および部分放電電圧が高く、また封止材に密着性よく接着することができ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材との間の界面剥離が抑えられる太陽電池用バックシートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の太陽電池用バックシートを構成する要件は、本発明の代表的な実施態様に基づいて説明されるものであるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。また、(メタ)アクリル酸エステルというときは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの両方を包含するものとする。
【0014】
本発明の太陽電池用バックシート(以下、[バックシート]という)は、少なくとも接着層および基材層を有する積層体からなり、接着層が、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなり、基材層が、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなり、且つ、少なくとも1軸延伸されたものである。
そして、本発明の第1の態様においては、上記要件に加え、積層体の接着層側の表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωに規定され、積層体の接着層と反対側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωに規定されている。
また、本発明の第2の態様においては、上記要件に加え、積層体の接着層側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が存在せず、積層体の接着層と反対側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が設けられている。
以下、バックシートの第1の態様および第2の態様についてそれぞれ説明する。
【0015】
<<太陽電池用バックシートの第1の態様>>
まず、本発明の第1の態様について、バックシートの各部の構成を説明する。
【0016】
<基材層>
基材層は、バックシートに光反射率と、耐電圧性を付与する機能を有するものである。
本発明では、基材層は、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)からなっており、少なくとも一軸方向に延伸されている。基材層が非極性のポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%含むことにより、バックシートに十分に高い部分放電電圧を付与することができる。また、基材層は、フィラーを30〜61質量%含み、且つ少なくとも一軸方向に延伸されていることにより、適度な割合で空孔が形成され、高い光反射率を有する。これにより、バックシートに高い光反射率を付与することができる。
【0017】
[基材層の材料]
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン,4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。空孔形成の観点からはプロピレン単独重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、誘電率が2.2〜2.6であり、ポリエチレンテレフタレート樹脂(誘電率:2.9〜3、空気の誘電率:約1)に比べて極性が小さい。このため、基材層の樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いることにより、基材層の絶縁性が向上し、優れた耐電圧性を得ることができる。
バックシートの誘電率を低く保ち、機械的強度の低下を防ぎやすい傾向があることから、基材層を構成する熱可塑性樹脂組成物(B)において、ポリプロピレン系樹脂の含有量は35質量%以上であることが必要で、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。また、十分な空孔数を得て光反射率を高めやすい傾向があることから、熱可塑性樹脂組成物(B)におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は66質量%以下であることが必要で、60質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
(フィラー)
基材層は、内部に空孔を形成する核剤として無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を含有する。
無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等を例示することができる。
また、前記無機フィラーの種々の表面処理剤による表面処理品も例示できる。
中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレー、珪藻土は、安価で延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。さらに好ましいのは、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムの種々の表面処理剤による表面処理品である。また、ルチル型二酸化チタンも無機フィラーとして好ましく用いることができる。
【0019】
前記表面処理剤としては、例えば樹脂酸、脂肪酸、有機酸、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、石油樹脂酸、これらのナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、または、これらの脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ワックス、パラフィン等が好ましく、非イオン系界面活性剤、ジエン系ポリマー、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、燐酸系カップリング剤等も好ましい。
前記硫酸エステル型陰イオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられ、スルホン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。
また、前記脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘベン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が挙げられる。前記有機酸としては、例えばマレイン酸、ソルビン酸等が挙げられる。
前記ジエン系ポリマーとしては、例えばポリブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
前記非イオン系界面活性剤としてはポリエチレングリコールエステル型界面活性剤等が挙げられる。
これらの表面処理剤は1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。
