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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151009(P2015-151009A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20150728BHJP
   B60B 9/00 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B60B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-26571(P2014-26571)
(22)【出願日】2014年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴啓
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収性を維持しつつ耐久性を向上させた非空気圧タイヤを提供する。
【解決手段】内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する連結部3とを備える非空気圧タイヤTにおいて、外側環状部2には、タイヤに付与される全荷重に対する荷重分担率が30〜60%である環状の補強層4が埋設されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とを備える非空気圧タイヤにおいて、
前記外側環状部には、タイヤに付与される全荷重に対する荷重分担率が30〜60%である環状の補強層が埋設されていることを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記補強層は、互いに間隔を空けて複数枚が重ねて埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記補強層は、繊維強化プラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
前記連結部は、タイヤ周方向に連続して設けられており、
前記連結部のタイヤ幅方向の断面形状は、前記内側環状部の外周面の始端位置からタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延び、前記内側環状部と前記外側環状部の間で終端する第1連結部と、前記外側環状部の内周面の始端位置からタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延び、前記内側環状部と前記外側環状部の間で終端する第2連結部と、前記第1連結部の終端と前記第2連結部の終端を連結し、前記第1連結部と前記第2連結部に対してそれぞれ屈曲して延びる中間連結部とを有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能力はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を下げてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
【0005】
下記特許文献1には、円筒状のハブ外周面に弾性体が固着されるソリッドタイヤにおいて、その弾性体内部に、高い剛性を有した筒状の補強部材を埋設したソリッドタイヤが記載されている。補強部材を埋設することで、ハブと弾性体への衝撃の伝播を抑制できるため、耐久性及び乗り心地が良好となる。しかし、特許文献1のソリッドタイヤは、弾性体が中実であり、タイヤが構造的に大きく撓むことができないため、衝撃吸収性が不十分となり乗り心地の大きな向上を見込めない。
【0006】
下記特許文献2には、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、この補強された環状バンドとホイールとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のウェブスポークを有することで、衝撃吸収性と耐久性を向上させた非空気圧タイヤが記載されている。しかし、このような非空気圧タイヤは、ウェブスポークがタイヤ周方向に非連続で設けられており、タイヤ転動時に接地箇所によって応力集中が生じるため、耐久性が低下する問題があった。
【0007】
下記特許文献3には、外周輪と内周輪との間を多数のスポークで連結した非空気圧タイヤにおいて、外周輪を金属コード又は有機繊維コードで補強した非空気圧タイヤが記載されている。この金属コード又は有機繊維コードは、外周輪の弾性材料を引張方向に補強するのが主目的であり、それ自体がタイヤにかかる荷重を構造的に支持するものではないため、耐久性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−143911号公報
【特許文献2】特表2005−500932号公報
【特許文献3】特開2008−105644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、衝撃吸収性を維持しつつ耐久性を向上させた非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とを備える非空気圧タイヤにおいて、
前記外側環状部には、タイヤに付与される全荷重に対する荷重分担率が30〜60%である環状の補強層が埋設されていることを特徴とする。
【0011】
内側環状部と、外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する連結部とを備える非空気圧タイヤでは、主として外側環状部と連結部がタイヤに付与される荷重を支持する。また、連結部は、荷重を支持しつつ衝撃吸収性を発揮できるように弾性材料で形成されるが、弾性材料で形成された連結部は、応力集中部で亀裂が生じやすいという問題があった。本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、荷重を支持可能な環状の補強層を外側環状部に埋設することで、連結部への負担を減らすことができ、衝撃吸収性を発揮しつつ連結部の亀裂を抑制できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、タイヤに付与される全荷重のうち30〜60%の荷重を分担して支持する補強層を外側環状部に埋設することにより、連結部への負担を減らすことができるため、衝撃吸収性を損なうことなく、連結部の亀裂を抑制できる。その結果、衝撃吸収性を維持しつつ耐久性を向上できる。
