【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、農林水産省、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業委託事業、産業技術力強化法19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】前記部位が上部に位置する姿勢を保持して搬送された青果物Vに対し、側方に一定面積を持った光束L1を照射する投光部3、青果物Vからの拡散透過光L2,L3を受光する、上方の第1受光部4A及び側方の第2受光部4B、光束L1の一部を制限する光束制限部5、第1受光部4Aで受光した拡散透過光L2を分光して必要とする波長の分光を測定する第1分光部、第2受光部4Bで受光した拡散透過光L3を分光して必要とする波長の分光を測定する第2分光部、前記第1分光部で得た第1のデータ及び前記第2分光部で得た第2のデータを演算処理及び波形分析し、青果物Vの品質を評価するための検量線を用いて演算処理する信号処理・制御部を備えた。
前記光束制限部が、前記搬送方向に直交する水平軸まわりに、前記左方から見て時計回り方向へ、前記搬送部と同期して回転する円盤状部材であり、前記円盤状部材は、前記水平軸まわりに径方向に延びる、円板状の形態が保たれる基部と、前記基部の外周縁から径方向外方へ且つ前記投光部から離れる方向へ傾斜する円錐台の側面板状の円環部とからなり、前記円環部は、前記青果物のサイズに応じて前記青果物の上側面に沿って変形するものである請求項1記載の青果物の品質測定装置。
前記青果物の試料を前記部位が上部に位置する姿勢を保持して前記搬送部により搬送しながら、前記第1分光部の前記第1分光光量測定器の測定値から得られた第1のデータ及び前記第2分光部の前記第2分光光量測定器の測定値から得られた第2のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルを目的変数として多変量解析により前記検量線を作成してなる請求項1又は2記載の青果物の品質測定装置。
初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物の試料を、前記部位が上部に位置する姿勢で搬送しながら、前記試料の搬送方向に向かって左方及び右方の一方に配置された投光部から前記試料の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記試料に照射される前記光束の一部を光束制限部により制限した状態で、前記試料の上方に配置された第1受光部、及び前記左方及び右方の他方に配置された第2受光部で前記試料からの拡散透過光を受光し、前記第1受光部で受光した前記拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した前記拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2のデータの両方のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルを目的変数として多変量解析により検量線を作成しておき、
前記青果物の品質測定をする際に、前記青果物を前記部位が上部に位置する姿勢で搬送しながら、前記投光部から前記青果物の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記光束制限部により前記青果物に照射される前記光束の一部を制限した状態で、前記第1受光部で受光した前記青果物からの拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した前記青果物からの拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2のデータの両方のデータを用いて、これらを演算処理及び波形分析し、前記検量線を用いた演算処理により前記青果物の品質測定を行うことを特徴とする青果物の品質測定方法。
【背景技術】
【0002】
タマネギは、野菜生産出荷安定法における指定野菜14品目の中で3番目に生産量の多い最も基幹的な食材の一つである。平成24年度におけるタマネギの作付面積、および収穫量は、それぞれ約2.5万ha、約109.7万tであったとされている。しかしながら、出荷量は約96.7万tであり、収穫量の1割にも上る量が実際には出荷されていない。この主な原因は病害による腐敗であり、栽培過程での感染を完全に防ぐことは困難なことから、収穫球には健全球と腐敗球とが混在する。現状では、生産農家や選果場において、目視や触感といった手作業による腐敗球の選別除去が行われている。しかし、「心腐り」などの内部腐敗は熟練者でも判別が困難で、出荷球にも腐敗球が混入する場合があり、産地の信用低下に繋がる問題となっている。
