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特開2015-147730ガラス基板の製造方法、ガラス基板製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-147730(P2015-147730A)
(43)【公開日】2015年8月20日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、ガラス基板製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/225 20060101AFI20150724BHJP
【FI】
   C03B5/225
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-80342(P2015-80342)
(22)【出願日】2015年4月9日
(62)【分割の表示】特願2013-514261(P2013-514261)の分割
【原出願日】2013年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-86909(P2012-86909)
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 次伸
(72)【発明者】
【氏名】日沖 宣之
(57)【要約】
【課題】清澄槽本体の変形を防止できるガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置を提供する。
【解決手段】ガラス基板を製造する際、白金族金属で構成された清澄槽本体の内部において、熔融ガラスを加熱して脱泡を行う。前記清澄槽本体の内部には、前記清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に気相空間が設けられ、前記清澄槽本体には、前記清澄槽本体のうち前記気相空間に接する部分の熱による変形を防止するための清澄槽形状保持手段が設けられている。前記清澄槽本体の外側には前記清澄槽本体を覆うように耐火性保護層が設けられ、前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の外側と前記耐火性保護層とを緊密に保持するように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の製造方法であって、
前記製造方法は、
白金族金属で構成された清澄槽本体の内部において、熔融ガラスを加熱して脱泡を行う清澄工程を有し、
前記清澄槽本体の内部には、前記清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に気相空間が設けられ、
前記清澄槽本体には、前記清澄槽本体のうち前記気相空間に接する部分の熱による変形を防止するための清澄槽形状保持手段が設けられている、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項2】
ガラス基板の製造方法であって、
前記製造方法は、管状の清澄槽である清澄槽本体を加熱しながら、前記清澄槽本体に清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させて脱泡処理を行う脱泡工程を含み、
前記清澄槽本体は、
白金族金属で構成され、
当該清澄槽本体に清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させる際に、前記清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に設けられる、脱泡用の気相空間を有し、
前記清澄槽に、当該清澄槽本体のうち前記気相空間に接する部分が薄化により前記気相空間方向に垂れ下がるのを防止するための、清澄槽形状保持手段を設ける、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記清澄槽本体の外側には前記清澄槽本体を覆うように耐火性保護層が設けられ、
前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の外側と前記耐火性保護層とを緊密に保持するように設けられている、請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記清澄槽本体内の熔融ガラスの最高温度は1600℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記清澄槽本体の外側には前記清澄槽本体を覆うように耐火性支持体の層が設けられ、
前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の外側に突出する部材であり、前記部材は、前記部材の先端部分が前記耐火性支持体の層に位置するように延びている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記清澄槽形状保持手段は、
前記清澄槽本体の上部にある構造物であって、前記清澄槽本体に対する相対位置が固定された構造物と、
