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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-147502(P2015-147502A)
(43)【公開日】2015年8月20日
(54)【発明の名称】鉄道車両の制振用ダンパ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20150724BHJP
   F16F 15/027 20060101ALI20150724BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150724BHJP
   F16F 9/50 20060101ALI20150724BHJP
【FI】
   B61F5/24 F
   F16F15/027
   F16F15/02 B
   F16F9/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-21353(P2014-21353)
(22)【出願日】2014年2月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信之
(72)【発明者】
【氏名】谷川 安彦
(72)【発明者】
【氏名】笹内 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳平
(72)【発明者】
【氏名】難波 廣一郎
(72)【発明者】
【氏名】野崎 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AB11
3J048AD02
3J048AD12
3J048BE03
3J048DA04
3J048EA15
3J048EA36
3J069AA50
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】必要最小限の部品点数で、フルアクティブ制御フェール時にはセミアクティブダンパとして機能でき、フルアクティブ制御用のモータの消費電力や発熱を低減し、ドライブ装置を不用にできること。
【解決手段】ピストンロッド12と一体のピストン15に流路が形成され、ヘッド側室13からロッド側室14へ作動油が流れるシリンダ10と、ヘッド側室に接続されたオイルタンク18と、シリンダ伸縮に伴ってオンロード制御およびアンロード制御の切換可能な油圧回路20とを有する鉄道車両の制振用ダンパ5である。油圧回路には、第1流路21からオイルタンクへ分岐する第2流路34上に低圧リリーフ弁を有するパッシブ回路33を配置し、オイルタンクからの作動油を第1流路及び第2流路へ供給する第3流路44上に駆動モータ42のトルク制御が可能な油圧ポンプ41を配置して、フルアクティブ制御とセミアクティブ制御とを切換可能とした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドと一体のピストンにチェック弁を備えた流路が形成され、ヘッド側室からロッド側室へ作動油が流れるようにしたシリンダと、前記ヘッド側室に対してチェック弁を介して接続されたオイルタンクと、前記シリンダの伸縮に伴って流れる作動油の制振荷重を大きくするオンロード制御および該作動油の制振荷重を小さくするアンロード制御の切り換えが可能な油圧回路とを有する鉄道車両の制振用ダンパであって、
前記油圧回路には、前記ロッド側室から前記ヘッド側室への第1流路から前記オイルタンクへ分岐する第2流路上に低圧リリーフ弁を有するパッシブ回路を配置し、前記オイルタンクからの作動油を前記第1流路及び前記第2流路へ供給する第3流路上に駆動モータのトルク制御が可能な油圧ポンプを配置して、フルアクティブ制御とセミアクティブ制御とを切り換え可能としたことを特徴とする鉄道車両の制振用ダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の制振用ダンパにおいて、
前記油圧回路には、前記第1流路上の前記第2流路への分岐点より前記ヘッド側室側に第1ON/OFF弁を配置し、前記第1ON/OFF弁の2次側から分岐して前記オイルタンクに接続された第4流路上に第2ON/OFF弁を配置して、前記第1ON/OFF弁及び前記第2ON/OFF弁の開閉状態が、互いに反対となるように切り換えることを特徴とする鉄道車両の制振用ダンパ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両の制振用ダンパにおいて、
