【実施例】
【0020】
(実施例1)
上記シールド電線の実施例を、
図1〜
図4を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、シールド電線1は、コア部2と、コア部2の外周22を覆う編組シールド層3とを有している。コア部2は、導体211と、導体211の周囲に被覆された絶縁材212とを有する1本の被覆電線21より構成されている。編組シールド層3は、複数の素線31を編み込んで構成されている。
図2及び
図3に示すように、素線31は、Al線を基材311として構成され、Alよりも酸化されにくいSnからなるめっき膜312を表面に有している。以下、シールド電線1の構成を詳説する。
【0021】
被覆電線21は、断面積3mm
2のCu線を導体211とし、その周囲に絶縁材212を押出成形して作製されている。
【0022】
編組シールド層3は、
図2に示すように、3本の素線31を互いに並べてなる素線束32を単位として形成されている。本例の編組シールド層3は、24組の素線束32を有している。図には示さないが、各々の素線束32は、コア部2の外周22をらせん状に巻き回されながら編み込まれている。本例においては、素線束32の撚りピッチ、すなわち素線束32がコア部2の外周22をらせん状に一回転したときにコア部2の長手方向に進む距離は20mmである。
【0023】
図3に示すように、素線31は、直径0.18mmのAl線を基材311とし、表面にSnよりなるめっき膜312を有している。また、基材311とめっき膜312との間には、めっき処理により形成されたNiよりなる中間膜313が設けられている。本例のシールド電線1におけるめっき膜312の厚みは1μmである。なお、めっき膜312及び中間膜313は、従来公知の方法により形成されている。
【0024】
本例においては、上述のように構成したシールド電線1を用いて、シールド性能の評価を行った。以下に、評価方法を説明する。
【0025】
<シールド性能評価>
図4に示すように、シールド電線1をまっすぐに伸ばして配置し、その一端11をネットワークアナライザ4の出力端子41に接続すると共に、他端12を50Ωの終端抵抗5に接続した。また、シールド電線1と平行にノイズ誘導線6を配置し、その一端61をネットワークアナライザ4の入力端子42に接続した。なお、ノイズ誘導線6の他端62は開放とした。
【0026】
次いで、ネットワークアナライザ4から発生させた交流信号をノイズ誘導線6に入力し、交流信号の周波数を300kHz〜3GHzの間で掃引した。これにより、交流信号に由来する誘導ノイズをシールド電線1に発生させると共に、シールド電線1から出力端子41側に反射した反射信号の強度をネットワークアナライザ4により測定した。得られた反射信号の強度及びノイズ誘導線6に入力した交流信号の強度を用いて交流信号に対する反射信号の強度比を算出し、その値を誘導ノイズ量とした。
【0027】
また、編組シールド層3を設けず、コア部2のみからなる比較用電線を別途準備し、上記と同様の方法により比較用電線の誘導ノイズ量を算出した。そして、交流信号の周波数が10MHzであるときに得られた、シールド電線1の誘導ノイズ量と比較用電線の誘導ノイズ量との差を求めた。以上の結果、シールド電線1は、比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量を50dB低減することができた。
【0028】
(実施例2)
本例は、めっき膜312の膜厚を1μmから2μmに変更した素線31を用いたシールド電線1の例である。本例においては、めっき膜312の膜厚を変更した以外は、実施例1と同様にシールド電線1を作製した。
【0029】
また、実施例1と同様に、シールド電線1及び比較用電線を用いて、誘導ノイズ量の測定を行い、両者の差を求めた。以上の結果、本例のシールド電線1は、比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量を51dB低減することができた。
【0030】
(比較例1)
本例は、直径0.18mmの軟銅線を用いたシールド電線1の例である。本例においては、上記軟銅線を素線31として用いた以外は、実施例1と同様にシールド電線1を作製した。
【0031】
また、実施例1と同様に、シールド電線1及び比較用電線を用いて、誘導ノイズ量の測定を行い、両者の差を求めた。以上の結果、本例のシールド電線1は、比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量を55dB低減することができた。
【0032】
(比較例2)
本例は、直径0.18mmのAl線を用いたシールド電線1の例である。すなわち、本例のシールド電線1は、表面にめっき膜312が形成される前の状態の基材311そのものを素線31とする編組シールド層3を有している。その他は実施例1と同様である。
【0033】
また、実施例1と同様に、シールド電線1及び比較用電線を用いて、誘導ノイズ量の測定を行い、両者の差を求めた。以上の結果、本例のシールド電線1は、比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量を38dB低減することができた。
【0034】
実施例1〜2及び比較例1〜2より知られるように、表面にSnよりなるめっき膜312を有する素線31を用いたシールド電線1は、編組シールド層3を有さない比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量を50〜51dB低減することができた。この値は、従来の軟銅線を用いたシールド電線1(比較例1)と同等の値であり、実施例1及び実施例2のシールド電線1が高周波領域において優れたシールド性能を有することがわかる。
【0035】
一方、比較例2のように、表面にめっき膜312を形成しないAl線を素線31として用いた場合には、編組シールド層3を有さない比較用電線に比べて、10MHzの交流信号に対する誘導ノイズ量が38dB小さくなった。以上の結果から、表面にめっき膜312を形成しないAl線を素線31として用いた比較例2のシールド電線1は、実施例1〜2のシールド電線1に比べて高周波領域におけるシールド性能が劣ることがわかる。
【0036】
なお、実施例1及び実施例2には、コア部2に1本の被覆電線21を有する単芯シールド電線1の例を示したが、コア部2の被覆電線21は、用途に応じて適宜数を増やしても良い。例えば
図5には、2本の被覆電線21を有する2芯シールド電線102の例を示す。また、
図6には、3本の被覆電線21を有する3芯シールド電線103の例を示す。また、
図7には、4本の被覆電線21を有する4芯シールド電線104の例を示す。なお、
図5〜
図7において用いた符号のうち、
図1及び
図2において用いた符号と同一の符号は、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0037】
また、実施例1及び実施例2には編組シールド層3が表面に露出したシールド電線1の例を示したが、必要に応じて編組シールド層3の外周33(
図2参照)を被覆するシース部を設けてもよい。シース部は、例えば、架橋ポリエチレン樹脂や架橋塩化ビニル樹脂等の、絶縁性を有する材料より構成することができる。