【解決手段】缶体1の外面に側方から検査光を照射して、缶体1の外面から内部に漏れる検査光を検出する際に、缶体1の底部を押圧して該缶体1の開口部11とメインターレット6とを密着させて光が漏れない状態に保持するスピンドルフェイス7であって、光透過性材料により形成された板状部材70の内部に検査光を散乱させる乱反射部73が設けられた構成とされている。
缶体の外面に側方から検査光を照射して、前記缶体の前記外面から内部に漏れる前記検査光を検出する際に、前記缶体の底部を押圧して該缶体の開口部とメインターレットとを密着させて光が漏れない状態に保持するスピンドルフェイスであって、光透過性材料により形成された板状部材の内部に前記検査光を散乱させる乱反射部が設けられた構成とされていることを特徴とするスピンドルフェイス。
前記板状部材が円弧板状に形成されており、前記板状部材の半径方向外側の外側円弧面が前記検査光の照射側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のスピンドルフェイス。
前記板状部材には、前記缶体の支持面とは反対側の裏面に前記検査光を反射させる反射板が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピンドルフェイス。
前記乱反射部は、レーザ加工により形成された微細な気泡の集合体により、前記缶体の底部に沿う面状に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスピンドルフェイス。
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記スピンドルフェイスと、前記缶体の外面に対して側方から検査光を照射する光源と、前記缶体の前記外面から内部に漏れる前記検査光を検出する光検出部とを備えることを特徴とする缶体の検査装置。
光透過性材料により形成された板状部材の内部に検査光を散乱させる乱反射部が形成されたスピンドルフェイスを製造する方法であって、前記板状部材の内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射することにより、該板状部材の内部に微細な気泡を複数形成し、該気泡の集合体によって乱反射部を形成することを特徴とするスピンドルフェイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、缶体底部がパッド部で支持された部分では、光源から照射された光がパッド部を通過することで光量が周辺部に比較して減少し、この部分に発生したピンホール等の欠陥検出が困難となる問題があった。
また、反射面では、光源から照射された光が正反射することから、缶体の外面に照射される光量にばらつきが生じ易く、その結果、ピンホール等の欠陥の位置によっては十分な検出感度が得られず、反射面を設けたことによる効果を十分に得られなくおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ピンホール等の欠陥を確実に検出可能な缶体の検査装置及びその缶体の検査装置に用いられるスピンドルフェイス並びにスピンドルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピンドルフェイスは、缶体の外面に側方から検査光を照射して、前記缶体の前記外面から内部に漏れる前記検査光を検出する際に、前記缶体の底部を押圧して該缶体の開口部とメインターレットとを密着させて光が漏れない状態に保持するスピンドルフェイスであって、光透過性材料により形成された板状部材の内部に前記検査光を散乱させる乱反射部が設けられた構成とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明のスピンドルフェイスを用いた缶体の検査装置においては、光透過性材料により形成されたスピンドルフェイスを構成する板状部材の内部に乱反射部を設けているので、乱反射部で散乱した検査光を板状部材の内部を通じて照射することができ、光源からの検査光が直接照射されにくいスピンドルフェイス(板状部材)により支持された缶体の底部にも、検査光を照射することができる。また、この乱反射部では、検査光が正反射ではなく乱反射することから、乱反射部から反射して分散照射される光量を均一化することができる。したがって、光源からの検査光が直接照射されにくい缶体とスピンドルフェイスとの支持部分にも検査光を平均的に届けることができ、確実にピンホール等の有無を検出することが可能となる。
また、乱反射部は板状部材の内部に設けられているので、板状部材の裏面に反射面を形成する場合よりも、検査光を反射させる乱反射部を缶体との支持面に近接させて配置することができる。このため、検査光が板状部材の内部を通過する際に懸念される光量減少の問題が緩和され、円滑に検査を行うことができる。