前記駆動モータは、エアモータであることを特徴とする鉄道車両の制振用ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体振動に対する制振を行う鉄道車両の制振用ダンパであって、特に、フルアクティブ制御に関する油圧回路を簡素化できる制振用ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両では、台車から伝達される車体の振動を減衰させるため、台車と車体との間には制振用ダンパが設けられている。制振用ダンパには種々のものが提案されており、その一例として下記特許文献1に記載されたフルアクティブ機能を備えた制振用ダンパを挙げることができる。
【0003】
特許文献1に記載された制振用ダンパは、シリンダとオイルタンクとの間に、シリンダの伸縮に伴って流れる作動油の抵抗を大きくするオンロード制御および、作動油の抵抗を小さくするアンロード制御の切り替えが可能な油圧回路とを有し、油圧回路は、シリンダの伸長作動に対し弁の開度調整によりオンロード制御を行う第1比例リリーフ弁および、シリンダの収縮作動に対し弁の開度調整によりオンロード制御を行う第2比例リリーフ弁とを備えたセミアクティブ回路部と、セミアクティブ回路部へオイルタンクからの作動油を供給するポンプおよび、ポンプからの供給側圧力が所定値を超えた場合に作動油をオイルタンクへと戻すための戻り流路とを有するフルアクティブ回路部とを備えたものである。
上記制振用ダンパには、セミアクティブダンパの機能とフルアクティブダンパの機能の両方を備えているので、フルアクティブ制御フェール時においても、セミアクティブダンパとして機能する利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−76668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記制振用ダンパにおける油圧回路は、第1比例リリーフ弁及び第2比例リリーフ弁等を有するセミアクティブ回路部と、ポンプ及び第3比例リリーフ弁等を有するフルアクティブ回路部とを備えていて、部品点数が多く、複雑な回路構成となっている。そのため、同油圧回路の製作時やメンテナンス時における、各部品の組付け、取替え等の作業や、調整作業が煩雑となる問題があった。
また、フルアクティブ回路部のポンプを駆動させるモータは、主にサーボモータが使用されるが、モータの消費電力や発熱が多く、また、電力変換器等を含むドライブ装置のサイズが大きくなる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、フルアクティブダンパとして必要最小限の部品点数としつつも、フルアクティブ制御フェール時にはセミアクティブダンパとして機能する鉄道車両の制振用ダンパを提供することを第1の目的とする。また、上記フルアクティブ制御用のモータの消費電力や発熱を低減し、ドライブ装置を不用にできる鉄道車両の制振用ダンパを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の制振用ダンパは、以下の構成を備えている。
(1)ピストンロッドと一体のピストンにチェック弁を備えた流路が形成され、ヘッド側室からロッド側室へ作動油が流れるようにしたシリンダと、前記ヘッド側室に対してチェック弁を介して接続されたオイルタンクと、前記シリンダの伸縮に伴って流れる作動油の制振荷重を大きくするオンロード制御および該作動油の制振荷重を小さくするアンロード制御の切り換えが可能な油圧回路とを有する鉄道車両の制振用ダンパであって、
前記油圧回路には、前記ロッド側室から前記ヘッド側室への第1流路から前記オイルタンクへ分岐する第2流路上に低圧リリーフ弁を有するパッシブ回路を配置し、前記オイルタンクからの作動油を前記第1流路及び前記第2流路へ供給する第3流路上に駆動モータのトルク制御が可能な油圧ポンプを配置して、フルアクティブ制御とセミアクティブ制御とを切り換え可能としたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、ロッド側室からヘッド側室への第1流路からオイルタンクへ分岐する第2流路上に低圧リリーフ弁を有するパッシブ回路を配置したので、フルアクティブ制御フェール時においては、パッシブ回路を作動油が通過することによってパッシブ荷重(オンロード荷重)を発生させるセミアクティブ機能を発揮させることができる。
