【解決手段】 工事の施工を請け負う施工者は、工事が一定の段階まで進捗すると、工事ステータスとあわせて工事の現場の進捗状況を撮影した写真やビデオなどの画像ファイルを、工事進捗情報として与信額出力サーバに送信する。管理者は工事ステータスと画像ファイルを与信額出力サーバから呼び出し、画像ファイルを開いて工事ステータスが適切であるかを確認して、適切であると判断されれば承認操作を行い、与信額出力サーバでは工事進捗情報に管理者の承認済が記録される。管理者の承認済であることが記録された工事進捗情報から、工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算して、電子記録債権の発生記録等を請求する電子債権管理システム等に出力する。
工事の施工を請け負う施工者が操作する施工者端末及び前記施工者が報告した工事の進捗情報を承認する承認者が操作する承認者端末とネットワークを介して接続された、工事の出来高に応じて決定される与信額を出力する与信額出力サーバであって、
前記施工者端末から、工事の対象物件、工事の進捗段階を特定する工事ステータス及び工事の現場における進捗状況を撮影した画像ファイルを含む工事進捗情報を受信する工事進捗情報受信手段と、
前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報を格納する工事進捗情報格納手段と、
前記承認者端末に、前記工事進捗情報格納手段から読み出した一の工事進捗情報に含まれる工事ステータスと画像ファイルを送信する工事進捗情報送信手段と、
前記承認者端末から、前記画像ファイルを確認して前記工事ステータスが適切であると承認した承認操作が行われたことを示す情報を受信すると、前記工事進捗情報格納手段に格納された前記承認操作の対象となる工事進捗情報に、承認者による承認済であることを示す承認情報を記録する承認情報記録手段と、
前記工事進捗情報格納手段に格納された承認情報の記録された少なくとも一の工事進捗情報を対象に、承認された工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算して所定の装置に出力する与信額出力手段と、
を備えることを特徴とする与信額出力サーバ。
工事の出来高に応じた与信額の演算に二以上の承認者による工事ステータスの承認が必要な場合は、前記工事進捗情報格納手段に格納される工事進捗情報には、各々の承認者による承認情報が記録され、前記与信額出力手段は、全ての承認者による承認情報が記録された工事進捗情報を対象に、与信額を演算して所定の装置に出力すること
を特徴とする請求項1記載の与信額出力サーバ。
工事の施工を請け負う施工者が操作する施工者端末及び前記施工者が報告した工事の進捗情報を承認する承認者が操作する承認者端末とネットワークを介して接続された与信額出力サーバによって実行される、工事の出来高に応じて決定される与信額の出力方法であって、
前記与信額出力サーバが、前記施工者端末から、工事の対象物件、工事の進捗段階を特定する工事ステータス及び工事の現場における進捗状況を撮影した画像ファイルを含む工事進捗情報を受信する工事進捗情報受信ステップと、
前記与信額出力サーバが、前記承認者端末に、前記工事進捗情報受信ステップで受信した工事進捗情報を格納する工事進捗情報格納手段から読み出した一の工事進捗情報に含まれる工事ステータスと画像ファイルを送信する工事進捗情報送信ステップと、
前記与信額出力サーバが、前記承認者端末から、前記画像ファイルを確認して前記工事ステータスが適切であると承認した承認操作が行われたことを示す情報を受信すると、前記工事進捗情報格納手段に格納された前記承認操作の対象となる工事進捗情報に、承認者による承認済であることを示す承認情報を記録する承認情報記録ステップと、
前記与信額出力サーバが、前記工事進捗情報格納手段に格納された承認情報の記録された少なくとも一の工事進捗情報を対象に、承認された工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算して所定の装置に出力する与信額出力ステップと、
を有することを特徴とする与信額の出力方法。
【背景技術】
【0002】
大規模な災害の発生後、被災者向けに自治体が公営住宅を建設することが必要になると、まとまった棟数の物件が発注される住宅建設に地元の建設事業者が対応できるようにするために、
図1に示したように、地元の建設事業者が一般社団法人である協議会を設立、自治体から建設工事の一括発注を受け(1)、協議会からそのメンバーである各々の建設事業者に物件毎に工事を発注する(2)スキームが採用されることがある。
【0003】
