特開2015-146761(P2015-146761A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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2015-146761グラム陽性菌の選択的静菌方法及び低グラム陽性菌土壌及び低グラム陽性菌土壌による生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-146761(P2015-146761A)
(43)【公開日】2015年8月20日
(54)【発明の名称】グラム陽性菌の選択的静菌方法及び低グラム陽性菌土壌及び低グラム陽性菌土壌による生産方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20150724BHJP
【FI】
   A01G7/00 605Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-20991(P2014-20991)
(22)【出願日】2014年2月6日
(71)【出願人】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(71)【出願人】
【識別番号】513167186
【氏名又は名称】合同会社土づくり推進機構
(72)【発明者】
【氏名】麦島 昌
(72)【発明者】
【氏名】田島 創
(57)【要約】
【課題】土壌中の好気性細菌の増殖を抑えること無く、グラム陽性菌のみを選択的に静菌することを特徴とする植物の栽培方法とこの方法により栽培された高機能な生産物を提供する。
【解決手段】土壌に含まれるグラム陽性菌は、害毒を発生して生産物に悪影響を与えるため、農業現場ではグラム陽性菌を選択的に低減することが課題となっていた。本発明は、特定の腐植物質を任意に加えることにより、(1)有用な好気性菌を減らすこと無く外毒性を有するグラム陽性菌の存在割合を選択的に低減する方法、(2)グラム陽性菌を選択的に低減した土壌、ならびに(3)低グラム陽性菌土壌における生産方法とこの生産方法で生産する高機能な生産物を開発した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体の栽培方法であって、第一の工程として土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌の個数を減じること無くグラム陽性菌を静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を1%以上40%以下に減じた後、第二の工程として好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる制御を行い、且つ土壌中の好気性細菌数を土壌1グラム当たり90000個以上1000000個以下に増加された土壌を用いることを特徴とする植物体の栽培方法。
【請求項2】
土壌中の好気性細菌の菌数を減じること無くグラム陽性菌を選択的に静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を制御する方法が、土壌中の腐植物質量を1重量%以上5.1重量%以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の植物体の栽培方法。
【請求項3】
第二の工程を行った後の好気性細菌の個数が、土壌1グラムあたり90000個以上500000個以下であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の植物体の栽培方法。
【請求項4】
第二の工程を行った後の第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる好気性細菌中のグラム陽性菌数の増加の割合が、1%以上5000%以下であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の植物体の栽培方法。
【請求項5】
第二の工程がバチルス属などのグラム陽性菌を土壌に加えて2日以上24ヶ月以下養生することを特徴とする請求項1乃至4に記載の植物体の栽培方法。
【請求項6】