また、オイルタンクからの作動油を第1流路及び第2流路へ作動油を供給する第3流路上に駆動モータのトルク制御が可能な油圧ポンプを配置したので、フルアクティブ制御時においては、駆動モータのトルクを制御して、オイルタンクから第1流路及び第2流路に供給する作動油の流量を増減させることができる。作動油の流量の増減に基づいて、パッシブ回路の減衰力が増減する。そのため、駆動モータのトルクを制御するだけで、制振用ダンパの制振荷重を増減させて、フルアクティブ機能を発揮させることができる。この場合、従来の比例リリーフ弁を廃止できるので、部品点数を大幅に低減することができる。
よって、本発明によれば、フルアクティブダンパとして必要最小限の部品点数としつつも、フルアクティブ制御フェール時にはセミアクティブダンパとして機能する鉄道車両の制振用ダンパを提供することができる。
【0009】
(2)(1)に記載された鉄道車両の制振用ダンパにおいて、
前記油圧回路には、前記第1流路上の前記第2流路への分岐点より前記ヘッド側室側に第1ON/OFF弁を配置し、前記第1ON/OFF弁の2次側から分岐して前記オイルタンクに接続された第4流路上に第2ON/OFF弁を配置して、前記第1ON/OFF弁及び前記第2ON/OFF弁の開閉状態が、互いに反対となるように切り換えることを特徴とする。なお、第1ON/OFF弁及び第2ON/OFF弁は、開状態において両方向へ作動油が流れることができる。
【0010】
本発明においては、第1ON/OFF弁及び第2ON/OFF弁の開閉状態が、互いに反対となるように切り換えることで、シリンダの伸び指令時と縮み指令時の両方において、フルアクティブ制御を発揮させることができる。
具体的には、第1ON/OFF弁を開状態に切り換え、第2ON/OFF弁を閉状態に切り換えることで、シリンダの伸び指令時の制振荷重を、油圧ポンプを駆動するモータのトルク制御によって調節できる。
また、第1ON/OFF弁を閉状態に切り換え、第2ON/OFF弁を開状態に切り換えることで、シリンダの縮み指令時の制振荷重を、油圧ポンプを駆動するモータのトルク制御によって調節できる。
したがって、第1ON/OFF弁及び第2ON/OFF弁の開閉状態が、互いに反対となるように切り換えることによって、シリンダの伸縮に伴うフルアクティブ制御を簡単に行うことができる。
【0011】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の制振用ダンパにおいて、
前記駆動モータは、エアモータであることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、油圧ポンプを駆動するモータは、エアモータであるので、従来からフルアクティブ制御に用いられているサーボモータに比較して、モータの消費電力や発熱の問題を解消することができる。また、エアモータに用いるエア源は、鉄道車両に一般的に使用されている他の空圧機器から得ることができ、専用のドライブ装置も不要となる。また、エアモータであるので、回転数に比例したトルク制御を簡単に行うことができる。
よって、フルアクティブ制御用のポンプ駆動手段をエアモータに変更することで、モータの消費電力や発熱を低減し、ドライブ装置を不用にできる鉄道車両の制振用ダンパを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フルアクティブダンパとして必要最小限の部品点数としつつも、フルアクティブ制御フェール時にはセミアクティブダンパとして機能することができる。また、上記フルアクティブ制御用のモータの消費電力や発熱を低減し、ドライブ装置を不用にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】鉄道車両に設けられた制振装置を概念的に示した図である。
図2図1に示す制振用ダンパの第1実施形態における回路図である。
図3図2に示す回路図において、シリンダ伸び指令時における作動油の流れを示した回路図である。
図4図2に示す回路図において、シリンダ縮み指令時における作動油の流れを示した回路図である。
図5】エアモータにおけるトルクー回転数特性を示したグラフである。
図6図1に示す制振用ダンパの第2実施形態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る鉄道車両の制振用ダンパにおける実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、鉄道車両に設けられた制振装置を概念的に示した図であり、車体長手方向に見た図である。