このスキームで問題になるのが、工事を施工する建設事業者の人件費や資材購入のための支払い(3)が、自治体から元請けである協議会への工事代金の支払い(4)、さらにその支払いを原資とする協議会から各々の建設事業者への工事代金の支払い(5)より、先行して発生してしまうことである。建設事業者には、このようにして発生する運転資金の調達が、工事を受注、施工する上での重要な課題となる。
【0004】
そこで出願人が想到したのが、
図2に示した資金供給のスキームである。建設工事の発注者である自治体から受注者である協議会が建設工事の一括発注を受けると(1)、その工事代金を受け取る債権を、この資金供給スキームのために設立されるSPC(特別目的会社)に譲渡した上で(2)、施工者である各々の建設事業者に工事を発注する(3)。
【0005】
建設事業者は、工事の出来高を確認する業務を担当する管理者に、所定のタイミングで工事の進捗状況を報告する(4)。管理者は工事の進捗状況から出来高を確認した上で、その出来高に応じて資金供給が可能となる与信額を算定してSPCに通知(5)、SPCが与信額相当を協議会に支払う電子記録債権を発生させる(6)。協議会から建設事業者にこの電子記録債権を譲渡すれば(7)、建設事業者は電子記録債権を金融機関に譲渡する(電子記録債権を割引く)ことによって、必要なタイミングでの速やかな資金調達が可能になる。尚、完成時等における工事代金の発注者からの工事代金の支払いは、債権が譲渡されているので、協議会ではなくSPCに対して行われることになる(8)。
【0006】
この資金供給スキームは、上記のような一括発注される公営住宅の建設工事以外の工事にも適用が可能である。例えば近年、緊急輸送用道路の安全性を確保するために、沿道建築物の耐震工事に対して自治体が工事費用の一部を助成する制度が施行されている例がある。こうしたケースでは、耐震工事を発注するマンション管理組合等に十分な積立金がない場合、助成金が受け取れるまでの間は耐震工事を施工する建設事業者への支払いが困難であり、建設事業者には人件費や資材購入のための支払いによって発生する運転資金の調達が課題となる。
【0007】
こうしたケースでも同様に、
図12に示した資金供給スキームによって、建設事業者はスムーズな運転資金の調達が可能になると考えられる。すなわち、交付者である自治体から受領者となるマンション管理組合に対する助成金の交付が決定されると(1)、その助成金を受け取る債権を、この資金供給スキームのために設立されるSPC(特別目的会社)に譲渡した上で(2)、施工者である建設事業者に耐震工事を発注する(3)。
【0008】
建設事業者は、工事の出来高を確認する業務を担当する管理者に、所定のタイミングで工事の進捗状況を報告する(4)。管理者は工事の進捗状況から出来高を確認した上で、その出来高に応じて資金供給が可能となる与信額を算定してSPCに通知(5)、SPCが与信額相当をマンション管理組合に支払う電子記録債権を発生させる(6)。マンション管理組合から建設事業者にこの電子記録債権を譲渡すれば(7)、建設事業者は電子記録債権を金融機関に譲渡する(電子記録債権を割引く)ことによって、必要なタイミングでの速やかな資金調達が可能になる。尚、完成時等における工事代金の発注者からの工事代金の支払いは、債権が譲渡されているので、マンション管理組合ではなくSPCに対して行われることになる(8)。
【0009】
以上に例示した資金供給スキームによると、個々の施工者からの融資の申込みに対して審査や担保権の設定を行い、融資を実行するケースに比べて、タイムリーで、スピーディーかつローコストの資金供給が可能になると考えられるが、ここで課題となるのが、施工者となる建設事業者から管理者への工事の進捗状況の報告を、施工者への負担を考慮してできるだけ簡易な方法によってスムーズに行うとともに、報告された進捗状況が適切なものであるかを確認するための方法である。
【0010】
こうした課題に対して、工事期間中の運転資金に対して融資を行う際の対象物件の工事の進捗状況を確認するために、例えば、進捗の段階を「進捗番号」によって把握する方法(特許文献1参照)や、工務店が受領した資材等の請求書によって把握する方法(特許文献2参照)、工程の特定が可能な資材(キー資材)によって把握する方法(特許文献3参照)などが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された進捗の段階を「進捗番号」によって把握する方法では、進捗番号が自己申告となってしまうため、事実と異なる進捗番号が申告されても対応できないという問題がある。
【0013】
この点については、特許文献2に開示された工務店が受領した資材等の請求書によって把握する方法によると、第三者である資材の納入業者から発行された請求書が根拠となるため、客観的な進捗状況の把握が可能になると考えられるが、一方で、請求書が不正に作成された場合には対応し難いほか、融資を実行する側では請求書等の書類の受領やその確認という事務工数が発生し、対象となる物件の数が増えると大きな負担になることが問題となる。
