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特開2015-148344潤滑媒体中で200MPaを超える接触圧力において動作する摩擦片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-148344(P2015-148344A)
(43)【公開日】2015年8月20日
(54)【発明の名称】潤滑媒体中で200MPaを超える接触圧力において動作する摩擦片
(51)【国際特許分類】
   F16H 53/06 20060101AFI20150724BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20150724BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20150724BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20150724BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20150724BHJP
【FI】
   F16H53/06
   C23C14/06 F
   C23C14/02 Z
   F16H55/06
   F16C33/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-100771(P2015-100771)
(22)【出願日】2015年5月18日
(62)【分割の表示】特願2009-532877(P2009-532877)の分割
【原出願日】2007年10月19日
(31)【優先権主張番号】0654414
(32)【優先日】2006年10月20日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】506126266
【氏名又は名称】アッシュ・ウー・エフ
(71)【出願人】
【識別番号】507237956
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ジャン・モネ
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】501411097
【氏名又は名称】エコール・セントラル・ドゥ・リヨン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・モーラン−ペリエ
(72)【発明者】
【氏名】フローラン・レドラピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ムリエ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ドネ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・オドゥアール
(72)【発明者】
【氏名】デニス・マズヤー
【テーマコード(参考)】
3J011
3J030
4K029
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011CA05
3J011DA02
3J011JA02
3J011LA08
3J011MA03
3J011PA02
3J011QA04
3J011RA03
3J011SB02
3J011SB12
3J011SB14
3J011SB20
3J011SE02
3J030BA01
3J030BC03
3J030EA22
3J030EB07
4K029AA02
4K029AA22
4K029BA34
4K029BC02
4K029BD03
4K029FA01
(57)【要約】
【課題】潤滑油が差される摩擦部品と高負荷の摩擦媒体との間の弾性流体潤滑型の存在を延長することである。
【解決手段】潤滑媒体中で200MPa超の接触圧力で動作する摩擦部品であって、その表面が、テクスチャされ、テクスチャ前に又はテクスチャ後に、トライボロジー機能のために表面硬化処理にさらされる部品において、前記表面が、所定の形状及び大きさを有するマイクロメートルのキャビティの周期的なネットワークを生成する動作にさらされ、その周期が、弾性流体潤滑型への移動を促進するために前記接触表面の幅に適合することを特徴とする部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑媒体中で200MPa超の接触圧力で動作する摩擦部品であって、その表面が、テクスチャされ、テクスチャ前に又はテクスチャ後に、トライボロジー機能のために表面硬化処理にさらされる部品において、
