特開2015-149923(P2015-149923A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-149923(P2015-149923A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】緑茶の茶葉の火香を高める方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20150728BHJP
【FI】
   A23F3/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-24896(P2014-24896)
(22)【出願日】2014年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】田中 憲典
(72)【発明者】
【氏名】落合 兼太郎
(72)【発明者】
【氏名】小埜 栄一郎
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB02
4B027FC01
4B027FK04
4B027FP01
(57)【要約】
【課題】本発明は、火香の強化された緑茶の茶葉の製造方法、および火香の強化された緑茶の茶葉を提供すること。
【解決手段】本発明は、緑茶の茶葉の製造において、a)茶の生葉を摘採する工程、b)摘採した生葉に糖を吸収される工程、c)吸収処理後の生葉を荒茶に加工する工程、およびd)荒茶を火入れする工程、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)茶の生葉を摘採する工程、
b)摘採した生葉に糖を吸収させる工程、
c)吸収処理後の生葉を荒茶に加工する工程、および
d)荒茶を火入れする工程、
を含む、緑茶の茶葉の製造方法。
【請求項2】
b)工程において、生葉への糖の吸収を、茎の切断面を含む生葉の一部を糖水溶液と接触させることにより行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
接触時間が90分以上である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
接触時間が150分以上である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
b)工程において、糖水溶液の糖濃度が0.5重量%以上である、請求項2〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
b)工程において、糖水溶液の糖濃度が1.0重量%以上である、請求項2〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
b)工程での葉の糖水溶液との接触において、葉の部分の50%以上が糖水溶液とは接触していない、請求項2〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
b)工程での葉の糖水溶液との接触において、葉の部分の80%以上が糖水溶液に接触していない、請求項2〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
糖が還元糖である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
糖がブドウ糖である、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
d)の火入れ工程の温度が80〜170℃である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項記載の方法により製造される緑茶の茶葉。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項記載の方法により製造される緑茶の茶葉を溶媒と接触させることにより得られる緑葉抽出液を含む、茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶の茶葉の製造方法に関する。具体的には、茶の生葉に糖を吸収させる処理を施すことにより火香が強化された緑茶の茶葉の製造方法に関する。また、本発明は、前記方法により得られる緑茶の茶葉に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶の香味は多様な要素から構成されており、その中で「甘香ばしい香り」は緑茶の香味にとって重要な要素の一つである。「甘香ばしい香り」は、茶の審査用語では「火香(ひか)」と呼ばれる。火香は、荒茶から仕上茶を製造する工程の一つである「火入れ」において、加熱によって発揚される。
【0003】
火香をさらに高める方策として、火入れをさらに強くする(火入れ温度を高くする、あるいは火入れ時間を長くする)ことが考えられるが、一定の範囲を超えて火入れを強くすると、火香よりも焦げ臭さが目立つとともに苦味が増し、望ましい香気は得られない。
【0004】
火入れにより荒茶のアミノ酸および糖が減少し、火香成分が増加することが知られている。荒茶のアミノ酸および糖は、仕上茶の火香の前駆物質と考えられている(非特許文献1)。
【0005】