【0014】
特許文献3に開示された工程の特定が可能な資材によって把握する方法も、資材の納入業者側から資材納入に関する情報の提供を受けることによって客観性が担保されることにはなるが、資材の納入業者もこのスキームに取り込まなければならなくなるほか、融資を受ける施工者と資材の納入業者が共謀して不正を行った場合には対応できないという問題もある。
【0015】
本発明は、このような課題に対応するためになされたものであり、工事の施工者に発生する工事期間中の運転資金需要に対応すべく、工事の出来高に応じて決定される与信額を演算し、出力するための与信額出力サーバ及び与信額の出力方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題に対応する本発明は、工事の施工を請け負う施工者が操作する施工者端末及び前記施工者が報告した工事の進捗情報を承認する承認者が操作する承認者端末とネットワークを介して接続された、工事の出来高に応じて決定される与信額を出力する与信額出力サーバであって、前記施工者端末から、工事の対象物件、工事の進捗段階を特定する工事ステータス及び工事の現場における進捗状況を撮影した画像ファイルを含む工事進捗情報を受信する工事進捗情報受信手段と、前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報を格納する工事進捗情報格納手段と、前記承認者端末に、前記工事進捗情報格納手段から読み出した一の工事進捗情報に含まれる工事ステータスと画像ファイルを送信する工事進捗情報送信手段と、前記承認者端末から、前記画像ファイルを確認して前記工事ステータスが適切であると承認した承認操作が行われたことを示す情報を受信すると、前記工事進捗情報格納手段に格納された前記承認操作の対象となる工事進捗情報に、承認者による承認済であることを示す承認情報を記録する承認情報記録手段と、前記工事進捗情報格納手段に格納された承認情報の記録された少なくとも一の工事進捗情報を対象に、承認された工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算して所定の装置に出力する与信額出力手段と、を備えることを特徴とする与信額出力サーバである。
【0017】
本発明では、工事の施工を請け負う施工者から、工事ステータスの申告とあわせて、工事の進捗状況を客観的に把握し得る情報として、工事の現場を撮影した写真やビデオなどの画像ファイルを送信させ、管理者によって画像ファイルから申告された工事ステータスが適切と判断された工事進捗情報のみを対象にして、工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算する。このように構成することによって、請求書の提出等の事務負担を要することなく、工事の進捗状況を正確に把握することが可能になる。尚、本発明において対象となる工事の種別は特に限定されるものではなく、住宅の建設工事、耐震工事等を対象に含むことができる。
【0018】
また、本発明は、工事の出来高に応じた与信額の演算に二以上の承認者による工事ステータスの承認が必要な場合は、前記工事進捗情報格納手段に格納される工事進捗情報には、各々の承認者による承認情報が記録され、前記与信額出力手段は、全ての承認者による承認情報が記録された工事進捗情報を対象に、与信額を演算して所定の装置に出力することを特徴とすることもできる。
【0019】
このように構成すると、施工者から申告された工事ステータスが適切であるかどうかを二者以上が確認して判断することができるので、工事の進捗状況をより正確に把握することが可能になる。
【0020】
さらに、本発明は、対象物件の工事金額に関する情報を格納する物件金額情報格納手段を備えていて、前記与信額出力手段は、前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報に対応する対象物件の工事金額を前記物件金額情報格納手段から読み出し、承認された工事ステータスに関連づけて設定された工事の出来高を示す工事の進捗割合を乗じた値から、与信額を演算して所定の装置に出力することを特徴としてもよい。
【0021】
このように構成すると、施工者は資材の購入に要した領収書を提出するなど、工事の出来高を算出する基礎となる書類等の提出を行わなくても、管理者によって適切であると確認された工事ステータスから工事の出来高を概算することによって、効率的に与信額を演算することが可能になる。
【0022】