これらの表面処理剤を用いた無機フィラーの表面処理方法としては、例えば、特開平5−43815号公報、特開平5−139728号公報、特開平7−300568号公報、特開平10−176079号公報、特開平11−256144号公報、特開平11−349846号公報、特開2001−158863号公報、特開2002−220547号公報、特開2002−363443号公報などに記載の方法が使用できる。
【0020】
有機フィラーとしては、基材層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも、自身の融点またはガラス転移点が高い(例えば、120〜300℃)樹脂の粒子を好ましく使用できる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、環状オレフィン共重合体、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等を例示することができる。これらはポリプロピレン系樹脂に対して非相溶性であることから、延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。
【0021】
基材層には、無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
十分な空孔数を得て光反射率を高めやすい傾向があることから、基材層を構成する熱可塑性樹脂組成物(B)において、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方の含有量は30質量%以上であることが必要である。熱可塑性樹脂組成物(B)におけるフィラーの含有量は35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、バックシートの機械的強度の低下や誘電率の上昇を防ぎやすい傾向があることから、熱可塑性樹脂組成物(B)における無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方の含有量は61質量%以下であることが必要である。熱可塑性樹脂組成物(B)におけるフィラーの含有量は60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。ここで、無機フィラーと有機フィラーを組み合わせて用いる場合には、これらフィラーの合計量が前記含有量に対応する。
【0022】
(フィラーの粒径)
本明細書中における「平均粒径」および「平均分散粒径」とは、バックシートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析によって粒子100個の粒径を求めて算出した平均値である。
なお、無機フィラーの平均粒径及び有機フィラーの平均分散粒径は、走査型電子顕微鏡による一次粒径の観察の他、例えば、マイクロトラック法等のレーザー回折法、比表面積からの換算などにより求めることができる。また、比表面積は、島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用して測定することができる。
後述するバックシートの製造方法において、延伸成形によって基材層に適正サイズの空孔を形成し、可視光〜近赤外領域で高い光反射率を有するバックシートを得るために、基材層に添加される無機フィラー又は有機フィラーの平均粒径は特定範囲であることが好ましい。
【0023】
すなわち、本発明者らの検討によれば、基材層に形成する空孔によって光を有効に反射させることができ、空孔のサイズは特定波長の光の反射率の増減に寄与する重要な要素である。一方、太陽電池において、発電素子における発電効率に寄与する波長は、可視光〜近赤外領域の波長であることから、バックシートは可視光〜近赤外領域の波長の光を効率良く反射するものであることが望ましい。そのためには、基材層に形成される空孔を適度な大きさとし、可視光〜近赤外領域の光反射率を向上させることが効果的である。このような点から、基材層に含まれるフィラーの平均粒径または平均分散粒径は0.05μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、0.6μm以上がさらに好ましい。また、基材層に含まれるフィラーの平均粒径または平均分散粒径は1.5μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましく、1.2μm以下がさらに好ましい。フィラーの平均粒径又は平均分散粒径が上記の範囲であることにより、バックシートは可視光〜近赤外領域において高い反射率を得ることができる。
【0024】
(その他の樹脂)
基材層を構成する熱可塑性樹脂組成物(B)は、主要な樹脂成分であるポリプロピレン系樹脂の他に、その他の樹脂を1〜4質量%の範囲で含む。これにより、用いるその他の樹脂に応じて、基材層の延伸性等の特性を改善することができる。
その他の樹脂としては、例えばポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、環状オレフィン単独重合体、環状オレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂より融点が低い樹脂を好ましく用いることができる。これにより、基材層の延伸性を効果的に改善することができる。
【0025】
(帯電防止剤)
基材層は、帯電防止剤を含むことが好ましい。基材層、接着層を積層して得られた積層体の接着層と反対側の表面は、熱可塑性樹脂組成物(B)や後述する保護層自体が有する表面抵抗率を示すため、帯電防止剤を含まない組成では、表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωである。これに対して、基材層に帯電防止剤を含有させると、基材層の表面(積層体の接着層と反対側の表面)の表面抵抗率を、適正な範囲(1.0×109〜1.0×1013Ω)に制御することができる。これにより、バックシートの部分放電電圧を向上させることができる。なお、帯電防止剤は封止材と接着層との接着を阻害する傾向があるため、後述する接着層には含有させないことが好ましい。
基材層に帯電防止剤を含有させる方法は、熱可塑性樹脂組成物(B)に混合する方法であってもよいし、基材層の接着層と反対側の表面に、帯電防止剤の溶液を塗布して被着させる方法であってもよい。
【0026】
帯電防止剤は水溶性のものでも、水溶性でないものでも構わないが、取り扱いが簡便な水溶性の帯電防止剤を使用することが好ましい。
水溶性帯電防止剤としては、公知の種々のものを使用することができるが、好ましい帯電防止剤としては、四級窒素含有のアクリルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、アクリル系樹脂等が挙げられる。
これら水溶性帯電防止剤としては、三菱化学(株)製サフトマー1000、1100、1300、3200(アクリル系樹脂)、AC72、AC2000(変性ポリエチレンイミン)、三洋化成(株)製ケミスタット2019、花王(株)製エレクトロストリッパーQN、ライオン(株)製リポミンLIT、サンノプコ(株)製ノプコスタットHS等として市販されている。
帯電防止剤を熱可塑性樹脂組成物(B)に混合する場合、その使用量は0.1〜5質量%であることが好ましく、0.2〜4質量%であることがより好ましく、0.5〜3質量%であることがさらに好ましい。また、帯電防止剤を基材層の接着層と反対側の表面に塗布する場合、その塗布量は固形分で0.005〜0.5g/m2であることが好ましく、
