【解決手段】支持体3と、支持体3に支持されるフレーム5であって、その上に野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッドを載置するフレーム5と、フレーム5の一の末端部において支点7を中心にフレーム5が扇状に水平移動可能であるとともに、フレーム5が支点7を中心に上下に扇状に可動可能である水平・上下移動機構9と、フレーム5の他の末端部5bに装着される移動手段11とを備えた植物栽培装置1。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるオランダ型のトマト・ピーマン等の栽培技術が注目され、この栽培技術を適用したハウスなどの施設が周年にわたって利用されるようになってきている。この施設においては、トマト・ピーマン等の単一作物を適期以外の時期にも栽培が可能になるように、ヒートポンプやクーラーなどの設備が備えられている。これらの栽培技術は、高密植栽培、長期多段栽培により、施設費などの高いイニシャルコストの低減を目的としている。
【0003】
しかしながら、オランダ型の栽培技術を利用した施設の場合には、日本とは気候風土・エネルギーコスト・品種・イニシャルコスト等が大きく相違することから、複数の課題(問題点)が報告され、その対策が求められている。
【0004】
その課題の中で、特にオランダと日本との気象・品種等の違いから周年栽培を行うためには、相当なエネルギーコストを必要とすることで、低イニシャルコスト及び低ランニングコストによる実施が困難な状況になっている。
【0005】
例えば、トマトの栽培適温からみた作付け体系を従来の地床栽培の一例で示すと、愛知県・静岡県においては、多少の暖房を必要とするが、春作(4月〜7月)と秋作(8月後半〜11月)が代表作型である。
【0006】
ちなみに、施設(以下ハウスと呼ぶ)の利用率は年間7か月であり、約60%の利用率である。また、従来の地床栽培においての栽植密度は、10アール(a)で2,000株前後である。一方、水耕栽培・ロックウール栽培等の養液栽培では、2,500〜3,000株の栽植密度も見られる。
【0007】
近年になって、生産性を向上させる技術の一つとして、200cc〜5リットル(L)前後の培地を独立したポットに充填し栽培する少量培地独立ポット低段密植栽培が導入され始めたが、その栽植密度は3,000〜5,000株となっている。また、従来からの地床栽培の栽植密度と少量培地独立ポット栽培の栽植株数の比率は、1:1.5〜2.5となっている。
【0008】
このような現状から更なる生産性の向上を検討するうえで、栽植密度からみた利用率と、単一作物のみの栽培だけでなく、他作物が栽培可能であれば施設(ハウス)の利用率は向上するということに着目した。そして、イニシャルコストの軽減の観点から、比較的低コストのパイプハウスを採用して栽植密度をさらに高密度で栽培でき得るかを検討した。
【0009】
10aのハウス面積で、間口5.4mのハウス片側長手方向に1mの通路を設定した4連棟ハウスを対象として試算した。なお、条をハウス短手方向とし、栽培ベッド長を4mとした。パイプハウスは比較的軒高が低いことから、少量培地低段密植栽培を用い、その少量培地低段密植栽培で実績のある株間は15cmとした。
【0010】
栽植密度は株間と条間の関係から算出されることから、条間と条数、また、従来の栽培で採用されている条間1.2mを1として、複数の条間との対比の検討をした。また、ハウス短手方向を条とした。その結果を表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
ここで、上記「栽培ベッド」は、培地を入れて、作物を栽培することが可能な形状の構造であって、例えば桶状の構造等に上記培地を入れたものを意味するが、この例に限定されるものではない。また、「条」とは、植物・作物の植え付け等をされる箇所をいい、「条間」とは、植物・作物の植え付け等をする箇所(条)と箇所(条)との間をいう。さらに、「条数」とは、ハウス内の所定領域における、上記「条」の数をいう。
【0013】
栽培においては、光合成能力を高めるために植物体に万遍なく光を当てることが基本的条件であることから、受光体勢は重要な要素である。レタス・キャベツ・小松菜等のいわゆる葉菜類は草高が低く、光の入射角度と入射方向を要因とした草陰の影響は少ないが、トマト・ピーマン・ナス等のいわゆる草高が伸びる果菜類は草陰が生育に影響することから、入射角度や入射方向を要因とした受光体勢は重要な検討課題である。