さらに、本発明は、前記工事進捗情報受信手段は、前記施工者端末から前記画像ファイルを撮影した時における前記施工者端末の位置情報を受信し、対象物件の位置情報を格納する物件位置情報格納手段と、前記工事進捗情報受信手段が受信した前記施工者端末の位置情報と、前記物件位置情報格納手段に格納された前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報に対応する対象物件の位置情報が一致するかを確認する位置情報確認手段と、を備えていて、前記工事進捗情報格納手段には、前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報のうち、前記位置情報確認手段で位置情報が一致した工事進捗情報のみが格納され、前記位置情報確認手段で位置情報が不一致と判断された場合には、前記工事進捗情報受信手段が受信した工事進捗情報について所定のエラー処理が実行されることを特徴としてもよい。
【0023】
このように構成すると、施工者から申告された工事ステータスが適切であるかどうかだけでなく、施工者から送信された写真やビデオなどの画像ファイルが、実際に工事の現場で撮影されたものであるかどうかを検証することも可能になる。尚、ここでの位置情報が一致するかの判断については、緯度経度等の数値が完全に一致することを必須の要件とするものではなく、一定の範囲で近似していれば一致と判断することとしてよい。
【0024】
本発明は、本発明にかかる与信額出力サーバによって実行される与信額の出力方法として特定することもできる。
【0025】
本発明にかかる与信額の出力方法は、工事の施工を請け負う施工者が操作する施工者端末及び前記施工者が報告した工事の進捗情報を承認する承認者が操作する承認者端末とネットワークを介して接続された与信額出力サーバによって実行される、工事の出来高に応じて決定される与信額の出力方法であって、前記与信額出力サーバが、前記施工者端末から、工事の対象物件、工事の進捗段階を特定する工事ステータス及び工事の現場における進捗状況を撮影した画像ファイルを含む工事進捗情報を受信する工事進捗情報受信ステップと、前記与信額出力サーバが、前記承認者端末に、前記工事進捗情報受信ステップで受信した工事進捗情報を格納する工事進捗情報格納手段から読み出した一の工事進捗情報に含まれる工事ステータスと画像ファイルを送信する工事進捗情報送信ステップと、前記与信額出力サーバが、前記承認者端末から、前記画像ファイルを確認して前記工事ステータスが適切であると承認した承認操作が行われたことを示す情報を受信すると、前記工事進捗情報格納手段に格納された前記承認操作の対象となる工事進捗情報に、承認者による承認済であることを示す承認情報を記録する承認情報記録ステップと、前記与信額出力サーバが、前記工事進捗情報格納手段に格納された承認情報の記録された少なくとも一の工事進捗情報を対象に、承認された工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とする与信額を演算して所定の装置に出力する与信額出力ステップと、を有することを特徴とする与信額の出力方法である。
【0026】
また、本発明にかかる与信額の出力方法は、前述の与信額出力サーバの各々の構成に対応して実行される与信額の出力方法として特定することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、工事の施工者は工事の現場で撮影した写真等の画像ファイルを送信するだけで、工事の出来高に応じて決定される与信額を簡易な方法で速やかに演算し、電子記録債権を発生させるための管理システムや融資を行う金融機関等のシステム等に出力することが可能になる。これによって、工事の施工者に発生する工事期間中の運転資金需要に対して、円滑な資金供給が行われることを期待することができる。
【0028】
本発明は、災害時における公営住宅建設時など、同時期に大量の住宅を速やかに建設しなければならないようなケースにおける施工者に対する資金供給スキームに好適であるため、災害復旧の促進に資することも期待される。
【0029】
その他にも、助成金を受けて施工される耐震工事における施工者に対する資金供給スキームにも適用可能であり、耐震化促進などの都市計画の推進に資することも期待される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、以下の説明は、
図2に示した災害時における公営住宅建設のための資金供給スキームに本発明を適用する例を前提としているが、これは本発明の実施形態の一例を示したものであって、それ以外にも、例えば、
図12に示した助成金の交付が決定された耐震工事のための資金供給スキームに本発明を適用することが可能である。そのため、与信額出力サーバに設けられる各々のテーブルの項目、与信額出力サーバからの与信額の出力形態などを含め、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図3は、本発明の実施形態の概要を示したものである。本発明によって実現する資金供給スキームについては、