0.01〜0.4g/m2であることがより好ましく、0.01〜0.3g/m2であることがさらに好ましい。
【0027】
(その他の添加剤)
基材層には、必要に応じて熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、蛍光増白剤、滑剤等の添加剤を配合してもよい。
熱安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の熱安定剤を0.001〜1質量%配合してもよい。
光安定剤としては、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の光安定剤を0.001〜1質量%配合してもよい。
無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4質量%、前記有機フィラーの分散剤としては、マレイン酸変性ポリプロピレンやシラノール変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィンを0.01〜4質量%配合してもよい。また、予め無機フィラーや有機フィラーをこれらの分散剤で表面処理しておき、基材層に配合してもよい。
【0028】
[基材層の空孔率]
本明細書中における「空孔率」とは、バックシートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析装置に画像を取り込み、画像処理で空孔の面積率を求めることで得られる値である。
光反射率や部分放電電圧を高めやすい傾向があることから、基材層の空孔率は25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。また、バックシートの機械的強度を維持し、接着されたバックシートと封止材を剥離したときに、接着層と基材層との間で凝集破壊を起こしにくく、結果として封止材との接着性がより改善される傾向があることから、基材層の空孔率は53%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
[基材層の厚み]
本明細書中における「バックシート全体の厚み」とは、JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に規定される方法に従って、定圧厚み計で測定される値である。また、本明細書中における「基材層の厚み」とは、バックシートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析装置に画像を取り込み、画像処理で全体の厚みに対する基材層の厚みの比率を求め、これに上記測定で得られたバックシート全体の厚みを乗じることによって求められる値である。
バックシートの光反射率、部分放電電圧、水蒸気非透過性、寸法安定性等の性能をより高める点からは、基材層の厚みは厚いほど良い。そして、これらの性能を損なわないためには、基材層の厚みは70μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることがさらに好ましい。また、従来品と比べてコストの削減が期待できることから、基材層の厚みは250μm以下であることが好ましく、230μm以下であることがより好ましく、215μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。
【0030】
[基材層の延伸]
基材層は、上記のフィラーを核として層内部に空孔を形成するために、少なくとも一軸方向に延伸されていることを特徴とする。光反射率の方向依存性を軽減するために、基材層は縦方向及び横方向の二軸方向に延伸されていることが好ましい。
基材層の具体的な延伸方法については、後述の太陽電池用バックシートの製造方法の欄で説明する。
【0031】
基材層中に発生させる空孔を所望の大きさに調整するために、上記のフィラーの粒径に併せて延伸倍率および面積延伸倍率を制御することが好ましい。なお、本明細書中における「面積延伸倍率」とは、縦延伸倍率×横延伸倍率で算出される倍率である。
基材を一軸延伸する場合、空孔を形成して反射率を高める点から、延伸倍率は1.2倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。また、微細な空孔を形成して特定波長における反射率を高める点から、延伸倍率は8倍以下であることが好ましく、7倍以下であることがより好ましく、6倍以下であることがさらに好ましい。
また、基材を二軸延伸する場合、空孔を生じ反射率を高めるため、面積延伸倍率は1.3倍以上が好ましく、7倍以上がより好ましく、22倍以上が特に好ましく、25倍以上が最も好ましい。また、微細な空孔が生じ特定波長における反射率を高めるため、面積延伸倍率は80倍以下が好ましく、70倍以下がより好ましく、65倍以下が特に好ましく、60倍以下が最も好ましい。
【0032】
[基材層の層構成]
基材層は、単層構造であってもよいし、2層以上の層を有する多層構造であってもよい。
基材層の多層構成としては、例えば表面層/支持層/表面層の3層構成等を挙げることができる。ここで、表面層は例えば一軸延伸の層であり、支持層は例えば二軸延伸の層である。なお、基材層の多層構成は、この構成に限るものではない。
基材層が多層構成である場合、これらの層の延伸軸数は全て一軸延伸でも良く、全て二軸延伸でも良く、一軸/二軸/一軸など異なる延伸軸数を有するものでも良い。
【0033】
<接着層>
本発明のバックシートにおける接着層は、太陽電池モジュールの封止材側に接する層であり、その表面が太陽電池モジュールの封止材と強く接着する。これにより、高温高湿度環境下においても、バックシートと封止材間で界面剥離が生ずることを確実に抑えることができる。
本発明では、接着層は、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)からなっている。このように接着層は、基材層に比べて無機フィラーおよび有機フィラーの含有量が少ないか、各フィラーを含まない組成であり、これによって、空孔率が小さいか、もしくは空孔を有しないものになっている。これにより、接着層は、材破し難く、またバックシートのガス透過性の低減に大きく寄与することができる。
【0034】
[接着層の材料]
(熱可塑性樹脂)
接着層に用いる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂は誘電率が比較的低いため、これを接着層の樹脂材料として用いることにより、部分放電電圧の向上が図れ、また積層体の紫外線による変色が抑えられ、積層体を、長期の使用においても光反射率が低下しにくいものにする傾向がある。
ポリオレフィン系樹脂としては高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;プロピレン系樹脂、;エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、環状オレフィン単独重合体、環状オレフィン共重合体等のオレフィン系共重合体等が挙げられる。
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよい。さらにプロピレン系樹脂の中でも、太陽電池モジュールの加工方法から、ヒートシール性を付与する目的で、ランダム共重合体やブロック共重合体のように融点の低いプロピレン系樹脂を利用することが好ましい。
【0035】