このような現状の問題点の解決策として、コンベアで搬送されるタマネギ等の青果物の品質をオンラインで測定して選別するための品質測定装置を用いて、出荷時にタマネギの健全球と腐敗球を選別することが考えられる。このような品質測定装置を用いた、出荷時におけるタマネギ腐敗球の精度の高い判別技術が開発されれば、フードチェーンの下流側に対して腐敗球の混入率を明確に保証した商品提供が可能となる。
【0003】
コンベアで搬送される青果物の品質をオンラインで測定して選別するための品質測定装置として、青果物を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送されてきた青果物に光を照射する投光器、前記青果物からの拡散透過光を分光する分光器及び必要とする波長の分光光量を検出する分光光量検出器からなる受光器、並びに、前記分光光量検出器の検出値を演算処理及び波形分析するとともに、前記青果物の品質を評価するための検量線を用いて演算処理する信号処理・制御装置からなる品質測定部とを備えた透過光式品質測定装置がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
ここで、特許文献1の品質測定装置は、青果物の側方の一方に単一の投光器を配置し、前記側方の他方に例えば上下2個の受光器を配置している。
また、特許文献2の品質測定装置は、青果物の側方の両方に1個ずつの投光器を配置し、青果物の上方に受光器を配置するとともに、青果物の上面を通して受光器側へ入射する、拡散透過光以外の光を遮光する遮光手段を備えている。
さらに、特許文献3の品質測定装置は、青果物の側方の両方に少なくとも1個ずつの投光器を配置し、青果物の上下に1個ずつの受光器を配置しており(
図2及び
図5〜
図8の構成)、特許文献3には、光源と上方側受光部との間に、青果物の上面を通して受光器側へ入射する、拡散透過光以外の光を遮光する遮光板を備えたものも開示されている(
図8)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者らは、コンベアで搬送される青果物の品質をオンラインで測定して選別するための品質測定装置を用いてタマネギの健全球と腐敗球を判別する際に、その判別精度(判別率)を高めるための技術開発を行っており、前記品質測定装置の試作評価も行ってきた。
その結果、青果物の側方の一方に単一の投光器を配置し、前記側方の他方に上下2個の受光器を配置した特許文献1の品質測定装置の構成では、首付近にのみ腐敗のあるタマネギの判別制度が低いという問題があることが分かった。
これは、タマネギは、葉鞘茎部から菌が浸入して腐敗が起こるため、初期症状としては首付近に腐敗が発生する場合が多く、このような内部腐敗レベルのタマネギを腐敗球として判別できないことに起因している。
【0006】
また、特許文献2のような品質測定装置を用いて葉鞘茎部を上向きにしたタマネギの品質測定を行うことも考えられるが、そのような品質測定を行うと、特許文献2の遮光手段(4)(駆動回転体(5))では、タマネギが大きい場合は透過経路が長くなり、タマネギが小さい場合は透過経路が短くなるため、表面に近い一定深度を持った首付近に発生する腐敗の検出には不向きである。
さらに、特許文献3のような品質測定装置(例えば
図8の構成)を用いて行うタマネギの同様の品質測定においては、タマネギを透過した拡散透過光であっても、表面付近のみを極短距離透過した場合は表皮情報のみが反映されることになるため、表面に近い一定深度を持った首付近に発生する腐敗の検出には不向きである。
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、タマネギ及びリンゴ等の初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物をコンベアで搬送しながらオンラインで行う品質測定において、より精度の高い判別が行える青果物の品質測定装置、及び青果物の品質測定方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る青果物の品質測定装置は、前記課題解決のために、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物を搬送する搬送部と、前記部位が上部に位置する姿勢を保持して前記搬送部により搬送されてきた前記青果物に対し、前記青果物の側方に一定面積を持った光束を照射する、前記青果物の搬送方向に向かって左方及び右方の一方に配置された投光部と、前記青果物からの拡散透