前記構造物を介して前記清澄槽本体の上部を吊り下げる吊り部材であって、一端が前記清澄槽本体外表面の上部側に接続され、他端が前記構造物に接続された吊り部材と、で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記熔融ガラスは、酸化錫を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項8】
白金または白金合金で構成された清澄槽本体を含む清澄槽を有し、
前記清澄槽本体の内部には、前記清澄槽本体の内部表面と清澄槽本体内部に存在する熔融ガラスの液面との間に気相空間が設けられ、
前記清澄槽本体は、前記清澄槽本体のうち前記気相空間に接する部分の熱による変形を防止するための清澄槽形状保持手段を備える、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項9】
ガラス基板の製造工程において熔融ガラスの脱泡処理を行うための管状の清澄槽である清澄槽本体を有するガラス基板製造装置であって、
前記清澄槽本体は、
白金族金属で構成され、
前記清澄槽本体の内部空間は、前記熔融ガラスの液面との間に存在する脱泡用の気相空間を備え、
応する位置の前記清澄槽本体が垂れ下がるのを防止するための、当該清澄槽本体の形状を保持する清澄槽形状保持手段をさらに備えた、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス原料を熔融して生成した熔融ガラスを成形することによりガラス基板を製造する、ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板は、一般的に、ガラス原料から熔融ガラスを生成した後、熔融ガラスをガラス基板へと成形する工程を経て製造される。上記の工程中に、必要に応じて熔融ガラスが内包する微小な気泡を除去する工程(以下、清澄ともいう)が含まれる。清澄は、管状の清澄槽の本体を加熱しながら、この清澄槽本体(以下、単に本体ともいう)にAs等の清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させ、清澄剤の酸化還元反応により熔融ガラス中の泡が取り除かれることで行われる。より具体的には、粗熔解した熔融ガラスの温度をさらに上げて清澄剤を機能させ泡を浮上脱泡させた後、温度を下げることにより、脱泡しきれずに残った比較的小さな泡は熔融ガラスに吸収させるようにしている。すなわち、清澄は、泡を浮上脱泡させる処理(以下、脱泡処理または脱泡工程ともいう)および小泡を熔融ガラスへ吸収させる処理(以下、吸収処理または吸収工程ともいう)を含む。清澄剤は従来Asが一般的であったが、近年の環境負荷の観点から、SnOやFe等が用いられるようになってきている。
【0003】
高温の熔融ガラスから品位の高いガラス基板を量産するためには、ガラス基板の欠陥の要因となる異物等が、ガラス基板を製造するいずれの装置からも熔融ガラスへ混入しないよう考慮することが望まれる。このため、ガラス基板の製造過程において熔融ガラスに接する部材の内壁は、その部材に接する熔融ガラスの温度、要求されるガラス基板の品質等に応じ、適切な材料により構成する必要がある。たとえば、上述の清澄槽本体を構成する材料は、通常白金または白金合金等の白金族金属が用いられていることが知られている(特許文献1)。白金または白金合金は、高価ではあるが融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
脱泡工程時に清澄槽本体を加熱する温度は、成形するべきガラス基板の組成によって相違するが、1000〜1650℃程度である。
清澄槽本体に上述の熔融ガラスを通過させる際に、清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に一定広さの脱泡用の気相空間を有するようにすることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−522001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、白金又は白金合金は他の物質と比較して融点が高いが、清澄槽本体の温度が、例えば、1600℃を超えると白金又は白金合金が軟化するため、清澄槽本体の強度が低下してしまう。
ここで、清澄槽本体のうち気相空間に接する部分は、熔融ガラスと接していないため、清澄槽本体のうち熔融ガラスと接する部分と比較して温度が高くなる。つまり、清澄槽本体のうち気相空間に接する部分は、清澄槽本体の他の領域と比較して温度が高く、強度が低下しやすいため、変形が生じやすいという問題があった。上記変形としては、例えば、経時的に進行する重力方向への変形(垂れ下がり)が挙げられる。なお、上述のような変形は、経時的に大きくなる。
あるいは、上述の清澄槽本体のうち気相空間に接する部分が、本体の経年変化により薄化するために、気相空間方向(重力方向)に垂れ下がってきてしまうという課題があった。
清澄槽本体の上述の部分が垂れ下がることについては、以下の二重の原因が考えられる。
1)清澄槽本体の、気相空間に接する部分の白金または白金合金が揮発し、清澄槽本体の揮発が進行した部分の厚みが薄くなる。このため清澄槽本体の上部の強度が低下し、清澄槽本体の上部が気相空間方向に対し、自重で垂れ下がる。
2)上記の1の揮発により、清澄槽本体の揮発が進行した部分の厚みが薄くなり、たとえば本体に接続している加熱用のヒータ電極から供給される電流の密度が上がるため、その結果清澄槽本体の揮発が進行した部分の温度が高くなる。このため清澄槽本体の上部の強度が低下し、清澄槽本体の上部が気相空間方向に対し、自重で垂れ下がる。