【0014】
このことから、光の入射角度や入射方向を考慮すると、低段密植栽培は、従来の長段取りの条間と比較すると、草高が低いことから狭い条間での栽培に適合していることが推測できる。太陽の入射角と条間の関係を
図16に示す。
【0015】
図16から、条間が80cmであれば従来からの地床栽培の栽植株数の2,000株と比較すると、約3倍の栽植密度であり、条間120cmに対して条間80cmは1.5倍の株数で密植できる。しかし、光の入射角度の条件は低段密植栽培では問題ないが、通路が狭く、管理作業が不可能であることが判った。そこで、管理作業や収穫作業等のための通路の確保の手段が問題(課題)となる。
【0016】
イチゴ密植栽培装置には、床の左右に、あるいは腰と同程度の高さに水平平行に軌道を設け、その軌道上を車輪のついた栽培装置を水平移動するシステムが用いられていることもある。しかし、栽植密度を上げることは可能であるが、移動のためのメカニズムが大がかり、あるいは複雑になりコストが嵩む。したがって、イニシャルコスト軽減が課題となっている。
【0017】
また、過度なイニシャルコストや作物を適期以外の季節に栽培することで、電気や燃料などのランニングコストが嵩み、費用対効果の観点から対策が求められている。いずれにしても、ハウスの利用率を上げなければならないが、その利用率を上げる方法として、適期適作に基いて、例えばトマトの適期以外に他作物、例えばレタス等の葉菜類の栽培ができ得る栽培装置であれば、ハウスの利用率は向上することが推測できる。しかしながら、このような発想は従来には存在しなかった。つまり、多様的に利用でき得る栽培装置の構築が大きな課題となっている。
【0018】
以上の課題に鑑みて、野菜、花卉を高密度栽培する栽培方法で通路の確保あるいは作業性の改善のための栽培システムが提案され、従来は固定ベッドのため、収穫などの作業は巡回作業に限られていたが、栽培ベッドを循環させることにより定置作業を可能とした栽培装置(例えば、特許文献1、2、3)が提案されている。また、栽培ベッドを上下左右に移動する栽培装置(例えば、特許文献4、5、6)も提案されている。これらの技術は高密植栽培により施設費などの高いイニシャルコストの低減を目的としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の植物栽培装置の斜視図であって、模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の植物栽培装置を条間80cmに設置した状態、及び移動した状態を示す上面図であって、模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の植物栽培装置において、単一のフレームが扇状に移動する際の状態を示す上面図であって、模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の植物栽培装置において、単一のフレームが上下に移動する際の状態を示す側面図であって、模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の植物栽培装置において、単一のフレームが上下に移動する際に、フレーム支持部が不陸対応を有する状態を示す側面図であって、模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の植物栽培装置において、移動手段の斜視図であって、模式図である。
【
図7A】
図7Aは、フレーム略末端部下部に取付けられる車輪の上面図であって模式図である。
【
図7B】
図7Bは、フレーム略末端部下部に取付けられる車輪の側面図であって模式図である。
【
図8】
図8は、太陽光を有効に利用する為に施設の短手及び長手方向に対して直角以外の条の角度で栽培ベッドを設置して栽培する栽培方法の概念図である。
【
図9】
図9は、栽培ベッドの移動角度を大きく移動させて施設内に車両が乗り入れ可能なスペースを設けた状態の模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の植物栽培装置のフレーム上に、独立ポットを載置して栽培する形態を説明する模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の植物栽培装置のフレーム上に、独立ポットを載置させ、更に、独立ポットの両側面を遮光資材で覆った状態を説明する模式図である。