【0009】
本発明のスピンドルフェイスにおいて、前記板状部材が円弧板状に形成されており、前記板状部材の半径方向外側の外側円弧面が前記検査光の照射側に配置されているとよい。
板状部材を円弧板状に形成し、半径方向外側の面積の大きい外側円弧面を検査光の照射側に配置することで、外側円弧面を介して板状部材の内部に取り込まれる検査光の光量を増加させることができる。そして、板状部材の内部に形成された乱反射部により検査光を缶体の外面に向かって導くことができるので、検査光を缶体の外面に広くかつ多く照射することができる。
また、缶体の検査装置においては複数の缶体をスターホイールの周縁部に周方向に並べて、メインターレットとスピンドルフェイスとの間に個々の缶体を挟持した状態として、これら缶体を回転搬送して検査を行う。このため、個々の缶体をメインターレットに向けて支持する個々のスピンドルフェイスの設置スペースは限られたものとなっている。しかし、本発明のスピンドルフェイスにおいては、スピンドルフェイスの板状部材を円弧板状に形成することで、個々のスピンドルフェイスを周方向に並べた際に円環状となるように形成できる。このため、限られたスペースを最大限に活用して広面積の乱反射部を形成することができる。また、隣接するスピンドルフェイスどうしを近接させて配置できることから、缶体を検査装置に供給する際の缶体の乗り移りが円滑に行われる。
このように、円弧板状の板状部材によりスピンドルフェイスを形成することにより、板状部材の内部を通過して照射される検査光の光量を増加させることができるとともに、検査光を缶体の外面の広い範囲に平均的に届けることができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0010】
本発明のスピンドルフェイスにおいて、前記板状部材には、前記缶体の支持面とは反対側の裏面に前記検査光を反射させる反射板が設けられているとよい。
この場合、板状部材の内部を通過する検査光を反射板で反射させることができ、さらにその反射光を乱反射部で散乱させて缶体1の外面に分散照射することができるので、缶体の外面に照射される検査光の光量をさらに増加させることができる。
【0011】
本発明のスピンドルフェイスにおいて、前記乱反射部は、レーザ加工により形成された微細な気泡の集合体により、前記缶体の底部に沿う面状に形成されているとよい。
スピンドルフェイスの板状部材の内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射することにより、板状部材の内部にのみ加工を施すことができる。そして、レーザ加工により微細な気泡を複数形成することにより、板状部材の内部に微細な凹凸形状を形成することができ、板状部材の表面を傷つけることなく乱反射部を形成することができる。また、乱反射部を微細な気泡の集合体により缶体の底部に沿う面状に形成していることから、乱反射部で反射した検査光が、スピンドルフェイスにより支持された部分に照射され易くなる。
【0012】
本発明のスピンドルフェイスにおいて、前記乱反射部は、波形面で形成されているとよい。
レーザ加工により形成される微細な気泡を、波形面を形成するように並べることで、乱反射部で反射する検査光を、確実に分散させて缶体の底部に照射することができる。
【0013】
本発明のスピンドルフェイスにおいて、前記乱反射部は、前記板状部材の表面から1mm離れた内側の範囲に形成されているとよい。
光源からの検査光を缶体の底部に広く照射するためには、乱反射部を板状部材の各表面まで広く形成することが、乱反射部による缶体への照射範囲が広くなるので望ましいが、乱反射部を板状部材の表面に露出する位置まで形成した場合は、その露出した部分を起点として割れが発生しやすくなり、強度低下を招きやすくなる。そこで、乱反射部は、検査光の分散範囲と板状部材の強度とを考慮して、板状部材の表面から少なくとも1mm離れた位置まで形成するとよい。
【0014】
本発明の缶体の検査装置は、前記スピンドルフェイスと、前記缶体の外面に対して側方から検査光を照射する光源と、前記缶体の前記外面から内部に漏れる前記検査光を検出する光検出部とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明のスピンドルフェイスの製造方法は、光透過性材料により形成された板状部材の内部に検査光を散乱させる乱反射部が形成されたスピンドルフェイスを製造する方法であって、前記板状部材の内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射することにより、該板状部材の内部に微細な気泡を複数形成し、該気泡の集合体によって乱反射部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光源からの検査光が直接照射されにくい缶体とスピンドルフェイスとの支持部分にも検査光を平均的に届けることができ、ピンホール等の欠陥を確実に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る缶体の検査装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態の缶体の検査装置100は、缶体1について、ピンホール等の欠陥を検出する検査装置である。