過光を受光する、前記青果物の上方に配置された第1受光部、及び前記左方及び右方の他方に配置された第2受光部と、前記青果物に照射される前記光束の一部を制限する光束制限部と、前記第1受光部で受光した前記拡散透過光を分光する第1分光器、及び必要とする波長の分光光量を測定する第1分光光量測定器を有する第1分光部、並びに、前記第2受光部で受光した前記拡散透過光を分光する第2分光器、及び必要とする波長の分光光量を測定する第2分光光量測定器を有する第2分光部と、前記第1分光光量測定器の測定値から得られた第1のデータ、及び前記第2分光光量測定器の測定値から得られた第2のデータの両方のデータを演算処理及び波形分析するとともに、前記青果物の品質を評価するための検量線を用いて演算処理する信号処理・制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物を、前記部位が上部に位置する姿勢を保持して搬送部により搬送しながら、投光部から前記青果物の側面に一定面積を持った光束(平行又はある程度集光されたもの)を照射すると、その照射光の一部は光束制限部により制限される。前記青果物を透過して上方の第1受光部で受光される拡散透過光は、ランベルトベールの法則から最短経路を持つものが支配的になるため、光束制限部により光の侵入深度を制御することが可能になる。したがって、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物における前記部位の障害の判別を第1分光部で得たデータを用いて高精度に行うことができる。また、前記青果物の前記部位以外の芯部分の障害は、投光部と前記青果物を挟んで対向する第2受光部が受光する拡散透過光から第2分光部で得たデータを用いて高精度に判別できる。なお、前記青果物の表皮部分の障害は、外観からの目視、又は外観検査装置により検出できる。
よって、搬送部で搬送される前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)を向上できる。
【0010】
ここで、前記光束制限部が、前記搬送方向に直交する水平軸まわりに、前記左方から見て時計回り方向へ、前記搬送部と同期して回転する円盤状部材であり、前記円盤状部材は、前記水平軸まわりに径方向に延びる、円板状の形態が保たれる基部と、前記基部の外周縁から径方向外方へ且つ前記投光部から離れる方向へ傾斜する円錐台の側面板状の円環部とからなり、前記円環部は、前記青果物のサイズに応じて前記青果物の上側面に沿って変形するものであると好ましい。
このような構成によれば、前記青果物の側方に照射される一定面積を持った光束の一部を制限する光束制限部が、前記搬送部と同期して回転するので、前記光束制限部が前記青果物に接触した際に、品質測定に必要な前記青果物の姿勢が保持される。
その上、前記光束制限部が円盤状部材であるので、構成が簡素になるため、コストを低減できるとともに、信頼性が向上する。
その上さらに、円盤状部材が前記基部及び前記円環部からなり、前記円環部が前記青果物のサイズに応じて前記青果物の上側面に沿って変形するので、前記青果物のサイズ変動に対応できる。
【0011】
また、前記青果物の試料を前記部位が上部に位置する姿勢を保持して前記搬送部により搬送しながら、前記第1分光部の前記第1分光光量測定器の測定値から得られた第1のデータ及び前記第2分光部の前記第2分光光量測定器の測定値から得られた第2のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルを目的変数として多変量解析により前記検量線を作成してなると一層好ましい。
このような構成によれば、前記第1のデータ及び前記第2のデータを多変量解析の説明変数として同時利用するので、多変量解析における次元数が増加することから、多変量解析により作成される検量線(判別モデル)の精度が高くなるため、前記検量線を用いて行う前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)が一層向上する。
【0012】
さらに、前記第1のデータ及び前記第2のデータがスペクトルデータであり、前記多変量解析がPLS回帰分析であるとより好ましい。
このような構成によれば、波長選択が不要であり全ての波長の情報を使用するので情報の欠落がなくなること等から、前記検量線を用いて行う前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)がより一層向上する。
【0013】