【
図12】
図12は、本発明の植物栽培装置のフレーム上部に、幕体(シート)を樋状に形成保持させ、更に樋状の内部に培地を充填し作物を栽培する状態を説明する模式図である。
【
図15】
図15は、本発明の植物栽培装置のフレーム上に、水稲育苗箱を載置して栽培する状態を説明する模式図である。
【
図16】
図16は、太陽の入射角と条間の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、適宜図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0031】
[1]本発明における植物栽培装置:
本発明の植物栽培装置は、
図1〜3に示されるように、支持体3と、該支持体3に支持されるフレームであって、その上に野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッド100を載置するフレーム5と、該フレーム5の一の末端部5aにおいて支点7を中心に該フレーム5が扇状に水平移動可能であるとともに、該フレーム5が該支点7を中心に上下に扇状に可動可能である水平・上下移動機構9と、該フレーム5の他の末端部5bに装着される移動手段11とを備えた植物栽培装置1である。
【0032】
[1−1]本発明における植物栽培装置の原理:
まず、栽培ベッドを循環移動し通路を確保する方法等以外の方法を見い出すために、生育中のトマトの樹巾を測定した結果、おおむね50〜60cmであった。つまり、最小限の条間は50〜60cmであるが、この時の通路巾は0cmである。以上のことから、例えば、条間を80cmとし、樹巾を50cmと仮定すると通路は30cmとなる。30cmでは、管理作業は不可能である。
【0033】
しかし、通路を必要とする条と通路を介して隣の条を相反する方向(左右)に開くことで90cmの通路を生成でき得る。この時の移動角度はわずか約8.5度である。この結果から、フレーム末端部を支点として一方のフレームの末端部に移動手段としての摺動機能(フレーム下部に設けられた車輪・コロ)を装着し、水平方向に移動可能であれば30cmの通路を介して平行である左右の条に、支点部付近の通路幅約31cm、移動手段付近の通路幅約90cmの扇状の通路が形成できる。
【0034】
さらに、フレームの支点が上下運動が不可能であると、地面に多少の凹凸がある場合、フレームに曲げ応力が発生することから、支点部を移動手段装着方向に向かって上下に扇状に可動することで、曲げ応力の発生を無くすことが出来得る。また、条間変更可能な機能として、支点を水平方向に移動可能としたことから条間の変更が容易に設定できる。
【0035】
このように、本発明者が鋭意研究した結果、構造体末端部(以後構造体をフレームと呼ぶ)の一点を支点として、フレームが扇状に水平移動と、地面の凹凸に対応するためにフレーム長手方向に扇状に可動する構造と、一方の片側末端部に移動手段を装着することで課題の通路の確保が容易に達成できた。
【0036】
さらに、本発明では、フレームが扇状に移動することに加えて、太陽光を有効にでき得る方向に条を設置し、栽培でき得るという予期しなかった効果が得られた。さらに、例えばフレームを定位置から45度移動することで、移動手段側に約2mのスペースが形成されハウス長手方向片側に設けた1mの巾の通路が3mに拡幅される。この効果によって、従来は栽培後の植物体や栽培に利用した器具・培地等をハウス外へ搬出する作業をハウス片側に設けた通路や1〜1.2m前後の巾の条間を台車や籠を利用して行っていたが、
図9に示されるように、軽トラック(車両)がハウス内に乗り込むことが可能となり、これらの作業を画期的に早く効率よく出来るようになった。
【0037】
[1−2]本発明における植物栽培装置の構成:
本発明の植物栽培装置は、概ね、支持体3、該支持体に支持されるフレーム5、水平・上下移動機構9と、移動手段11から概ね構成されている。
【0038】
[1−2−1]支持体:
本発明において、