一方、清澄槽本体を通過した熔融ガラスの温度は成形に適した粘度に対応する温度まで低下するように調整されるため、さらには、清澄槽本体以降の熔融ガラスを成形工程に導く移送管には気相空間は無いため、移送管において上述の熱による変形、又は、経年変化による薄化の問題は生じない。
【0006】
上述のような清澄槽本体における“変形”や“垂れ下がり”が生じると、たとえば耐火性の被覆体で覆われるような構成の清澄槽の場合は、清澄槽の外側上部と被覆体との間に隙間ができることになる。この隙間に外部の酸素を含む空気を取り込んでしまうと、本体内壁の気相空間に接する部分の外表面において、白金または白金合金の揮発が促進されてしまうおそれがあった。
また、同様に“変形”や“垂れ下がり”が原因で清澄槽本体に亀裂が生じたり、本体の内部を流れる溶融ガラスに本体の内壁が接触して異物が混入する機会を増大させたりするという課題があった。
本発明は以上の点を鑑み、熱による清澄槽本体の変形を防止できるような、ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置を提供しようとするものである。
あるいは、本発明はガラス基板の製造過程において清澄槽本体を加熱して脱泡処理を行う際、清澄槽本体がその材料の揮発により薄化しても、本体の気相空間に接する部分が気相空間方向に垂れ下がることがないような、ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、ガラス基板の製造方法である。当該製造方法は、白金族金属で構成された清澄槽本体の内部において、熔融ガラスを加熱して脱泡を行う清澄工程を有する。前記清澄槽本体の内部には、前記清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に気相空間が設けられる。前記清澄槽本体には、前記清澄槽本体のうち前記気相空間に接する部分の熱による変形を防止するための清澄槽形状保持手段が設けられている。
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の他の一態様は、管状の清澄槽である清澄槽本体を加熱しながら、清澄槽本体に清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させて脱泡処理を行う脱泡工程を含むガラス基板の製造方法であって、以下のように構成されている。
清澄槽本体は、白金または白金合金で構成され、清澄槽本体に清澄剤を配合させた熔融ガラスを通過させる際に、清澄槽本体の内部表面と熔融ガラスの液面との間に設けられる、脱泡用の気相空間を有し、清澄槽に、上述の清澄槽本体のうち気相空間に接する部分が薄化により気相空間方向に垂れ下がるのを防止するための、清澄槽形状保持手段を設ける。
【0009】
前記清澄槽形状保持手段は、少なくとも前記清澄槽本体の長手方向のうち温度が最も高くなる位置を含むように設けられることが好ましい。例えば、前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の長手方向の複数の位置に設けられる。このとき、前記清澄槽形状保持手段が設けられる複数の位置の1つは、前記清澄槽本体の長手方向のうち温度が最も高くなる位置である。
さらに、前記清澄槽本体の断面形状が円形状であるとき、前記清澄槽形状保持手段は、少なくとも前記気相空間に接する前記清澄槽本体の外側表面の円弧部分のうち、温度が最も高くなる部分を含むように設けられることが好ましい。
また、エネルギー効率の観点から、前記清澄槽本体は、通電加熱により加熱されることが好ましい。
前記清澄槽本体は、少なくとも清澄槽本体のうち気相空間に接する部分の外表面に溶射膜が設けられていることが好ましい。
【0010】
このとき、前記清澄槽本体の外側には前記清澄槽本体を覆うように耐火性保護層が設けられ、
前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の外側と前記耐火性保護層とを緊密に保持するように設けられている、ことが好ましい。
【0011】
このとき、前記清澄槽本体における熔融ガラスの温度は1600℃以上である、ことが好ましい。
【0012】
また、前記清澄槽本体の外側には前記清澄槽本体を覆うように耐火性支持体の層が設けられ、前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の外側に突出する部材であり、前記部材は、前記部材の先端部分が前記耐火性支持体の層に位置するように延びている、ことが好ましい。
【0013】
あるいは、前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の上部にある構造物であって、前記清澄槽本体に対する相対位置が固定された構造物と、前記構造物を介して前記清澄槽本体の上部を吊り下げる吊り部材であって、一端が前記清澄槽本体外表面の上部側に接続され、他端が前記構造物に接続された吊り部材とで構成されることも同様に好ましい。
【0014】
また、前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体の一部または複数に分断した前記清澄槽本体の間隙に配置した、前記清澄槽本体の断面形状に対応する形状の、一つまたは複数の補強材である、ことが好ましい。