本発明に係る青果物の品質測定方法は、前記課題解決のために、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物の試料を、前記部位が上部に位置する姿勢で搬送しながら、前記試料の搬送方向に向かって左方及び右方の一方に配置された投光部から前記試料の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記試料に照射される前記光束の一部を光束制限部により制限した状態で、前記試料の上方に配置された第1受光部、及び前記左方及び右方の他方に配置された第2受光部で前記試料からの拡散透過光を受光し、前記第1受光部で受光した前記拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した前記拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2のデータの両方のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルを目的変数として多変量解析により検量線を作成しておき、前記青果物の品質測定をする際に、前記青果物を前記部位が上部に位置する姿勢で搬送しながら、前記投光部から前記青果物の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記光束制限部により前記青果物に照射される前記光束の一部を制限した状態で、前記第1受光部で受光した前記青果物からの拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した前記青果物からの拡散透過光を分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2のデータの両方のデータを用いて、これらを演算処理及び波形分析し、前記検量線を用いた演算処理により前記青果物の品質測定を行うことを特徴とする。
【0014】
このような方法によれば、前記青果物の試料を搬送しながら前記試料の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記試料に照射される前記光束の一部を光束制限部により制限した状態で、前記試料の上方に配置された第1受光部、及び側方に配置された第2受光部で前記試料からの拡散透過光を受光し、前記第1受光部で受光した前記拡散透過光に基づく第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した前記拡散透過光に基づく第2のデータの両方のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルを目的変数として多変量解析により検量線を作成する。よって、前記第1のデータ及び前記第2のデータを同時利用するので、多変量解析における次元数が増加することから、多変量解析により作成される検量線(判別モデル)の精度が高くなる。
そして、前記青果物の品質測定をする際に、前記青果物を搬送しながら前記青果物の側方に一定面積を持った光束を照射し、前記青果物に照射される前記光束の一部を前記光束制限部により制限した状態で、前記第1受光部で受光した拡散透過光に基づく第1のデータ、及び前記第2受光部で受光した拡散透過光に基づく第2のデータの両方のデータを用いて、これらを演算処理及び波形分析し、前記検量線を用いた演算処理により前記青果物の品質測定を行うので、搬送される前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)を向上できる。
【0015】
ここで、前記第1のデータ及び前記第2のデータがスペクトルデータであり、前記多変量解析がPLS回帰分析であると好ましい。
このような方法によれば、波長選択が不要であり全ての波長の情報を使用するので情報の欠落がなくなること等から、前記検量線を用いて行う前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)が一層向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る青果物の品質測定装置、及び青果物の品質測定方法によれば、タマネギ及びリンゴ等の初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物を搬送しながらオンラインで行う品質測定において、前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)を向上できること等の顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物の例として示すタマネギVの搬送方向(図中矢印A参照。)を前、その反対側を後とし、左右は前方に向かっていうものとし、左方から見た図を正面図とする。