図2を用いて先に説明したとおりであるが、
図3の施工者、受注者、管理者は、それぞれ
図2の施工者(建設事業者)、受注者(協議会)、(出来高確認業務)管理者に該当する。
図3の与信者には、
図2で電子記録債権を発生させるSPCが該当するが、電子記録債権ではなく融資によって資金を供給する場合は、銀行等の金融機関が与信者となる。また、与信者が管理者も兼ねる構成としてもよいが、ここでは電子記録債権を用いて、かつ与信者と管理者が分離されたスキームを前提として、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
本発明にかかる与信額出力サーバを利用する施工者、受注者、管理者は、ログインIDやパスワード等の利用者情報を、あらかじめ与信額出力サーバのデータベースに登録しておく。あわせて、受注した建設工事の対象物件の工事金額や位置等に関する物件情報を、受注者等が与信額出力サーバにアクセスしてデータベースに登録する。
【0034】
現場での建設工事が所定の段階まで進捗すると、施工者は持ち運びが可能なタブレット端末等のネットワーク端末を用いて各々の現場での工事の進捗状況を写真やビデオで撮影し、基礎工事完了、屋根工事完了等の工事ステータスに関する情報とあわせて、与信額出力サーバに送信する。与信額出力サーバでは、受信した工事ステータスに関する情報が写真やビデオなどの画像ファイルと関連づけられて、工事進捗情報としてデータベースに保存される。
【0035】
その後、管理者が与信額出力サーバにアクセスして、データベースに保存された工事ステータスに関する情報と写真やビデオなどの画像ファイルを呼び出す。管理者は画像ファイルを開いて現場の進捗状況を確認し、データベースに保存された工事ステータスが適切であると判断すると、工事ステータスを承認する所定の承認操作を行う。承認操作が行われたことを示す情報は与信額出力サーバに送信され、画像ファイル等が呼び出されたデータベースの工事進捗情報に、管理者の承認済であることが記録される。
【0036】
管理者と同様に、受注者にも工事ステータスの承認権限を与えることとしてもよく、その場合は、受注者も与信額出力サーバにアクセスして、データベースに保存された工事ステータスに関する情報と写真やビデオなどの画像ファイルを呼び出す。受注者は画像ファイルを開いて現場の進捗状況を確認し、データベースに保存された工事ステータスが適切であると判断すると、工事ステータスを承認する所定の承認操作を行う。承認操作が行われた情報は与信額出力サーバに送信され、画像ファイル等が呼び出されたデータベースの工事進捗情報に受注者の承認済であることが記録される。
【0037】
尚、上記のケースで受注者が地元建設業者の協議会であるなど、建設工事の現場に近い場所で活動していれば、画像ファイルではなく、実際に現場に赴いて進捗状況を確認することができる場合もある。そのような場合には、受注者もタブレット端末等の持ち運び可能なネットワーク端末を用いて、現場から与信額出力サーバにアクセスして、画像ファイルは呼び出さずに工事ステータスの承認操作のみを行うこととしてもよい。
【0038】
与信額出力サーバでは、承認が必要な全ての者からの承認済であることが記録された工事進捗情報を対象にして、与信額を演算する処理を行う。具体的には、承認済の工事ステータスから特定される工事の進捗割合を、データベースに保存されている対象物件の工事金額に乗じて出来高を算出し、これに一定の掛目をかける等の演算式に基づいて、進捗した工事分に対応して資金供給が可能な与信額が演算される。
【0039】
演算された与信額は、資金供給のために発生させる電子記録債権の債権額となり、電子債権記録機関システムに対して電子記録債権の発生記録の請求等を行う電子債権管理システムに出力されるが、与信額を与信者が操作するPC等の端末に一旦出力して、与信者によって電子債権管理システムに入力されるように構成してもよい。尚、資金供給を電子記録債権の割引ではなく融資によって行う場合は、演算された与信額を融資機関のコンピュータシステムに出力するよう構成すればよい。
【0040】
図4は、本発明にかかる与信額出力サーバの構成の一例を示している。与信額出力サーバ10が本発明にかかる与信額出力サーバに対応するが、CPU、メインメモリ、HDD等の補助記憶装置が備えられたインターネット等のネットワークに接続可能なコンピュータであって、補助記憶装置に格納されたプログラムがメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、所定の機能が実現される。
【0041】
与信額出力サーバ10を構成するコンピュータの物理的な構成は特に限定されるものではなく、本発明で用いられる与信額の演算機能以外の他の機能が同一のコンピュータに備えられるものであってもよい。本発明に必要な各々の機能は、物理的に一台のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、複数のコンピュータを用いて実現されるものであってもよい。