【0015】
前記清澄剤は、酸化錫であることが好ましい。
【0016】
また、前記熔融ガラスは、粘度が102.5ポアズとなる温度が1300℃以上である組成で構成されてもよい。
【0017】
さらに、前記ガラス基板は、LTPS(低温ポリシリコン)用ガラス基板及び/又は有機LEディスプレイ用ガラス基板であってもよい。このとき、前記ガラス基板の歪点は、680℃以上であってもよい。また、清澄工程における熔融ガラス温度の最高温度が1640℃〜1740℃であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の他の態様は、ガラス基板の製造工程において熔融ガラスの脱泡処理を行うための管状の清澄槽である清澄槽本体を有するガラス基板製造装置であって、以下のように構成されている。
前記清澄槽本体は、白金族金属で構成され、
前記清澄槽本体の内部空間は、前記熔融ガラスの液面との間に存在する脱泡用の気相空間を備え、
前記気相空間に対応する位置の前記清澄槽本体が垂れ下がるのを防止するための、当該清澄槽本体の形状を保持する清澄槽形状保持手段をさらに備えている。
【0019】
前記ガラス基板の製造方法及び前記ガラス基板製造装置における前記清澄槽形状保持手段は、前記清澄槽本体から前記清澄槽本体の外側に突出した板部材であることが好ましい。
また、前記板部材は、前記清澄槽本体の長手方向に間隔をあけて設けられることが好ましい。このとき、前記板部材の面の法線方向は、前記清澄槽本体の長手方向であることが好ましい。前記板部材の厚さは1mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置によれば、清澄槽本体の熱による変形を防止することができる。
あるいは、本発明の他のガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置によれば、清澄槽本体のうち気相空間に接する部分が経年変化により薄化しても、気相空間方向に垂れ下がってくることがない。したがって、脱泡工程中に、熔融ガラスに異物が混入するのを避けることができ、より純度の高いガラス基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態のガラス基板の製造方法を説明するための、ガラス基板製造装置の概略的な構成図である。
図2】清澄槽の基本的な構成を示す概略図である。
図3】清澄槽形状保持手段として構造物及び吊り部材を用いたときの清澄槽の概略図である。
図4】吊り部材の形状及び配置の一例を示す図である。
図5】清澄槽形状保持手段としてリング状の補強材を用いたときの、清澄槽の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明のガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、実施の形態のガラス基板の製造方法を説明するための概略図であり、ガラス基板の製造における基本的な流れを簡略的に示したものである。
ガラス基板製造装置(以下、単に装置ともいう)100は、ガラス原料を加熱して熔融ガラスを生成する熔融槽10と、熔融ガラスを清澄する清澄槽30と、熔融ガラスを成形する成形装置(図示せず)と、これらの間を接続する移送管20、40とを備えている。移送管20は、熔融槽10と清澄槽30とを接続し、熔融槽10から導出された熔融ガラスを清澄槽30に供給する。移送管40は、清澄槽30と成形装置(図示せず)を接続し、清澄槽30から導出された熔融ガラスを成形装置(図示せず)に供給する。なお、清澄槽30と成形装置との間には熔融ガラスを撹拌して均質化するための撹拌槽が配置されることがある。
【0024】
熔融槽10に投入されるガラス原料は、製造するべきガラス基板の組成に応じて適宜調製される。一例として、TFT(Thin Film Transistor)型LCD(Liquid Crystal Display)用基板として用いるガラス基板を製造する場合を挙げると、ガラス基板を構成するガラス組成物を質量%で表示して、
SiO:50〜70%、
Al:0〜25%、
:1〜15%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜30%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaのうちガラス基板が含有する全て)、
を含有する無アルカリガラスであることが、好ましい。
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス基板はアルカリ金属を微量含んだアルカリ微量含有ガラスであってもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’Oの合計が0.10%以上0.5%以下、好ましくは0.20%以上0.5%以下(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有する全てである)含むことが好ましい。勿論、R’Oの合計が0.10%未満でもよい。
また、本発明のガラス基板の製造方法を適用する場合は、ガラス組成物が、上記各成分