前記表面が、所定の形状及び大きさを有するマイクロメートルのキャビティの周期的なネットワークを生成する動作にさらされ、その周期が、弾性流体潤滑型への移動を促進するために前記接触表面の幅に適合することを特徴とする部品。
【請求項2】
前記マイクロメートルのキャビティが、穴及び/又は溝からなることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記キャビティの主要な長さが、5から500μmであることを特徴とする請求項1及び2の何れかに記載の部品。
【請求項4】
前記キャビティの深さが、10μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の部品。
【請求項5】
前記キャビティの深さが、3μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の部品。
【請求項6】
前記キャビティの深さが、1μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の部品。
【請求項7】
前記キャビティの周期的なネットワークが、フェムト秒レーザーパルス機械加工法によって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項8】
前記キャビティの周期的なネットワークが、マイクロマシニングによって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項9】
前記キャビティの周期的なネットワークが、前記表面の塑性変形によって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項10】
前記キャビティの周期的なネットワークが、化学的攻撃または電食によって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項11】
前記キャビティの周期的なネットワークが、イオンビーム加工法によって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項12】
前記表面硬化処理が、非晶質炭素(DLC)の薄層の堆積によって得られることを特徴とする請求項1に記載の部品。
【請求項13】
前記キャビティの周期が、接触幅の半分未満であり、前記幅が、好ましくは前記接触表面間の潤滑油膜の厚さの0.1から10倍の間であることを特徴とする請求項1から12の何れか一項に記載の部品。
【請求項14】
自動車分野及び特にエンジン及びギアボックス用における請求項1から13の何れか一項に記載の部品の使用。
【請求項15】
特にレバー型またはタペット型のロッカー部品における処理を実行するための請求項14に記載の使用。
【請求項16】
特に、ギアの歯のタイプの動力伝達部品における処理を実行するための請求項14に記載の使用。
【請求項17】
有利には1μm未満の深さを有するマイクロキャビティを用いることによって、0.5GPa超の最大接触圧力までそれらの動作の全体または部分においてさらされた部品における請求項1から16の何れか一項に記載の使用。
【請求項18】
有利には1μm未満の深さを有するマイクロキャビティを用いることによって、0.8GPa超の最大接触圧力までそれらの動作の全体または部分においてさらされた部品における請求項1から16の何れか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記マイクロキャビティの深さを前記接触表面間の潤滑油膜の厚さの0.1から10倍の間に設定することによる請求項1から18の何れか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磨耗媒体におけるトライボロジーの技術分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、磨耗を減少させ、接線分力の伝達を最小化させるように設計される被覆及び表面処理に関する。
【背景技術】
【0003】
機械部品のトライボロジー性能を改善する多くの解決方法が提案されている。一般的な表面硬化処理と、PVD(物理蒸着)またはPACVD(プラズマアシスト化学蒸着)などの様々な手法によって得られる薄くて硬い層の堆積とは、基本的に区別される。
【0004】
薄くて硬い層の堆積には、遷移金属窒化物(TiN、CrN、TiAlNなど)の堆積、非晶質炭素(DLC)などが言及され得る。機械的な理由に加えて技術的な理由のために、表面被覆のこれらの堆積が一般的に5μmを超えないと考えられる。この厚さを超えると、この層の脆化及び剥離の危険性が生ずるかもしれない。長い時間にわたって薄層の完全な接着及び強度を得ることも重要である。従って、当業者は、約0.04μmの粗さ(Ra)を有する極僅かな表面性状を要求する。