太陽電池モジュールの封止材には一般的にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が使用されていることから、接着性の観点で、接着層に使用するポリオレフィン系樹脂は、融点が150℃未満のポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またプロピレン系樹脂のランダム共重合体を用いることが好ましい。これにより、接着層と封止材との間で熱溶融による接合が可能となり、両者を強固に接合することができる。
但し、熱可塑性樹脂として融点の高い(融点が150℃以上の)ポリプロピレン系樹脂を用いた場合であっても、接着層表面にコロナ放電処理等の活性化処理を施すことにより、接着層と封止材との間で高い接着性を達成することができる。また、融点の高いポリプロピレン系樹脂に、融点の低いポリプロピレン系樹脂やマレイン酸変性ポリプロピレンなどの接着性改良剤を2種以上混合して利用することで、接着層の接着強度を調整することも可能である。
【0036】
接着層の機械的強度を高め、封止材とバックシートとの接着性が向上する傾向があることから、接着層を構成する熱可塑性樹脂組成物(A)において、熱可塑性樹脂の含有量は50質量%以上であることが必要で、70質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。ここで「実質的に100質量%」とは意図せずに混入した材料は考慮しないことを意味する。
【0037】
(無機フィラーおよび有機フィラー)
接着層は、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を含んでもよいし、含まなくてもよい。
接着層が無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を含むことにより、接着層の表面の粗さが大きくなって封止材との嵌合による接着力の向上を図ることができる。また、バックシートと封止材を加熱プレスによって接着加工する際、エアーが抜けやすくなる傾向がある。
接着層が無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を含む場合、各フィラーとしては、上述の基材層で例示したものと同様のものを挙げることができる。
接着層の機械的強度の低下による接着性の低下を防ぎやすい傾向があることから、接着層を構成する熱可塑性樹脂組成物(B)において、各フィラーの含有量は50質量%以下であることが必要で、30質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。ここで「実質的に含まない」とは意図的に配合しないことを意味する。
【0038】
(その他の成分)
基材層には、必要に応じて熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、蛍光増白剤、滑剤等の添加剤を配合してもよい。これら添加剤としては、上述の基材層で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0039】
[接着層の空孔率]
接着層における材破を抑制し、更にガス透過性の低減も図れることから、接着層の空孔率は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、接着層が実質的に空孔を含まないことが特に好ましい。
接着層の空孔率を小さくする方法としては、接着層へのフィラーの配合量を低減することや、接着層を延伸せずに成形すること、接着層を延伸する場合であっても熱可塑性樹脂に低融点の樹脂を用いて延伸成形時には同樹脂が溶融状態としておくことや、延伸軸数や延伸倍率を低く設定すること等を挙げることができる。
【0040】
[接着層の厚み]
本明細書中において「接着層の厚み」とは、バックシートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、画像解析装置に画像を取り込み、画像処理で全体の厚みに対する接着層の厚みの比率を求め、これに上記の方法で測定される「バックシート全体の厚み」を乗じることによって得られる値である。
十分な接着性能を得ることができることから、接着層の厚みは0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。また、成形性が良く、コスト削減効果が期待できることから、接着層の厚みは50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることがさらに好ましく、30μmであることが特に好ましい。
【0041】
<積層体の層構成>
本発明のバックシートを構成する積層体は、少なくとも接着層、基材層の2層を有するものであるが、この2層以外の層を有していてもよい。接着層と基材層以外の層としては、例えば保護層などの最外層を積層体の表裏どちらか一方もしくは両方の表面に追加することができ、また機能付与層などの中間層を必要に応じて追加することができる。保護層は、ポリエステル系樹脂およびフッ素系樹脂の少なくとも1つを含む樹脂フィルムなど、機械的強度、耐熱性、耐湿性や耐候性を高めることを目的とするものである。機能付与層は、例えば特許文献2に記載されるようなガスバリア性フィルム、遮光フィルム、隠蔽層、金属蒸着膜やアルミ箔など、太陽電池用バックシートのガスバリア性や隠蔽性等の機能を高めることを目的とするものである。
【0042】
具体的には、基材層の接着層に接する面とは反対の面上に保護層を積層した構造や、接着層と基材層との間または基材層と保護層の間に機能付与層を積層した構造とすることができる。機能付与層は2層以上であっても良い。保護層及び機能付与層に用いられる熱可塑性樹脂、フィラーおよび添加剤などは、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の材料を広く利用することもできる。
すなわち、本発明の太陽電池用バックシートの好ましい層構成として、
接着層/基材層、
接着層/基材層/保護層、
接着層/機能付与層/基材層、
接着層/機能付与層/基材層/保護層、
接着層/基材層/機能付与層/保護層、
接着層/機能付与層/基材層/機能付与層/保護層、
などの構造を有する積層体を例示することができる。
【0043】
<バックシート(積層体)の物性>
(表面抵抗率)
本発明における「表面抵抗率」とは、JIS K 6911:2006「熱硬化性プラスチック一般試験方法」によって測定される値である。
本発明では、積層体の接着層側の表面の表面抵抗率を1.0×1014〜1.0×1016Ωに規定し、積層体の接着層と反対側の表面の表面抵抗率を1.0×109〜1.0×1013Ωに規定する。積層体の接着層と反対側の表面抵抗率を上記範囲に規定することにより、バックシートの部分放電電圧を向上させることができる。一方、上記に規定する、積層体の接着層側の表面抵抗率の範囲は、熱可塑性樹脂組成物(A)の樹脂成分自体が示す表面抵抗率に相当し、接着層が帯電防止剤を含まないことを意味する。これにより、このバックシートは、接着層を封止材に密着性よく接着することができ、高温高湿度環境下においても接着層と封止材との界面剥離を確実に抑えることができる。
積層体の接着層と反対側の表面抵抗率は、5.0×109〜8.0×1012Ωであることが好ましく、1.0×1010〜6.0×1012Ωであることがより好ましく、
1.5×1010〜1.0×1012Ωであることがさらに好ましい。積層体の接着層と反対側の表面抵抗率は、基材層に帯電防止剤を含有させることによって制御することができる。