土壌で栽培される植物体であって、第一の工程として土壌に腐植物質を加えることにより、グラム陽性菌以外の好気性細菌の増殖を減じること無くグラム陽性菌を静菌して、土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を1%以上40%以下に減じた後、第二の工程として2日以上24ヶ月以下養生して好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上とし、土壌中の腐植物質量が1重量%以上5.1重量%以下に調整され、且つ好気性菌の個数が土壌1グラムあたり90000個以上1000000個以下に増加させた土壌で栽培される植物体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を生産するための土壌について、好気性細菌を減ずること無く外毒性を有するグラム陽性菌を静菌することにより土壌環境を制御して植物栽培に好適な土壌を提供すること、前記土壌により栽培された機能性の高い植物に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌中における微生物の役割は、土壌に残っている有機物の分解、窒素の固定と供給など植物を生産する上で非常に重要である。グラム陰性菌は、シュードモナスに代表されるように、土壌中の有機物を分解して腐植物質を生産するなど有用な細菌類である。一方、土壌中に存在するグラム陽性菌は、一般に外毒素を生産するため(非特許文献1)、土壌中においてその増殖を抑えることが望まれていた。このため、グラム陽性菌の静菌の条件として、グラム陰性菌を静菌することなくグラム陽性菌を静菌するといった選択的な静菌が必要とされていた。
【0003】
食品分野においては、パラオキシ安息香酸エステル類(通称パラベン)がグラム陰性菌を静菌することなくグラム陽性菌に対する抗菌力があることから、これを食品添加物として用いることにより食品中の有害な細菌の増殖を抑えて、静菌している(非特許文献2)。植物を栽培する土壌においてもパラオキシ安息香酸エステル類を加えることがグラム陽性菌を静菌する上で効果があると考えられるが、これを土壌に加えることは、土壌の環境に悪影響を与えたり、土壌中に有効な細菌であるバチルスなどのグラム陽性菌に対する抗菌性を土壌に持たせたり、また、栽培される植物に悪影響を与えたりするため、植物生産現場に利用することはできなかった。
【0004】
このため、生産物や圃場に悪影響を与えること無く、且つグラム陰性菌の増殖を妨げること無く、グラム陽性菌を静菌する手法の開発が強く求められていた。
【0005】
さらに、グラム陽性菌であるバチルスなどの細菌類については、土壌中における有機物の分解など良い効果を与えることが知られており、バチルスなどの細菌類については、増殖を妨げないことが必要とされた。このため、上記の圃場における生産方法の制御として、グラム陰性菌を静菌することなく外毒性を有するグラム陽性菌のみ静菌し、且つ土壌に有用なバチルスなどのグラム陽性菌についてはその増殖を妨げることなく増殖を助けることが望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岩波生物学事典第4版、岩波書店、p353(グラム陽性菌)
【非特許文献2】食品微生物制御の化学、松田敏生 幸書房、p52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の如く、従来技術に係る課題は、土壌中の好気性細菌のうち、グラム陰性菌を静菌すること無く外毒性を有するグラム陽性菌を静菌し、さらに植物の育成に良い効果を示すバチルスなどのグラム陽性菌については増殖を妨げない土壌の制御方法が課題となっていた。
【0008】
さらに、現状の圃場では、生産される植物の収穫後の寿命が短いことや糖度や抗酸化性などが低いことなどが課題となっていた。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的は、土壌中の好気性細菌のうち、グラム陰性菌を静菌すること無く、外毒性を有するグラム陽性菌を静菌し、さらに植物の育成に良い効果を示すバチルスなどのグラム陽性菌については増殖を妨げないように土壌の制御を行う栽培方法とこの制御によって達成される土壌、更には、この土壌により栽培される長寿命、高糖度、そして、高い抗酸化特性などを持つ機能性の高い植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、機能性の高い植物を栽培する方法として、第一の工程として土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌の個数を減じること無くグラム陽性菌を静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を減じた後、第二の工程として好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる制御を行い、且つ土壌中の好気性細菌数を制御された土壌を用いることにより、機能性の高い植物の栽培が可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち本発明は、本発明の請求項1として、植物体の栽培方法であって、第一の工程として土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌の個数を減じること無くグラム陽性菌を静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を1%以上40%以下に減じた後、第二の工程として土壌にバチルスなどのグラム陽性菌が極端に少ない場合には、バチルスなどのグラム陽性菌を土壌に加え2日以上24ヶ月以下養生して好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌数以上に増加させる制御を行い、この制御により増加するグラム陽性菌数は、1%以上5000%以下であり、且つ土壌中の好気性細菌数を土壌1グラム当たり90000個以上1000000個以下に増加された土壌を用いることを特徴とする植物体の栽培方法である。