【0005】
従って、従来技術から、表面処理及び真空堆積のトライボロジー性能が若干の粗さを有する表面を有して保証だけされることが考えられる。
【0006】
例えば、米国特許第6,886,521号の教示の言及がなされ、それは、表面粗さパラメータの最大値(Rz)をDLC堆積物の硬度及びその厚さの関数として設定する。
【0007】
トライボロジーの分野では、流体潤滑型(レジーム)の設定において接触表面のトポグラフィーの影響について多くの調査が行われている。そのため、改善された潤滑油支持力によって表面の分離を促進するためにベアリングまたはスラストベアリングのテクスチャを実行することが提案されている。例えば文献US5,952,080及びWO2004/063533の教示の言及がなされる。
【0008】
しかしながら、この解決法が、厳しい接触条件に適合せず、また高負荷の摩擦部品の場合に適合せず、すなわち、この接触圧力が、流体弾性力学型(レジーム)と呼ばれる条件での動作を引き起こすように、表面トポグラフィーの寸法合わせは、単純な問題ではない。相応しくないテクスチャが油膜の圧力の低下を不可避的に引き起こし、表面に不可避的に損傷を与え、それが所望の対象に対して不利に働くように、実際、このテクスチャは、接触表面におけるエッチングパターンに等しいが、ベアリング表面積における大幅な減少を引き起こす。
【0009】
表面テクスチャの原理は、潤滑媒体の若干の負荷の摩擦部品の場合を除いて当業者によって適用されないという結果になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,886,521号明細書
【特許文献2】米国特許第5,952,080号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/063533号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この従来技術の解析に基づいて、本発明が解決しようとする課題の1つは、潤滑油が差される摩擦部品と、高負荷の摩擦媒体、すなわち、例えば200MPa超の接触圧力下で動作する摩擦媒体との間の弾性流体潤滑型の存在を延長するために、摩擦表面のテクスチャの原理を適用することができることである。
【0012】
実際、所定の接触圧力閾値を超えると、潤滑油の粘度の指数関数的な増加(数桁の大きさ)が、その物理挙動を急速に変化させる。次いで、この潤滑油は、状態を変化させ、流体よりも固体の様式に近い様式で挙動する。次いで、接触表面の完全な分離は、極端に粘着性になる潤滑油の動作の下、対向する表面の弾性変形によって可能にされる。これは、弾性流体型と呼ばれる状況を生成する。弾性流体型(レジーム)と根本的に異なる潤滑油及び対向表面の物理的挙動は、それによって、接触における表面テクスチャの最適化が他の潤滑化された界面の場合と大きく異なった方法で生じる理由を説明する。
【0013】
従って、本発明の独創性は、摩擦及び磨耗における、弾性流体型において少なくとも部分的に動作する接触における表面テクスチャの成功的な最適化からなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために、前記表面は、所定の形状及び大きさを有するマイクロメートルのキャビティの周期的なネットワークを生成する動作にさらされ、その周期が、弾性流体潤滑型への移動(passage)を促進するために前記接触表面の幅に適合する。
【0015】
他の特徴によれば、前記マイクロメートルのキャビティは、限定的ではないが有利には穴及び/又は溝からなる。前記キャビティの深さは、10μm以下であり、有利には3μm以下であり、さらに有利には1μm以下である。これらのキャビティの主要な長さは、5から500μmである。
【0016】
本発明の特徴によるテクスチャ表面を得るための課題を解決するために、前記キャビティの周期的なネットワークは、特にフェムト秒レーザーパルス機械加工法によって、イオンビーム加工法によって、マイクロマシニングによって、塑性変形によって、化学的攻撃によって、または電食によって得られる。
【0017】
有利には、その表面がテクスチャされた摩擦部品は、テクスチャ前またはテクスチャ後に、トライボロジー機能を有する表面硬化処理にさらされる。この処理は、弾性流体潤滑への高負荷の摩擦部品の移動の前に表面の損傷を制限し、摩擦係数を低下させるために、有利には非晶質炭素(DLC)の薄層の堆積によって得られる。