火香の前駆物質の一つと考えられるアミノ酸は、アミノ酸そのものが緑茶の旨味に寄与する重要な成分として着目されており、アミノ酸濃度を高めるための手法は古くから様々なものが提案されている。例えば、品種改良する(「さえみどり」種や「はるみどり」種など)、多量の肥料を施用する(特に窒素肥料など)、摘採前に被覆する(玉露、かぶせ茶)、日の出前後に摘採する(特許文献1)、茶葉中のタンパク質を酵素で分解してアミノ酸を得る(特許文献2)、などである。
【0006】
一方、同じく前駆物質の一つと考えられている糖に関する報告は少なく、糖濃度を高めようとする報告は特に少ない。糖は飲用時において一般に閾値以下であり、香味への寄与が小さいことが背景の一つと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4249795号
【特許文献2】特許第3782718号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】新版緑茶・中国茶・紅茶の化学と機能(アイ・ケイコーポレーション)58ページ、162ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の通り、荒茶中のアミノ酸を増やす方法が種々知られているが、これらの方法で得られた荒茶を火入れして仕上茶にしても、その火香は必ずしも十分に満足しうるものではない。
【0010】
本発明は、火香が強化された緑茶の茶葉の製造方法、および火香が強化された緑茶の茶葉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、荒茶中の糖濃度は一般的にアミノ酸濃度より低いことに着目した。すなわち、アミノ酸濃度を高めても、糖濃度がボトルネックとなって、優れた火香を備える所望の緑茶を得られないとの考えに至った。この考えに基づき、緑茶の茶葉の製造方法を鋭意検討したところ、驚くことに、摘採した生葉に糖を吸収させた後に荒茶に加工し火入れすることにより火香を強化することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に限定されるものではないが、次の発明を包含する。
(1)a)茶の生葉を摘採する工程、b)摘採した生葉に糖を吸収させる工程、c)吸収処理後の生葉を荒茶に加工する工程、およびd)荒茶を火入れする工程、を含む緑茶の茶葉の製造方法。
(2)b)工程において、生葉への糖の吸収を、茎の切断面を含む生葉の一部を糖水溶液と接触させることにより行う、(1)記載の方法。
(3)接触時間が90分以上である、(2)記載の方法。
(4)接触時間が150分以上である、(2)記載の方法。
(5)b)工程において、糖水溶液の糖濃度が0.5重量%以上である、(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)b)工程において、糖水溶液の糖濃度が1.0重量%以上である、(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7)b)工程での葉の糖水溶液との接触において、葉の部分の50%以上が糖水溶液とは接触していない、(2)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)b)工程での葉の糖水溶液との接触において、葉の部分の80%以上が糖水溶液に接触していない、(2)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(9)糖が還元糖である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)糖がブドウ糖である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(11)d)の火入れ工程における茶葉表面の最高到達温度が80〜170℃である、(1)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の方法により製造される緑茶の茶葉。
(13)(1)〜(11)のいずれかに記載の方法により製造される緑茶の茶葉を溶媒と接触させることにより得られる緑茶抽出液を含む、茶飲料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火香が強化された緑茶の茶葉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、生葉に糖を吸収させる処理を施すことにより火香が強化された緑茶の茶葉の製造方法に関する。また、本発明は、前記方法により得られる緑茶の茶葉に関する。
【0015】
以下、本発明の実施の態様についてさらに詳しく説明する。
(茶の生葉)
荒茶は、茶樹(学名:Camellia sinensis)から摘採した生葉を原料として製造される加工品である。本発明に用いることのできる生葉は、茶であればその品種、産地、栽培方法、茶期などは限定されない。
【0016】
品種としては、例えば、やぶきた、ゆたかみどり、おくみどり、さやまかおり、かなやみどり、さえみどり、あさつゆ等、産地としては、例えば、静岡、鹿児島、三重、熊本、福岡、京都、宮崎、埼玉等が挙げられ、栽培方法としては露地、かぶせ、玉露等、茶期としては一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、冬春秋番茶、刈番等を挙げることができる。