【0019】
図1の本発明の実施の形態に係る青果物の品質測定装置1の斜視図、及び
図1からカバー13を外した状態を示す
図2の斜視図に示すように、本発明の実施の形態に係る品質測定装置1は、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位(首付近)に障害が発生する場合が多い青果物であるタマネギVを、前記部位が上部に位置する姿勢(葉鞘茎部を上に向けた姿勢)を保持して搬送する搬送部2を備えている。搬送部2の搬送ベルト12は無端状のものであり、基台11に対して、その前後に位置し、左右方向軸まわりに回転可能に支持された図示しない駆動プーリと従動プーリとに掛け渡されており、駆動プーリに連結されたモータを一定速度で回転することにより、駆動プーリ及び従動プーリが一定速度で回転することから、無端状の搬送ベルト12の上側部分が一定速度で搬送方向(図中矢印A参照。)へ移動するため、搬送ベルト12上に載置されたタマネギV,…が搬送方向Aへ一定速度で搬送される。
なお、タマネギV,V,…の葉鞘茎部を上に向けた姿勢に整列するのは、整列装置を用いるのが好ましいが、人手によってもよく、投光部3からタマネギVへ光束L1が照射され、第1受光部4A及び第2受光部4B(
図3参照)が拡散透過光L2,L3を受光する際に、タマネギVの葉鞘茎部を上に向けた姿勢が保持されればよい。
【0020】
また、
図3の投光部3、第1受光部4A及び第2受光部4Bを後方から見た部分縦断面図に示すように、品質測定装置1は、搬送部2により搬送されてきたタマネギVに対し、タマネギVの側方に一定面積を持った光束L1を照射する、搬送方向Aに向かって左方に配置された投光部3、タマネギVからの拡散透過光L2を受光する、タマネギVの上方に配置された第1受光部4A、及びタマネギVの右方に配置された第2受光部4B、並びにタマネギVに照射される光束L1の一部を制限する光束制限部5を備えている。ここで、光束制限部5により、光束L1の一部を制限して前記一定深度を通る経路が最短となるようにしている。
なお、投光部3をタマネギVの右方に配置し、第2受光部4BをタマネギVの左方に配置してもよい。
【0021】
図2のカバー13を外した状態から、
図1のようにカバー13を取り付けた使用状態では、カバー13により、投光部3並びに受光部4A及び4Bが被われるとともに、カバー13の前後の開口14,14に短冊状の遮光カーテン15,15が取り付けられているため、カバー13の内部への外光の侵入が抑制される。
図1及び
図2に示す操作パネルPは、品質測定装置1の起動及び停止等の操作を行うとともに、品質測定の結果等の表示を行うものである。
【0022】
さらに、品質測定装置1は、
図7の部分断面図に示すように、第1受光部4Aで受光した拡散透過光L2を分光する第1分光器であるフラットフィールド凹面型の第1回折格子7A、及び必要とする波長の分光光量を測定する第1分光光量測定器である電荷蓄積方式の第1ラインセンサ8Aを有する第1分光部6A、並びに、第2受光部4Bで受光した拡散透過光L3を分光する第2分光器であるフラットフィールド凹面型の第2回折格子7B、及び必要とする波長の分光光量を測定する第2分光光量測定器である電荷蓄積方式の第2ラインセンサ8Bを有する第2分光部6Bを備えている。
さらにまた、品質測定装置1は、第1分光光量測定器である第1ラインセンサ8Aの測定値から得られた第1のデータである第1スペクトルデータ(以下、「BL1」とする)、及び第2分光光量測定器である第2ラインセンサ8Bの測定値から得られた第2のデータである第2スペクトルデータ(以下、「BL2」とする)の両方のスペクトルデータBL1,BL2を演算処理及び波形分析するとともに、タマネギVの品質を評価するための検量線を用いて演算処理する信号処理・制御部9(
図1及び
図2参照)を備えている。
【0023】
図4の横断平面図に示すように、投光部3は、例えばハロゲンランプである光源16から全周方向に放出された光束を、その後方照射光を曲面反射鏡17で、その前方照射光を平面反射鏡18を介してレンズ19により平行又はある程度集光された光束とし、レンズ19通過後に、一定面積の開口である面積制限用の光束透過穴19Aを通すことにより、一定面積を持った光束(平行又はある程度集光されたもの)L1を放射する。ここで、光源用シャッタ20は、測定休止時等に不必要な光が照射されるのを防止するためのものである。
【0024】
図3の部分断面図、並びに、
図5(a)の正面図及び
図5(b)の断面図に示すように、第1受光部4Aは、保護用のカバーガラス22Aを通った拡散透過光L2が、基体内に配置されたフレネルレンズ21Aに入射して集光され、平面反射鏡23により反射された後、