【0018】
上述のように、摩擦表面のテクスチャは、様々な方法で得ることができる。フェムト秒レーザーパルスは、マイクロ構造を大幅に変化させることなく昇華によって物体を除去する働きをする。しかしながら、マイクロマシニング技術(リソグラフィ、マイクロエロージョン)、表面塑性変形(刻み付け(ナーリング)、マイクロパーカッション)、電気化学技術(化学的攻撃、電食)が同様の結果を得る働きをすることに留意すべきである。
【0019】
テクスチャ表面上に用意される周期的なパターンは、以下の4つの必須パラメータに従って定義することができるキャビティを構成する。
−表面の平面における形状(円形、楕円形、正方形、三角形、溝など);
−材料の厚さにおけるプロファイル(円筒、半球、錐体など);
−寸法(直径、幅、深さなど);
−あらゆる方向において考慮され、表面摩擦方向に関する周期。
【0020】
キャビティの深さは、多かれ少なかれ250nmの深さを有する約500nmのパターンで観察される最適な結果を有して、薄層に対する損傷を制限し、潤滑型のそれらの影響を最大化するために、有利には3μm未満である。本発明のテクスチャされた部品が、一般的な熱化学処理(接合、浸炭窒化及び他の拡散または変換処理)、または、PVD(物理気相堆積)またはPACVD(プラズマアシスト化学蒸着)によって得られる真空堆積によって、遷移金属の窒化物及び炭化物または非晶質炭素(DLC)の堆積物などをテクスチャする前に又はテクスチャする後に処理することができることが見られる。
【0021】
パターンのこれらの様々な寸法及び幾何学的配置は、接触表面の寸法、滑りの方向及び速度、接触圧力及び処理される部品の曲率によって、処理される部品に適合する。例えば、自動車分野におけるロッカー部品(ロッカーコンポーネント)などの、非常に高い接触圧力にさらされる機械的部品において、約500nmの浅いパターン深さを提供するために必要である。
【0022】
硬質層の追加が、上述のように、被覆されていないテクスチャ表面に関して、特に長時間にわたってパターンへの損傷を大幅に減少し、その結果、テクスチャ表面のトライボロジー性能を維持するように働くことに留意すべきである。潤滑型における影響に加えて、テクスチャも、意外に堆積物の局所的な分離から由来するクラックの伝播を防止するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】テクスチャ表面のパターンによって提供される利得を示す図である。
図2】穴のネットワークによるテクスチャ表面の一例を示す図である。
図3】最大接触圧力が2.4GPaに一定に維持された場合に得られる摩擦測定結果を示す図である。
図4】摩擦レベルにおけるマイクロテクスチャの影響を示す3つの摩擦曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ここに添付される図面と組み合わせて以下に詳細に検討されるだろう。
【0025】
以下に実施例番号1の処理が参照される。
【0026】
処理される部品は、摩擦仕上げされたX85WCrMoV6−5−4−2鋼から作られる、直径50mmの球面ベアリング表面を有するローラーである。これらの部品は、2μmの厚さのDLC堆積物を用いて被覆され、穴(円形のマイクロキャビティ)がフェムト秒レーザーパルスによって用意されている。その表面は、図2に示されるように、125μmの間隔を有して直径79μm、深さ400mmの穴のネットワークによってテクスチャされる。このネットワークは、ローラー摩擦トラックの中心に配置された1mmの幅のストリップ上における7及び8のオフセットホールの一連の列からなる。
【0027】
これらのローラーは、高い接触圧力(1から3.2GPaの最大接触圧力)、0.2から2m/sの滑り速度、及び、接触における低い潤滑エントレイメント速度(滑り速度の10%)の下で、“アムスラー”マシン(当業者による参照トライボロジー試験)における摩擦試験で使用される。各々のテクスチャされた部品は、潤滑化された型(10W40 エンジンオイル)の摩擦係数におけるテクスチャの影響を観察し、様々な接触圧力における被覆の耐用挙動を調査するために、被覆されておらずテクスチャされていないローラーに対して試験される。参照例として機能させ、接触性能において試験されたテクスチャの影響を正確に特定するために、DLCで被覆されているがテクスチャされていないローラーも、被覆されておらずテクスチャされていないローラーに対して試験された。
【0028】
マイクロテクスチャによって得られる利得を定量化するために、一定の負荷を印加した状態で、油膜を破壊するために滑り速度を徐々に低下させることによって摩擦試験が行われた。