図1〜3に示されるように、支持体3は、フレーム5(フレームの一の末端部5a)を支持できるように構成され、複数のフレーム5の重量のみならず、フレーム5上に載置する複数の栽培ベッドの荷重に耐え得るように、形成されている。当該支持体の配置は、特に限定されるものではなく、当該支持体はハウスの内壁側に沿って、たとえば、直角の条の角度に対応するように設置されてもよい。さらに、ハウスの形状、条の形状等に対応させて直角以外の条の角度に対応するように設置されてもよい。
【0039】
支持体3の形状は、特に限定されるものではないが、たとえば、棒状、管状、角柱状の部材を挙げることができる。支持体3の材質は、特に限定されるものではないが、金属性の材質から形成されるものが好ましい。さらに、耐食性、耐酸性等の材料から形成されることが好ましく、支持体の表面にメッキ処理等が施されているものも好ましい。さらに、支持体3の寸法は特に限定されるものではないが、本発明の植物栽培装置1が使用される施設の大きさ等に応じた寸法であることが好ましい。たとえば、本発明の植物栽培装置1がハウス等内で使用される場合には、ハウスの躯体として用いる鋼材等を利用できるように、当該躯体である鋼材と同様の長さ、径等を有することが好ましい。ただし、この例に限定されるものではない。たとえば、当該支持体は、ハウス等の内壁面側に位置する躯体箇所、或いは躯体箇所近傍の領域に設置される場合の他、施設等の条と条の間(条間)に設置されてもよい。
【0040】
支持体3の載置可能重量は特に限定されるものではないが、100〜300kgであることが好ましい。このような数値範囲内の重量物を載置可能であると、生産性を向上させながら低コストが実現可能となる。
【0041】
[1−2−2]フレーム:
本発明において、
図1〜4に示されるように、フレーム5は、支持体3に支持されるとともに、当該フレーム5の上に野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッド100を載置できるように構成されている。更に、フレーム5の一の末端部5aにおいて支点7を中心に該フレーム5が扇状に水平移動可能であるとともに、該フレーム5が該支点7を中心に上下に扇状に可動可能である水平・上下移動機構9が設けられている。さらに、当該フレーム5の他の末端部5bには移動手段11が設けられている。
【0042】
ここで、本明細書において「フレーム」とは、栽培容器・植物体・培地等の荷重を主に受ける構造体を意味し、当該フレームは、フレーム単体から構成される場合のみならず、更にフレーム単体と、フレーム上に載置される載置板等を組み合わせた構造体として構成されていてもよい。たとえば、フレームがフレーム単体から構成される場合には、単純な構造であるため、移動装置を形成し易い上に、当該フレームの移動を容易に行える。しかし、フレームの幅が十分に大きくない場合には、フレーム上に栽培容器・植物体・培地等を安定的に載置し難い場合がある。他方、フレーム単体と載置板を組み合わせる場合には、フレーム上に栽培容器・植物体・培地等を安定的に載置し易いものの、重量が増え、移動制御がフレーム単体に比べてし難い場合がある。また、「支持体に支持される」とは、フレームが支持体に支え持たれるように接続されることを意味する。当該「接続」は、例えば、支持体にフレームが直接接続されるだけでなく、例えば、金属等の繋ぎ手等により接続されるものも含まれる。ただし、この例に限定されるものではない。
【0043】
「フレームの一の末端部」とは、支持体に支持されている端部を意味する。「フレームの他の末端部」とは、移動手段を備える側にある端部を意味する。すなわち、フレームは、「フレームの一の末端部」において、「支持体」に接続され、当該フレームと支持体の接続部が「支点」となる。ただし、当該接続は、上記「支点」を基準に、水平移動及び上下移動が可能な程度に接続され、上記「支点」を基準にして、フレームが水平移動、及び上下移動できるようになっている。さらに、「フレームが扇状に水平移動する」とは、支点を基準にして、地面と平行に扇を開いた形状に動くことを意味する。具体的には、支点を基準にして、フレームが最大約90度から約180度の間で地面と平行に動くことを意味する。「フレームが上下移動する」とは、フレームが支点を基準にして、鉛直方向の上側又は下側に向けて動く(傾く)ことを意味する。なお、上記「フレームの一の末端部」には、「フレームの一の末端部」であることのみならず、「フレームの一の末端部」の近傍の箇所も含まれる。同様に、「フレームの他の末端部」には、「フレームの他の末端部」であることのみならず、「フレームの他の末端部」の近傍の箇所も含まれる。
