脳機能の改善が、ICHによって引き起こされた上昇した頭蓋内圧(ICP)を80mmHg、70mmHg、60mmHg、50mmHg、40mmHg、30mmHg、20mmHg、および10mmHgからなる群から選択される圧力値以下に低減することと関連する、請求項5に記載の方法。
脳機能の改善が、脳潅流圧(CPP)を40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg、および120mmHgからなる群から選択される圧力値以上に維持することと関連する、請求項5に記載の方法。
脳機能の改善が、乳酸/ピルビン酸濃度比(LAR)を60、50、40、30、および20からなる群から選択される値以下に低減することと関連する、請求項5に記載の方法。
脳機能の改善が、脳血管の頭蓋内圧と平均血圧の二変量の相関係数(PRx)の比を0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.0、−0.1、−0.2、および−0.3からなる群から選択される値以下に低減することと関連する、請求項5に記載の方法。
神経学的障害がグラスゴー昏睡スコアを使用して評価され、治療の結果として、対象のスコアが、3から4以上、4から5以上、5から6以上、6から7以上、7から8以上、8から9以上、9から10以上、10から11以上、11から12以上、12から13以上、13から14以上、または14から15に改善する、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、グラスゴー転帰スケール拡張版を使用して評価され、治療の結果として、治療された対象の平均スコアが、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、または8に改善する、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、バーセルインデックスを使用して評価され、治療の結果として、治療された対象の平均スコアが、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、または80以上、または90以上に改善する、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、NIH脳卒中スケールを使用して評価され、治療の結果として、治療された対象の平均スコアが、42から41以下、41から40以下、40から39以下、39から38以下、38から37以下、37から36以下、36から35以下、35から34以下、34から33以下、33から32以下、32から31以下、31から30以下、30から29以下、29から28以下、28から27以下、27から26以下、26から25以下、25から24以下、24から23以下、23から22以下、22から21以下、21から20以下、20から19以下、19から18以下、18から17以下、17から16以下、16から15以下、15から14以下、14から13以下、13から12以下、12から11以下、11から10以下、10から9以下、9から8以下、8から7以下、7から6以下、6から5以下、5から4以下、4から3以下、3から2以下、2から1以下、または1から0に低減される、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、修正ランキンスケールを使用して評価され、治療の結果として、治療された対象の平均スコアが、約5と6の間から約4と5の間、約4と5の間から約3と4の間、約3と4の間から約2と3の間、約2と3の間から約1と2の間、または約1と2の間から約0と1の間に低減される、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、修正ランキンスケールを使用して評価され、治療の結果として、5または6の修正ランキンスケールスコアを有する治療された対象の比率が、0、1、2、3、または4のスコアを有するものと比較して低減される、請求項12に記載の方法。
神経学的障害が、修正ランキンスケールを使用して評価され、治療の結果として、4、5または6の修正ランキンスケールスコアを有する治療された対象の比率が、0、1、2、または3のスコアを有するものと比較して低減される、請求項12に記載の方法。
治療の結果として、ICHを有する対象におけるPHEの平均体積が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項21に記載の方法。
治療の結果として、ICHを有する対象におけるPHEによって引き起こされた頭蓋内圧の平均上昇が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項21に記載の方法。
治療の結果として、ICHを有する対象における平均血腫体積拡大が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
治療の結果として、ICHを有する対象における平均血腫体積拡大が、未治療の対照と比較して少なくとも約1ml、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、3.5ml、4ml、4.5ml、5ml、5.5ml、6ml、6.5ml、7ml、7.5ml、8ml、8.5ml、9ml、9.5ml、10ml、10.5ml、11ml、11.5ml、12ml、12.5ml、13ml、13.5ml、14ml、14.5ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、22ml、24ml、26ml、28ml、30ml、35ml、40ml、45ml、または50ml低減される、請求項25に記載の方法。
血腫体積が3ml以上、6ml以上、または12.5ml以上拡大したICHを有する対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
血腫体積が15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、33%以上拡大したICHを有する対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
治療後に4のスポットサインスコアを有するICH対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
治療後に3のスポットサインスコアを有するICH対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
治療後に2のスポットサインスコアを有するICH対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
治療後に1のスポットサインスコアを有するICH対象の比率が、未治療の対照と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減される、請求項25に記載の方法。
スポットサインスコアが、30分、45分、60分、75分、90分、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、30時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、18日、3週間、および4週間からなる群から選択される、FXaバリアントの最初の投与後の時間に判定される、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
脳内出血が、大脳、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、小脳、脳幹、中脳、脳橋、髄質、脳下垂体、視床下部、視床、海馬、扁桃体、前障、および基底核からなる群から選択される脳領域内で起こる、請求項1、3、5、12、21、または25のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
酵素原性を有する凝固因子Xaのバリアントは、血友病動物における制御されていない出血を阻害するのに有効であることが以前に実証された。しかし、このバリアントが、インタクトな凝固系を有する動物における制御されていない出血を有効に停止できるか否かは未知であったか、または予測されていなかった。出願者らは、このバリアントが非血友病動物において有効な凝血促進剤であり、脳内出血の非血友病動物モデルにおける血腫拡大を低減することもできることを実証した。これらの新しい研究に基づくと、本開示のFXaバリアント、およびこのようなバリアントを含む組成物は、ヒトおよび非ヒト動物を含めた非血友病対象におけるICHを治療および予防するための方法において有用であることが予期される。FXaバリアントでICH対象を治療すると、未治療の対照と比較して、対象の生活の質および神経学的機能を改善し、ICHによって引き起こされる症状および障害の重症度を低減することができる。本開示のFXaバリアントおよび組成物を使用してICHを治療および予防するための方法を、以下でさらに詳細に記載する。
【0019】
第Xa因子およびそのバリアント
凝固因子X(FX)は、内因性第IX因子/第VIII因子または外因経路(組織因子/第VIIa因子)によって活性化されるとプロトロンビナーゼのプロテアーゼ部分であるFXaになる酵素原である。Arg−Ile切断性結合がタンパク質分解的に切断され、活性化ペプチド(AP)を放出した後、酵素原の一連の明確な構造変化が、成熟活性セリンプロテアーゼへの活性化プロセスを推進する(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、Tosoら(2008)J.Biol.Chem.、283、18627〜18635;Bunceら、(2011)Blood、117、290〜298;およびIvanciuら(2011)Nat.Biotechnol.、29、1028〜1033を参照)。成熟FXaは、軽鎖、および触媒ドメインを含有する重鎖を有する。成熟FXaは、活性化した補助因子、第Va因子(FVa)の結合を含むプロトロンビナーゼ複合体が形成されると活性セリンプロテアーゼになる。
【0020】
活性化されると、切断により酵素原様FXaバリアントが生じるFXのバリアント型が開発された。すなわち、切断されると、得られるFXaバリアントは、活性部位機能不良を有し、循環する阻害剤(すなわち、抗トロンビンIIIおよびTFPI)による不活化に対してより耐性である。したがって、FXaバリアントは、野生型FXaより血漿中で長い半減期を有する。FXaバリアントは、FVa、脂質膜、およびカルシウムに結合して、プロトロンビンを効率的に活性化する完全に活性なプロトロンビナーゼ複合体を形成する。
【0021】
FXaの酵素原様バリアントは、酵素原様コンホメーション内で循環し、血栓形成性ではないようである(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、Tosoら(2008)J.Biol.Chem.、283、18627〜18635、およびIvanciuら(2011)Nat.Biotechnol.、29、1028〜1033を参照)。FXaバリアントの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている国際特許公開第WO2007/059513号に記載されている。
【0022】
凝固の酵素は、キモトリプシン様フォールドを持つプロテアーゼのS1ペプチダーゼファミリーに属するトリプシン様酵素である。凝固プロテアーゼは、互いに、かつ消化の祖先セリンプロテアーゼと高度に相同である触媒ドメインを含有する。構造的な相同性/同一性は、非常に大きく(70%超)、凝固酵素(第Xa因子を含む)の触媒ドメイン内の残基は、キモトリプシノーゲン中の対応する残基によって番号付けられる。(キモトリプシン番号方式;ともにその全体が本明細書に参照により組み込まれている、BajajおよびBirktoft、Methods Enzymol.、1993;222:96〜128、表2、ならびにBode W、Mayr I、Bauman Yら、The refined 1.9Å crystal structure of human alpha−thrombin:interaction with D−Phe−Pro−Arg chloromethylketone and significance of the Tyr−Pro−Trp insertion segment.、EMBO J、1989;8(11):3467〜3475を参照)。したがって、アミノ酸は、当業者に周知であるキモトリプシン番号方式によって本明細書で言及されうる。