【0012】
ここでは、土壌中の好気性細菌の菌数を減じること無くグラム陽性菌を選択的に静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を制御する方法が、土壌中の腐植物質量を1重量%以上5.1重量%以下とすると好適である。
【0013】
さらに、前記第二の工程を行った後の好気性細菌の個数が、土壌1グラムあたり90000個以上500000個以下であるとさらに好適である。
【0014】
さらに、前記第二の工程を行った後の前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる好気性細菌中のグラム陽性菌数の増加率が、1%以上5000%以下であると好適である。
【0015】
さらに、前記第二の工程が、2日以上24ヶ月以下の養生であり、土壌中のバチルスなどのグラム陽性菌が少なくなっている場合にはバチルス属などの好気性細菌を資材として与えて7日以上24ヶ月以下の期間養生する工程であると好適である。
【0016】
そして、機能性の高い植物体が、第一の工程として土壌に腐植物質を加えることにより、グラム陽性菌以外の好気性細菌の繁殖力を減じること無くグラム陽性菌を静菌して、土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を1%以上40%以下に減じた後、第二の工程として2日以上24ヶ月以下の養生により好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上とし、且つ、好気性細菌中のグラム陽性菌数の増加率が1%以上5000%以下であり、土壌中の腐植物質量が1重量%以上5.1重量%以下に調整され、且つ好気性細菌の個数が土壌1グラムあたり90000個以上1000000個以下に増加させた土壌で栽培される植物体であると好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、従来では、土壌中の好気性細菌のうち特定の菌であるグラム陽性菌のみ静菌し、且つ土壌中で植物の育成に好影響を与えるバチルスなどの細菌の増殖を妨げない方法を実現することはできなかったが、本発明の請求項1、2、3、4及び5によれば、その第一の工程において、土壌中の好気性細菌のうち外毒性を有するグラム陽性菌のみ静菌し、好気性細菌を植物体の栽培に好適な土壌環境となるように増やすことができ、さらに第二の工程においてグラム陽性菌の中で植物体の育成に重要であるバチルスなどのグラム陽性菌については増殖を助け、植物体の育成に好適な圃場を提供することができる。請求項1乃至5に記載された植物体の育成に好適な圃場で栽培されることにより、請求項6において栽培された植物体においては、寿命が長くなる、糖度が高くなる、ビタミンEとして換算したときの抗酸化特性が高くなるなど機能性の高い植物体となることが顕著に認められる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】土壌に任意量の腐植物質を施したときの腐植物質量に対する好気性細菌と好気性細菌中のグラム陽性菌の個数である。
図2】土壌中の好気性細菌数に対する腐植物質量とグラム陽性菌数/好気性細菌数を示した図である。
図3】腐植物質量に対するグラム陽性菌数/好気性細菌数の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明につき、より詳細に説明すると、本発明の植物体の栽培方法は、植物体の栽培方法の第一の工程として土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌の個数を減じること無くグラム陽性菌を静菌した時の土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は、1%以上40%以下に減じるのが好ましく、より好ましくは1%以上30%以下であり、最も好ましくは1%以上20%以下に減じるのが好ましい。このような条件以上にグラム陽性菌の好気性細菌に対する割合が高くなると、外毒性を有する菌の増殖が生じる場合が有ったり、栽培に良い影響を与えるグラム陽性菌の増殖を妨げ植物体の機能性を減ずるなどの影響を及ぼすことあったりする。また、グラム陽性菌の好気性細菌中の割合が1%以下になると土壌中の腐植物質などの有機物を分解し植物に良い影響を与えるグラム陽性菌の繁殖が少なくなるなどの影響がある。