鉄道車両1は、台車3に空気バネ4を介して車体2が載せられ、車体2の横揺れを防止するための制振装置8が設けられている。制振装置8には、車体2と台車3との間に制振用ダンパ5が設けられ、車体2の横方向に生じる振動の程度に応じて制振用ダンパ5の制振荷重を変化させ、制振度合いの調節を可能にしている。
【0016】
制振用ダンパ5は、シリンダ及びオイルタンク内の作動油の流れを制御するパッシブ回路及びON/OFF弁等を含む油圧回路を備え、制振装置8には、ON/OFF弁の開閉等を制御する制振コントローラ6が設けられている。また、鉄道車両1には、車体2の左右横方向の振動を検出する加速度センサ7が設けられ、それに制振コントローラ6が接続されている。制振コントローラ6は、加速度センサ7の出力に基づいて車体2の揺れの大きさを判断し、制振用ダンパ5における制振荷重を積極的に増減すべく油圧ポンプを駆動するモータのトルクを制御する。
【0017】
(第1実施形態)
<制振用ダンパの回路構成>
先ず、第1実施形態における制振用ダンパの回路構成について、図2を用いて説明する。図2に、図1に示す制振用ダンパの第1実施形態における回路図を示す。
図2に示すように、制振用ダンパ5は、シリンダ10と、オイルタンク18と、ON/OFF弁23、24、低圧リリーフ弁31を含むパッシブ回路33、油圧ポンプ41及び駆動モータ42を有する油圧回路20とを備えている。
シリンダ10は、シリンダチューブ11をヘッド側室13とロッド側室14に仕切るピストン15に、ピストンロッド12がロッド側室14から図面左側に突設して形成されている。ピストンロッド12の左端は、台車3に連結され、ヘッド側室13の右端は、車体2に連結されている。また、ピストン15には、左右両側を連通する流路が形成され、該流路にヘッド側室13からロッド側室14への方向にのみ作動油が流れるようにチェック弁16が設けられている。
【0018】
シリンダ10のヘッド側室13には、流路17を介してオイルタンク18が接続されている。この流路17上には、ヘッド側室13からオイルタンク18への方向に流れる作動油を止めるチェック弁19が設けられている。
また、シリンダ10のロッド側室14からヘッド側室13への第1流路21には、フィルタ22aを通過後、オイルタンク18へ連通する第2流路34が分岐している。第2流路34には、パッシブ用の低圧リリーフ弁31が配置されている。低圧リリーフ弁31には、オリフィス32が並列配置されてパッシブ回路33を構成している。
【0019】
第1流路21上の第2流路34への分岐点よりヘッド側室13側には、第1ON/OFF弁23が配置されている。また、第1ON/OFF弁23の2次側から分岐してオイルタンク18に接続された第4流路26には、第2ON/OFF弁24が配置されている。第1ON/OFF弁23と第2ON/OFF弁24との間には、フィルタ22bを介してヘッド側室13に連通する流路25が接続されている。第1ON/OFF弁23及び第2ON/OFF弁24は、ノーマルクローズの開閉弁であるが、その開閉状態が互いに反対となるように切り換えることができる。また、第1ON/OFF弁23及び第2ON/OFF弁24は、開状態において両方向へ作動油が流れることができる。
また、第1流路21には、フィルタ22aを通過する前に、ロッド側室14からオイルタンク18へ還流する流路が分岐され、該流路にはオリフィス35が接続されている。
【0020】
また、オイルタンク18からの作動油を第1流路21及び第2流路34へ供給する第3流路44には、トルク制御が可能な駆動モータ42が連結された油圧ポンプ41が配置されている。駆動モータ42は、サーボモータ又はエアモータが適している。エアモータによれば、サーボモータと比較して、モータの消費電力や発熱を低減できること、エア源は、鉄道車両に一般的に使用されている他の空圧機器から得ることができ、専用のドライブ装置も不要となること、回転数に比例したトルク制御を簡単に行うことができること(図5を参照)等の効果を奏することができる。
【0021】
<制振用ダンパの制御方法>
〔シリンダ伸び指令時〕
次に、第1実施形態の制振用ダンパ5におけるシリンダ伸び指令時の制御方法について、図3を用いて説明する。図3に、図2に示す回路図において、シリンダ伸び指令時における作動油の流れを示した回路図を示す。本回路図において、太い実線は、低圧の作動油の流れを表し、太い破線は、高圧の作動油の流れを表す。