図7の光ファイバケーブル24Aにより第1分光部6Aへ導かれる。
また、
図3の部分断面図、並びに、
図6(a)の後方から見た図及び
図6(b)の断面図に示すように、第2受光部4Bは、保護用のカバーガラス22Bを通った拡散透過光L3が、基体内に配置されたフレネルレンズ21Bに入射して集光され、
図7の光ファイバケーブル24Bにより第2分光部6Bへ導かれる。
【0025】
図7の部分断面図に示すように、第1分光部6Aは、遮光ケース25A、光ファイバケーブル24Aにより導かれた拡散透過光L2(
図3参照)が入る光通過口26A、光通過口26Aの内側に設置された可視光カットフィルタ27A、可視光カットフィルタ27Aから順次内側へ設置された、スリット28A、並びに、測定光を受光する状態(
図7に示す開状態)、オフセット取得用シャッタ(黒色シャッタ)30Aにより第1ラインセンサ8Aの暗電流を測定する状態、及び、NDフィルタ(ニュートラルデンシティフィルタ)31Aによりリファレンス光を受光する状態を切り替えるシャッタ駆動用アクチュエータ29A、測定光を分光する第1回折格子7A、第1回折格子7Aにより分光されライン上に焦点を結んだ各分光の光量を一括して読み取る、マルチチャンネル分光光量検出器である電荷蓄積方式の第1ラインセンサ8A等からなる。
【0026】
また、第2分光部6Bは、遮光ケース25B、光ファイバケーブル24Bにより導かれた拡散透過光L3(
図3参照)が入る光通過口26B、光通過口26Bの内側に設置された可視光カットフィルタ27B、可視光カットフィルタ27Bから順次内側へ設置された、スリット28B、並びに、測定光を受光する状態(
図7に示す開状態)、オフセット取得用シャッタ(黒色シャッタ)30Bにより第2ラインセンサ8Bの暗電流を測定する状態、及び、NDフィルタ(ニュートラルデンシティフィルタ)31Bによりリファレンス光を受光する状態を切り替えるシャッタ駆動用アクチュエータ29B、測定光を分光する第2回折格子7B、第2回折格子7Bにより分光されライン上に焦点を結んだ各分光の光量を一括して読み取る、マルチチャンネル分光光量検出器である電荷蓄積方式の第2ラインセンサ8B等からなる。
【0027】
図2及び
図3の光束制限部5は、搬送方向に直交する水平軸B(
図3参照)まわりに、左方から見て時計回り方向へ(
図8(a)の正面図の矢印参照)、搬送部2と同期して回転する円盤状部材10である。
図8(a)の正面図及び
図8(b)の断面図に示すように、円盤状部材10は、水平軸Bまわりに径方向に延びる、円板状の形態が保たれる基部10Aと、基部10Aの外周縁から径方向外方へ且つ投光部3(
図3参照)から離れる方向へ傾斜する円錐台の側面板状の円環部10Bとからなる。
【0028】
なお、円板状の形態が保たれる基部10Aの「円板状」には、平面状のものだけでなく
図8(b)のような立体的な、例えば皿ばね状のもの等も含む。
また、光束制限部5は、円盤状部材10に限定されるものではなく、前後に離間したプーリに架け渡したベルト状部材により構成する等、青果物(例えば、タマネギV)に照射される一定面積を持った光束である照射光L1の一部を制限できるものであればよい。
図2及び
図3に示すように、光束制限部5として機能する、タマネギVの左上側面に当接する投光部3側に位置する円盤状部材10の他に、タマネギVの右上側面に当接する、投光部3側の円盤状部材10とタマネギVの中心を通る前後方向の垂直面対称である円盤状部材10も設けている。よって、搬送部2により搬送されて品質測定を行う所定位置でタマネギVに光束制限部5(左側の円盤状部材10)が当接すると同時に、左側の円盤状部材10と前記面対称である右側の円盤状部材10もタマネギVに当接するので、品質測定する際に葉鞘茎部を上に向けた姿勢を保持する必要があるタマネギVの姿勢の安定性が向上する。
【0029】
ここで、光束制限部5を構成する円盤状部材10は、食品である青果物(例えば、タマネギV)に接触することから、食品衛生法に適合する、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム(VMQ,FVMQ)、フッソゴム(FKM,FFKM)、又はウレタンゴム(AU,EU)等のゴム、又はその他の柔軟性に優れた材料により製作される。
柔軟性に優れた材料により前記形状の基部10A及び円環部10Bが形成されており、円環部10Bは、基部10Aの外周縁から径方向外方へ且つ投光部3(
図3参照)から離れる方向へ傾斜する円錐台の側面状の板部材であり、上下方向へ変形しやすいので、円環部10Bが搬送されてきたタマネギVの上側面に接触すると、タマネギVにより上方へ押されて変形する。
例えば、
図9(a)の部分縦断面図のようにタマネギのサイズが小さい場合(タマネギV1)、及び