【0020】
土壌中の好気性細菌の菌数を減じること無くグラム陽性菌を選択的に静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を制御する方法は、土壌中の腐植物質量を1重量%以上5.1重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは、1重量%以上4重量%以下、更に好ましくは2重量%以上4重量%以下である。腐植物質量が1重量%以下であると好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を減ずる効果、つまり静菌効果が低下する。また、腐植物質量が5.1重量%以上であると、施肥を行った際に当該腐植物質がリンなどを吸着するため、植物へのリンの吸収量が施肥量よりも低下する場合がある。腐植物質量の分析結果からリンの施肥量を多く見積もり、施肥することも可能であるが、生産コストが増加することがある。さらに腐植物質を加えるためのコストが高くなる場合がある。また、腐植物質が多すぎると腐植物質により繁殖が旺盛となるグラム陽性菌が土壌中に多くなりすぎ、土壌中のリグニン質などを分解するグラム陰性菌の割合が相対的に減じてしまう場合がある。また、それ以上の腐植物質量の割合の増加による効果の向上が得られ難しくなる場合がある。
【0021】
土壌に施す腐植物質の測定方法は、所定量の土壌を抽出液であるpH4.8に調整された塩化ナトリウム−酢酸ナトリウム水溶液、及び、水酸化ナトリウム−ピロリン酸ナトリウム混液に入れ、土壌に含まれる有機成分である腐植物質を抽出したそれぞれの液の波長515nm以上590nm以下から選択される少なくとも1つ以上の波長の光および波長601nm以上900nm以下から選択される少なくとも1つ以上の波長の光の光路長が5mm以上10mm以下から選択される少なくとも1つの光路長でのそれぞれの光透過量から得られる吸光度と、それぞれの領域から選択された波長での吸光度の比(短波長の吸光度/長波長の吸光度)から腐植物質の量と腐植物質の光学特性から質を測定する方法を用いることができる。
【0022】
このとき測定された腐植物質において、本願発明に用いられる静菌作用を持つ腐植物質は、前記2つの波長における吸光度の比(短波長の吸光度/長波長の吸光度)は、1以上20以下が好ましく、より好ましくは、2以上20以下であり、更に好ましくは、3以上20以下である。吸光度の比(短波長の吸光度/長波長の吸光度)がこれより小さいと静菌作用が確認されなかったりする。またこれ以上であると、肥料として用いられるリンを吸着する能力が高くなりすぎたり腐植物質が分解されやすかったりするため、植物栽培コストが高くなる傾向がある。このような条件を満たす腐植物質では、土壌中の好気性細菌のうちグラム陽性菌の割合を減じた後、さらに植物の栽培に好適な影響を及ぼすバチルス属や根菌などのグラム陽性菌の繁殖を助けることができる。これ以外の方法で抽出した腐植物質には、グラム陰性菌などの好気性細菌を静菌すること無くグラム陽性菌を静菌する効果が認められなかったり、グラム陰性菌やバチルス属などの好気性細菌をも静菌してしまったりする。この腐植物質の持つ効果の原因については定かではないが、食品添加物として用いられるパラオキシ安息香酸エステル類のように腐植物質が作用していることが想定される。
【0023】
腐植物質の吸光度の測定装置は、特に限定されるものではないが、合同会社土づくり推進機構社製「つち博士(登録商標)」や分光光度計を好ましく用いることができる。
【0024】
植物体の栽培方法の第一の工程として土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌の個数を減じること無くグラム陽性菌を静菌して土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を制御した後の第二の工程として、好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる制御は、好気性細菌中のグラム陽性菌数の増加として、1%以上5000%以下が好ましく、より好ましくは1%以上4000%以下、更に好ましくは1%以上2500%以下である。これ以上になると好気性細菌中のシュードモナスなどのグラム陰性菌の土壌中の割合が低くなりすぎて土壌中の有機質であるリグニンなどの分解が生じなくなる。また少なすぎると栽培された野菜の機能性の増加割合が低くなることがある。
【0025】