なお、本実施形態においては、缶体1として、
図1に示すように、例えばアルミニウム合金等の板材を絞り、しごき加工して形成されるいわゆるDI缶を用いて説明を行う。
【0019】
缶体の検査装置100は、
図1及び
図2に示すように、複数の孔部61が環状に配置されたメインターレット6と、メインターレット6の孔部61に缶体1の開口部11が合致するように缶体1の外面を支持するスターホイール2と、メインターレット6の孔部61と缶体1の開口部11とを密着させるように缶体1の底部12を押圧して支持するスピンドルフェイス7と、缶体1の外面に側方から検査光を照射する光源3と、缶体1の外面から内部に漏れる検査光を検出する光検出部4とを備える。
そして、これらメインターレット6、スピンドルフェイス7、スターホイール2がメインシャフトSを中心として一体に回転されることにより、缶体1を回転搬送することができるようになっている。
【0020】
なお、メインターレット6にはシール部材5が取り付けられており、このシール部材5に缶体1の開口部11を密着させるように、スピンドルフェイス7によって缶体1の底部12をシール部材5に向けて押圧して、缶体1の内部に光が漏れない状態に保持する。
また、シール部材5は、缶体1の開口部11の端縁よりも大きな外径及び開口部11の内径よりも小さな内径を有するリング状に形成されており、メインターレット6の孔部61内に嵌合して設けられている。
【0021】
スピンドルフェイス7は、スターホイール2を挟んでメインターレット6に対向して略平行に設けられている。このスピンドルフェイス7は、メインターレット6に対してメインシャフトSの軸線方向に沿って進退可能であり、スターホイール2によって外面を支持された缶体1をメインターレット6に向けて押圧することにより、缶体1を安定して支持することができる。また、缶体1の開口部11がシール部材5に密着させられることにより、缶体1の内部は密閉され、外部の光が遮蔽される。
【0022】
また、スピンドルフェイス7は、
図3及び
図5に示すように、光透過性材料(例えば透明アクリル、ポリカーボネート)により形成された板状部材70の内部に、検査光を散乱させる乱反射部73が設けられた構成とされており、その乱反射部73が、缶体1の底部12に沿って設けられている。
板状部材70は、円環を周方向に等分割した形状とされている。また、板状部材70は、支持面71fに接地される缶体1の底部12との接地径12Cよりも大きい平面サイズで形成されている。そして、この板状部材70の半径方向外側の外側円弧面70oが検査光の照射側に配置されるようになっている。
【0023】
なお、
図5に示す符号74は缶体1の底部12を受ける金具であり、符号75はスピンドルフェイス7をメインターレット6に対して進退移動させる駆動シャフト装着用の取付孔、符号76はその駆動シャフトとスピンドルフェイス7とを固定する固定ねじの取付孔、符号77は缶体1の底部12を吸着するためのバキュームエア吸込口である。
【0024】
乱反射部73は、レーザ加工により形成された微細な気泡の集合体により缶体1の底部12に沿う面状に形成されており、例えば、直径0.5mm程度の略球形状の微細な気泡が400個/mm
2程度の密度で形成された気泡層により構成される。また、このように形成された気泡層を1mm〜3mmの間隔あけて複数層配置することにより、乱反射部73を形成することもできる。さらに、乱反射部73は、缶体1の底部12を支持する支持面71fから2mm以上の間隔(距離D1)を空けて形成されるとともに、メインターレット6の周縁部に近づくにつれて支持面71fから離間するように傾斜して設けられ、光源3に対面する範囲が広く確保されている。
【0025】
さらに、乱反射部73は、その延在方向において板状部材70の各表面と近接して設けられるが、板状部材70のいずれかの表面から乱反射部73の端部までの距離D2は、少なくとも1mm以上離れて形成されている。
なお、光源3からの検査光を缶体1の外面に広く照射するためには、乱反射部73を板状部材70の表面まで形成することが、乱反射部73による缶体1への照射範囲が広くなるので望ましいが、乱反射部73を板状部材70の表面に露出する位置まで形成した場合は、その露出した部分を起点として割れが発生しやすくなり、強度低下を招きやすくなる。そこで、乱反射部73は、検査光の分散範囲と板状部材70の強度とを考慮して、板状部材70の表面から少なくとも1mm離れた位置まで形成することとしている。