【0042】
与信額出力サーバ10の入出力制御部11、与信額演算部12、与信額出力部13は、いずれも機能的に特定されるものであって、HDD等の補助記憶装置に格納された各部の機能に対応するプログラムがメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、各部に対応する機能が実現される。
【0043】
与信額出力サーバ10の利用者情報格納部14、工事情報格納部15、与信額格納部16とこれらの各部に含まれる各々のテーブルには、それぞれHDD等の補助記憶装置の所定の記憶領域が割り当てられる。これらの記憶領域は物理的に一台のコンピュータに設けられることを要件とするものではなく、データベースサーバ等を構成するコンピュータなどの複数のコンピュータに設けられるものであってもよい。
【0044】
施工者端末20、受注者端末30、管理者端末40には、いずれもインターネット等のネットワークに接続して与信額出力サーバ10にアクセスすることが可能なネットワーク端末が用いられる。ネットワーク端末には、PC、タブレット端末、スマートフォンなどを用いることが可能であり、特に限定されるものではないが、工事の現場で写真やビデオを撮影して送信することが必要な施工者端末20には、カメラ機能を備えたタブレット端末やスマートフォンなどを用いることが好ましい。
【0045】
与信者端末50は、与信額出力サーバ10で演算された情報を出力可能な端末であって、例えば、与信額出力サーバ10とネットワークで接続されたPCを用いることができるが、与信額出力サーバ10をコンピュータ本体とすれば、ディスプレイやプリンタなどの出力装置のみで構成することも可能である。
【0046】
電子債権管理システム60、電子債権記録機関システム70は、それぞれ電子記録債権の発行記録等の請求、電子記録債権の記録や管理等が可能なコンピュータシステムであれば、その構成は特に限定されるものではない。
【0047】
以上の構成を前提に、
図5〜
図9に示したテーブルの例と、
図10、11のフローチャートを用いて、本発明にかかる与信額出力サーバの動作について説明する。
【0048】
個々の工事を請け負う建設業者である施工者、工事の一括契約を受注している協議会等の受注者、出来高の確認業務を担当する管理者は、それぞれ施工者端末20、受注者端末30、管理者端末40を操作して、インターネット等のネットワークを介して与信額出力サーバ10と情報の送受信を行うが、情報の送受信の際には与信額出力サーバ10では入出力制御部11が起動されて、各々の端末への入力画面の送信や入力されたデータの受け付け、所定のテーブルへのデータの書き込み等の処理が実行される。
【0049】
与信額出力サーバ10を利用するにあたり、施工者、受注者、管理者は、それぞれ施工者端末20、受注者端末30、管理者端末40から所定の情報を送信して、利用者情報格納部14の利用者テーブル141に利用者情報を登録する。
図5は、利用者テーブル141の一例を示したものであるが、利用者を識別する業者ID毎に設けられたレコードには、それぞれの名称や、与信額出力サーバ10が提供するサービスにログインする際に本人認証に用いられる、ログインIDとパスワードなどが登録される。これらの情報を登録する方法は特に限定されず、例えば、いずれも管理者端末40から登録することとしてもよい。
【0050】
尚、
図5の例では権限に「管理者」「承認者」とあるが、これらは
図3で説明した資金供給スキームにおける管理者等の区別とは異なり、与信額出力サーバ10における全体の管理権限、工事進捗情報に対する承認権限から区分したものであり、この例では施工者(A003〜A005)が登録した工事進捗情報について、管理者(A001)と受注者(A002)の双方が承認権限を有し、与信額の算定対象とするためには両者の承認が必要であることとする。
【0051】
また、工事の一括契約を受注した受注者は、受注者端末30から受注した工事の対象物件に関する情報を送信する。送信された対象物件に関する情報は、工事情報格納部15の物件テーブル151に書き込まれる。
図6は、物件テーブル151の一例を示したものであるが、対象物件を識別する物件ID毎に設けられたレコードには、それぞれの物件名や、工事の施工を担当する施工者の業者ID、対象物件の位置を特定する緯度及び経度情報、対象物件の工事金額などが登録される。
【0052】
尚、こうした対象物件に関する情報の登録は、受注者端末30からの送信に限られるものではなく、施工者が施工者端末20から各々が担当する対象物件の情報を送信することとしてもよいし、対象物件一覧のリストを受け取った管理者が、管理者端末40から送信することとしてもよい。