に加えて、質量%で表示して、SnO:0.01〜1%(好ましくは0.01〜0.5%)、Fe:0〜0.2%(好ましくは0.01〜0.08%)を含有し、環境負荷を考慮して、As、Sb及びPbOを実質的に含有しないようにガラス原料を調製しても良い。
【0025】
熔融槽10で生成した熔融ガラスは、移送管20を介して清澄槽30に送られる。清澄槽30では、熔融ガラスが所定温度(上記組成のガラスの場合は例えば1500℃以上)に保たれて、熔融ガラスに含まれる気泡の除去を行う脱泡工程を含む清澄が行われる。
さらに、清澄槽30で清澄された熔融ガラスは、移送管40を介して成形装置へと送られる。熔融ガラスは、清澄槽30から成形装置に送られる際の移送管40において、成形に適した温度(上記組成のガラスの場合であり、成形方法としてオーバーフローダウンドロー法を用いる場合は、例えば1200℃程度)となるように冷却される。成形装置では、熔融ガラスがガラス基板へと成形される。
【0026】
次に、脱泡工程を含む清澄について図2図5を用いて説明する。図2は清澄槽30の基本的な構成を示す概略図であり、内部を透視して示してある。
清澄槽30は、主に清澄槽本体(以下、本体ともいう)1、及び本体1に接続されたヒータ電極1a及び1bにより構成されている。本体1は白金あるいは白金ロジウム合金等の白金合金の金属管であり、一般的に円筒状のものが採用されている。本体1の管路を流路として、熔融ガラスMGは本体1の内部を流れる。ヒータ電極1a及び1bは、本体1の外周壁面から本体1に電流を流し、本体1の抵抗によって生じるジュール熱を用いて本体1の外周壁を加熱して熔融ガラスMGの温度を所定の温度に上げ、熔融ガラスMGに配合させた清澄剤を用いて熔融ガラスMGの脱泡を行う。
【0027】
本体1の内部を流れる熔融ガラスMGは、本体1の流路断面全体を流れるのではなく、通常、本体1内部の上方には、熔融ガラスMGの脱泡処理により脱泡した泡を放出させるための気相空間aが存在する。すなわち、本体1の内部には、本体1の内部表面と熔融ガラスMGの液面との間に気相空間aが設けられる。気相空間aは、清澄槽30の本体1を流れる熔融ガラスMGの液位の調整をすることにより、所定の広さを得たり、一定の広さを保持したりすることができる。たとえば、熔融槽10に投入するガラス材料の量を増減する等の好適な方法を採択すると良い。
また、本体1上部には、気相空間aから放出した泡中のガス成分を大気に放出させるための図示しないガス排気口が設けられている。
【0028】
本実施形態に係るガラス基板の製造方法またはガラス基板の製造装置では、清澄槽30に、清澄槽本体1のうち気相空間aに接する部分が熱により変形することを防止するための清澄槽形状保持手段2が設けられている。
他の実施形態に係るガラス基板の製造方法またはガラス基板の製造装置では、清澄槽30に、清澄槽本体1のうち気相空間aに接する部分が、薄化により気相空間a方向に垂れ下がるのを防止するための清澄槽形状保持手段2が設けられている。
図3図5を用いて、さらに清澄槽形状保持手段につき詳細に説明をする。
【0029】
図3は、清澄槽30の例を示す概略図であり、清澄槽30を含む断面図で示してある。図3に示すように、本実施形態の清澄槽30は、清澄槽形状保持手段2として吊り部材2Bを備えている。あるいは、他の実施形態として、清澄槽30は、清澄槽形状保持手段2として構造物2A及び吊り部材2Bを備えている。つまり、本実施形態では清澄槽形状保持手段2は吊り部材2Bを意味し、他の実施形態では、清澄槽形状保持手段2は、構造物2A及び吊り部材2Bを含んで構成されるものとする。
構造物2Aは、清澄槽本体1の上部にあって本体1に対する相対位置が固定された構造物である。ここでは、清澄槽本体1の周囲を覆う耐火性保護層(以下、保護層ともいう)2Aaと、さらに保護層2Aaを覆い支持する、耐火性支持体(以下、支持体ともいう)2Abとで構成している。
また、吊り部材2Bは構造物2Aを介して本体1の上部を吊り下げる吊り部材である。吊り部材2Bは構造物2A(保護層2Aa及び支持体2Ab)を貫通し、吊り部材の一端2Baが本体1外表面の上部側に接続され、他端2Bbが構造物2Aに接続されている。具体的には、他端2Bbは支持体2Ab外表面の上部に沿って水平に折り曲げた状態で接続されている(図3)。
【0030】
保護層2Aaは、本体1に対し不均一な力が加わることを防ぎ、確実に支持する役割を担うものであり、例えば、不定形耐火物を用いて形成することができる。不定形耐火物とは、周知の通り、使用に際し所望の形状へと成形できる耐火物を意味し、モルタル及びセメントに代表されるように、典型的には練り土状または粉体状の製品として市販されている。不定形耐火物の材料としては、本体1の周囲を保護できれば特に制限はないが、キャスタブルセメント、特に耐火性及び耐食性に優れたアルミナセメントが適している。
本体1は、たとえば1mm程度の厚さで形成されることが多いため、本体1の内部を通過する熔融ガラスによる内圧に確実に耐え得るようにするために、保護層2Aaを配置することが望ましい。また、保護層2Aaの厚みは2.0mm以上、特に10.0mm以上が好適である。保護層2Aaは厚すぎても特段の支障はないが、使用する材料の量を減らす観点からは50mm以下が適当である。
【0031】