【0026】
また、前述したように、乱反射部73はレーザ加工により形成することができ、板状部材70の内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射することにより、板状部材70の内部にのみ加工を施すことができる。そして、レーザ加工により微細な気泡を複数形成することにより、板状部材70の内部に微細な凹凸形状を形成できるので、板状部材70の表面を傷つけることなく乱反射部73を形成することができ、板状部材70の耐久性を良好に維持することができる。
【0027】
そして、検査光を検出する光検出部4は、メインターレット6の裏面63側(
図1の右側)に設けられており、この光検出部4によって缶体1の内部の光が検出されるようになっている。
なお、光検出部4は、
図1に示すようにアダプタ8に接続され、アダプタ8表面に取り付けられたライトシール9をメインターレット6の裏面63に接触させた状態で、
図2に示すように缶体の検査装置100の所定の検査位置に固定されており、メインターレット6が回転することによってメインターレット6の裏面63とライトシール9の表面とが摺動するようになっている。
また、缶体1の検査の際には、缶体1がメインターレット6とともに所定の検査位置に回転移動することにより、光検出部4と缶体1の内部とが貫通孔部62を介して連通する。そして、缶体1の開口部11の端縁が、シール部材5に密接し、缶体1の内部が密封された状態とされることから、光検出部4は、缶体1にピンホール等の欠陥が形成されている場合に、光源3から照射される検査光がピンホール等を通じて缶体1の内部に漏れ出た光を検出することができる。そして、この光検出部4における光の検出の有無によって、缶体1のピンホール等の欠陥の有無を検出することができるようになっている。
【0028】
また、光源3は、
図1及び
図2に示すように、缶体1の外面に、スターホイール2の径方向外側から検査光を照射する外側光源31と、その外側光源31との間にスターホイール2のポケット部22を挟んで対向するように設けられ、スターホイール2の径方向内側から検査光を照射する内側光源32とを備える。
そして、内側光源32は、
図1に示すように、2つのスターホイール2,2の間と、缶体1の開口部11側のスターホイール2とメインターレット6との間との2箇所に設けられており、これら2箇所の内側光源32により、缶体1の開口部11から底部12にかけて、スターホイール2の内側から缶体1の外面に検査光を照射する構成とされている。
【0029】
なお、外側光源31は、スターホイール2の外周の一部分に沿って周方向に並べられた複数のLED照明(図示略)により構成され、内側光源32は、スターホイール2によって外面を支持された缶体1の内側にスターホイール2の外周の一部分に沿って周方向に並べられた複数のLED照明(図示略)で構成される。これらの外側光源31と内側光源32とにより、
図1及び
図2に示すように、所定の検査位置に搬送された缶体1の外面に、外側と内側から検査光が照射される。
【0030】
スターホール2は、
図1に示すように、メインシャフトSの軸線方向に並んで2枚配置され、各スターホイール2は、メインシャフトSの軸線回りに回転可能に支持されている。
スターホイール2は、スピンドルフェイス7と同様に、光透過性材料(例えば透明アクリル、ポリカーボネート)によって円板状に形成されており、外周縁に、缶体1の外面に沿う略円弧切欠状の周面22aを有するポケット部22が、周方向に間隔を空けて複数個(本実施形態では12個)設けられ、ポケット部22の周面22aにより缶体1が支持されるようになっている。また、各スターホイール2の内部にも、
図2に示すように、検査光を散乱させる乱反射部23が、各ポケット部22の周面22aに沿って設けられている。
【0031】
次に、このように構成される缶体の検査装置100を用いて缶体1を検査する方法について説明する。
図2に示すように、缶体1は、スターホイール2のポケット部22に供給され、メインターレット6とスピンドルフェイス7との間に挟み込まれた状態で、メインシャフトSの回転によって搬送され、光源3(外側光源31及び内側光源32)から検査光が照射される所定の検査位置に移動する。そして、検査位置において、外側光源31及び内側光源32により缶体1の外面に検査光が照射され、検査光が缶体1の内部に漏れ出ているか否かを検査する。
【0032】
このとき、
図3に示すように、外側光源31からの検査光は、スターホイール2の半径方向内方に向かって照射され、缶体1の底部がスピンドルフェイス7により支持される部分には、検査光が直接照射されない部分が生じる。ところが、この検査装置100では、スピンドルフェイス7を構成する板状部材70の内部に乱反射部73が設けられており、その乱反射部73において検査光が散乱して分散照射されることから、