【0023】
本開示によれば、FXaバリアントは、バリアントをin vivoまたはin vitroで野生型FXaタンパク質と比較してより酵素原様にするアミノ酸置換を含むFXaタンパク質でありうる。本開示のFXaバリアントは、プロトロンビナーゼを形成すると野生型FXa活性を実質的に回復する。本開示の方法で有用であるFXaバリアントの例は、キモトリプシン番号方式によって、a)16位のIleがThr、Leu、Phe、Asp、またはGlyである、およびb)17位のValがLeu、Ala、またはGlyである、からなる群から選択される修飾を含むバリアントである。キモトリプシン番号方式におけるアミノ酸16および17は、配列番号1(ヒト第X因子プレプロタンパク質)のそれぞれアミノ酸235および236に存在する。ある特定の実施形態では、FXaバリアントは、FXa
I16LおよびFXa
I16Tである(FXaバリアントについて本明細書で使用する命名法は、キモトリプシン番号方式によって番号付けられた位置の元のアミノ酸と、その後の置換されたアミノ酸を列挙する)。FXaバリアントは、任意の哺乳動物FXaのバリアントでありうる。しかし、特に対象とするのは、ヒトFXaのFXaバリアントである。
【0024】
ある特定の実施形態では、活性化されて本開示のバリアントFXaになるFXバリアントは、非天然細胞内タンパク質分解的切断部位を挿入することによってさらに修飾することができる。非限定例では、哺乳動物細胞内で「活性化された」酵素原様FXaバリアントを発現させるために、非天然細胞内タンパク質分解的切断部位を、バリアントFX酵素原内の配列番号1の234位(キモトリプシン番号方式における15位)のArgと、配列番号1の235位(キモトリプシン番号方式における16位)に対応する位置のアミノ酸との間に挿入することができる。ある特定の実施形態では、非天然細胞内プロテアーゼ切断部位は、Arg−Lys−ArgまたはArg−Lys−Arg−Arg−Lys−Arg(配列番号3)である。これらの切断部位は、細胞内でプロテアーゼ(PACE/フューリン様酵素)によって効率的に認識され、除去される。この切断は、プロセシングされたバリアントFXaをもたらすことができ、このバリアントでは、分子の成熟重鎖は、配列番号1の235位(キモトリプシン番号方式における16位)に対応する位置のアミノ酸からこの時点で始まる。前記位置でこの切断部位を導入すると、FXからFXaへの細胞内転換が可能になる。
【0025】
ある特定の実施形態では、FXバリアント活性化ペプチド(AP)のアミノ酸配列全体(すなわち、配列番号1のアミノ酸183〜234)は、非天然細胞内プロテアーゼ切断部位で置き換えられている。ある特定の実施形態によれば、非天然細胞内プロテアーゼ切断部位は、Arg−Lys−ArgまたはArg−Lys−Arg−Arg−Lys−Arg(配列番号3)である。上記に説明したように、この修飾は、細胞によって発現されるFXバリアントの細胞内切断を可能にする。細胞内切断により、FXバリアントが活性化された酵素原様FXaバリアントに変換され、次いでこれは細胞によって分泌され、引き続いて精製される。この手法は、例えば、タンパク質を単離した後、または血液凝固の直前にバリアント凝固因子を活性化することが他の方法では要求される細胞外切断の必要性を回避する。
【0026】
ある特定の実施形態では、本開示のFXaバリアントは、天然野生型ヒトシグナル配列および/またはプロペプチド配列を含むFXバリアントタンパク質前駆体に由来する。他の実施形態では、非ヒト種由来のFXシグナル配列および/またはプロペプチドを、対応する天然アミノ酸配列の代わりに使用することができる。そしてさらに他の実施形態では、他のヒトまたは非ヒト分泌タンパク質由来のシグナル配列および/またはプロペプチド配列を、対応する天然アミノ酸配列の代わりに使用することができる。
【0027】
例示的な実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸(野生型配列中のイソロイシン)は、トレオニン(Thr)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、アスパラギン酸(Asp)、またはグリシン(Gly)からなる群から選択される異なるアミノ酸で置換されている。これらの置換は、命名法I235T、I235L、I235F、I235D、およびI235Gを使用してそれぞれ書くことができ、最初の文字は、イソロイシンの一文字コードであり、最後の文字は、野生型配列中に置換されているアミノ酸の一文字コードである。配列番号1の235位は、キモトリプシン番号方式での16位と等価であるので、同じ置換をI16T、I16L、I16F、I16D、およびI16Gと書くことができる。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸は、Thrで置換されている(すなわち、I235TまたはI16T)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸は、Leuで置換されている(すなわち、I235LまたはI16L)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸は、Pheで置換されている(すなわち、I235FまたはI16F)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸は、Aspで置換されている(すなわち、I235DまたはI16D)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、235位のアミノ酸は、Glyで置換されている(すなわち、I235GまたはI16G)。
【0028】
別の例示的な実施形態によれば、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、236位のアミノ酸(野生型配列中のバリン)は、ロイシン(Leu)、アラニン(Ala)、またはグリシン(Gly)からなる群から選択される異なるアミノ酸で置換されている。これらの置換は、命名法V236L、V236A、およびV236Gを使用してそれぞれ書くことができ、最初の文字は、バリンの一文字コードであり、最後の文字は、野生型配列中に置換されているアミノ酸の一文字コードである。配列番号1の236位は、キモトリプシン番号方式での17位と等価であるので、同じ置換をV17L、V17A、およびV17Gと書くことができる。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、236位のアミノ酸は、Leuで置換されている(すなわち、V236LまたはV17L)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、236位のアミノ酸は、Alaで置換されている(すなわち、V236AまたはV17A)。一実施形態では、FXaバリアントは、配列番号1のアミノ酸41〜179およびアミノ酸235〜488を含み、236位のアミノ酸は、Glyで置換されている(すなわち、V236GまたはV17G)。
【0029】
他の実施形態では、先の段落に記載の特定のバリアントを含めた本開示のFXaバリアントは、タンパク質の軽鎖および/または成熟重鎖の様々なアイソフォームを含みうる。FXaバリアント成熟重鎖の限定されない例示的なアイソフォームとしては、成熟重鎖のアルファおよびベータバージョンがある。参照により本明細書に組み込まれているJestyら、J Biol Chem.、1975年6月25日;250(12):4497〜504。本開示の組成物は、アルファおよびベータ成熟重鎖アイソフォームの一方もしくは他方または両方が表現されているFXaバリアントタンパク質を含みうる。
【0030】
さらに他の実施形態によれば、先の段落に記載の特定のバリアントを含めたFXaバリアントタンパク質のアイソフォームは、多様な数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のアミノ酸)が、タンパク質の軽鎖および/または成熟重鎖のカルボキシ末端から欠失しているか、またはこれに付加されているアイソフォームを含みうる。
【0031】
ある特定の実施形態によれば、本開示のFXaバリアントは、配列番号1中の野生型FXaのアミノ酸配列と比較して、ある特定の最小程度の相同性または配列同一性を有するタンパク質を含む。したがって、例えば、FXaバリアントは、配列番号1中の野生型FXa軽鎖および成熟重鎖と配列において少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%相同または同一である軽鎖および成熟重鎖を含有するタンパク質を含み、このようなFXaバリアントは、配列番号1の235位に対応するアミノ酸位置でのThr、Leu、Phe、Asp、またはGlyとの置換、または配列番号1の236位に対応するアミノ酸位置でのLeu、Ala、もしくはGlyとの置換も含み、さらにこのようなFXaバリアントは、プロトロンビナーゼ複合体中に組み込まれるまで酵素原性である。配列番号1のアミノ酸配列では、野生型FXa軽鎖配列は、アミノ酸41〜179に対応し、野生型FXa成熟重鎖配列は、アミノ酸235〜488に対応する。パーセンテージアミノ酸配列相同性または同一性は、国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイト(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で入手可能なProtein BLASTなどのソフトウェアを使用して容易に決定することができる。
【0032】
他の限定されない実施形態によれば、本開示のFXaバリアントは、限定することなく、1つもしくは複数のO結合型もしくはN結合型炭水化物基または多様な数のガンマ−カルボキシグルタミン酸(Gla)残基を含めた1つまたは複数の翻訳後修飾を含有するFXaバリアントも含みうる。本開示のFXaバリアントは、化学修飾されたFXaバリアントタンパク質をさらに含みうる。本開示の方法で有用な他のFXaバリアントも可能である。
【0033】
本明細書において、用語FXa
I16xは、配列番号1の235位(キモトリプシン番号方式での16位に対応する)に対応するアミノ酸が、野生型配列中のアミノ酸(イソロイシン)から「x」で表される異なるアミノ酸に変更されている活性化された第X因子のバリアントを指す。いくつかの限定されない例示的な実施形態では、アミノ酸「x」は、トレオニン(ThrもしくはT)、ロイシン(LeuもしくはL)、フェニルアラニン(PheもしくはF)、アスパラギン酸(AspもしくはD)、またはグリシン(GlyもしくはG)でありうる。
【0034】
本明細書において、用語FXa
V17yは、配列番号1の236位(キモトリプシン番号方式での17位に対応する)に対応するアミノ酸が、野生型配列中のアミノ酸(バリン)から「y」で表される異なるアミノ酸に変更されている活性化された第X因子のバリアントを指す。いくつかの限定されない例示的な実施形態では、アミノ酸「y」は、ロイシン(LeuもしくはL)、アラニン(AlaもしくはA)、またはグリシン(GlyもしくはG)でありうる。
【0035】
用語FXa
I16xおよびFXa
V17yは、配列番号1に示されているタンパク質配列によって限定されない。それどころか、これらの用語は、プロトロンビナーゼ複合体中に組み込まれるまで酵素原として挙動するキモトリプシン番号方式での16位または17位で特定の置換突然変異を有する本明細書に記載の様々なアイソフォームおよび相同タンパク質をさらに含む。
【0036】
本開示のFXaバリアントは、タンパク質を発現させるための任意の技法によって生成することができる。
【0037】
「単離タンパク質」、「単離ポリペプチド」、または「単離バリアント」は、派生物のその起源または源によって、(1)その天然の状態でそれに伴う天然に付随する構成成分と付随していない、(2)同じ種に由来する他のタンパク質を含まない、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される、または(4)自然において存在しない、タンパク質、ポリペプチド、またはバリアントである。したがって、化学合成された、またはそれが天然に生じる細胞と異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、その天然に付随する構成成分から「単離されている」ことになる。タンパク質は、当技術分野で周知のタンパク質精製技法を使用して、単離によって天然に付随する構成成分を実質的に含まないようにすることもできる。