一方、支持体2Abは、構造体2Aの最外層に配置され、本体1を支持し保温し、さらには外部から加わる可能性がある物理的な力から本体1を保護する役割を担うものであり、耐火レンガ等の定形耐火物を用いるのが好適である。耐火レンガは、多くの場合複数の耐火レンガ(耐火物により構成されたレンガ個体)を所定形状に積み重ねて構成され、多くの場合はその間にモルタル等の耐火充填材を塗布し固定された、複数のレンガから構成される。
ここでいう耐火物は、慣用の通り高温に耐えうる非金属材料、具体的には1000℃以上、好ましくは1500℃以上の耐火度を有する非金属材料を指す。また、耐火物は、周知の通り典型的にはシリカ、アルミナ、ジルコニア等の酸化物により、場合によっては耐火性を損なわない限度において上記酸化物に各種成分を配合して構成されるものとする。
【0032】
吊り部材2Bは、たとえば、本体1と同材料である、白金または白金合金で構成する。吊り部材2Bの一端2Baは、溶接等の好適な方法で本体1に接続される。また、他端2Bbは、既に述べたように支持体2Ab外表面の上部側に接続される。図3のように、他端2Bbは、支持体2Ab外表面の上部に沿って水平に折り曲げた形状としてもが、他の好適な方法を用いて接続しても良い。
吊り部材2Bは、本体1の、気相空間aに接する部分が熱により変形しないように、又は気相空間a方向に垂れ下がらないだけの強度を有するものであれば良い。たとえば、本体1の管の長手方向に一定の間隔で一枚ずつ配置するようにしても良い(図3及び図4)。
ここで、管の長手方向とは、熔融ガラスMGが移送管20から移送管40に向かって流れる熔融ガラスMGの流れ方向をいう。図4に吊り部材2Bの形状及び配置の一例を示す。この吊り部材2Bの形状は、図4の例のように板状のものが好適であるが、清澄槽30の形状を保持できれば、これに限定されることはない。図3図4に示す吊り部材2Bは、本体1の外側に突出する部材であり、これらの部材は、部材の先端部分が支持体2Abの層に位置するように延びていることが好ましい。また、吊り部材2Bは、本体1の外側と耐火性保護層2Aaとを緊密に保持するように設けられている。ここで、緊密に保持とは、本体1の外側と耐火性保護層2Aaとの間に隙間が生じないように保持することをいう。
図4に示す構成では、吊り部材2Bは板部材であり、この板部材は支持体2Abに挟まれて、支持体2Abとの間の摩擦力によって、あるいは板部材が支持体2Abにボルトなどで固定されることによって、重力方向の力とは反対の方向に清澄槽本体1を引張る力を発生させ、清澄槽30の変形を抑制することができる。このように、吊り部材2Bの先端部分が支持体2Abの層に位置するように部材は延びているので、吊り部材2Bの先端部分の温度は、本体1の温度に比べて低い。このため、吊り部材2Bは高温による軟化を阻止することができ、清澄槽30の形状を効果的に保持することができる。
板部材である吊り部材2Bは、少なくとも、本体1の中で温度が最も高い位置に設けられることが好ましい。例えば、吊り部材2Bは、本体1の長手方向の複数の位置に設けられる。このとき、吊り部材2Bが設けられる複数の位置の1つは、本体1の長手方向のうち温度が最も高くなる位置である。これは、本体1を構成する白金又は白金合金は、温度が高いほど軟化して強度が低下するため、自重に起因した熱変形が生じやすくなるためである。ただし、例えば、ディスプレイ用ガラス基板の製造においては、本体1の温度は殆どの部分で1600℃以上となるため、場所によって変形量や変形速度は異なるものの、何れの部分でも経時的な変形が生じる。そのため、図4に示すように、板部材である吊り部材2Bは、本体1の長手方向に間隔をあけて設けられることが好ましい。
なお、ディスプレイ用ガラス基板のうち、特にLTPS(低温ポリシリコン)ディスプレイ用ガラス基板及び/又は有機ELディスプレイ用ガラス基板の場合、他のディスプレイ用ガラス用ガラス基板と比較して、ガラスの粘度(高温粘性)が高いので、清澄時の熔融ガラス温度を他のディスプレイ用ガラス基板製造時と比較して高温にする必要がある。そのため、本体1の白金又は白金合金の軟化による強度低下が顕著となり、本体1の変形が生じやすくなる。つまり、LTPS(低温ポリシリコン)ディスプレイ用ガラス基板の製造及び/又は有機ELディスプレイ用ガラス基板の製造には、本発明の清澄槽形状保持手段2による清澄槽変形防止の効果が顕著となる。なお、LTPS(低温ポリシリコン)ディスプレイ用ガラス基板の製造及び/又は有機ELディスプレイ用ガラス基板としては、歪点が680℃以上、より好ましくは歪点が700℃以上のガラス基板が好適に用いられる。また、歪点が高くなるほど、同じ温度における粘度が高くなる傾向にあるため、歪点の高いガラスほど、脱泡を行うためには清澄槽30の温度を高くする必要があるので、本発明の清澄槽形状保持手段2による清澄槽変形防止の効果が顕著となる傾向にあるといえる。
上述の吊り部材2Bの設けられる間隔は、300mm以下1mm以上とするのが好適である。より好ましくは150mm以下の間隔、さらに好ましくは50mm以下の間隔とすることが考えられる。極端に間隔を狭くした場合、熱による変形又は垂れ下がりの防止を確実のものとすることはできても、施工性やコストの問題が浮上するため、管の長さ等を考慮して最適な間隔に設定するものとする。特に、吊り部材2Bの法線方向は、本体1の長手方向であることが清澄槽30の形状を効果的に保持する点で好ましい。また、板部材の厚さは1mm以上であることが、清澄槽30の形状を効果的に保持する点で好ましい。一例として、吊り部材2Bの厚みは1mm、幅は10mm程度とする。
