【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、配合量を示す「部」は全て「重量部」を示す。また、本発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の方法で測定した。
【0024】
<CM−DSの測定方法>
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CMC)をH−CMCにした。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H
2SO
4で過剰のNaOHを逆滴定した。CMC−DSは、次式によって算出した。
A=[(100×F’−0.1N−H
2SO
4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾重量(g))
CM−DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:H−CMCの1gの中和に要する1N−NaOH量(mL)
F:0.1N−H
2SO
4のファクター
F’:0.1N−NaOHのファクター
【0025】
<結晶化度の測定>
セルロースI型の結晶化度は、試料のX線回折を測定することで求めた。X線回折の測定は、試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定した。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出した。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度
【0026】
<CMCの製造>
(CMC1の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム10部を水300部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA10部に溶解したモノクロロ酢酸8部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して無水グルコース単位当りのカルボキシメチル置換度(CM−DS)0.05、結晶化度85%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC1)。
【0027】
(CMC2の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム15部を水200部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA20部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.16、結晶化度58%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC2)。
【0028】
(CMC3の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム15部を水150部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA30部に溶解したモノクロロ酢酸27部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.34、結晶化度40%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC3)。
【0029】
(CMC4の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム30部を水200部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸19部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.19、結晶化度0%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC4)。
【0030】
(CMC5の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)800部と水酸化ナトリウム33部を水150部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸27部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.34、結晶化度18%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た。(CMC5)
【0031】
(CMC6の製造)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーにイソプロピルアルコール(IPA)500部と水酸化ナトリウム48部を水100部に溶解したものを加え、市販の溶解パルプ(NDPS、日本製紙(株)製)を絶乾で100部仕込んだ。30℃で90分間攪拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に攪拌しつつ90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を添加し、70℃に昇温して90分間エーテル化反応させた。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、CM−DS0.50、結晶化度43%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを得た(CMC6)。
【0032】
【表1】
【0033】
<実施例1〜3、比較例1〜3:パン類>
本例では、ストレート法にて、角形食パンを製造するのに際して、以下に示す配合で実施例、比較例の生地を調整した。その際、表1のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を所定量混合した。その後、得られた各生地を、通常のストレート法の工程により発酵し、焼成して、角形食パンを得た。得られた食パンについて、焼成後の保水性と食感を評価した。結果を表2に示す。
【0034】
(パン類)
小麦粉 100.0部
イースト 2.0部
イーストフード 0.05部
砂糖 7.0部
塩 2.0部
脱脂粉乳 2.0部
ショートニング 4.0部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5部
水 72.0部
【0035】
<保水性の評価>
焼成後24時間経過後に厚さ20mmにスライスし、このスライス3枚を25℃、65%R.H.に3時間放置し、放置前と放置後との重量差を水分蒸散量とし、放置前後の水分量から、以下の式より保水性を求めた。
(式)保水性=(放置前の水分量−水分蒸散量)/放置前の水分量×100(%)
【0036】
<食感の評価>
得られたパンを10人に試飲してもらった評価結果を下記の基準で評価した。
○:10人中9人以上が食感良好と評価した。
△:10人中6人以上が食感良好と評価した。
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、実施例2〜3は優れた保水性を持つ上、食感も良好であった。
【0039】
<実施例4〜6、比較例4〜6:グミ>
下記グミの成分比率となるように、還元水飴、粉糖、クエン酸、グレープ香料、表1のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を25℃の温度下で混合し、グミ原液を調整した。得られたグミ原液をPP製のモールド(縦×横×高さ=20mm×20mm×15mm)に高さ10mmとなるよう充填した。直径24cm、高さ14cmのIHヒーター専用鍋に、直径20cm、高さ6cmのメッシュの底面を上向きにして置き、水1リットルを入れた。IHヒーターを用いて鍋を加熱し、水が沸騰し、蒸気が出始めたところで保温設定にした。この時の鍋の内部の温度は100℃であった。グミ原液を充填したPP製モールドをメッシュの底面に置き、鍋と蓋との間に濡れ布巾を挟んだ状態にして蓋をし、30分間蒸気加熱することで、グミを得た。得られたグミについて、加熱後の保水性とベタツキ感、食感を評価した。結果を表3に示す。
【0040】
(グミ)
還元水飴 49.4部
粉糖 42.8部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 6.4部
クエン酸 1.2部
グレープ香料 0.2部
【0041】
<ベタツキ感の評価>
得られたグミを触って、ベタツキ度合いを感応評価した。
○:全くべたつかない。
△:ほとんどべたつかない。
×:ベタツキ感が強い。
【0042】
<保水性の評価>
加熱後24時間経過後に2cmにカットし、このカットしたグミ10個を25℃、65%R.H.に3時間放置し、放置前と放置後との重量差を水分蒸散量とし、放置前後の水分量から、以下の式より保水性を求めた。
(式)保水性=(放置前の水分量−水分蒸散量)/放置前の水分量×100(%)
【0043】
<食感の評価>
得られたグミを10人に試飲してもらった評価結果を下記の基準で評価した。
【0044】
○:10人中9人以上が食感良好と評価した。
【0045】
△:10人中6人以上が食感良好と評価した。
【0046】
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0047】
【表3】
【0048】
表3より、実施例4〜6は優れた保水性を持つ上、食感、ベタツキ感も良好であった。