【0038】
タンパク質またはポリペプチドは、試料の少なくとも約60〜75%が単一種のポリペプチドを呈する場合、「実質的に純粋であり」、「実質的に均一であり」、または「実質的に精製されている」。ポリペプチドまたはタンパク質は、単量体であっても多量体であってもよい。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は一般に、タンパク質試料の約50%、60%、70%、80%、または90%W/W、より通常には約95%を構成し、99%超純粋でありうる。タンパク質純度または均一性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、その後の、当技術分野で周知の染色剤でゲルを染色した後の単一ポリペプチドバンドの可視化などの当技術分野で周知のいくつかの手段によって示すことができる。ある特定の目的に関して、より高い解像度を、HPLCまたは精製のための他の当技術分野で周知の手段を使用することによってもたらすことができる。
【0039】
脳内出血
脳内出血(ICH)は、脳組織(実質)内への出血を引き起こす脳内の罹患または損傷した血管の破裂から生じる脳卒中の一形態である。脳損傷および結果として起こる神経学的障害または死は、異なる機構から生じうる。例えば、血液漏出は、患部血管によって供給される脳細胞への酸素供給を低減すると考えられている。血液のプーリングは、浮腫を引き起こし得、最終的に形成する血腫はまた、周囲脳組織に対して圧力を発揮しうることも考えられている。浮腫および血腫はともに、頭蓋内圧を増大させうる。ICHによって引きこされる脳損傷の他の機構も可能である。ICH後の脳損傷の原因に関与する1つまたは複数の特定の機構は、一般に、または特定の場合において、本開示の実施形態を限定するように決して意図されていない。
【0040】
ICHは、脳の任意の部分で起こりうる。ICHが起こりうる、または脳の異なる部分で起こるICHによって影響されうる脳の例示的な領域としては、それだけに限らないが、大脳(前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉を含む)、小脳、脳幹(中脳、脳橋、髄質を含む)、脳下垂体、視床下部、視床、海馬、扁桃体、前障、または基底核がある。
【0041】
ICHは、脳内の動脈からの出血の結果として起こりうる。脳の例示的な動脈としては、それだけに限らないが、前大脳動脈(anterior cerebral artery、ACA)、中大脳動脈(middle cerebral artery、MCA)、後大脳動脈(posterior cerebral artery、PCA)、眼動脈、ウィリス輪の動脈、後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery、PICA)、またはレンズ核線条体動脈がある。
【0042】
頭蓋内圧の増大を示すある特定の症状、例えば、頭痛、吐き気、嘔吐、および意識消失などは、ICHの存在を示唆しうるが、確定診断は、脳撮像を必要とする。当業者によく知られた脳撮像(神経画像処理とも呼ばれる)技術としては、コンピューター断層撮影(computed tomography、CT)スキャン、血管造影、CT血管造影、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging、MRI)、およびMR血管造影がある。ICHの確定診断のための他の技法も、当業者によく知られているであろう。
【0043】
ICHは、血栓による脳内の血管の閉塞によって引き起こされる虚血性脳卒中ほど一般的ではないが、すべての脳卒中の約12パーセントを占める。虚血性脳卒中と対照的に、ICHは、出血が始まった後の最初の24時間以内に、特に、出血が血腫の拡大を伴う場合、著しく悪化する可能性がより高い。以下でさらに論じるように、血腫拡大は、より悪い患者転帰と関連する。
【0044】
脳内出血(ICH)を治療する方法
本開示は、ICHの治療を必要とする対象に、治療有効量の酵素原性を有するFXaバリアント、例えば、FXaバリアントFXa
I16Lを投与することによってICHを治療または予防するための方法を提供する。
【0045】
本明細書において、用語「対象」は、脳内出血を罹患しうる脳および本開示のFXaバリアントを使用して活性化されうる凝固系を有する任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類動物(例えば、類人猿、サル、ヒヒ、チンパンジー)、または他の哺乳動物、例えば、げっ歯類動物(例えば、マウス、ラット)、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、ウサギ、ヤギ、シカ、ヒツジ、フェレット、アレチネズミ、モルモット、ハムスター、およびコウモリなどである。他の動物も、当業者の知識によれば可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、対象は、非血友病哺乳動物、例えば、非血友病ヒトである。他の実施形態では、対象は、血友病A、血友病B、または他のタイプの血友病を含みうる血友病を有する。
【0047】
本明細書において、語句「治療有効量」は、ICHを有する対象に投与されたとき、対象がICHの結果として死亡する可能性を低減し、ICHによって引き起こされる病的状態を低減し、ICHによって引き起こされる神経学的障害を低減し、またはICH後の対象の機能、生活の質、もしくは状態を改善するFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)の量を指す。治療有効量のFXaバリアントはさらに、出血が始まり、もしくはICHが診断された後にICHによって引き起こされる血腫が体積を拡大する程度を予防もしくは低減し、ICHによって引き起こされる血腫周囲の浮腫の拡大を予防し、もしくはこの浮腫の体積を低減し、またはICHに伴いうる頭蓋内圧の増大を予防もしくは低減することができる。治療有効量のFXaバリアントはさらに、発病を遅延させ、またはICHによって引き起こされる身体的徴候、症状、生理的効果、もしくは神経学的障害のいずれかの重症度を緩和し、減らし、もしくは減衰させることができる。FXaバリアントの治療有効量は、使用される特定のFXaバリアントの性質、治療される対象の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびにFXaバリアントが対象において所望の応答を発揮する能力などの要因によって変動しうる。治療有効量は、FXaバリアントのいずれの有毒または有害な効果よりも、治療的に有益な効果が勝っているものでもある。
【0048】
語句「予防有効量」は、ICHの1つまたは複数のリスクファクターを有する対象に投与されたとき、対象がICHを罹患する可能性を低減し、または同様のリスクプロファイルを有する対象の集団におけるICHの発生率を低減するFXaバリアントの量を指す。
【0049】
FXaバリアントの効力および効果的な量は、FXaバリアントを投与される個々のICH対象の知見に基づいて決定されうる。FXaバリアントの効力および効果的な量は、当業者の知識によってICH対象の規定された集団において制御された臨床試験を行うことによっても決定することができる。このような臨床試験の結果に基づいて、医療提供者は、ICHを新たに経験しており、ICHを治療する必要のある対象にFXaバリアントが投与される前に、FXaバリアントの有効量である可能性が高いものを事前に予測することができる。
【0050】
望ましくはあるが、ICHの身体的徴候もしくは症状(例えば、血腫拡大を含む)、またはICHによって引き起こされる神経学的障害の完全な予防または逆転は、効力が存在するために必要ではない。そうではなく、上記に示したように、有効量のFXaバリアントは、FXaバリアントで治療せずにICH対象がなっていた可能性の高い状態と比較して、その対象の状態を改善すれば十分である。
【0051】
ICHに起因する死亡率を低減する方法
ICHを原因とする30日致死率は、40%〜50%に及び、死亡の約半分が発病の2日以内に起こることが報告されている。その全体が参照により組み込まれている、Intracerebral Hemorrhage、JR Carhuapomaら編(Cambridge:Cambridge University Press、2010)のML Flahertyら、「The epidemiology of intracerebral hemorrhage」。
【0052】
ある特定の実施形態によれば、有効量のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)をICHを有する対象に投与すると、ICHを原因とする死亡の発生率(死亡率)を低減することができる。このことは、例えば、未治療の対照集団と比較して、ICH対象の規定された集団において死亡率を低減するFXaバリアントの相対能力を比較することによって実証されうる。いくつかの実施形態では、ICHを有する対象を治療すると、ICHを原因とする死亡率が約40%〜50%から、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、またはそれ未満まで低減される。いくつかの他の実施形態では、FXaバリアントで治療すると、FXaバリアントで治療されなかったICH対象の死亡率と比較して、ICHを原因とする死亡率が約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上低減される。死亡率は、ICH発病後の任意の時間で決定することができる。発病後の限定されない例示的な時間には、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、14日、15日、20日、21日、25日、28日、30日、またはそれ以上が含まれる。
【0053】
ICH後の脳機能を改善する方法
本開示の方法の一実施形態では、有効量のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)を投与すると、ICH対象における脳機能が改善される。
【0054】
一実施形態では、脳機能の改善は、ICHによって引き起こされた上昇した頭蓋内圧(ICP)を、ある特定の最大レベル未満に低減することと関連する。例えば、ICPは、80mmHg、70mmHg、60mmHg、50mmHg、40mmHg、30mmHg、20mmHg、10mmHg、またはそれ未満の値以下のレベルに低減されうる。ある特定のレベル未満にICPを低減することによって、ICH対象が死亡する可能性が低減される。ICPを監視するための方法は、当業者によく知られている。参照により組み込まれている、S.−B.Koら、Stroke、42:3087〜3092(2011)。
【0055】
別の実施形態では、脳機能の改善は、ある特定の最低レベルの脳潅流圧(CPP)を維持することと関連する。例えば、CPPは、40mmHg、50mmHg、60mmHg、70mmHg、80mmHg、90mmHg、100mmHg、110mmHg、120mmHg、またはそれより高い値以上のレベルに維持されうる。十分なレベルでCPPを維持することによって、ICH対象が脳代謝危機または脳組織低酸素を経験する可能性が低減される。十分に高いCPPは、ICH対象の死亡率の低減にも関連する。CPPを監視するための方法は、当業者によく知られている。S.−B.Koら、Stroke、42:3087〜3092(2011)。
【0056】
さらに別の実施形態では、脳機能の改善は、ある特定の最低レベルの脳組織酸素分圧(P
btO
2)を維持することと関連する。例えば、P
btO
2は、6mmHg、8mmHg、10mmHg、12mmHg、14mmHg、16mmHg、18mmHg、20mmHg、22mmHg、24mmHg、またはそれより高い値以上のレベルに維持されうる。十分なレベルでP
btO
2を維持することによって、ICH対象が脳代謝危機または脳組織低酸素を経験する可能性が低減される。十分に高いP