また、吊り部材2Bは、本体1を断面視した場合において、少なくとも気相空間aに接する円弧部分の中心部を含む領域に接続されることが好ましい。言い換えると、吊り部材2Bは、気相空間aに接する円弧部分のうち、最も温度が高くなる部分を含む領域に接続されることが好ましい。
また、吊り部材2Bは、本体1を断面視した場合において、気相空間aに接する円弧部分の0.5%〜100%、このましくは、15%〜100%、さらに好ましくは、25%〜100%、特に好ましくは、35%〜100%の領域に接続されることが望ましい。なお、吊り部材2Bは、円弧方向に2以上設けられていてもよい。
【0033】
上記のような清澄槽形状保持手段2を設けたことにより、本実施形態では、清澄槽本体1の熱による変形を低減することができる。これにより、清澄槽本体1のうち気相空間に接する部分の外表面と耐火性保護層との間に空気が流入してしまう隙間の発生を抑制できるので、清澄槽本体1のうち気相空間に接する部分の外表面において白金又は白金合金の揮発が促進されるのを防止できる。さらに、清澄槽本体1のうち気相空間に接する部分の外表面の揮発量を低減できるので、当該部分における薄化を低減することできる。これにより、清澄槽本体1のうち気相空間に接する部分の外表面の電流密度が他の領域よりも高くなることで温度が意図せずに上昇することを抑制できるので、清澄槽本体1の破損及び清澄槽本体1のさらなる揮発量増加という問題も防止することができる。
あるいは、他の実施形態においては、本体1が気相空間aに接する部分が材料の揮発により薄化したとしても、本体の気相空間に接する部分が気相空間方向に垂れ下がることがない。したがって、本体内壁の気相空間に接する部分において、白金または白金合金の揮発が促進されたり、垂れ下がりが原因で清澄槽本体に亀裂が生じたり、本体の内部を流れる熔融ガラスに本体の内壁が接触して異物が混入する機会を増大させたり、といった問題を生じさせるおそれがなく、より純度の高いガラス基板を得ることができる。
特に、本体1における熔融ガラスの温度を脱泡処理のために1600℃以上にする場合、本体1は熔融ガラスの温度よりも高く加熱する。このため、本体1に用いられる耐高温性の高い白金あるいは白金合金でさえ揮発及び強度低下が生じる。このため、清澄槽形状保持手段2として、図3あるいは図4に示すような吊り部材2Bを用いることにより、清澄槽30の形状を効果的に保持することができる。
【0034】
次に、図5を用いて、清澄槽30が、清澄槽形状保持手段2として補強材2Cを備えた例につき説明をする。
ここでは、本体1と同様の材料である、白金または白金合金からなる補強材2Cを、複数に分断した本体1の間隙に複数配置して形成している。補強材2Cは、清澄槽本体1の断面形状に対応する形状であり、本体1の径と同程度か、厚みをやや厚くしてリング状に形成し、本体1と溶接により接続している(図5の(a)及び(b))。
このような補強材2Cを一定の間隔で本体1に配置したことにより、補強材2Cは本体1の骨組みのように作用して本体1の形状を保持する。
上述の間隔は、吊り部材2Bと同様に、300mm以下1mm以上とするのが好適である。より好ましくは150mm以下の間隔とする。また、一例として補強材2Cの形状は、リングの幅が1mm、厚みが10mm程度の中空円盤状とする。
補強材2Cを用いた場合も、構造物2A及び吊り部材2Bを用いた場合と同様に、本体1の気相空間aに接する部分が気相空間aの方向に垂れ下がるのを防止することができる。
【0035】
清澄槽形状保持手段として、上記の構造物2A及び吊り部材2Bと、補強材2Cとを組み合わせて併用する形で形成しても良い。その場合、清澄槽30の本体1の気相空間に接する部分が変形すること、あるいは、垂れ下がるのをより効果的に防止することが期待できる。
上記のように組み合わせて形成する際は、吊り部材2Bを設ける位置と補強材2Cを設ける位置とが重ならないようにし、清澄槽30の全体にわたりその形状が保持されるように考慮することが好ましい。
【0036】
また、清澄槽本体1の外表面に溶射膜を形成することで、清澄槽本体1の外表面における揮発を低減することができる。そのため、清澄槽の変形防止及び揮発低減という観点からは、清澄槽形状保持手段2と清澄槽本体1の外表面の溶射とを組み合わせて用いることが好ましい。溶射膜は、少なくとも清澄槽本体1の温度が最も高くなる領域に設けられていることが好ましい。なお、溶射膜は、例えば耐火性酸化物を含んで構成されることが好ましい。耐火性酸化物としては、ジルコニア、ジルコニアとMg及び/又はY化合物が挙げられる。溶射方法としては特に限定されないが、プラズマ溶射などを用いることができる。
【0037】
ところで、ガラス基板は、用いる清澄剤によって清澄作用が効果的に発揮される温度が異なることが知られている。例えば、As(亜ヒ酸)は、気泡を除去する能力に優れており、清澄温度(熔融ガラスの温度)も1500℃程度の範囲で足りる。しかし、亜ヒ酸は、環境負荷が高いため、既に述べたように近年は環境負荷が高くない清澄剤としてSnO(酸化錫)等が用いられるようになってきている。しかし、酸化錫は亜ヒ酸と比較して脱泡工程時に泡を放出する力が弱いため、ガラスの粘性を低くして脱泡効果を上げる必要があり、したがって高い温度で清澄を行う必要がある。例えば、酸化錫を清澄剤として使用した場合、本体1における熔融ガラスの温度は、1600℃以上であることが好ましく、例えば1600℃〜1700℃、好ましくは1630℃〜1710℃、さらに好ましくは1630℃〜1720℃近傍まで昇温される。つまり、清澄槽30の温度を、清澄槽30を構成する本体1の白金または白金合金の耐熱温度近傍まで上げる必要がある。