【0044】
また、「フレームの上に野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッドを載置できる」とは、フレーム上に、たとえば、野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッドを乗せ置きできることを意味する。ただし、上記「載置」は、栽培ベッドをフレームに直接置くものに限定されず、フレーム上に「載置ベッド」を載置できるような載置板、筐体、或いは補助具等を介して間接的に「載置」するものも含まれる。なお、上記「野菜、花き」は例示であって、これらの例に限定されるものではなく、植物・作物全般も含まれる。
【0045】
当該フレーム5の配置は、特に限定されるものではなく、当該フレーム5はハウスの内壁側に沿って、たとえば、直角の条の角度に対応するように設置されてもよい。さらに、ハウスの形状、条の形状等に対応させて設置してもよい。たとえば、
図9に示されるように、太陽光を有効に利用するために、ハウスの短手及び長手方向に対して直角以外の条の角度に対応するように、フレーム5が設置されてもよい。
【0046】
フレーム5の形状は、特に限定されるものではなく、載置ベッド、載置板、筐体、或いは補助具等を載置し易い形状であればよいが、フレーム5の形状が、例えば、棒状、管状、角柱状の部材であると好ましい。フレーム5の材質は、特に限定されるものではないが、金属性の材質から形成されるものが好ましい。さらに、フレーム5の材質が耐食性、耐酸性等の材料から形成されることが好ましい。フレーム5の寸法は特に限定されるものではないが、長さ4〜6m、縦40〜80mm×横40〜80mmの矩形状の平板部材から構成されることが好ましい。
【0047】
[1−2−3]水平・上下移動機構:
本発明における「水平・上下移動機構9」は、
図1〜4に示されるように、フレーム5の一の末端部5aにおいて支点7を中心に該フレーム5を扇状に水平移動させる移動機構9であり、且つ、該支点7を中心に該フレーム5を上下に扇状に可動させる移動機構9である。このような移動機構9を設けることにより、施設内の栽培面積を最大限とりながら、必要に応じて栽培装置を部分的に移動させることができる。そのため、栽培装置を部分的に移動させることで、設備内へ集荷作業等のための車、機械等の進入スペースを確保でき、生産性及び効率性を向上させることができる。さらに、太陽光の入射方向に合わせた栽培区画を形成することができるため、コスト低減を実現しながら、光合成能力を高めることができるため、栽培する植物・作物等の生産量を向上させることできる。
【0048】
ここで、「フレームの一の末端部において支点を中心に該フレームを扇状に水平移動させる移動機構」とは、フレームが支持体に接続された箇所を支点として、当該「支点」を中心に、該フレームが扇状に水平移動できるような移動機構を意味する。たとえば、支持体とフレームとを接続し、当該接続した箇所を支点として、フレームのみ支点を中心に水平方向に回転運動できる繋ぎ手を設けた移動機構を挙げることができる。
【0049】
具体的には、
図1、2に示される植物栽培装置1では、施設側面側の側面に、略平行水平に1本の支持体3を設け、その支持体3に、フレーム5の一の末端部5aが支持されるように接続されている。さらに、当該支持体3にフレーム5の一の末端部5aが支持された箇所を支点7として、フレーム5の他の末端部5bを扇状に移動させることで、当該支点7を中心にフレーム5の一の末端部5aも扇状に移動させることができる。このように、栽培ベッド100が水平にスライド可能な構造とすることにより、栽培ベッド100の条間を変更して栽培可能にするための機能を有することができる。ただし、この例に限定されるものではない。
【0050】
さらに、フレーム5の扇状に水平移動する角度は、約8度〜約16度であることが好ましい。このように、所定角度に水平移動させることができることで、生産性を向上させながら、低コスト化を実現できる。一方、8度より小さいと、十分な条間を確保できない。さらに、16度超の場合には、栽培区画との関係から効率性を得られない。
【0051】