btO
2は、ICH対象の死亡率の低減にも関連する。P
btO
2を監視するための方法は、当業者によく知られている。S.−B.Koら、Stroke、42:3087〜3092(2011)。
【0057】
さらなる実施形態では、脳機能の改善は、乳酸/ピルビン酸濃度比(LAR)をある特定のレベル未満に低減することと関連する。比がより高いことは、嫌気的代謝を示す。例えば、LARは、60、50、40、30、20、またはそれより低い値以下のレベルに低減されうる。ある特定のレベル未満にLARを低減することによって、ICH対象が死亡する可能性が低減される。脳の乳酸およびピルビン酸の濃度を監視するための方法は、当業者によく知られている。S.−B.Koら、Stroke、42:3087〜3092(2011)。
【0058】
別の実施形態では、脳機能の改善は、平均頭蓋内圧(mean intracranial pressure、ICP)と平均動脈圧(mean arterial blood pressure、MAP)との間の移動相関係数として計算される脳血管の頭蓋内圧と平均血圧の二変量の相関係数(PRx)の比を低減することと関連する。参照により組み込まれている、C.Zweifelら、Neurosurg.Focus、25(10):E2(2008)。例えば、PRxは、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.0、−0.1、−0.2、−0.3、またはそれより低い値以下のレベルに低減されうる。ある特定のレベル未満にPRxを低減することによって、ICH対象が死亡する可能性が低減される。PRxを計算することができるICHおよびMAPを監視するための方法は、当業者によく知られている。S.−B.Koら、Stroke、42:3087〜3092(2011)。
【0059】
ICH後の神経学的障害を低減する方法
死亡は別として、対象に対するICHの最も重要なインパクトは、重度であることが多い神経学的障害であり、それは、対象および対象の家族の生活の質を荒廃させ、相当な社会的費用を負わせる場合がある。とりわけ、神経学的障害は、ICH対象が支援無しで働き、または通常の1日の活動を続けることを妨害または阻止しうる。本開示のFXaバリアントを使用して対象におけるICHを治療または予防することによって、ICHによって引き起こされる神経学的障害の程度を、同じ対象において治療をせずに、または同様の未治療の対照の対象で起こる障害の程度と比較して低減することができる。結果として、本開示の方法によって治療されたICH対象が、独立して働き、または機能する能力が改善される。
【0060】
神経学的障害は、神経機能評価ツールを使用して定量化することができる。このような評価ツールの非限定例としては、グラスゴー昏睡スコア(Glasgow Coma Score、GCS)、グラスゴー転帰スケール拡張版(Glasgow Outcome Scale,extended version、GOS−E)、バーセルインデックス(Barthel Index、BI)、NIH脳卒中スケール(NIH Stroke Scale、NIHSS)、および修正ランキンスケール(modified Rankin Scale、mRS)がある。例えば、EuroQolスケール、改訂うつ病用ハミルトン評価尺度などを含めた他の評価ツールも、当業者の知識によって使用することができる。
【0061】
グラスゴー昏睡スコアは、ICHまたは他の脳傷害後の対象における意識のレベルを記述するように意図されている。GCSは、3から15の間でスコアを付け、3が最悪であり、15が最良である。これは、開眼(Best Eye Response)、言語による応答(Best Verbal Response)、および運動による応答(Best Motor Response)を含む3つのパラメータから構成されている。開眼(Best Eye Response)については、開眼無し=1;痛みに対する開眼=2;言葉による指示に対する開眼=3、および自発的な開眼=4である。言語による応答(Best Verbal Response)については、言語の応答無し=1;理解できない音声=2;不適切な言葉=3;混乱している=4、および見当識あり=5である。運動による応答(Best Motor Response)については、運動応答無し=1;痛みに対する伸展=2;痛みに対する屈曲=3;痛みから逃避=4;疼痛部位認識可能=5、および指示に従う=6である。13以上のGSCは、軽度の脳傷害と相関し、9〜12は、中等度の傷害であり、8以下は、重度の脳傷害である。
【0062】
グラスゴー転帰スケール(GOS)およびその拡張版(GOS−E)は、ICHまたは他の脳傷害後に対象がどれほどよく回復したかを記述するように意図されている。GOSは、5つのレベルおよび関連するスコアを有し、死亡=1;植物状態(対象は生きているが、無応答性である)=2;重度の障害(対象は意識があるが、身体障害のため毎日のサポートに他人を必要とする)=3;中等度の障害(対象は独立しているが、障害を持つ)=4、および良好な回復(対象はほとんど正常な活動を再開したが、軽微な問題が残りうる)=5を含む。
【0063】
拡張されたGOSまたはGOS−Eでは、スコアシステムは、死亡=1;植物状態=2;下位重度身体障害=3;上位重度身体障害=4;下位中等度身体障害=5;上位中等度身体障害=6;下位の良好な回復=7、および上位の良好な回復=8の8つのレベルに拡張されている。
【0064】
バーセルインデックス(BI)は、ICHまたは他の脳傷害後の対象における活動制限を測定するための評価尺度である。参照により組み込まれている、Mahoney F.およびBarthel D.、Functional evaluation:the Barthel Index.、Md Med J.、14:61〜65(1965)。このスケールは、摂食能力、入浴能力、整容能力、着替え能力、排便コントロール、排尿コントロール、トイレの使用、ベッドから椅子と椅子からベッドの間で移動する能力、機動性、および階段を使用する能力を含めた10の機能別カテゴリーからなる。対象は、各カテゴリーに指定された活動を達成するのに要求される支援の量についてスコアを付けられる。次いでカテゴリーのスコアが合計されて、全体的な活動スコアが得られる。BIスケールの異なるバージョンの中で、カテゴリーは一貫しているが、依存性の程度に割り当てられる数値は多様であり、その結果、最低および最大の合計スコアは、使用されるバージョンで変動する。例えば、いくつかのバージョンでは、スコアは、0〜20の範囲であり、一方、他のバージョンでは、スコアは、0〜100の範囲であるが、すべてのバージョンにおいて、スコアが高いほど、対象が独立して機能する能力が大きい。
【0065】
NIH脳卒中スケール(NIHSS)は、意識、言語、無視、視野損失、外眼運動、運動力、失調症、構音障害、および感覚消失のレベルに対するICH、脳卒中、または他の脳傷害の効果を評価するのに使用される15項目の神経学的診察脳卒中スケールである。訓練を受けた観察者が、質問に答え、活動を実施する対象の能力を評価する。各項目のレーティングは、0を正常として3〜5グレードでスコアを付ける。0のスコアは、脳卒中症状無しを示し、1〜4のスコアは、軽微な脳卒中を示し、5〜15のスコアは、中等度の脳卒中を示し、16〜20のスコアは、中等度〜重度の脳卒中を示し、21〜42のスコアは、重度の脳卒中を示す。
【0066】
修正ランキンスケール(mRS)は、ICH、脳卒中、または他の脳傷害後の身体障害または対象の1日の活動における依存性の程度を測定する。スコアは、0〜6の範囲であり、0は、神経学的欠損の症状無しを示し;1は、いくつかの症状の存在にもかかわらず、著しい身体障害無しを示し;2は、わずかな身体障害(例えば、独立して機能することができるが、すべての以前の活動を続けることができない)を示し;3は、中等度の身体障害(例えば、いくらかの補助を必要とするが、支援無しで歩くことができる)を示し;4は、中等度の身体障害(例えば、支援無しで身体ニーズに応じる、または歩くことができない);5は、重度の身体障害(例えば、一定の介護を必要とする、寝たきり、失禁)を示し、6は、死亡を示す。
【0067】
いくつかの実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、神経学的障害評価ツールを使用して測定される場合、ICHによって引き起こされる神経学的障害を低減するのに有効である。いくつかの実施形態によれば、神経機能評価ツールとしては、グラスゴー昏睡スコア(GCS)、グラスゴー転帰スケール拡張版(GOS−E)、バーセルインデックス(BI)、NIH脳卒中スケール(NIHSS)、または修正ランキンスケール(mRS)がある。他のものの使用も可能である。GCS、GOS、GOS−E、BIが使用される場合、神経学的障害の低減は、スコアを上昇させることによって反映される。
【0068】
いくつかの実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、グラスゴー昏睡スコアでの対象のスコアを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12上昇させるのに有効である。他の実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、その拡張版を含めたグラスゴー転帰スケールでの対象のスコアを1、2、3、4、5、6、または7上昇させるのに有効である。さらに他の実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、バーセルインデックスでの対象のスコアを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20、またはより広いスコア範囲が使用される場合、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくはそれ以上上昇させるのに有効である。
【0069】
NIHSSまたはmRSが使用される場合、神経学的障害の低減は、スコアを減少させることによって反映される。いくつかの実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、NIH脳卒中スケールでの対象のスコアを、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、または42低減するのに有効である。
【0070】
修正ランキンスケールは一般に、ICHによって引き起こされる対象の身体障害または依存性の程度を評価するのに使用される。いくつかの実施形態では、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、平均mRSスコアを、約5と6の間から約4と5の間、約4と5の間から約3と4の間、約3と4の間から約2と3の間、約2と3の間から約1と2の間、約1と2の間から約0と1の間に低減するのに有効である。他の実施形態では、治療無しと比較して、有効用量のFXaバリアントでICH対象を治療すると、約5と6の間から約3と4の間、または約3と4の間から約1と2の間への平均mRSスコアの低減を経験する対象の比率が増大する。
【0071】
他の実施形態では、治療無しと比較して、有効用量のFXaバリアントでICH対象を治療すると、5もしくは6の修正ランキンスケールスコアを有する対象の比率が0、1、2、3、もしくは4のスコアを有するものと比較して低減し、または、4、5、もしくは6のスコア(不良と特徴付けられる)を有する対象の比率が0、1、2、もしくは3のスコアを有する(良好と特徴付けられる)対象と比較して低減する。他の実施形態では、治療無しと比較して、有効用量のFXaバリアントでICH対象を治療すると、2、3、4、5、または6のスコアを有する対象の比率が0または1のスコアを有するものと比較して低減する。そして他の実施形態では、治療無しと比較して、有効用量のFXaバリアントでICH対象を治療すると、2、3、4、または5のmRSスコアから6のmRSスコアに進行する対象の比率が低減する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICH対象を治療することは、治療の結果として神経学的障害が低減されたICH対象の比率を、未治療の対照ICH対象と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上増大させるのに有効である。