特に、LTPSディスプレイ用ガラス基板及/又は有機ELディスプレイ用ガラス基板を構成するガラスは粘度が高いため、清澄を十分に行うためには清澄工程における熔融ガラス温度の最高温度を1640℃〜1740℃とすることが好ましい。
【0038】
また、清澄槽30内において、熔融ガラスは清澄剤の酸素の放出反応が促進されるように、泡が浮上しやすい粘度、好ましくは、120poise(ポアズ)から400ポアズとなるように、清澄槽30に供給される前に加熱される。たとえば、無アルカリガラスやアルカリ金属酸化物の合量を2質量%以下しか含まないアルカリ微量含有ガラス(高温粘性ガラス)は、102.5ポアズとなる温度が1300℃以上、好ましくは1400℃以上、さらに好ましくは1500℃以上であるので、清澄槽本体1の温度は1700℃以上、好ましくは1710℃以上、さらに好ましくは1720℃近傍まで昇温される。
つまり、清澄槽30の温度を、清澄槽30を構成する本体1の白金または白金合金の耐熱温度近傍まで上げる必要がある。
【0039】
したがって本発明は、酸化錫を清澄剤として使用するガラス基板の製造に特に適している。また、本発明は、高温粘性の高いガラス材料を用いてガラス基板を製造する場合に特に適している。具体的には、熔融ガラスが102.5ポアズとなる温度(熔融温度)が1300℃以上であるガラス材料で構成する場合に特に適している。上記の熔融温度は1400℃以上、さらに1500℃以上の熔融温度を要するガラス材料で構成する場合により好適である。
【0040】
本発明のガラス基板の製造方法の実施に際し、実施の形態の製造方法に限定されるものではないことは明らかである。たとえば、実施の形態で例示したガラス原料以外のガラス原料についても、従来から用いられてきた汎用の原料を使用すれば本発明のガラス基板の製造方法を適用することができる。
また、清澄槽保持手段に関しては、たとえば構造物は実施の形態の構造物2Aの形状によらず、清澄槽本体1の上部にあって、本体1に対する相対位置が固定された構造物であれば他の形状のものであってもよい。また、吊り部材2Bや補強材2Cの形状についても、実施の形態の形状に限らず、他の好適な形状としても良い。また、保護層2Aaと支持体2Abとの、少なくとも何れかを備えていればよい。さらに、吊り部材2Bや補強材2Cを配置する間隔についても、用いる清澄槽の大きさや形状により、好適な配置間隔を設定することができる。
なお、本明細書において、「白金族金属」は、白金族元素からなる金族を意味し、単一の白金族元素からなる金属のみならず白金族元素の合金を含む用語として使用する。つまり、「白金族金属」は、白金及び白金合金を含む。ここで、白金族元素とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の6元素を指す。白金族金属は高価ではあるが、融点が高く、熔融ガラスに対する耐食性にも優れている。
また、清澄槽は、図示したように円筒形であることが好ましいが、熔融ガラスMGをその内部に収容する空間が確保されていればその形状に制限はなく、例えばその外形が直方
体などであってもよい。
本発明は、オーバーフロー・ダウンロード法でガラスを成形するガラス基板の製造に適する。オーバーフロー・ダウンロード法は、熔融ガラスを楔状成形体の両側面に沿って流下させて、前述の楔状成形体の下端部で合流させることにより板状ガラスに成形し、成形された板状ガラスを徐冷し、切断する。オーバーフロー・ダウンロード法は、熔解したガラスを何物にも触れることなく垂直方向に引き伸ばして冷却することで、滑らかな表面を実現することができる。その後、切断された板状ガラスは、さらに、顧客の仕様に合わせて所定にサイズに切断され、端面研磨、洗浄などが行われ、出荷される。
本発明は、例えば、厚さが0.5〜0.7mmで、サイズが300×400mm〜2850×3050mmのFPD用ガラス基板の製造に適する。
なお、液晶表示装置用ガラス基板等は、その表面に半導体素子が形成されるため、アルカリ金属成分を全く含有しないか、または含まれていても半導体素子に影響を及ぼさない程度の微量であることが好ましい。また、液晶表示装置用ガラス基板等は、ガラス基板中に泡が存在すると表示欠陥の原因となるため、泡を極力低減することが好ましい。これらにことから、液晶表示装置用ガラス基板等では、上述したように、ガラス組成、熔融ガラスの温度、清澄剤等が選択されるので、本発明は、液晶表示装置用ガラス基板等の製造に適する。
その他、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々好適な他の形態への変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 本体(清澄槽本体)
2 清澄槽形状保持手段
2A 構造物
2Aa 保護層(耐火性保護層)
2Ab 支持体(耐火性支持体)
2B 吊り部材
2Ba 一端
2Bb 他端
2C 補強材(清澄槽形状保持手段)
10 熔融槽
20、40 移送管
30 清澄槽
100 ガラス基板製造装置
MG 熔融ガラス
a 気相空間
図1
図2
図3
図4
図5