さらに、「該フレームが該支点を中心に上下に扇状に可動させる」とは、フレームが支持体に接続された箇所を支点として、当該「支点」を中心に、該フレームが扇状に上下移動できるような移動機構を意味する。たとえば、支持体3とフレーム5とを接続し、当該接続した箇所を支点7として、フレーム5のみ支点7を中心に上下方向に回転運動できる繋ぎ手を設けた移動機構を挙げることができる。
【0052】
より具体的には、支持体3とフレーム5とを接続し、当該接続した箇所を支点7として、フレーム5のみ支点7を中心に上下に扇状にフレームが移動運動できる繋ぎ手を設けた移動機構を挙げることができる。或いは、上記水平移動を行わせる機構とは別に、上下に扇状にフレームが移動運動できる繋ぎ手を設けてもよい。
【0053】
フレーム5の扇状に上下に移動する際のフレームの勾配は、水平から2%前後であることが好ましい。このように、所定角度に上下に移動させることができることで、地面の不陸(凹凸)に対応することができる。なお、「フレームの勾配」とは、フレームが扇状に上下に移動する際のフレームの傾斜角度を意味する。
【0054】
[1−2−4]移動手段:
本発明における「移動手段11」は、
図1及び
図6に示されるように、フレーム5の他の末端部5bに装着される。このような「移動手段」を設けることにより、施設内の栽培面積を最大限とりながら、必要に応じて、栽培装置を部分的に移動させることができる。そのため、栽培装置を部分的に移動させることで、設備内へ集荷作業等のための車、機械等の進入スペースを確保でき、生産性及び効率性を向上させることができる。さらに、太陽光の入射方向に合わせた栽培区画を形成することができるため、コスト低減を実現しながら、栽培する植物・作物等の生産量を向上させることできる。
【0055】
たとえば、移動手段11としては、フレーム5の他の末端部5bに摺動機能(フレーム5の下部に設けられた車輪・コロ)等を装着するものを挙げることができる。
【0056】
具体的には、
図1、
図7A、及び
図7Bに示されるように、フレーム5の他の末端部5b(フレーム5の他の末端部5bの下部)に取付けられた車輪11aを有し、フレーム5が水平に扇状に可動でき得る機能を有する移動手段11を挙げることができる。さらに、
図6に示されるように、車輪11aを2つ備えるとともに、車輪11aが回転可能(移動可能)な状態で、それぞれのタイヤの中心軸を把持する把持部11bと、当該2つの把持部11b上の中央に、フレーム5の他の末端部5bを載置できる載置台11cを備えた移動手段11を挙げることができる。ただし、この例に限定されるものではなく、施設内の栽培面積を最大限とりながら、必要に応じて、栽培装置を部分的に移動させることができるものであれば、当該移動手段に含まれる。さらに、たとえば、フレームの長さに応じて、フレームの中央、及びフレームの他の末端部の2箇所、或いは2箇所以上に、移動手段を設けてもよい。さらに、移動手段が、コロ状のもの、キャタピラ状のもの等であってもよい。
【0057】
なお、条間の広さ、条数(通り)、栽植株数は特に限定されるものではなく、施設及び栽培面積等の観点、栽培作物の種類及びコスト性及び生産性の観点から必要に応じて調整されることが好ましい。
【0058】
さらに、移動手段11は、フレーム5の他の末端部5bに装着される移動手段11とは別に、フレーム5の一の末端部5aからフレーム5の他の末端部5bの間に複数設けてもよい。このように構成されることで、フレームに載置する栽培ベッドの重量が大きかったり、フレームが長かったりしても、移動をスムーズに行えることができ、操作性を向上させることができる。
【0059】
さらに、該フレーム5が該支点7を中心に上下に扇状に可動する際に、凹凸対応機能を有することが好ましい。このようにすることで、フレーム5が該支点7を中心に上下に扇状に可動しても、移動手段11を有効に用いて、フレーム5を移動させることができる。すなわち、フレーム5の他の末端部5bが、上方側に移動した場合には、当該フレーム5の上方側の移動に伴い、移動手段11も上方側に移動して、接地面から移動手段11が浮いてしまう恐れがある。しかし、フレーム5と移動手段11の間に、当該移動高さを調整する機能を有することで、移動手段11の接地を確保できる。同様に、フレーム5の他の末端部5bが、下方側に移動した場合には、当該フレーム5の下方側の移動に伴い、移動手段11は下方側に押圧されてしまい、フレーム5がこれ以上、下方側へ下がらないか、或いは接地面からの移動の妨げになる。しかし、フレーム5と移動手段11の間に、当該移動高さを調整する機能を有することで、フレーム5の下方側への移動、及び、移動手段の移動を確保できる。