【0029】
被覆された平滑な表面上での試験における性能は、DLC堆積物を有しない同一の表面に関して摩擦係数の利得を既にもたらし、2GPaの接触圧力下においてこのパターンを有するDLCを用いて被覆された表面は、摩擦係数における大幅な利得を明らかにした。
【0030】
ここに添付された図1のグラフは、油浴中の対向部品の滑り速度の関数として摩擦係数(テクスチャなしの同一の試験と比較して)におけるこの特定のパターンによって得られる利得の変化を示す。2GPaの接触圧力において、摩擦係数は、テクスチャされていない表面と比較してこのパターンによって30%減少することができる。尚、テクスチャされていないDLC堆積物の用意は、処理されていない研磨鋼表面と比較して15%摩擦係数を低下させるように機能する。
【0031】
この正確な配置において、テクスチャされた堆積物の適用は、30Wの摩擦により電力消費の低下をもたらし、その表面とオイルの過熱を低下させるように働き、それは、部品の耐久性を高める。
【0032】
(処理番号2の実施例)
処理実施例1に対するのと同一の手順、または、試験ローラー摩擦トラックの被覆またはテクスチャの何れかにおいて、アムスラーマシンにおける試験の実行と同一の手順に厳格に従うことによって、第2のシリーズの摩擦試験が様々な接触圧力において行われた。
【0033】
図3は、最大接触圧力が2.4GPaで一定に維持された場合に、与えられた様々な滑り速度において得られる摩擦測定結果を示す。
【0034】
球形ベアリング表面を有する第1ローラーは、DLCを用いて被覆され、次いで、処理実施例番号1に記載のような円形マイクロキャビティのネットワークに従うことによってテクスチャされた。マイクロキャビティの深さは、5μmまで増加し、この値は、当業者によって一般的に使用される値を示す例である。通常与えられる接触力を印加した試験を開始した後、DLC堆積物の層間剥離及び表面の焼付けによって対向する表面の破壊がほんの25秒後に起こった。従って、通常行われるような表面テクスチャは、この弾性流体接触において不適切である。
【0035】
2.4GPaのこの接触圧力で続いて行われた3つの他の試験が図3に示される。このように得られた摩擦曲線は、寸法の最適化、特に、有利には800nm、さらに有利には450nmに設定された値におけるマイクロキャビティの深さ“d”の最適化を明らかに示し、接触部において生成した摩擦の大幅な低下を得るように働く。
【0036】
この目的は、弾性流体潤滑の理論の一般的な分析的な式によって計算される、接触表面間の油膜の厚さを関数としてマイクロキャビティの深さの寸法を測ることであった。この深さは、有利には、理論的に計算される潤滑膜の厚さの0.1から10倍である。
【0037】
意外に、従って、図3は、450nmに設定されたキャビティの深さの選択が、摩擦によって分散されるエネルギーを体系的に減少する働きをし、マイクロテクスチャがない同一表面と比較して15%から35%の範囲であることを示す。
【0038】
テクスチャされていないDLCで被覆された表面を有するローラーと、450nmの深さのテクスチャを有するDLCで被覆された表面を有するローラーとの間の比較試験は、次いで最大接触圧力をより高い値、すなわち、2.6GPa、2.8GPa、3GPa及び3.2GPaに設定することによって続けられた。
【0039】
2.6GPaに一定に維持された圧力下での最初の試験中に、被覆されているがテクスチャされていない参照ローラーの表面は、DLC堆積の層間剥離と、それに続く対向表面の焼付けによって直ぐに破壊される。従って、2.6GPaの値は、テクスチャなしの参照表面によって耐えることができる最大接触圧力限界として保持される。
【0040】
対照的に、被覆された表面を有し、450nmの深さのテクスチャを有して厳格に同一条件で行われた試験は、損傷無しに完了した。
【0041】
同様に、次いで、この試験は、450nmの深さまで加工されたこのローラーを用いて、さらに接触圧力を、1回目で2.8GPaに一定にし、2回目で3.0GPaに一定にし、3回目で3.2GPaに一定にすることによって3回繰り返された。
【0042】
意外に、最も有利なテクスチャを有するこのローラーの摩擦表面は、この一連の試験の後に損傷しておらず、従って、本発明による最適化されたテクスチャは、それに印加される接触圧力に耐えるための表面の能力をかなり増加させる働きをすると結論付けることができる。
【0043】
驚くことに、摩擦によって分散されたエネルギーを低下させることに加えて、本発明は、それによって表面の良好な負荷抵抗と比較する働きをし、それによってその耐用寿命を実質的に増加させる。
【0044】