【0044】
(光反射率)
本明細書中における「光反射率」とは、JIS Z 8722:2009「色の測定方法−反射及び透過物体色」の条件dに記載の方法に従って測定した波長750nmでの光反射率のことをいう。
バックシートは、太陽電池モジュールから入射した光を効率よく反射して太陽電池モジュールにおいて再利用させ、太陽電池の電力交換効率を高める効果を得るために、光反射面(接着層側の表面)における光反射率が80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。
バックシートの光反射率は、積層体、特に基材層の空孔率によって制御することができる。すなわち、バックシートの光反射率は、本質的に空孔率に依存するものであり、空孔率が高いほど光反射率は高くなる傾向にある。ただし、基材層の空孔率が高くなり過ぎると、バックシートの機械的強度や封止材との接着強度が不足する傾向がある。このような点から、基材層の空孔率の上限は好ましくは53%であり、バックシートの光反射面の光反射率の上限は110%である。さらに、バックシートの光反射面の光反射率は100%以下であることが好ましい。
【0045】
(部分放電電圧)
本明細書中における「部分放電電圧」とは、部分放電試験機(商品名:部分放電システム DAC−6031、総研電気製)を用いて、IEC 60664−1に記載の方法に従い測定される値のことをいう。
バックシートには、太陽電池モジュールが積載する光発電素子セルの発電容量に合わせて、耐電圧性能が要求される。一方、高分子フィルムにおける部分放電電圧は、そのフィルムの厚みに依存することが一般的に知られている。そのため、従来のポリエステルフィルムを用いたバックシートでは、耐電圧性能を稼ぐために、厚みが増大する傾向があり、コストアップの一因となっていた。
これに対して、本発明の太陽電池用バックシートは、接着層および基材層が所定の組成とされるとともに基材層が少なくとも一軸延伸されており、且つ積層体の両面の表面抵抗率が所定の範囲に規定されていることにより、その厚み、特に基材層の厚みを要求レベルに合わせて薄く設計しても十分な部分放電電圧を得ることができる。このため、このバックシート層は、薄層化によるコストの低減を図ることが可能である。
基材層の厚さを薄く抑えつつ十分な部分放電電圧を得る点から、バックシートの厚み当たりの部分放電電圧は、5.5V/μm以上であることが好ましく、6V/μm以上であることがより好ましく、7V/μm以上であることがさらに好ましい。また、反射率を高めるべく高い空孔率を確保する点から、バックシートの厚み当たりの部分放電電圧は、15V/μm以下であることが好ましくは、13V/μm以下であることがより好ましい。
【0046】
(封止材への接着性)
本明細書中における「バックシートと封止材との接着力」とは、JIS K6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に記載の方法に従って測定される剥離力のことをいう。
バックシートと封止材との接着力は、20N/25mm以上であることが好ましく、50N/25mm以上であることがより好ましく、70N/25mm以上であることがさらに好ましい。バックシートと封止材との接着力が前記範囲であることにより、高温高湿度環境下においても、バックシートと封止材との界面剥離を確実に抑えることができる。
【0047】
<<太陽電池用バックシートの第2の態様>>
第2の態様のバックシートは、積層体の接着層側の表面、および接着層と反対側の表面の表面抵抗率が特定範囲に規定されておらず、積層体の接着層と反対側の表面にのみ、水溶性バインターを含む塗工層が設けられていること以外は、上記第1の態様のバックシートと同様の構成とされている。
基材層、接着層、積層体の構成については、第1の態様の対応する説明を参照することができる。但し、第2の態様では、積層体の接着層側の表面、および積層体の接着層と反対側の表面の表面抵抗率は、特に限定されず、第1の態様で規定する範囲であってもよいし、この範囲から外れていてもよいが、第1の態様で規定する範囲であることが好ましい。すなわち積層体の接着層側の表面の表面抵抗率は1.0×1014〜1.0×1016Ωであることが好ましく、積層体の接着層と反対側の表面(塗工層の基材層と反対側の表面)の表面抵抗率は1.0×109〜1.0×1013Ωであることが好ましい。これら表面抵抗率のより好ましい範囲については、第1の態様の対応する説明を参照することができる。
以下、積層体の接着層と反対側の表面にのみ設けられる、水溶性バインダーを含む塗工層について説明する。
【0048】
(水溶性バインダーを含む塗工層)
このバックシートでは、水溶性バインダーを含む塗工層が、積層体の接着層と反対側の表面にのみ設けられ、積層体の接着層側の表面には設けられていない点に特徴がある。水溶性バインダーを含む塗工層は、バックシートと封止材との接着を阻害する傾向があるため、このような塗工層を接着層側の表面に設けないことにより、バックシートを封止材に密着性よく接着することができ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材の界面剥離を確実に抑えることができる。一方、積層体の接着層と反対側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層を設けることにより、耐電圧性等の好ましい特性をバックシートに付与することが可能になる。
【0049】
水溶性バインダーの例としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
また、水溶性バインダーとの反応性を有する物質を架橋剤として添加することもできる。架橋剤としては、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、カルボジイミド類、ジグリシジルエーテル類、ジイソシアネート類等が挙げられる。
水溶性バインダーを含む塗工層には各種機能性材料を含有することができ、水溶性バインダーは機能性材料の脱落を抑制する効果を発現する。機能性材料としてはアンチブロッキング剤、滑剤、ハードコート剤、防汚剤、帯電防止剤等が挙げられる。また、水溶性バインダー自身が機能性材料としての性質を有していてもよい。
水溶性バインダーを含む塗工層の塗工量は、用いる機能性材料によっても異なるが、0.001〜0.5g/m2であることが好ましく、0.005〜0.4g/m2であることがより好ましく、0.01〜0.3g/m2であることがさらに好ましい。
この第2の態様においても、上記第1の態様と同様に、可視光〜近赤外領域において高い反射率を得ることができ、また部分放電電圧が高く、優れた耐電圧性を得ることができる。また、このバックシートは封止材に対する接着性に優れ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材との界面剥離を抑えることができる。
さらに、第2の態様では特に、塗工層に用いる機能性材料の選択により、バックシートに所望の特性を付与できるという効果も得ることができる。
【0050】
<<太陽電池用バックシートの製造方法>>
次に、本発明の太陽電池用バックシートの製造方法について説明する。