【0060】
たとえば、このように凹凸対応機能としては、
図3、4に示されるように、上下に扇状に作動させる際に、フレーム5の取付け高さを調整でき得る構造を備えさせることで、移動手段に凹凸対応機能を有するものとなる。ただし、この例に限定されるものではない。
【0061】
なお、
図4、7に示されるように、支持体3とフレーム5の接続部に、シムなどの高さ調整機構を設けて、上記凹凸対応機能と併用して、高さ調整を行うことが更に好ましい。このようにすることで、フレーム5の一の末端部5a側と、フレーム5の他の末端部5b側の両方向で、凹凸対応機能を有することができる。
【0062】
[1−2−5]その他の構成:
さらに、該支点7が該支持体3の一の末端部3aから他の末端部3bまでを移動可能であるとともに、該移動後の該支点7を固定する固定機能を有することが好ましい。このように条間変更可能な機能として、支点7を水辺方向に移動可能にすることで、条間の変更を容易に設定できる。すなわち、条間の変更が容易に行えることで、設備内へ集荷作業等のための車、機械等の進入スペースを確保でき、生産性及び効率性を向上させることができる。さらに、太陽光の入射方向に合わせた栽培区画を形成することができるため、コスト低減を実現しながら、栽培する植物・作物等の生産量を向上させることできる。
【0063】
ここで、「該支点が該支持体の一の末端部から他の末端部までを移動可能」とは、支持体の一の末端部から、同じ支持体の他の末端部までの間を、フレームと支持体の接続部が移動可能とし、当該接続箇所が移動することに伴い、「支点」が移動することを意味する。
【0064】
具体的には、
図1、
図3に示されるように、支持体3が管状部材から形成される場合には、更に、当該支持体3を内包する(収納する)ように、当該支持体の径よりも大きい径を有する環状部材14を移動機構とし、当該移動機構14を介してフレーム5を接続させると良い。このような移動機構を有することで、支持体をフレームが移動できるため、植物・作物の生育条件、条間等に応じた栽培を可能とし、生産性、効率性を向上させることができる。ただし、この例に限定されるものではない。
【0065】
さらに、「移動後の該支点を固定する固定機能を有する」とは、移動した支点が意図せずに動かないように固定するための固定機能を有することを意味する。このような固定機能としては、接続箇所が動かないような固定具等を挙げることができる。
【0066】
例えば、
図1、
図3に示されるように、条間確定ののち、通常栽培期間中に植物栽培装置のフレーム5を扇状に作動させた時、接続部が固定されている必要があるため、ロック機能(固定機能)を有することが好ましい。具体的には、
図1、
図3に示されるように、移動機構14を介して「該支点が該支持体の一の末端部から他の末端部までを移動」する場合には、上記移動機構14が支持体3の長さ方向に沿って移動しないように、移動機構の両端を固定できる固定具13a,13a’,13a’’を挙げることができる。当該固定具13aは、支持体3の径よりも大きい径を有する環状部材を移動機構とする場合には、同様の径を有する環状部材を移動機構14の両端に接触させる。更に、当該固定具13aの厚さ方向を貫通する貫通孔を設けて、当該貫通孔から雄螺子13bを支持体3に接触させて固定するような構成となっている。ただし、この例に限定されるものではなく、着脱可能な嵌合部材を上記移動機構の両端に装着させた固定部材等、移動機構を解除可能に固定できるものであればよい。
【0067】
さらに、本発明の植物栽培装置は多様的に利用できる栽培装置であることが好ましい。ここで、「多様的に利用できる」とは、草高の低いレタス等の葉菜類や、葉菜類と比較して、草高の比較的高いトマト・ピーマン等の果菜類、あるいは、水稲の育苗箱を利用しての苗作り等にも利用でき得ることを意味する。すなわち、本発明の植物栽培装置は多様な栽培が可能な植物栽培装置であると、栽培作物に応じた、本発明の植物栽培装置の汎用性を有することができるため、好ましい。
【0068】
たとえば、上記多様的に利用できる植物栽培装置として、好ましくは、該フレーム5に、幕体を樋状に形成保持するとともに、該樋状の内部に培地を入れて栽培ベッドを形成するものを挙げることができる。すなわち、フレームに幕体(シート状)を樋状に形成保持せしめる構造であれば、樋状内部に培地を入れ込むことで作物を栽培することが可能となり(以後これを栽培ベッドと呼ぶ)、ポット・プランター等の栽培以外の多様な栽培形態が可能となる。ただし、栽培形態はこれに限らない。