【0053】
さらに、出来高の確認業務を担当する管理者は、管理者端末40から情報を送信して、与信額出力サーバ10の工事情報格納部15の工事テーブル152に、各々の工事ステータスに関連づけた工事進捗割合に関する情報を設定する。
図7は、工事テーブル152の一例を示したものであるが、基礎工事、木工事、屋根工事といった工事ステータス毎に、各々の工事が終了した段階における工事進捗割合を示す数値が関連づけて格納されている。
【0054】
尚、工事テーブル152に設定される工事ステータス毎の工事進捗割合を示す数値についても、上記に説明した管理者端末40から送信される構成に限られるものではなく、他の端末から登録することとしてもよいが、与信額の算出に用いられる数値なので、通常は管理者によって登録される性質のものである。
【0055】
次に、各々の対象物件の工事が一定の段階、例えば、工事テーブル152に設定されている基礎工事、木工事、屋根工事などの終了まで進捗すると、工事を担当する施工者は、工事の現場でタブレット端末等の施工者端末20から、工事の進捗状況を報告するための工事進捗情報を入力して与信額出力サーバ10に送信する。ここで送信する工事進捗情報の内容は特に限定されるものではないが、工事ステータスを特定する情報と、現場で撮影された工事の進捗状況が把握できる写真やビデオ等の画像ファイルが含まれる。また、送信する画像ファイルには、写真やビデオを撮影した時における施工者端末20の緯度経度等から特定される位置情報を付しておくことが好ましい。こうした工事進捗情報の送信処理は、タブレット端末等に専用のアプリケーションソフトをインストールしておくことによって、誰でも簡単に操作することができるので、施工者には特段の知識を要することなく容易に導入し得るものとなる。
【0056】
施工者端末20から受信した工事進捗情報は、与信額出力サーバ10の工事情報格納部15の記録テーブル153に書き込まれ、写真やビデオ等の画像ファイルも画像ファイル154として記録テーブル153と関連づけて工事情報格納部15に格納される。
図8は、記録テーブル153の一例を示したものであるが、受け付けた工事進捗情報を識別する記録ID毎に設けられたレコードには、受付日と対象物件を識別する物件ID、工事ステータス、画像ファイルから読み取った緯度経度等の撮影時の位置情報、画像ファイルの添付の有無(ここに画像ファイル154を格納したURL等のアドレス情報を書き込んで、画像ファイル154と関連付けておくこととすればよい)、承認者毎の承認の有無と承認日などが記録される。
【0057】
施工者端末20から送信されたこれらの工事進捗情報を与信額出力サーバ10で受信して保存するフローを示したのが、
図10のフローチャートである。与信額出力サーバ10で施工者端末20からのアクセスを検出し、ログインID及びパスワードを受け付けると(S01)、利用者テーブル141に格納されたログインID及びパスワードの組み合わせと照合して、施工者の本人認証を行う(S02)。
【0058】
施工者本人と認証されない場合はエラー処理となるが、施工者本人と認証された場合は、工事の進捗状況を報告する対象物件の物件IDを受け付けて、記録テーブル153に書き込む(S03)。ここで物件IDを受け付ける方法は特に限定されるものではなく、例えば、施工者端末20に直接入力された物件IDの値をそのまま受信することとしてもよいし、施工者が工事を担当する対象物件を物件テーブル151から検索し、その一覧リストを施工者端末20に表示させ、その中から進捗状況の報告を行いたい対象物件を選択させて、その対象物件の物件IDを受け付けることとしてもよい。
【0059】
次に、対象物件の工事の進捗状況を特定する工事ステータスを受け付けて、記録テーブル153に書き込む(S04)。ここで工事ステータスを受け付ける方法も特に限定されるものではないが、工事テーブル152に設定されているいずれの工事ステータスに対応するかを特定することが必要になるため、例えば、工事テーブル152に設定されている工事ステータスの項目をプルダウンメニュー等で選択可能な形式で施工者端末20に表示させ、その中から該当する工事ステータスを選択させて、その工事ステータスを特定することとすればよい。
【0060】
続いて、施工者端末20から受信した工事の現場で撮影された写真やビデオ等の画像ファイルから、その写真やビデオ等が撮影された場所の緯度経度等の位置情報を読み取って、物件テーブル151に格納されている対象物件に関する情報に含まれている緯度経度等の位置情報と一致するかを確認する(S06)。尚、この位置情報の照合は、この段階でコンピュータによって自動処理されることが好ましいが、読み取った位置情報をそのまま記録しておき、後に管理者が写真等を確認する際に合わせて確認することとしてもよい。
【0061】