(処理番号3の実施例)
処理された部品は、X85WCrMoV6−5−4−2鋼から作られた、30mm×18mmで8mmの厚さの長方形の平板である。これらの部品は、2μmの厚さのDLC堆積物で被覆され、穴(円形のマイクロキャビティ)がフェムト秒レーザーパルスによって形成された。この表面は、図2に示されるような、125μmの間隔を有する直径79μmの穴のネットワークによってテクスチャされた。このネットワークは、連続するオフセットホールの列からなり、摩擦表面全体を覆う。2つのプレートがこの記載に従ってテクスチャされ、一方は、1200nmの深さのマイクロキャビティを有し、他方は、600nmの深さのマイクロキャビティを有する。3つの参照プレートは、厳密に同一のDLC堆積物で被覆されたが、テクスチャされなかった。従って、接点特性に関して実行された2つの表面テクスチャの影響は、被覆された平坦なプレートと比較して分離することができる。
【0045】
次いで、これらのプレートは、“シリンダー/プレーン”マシンにおいて摩擦試験で使用された。この装置は、前のパラグラフで定義されるプレートを用いて、35mmの直径及び8mmの幅の外部摩擦トラックを有するX85WCrMoV6−5−4−2鋼から作られるシリンダーと接触するように働く。このシリンダーは、それ自体の軸に対して回転する。このプレートは、主要な次元の方向において水平方向に前後移動をそれに受けさせる切削装置に固定される。従って、シリンダーの外表面とプレートの表面との間に作られる接触ラインは、処理された平坦な表面に丸いラウンドトリップを形成する。空気圧シリンダーは、プレートを支持する切削装置に標準的な負荷を印加する働きをし、それによってプレートと動いているシリンダーとの間に高い接触抵抗を生成する。接触中の2つの固体は、10W40エンジンオイルで満たされたタンクに閉じ込められ、加熱され、温度制御される。
【0046】
記載された試験は、連続した増加分で1000rpmから100rpmまでシリンダーの回転速度(2m/sから0.2m/sの間のそれぞれの滑り速度を与える)を低下させることによって、接触部に印加される様々な一定の力、すなわち、40daN、80daN、120daN、次いで、160daNの力において引き続き行われる。従って、この速度低下は、対向表面間の油膜の厚さを減少させ、弾性流体潤滑型と混合型との間の転移を促進するように働く。
【0047】
160daNに一定に維持された試験された標準的な負荷(700MPaの最大接触圧力を生成する)において、得られた摩擦測定結果は、図4にプロットされる。
【0048】
意外に、図4の3つの摩擦曲線と比較すると、我々の発明により、及び有利には600nmの深さ“d”を有する最適化されたテクスチャは、ここで、測定される摩擦係数を体系的に減少させるように働く。潤滑条件が最も厳しい場合に、摩擦によって分散されるエネルギーのこの低下は、ここでは30%まで達する。
【0049】
ここに提供される本発明による表面テクスチャの適用は、弾性流体潤滑型と混合型との間の転移をより厳しい動作条件に向かって移動するように働く。
【0050】
摩擦におけるこの減少は、この寸法、特に、マイクロキャビティ“d”の深さを調整することによって再び得られ、それは、有利には潤滑膜の厚さの0.1から10倍の間でなければならない。
【0051】
これらの3つの実施例によって示される本発明の利点は、詳細な説明から明らかに現れ、特に、以下が強調され、思い起こされる。
−それは、弾性流体潤滑型への転移に有利に働くことによって明確に定められた動作条件において摩擦係数に大幅な低下をもたらす。
−それは、その破壊前に、処理された表面によって許容される最大接触圧力を増加させる。
−それは、用意されたパターンの2つの期間の間の破片の精製、及び、キャビティ内の磨耗した粒子の除去による堆積物への損傷を制限する。
−それは、それらの磨耗を制限することによって、機械部品の耐久性を増加させる。
【0052】
本発明は、特に自動車分野において、さらには、特にレジャー自動車またはレーシング自動車の分野におけるレバーまたはタペットなどのロッカーのエンジン部品を製造することにおいて、高負荷の摩擦部品(0.2MPa、0.5MPa、0.8MPaを超える接触圧力)の弾性流体潤滑レジームの潤滑と関連する、特に有利な用途を見出す。
【0053】
本発明は、特にレジャー自動車またはレーシング自動車用のギアボックスにおいて使用されるギアの歯の処理における、電力伝達の高負荷摩擦部品の弾性流体潤滑型の潤滑と関連する有利な用途も見出す。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2015148344000001.pdf