本発明の太陽電池用バックシートの製造方法は、少なくとも接着層、基材層および塗工層を有する積層体からなるバックシートを製造する方法であり、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)をシート状に成形して基材層用シートを得るシート成形工程と、シート成形工程で得た基材層用シートを少なくとも一軸方向に延伸して基材層を得る基材層形成工程と、基材層形成工程で得た基材層の上に、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)をシート状に積層形成して接着層を得る接着層形成工程と、少なくとも基材層の接着層と反対側の表面に活性化処理を行う活性化処理工程と、活性化処理を行った基材層の接着層と反対側の表面のみに塗工層を形成する塗工層形成工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0051】
[1]基材層形成工程
基材層形成工程では、ポリプロピレン系樹脂を35〜66質量%、その他の樹脂を1〜4質量%および無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を30〜61質量%含む熱可塑性樹脂組成物(B)をシート状に成形して基材層用シートを得る。
具体的には、まずポリプロピレン系樹脂、その他の樹脂、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を量りとって混合し、溶融、混練して熱可塑性樹脂組成物(B)を調製する。この溶融、混練は、例えばスクリュー型押出機を用いて行うことができる。
熱可塑性樹脂組成物(B)に用いるポリプロピレン系樹脂、その他の樹脂、無機フィラーおよび有機フィラーの種類、使用量の好ましい範囲については、上記の太陽電池用バックシートにおける基材層についての対応する説明を参照することができる。
次に、熱可塑性樹脂組成物(B)をシート状に成形する。この成形は、例えばスクリュー型押出機に接続されたTダイやIダイによって行うことができる。
また、基材層を多層構成で形成する場合には、多層のTダイやIダイを使用して共押出する方法や、多数のダイを使用してラミネートする方法、個別に製造したフィルムをドライラミネーション等の手法により積層する方法などを用いることができる。
さらに、基材層と接着層を同時に成形して積層体を形成する場合には、熱可塑性樹脂組成物(B)の熱溶融物と、後述の熱可塑性樹脂組成物(A)の熱溶融物とを異なる押出機を用いて溶融混練した後、多層TダイやIダイを使用してダイ内で積層しつつ共押出する方法を用いることができる。
これらの方法によって押出された樹脂組成物の溶融物は、例えば冷却ロール上で冷却され固化されることでシートとして形成される。
【0052】
[2]延伸工程
延伸工程では、上記工程[1]で得た基材層用シートを少なくとも一軸方向に延伸して基材層を得る。
この延伸工程は、一般的な一軸延伸方法や二軸延伸方法を用いて行うことができる。延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸で一軸延伸する方法、さらにこの後にテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた二軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせ、あるいはテンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸方法などが挙げられる。なお、本明細書中において、「縦延伸」とはMD(マシン・ディレクション)方向への延伸を表し、「横延伸」とはMD方向に直交するシート幅方向への延伸を表す。
この延伸工程での延伸倍率の好ましい範囲については、上記の太陽電池用バックシートにおける基材層についての対応する説明を参照することができる。
また、多層構成の場合の延伸軸数は、全て一軸延伸または全て二軸延伸であってもよいし、一軸/二軸/一軸など、層毎に異なる延伸軸数であってもよい。全て同じ延伸軸数の多層構成を形成する場合、各層毎に延伸を行った後に積層してもよいし、各層を積層した後にまとめて延伸を行うようにしてもよい。また、例えば一軸/二軸/一軸の多層構成を形成する場合、それぞれ一軸または二軸に延伸した後に積層してもよいし、中間層を一軸方向に延伸(例えば縦延伸)した後、この両面に表面層の溶融原料を押し出し貼合して多層構造とし、これを更に異なる軸方向に延伸(例えば横延伸)して一軸/二軸/一軸の多層構成を形成するようにしてもよい。
【0053】
[3]接着層形成工程
接着層形成工程では、熱可塑性樹脂を50〜100質量%と、無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方を0〜50質量%含む熱可塑性樹脂組成物(A)を、基材層上にシート状になるように積層形成して接着層を得る。
熱可塑性樹脂組成物(A)に用いる熱可塑性樹脂、無機フィラーおよび有機フィラーの種類、使用量の好ましい範囲については、上記の太陽電池用バックシートにおける接着層についての対応する説明を参照することができる。
熱可塑性樹脂組成物(A)の積層形成は、熱可塑性樹脂組成物(A)を、押出機を用いて溶融混練した後、前記工程[2]で得た基材層上にTダイ等を使用して押出して溶融ラミネートし、冷却ロール上で冷却し固化する方法等により行うことができる。また、前記工程[1]で説明したように、基材層と接着層を同時に成形して積層体を形成してもよい。
以上の工程により、基材層と接着層とが積層された積層体が得られる。
【0054】
[4]アニーリング処理工程
アニーリング処理工程は、積層体に熱処理を行う工程であり、必要に応じて行われる。
太陽電池モジュールへのバックシートの接着は、一般的に150℃で30分間の加熱圧着により行われる。そのため、バックシートの熱収縮率は小さいことが好ましい。積層体にアニーリング処理を行うと、この加熱圧着に際する熱収縮が小さく抑えられ、太陽電池モジュールにバックシートを密着性よく接着することができる。
アニーリング処理の温度は、50〜300℃であることが好ましく、80〜280℃であることがより好ましく、100〜250℃であることがさらに好ましい。
アニーリング処理の時間は、1〜180分であることが好ましく、3〜120分であることがより好ましく、5〜60分であることがさらに好ましい。
なお、このアニーリング処理の時期は、積層体形成後に限らず、この他の段階で行うとうにしてもよい。
【0055】
[5]活性化処理工程
活性化処理工程では、少なくとも基材層の接着層と反対側の表面に活性化処理を行う。この活性化処理は、基材層の接着層と反対側の表面のみに行ってもよいし、この表面と、接着層の基材層と反対側の表面の両方に行うようにしてもよい。
活性化処理としては、具体的にはコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等を挙げることができる。これらの活性化処理により、基材層表面にぬれ性や帯電防止性を付与したり、接着層の接着性を向上させたりすることができる。
すなわち、基材層を例にとると、活性化処理を行わない表面ではJIS K 6768:1999「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」で求められる表面のぬれ張力が29〜33mN/mを示し、水溶性の塗工液は弾かれてしまうが、活性化処理を行った表面ではぬれ張力が34〜50mN/mを示し、水溶性の塗工液が弾かれずに濡れ広がることができる。この性質を利用して、積層体の片面(基材層の接着層と反対側の表面)のみに活性化処理を行い、続いて水溶性の塗工液を塗工することで、積層体の活性化処理を行った面のみに塗工層を形成することができる。