図9(b)の部分縦断面図のようにタマネギのサイズが大きい場合(タマネギV2)のように、円環部10Bはタマネギの上側面に沿って変形し、タマネギのサイズが大きい場合の方が円環部10Bの変形量が大きくなる。
また、柔軟性に優れた材料により製作されているので、円環部10BはタマネギV(
図9(a)ではタマネギV1、
図9(b)ではタマネギV2)に密着する。
【0030】
このような品質測定装置1の構成によれば、
図3に示すように、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位S(
図9参照)に障害が発生する場合が多いタマネギVを、部位Sが上部に位置する姿勢を保持して搬送部2により搬送しながら、投光部3からタマネギVの側面に一定面積を持った光束L1を照射すると、その照射光L1の一部は光束制限部5により制限される。タマネギVを透過して上方の第1受光部4Aで受光される拡散透過光L2は、ランベルトベールの法則から最短経路を持つものが支配的になるため、光束制限部5により光の侵入深度を制御することが可能になる。したがって、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位Sに障害が発生する場合が多いタマネギVにおける部位Sの障害の判別を第1分光部6A(
図7参照)で得たデータを用いて高精度に行うことができる。また、タマネギVの部位S以外の芯部分の障害は、投光部3とタマネギVを挟んで対向する第2受光部4Bが受光する拡散透過光L3から第2分光部6Bで得たデータを用いて高精度に判別できる。なお、タマネギVの表皮部分の障害は、外観からの目視、又は外観検査装置により検出できる。
よって、搬送部2で搬送されるタマネギVの健全及び障害の判別精度(判別率)を向上できる。
【0031】
また、光束制限部5は、搬送方向Aに直交する水平軸Bまわりに、左方から見て時計回り方向へ、搬送部2と同期して回転する円盤状部材10であり、円盤状部材10は、水平軸Bまわりに径方向に延びる、円板状の形態が保たれる基部10Aと、基部10Aの外周縁から径方向外方へ且つ投光部3から離れる方向へ傾斜する円錐台の側面板状の円環部10Bとからなり、円環部10Bは、タマネギVのサイズに応じてタマネギVの上側面に沿って変形するものである。よって、タマネギVの側方に照射される一定面積を持った光束L1の一部を制限する光束制限部5が、搬送部2と同期して回転するので、光束制限部5がタマネギVに接触した際に、品質測定に必要なタマネギVの姿勢が保持される。
さらに、光束制限部5が円盤状部材10であるので、構成が簡素になるため、コストを低減できるとともに、信頼性が向上する。
さらにまた、円盤状部材10が基部10A及び円環部10Bからなり、円環部10BがタマネギVのサイズに応じてタマネギVの上側面に沿って変形するので、タマネギVのサイズ変動に対応できる。
【0032】
次に、タマネギVの品質を評価するための検量線(判別モデル)の作成、タマネギVの品質測定について説明する。
初期症状として表面に近い一定深度を持った部位S(
図9参照)に障害が発生する場合が多いタマネギVの試料を、部位Sが上部に位置する姿勢(葉鞘茎部を上に向けた姿勢)で搬送しながら、
図3に示すように、左方の投光部3から前記試料の側方に一定面積を持った光束L1を照射し、前記試料に照射される光束L1の一部を光束制限部5により制限した状態で、前記試料の上方に配置された第1受光部4A、及び右方に配置された第2受光部4Bで前記試料からの拡散透過光L2,L3を受光し、第1受光部4Aで受光した拡散透過光L2を第1分光部6Aで分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1スペクトルデータBL1、及び第2受光部4Bで受光した拡散透過光L3を第2分光部6Bで分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2スペクトルデータBL2の両方のデータを説明変数とし、前記試料の障害レベルである内部腐敗レベルを目的変数としてPLS回帰分析により検量線を作成する。
【0033】
タマネギVの品質測定をする際には、タマネギVの部位Sが上部に位置する姿勢(葉鞘茎部を上に向けた姿勢)で搬送しながら、
図3に示すように、投光部3からタマネギVの側方に一定面積を持った光束L1を照射し、タマネギVに照射される光束L1の一部を光束制限部5により制限した状態で、第1受光部4Aで受光したタマネギVからの拡散透過光L2を第1分光部6Aで分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第1スペクトルデータBL1、及び第2受光部4Bで受光した拡散透過光L3を第2分光部6Bで分光して必要とする波長の分光光量を測定して得られた第2スペクトルデータBL2の両方のデータを用いて、これらを信号処理・制御部9で演算処理及び波形分析し、前記のように作成しておいた検量線を用いた演算処理によりタマネギVの品質測定を行う。