【0073】
神経学的障害の評価は、ICHを治療した後の様々な時間で評価ツールを使用して実施することができる。例えば、神経学的障害は、FXaバリアントでICHを治療して7日、10日、14日、20日、21日、28日、30日、40日、50日、60日、70日、80日、もしくは90日、またはそれ以上の後に測定することができる。治療後の他の時間における測定も、当業者の知識によれば可能である。
【0074】
ICH後の浮腫を予防または低減する方法
ICHに続発する血腫周囲の浮腫(PHE)も、患者の死亡率の一因となりうる。操作のいずれの特定の理論にも束縛されることは望まないが、最初の傷害後の凝固の生成物および血腫分解は、出血周辺の脳組織の損傷の二次カスケードを開始し、PHEを発症させると考えられる。浮腫は、平均して下にある血腫の体積の約2倍になり、頭蓋内圧の増大、およびヘルニア形成などの腫瘤効果の一因となりうる。参照により組み込まれている、D.Staykovら、Stroke、42:2625〜2629(2011)。浮腫体積の増大は、死亡および身体障害と正に相関する。参照により組み込まれている、D.H.Arimaら、Neurology、73:1963〜1968(2009)。浮腫体積は、本明細書の他で記載されている神経画像処理技法、例えば、MRIまたはCTスキャニングを使用して測定することができる。
【0075】
本開示は、ICHを経験した、ヒト患者を含めた対象に、酵素原性を有する治療有効量のFXaバリアントを投与することによって、ICHに関連する血腫周囲の浮腫(PHE)を予防し、または減衰させるための方法も提供する。いくつかの実施形態では、FXaバリアントは、FXa
I16Lである。治療有効用量のFXaバリアントで治療した後の浮腫体積は、FXaバリアントで治療されていないICH患者の浮腫体積と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上低減されうる。いくつかの実施形態では、浮腫体積は、FXaバリアントがICH対象に投与される直前に、神経画像処理または当業者によく知られている他の技法を使用して測定される。次いで浮腫体積は、FXaバリアントでの治療が始まった後に少なくとも1回測定されて、もしあれば、浮腫体積の変化が監視される。ある特定の実施形態では、浮腫体積は、浮腫体積変化を監視するために、FXaバリアントでの治療が始まって1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、18時間、24時間、48時間、72時間、96時間、5日、6日、7日、14日、21日、またはそれ以上の後に測定することができる。
【0076】
他の実施形態によれば、脳組織の圧迫によって引き起こされる頭蓋内圧の増大またはヘルニア形成などのPHEの後遺症の発生率または重症度は、ICH患者に酵素原性を有する治療有効量のFXaバリアントを投与することによって低減されうる。いくつかの実施形態では、FXaバリアントは、FXa
I16Lである。治療有効用量のFXaバリアントで治療されたICH患者におけるPHEの後遺症(それだけに限らないが、浮腫またはヘルニア形成を含む)の発生率または重症度は、FXaバリアントで治療されていないICH患者のものと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上低減されうる。
【0077】
血腫拡大を低減または予防する方法
ICHによって引き起こされた初期の出血の後、ICH患者の約30%が出血し続け、著しく血腫が拡大する。BrouwersおよびGreenberg、Cerebrovasc.Dis.、35:195〜201(2013)。残念ながら、血腫拡大は、より悪い患者転帰に関連する。Davis(2006);Dowlatshahiら、Neurology、76:1238〜1244(2011)。ICH患者のこの亜集団を治療するために、本開示のFXaバリアントを含む組成物を、血腫拡大を低減し、またはさらには予防するのに有効な用量で投与することができる。
【0078】
血腫体積を、最初にICH後に、次いでそれが経時的に変化する際に測定するための様々な技法が、当業者によく知られている。非限定例としては、脳撮像技術、例えば、CT、CTA、MRI、またはMRAなどがある。特定の方法としては、ABC/2、C値が調整されたABC/2、面積測定、および3D体積レンダリングがある。脳スキャン中に収集されるデータに基づいて体積を計算するコンピューターソフトウェアの使用は、一般的である。
【0079】
血腫体積は、ICHを決定的に診断するのに使用される最初の脳スキャンで収集されるデータに基づいて計算することができ、それによってベースライン体積が確立される。血腫体積は、その後1つまたは複数の所定の時間でさらに求めて、血腫体積が静的であるか、または拡張しているか、もし拡張している場合、どれくらいの割合であるかを監視することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、血腫拡大は、ベースライン脳スキャン後の1つまたは複数の所定の時間における体積のパーセント増大として定量化することができる。ベースラインと比較したある時間にわたる血腫体積の限定されない例示的な相対的増大としては、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、またはそれ以上がある。他の実施形態では、血腫拡大は、ベースライン脳スキャン後の1つまたは複数の所定の時間における体積の絶対的増大として定量化することができる。ベースラインと比較したある時間にわたる血腫体積の限定されない例示的な絶対的増大としては、約1ミリリットル(ml)、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、3.5ml、4ml、4.5ml、5ml、5.5ml、6ml、6.5ml、7ml、7.5ml、8ml、8.5ml、9ml、9.5ml、10ml、10.5ml、11ml、11.5ml、12ml、12.5ml、13ml、13.5ml、14ml、14.5ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、22ml、24ml、26ml、28ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、またはそれ以上がある。
【0081】
非限定例では、血腫体積は、血腫体積のベースラインを測定して約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、またはそれ以上後に測定して、体積が増大したか否か、もし増大した場合、どれくらいの量であるかを決定することができる。同じ対象の複数のスキャンを取って、より高い解像度で経時的に血腫拡大を追跡することができる。
【0082】
ある特定の限定されない実施形態によれば、血腫拡大は、血腫体積の増大の計算値が、存在する場合、絶対的な体積基準または体積の相対的なパーセンテージ増大に対してある閾値を超えるとき起こると定義することができる。したがって、例えば、血腫拡大は、ベースラインと比較した体積が、所定の時間後に3ミリリットル(ml)以上、6ml以上、もしくは12.5ml以上、または絶対体積のいくらかの他の増大によって増大した場合、起こると言うことができる。代わりに、血腫拡大は、ベースラインと比較した体積が、所定の時間後に15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、33%以上、または体積のいくらかの他のパーセンテージ増大によって増大した場合、起こると言うことができる。
【0083】
いくつかの実施形態によれば、有効用量の本開示のFXaバリアント(例えば、FXa
I16L)でICHを有する対象を治療することは、もし治療しなければ例えば未治療の対照において起こる血腫拡大を低減または予防するのに有効である。いくつかの実施形態では、ICH対象は、ICHを提示する前に抗凝固剤療法を受けていた、または受けている。いくつかの他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、もし治療しなければある時間にわたって起こるはずである血腫体積の平均拡大を、未治療の対照と比較して、少なくとも1ml、1.5ml、2ml、2.5ml、3ml、3.5ml、4ml、4.5ml、5ml、5.5ml、6ml、6.5ml、7ml、7.5ml、8ml、8.5ml、9ml、9.5ml、10ml、10.5ml、11ml、11.5ml、12ml、12.5ml、13ml、13.5ml、14ml、14.5ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、22ml、24ml、26ml、28ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、またはそれ以上低減するのに有効である。他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、もし治療しなければある時間にわたって起こるはずである血腫体積の平均拡大を、未治療の対照と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%低減するのに有効である。さらに他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、もし治療しなければある時間にわたって起こるはずである血腫体積の平均拡大を、未治療の対照と比較して、約5%〜15%、約10%〜20%、約15%〜25%、約20%〜30%、約25%〜35%、約30%〜40%、約35%〜45%、約40%〜50%、約45%〜55%、約50%〜60%、約55%〜65%、約60%〜70%、約65%〜75%、約70%〜80%、約75%〜85%、約80%〜90%、約85%〜95%、または約90%〜100%低減するのに有効である。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、血腫拡大を経験する対象の比率を低減するのに有効である。いくつかの実施形態では、比率は、約30%以上から約25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、または5%以下に低減される。他の実施形態では、本開示のFXaバリアントで治療すると、ある時間にわたって血腫拡大を経験するICH対象の比率が、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減される。
【0085】
他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、血腫体積がある時間にわたって3ml以上、6ml以上、もしくは12.5ml以上(またはいくらかの他の量以上)増大した対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。さらに他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、血腫体積がある時間にわたって15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、33%以上(またはいくらかの他のパーセンテージ以上)増大した対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。
【0086】
CT血管造影または他の方法を使用して同定されるいわゆる「スポットサイン」の存在は、血腫拡大およびより悪い患者転帰と関連し、これらを予測するものである。血腫拡大のスポットサインの予測値は、症状を開始して6時間超後に病院に現れる患者でさえ存在する。Brouwersら、Neurocrit Care、17:421〜428(2012)。
【0087】
スポットサインは、急性原発性実質血腫内でコントラストが促進された1つまたは複数の小病巣である。操作のいずれの特定の理論にも束縛されることは望まないが、スポットサインの存在は、活性な血管外遊出に起因すると考えられる。Wadaら、Stroke、38:1257〜1262(2007);Brouwersら、Stroke、43:3427〜3432(2012);Demchukら、Lancet Neurol.、11:307〜314(2012)。
【0088】