前記第二の工程における好気性細菌に対するグラム陽性菌の割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合以上に増加させる制御は、土壌に存在する外毒性を有さず腐植物質により静菌されないグラム陽性菌について土壌を2日以上24ヶ月以下養生することにより増殖してもよく、好ましくは、14日以上12ヶ月以下養生することにより増殖してもよく、14日以上3ヶ月以下養生することが更に好ましく、第一工程を行った後の土壌に外毒性を有さず腐植物質により制菌されないグラム陽性菌を資材として加え、且つ14日以上2ヶ月以下養生することが好ましい。外毒性を有さず腐植物質により制菌されないグラム陽性菌としては、バチルスや根菌などが好ましく利用できる。第二の工程の期間がこれ以上長いと単位面積、単位時間当たりの生産量が低下する可能性がある。また、短いと第一の工程によるグラム陽性菌の静菌効果が十分得られないことがある。前記第二工程の養生期間の土壌の取り扱いについては、特に限定されるものではないが、浅耕、深耕、空気や酸素のエアレーションを好ましく行うことができる。
【0026】
植物体の栽培方法といて、前記第一及び第二の工程の後に残っている土壌中の好気性細菌数は、土壌1グラム当たり90000個以上1000000個以下が好ましく、より好ましくは、90000個以上600000個以下、更に好ましくは、90000個以上250000個以下である。第一及び第二の工程後の土壌1グラム当たりの菌数が、90000個以下であると好気性細菌中の外毒性を有するグラム陽性菌の占める割合が高くなる傾向に有り、また、菌数が多すぎると第一及び第二の工程で植物の栽培に良い影響を与える腐植物質などの有機物を分解することがある。細菌数が多く腐植物質の分解が生じる土壌については、適宜腐植物質を施すことができるが、腐植物質を施すためのコストを勘案する必要が当然ながらある。
【0027】
土壌中の菌数の測定については特に限定されず、公定法であるシャーレと寒天培地を用いる平板培養法や最確数法、または、迅速な測定方法である、蛍光染色法、アデノシン三リン酸法、代謝物検出法、インピーダンス測定法、そして、ミクロカロリメトリー法などが好適に用いられる。
【0028】
栽培方法で栽培された植物体としては、第一の工程として土壌に腐植物質を加えることにより、グラム陽性菌以外の好気性細菌の増殖を減じること無くグラム陽性菌を静菌して、土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌の割合を1%以上40%以下に減じた後、第二の工程として好気性細菌に対するグラム陽性菌数の増加割合を前記第一の工程により達せられた土壌中の好気性細菌中のグラム陽性菌数の1%以上5000%以下とし、且つ土壌中の腐植物質量が1重量%以上5.1重量%以下に調整され、且つ好気性細菌の個数が土壌1グラムあたり90000個以上1000000個以下に増加させた土壌で栽培される植物体である。前記植物体は、収穫後の寿命が他の圃場で栽培された植物体に比べ長く、また、糖度が高く、ビタミンEとして換算したときの抗酸化特性が高くなるなど、機能性が高くなる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例、実験例、比較例を示して、本発明をより具体的に説明するが、本発明は
下記実施例に限定されるものではない。
【実験例1】
【0030】
前作としてほうれん草を栽培した土壌(pH6.5、腐植物質量0.5wt%)について、1g当たりのグラム陽性菌と好気性細菌の数をインピーダンス測定法により測定した。このときの菌数は、グラム陽性菌が3500個/g土壌、好気性細菌数が7000個/g土壌であった。この土壌について、本発明の第一の工程として、腐植物質を加えた後の土壌に含まれる腐植物質量がそれぞれ1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%となるように腐植物質を添加し、腐植物質添加土壌を作成した。この腐植物質添加土壌を7日間養生し、それぞれの土壌に含まれる腐植物質量、及びグラム陽性菌とグラム陰性菌の数をインピーダンス測定法により測定した。これらの結果を表1に示す。また、土壌中の腐植物質量に対する好気性細菌数とグラム陽性菌数を図1に示す。表1及び図1に示されたように、本発明により利用された腐植物質により土壌中のグラム陽性菌以外の好気性細菌を制菌することなく、グラム陽性菌のみ静菌できることが確認された。また、土壌中の腐植物質量が5.1重量%より多くなると菌の繁殖と共に腐植物質量の減少が確認された。
【0031】
【表1】
【実験例2】
【0032】
実験例1で用いた腐植物質添加土壌のうち、土壌中の腐植物質量が2.2重量%の腐植物質添加土壌について、本発明の第二の工程として、養生期間を伸ばして菌数の測定を行った。養生後の土壌中のグラム陽性菌と好気性細菌をインピーダンス測定法により測定した。結果を表2に示す。この実験例2より、第二の工程を開始した4日後からグラム陽性菌の顕著な増殖を確認することができた。
【0033】
【表2】
【実験例3】
【0034】