これら活性化処理のうちコロナ放電処理の場合には、安定で効果的な酸化処理を行うことができることから、活性化処理量が10W・分/m2(600J/m2)以上であることが好ましく、20W・分/m2(1,200J/m2)以上であることがより好ましい。また、活性化処理が強すぎるとバックシート表面に有機低分子化合物が生じて却って接着力が低下することがあるため、活性化処理量が100W・分/m2(6,000J/m2)以下であることが好ましく、60W・分/m2(3,600J/m2)以下であることがより好ましい。
【0056】
[6]塗工層形成工程
塗工層形成工程では、基材層の接着層と反対側の表面(積層体の接着層と反対側の表面)のみに塗工層を形成してバックシートを得る。すなわち、塗工層は、基材層の接着層と反対側の表面のみに形成し、接着層の基材層と反対側の表面(積層体の接着層側の表面)には形成しない。
具体的には、まず塗工用の塗料を調製し、この塗料を基材層の接着層と反対側の表面に塗工した後、乾燥あるいは硬化することで塗工層を形成する。
塗料の固形成分としては、上記の太陽電池用バックシートの塗工層の材料として例示した水溶性バインダーや機能性材料を用いることができる。また、塗料化の溶媒としては、水、分岐していてもよい炭素数1〜4の1〜3価のアルコール及びそれらと炭素数1〜3の飽和脂肪酸とのエステル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン等を挙げることができる。
また、塗料の塗工方法としては、ダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、スライドホッパー等を挙げることができる。
塗工した塗料の乾燥方法としては熱風乾燥、赤外線乾燥等を用いることができ、塗料が硬化性樹脂を含む場合の硬化方法としては、紫外線硬化、電子線硬化等を用いることができる。
以上の製造方法によって製造されたバックシートは、可視光〜近赤外領域において高い反射率が得られ、また部分放電電圧が高く、優れた耐電圧性を有する。さらに、このバックシートは封止材に対する接着性に優れ、高温高湿度環境下においてもバックシートと封止材との界面剥離を抑えることができる。
そして、この製造方法によれば、このようなバックシートを簡易な工程で製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例、比較例及び試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下
に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更すること
ができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0058】
<試験例>
(光反射率)
下記の各実施例、各比較例で得た太陽電池用バックシートの光反射面側(接着層(A)側)表面における光反射率は、直径150mmの積分球を搭載した分光光度計(商品名:U−3310、(株)日立製作所製)を用いて、JIS Z8722:2009の条件d記載の方法に従い、波長750nmの光で測定し、同測定結果を測定器付属の標準板である酸化アルミニウム板における同条件での光反射率を100%としたときの相対反射率として算出して求めた。評価基準は次の通りとした。
◎:85%以上
○:80〜85%
△:75〜80%
×:75%以下
【0059】
(厚み)
下記の各実施例、各比較例で得た太陽電池用バックシートの全厚みは、厚み計(ハイブリッチ製作所製)を用いて、JIS−P8118記載の方法に従い測定した。
太陽電池用バックシートの各層における厚みは、下記の空孔率観察の際に電子顕微鏡を用いて各積層体の断面を観察し、外観より層間の界面を判断して厚み比率を求め、上で求めた全厚みと各層の厚み比率から算出した。
【0060】
(部分放電電圧)
下記の各実施例、各比較例で得た太陽電池用バックシートの全厚み方向における部分放電電圧は、部分放電試験機(商品名:部分放電システム DAC−6031、総研電気製)を用いて、IEC 60664−1に記載の方法に従い測定した。評価基準は次の通りとした。
◎:6.0V/um以上
○:5.5〜6.0V/um
△:5.0〜5.5V/um
×:5.0V/um以下
【0061】
(封止材接着性)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:エバフレックスEV45X、三井・デュポンケミカルズ(株)製)のペレットを、加熱プレスにより約400μm厚みの板状に成形加工したものを作成し、これを擬似的に太陽電池モジュールの封止材として使用した。
下記の各実施例、各比較例で得た太陽電池用バックシートをA4サイズに断裁し、同サンプル2枚をそれぞれの接着層側表面を向かい合わせにし、その間に封止材を挟み、バックシートの接着層が封止材に接するように重ね合わせた。
次いでこれを2枚のSUS板で挟み込み、熱プレス機にて加圧加熱(150℃、10MPa/cm2圧、30分間)し、バックシートを封止材に圧着して擬似太陽電池サンプルを得た。冷却後にこれを25mm幅にカットし、片方のバックシートと封止材とを手で丁寧に一部剥がし、把持部(つかみしろ)を形成して試験片を作成した。
各試験片を恒温室(温度20℃、相対湿度65%)で一週間保管、またはPCT(プレッシャークッカーテスト)で、120℃の相対湿度100%環境下で、24時間の加速劣化試験を行った後、引張試験機(商品名:オートグラフAGS−5KND、(株)島津製作所製)を使用し、JIS K6854−2に記載の方法に従い、50mm/分の速度でバックシート側と封止材側それぞれの把持部を引張り、少なくとも100mmの距離を180°剥離させて、剥離が安定している時の応力をロードセルにより測定した。
この測定を、各積層体の縦横方向についてそれぞれ3回行い、これらの平均値をもって太陽電池モジュールとバックシートとの剥離力とした。
【0062】
(空孔率)
本発明の太陽電池用バックシートの各層における空孔率は、同積層体の空孔を潰さないように冷却しながら切削して厚み方向断面(観察面)を作成し、観察試料台に貼り付け、その観察面に金を蒸着して走査型電子顕微鏡(装置名:SM−200、TOPCON(株)製)を使用して観察しやすい任意の倍率(500〜3000倍)にて各層の空孔を観察した。さらに観察した領域を画像データとして取り込み、その画像を画像解析装置(装置名:ルーゼックスAP、ニレコ(株)製)で画像処理を行い、空孔の面積率を求め、これを空孔率とした。
【0063】
<使用材料>
実施例及び比較例で使用したポリプロピレン系樹脂、熱可塑性樹脂、フィラー、水溶性バインダーの内容と略号を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
<実施例>
(実施例1)
PP1/45質量部、HDPE/4質量部、フィラー(a)/46質量部、フィラー(C)/5質量部からなる樹脂組成物(B)を押出機を用いて250℃で溶融混練し、続いてこれをシート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって熱可塑性樹脂シートを得た。この熱可塑性樹脂シートを145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に4.0倍延伸した。