スポットサイン特性に基づくスコアシステムが、スポットサイン数、最大軸方向寸法、および最大減衰に基づいて提案された。Delgadoら、Stroke、40:2994〜3000(2009)。スポットサインが存在する場合、スコアは、それぞれが、サイズが5mm未満であり、180HU未満の減衰を呈する1つまたは複数のスポットサインの存在に対応する1から、最大のものが、軸方向寸法が5mm以上であり、180HU以上の最大減衰を呈する、3つ以上のスポットサインの存在に対応する最大4の範囲である。ゼロのスコアは、スポットサインがまったく存在しなかったことを示す。このスコアは、血腫拡大のリスクと高度に相関する。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、特定のスポットサインスコアを伴うICHを有する対象は、本開示のFXaバリアントで治療されうる。したがって例えば、ICHおよび4、3、2、または1のスポットサインスコアを有する対象は、本開示のFXaバリアントで治療されうる。他の実施形態では、FXaバリアントでICH対象を治療すると、特定の対象におけるスポットサインスコアが低減する。したがって、例えば、4のスポットサインスコアを最初に提示するICH対象は、FXaバリアントを用いた治療の結果として、自分のスコアを3、2、1、または0に低減させることができる。3のスポットサインスコアを最初に提示するICH対象は、FXaバリアントを用いた治療の結果として、自分のスコアを2、1、または0に低減させることができる。2のスポットサインスコアを最初に提示するICH対象は、FXaバリアントを用いた治療の結果として、自分のスコアを1、または0に低減させることができる。そして1のスポットサインスコアを最初に提示するICH対象は、FXaバリアントを用いた治療の結果として、自分のスコアを0に低減させることができる。
【0090】
ある特定の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、4のスポットサインスコアを提示する対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、3のスポットサインスコアを提示する対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。他の実施形態によれば、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、2のスポットサインスコアを提示する対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、1のスポットサインスコアを提示する対象の比率を、未治療の対照と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低減するのに有効である。そしてさらに他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、0のスポットサインスコアを提示する対象の比率を、未治療の対照と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、またはそれ以上増大させるのに有効である。他の実施形態によれば、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、任意のスポットサインの発生率を、約5%〜15%、約10%〜20%、約15%〜25%、約20%〜30%、約25%〜35%、約30%〜40%、約35%〜45%、約40%〜50%、約45%〜55%、約50%〜60%、約55%〜65%、約60%〜70%、約65%〜75%、約70%〜80%、約75%〜85%、約80%〜90%、約85%〜95%、または約90%〜100%低減するのに有効である。
【0091】
ある特定の実施形態によれば、スポットサインスコアは、本開示のFXaバリアントを投与する前または後の所定の時間での神経画像処理後に判定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、スポットサインスコアは、FXaバリアントを最初に投与後、または後続の投与後、30分、45分、60分、75分、90分、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、18時間、24時間、30時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、18日、3週間、4週間、またはいくつかの他の時間に判定される。
【0092】
ICHのリスクファクターを有する患者を治療する方法
ICHのリスクの増大の一因となる様々なヒト患者リスクファクターが同定されている。それぞれの全体が参照により組み込まれている、Intracerebral Hemorrhage、JR Carhuapomaら編(Cambridge:Cambridge University Press、2010)のML Flahertyら、「The epidemiology of intracerebral hemorrhage」;Brouwersら、Neurocrit Care、17:421〜428(2012);Appelboomら、J.Stroke Cereb Dis.、22:713〜717(2013)。ある特定の実施形態によれば、本開示のFXaバリアント、例えば、FXa
I16Lを、1つまたは複数のICHリスクファクターを有するヒトICH患者に、このような患者におけるICHを治療または予防するように治療有効量で投与することができる。
【0093】
年齢は、最も重要なリスクファクターであり、IHCの割合は、年齢60歳を超える人の間で劇的に増大する。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために年齢60歳以上の患者に投与される。
【0094】
対照的に、高血圧は、ICHの最も重要な修正可能なリスクファクターであり、ICH患者の70%超で存在する。未治療の高血圧は、治療によって制御された高血圧より大きいリスクファクターであり、自分の薬物療法を中断する治療下の高血圧患者は、自分の薬物療法に留まる高血圧患者より大きいリスクを有する。高血圧は、大脳半球深部領域および脳幹領域における出血、ならびに大葉性ICHのリスクファクターである。ICHリスクファクターとしての高血圧の相対的なインパクトは、高齢の患者と比較して若い患者において大きい。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために高血圧患者に投与される。
【0095】
違法な交感神経興奮薬、例えば、コカインおよびアンフェタミンの使用は、ICHと関連してきた。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、違法な交感神経興奮薬を使用したICH患者に投与される。
【0096】
脳アミロイド血管障害(cerebral amyloid angiopathy、CAA)も、高齢者における大葉性ICHの重要なリスクファクターである。CAAは、軟膜動脈、細動脈、毛細血管、および時に静脈の中膜および外膜中のアミロイドタンパク質の堆積によって特徴付けられる。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために、脳アミロイド血管障害を有する患者に投与される。
【0097】
アポリポタンパク質E(Apolipoprotein E、APOE)ε2およびε4対立遺伝子は、潜在的にCAAにおけるこれらの遺伝子の関与の結果として、大葉脳領域内のICHの独立したリスクファクターである。参照により組み込まれている、Brouwersら、Stroke、43:2120〜2125(2012)。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa I16Lは、ICHを治療または予防するために、APOE対立遺伝子ε2またはε4を有する患者に投与される。
【0098】
動静脈奇形(arteriovenous malformations、AVM)、海綿状奇形、硬膜動静脈瘻、静脈奇形、および毛細血管拡張症を含めた血管奇形はすべて、ICHに関連する。桑実状動脈瘤も、これらが、より一般的であるくも膜下腔内と対照的に脳実質内に出血する場合、ICHを引き起こしうる。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa I16Lは、ICHを治療または予防するために、血管奇形を有する患者に投与される。
【0099】
虚血性脳卒中を予防するためのワルファリンなどの抗凝固剤の使用は、ICHの発生率の増大に関連する。抗凝固処理患者におけるICHの相対リスクは、一般的な集団と比較して約7〜10倍大きい。関連して、心筋梗塞または虚血性脳卒中において血栓溶解を行うための血栓溶解剤および抗凝固剤の使用は、ICHの小さいが増大したリスクに関連する。心筋梗塞の血栓溶解では、出血の大部分は、脳の大葉領域内である。アスピリンまたはクロピドグレルなどの抗血小板薬の使用も、ICHの軽微なリスクファクターである。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために、抗凝固剤(例えば、ワルファリン)または抗血小板(例えば、クロピドグレル)薬を服用している患者に投与される。
【0100】
グラディエントエコーMRIで検出される脳実質内のマイクロブリードは、ICHを罹患している患者において一般的であり、小血管疾患およびICHを起こしやすい状態のマーカーと考えられている。さらに、従前の脳梗塞は、ICHのリスクの5倍〜22倍の増大と関連する。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために、脳のマイクロブリードを有する、または従前の脳梗塞を有した患者に投与される。
【0101】
低コレステロール血症は(虚血性脳卒中のリスクファクターである高コレステロール血症と対照的に)、ICHのリスクファクターである。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために、低コレステロール血症を有する患者に投与される。
【0102】
ICHの追加のリスクファクターには、血腫拡大と関連してきたアルコールの大量摂取、および喫煙が含まれる。糖尿病も、ICHの軽微なリスクファクターであると考えられている。したがって、本開示のいくつかの方法では、FXaバリアント、例えば、FXa
I16Lは、ICHを治療または予防するために、アルコールを乱用し、もしくはタバコを使用する患者、または糖尿病患者に投与される。FXa
I16L、または別のFXaバリアントは、ICHを治療または予防するために、外傷、感染、または腫瘍がICHの唯一のまたは一因となる原因である患者にも投与することができる。
【0103】
ICHに関連する治療の他の方法
他の実施形態では、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、対象におけるICHによって引き起こされる身体障害を低減するのに有効である。身体障害の非限定例としては、車を運転する、支援無しで自分の世話をする、働く、読む、話す、動く、歩く、他の人と対話することの不能、またはその能力の低減もしくは障害、あるいは他のタイプの身体障害がある。
【0104】
他の実施形態によれば、本開示のFXaバリアントでICHを有する対象を治療することは、このような対象の臨床状態を改善するのに有効である。臨床状態改善の非限定例としては、リハビリテーション施設に解放される前の入院の日数の低減(例えば、入院の1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の日数の低減);患者の状態の重症度の格下げ(例えば、危篤から重篤以上、重篤から小康状態以上、小康状態から良好);ICH患者が神経集中治療室に入っている日数の低減(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の日数);またはICH患者が、自力で呼吸する能力を回復する前に人工呼吸器によって支援される必要がある日数の低減(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の日数)がある。
【0105】
ICHの治療または予防のためのFXaバリアントの投与
FXa