図3に示すように、シリンダ伸び指令時では、第1ON/OFF弁23は開状態となり、第2ON/OFF弁24は閉状態となるように切り換える。ピストンロッド12が矢印の方向に伸長するとき、ヘッド側室13には、太い破線で示すように、油圧ポンプ41から第1流路21、第1ON/OFF弁23、流路25を経由して、作動油が供給される。作動油の流量は、駆動モータ42のトルクを制御することによって増減することができる。したがって、シリンダの伸び指令時の制振荷重を、駆動モータ42のトルク制御によって調節できる。その結果、制振用ダンパ5は、フルアクティブ制御を発揮させることができる。
【0022】
なお、フルアクティブ制御フェール時には、油圧ポンプ41からの作動油が供給停止される。この場合、伸びアンロード制御となる。すなわち、ピストンロッド12が矢印の方向に伸長するときには、ロッド側室14の作動油は、第1流路21、第1ON/OFF弁23、流路25を経由して、ヘッド側室13に流れ、アンロードとなる。一方、ピストンロッド12が矢印と反対方向に収縮するときには、ヘッド側室13の作動油は、チェック弁16とロッド側室14を通過して、第2流路34のパッシブ回路33に流れてパッシブ荷重を発生させ、オンロードとなる。その結果、フルアクティブ制御フェール時においても、制振用ダンパ5は、セミアクティブ制御を発揮させることができる。
【0023】
〔シリンダ縮み指令時〕
次に、第1実施形態の制振用ダンパ5におけるシリンダ縮み指令時の制御方法について、図4を用いて説明する。図4に、図2に示す回路図において、シリンダ縮み指令時における作動油の流れを示した回路図を示す。本回路図において、太い実線は、低圧の作動油の流れを表し、太い破線は、高圧の作動油の流れを表す。
図4に示すように、シリンダ縮み指令時では、第1ON/OFF弁23は閉状態となり、第2ON/OFF弁24は開状態となるように切り換える。ピストンロッド12が矢印の方向に収縮するとき、ロッド側室14には、太い破線で示すように、油圧ポンプ41から第1流路21を経由して、作動油が供給される。作動油の流量は、駆動モータ42のトルクを制御することによって増減することができる。したがって、シリンダの縮み指令時の制振荷重を、駆動モータ42のトルク制御によって調節できる。その結果、制振用ダンパ5は、フルアクティブ制御を発揮させることができる。このとき、ヘッド側室13から排出される作動油は、第2ON/OFF弁24が開状態であるので、流路25、第4流路26を経由してオイルタンク18に流れ込む。
【0024】
なお、フルアクティブ制御フェール時には、油圧ポンプ41からの作動油が供給停止される。この場合、縮みアンロード制御となる。すなわち、ピストンロッド12が矢印の方向に収縮するときには、ヘッド側室13の作動油は、流路25、第2ON/OFF弁24、第4流路26を経由して、オイルタンク18に流れ、アンロードとなる。一方、ピストンロッド12が矢印と反対方向に伸長するときには、ロッド側室14の作動油は、第2流路34のパッシブ回路33に流れてパッシブ荷重を発生させ、オンロードとなる。その結果、フルアクティブ制御フェール時においても、制振用ダンパ5は、セミアクティブ制御を発揮させることができる。
以上のように、第1実施形態の制振用ダンパ5は、第1ON/OFF弁23及び第2ON/OFF弁24の開閉状態が、互いに反対となるように切り換えることによって、シリンダ10の伸縮に伴うフルアクティブ制御を簡単に行うことができる。また、フルアクティブ制御フェール時には、セミアクティブダンパとして機能することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における制振用ダンパ100の回路構成について、図6を用いて説明する。図6に、図1に示す制振用ダンパの第2実施形態における回路図を示す。
図6に示すように、制振用ダンパ100は、シリンダ111と、オイルタンク118と、比例リリーフ弁121、123、133、ON/OFF弁128、129、低圧リリーフ弁122を含むパッシブ回路120、高圧リリーフ弁127、油圧ポンプ131及びエアモータ132を有する油圧回路とを備えている。
シリンダ111は、シリンダチューブをヘッド側室113とロッド側室114に仕切るピストン115に、ピストンロッド112がロッド側室114から図面左側に突設して形成されている。ピストンロッド112の左端は、台車3に連結され、ヘッド側室113の右端は、車体2に連結されている。また、ピストン115には、左右両側を連通する流路が形成され、該流路にヘッド側室113からロッド側室114への方向にのみ作動油が流れるようにチェック弁116が設けられている。