次いでPP2からなる熱可塑性樹脂組成物(A)を別の押出機を用いて250℃で溶融混練し、上記で得られた熱可塑性樹脂シートの片面に溶融押し出しして、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得た。この時、層の厚みはA層/B層=30/80(質量比)とした。
次いでこの積層物を160℃に再加熱してテンターを利用して横方向に8.5倍で延伸した。その後、165℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして表2に記載の厚みを有する2層構造の積層体(接着層(A)/基材層(B))を得た。
この積層体の基材層側にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の基材層側に、水溶性バインダーとしてEI1を固形分量として0.5質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.01gとなるように塗工し、乾燥させて両面に塗工層を設けた積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0066】
(実施例3〜6、8、11)
実施例1において基材層の熱可塑性樹脂組成物(A)、接着層の熱可塑性樹脂組成物(B)、延伸条件を表2に記載の通りに変更して、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得たこと以外は実施例1と同様にして積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0067】
(実施例2、比較例2)
実施例1において基材層の熱可塑性樹脂組成物(A)、接着層の熱可塑性樹脂組成物(B)、延伸条件を表2に記載の通りに変更して、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得た。
この積層体の基材層側にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の基材層側に、水溶性バインダーとしてASを固形分量として0.5質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.01gとなるように塗工し、乾燥させて両面に塗工層を設けた積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0068】
(実施例7)
実施例1において基材層の熱可塑性樹脂組成物(A)、接着層の熱可塑性樹脂組成物(B)、延伸条件を表2に記載の通りに変更して、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得た。
この積層体の基材層側にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の基材層側に、水溶性バインダーとしてPVA1を固形分量として1.0質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.08gとなるように塗工し、乾燥させて両面に塗工層を設けた積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0069】
(実施例9、10、比較例3)
実施例1において基材層の熱可塑性樹脂組成物(A)、接着層の熱可塑性樹脂組成物(B)、延伸条件を表2に記載の通りに変更して、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得た。
この積層体の両面にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の基材層側に、水溶性バインダーとしてEI1を固形分量として0.5質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.01gとなるように塗工し、乾燥させて両面に塗工層を設けた積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0070】
(実施例12)
実施例1において基材層の熱可塑性樹脂組成物(A)、接着層の熱可塑性樹脂組成物(B)、延伸条件を表2に記載の通りに変更して、(A)/(B)の層構成を有する積層物を得た。
この積層体の基材層側にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の両面に、水溶性バインダーとしてEI1を固形分量として0.5質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.01gとなるように塗工したが、接着層側表面の塗料が弾かれてしまった。このまま乾燥させて積層体を得て、これを太陽電池用バックシートとした。
【0071】
(比較例1)
特開2013−33959号公報の実施例1の積層フィルムを太陽電池用バックシートとした。
比較例1では表面処理として、積層体の両面にコロナ放電処理を行い、次いでこの積層体の両面に、水溶性バインダーとしてEI1を固形分量として0.5質量%含む水溶液を、乾燥後の固形分量が1m2当り0.01gとなるように塗工し、乾燥させて両面に塗工層を設けた積層体を得たものである。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
実施例1〜12の太陽電池バックシートは、積層体の接着層側表面の表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωであり、積層体の接着層と異なる側の表面の表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωであるか、積層体の接着層側表面に水溶性バインダーを含む塗工層が存在せず、積層体の接着層と異なる側の表面に水溶性バインダーを含む塗工層が設けられているものである。
実施例12は、コロナ放電処理を行った面(基材層側)のみ均一な塗工層が得られ、表面抵抗率が1.0×109〜1.0×1013Ωの範囲に入ったのに対し、コロナ放電処理を行わなかった面(接着層側)は塗工液が弾かれ、積層体の接着層側表面に水溶性バインダーを含む塗工層が存在せず、表面抵抗率が1.0×1014〜1.0×1016Ωの範囲に入った。
表3から明らかなように、実施例1〜12の太陽電池バックシートは、反射率、部分放電電圧、封止材との接着性の何れも良好または可であり、太陽電池バックシートとして好適であることがわかる。
一方、比較例1の太陽電池バックシートは接着層側に水溶性バインダーを含む塗工層が存在し、封止材との接着性が劣るものであり、比較例2の太陽電池バックシートは、接着層のフィラーが50質量%より多く、界面剥離を起こすため封止材との接着性が劣るものであり、比較例3の太陽電池バックシートは、基材層のフィラーが30質量%に満たないため反射率が劣るものであり、いずれも実施例1〜12の太陽電池バックシートに劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池モジュールの光入射面の反対側の封止材上に設置して、優れた光の反射率によりモジュールを通過した太陽光を効率的に発電素子側に反射して発電効率を向上させ、優れた耐電圧により発生した電気を漏洩させることなく、封止材への優れた密着性により太陽電池に長期間の屋外使用に耐えて性能低下を防ぐことが可能である。