図3に点線の矢印で示すように、散乱光を板状部材70の内部を通じて支持面71fで支持される缶体1の底部12にも照射することができる(
図3では便宜上、乱反射箇所を2箇所として示しているが、乱反射部73の各部で乱反射する)。また、乱反射部73では、検査光が正反射ではなく乱反射することから、乱反射部73から反射して分散照射される光量を均一化することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、スピンドルフェイス7の板状部材70を円弧板状に形成し、半径方向外側の面積の大きい外側円弧面70oを検査光の照射側に配置することとしているので、外側円弧面70oを介して板状部材70の内部に取り込まれる検査光の光量を増加させることができる。そして、板状部材70の内部に形成された乱反射部73により検査光を缶体1の外面に向かって導くことができるので、検査光を缶体1の外面に広くかつ多く照射することができる。
また、缶体の検査装置100においては、複数の缶体1をスターホイール2の周縁部に周方向に並べて、メインターレット6とスピンドルフェイス7との間に個々の缶体1を挟持した状態として、これら缶体1を回転搬送して検査を行うため、個々の缶体1をメインターレット6に向けて支持する個々のスピンドルフェイス7の設置スペースは限られたものとなっている。ところが、スピンドルフェイス7は、
図5に示すようにスピンドルフェイス7の板状部材70を円弧板状に形成することで、個々のスピンドルフェイス7を周方向に並べた際に円環状となるように形成でき、限られたスペースを最大限に活用して、板状部材70の内部に広面積の乱反射部73を形成することができる。また、隣接するスピンドルフェイス7どうしを近接させて配置できることから、缶体1を検査装置100に供給する際の缶体1の乗り移りが円滑に行われる。
このように、円弧板状の板状部材70によりスピンドルフェイス7を形成することにより、板状部材70の内部を通過して照射される検査光の光量を増加させることができるとともに、検査光を缶体1の外面の広い範囲に平均的に届けることができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0034】
なお、この検査装置100では、スターホイール2の内部にも乱反射部23が設けられており、その乱反射部23において検査光が散乱して分散照射されることから、散乱光をスターホイール2の内部を通じて缶体1の外面に照射することができる。
したがって、缶体1の外面全体にわたって検査光を平均的に照射でき、缶体1全体についてピンホール等の欠陥の有無を検査することができる。
検査後、欠陥が検出された不良品は、
図2に矢印Aで示されるように回収され、欠陥が検出されなかった良品は、矢印Bで示されるように回収される。
【0035】
なお、上記実施形態においては、スピンドルフェイス7を光透過性材料により形成された板状部材70の内部に乱反射部73が形成された構成としたが、この構成に加えて、
図6(b)に示すように、板状部材70の支持面71fとは反対側の裏面71bに検査光を反射させる反射板72を設けることとしてもよい。なお、反射板72は、例えば鏡面仕上げされたステンレス鋼により形成することができる。
板状部材70の裏面71bに反射板72を設けることで、板状部材70の内部を通過する検査光を反射板72で反射させることができる。また、その反射光を乱反射部73で散乱させて缶体1の外面に分散照射することができるので、板状部材70の内部を通過して照射される検査光の光量を増加させることができるとともに、検査光を缶体1の外面の広い範囲に平均的に届けることができ、検査精度の向上を図ることができる。
【実施例】
【0036】
この缶体の検査装置100において、缶体1に形成されたピンホールの形成位置による光検出部4の出力(光量)の変化を比較する実験を行った。本実施形態の実施例として、
図6(a)及び(b)に示すように乱反射部73を形成したスピンドルフェイス7A,7Bを用いた実施例1及び実施例2と、比較例として、
図6(c)に示すように乱反射部が形成されない従来のスピンドルフェイス7Cを用いた比較例1とを用意し、これら実施例1,2及び比較例1における、光検出部4の検出量の違いを比較した。なお、検査対象の缶体1には、接地径12Cが48mmとされるものを用いた。
【0037】
実施例1,2及び比較例1のスピンドルフェイス7A〜7Cは、厚さ17mmの透明アクリルにより
図5に示すような円弧板状に形成し、その半径方向の幅Wを75mmとして、缶体1の接地径12Cよりも平面サイズを大きくして形成した。そして、実施例1,2のスピンドルフェイス7A,7Bのみに、メインターレット6の周縁部に近づくにつれて支持面71fから離間するように傾斜する乱反射部73を形成した。この乱反射部73は、