【0017】
荒茶中のアミノ酸濃度は一般的に、茶期間の比較では一番茶に多く、二番茶は一番茶より少なく、三番茶は二番茶より少ないことが知られている。同一の茶期内では生育が進むにつれ低下することが知られている。茶葉中の糖は、茶期間の差異は明確な傾向は認められておらず、同一の茶期内では生育が進むに伴い増加することが知られている。本発明においては、どのような時期のものであってもよい。
(摘採)
摘採は、通常実施されている態様でよい。摘採方法としては、手摘み、鋏摘み、機械摘みなどその方法には限定されず、いずれの方法でも良い。
(糖吸収工程)
本発明では、摘採した生葉に糖を吸収させた後に荒茶に加工し、さらに仕上工程において火入れすることにより火香が強まる。よって、生葉に糖を吸収される工程が重要である。
【0018】
生葉に糖を吸収させる方法は、生葉中の糖濃度を高めることができる方法であればよく、特に制限されるものではない。一例を挙げれば、生葉の一部を糖水溶液と接触させることにより糖が吸収され、生葉中の糖濃度を高めることができる。
生葉の一部を糖水溶液と接触させる方法の場合、糖水溶液の糖濃度は、0.2〜5.0重量%、好ましくは0.5〜4.0重量%、更に好ましくは1.0〜3.0重量%である。低すぎると吸収できる量が減ってしまう。高すぎると植物が糖水溶液を吸収しにくくなったり、萎れたりしてしまう。
接触時間は90分以上であり、好ましくは150分以上または180分以上であり、より好ましくは210分以上であり、更に好ましくは240分以上であり、特に好ましくは6時間〜48時間程度である。そして、生葉と糖水溶液との接触は、糖を効率よく葉に吸収されるために生葉の一部を接触されることが重要である。最も好ましい条件としては、手摘みにより新芽の原型を留めていて切断面以外の損傷がなく、かつ、茎の切断面のみが糖水溶液に浸かっていて、かつ、葉の部分はその大部分が空気に触れている状態である。新芽のうち、切断箇所が多いとその分葉痛みが起こりやすくなってしまい、また、茎の切断面から吸収された糖水溶液が葉に届かなくなってしまう。茎の切断面から吸収させることで、蒸散流に乗せることができ、スムーズに吸収させることができる。茎の切断面が糖水溶液に浸かっていることは望ましいが、葉の部分も糖水溶液に浸かっていると、糖水溶液に浸かっている葉の部分からは水分が蒸散しにくくなり、結果的に茎の切断面から糖水溶液を吸収しにくくなるため、葉の部分は糖水溶液には極力触れず、空気に触れていることが好ましい。好ましくは、葉の部分の50%以上が糖水溶液とは接触していない、更に好ましくは葉の部分の80%以上が糖水溶液に接触していない状態で行う。
【0019】
本発明において、糖水溶液として用いる糖は、果糖およびブドウ糖などの還元糖、およびショ糖などの非還元糖である。荒茶中の糖濃度は、日本食品科学工学会43,1309〜1313(1996)の方法で測定することができる。
(荒茶加工工程)
上記糖吸収処理を施した生葉を加工して荒茶が得られる。普通煎茶の荒茶加工工程は一般的に、蒸熱、粗揉、揉捻、中揉、精揉および乾燥などの工程を含む。もっとも、本発明においては、普通煎茶の他、深蒸し茶、釜炒り茶、玉緑茶、手揉み茶等、その荒茶加工方法には限定されない。普通煎茶の製造方法から精揉を省略して中揉後に乾燥させても良い。また、碾茶に加工してもよい。すなわち、生葉を蒸した後、散茶機、碾茶炉、乾燥機を経て、碾茶の荒茶を得ることもできる。そして、碾茶の荒茶から抹茶を製造することができる。本発明の製造方法により得られる荒茶は、糖を多く含む。
(火入れを含む仕上げ加工工程)
荒茶を加工して仕上茶が得られる。荒茶から仕上茶を得る仕上げ加工工程は一般的に、荒茶の篩い分け、大きい茶の切断、粉や木茎の分離、火入れ、合組などの工程からなるが、本発明においてはその仕上げ加工方法には特に限定されない。
【0020】
火入れの設備としては、熱風で荒葉を加熱する熱風式火入れ機や、加熱した胴を回転させながら荒茶を加熱する回転ドラム式火入れ機が一般に広く利用されている。近年、遠赤外線を組合せたもの、マイクロ波加熱を組合せたものが存在する。本発明においては、これらのいずれであっても用いることができる。
火入れの条件は、以下に限定されないが、茶葉表面の最高到達温度としては80〜170℃を目安として挙げることができる。好ましくは100〜150℃である。処理時間は温度にもよるが、10〜60分を目安として挙げることができる。
(茶飲料製造工程)
仕上茶を加工して茶飲料が得られる。仕上茶から茶飲料を得る工程は一般的には、仕上茶を加温水などで抽出する抽出工程、抽出液から抽出残渣を取り除く粗濾過工程、抽出液を冷却する冷却工程、抽出液から細かな固形分を取り除く濾過工程、抽出液に水や緑茶抽出物、酸化防止剤、pH調整剤などを加えて調合液を得る調合工程、調合液を殺菌する殺菌工程を含む。ただし、前記工程は本発明のあくまで一例であり、これに限定するものではなく、例えば、工程の順序を入れ替えたり、別工程を付加したりすることもできる。
【0021】