【0069】
例えば、多様的に利用できる植物栽培装置としては、これまで説明した本発明の植物栽培装置のフレーム上に、ポット・プランター等に植えられた植物等を載置する場合に、
図10に示されるように、独立ポット21あるいは、プランターを載置して栽培するものを挙げることができる(独立ポット型利用)。また、
図11に示されるように、独立ポット21あるいはプランターの両側面を不織布シート23等の遮光資材で覆い高温期の培地温度上昇を防ぐ、あるいは寒冷期は保温資材で覆い培地の温度の下降を防ぐようにして、多様的に利用してもよい(独立ポット保護型利用)。また。
図12に示されるように、フレーム5の上部に幕体(不織布シート23)を樋状に形成保持せしめて、樋状物の内部に培地を充填し作物を栽培するものであってもよい(隔離ベッド型利用)。また、
図13に示されるように、
図12の栽培終了後培地上に、
図10の独立ポット21あるいはプランターを載置して栽培するものであってもよい(隔離ベッド型及び独立ポット型利用)。また、
図14に示されるように、
図10或いは
図11に示されるものに、反射シートを設置したものであってもよい(反射シート付き隔離ベッド又は反射シート付き独立ポット型利用)。さらに、
図15に示されるように、フレーム上に水稲育苗箱を載置して栽培するものであってもよい(水稲育苗箱利用)。
【0070】
このように、これまで説明した本発明の植物栽培装置は、多様的に利用でき、従来の栽培方法では達成できなかった栽植密度を可能にするだけでなく、多様な栽培形態が可能になり生産性の向上を提供することが出来る。ただし、上述した栽培形態に限られない。
【0071】
[2]植物栽培装置の使用方法:
本発明の植物栽培装置では、まず、
図1に示されるように、支持体3を用意して、所定箇所に設置する。さらに、フレーム5を用意して、該支持体3に、該フレーム5の一の末端部3aにおいて支点7を中心に該フレーム5が扇状に水平移動可能となるように、且つ、該フレーム5が該支点7を中心に上下に扇状に可動可能となるように、支持させる。当該支持体3への支持は、これまで説明した水平・上下移動機構を介して行われる。さらに、フレーム5の他の末端部5bに移動手段11を装着し、フレーム5上に野菜、花きを栽培する複数の栽培ベッドを載置する。さらに、必要に応じて、水平・上下移動機構を用いるとともに、移動手段を移動させて、フレームを移動させて、フレーム上の複数の栽培ベッドを、フレームを介して移動させる。当該移動させた後は、作業スペース或いは、ハウス内へ機械、車両等を誘導可能な誘導路が確保されるため、
図9に示されるように、当該作業スペース或いは誘導路を用いて、作業或いは車両等の進入等を行う。さらに、当該作業或いは車両等の進入等が終了した後は、水平・上下移動機構を用いるとともに、移動手段を移動させて、再びフレームを移動させて、フレーム上の複数の栽培ベッドを、フレームを介して元の位置に移動させる。
【0072】
なお、ハウス内への受光を最大限活用するために、本発明の植物栽培装置を用いる場合には、受光角度に応じて、上記の作業をすればよい。
【0073】
[3]栽培方法:
本発明の栽培方法は、これまで説明した植物栽培装置を用いて行うことが好ましい。そのため、これまで説明した植物栽培装置において説明した内容は、本発明の栽培方法にも適用できるため、重複する事項は、植物栽培装置の説明を参照されたい。
【0074】
本発明の栽培方法は、太陽光の入射方向であって、施設の短手及び長手方向に対して直角以外の角度になるように複数の条を形成し、該条に栽培ベッドを設置して栽培する栽培方法である。このような栽培方法により、施設園芸の生産性向上を低コストで実現することができる。
【0075】
ここで、従来から、ハウスは受光体勢を考慮して略東西、あるいは南北にハウス長手方向を向けて建設されてきたが、地形・地成り等の立地条件によっては、ハウスは他方角で建設せざるを得ないものとなっていった。しかし、本発明の栽培方法によれば、理想的な方角にされていないハウスであっても、条をハウスの短手あるいは、長手方向に対して直角以外の角度で設け入射方向に対応することで、受光体勢を改善し光合成能力を高めることができる。