尚、ここでの位置情報の一致は必ずしも厳密な一致を要求するものではなく、同一の場所であると推定できる程度に近似していればよい。こうした位置情報の照合によって、対象物件以外の工事の現場を撮影した進捗状況の偽装に対応することが可能になるが、さらに画像ファイルの作成日時等の情報を工事進捗情報の送信日時等と照合して、著しく日時が乖離している場合には不正の可能性ありと判断することとしてもよい。
【0062】
位置情報が不一致である場合はエラー処理となるが、位置情報が一致すれば、画像ファイル154のアップロードを受け付けて所定の記憶領域に保存して(S07)、工事進捗情報の受信処理を終了する。
【0063】
このようにして新たな工事進捗情報が記録テーブル153に格納されると、施工者から報告された工事ステータスが適切であることを承認する受注者と管理者は、それぞれ受注者端末30と管理者端末40に、記録テーブルに書き込まれた工事進捗情報の工事ステータスと、これに関連づけて保存されている画像ファイル154を呼び出して、画像ファイル154を開いて工事の進捗状況が工事ステータスに合致しているかを目視で確認する。確認のタイミングは特に限定されるものではないが、例えば、新たな工事進捗情報が記録テーブル153に書き込まれると、承認権限を有する者の端末に通知が送信されるよう構成すればよい。
【0064】
画像ファイル154を確認した結果、対象物件の工事の状況から登録された工事ステータスが適切であると判断されれば、受注者端末30と管理者端末40で所定の承認操作を行うことによって、それぞれが工事ステータスを承認したことを示す情報が与信額出力サーバ10に送信される。この情報を受信した与信額出力サーバ10では、記録テーブル153の対応するレコードに、承認権限を有する者が承認済であることを示す情報が書き込まれる。
図8の例であれば、各々から承認操作が行われたことを示す情報を受信した承認日が、承認済であることを示す情報として書き込まれているが、これらの情報が書き込まれていないレコードの工事進捗情報は、承認権限を有する者の確認が未済か、又は確認したが工事ステータスが適切ではないとして承認を受けられなかった状態のものとなる。
【0065】
図11のフローチャートは、与信額出力サーバ10で承認済の工事進捗情報から与信額を演算するフローを示している。与信額出力サーバ10では、所定のタイミングで与信額演算部12が起動され、記録テーブル153を検索して(S11)、新たに承認済の記録がされた工事進捗情報がないかを確認する(S12)。尚、与信額演算部12を記録テーブル153に新たな承認済の記録がされた際に起動することとしてもよく、その場合はS11〜S12の工程は不要となり、新たな承認済の記録がされた工事進捗情報を対象に、以下に説明する処理を実行する。
【0066】
尚、ここで承認済の記録がされたと判断されるのは、承認権限を有する全ての者の承認済が記録されて承認済として扱える工事進捗情報のみを対象とするものであって、承認権限を有する者の一部による承認済が記録されたものは対象には含まれないことに留意が必要である。
【0067】
新たに承認済の記録がされた工事進捗情報がある場合には、その工事進捗情報に含まれる物件IDに対応する対象物件の工事金額を物件テーブル151から読み出すとともに(S13)、工事進捗情報に含まれる工事ステータスに対応する工事進捗割合を工事テーブル152から読み出す(S14)。さらに、工事情報格納部150の掛目テーブル155に設定されている掛目を読み出して(S15)、工事金額に工事進捗割合を乗じることによってその段階での工事の出来高を算出、さらに算出した出来高に掛目を乗じることによって、資金供給のための電子記録債権を発生させることが可能な与信額を演算する(S16)。
【0068】
尚、ここで説明した具体的な算出式は、与信額を演算する一例を示したものであって、承認された工事ステータスに対応する工事の出来高を基準とするものであれば、本発明における与信額の具体的な計算式は特に限定されるものではない。
【0069】
続いて、与信額出力部13が起動され、与信額演算部12によって演算された与信額が、与信者端末50や電子債権管理システム60に出力されるとともに、演算された与信額と与信額の決定日等の情報が、
図9の例に示したような、与信額格納部16の与信額算定テーブル161に書き込まれる(S17)。
【0070】
与信者端末50や電子債権管理システム60に出力された与信額については、電子債権記録機関システム70に対して、工事に必要な運転資金を供給するSPCから受注者への与信額を債権額とする電子記録債権の発生記録が行われ、この電子記録債権が受注者から施工者に譲渡され、施工者は電子記録債権を金融機関等に譲渡することによって、煩雑な書類の提出や確認作業を伴うことなく、電子記録債権の割引による速やかな運転資金の調達が可能になるものである。