図6(a),(b)に示すように、支持面71fとの最小距離D1を2mmとし、延在方向においてスピンドルフェイス7A,7Bの各表面からの距離D2を1mmとする内側の範囲に形成した。
また、実施例2と比較例1のスピンドルフェイス7B,7Cには、支持面71fと反対側の裏面に反射板72を設けた。反射板72は、鏡面仕上げされたステンレス鋼により形成した。
【0038】
また、乱反射部73の加工は、ドイツのセリオン社製のX‐1加工機を用いてレーザ加工により形成した。この乱反射部73の加工は、スピンドルフェイス7A,7Bの内部に焦点を結ぶようにレーザ光を照射することにより行い、スピンドルフェイス7A,7Bの一部を溶かし、内部に微細な気泡を複数形成することにより、微細な凹凸形状を形成し、乱反射部73を形成した。
なお、X‐1加工機の光源はYAGレーザの2倍波(第2高調波)であり、波長が532nmとされる。
【0039】
また、実験には、アルミニウム合金の板材を絞り、しごき加工して形成されたDI缶を用いた。そして、この缶体1の底部12の周縁部から10mm離れた位置に直径約33μmのピンホールを予め形成しておき、
図4に示すように、缶体1を0°の位置から7.5°ずつ、352.5°の位置まで回転させた場合の光検出部4による出力の変化を測定した。
このため、このピンホールに対して十分に検査光が届いていれば、光検出部4による出力が上昇した状態となり、ピンホールの存在を検出することができる。
実験結果を
図7に示す。なお、
図7に示す「閾値」は、ノイズ等の影響を考慮しても、ピンホール等の存在を検出可能な最低レベルの出力を示す。
【0040】
図7からわかるように、乱反射部を形成していない比較例1のスピンドルフェイス7Cにおいては、光検出部4の出力(光の検出量)が閾値に近接するほど低下する場合(0°及び360°付近)があり、ピンホールの形成位置によってはピンホールを検出できなくなるおそれがある。
一方、乱反射部73を形成した実施例1又は実施例2のスピンドルフェイス7A,7Bは、どの角度においても閾値よりも十分に高い出力が安定して得られ、ピンホールが缶体1のどの位置に形成されていても検出可能であることがわかった。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のスピンドルフェイス7を用いた缶体の検査装置100においては、スピンドルフェイス7を、光透過性材料により形成された板状部材70の内部に乱反射部73を設ける構成としているので、乱反射部73で散乱した検査光を板状部材70の内部を通じて照射することができる。また、乱反射部73では、検査光が正反射ではなく乱反射することから、乱反射部から反射して分散照射される光量を均一化することができる。このため、光源3からの検査光が直接照射されにくい缶体1とスピンドルフェイス7との支持部分にも検査光を平均的に届けることができ、確実にピンホール等の有無を検出することが可能となる。
また、乱反射部73は板状部材70の内部に設けられているので、板状部材70の裏面に反射面を形成する場合よりも、支持面71fに近接させて配置することができる。このため、検査光が光透過性材料の内部を通過する際に懸念される光量減少の問題が緩和され、円滑に検査を行うことができる。
【0042】
さらに、乱反射部73をレーザ加工により形成された微細な気泡の集合体によって缶体1の底部12に沿う面状に形成していることから、乱反射部73で反射した検査光が、スピンドルフェイス7により支持された部分に照射されやすくなる。また、乱反射部73は、メインターレット6の周縁部に近づくにつれて缶体1の底部12を押圧する支持面71fから離間するように傾斜して設けられ、光源3に対面する範囲が広く確保されていることから、検査光を乱反射させやすくなっており、缶体1の底部12に検査光を確実に照射させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、乱反射部73を支持面71fに対して傾斜して形成していたが、これに限定されるものではない。例えば、
図8(a)に示すように支持面71fと平行の乱反射部73Aを形成する場合や、
図8(b)に示すように乱反射部73Bを波形面で形成する場合、
図8(c)に示すように乱反射部73Cを階段状に複数の面を組み合わせて形成する場合においても、光源から拡散照射される検査光を乱反射部によって缶体1の底部12に分散照射することができ、光源からの検査光が直接照射されにくい缶体1とスピンドルフェイス7との支持部分にも検査光を平均的に届けることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、スピンドルフェイス7の板状部材70を円弧板状に形成したが、板状部材70の形状はこれに限定されるものではなく、円板状や矩形板状等の種々の形態で形成することが可能である。