前作としてレタスを栽培した土壌(pH6.3、腐植物質量0.5wt%)について、1g当たりのグラム陽性菌と好気性細菌の数をインピーダンス測定法により測定した。このときの菌数は、グラム陽性菌が5000個/g土壌、好気性細菌数が10000個/g土壌であった。この土壌について、本発明の第一の工程として、腐植物質を加えた後の土壌に含まれる腐植物質量を所定量となるように腐植物質を添加し、腐植物質添加土壌を6種作成した。この腐植物質添加土壌を30日間養生し、それぞれの土壌に含まれる腐植物質量と、グラム陽性菌及び好気性細菌数をインピーダンス測定法により測定した。また、腐植物質量が2.2重量%となった土壌について更に60日間の養生を行い、前記60日に達するまでの間に、土壌に含まれる腐植物質の重量%、グラム陽性菌、好機性菌数をインピーダンス測手法により測定した。これらの結果を図2に示す。また、腐植物質の添加後の土壌に含まれる腐植物質量の重量%に対するグラム陽性菌/好気性細菌の比を図3に示す。図2及び図3に示した結果から、腐植物質の添加量とグラム陽性菌/好気性細菌が相関していることが確認できる。また、土壌中の腐植物質量は好気性細菌数の増加と共に減少することが確認できる。
【0035】
上記表1、表2及び図1〜3に示された結果によれば、本発明のグラム陽性菌の選択的静菌方法として、本発明の第一の工程として腐植物質を加えて腐植物質量が1重量%以上5.1重量%以下とした土壌では、グラム陽性菌以外の好気性細菌の増殖を妨げることなく、グラム陽性菌を静菌することができた。また、本発明の第二の工程として、土壌中の腐植物質量を前記範囲内の所定量に保ちつつ養生を行った土壌では、グラム陽性菌の中でも植物の栽培に好適に用いられるバチルス属などのグラム陽性菌の増殖が確認され、低グラム陽性菌土壌を作成することができた。
【実施例1】
【0036】
本発明の第1の実施の形態として、腐植物質量0.5重量%未満、好気性細菌数7000個/g(土壌)、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合50%の土壌に、合同会社土づくり推進機構社製「つち博士(登録商標)」による分析を行った腐植物質を含む資材を腐植物質量として土壌中に1.5重量%となるように加え、浅耕した。このときの前記分析器により分析した土壌に含まれる腐植物質量は1.45重量%であった。3日の養生後、同様に腐植物質量を測定したところ1.48重量%であった。この土壌について、インピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりのグラム陽性菌数は5500個、同様にインピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりの好気性細菌数は16000個であり、前記グラム陽性菌数と好気性細菌数から求められる好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.34となり、好気性細菌の増殖を妨げること無くグラム陽性菌を静菌できていることを確認した。この土壌をさらに浅耕し30日の養生後、腐植物質量、グラム陽性菌及び好気性細菌数を測定したところ、それぞれ1.6重量%、33000個/g(土壌)、90000個/g(土壌)であり、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.37であり、グラム陽性菌の中で腐植物質の存在により静菌されないバチルス属などが増加していることが確認された。この第二の工程におけるグラム陽性菌数の増加の割合は、600%であった。この圃場により栽培されたほうれん草の収穫後の寿命は13日であり、糖度計により測定された糖度は14Brix%、また、抗酸化力は、ビタミンEとして換算した場合、75mg/100g(ほうれん草)だった。
【実施例2】
【0037】
本発明の第2の実施の形態として、腐植物質量0.5重量%未満、好気性細菌数7000個/g(土壌)、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合50%の土壌に、合同会社土づくり推進機構社製「つち博士(登録商標)」による分析を行った腐植物質を含む資材を腐植物質として2.3%となるように加え、浅耕した。このときの前記分析器により分析した土壌に含まれる腐植物質量は2.2重量%であった。9日の養生後、同様に腐植物質量を測定したところ2.2重量%であった。この土壌について、前記インピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりのグラム陽性菌数は7300個、同様にインピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりの好気性細菌数は108000個であり、前記グラム陽性菌数と好気性細菌数から求められる好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.068となり、好気性細菌の繁殖を妨げること無くグラム陽性菌を静菌できていることを確認した。