【0026】
シリンダ111のヘッド側室113には、流路117を介してオイルタンク118が接続されている。この流路117上には、ヘッド側室113からオイルタンク118への方向に流れる作動油を止めるチェック弁119が設けられている。
また、シリンダ111のロッド側室114からヘッド側室113への第1流路141には、フィルタ122aを通過後、オイルタンク118へ連通する第2流路143が分岐している。第2流路143には、パッシブ用の低圧リリーフ弁122が配置されている。低圧リリーフ弁122には、オリフィス124が並列配置さてパッシブ回路120を構成している。
【0027】
第1流路21上の第2流路143への分岐点よりロッド側室14側には、第1比例リリーフ弁121が配置され、第1比例リリーフ弁121の2次側流路142には、第1ON/OFF弁128が配置されている。また、第1ON/OFF弁128の2次側から分岐して第2流路143に接続された第4流路144には、第2ON/OFF弁129が配置されている。第1ON/OFF弁128と第2ON/OFF弁129との間には、フィルタ122bを介してヘッド側室113に連通する流路145が接続されている。第1ON/OFF弁128及び第2ON/OFF弁129は、ノーマルオープンの開閉弁であるが、その閉状態において、互いに反対方向への流れを止める構造となっている。また、第1ON/OFF弁128及び第2ON/OFF弁129は、その開状態において、両方向へ作動油が流れることができる。
また、第1流路141には、フィルタ122aの通過前後に、ロッド側室14からオイルタンク118へ還流する流路が分岐され、該流路には高圧リリーフ弁127とオリフィス126が接続されている。
【0028】
また、オイルタンク118からの作動油を第1流路141及び第2流路143へ供給する第3流路147上には、エアモータ132が連結された油圧ポンプ131が配置されている。油圧ポンプ131の1次側には、チェック弁134が配置され、所定圧力を超えた場合に作動油を第1流路141及び第2流路143へ供給し、余分な作動油は帰還流路146を経由して作動油をオイルタンク118へ戻している。帰還流路146には、第3比例リリーフ弁133が配置されている。
【0029】
以上のように、第2実施形態の制振用ダンパ100は、シリンダ111とオイルタンク118との間に、シリンダ111の伸縮に伴って流れる作動油の抵抗を大きくするオンロード制御および、作動油の抵抗を小さくするアンロード制御の切り替えが可能な油圧回路とを有し、油圧回路は、シリンダ111の伸長作動に対し弁の開度調整によりオンロード制御を行う第1比例リリーフ弁121および、シリンダ111の収縮作動に対し弁の開度調整によりオンロード制御を行う第2比例リリーフ弁123とを備えたセミアクティブ回路部と、セミアクティブ回路部へオイルタンク118からの作動油を供給する油圧ポンプ131および、油圧ポンプ131からの供給側圧力が所定値を超えた場合に作動油をオイルタンク118へと戻すための帰還流路146とを有するフルアクティブ回路部とを備えたものである。
上記第2実施形態の制振用ダンパ100において、油圧ポンプ131の駆動モータにエアモータ132を採用したことによって、サーボモータに比較して、モータの消費電力や発熱を低減できること、エア源は、鉄道車両に一般的に使用されている他の空圧機器から得ることができ、専用のドライブ装置も不要となること、回転数に比例したトルク制御を簡単に行うことができること(図5を参照)等の効果を奏することができる。
【0030】
以上、本発明に係る鉄道車両の制振用ダンパについて実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、制振用ダンパ5を1個設けているが、複数個の制振用ダンパを左右対称に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 鉄道車両
2 車体
3 台車
4 空気バネ
5 制振用ダンパ
10 シリンダ
12 ピストンロッド
13 ヘッド側室
14 ロッド側室
15 ピストン
18 オイルタンク
19 チェック弁
20 油圧回路
21 第1流路
23 第1ON/OFF弁
24 第2ON/OFF弁
31 低圧リリーフ弁
33 パッシブ回路
34 第2流路
41 油圧ポンプ
42 駆動モータ
44 第3流路
132 エアモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6