I16LなどのFXaバリアントは、ICH症状の開始後、またはICHの診断が確認された後、可能な限り早く患者に投与されるべきである。本明細書に言及したように、ある特定の症状の提示によりICHが疑われる場合があり、神経画像処理によって、例えば、MRIまたはCTスキャニングによって確認することができる。本開示のある特定の実施形態によれば、FXaバリアントは、ICHの症状の開始後、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1時間、またはそれ未満以内に患者に投与される。他の実施形態では、FXaバリアントは、神経画像処理または当業者によく知られている他の技法によってICHの診断が確認された後、8、7、6、5、4、3、2、1時間、またはそれ未満以内に患者に投与される。
【0106】
ICHを治療または予防するのに十分なFXaバリアントの標的血漿濃度を実現することは、当業者の知識の範囲内である。非限定例では、対象の血漿量または他のパラメータなどの関連した薬物動態パラメータの推定は、対象の性別、身長、および体重、または他の要因に基づいて行い、標的濃度を実現するのにどれくらいのFXaバリアントが投与される必要があるかを計算するのに使用することができる。FXaバリアントを投与した後、血漿濃度は、当業者の知識に従って監視することができ、この情報を任意の所望の範囲内で濃度を維持するのに使用することができる。
【0107】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的な応答)をもたらすように調整することができる。例えば、単回ボーラスを投与することができ、いくつかの分割量を経時的に投与することができ、または治療状況の緊急性によって示される場合、用量を比例して低減または増加させることができる。
【0108】
投与量値は、使用される特定のFXaバリアント、およびこれが単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用されるかどうか、治療される集団、亜集団、または個々の対象のユニークな特性、ならびに意図される特定の治療または予防効果などの要因に応じて変動しうる。投与量値に影響しうる他の要因も、当業者によって理解されるであろう。さらに、任意の特定の対象について、特定の投薬レジメンは、個々の必要性、およびFXaバリアント組成物を投与し、またはその投与を監督する医療提供者の専門的な判断によって経時的に調整される必要がありうる。したがって、本明細書に示した投与量範囲は、例示的であるだけであり、主張したFXa組成物またはこれらの使用の方法の範囲または実行を限定するように意図されていない。
【0109】
ある特定の実施形態では、本開示のFXaバリアントの治療または予防有効量は、約0.0001〜50mg/kg、約0.001〜50mg/kg、約0.001〜5mg/kg、約0.001〜0.5mg/kg、約0.001〜0.05mg/kg、約0.01〜5mg/kg、または約0.01〜0.5mg/kgである。他の実施形態では、本開示のFXaバリアントの治療または予防有効血中または血漿濃度は、約0.0003〜300nM、約0.003〜300nM、約0.03〜300nM、約0.003〜30nM、約0.03〜30nM、または約0.3〜3nMである。他の用量、または血中もしくは血漿濃度も可能である。例えば、血液または血漿中のFXaバリアントの濃度は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定されうる。
【0110】
FXaバリアントは、例えば、十分な治療または予防効果が実現されるまで、対象に1回または複数回、このようなバリアントを含む組成物で投与することができる。複数の投与が使用される場合、これらは、毎時間、毎日、または例えば、複数の一日量を含めた任意の他の適切な間隔で投与することができる。複数回用量は、10分毎、15分毎、20分毎、30分毎、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、毎日3回、毎日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週1回などのスケジュールで、またはいくつかの他のスケジュールで投与することができる。FXaバリアントは、例えば、ミニポンプを介して連続的に投与されてもよい。FXaバリアントは、例えば、非経口経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)を介して投与されてもよい。FXaバリアントは一般に、本明細書に記載の医薬組成物の一部として投与されることになる。
【0111】
FXaバリアントの投与は、対象の監視と組み合わせることによって、浮腫または血腫拡大などの対象のICHおよび効果を最適に治療する投与量レジームをカスタマイズすることができる。したがって、いくつかの実施形態によれば、ある用量のFXaバリアントは、脳内出血、浮腫、または血腫拡大が停止し、または少なくとも減少したか否かを判定するためにその後神経画像処理を受けるICH対象に投与される。スキャン結果が、出血、浮腫、または血腫拡大が停止してない、または少なくとも十分に改善されていないことを示す場合、さらなる用量のFXaバリアントを投与することができる。脳内出血、浮腫、または血腫拡大に対するFXaバリアントの効果を評価するために反復して投薬し、対象を監視するプロセスは、対象の状態が十分に改善されるまで継続することができる。投薬と監視の適当な間隔は、当業者の知識によって決定することができる。非限定例としては、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、5時間、6時間、またはそれ以上がある。
【0112】
別の実施形態では、本開示のFXaバリアントは、少なくとも第2の活性治療剤とともに共投与されうる(組合せ療法)。いくつかの実施形態では、第2の作用物質は、本開示の異なるFXaバリアントでありうる。他の実施形態では、第2の作用物質は、例えば、第IX因子、第XIa因子、第XIIa因子、第VIII因子、第VIIa因子、凝固促進組成物、例えば、FEIBAもしくはプロトロンビン複合体濃縮製剤(prothrombin complex concentrate、PCC)など、または抗線維素溶解剤、例えば、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、もしくはアプロチニンなどを含めた別の凝固因子またはそのバリアントでありうる。
【0113】
本開示のFXaバリアントが少なくとも第2の治療剤とともに共投与される場合、これらは、同じ組成物で同じ時間に一緒に、または別個の組成物で同時にもしくは順次投与することができる。代わりに、FXaバリアントおよび少なくとも第2の治療剤は、別個の組成物で異なる時間に投与することができる。FXaバリアントを含む組成物は、少なくとも第2の治療剤を含む組成物の前または後に投与することができる。逐次投与間の間隔は、ある特定の実施形態では、同じ日に行われるFXaバリアントおよび第2の治療剤の投与によって変動しうる。例えば、FXaバリアントは、1日おきに1回投与することができ、一方、第2の治療剤は、FXaバリアントと同じ時点で、または両作用物質が投与される日の異なる時間に1日1回投与される。
【0114】
組合せ療法は、毎時間、毎日、または毎週、複数回投与されうる。投与は、は、10分毎、15分毎、20分毎、30分毎、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、5時間毎、6時間毎、毎日3回、毎日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週1回などのスケジュールで、またはいくつかの他のスケジュールで施すことができる。FXaバリアントは、例えば、ミニポンプを介して連続的に投与されてもよい。組合せ療法は、例えば、非経口経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内)を介して投与されてもよい。
【0115】
他の実施形態では、本開示のFXaバリアントは、ICHを治療するのに有効であると考えられる別の療法に合わせて投与することができる。非限定例では、FXaバリアントは、薬物が、ICHを有する対象の血圧もしくは頭蓋内圧を低減するために投与される前、これらととともに、もしくはこれらの後に、またはICHによって引き起こされた血腫を除去するなどのための手術の前、それととともに、もしくはその後に投与することができる。他の例では、FXaバリアントは、それぞれがICHを伴いうる発作または発熱を予防または治療するための薬物の前、これらとともに、またはこれらの後に投与することができる。参照により組み込まれている、R.SahniおよびJ.Weinberger、Vasc Health Risk Manag、3:701〜709(2007)。
【0116】
さらなる態様では、本開示は、対象におけるICHを治療または予防するのに使用するためのFXaバリアントを含む組成物を提供する。組成物は、薬学的に許容できる担体、ビヒクル、または生理学的に適合性である他の成分を含みうる。このような担体、ビヒクル、および他の成分の非限定例としては、溶媒(例えば、水、エタノール、生理食塩水、リン酸緩衝溶液)、界面活性剤、表面活性剤、分散媒質、コーティング剤、抗菌剤または抗真菌剤、等張化剤、吸収遅延剤、糖(例えば、スクロース、デキストロース、ラクトース)、多価アルコール(例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、緩衝剤、およびFXaバリアントの安定性または有効性を増強することができる作用物質がある。
【0117】
本開示によって使用するための組成物は、溶液(例えば、注射用溶液および注入用溶液)などの対象に投与するための任意の適当な形態でありうる。組成物は、例えば、バイアルまたはプレフィルドシリンジ内の、対象に投与する準備ができているプレミックスフォーマットで提供することができる。このようなフォーマットは、投与前に希釈剤で再構成することを必要としない。代わりに、組成物は、投与前に希釈剤(例えば、滅菌水または生理食塩水)での再構成を必要とする凍結乾燥形態で提供することができる。後者の場合、希釈剤は、別個の容器で凍結乾燥物とともに提供されうる。当業者の知識によれば、組成物は、冷蔵下で、または室温で貯蔵するために製剤化することができる。組成物の形態は、意図される投与モードに少なくとも部分的に依存する。ある特定の実施形態では、投与モードは、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内の投与を含めた非経口である。
【0118】
非経口組成物および他のタイプは、投与の容易さおよび投与量の均一性のために単位剤形で製剤化してもよい。単位剤形は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0119】
治療用組成物は一般に、滅菌されていなければならず、かつ製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液として、リポソーム、または高薬物濃度に適した他の指定された構造で製剤化することができる。滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せとともに、適切な溶媒中で必要量でFXaバリアントを組み込み、その後濾過滅菌することによって調製されうる。一般に、分散液は、基本分散媒、および上記に列挙したものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製用滅菌粉末の場合では、調製の好適な方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それにより、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が、これらの先に滅菌濾過した溶液から生じる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合における要求される粒径の維持、および表面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0120】