この土壌をさらに浅耕し5日の養生後、腐植物質量、グラム陽性菌及び好気性細菌数を測定したところ、それぞれ2.1重量%、24000個/g(土壌)、246000個/g(土壌)であり、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.10であり、グラム陽性菌のうち腐植物質の存在により静菌されないバチルス属などが増加していることが確認された。この第二の工程におけるグラム陽性菌数の増加の割合は、329%であった。この圃場により栽培されたほうれん草の収穫後の寿命は14日であり、糖度計により測定された糖度は16Brix%、抗酸化力は、ビタミンEとして換算した場合、82mg/100g(ほうれん草)だった。
【比較例1】
【0038】
本発明の第1の実施の形態で用いた土壌に、合同会社土づくり推進機構社製「つち博士(登録商標)」による分析を行った腐植物質を含む資材を腐植物質量として0.9重量%となるように加え、浅耕した。このときの前記分析器により分析した土壌に含まれる腐植物質量は0.9重量%であった。3日の養生後、同様に腐植物質量を測定したところ0.9重量%であった。この土壌について、前記インピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりのグラム陽性菌数は3800個、同様にインピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりの好気性細菌数は8000個であり、前記グラム陽性菌数と好気性細菌数から求められる好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.48となり、好気性細菌の増殖やグラム陽性菌の静菌を確かめることはできなかった。この土壌をさらに浅耕し、腐植物質量、グラム陽性菌及び好気性細菌数を測定したところ、それぞれ0.8重量%、3800個/g(土壌)、7800個/g(土壌)であり、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.49であり、グラム陽性菌の中でも腐植物質の存在により静菌されないバチルス属などが増加していることは確認されなかった。この圃場により栽培されたほうれん草の収穫後の寿命は10日であり、糖度計により測定された糖度は10Brix%、抗酸化力は、ビタミンEとして換算した場合、60mg/100g(ほうれん草)だった。この数値は、通常の栽培法で同時期に栽培されたほうれん草の平均値と同じ結果であった。
【比較例2】
【0039】
本発明の第2の実施の形態で用いた土壌を用い、当該土壌について本発明の第二の工程を省いた土壌において植物体を栽培した比較例を示す。土壌の腐植物質量として0.5重量%未満、好気性細菌数7000個/g(土壌)、好気性細菌中のグラム陽性菌の割合50%の土壌に、合同会社土づくり推進機構社製「つち博士(登録商標)」による分析を行った腐植物質を含む資材を腐植物質量として2.3重量%となるように加え、浅耕した。このときの前記分析器により分析した土壌に含まれる腐植物質量は2.2重量%であった。9日の養生後、同様に腐植物質量を測定したところ2.2重量%であった。この土壌について、前記インピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりのグラム陽性菌数は7300個、同様にインピーダンス測定法により測定した土壌1グラム当たりの好気性細菌数は108000個であり、前記グラム陽性菌数と好気性細菌数から求められる好気性細菌中のグラム陽性菌の割合は0.07となり、好気性細菌の繁殖を妨げること無くグラム陽性菌を静菌できていることを確認した。この圃場により栽培されたほうれん草の収穫後の寿命は13日であり、糖度計により測定された糖度は15Brix%、抗酸化力は、63mg/100g(ほうれん草)だった。このように本発明の第二の工程を省いた場合に栽培された圃場では、植物体の寿命と糖度が高くなることは確認されたが、抗酸化特性については、ビタミンEとして換算した場合の顕著な向上は確認されなかった。
【0040】
実施例1、2、比較例1の結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明では、圃場に特定の腐植物質を施すことにより、土壌中の微生物群を増やしながらグラム陽性菌を選択的に静菌し、且つ土壌に有用であるバチルスなどについては増殖を助ける技術を開発した。この土壌で栽培された野菜は、収穫後の寿命が延びる、糖度が増す、抗酸化作用が高くなるなど機能的な特徴を持つことが確認された。本発明は、生産者のみならず、生産物の加工や流通の効率化などの多くの産業に広く寄与するため、産業上の利用可能性は高い。

図1
図2
図3