【0034】
<実験方法>
タマネギVの試料として、淡路島たまねぎ(登録商標)である「ターザン」(n=394)、「もみじの輝」(n=326)、及び「もみじ3号」(n=315)を、1℃の商用冷蔵庫で貯蔵しておいたものを使用した。
これらのタマネギVの試料を恒温層内に一晩静置することにより、品温を所定の温度に調温した後、20m/minの速度で搬送しながら、青果物の品質測定装置1により、可視近赤外透過スペクトルである第1スペクトルデータBL1及び第2スペクトルデータBL2を計測した。
障害レベルについては、第1スペクトルデータBL1及び第2スペクトルデータBL2を収集後、試料の縦切断面の目視観察により、内部腐敗レベル(0から5の6段階で評価)を実測した。ここで、「レベル0」は腐敗なし、「レベル1」は鱗片1枚の1/2以下が腐敗、「レベル2」は鱗片1枚の1/2程度が腐敗、「レベル3」は鱗片1枚の1/2以上が腐敗、「レベル4」は鱗片2枚の1/2以上が腐敗、「レベル5」はレベル4以上とした。
得られたスペクトルの内、波長が655〜955nmの吸光度を説明変数(説明変量)、内部腐敗レベルを目的変数(目的変量)とし、PLS回帰分析により検量線(判別モデル)を構築し、その精度について評価した。
【0035】
(実施例)
第1スペクトルデータBL1及び第2スペクトルデータBL2の両方を説明変数として同時に使用する。
(比較例1)
第1スペクトルデータBL1のみを説明変数として使用する。
(比較例2)
第2スペクトルデータBL2のみを説明変数として使用する。
【0036】
<実験結果及び考察>
健全球と腐敗球との閾値を腐敗レベル1.0とした際の内部腐敗レベルの判別率、及び腐敗球混入率を表1に示した。なお、表1における「N」は、取得したスペクトル数を示している。また、「腐敗球混入率」は、直ぐにクレームの対象となり得るレベル2以上の腐敗球の判別ミスの数をA、健全球と判別された数をBとした場合、[A/(A+B)]×100(%)で算出したものである。
【0038】
表1の実験結果より、第1スペクトルデータBL1のみを説明変数として使用した場合(比較例1)は、レベル1の腐敗球の判別率が高い(71.7%)ことがわかる。この理由は、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位(首付近)S(
図9参照)に発生する場合が多い腐敗を、光束制限部5により光束L1の一部を制限して前記一定深度が最短となるようにしているので、第1受光部4A及び第1分光部6Aにより、タマネギの初期の腐敗を効果的に測定できるためであると考えられる。
また、特に市場等においてクレームの対象となるレベル2以上の腐敗球の判別率を見ると、レベル2の腐敗球の判別率は、比較例1が96.6%、比較例2が95.4%であるのに対し、実施例は97.1%と高くなっている。レベル3及び4の判別率は、実施例及び比較例2が100%であるのに対し、比較例1は97.9%及び95.1%であり低くなっている。
さらに、腐敗球混入率を見ると、比較例1が1.07%、比較例2が0.52%であるのに対し、実施例は0.33%と低くなっている。
以上を総合すると、実施例のように第1スペクトルデータBL1及び第2スペクトルデータBL2の両方を説明変数として同時に使用することが、腐敗球判別に極めて有効であることが分かる。
【0039】
以上の説明においては、第1分光光量測定器の測定値から得られた第1のデータが第1スペクトルデータBL1、第2分光光量測定器の測定値から得られた第2のデータが第2スペクトルデータBL2であり、多変量解析がPLS回帰分析である場合を示したが、前記第1のデータ及び前記第2のデータがスペクトルデータではなく、多変量解析が重回帰分析等のPLS回帰分析以外であってもよい。
前記第1のデータ及び前記第2のデータがスペクトルデータであり、前記多変量解析がPLS回帰分析であると、波長選択が不要であり全ての波長の情報を使用するので情報の欠落がなくなること等から、前記検量線を用いて行う前記青果物の健全及び障害の判別精度(判別率)が一層向上する。
また、以上の説明においては、初期症状として表面に近い一定深度を持った部位に障害が発生する場合が多い青果物の例としてタマネギVを示したが、前記青果物はリンゴ等の青果物であってもよい。前記青果物がリンゴである場合は、前記部位が上部に位置する姿勢にするために果梗部を上に向ければよい。