本開示は、FXaバリアント、またはこのようなFXaバリアントを含む組成物を含むキットも提供する。キットは、診断剤または1つもしくは複数の追加の治療剤をさらに含みうる。キットは、治療法で使用するための指示書、および包装材も含みうる。キットは、医療提供者が都合よく投与するために設計された容器内に1つまたは複数の単位用量形態をさらに含みうる。非限定例としては、バイアルまたはプレフィルドシリンジがある。凍結乾燥組成物用希釈剤も含めることができる。
【0121】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示的な目的のためだけであり、これらに照らした様々な改変または変更が、当業者に明らかとなり、本発明内に含まれるべきであり、本発明の真の範囲から逸脱することなく行うことができることが理解される。
【実施例】
【0122】
(実施例1)
FXa
I16Lは、正常な血漿中で血栓形成を促進する
FXa
I16Lおよび血漿由来FXa(plasma derived FXa、pdFXa)の活性を、健康なヒト対象から単離したクエン酸プール血漿中で活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time、aPTT)を測定することによって評価した。aPTT試験は、表面活性化物質および希釈したリン脂質をクエン酸血漿に添加することによって実施した。インキュベートして接触因子(第XII因子、第XI因子、プレカリクレイン、および高分子量キニノーゲン)を活性化させた後、カルシウムを添加し、凝固時間を測定した。低レベルのFVaおよびFVIIIaがアッセイ中に生成される。
【0123】
漸増濃度のpdFXaまたはFXa
I16Lを添加すると、凝固時間が用量依存的に短縮した。FXa
I16LおよびpdFXaについて計算された推定EC
50は、それぞれ、45ng/mLおよび9ng/mLであった。
【0124】
FXa
I16Lの活性を、正常なマウス、ラット、およびカニクイザルから単離したクエン酸血漿中でさらに検査した。凝固時間を、aPTTアッセイを使用して測定した。ヒト血漿で観察されたものと同様に、FXa
I16L添加は、3つすべての種において凝固時間の用量依存的短縮をもたらした。カニクイザル、マウス、およびラットの血漿中のFXa
I16Lについて計算された推定EC
50は、それぞれ、49、89、および91ng/mLであった。
【0125】
トロンビン生成アッセイ(thrombin generation assay、TGA)では、トロンビン生成の開始相、活性化相、および不活性化相が測定される。TGAは、凝固開始後の経時的な血漿中のトロンビン生成を測定するものであり、以前に記載されたように実施した(その全体が本明細書に参照により組み込まれている、Bunceら、Blood、117:290〜298(2011))。これらの試験で使用した条件下で、1pMの組織因子(tissue factor、TF)を、凝固を開始するのに使用した。トロンビン生成(thrombin generation、TG)は、健康な対象から単離した血小板乏クエン酸ヒト血漿中で測定した。実験の60分の時間経過にわたって、FXa
I16LまたはpdFXaを添加すると、トロンビン生成が用量依存的に増大した(
図1A、
図1B)。ビヒクル処置ヒト血漿と比較して、遅延時間(開始相)の短縮がpdFXaおよびFXa
I16Lについてともに観察された。しかし、絶対数において、FXa
I16Lの遅延時間は、pdFXaと比較してより長かった(
図1C)。TGA遅延時間に対する記載した効果に関してFXa
I16Lについて計算された推定EC
50は、9ng/mLであった。FXa
I16LおよびpdFXaについてのピークトロビン生成は同様であり、ピークトロンビン濃度は、それぞれ、233〜352nMおよび198〜349nMであった。
【0126】
上記に要約したデータは、FXa
I16Lが、ヒトを含めた非血友病動物に由来する血漿中で血栓形成を促進するのに有効であることを実証する。
【0127】
(実施例2)
FXa
I16Lは、非血友病げっ歯類動物出血モデルにおいて止血を生じさせる
FXa
I16Lの非血友病動物において止血を生じさせる能力を、非血友病マウスおよびラットにおける尾切断傷害後の失血に対する効果を測定することによって試験した。尾クリップは、凝固系を刺激する重度の出血を引き起こす。
【0128】
FXa
I16Lを、様々な用量(0、1、10、25、50、100、および200μg/kg)で正常なC57B1/6マウスに静脈内投与した。2分後、尾を末端からから3mm横切し、止血までの全失血をマイクロリットル(μl)で測定した。対照マウスにビヒクルを注射した。結果を
図2Aに示す。図中、データは、平均±標準誤差として提示されており、「
*」は、p値<0.05における統計的有意性を示し、「
***」は、p値<0.001における統計的有意性を示す。ビヒクルについて、5匹の動物を試験した。様々な用量のFXa
I16Lを投与される動物については、6匹を1μg/kgで試験し、8匹を10μg/kgで試験し、8匹を25μg/kgで試験し、6匹を50μg/kgで試験し、8匹を100μg/kgで試験し、5匹を200μg/kgで試験した。
【0129】
尾切断前にFXa
I16Lで処置すると、ビヒクル処置マウスと比較して、全失血が、12%(1μg/kg)、16.6%(10μg/kg)、26.7%(25μg/kg)、45.3%(50μg/kg)、62.9%(100μg/kg)、および69.6%(200μg/kg)、用量依存的に減少した。推定ED
50は、46μg/kgであった。
【0130】
第2の試験では、正常な雄CD−1マウスを25μg/kgのFXa
I16Lまたはビヒクルで処置して2分後に、血漿凝固活性を、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイおよびトロンビン生成アッセイ(TGA)を使用して測定した。処置された動物に由来する血漿では、aPTTは、67%短い凝固までの時間を示し、TGA遅延時間は、85%短縮された。10μg/kgもしくは25μg/kgのFXa
I16L、またはビヒクルで処置されたCD−1マウス由来の全血中の凝固活性も、TEGを用いて測定した。投薬して2分後、両用量のFXa
I16Lで処置された動物由来の血液のTEG R値は、ビヒクルのみを受けているマウスと比較して70%減少した。
【0131】
FXa
I16Lの止血活性も、尾クリップ重度傷害モデルにおいて、正常な雄スプラーグドーリーラットで試験した。FXa
I16Lで事前処置されたラットは、ビヒクル処置ラットと比較して、5.7%(10μg/kg)、11.3%(30μg/kg)、49.0%(50μg/kg)、63.2%(100μg/kg)、および59.45%(200μg/kg)の出血の用量依存減少を示した。結果を
図2Bに示す。図中、「
*」は、p値<0.05における統計的有意性を示す。合計で5〜7匹のラットを各用量について使用した。方法は、マウスを使用する実験と同様であった。推定ED
50は、38μg/kgであった。全血中のex vivo活性を、TEGを使用して測定した。1、5、10、または30μg/kgのFXa
I16Lでラットを処置して2分後に、ビヒクルのみで処置されたラットと比較して38.2%および43.6%のTEG−R値の減少が、それぞれ用量10μg/kgおよび30μg/kgで観察された。
【0132】
(実施例3)
FXa
I16Lは、ICHのげっ歯類動物モデルにおいて血腫体積を低減する
FXa
I16LをICHのマウスモデルにおいて試験した。このモデルでは、細菌性コラゲナーゼを、脳の線条体中に定位的に注射する。その全体が参照により組み込まれている、F.Schlunkら、Stroke、43:246〜249(2012);C.Foerchら、Stroke、39:3397〜3404(2008)。注射部位付近の毛細血管を囲繞する細胞外マトリックスのタンパク質消化が、連続的な出血(bleeding)によって引き起こされるICH患者の血腫拡大を模倣する出血(hemorrhage)をもたらす。
【0133】
FXaバリアントを使用する実験では、ICHを、マウスの右線条体中への細菌性コラゲナーゼの定位注射によって誘導した。コラゲナーゼを注射して45分後に、FXa
I16Lまたはビヒクルを、様々な用量で静脈内投与した。毛細血管のコラゲナーゼ破壊の結果として脳実質内に漏出した血液の体積を、傷害から24時間後に測定した。その時、血液を血管系から流し、脳を取り出し、ホモジナイズし、ホモジナイズされた脳組織のヘモグロビン含量を、検量線との比較によって定量化した。
【0134】
FXa
I16Lで処置すると、ビヒクルのみで処置されたマウスと比較して、用量応答様式でマウスの血腫体積が低減された。結果を
図3Aに示す。図中、「
*」は、p値<0.05における統計的有意性を示す。推定ED
50=3.05μg/kg。1群当たりの試験した動物は、7から15の間の範囲であった。
図3Bは、用量に関してビヒクルと比較した血腫体積の減少パーセントを示す。
【0135】
マウスで使用したものと同様の方法を使用して、ICHを雄スプラーグドーリーラットにおいて誘導した。コラゲナーゼを注射して15分後に、ラットに様々な用量のFXa
I16L、100U/kgの凝固促進組成物第VIII因子インヒビター迂回活性複合体製剤(Factor eight inhibitor bypass activity、FEIBA)またはビヒクル単独を静脈内投与した。脳ヘモグロビン含量に基づく血腫体積を、傷害から2時間後に決定した。
【0136】
FXa
I16Lで処置すると、ビヒクルのみで処置されたラットと比較して、ラットの血腫体積が低減された。結果を
図4Aに示す。図中、「
*」は、p値<0.05における統計的有意性を示す。
図4Bは、用量に関してビヒクルと比較した血腫体積の減少パーセントを示す。マウスほど顕著ではないが、用量応答性への傾向が明白であった。
【0137】
本明細書で別段の定義のない限り、本発明とともに使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、脈絡による別段の要求のない限り、単数形の用語は、複数存在することを含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、ならびにこれらの技法は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。
【0138】
本発明の方法および技法は一般に、別段の指定のない限り、当技術分野で周知であり、本明細書全体にわたって引用され、論じられている様々な一般的な参考文献、およびより具体的な参考文献に記載されている従来法によって実施される。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Sambrook J.&Russell D.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Wiley,John&Sons,Inc.(2002);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1998);ならびにColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley,John&Sons,Inc.(2003)を参照。酵素反応および精製技法は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載するように、製造者の仕様によって実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに薬化学および製薬化学に関連して使用される命名法、ならびにこれらの実験室手順および技法は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。
【0139】
本明細書に引用したすべての刊行物、特許、特許出願、または他の文献は、各個々の刊行物、特許、特許出願、または他の文献がすべての目的に関して参照により組み込まれるように個々に示されているのと同じ程度に、すべての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0140】
本明細書および特許請求の範囲全体にわたって、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、述べた整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を除外しないことを暗示するように理解されるであろう。