抽出工程及び/又は調合工程などの抽出工程以降の工程において、L−アスコルビン酸及び/又はその食品として許容される塩などの酸化防止剤や、炭酸水素ナトリウムなどのpH調整剤を添加してもよい。調合完了時におけるL−アスコルビン酸及び/又はその食品として許容される塩などの配合割合は、L−アスコルビン酸として0.01〜0.08重量%程度、好ましくは、0.02〜0.06重量%程度が望ましい。調合完了時における炭酸水素ナトリウムの配合割合は、調合完了時におけるpHが5.0〜7.0程度になるよう配合量を調整するのが好ましい。
【0022】
上記により得られる茶調合液を用いて容器詰め茶飲料を調製することもできる。茶飲料を充填する容器としては、PETボトル、ガラス瓶、アルミ缶、スチール缶、紙容器など、通常用いられる容器のいずれも用いることができる。
【0023】
(火香の評価方法)
調製された茶抽出液または茶飲料等の火香の評価は、当業者に周知のいずれの方法で行ってもよいが、例えば訓練された評価者による官能評価により行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
評価試験1
2013年4月16日に、大阪府三島郡島本町のサントリー研究センター内の試験茶園において、「そうふう」種の一番茶を1心3葉で手摘みした。食紅及びブドウ糖を溶かした水溶液に新芽の切断面を浸し、直射日光の当たらない明るい室内にて静置し、食紅が葉脈に取り込まれる様子を観察した。水溶液の食紅の濃度は0.1 g/100mlに統一し、ブドウ糖濃度は、0.0g/100ml、0.2g/100ml、0.9g/100ml、2.9g/100ml、9.9g/100mgの5種類とし、可溶性固形分濃度として0.1g/100ml、0.3g/100ml、1g/100ml、3g/100ml、10g/100mlとなるようにして試験を行った。
【0025】
目視評価にて、以下の基準で判定した。
【0026】
× : 葉脈の食紅が確認できない
△ : 葉脈の食紅がかすかに確認できる
○ : 葉脈の食紅がはっきり確認できる
評価結果を表1に示す。尚、可溶性固形分濃度0.1 g/100ml系はブドウ糖濃度は0.0g/100mlで食紅の濃度0.1 g/100mであり、可溶性固形分濃度0.3 g/100ml系はブドウ糖濃度0.2g/100mlで食紅の濃度0.1 g/100mlである。
【0027】
0.1g/100ml区では90分後において葉脈内の食紅が目視で観察できた。0.3g/100ml区及び1g/100ml区では150分後から、3g/100ml区では180分後から葉脈内の食紅を確認できた。翌日(1395分後)には全ての区で食紅の取り込みが確認できた。
【0028】
【表1】
【0029】
評価試験2
2013年4月22日に、大阪府三島郡島本町のサントリー研究センター内の試験茶園において、「さきみどり」種の一番茶を1心3葉で手摘みして約240gの新芽を得た。水または2重量%ブドウ糖水溶液に新芽の切断面を浸し、直射日光の当たらない明るい室内にて24時間静置した。水に浸したものが比較例3(表2)、2重量%ブドウ糖水溶液に浸したものが実施例1(表2)である。静置後、ブドウ糖水溶液に触れていた部分を純水ですすいだ。新芽を電子レンジ(800W、90秒)により殺青した後、ホットプレート上で手作業による荒茶加工にて精揉まで行い、恒温乾燥機(70℃、60分)により乾燥させ、荒茶を得た。得られた荒茶を篩を用いて切断し、大柄のものを取り除き、粉を取り除いた後にオーブン(150℃、15分)で加熱して火入れして仕上茶を得た。得られた仕上茶を官能評価に供した。仕上茶2.0gを200gの熱湯で5分間抽出した後に茶殻を取り除いて得られた抽出液を官能評価し、以下の基準で判定した。評価結果を表2に示す。
【0030】
− : 火香が感じられない
+ : 火香が感じられる
++ : 火香が強く感じられる
また、得られた荒茶及び仕上茶のブドウ糖濃度を分析した。
【0031】
評価試験3
対象茶葉として、2013年の鹿児島県産一番茶の荒茶(全窒素:5.5%、繊維:21.0%)を用いた。比較例1(表2)においては、対象茶葉の荒茶20gをオーブン(150℃、15分)で加熱して火入れして仕上茶を得た。得られた仕上茶を官能評価に供した。比較例2(表2)においては、対象茶葉の荒茶20gに0.5%ブドウ糖水溶液を4g添加してよくかき混ぜて75分間静置した。静置中も時々かき混ぜた。75分経過後に、比較例1と同様にオーブン(150℃、15分)で加熱して火入れして仕上茶を得た。得られた仕上茶を官能評価に供した。官能評価は実施例2と同様である。評価結果を表2に示す。
【0032】
比較例3(生葉に水を吸収)と実施例1(生葉にブドウ糖水溶液を吸収)との比較では、実施例1での荒茶中のブドウ糖含量が高く、これは葉にブドウ糖が吸収されたことを示している。そして、実施例1では比較例3と比較して火入れ前後でのブドウ糖含量の変化量が大きく、その分、火香が発揚したと考えられる。
【0033】
比較例2は比較例1よりもブドウ糖濃度が0.10g/100g高くなるように設定した。すなわち、比較例3と実施例1との差分と同等となるように設定した。しかしながら、火入れ後の火香は比較例1と同等であった。すなわち、糖は茶葉の表面に存在しても十分ではなく、生葉の内部に糖が取り込まれることが重要であると考えられた。
【0034】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、火香の強化された緑茶の茶葉を提供することができる。