【0012】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記補強層は、互いに間隔を空けて複数枚が重ねて埋設されていることが好ましい。この構成によれば、補強層にかかる荷重を複数枚で分担して支持するため、耐久性を向上できる。
【0013】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記補強層は、繊維強化プラスチックで形成されていることが好ましい。この構成によれば、補強層がタイヤ径方向に対して高い剛性を有するようになり、タイヤに付与される全荷重のうち30〜60%の荷重を確実に支持することができる。
【0014】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記連結部は、タイヤ周方向に連続して設けられており、前記連結部のタイヤ幅方向の断面形状は、前記内側環状部の外周面の始端位置からタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延び、前記内側環状部と前記外側環状部の間で終端する第1連結部と、前記外側環状部の内周面の始端位置からタイヤ径方向に対して傾斜する方向に延び、前記内側環状部と前記外側環状部の間で終端する第2連結部と、前記第1連結部の終端と前記第2連結部の終端を連結し、前記第1連結部と前記第2連結部に対してそれぞれ屈曲して延びる中間連結部とを有することが好ましい。この構成によれば、連結部のタイヤ幅方向の断面形状は、第1連結部、第2連結部、及び第1連結部と第2連結部に対して屈曲して延びる中間連結部とを有し、全体としてバネ状をしているため、連結部はタイヤ径方向に弾性変形することができ、衝撃吸収性を向上させることができる。また、連結部はタイヤ周方向に連続して設けられているため、タイヤ転動時に接地箇所によって衝撃吸収性にばらつきが生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2図1の非空気圧タイヤのタイヤ幅方向断面図
図3A】他の実施形態に係る非空気圧タイヤのタイヤ幅方向断面図
図3B】他の実施形態に係る非空気圧タイヤのタイヤ幅方向断面図
図4】他の実施形態に係る非空気圧タイヤのタイヤ幅方向断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、本発明の非空気圧タイヤの一例を示すタイヤ幅方向の断面図であって、図1のI−I断面図である。ここで、Oは軸芯を、WDはタイヤ幅方向を、RDはタイヤ径方向を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0017】
本発明の非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備えている。支持構造体は、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられる外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する連結部3とを備えている。
【0018】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0019】
内側環状部1の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの6〜30%が好ましく、8〜20%がより好ましい。
【0020】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定されるが、例えば、50〜560mmが好ましく、80〜200mmがより好ましい。
【0021】
内側環状部1のタイヤ幅方向WDの幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、例えば、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0022】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。なお、本実施形態における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力の値である。
【0023】
内側環状部1の弾性材料の引張弾性率は、衝撃吸収性の向上を図る観点から、1〜100MPaが好ましく、5〜50MPaがより好ましい。
【0024】
外側環状部2は、タイヤ幅方向WDに厚みが変化する円筒形状である。外側環状部2の外周面は、トレッド面となる。このトレッド面は、図2に示されるように、タイヤ幅方向断面において、タイヤ径方向外側へ向かって凸となる曲率が設けられており、タイヤ幅方向WDの中央部から両側端へ向かって外径が徐々に小さくなった円弧状をしている。トレッド面に曲率が設けられていることで、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる際にも接地面積が小さくなりすぎず、直進走行時とコーナリング時との間の接地面積の変動が少なくなる。トレッド面の曲率半径は、30〜100mmが好ましく、40〜65mmがより好ましい。曲率半径が30mmより小さい場合、キャンバー時の接地面積が過大となり、グリップ性能が急激に増加するため、急停止に近い状況となってしまう。また、曲率半径が100mmよりも大きい場合、キャンバー時の接地面積が過小となり、グリップ性能が急激に低下するため、滑りが発生してしまう。トレッド面には、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0025】
外側環状部2には、環状の補強層4が埋設されている。本発明の補強層4は、互いに間隔を空けて複数枚が重ねて埋設されていることが好ましく、本実施形態の補強層4は、2枚の第1補強層41と第2補強層42が積層されて埋設されている。
【0026】
環状の補強層4は、タイヤに付与される全荷重に対する荷重分担率が30〜60%である。荷重分担率とは、タイヤに付与されるタイヤ径方向RDの全荷重に対する、その部材が支持する荷重の割合である。例えば、タイヤに付与される全荷重が500Nのとき、補強層4の荷重分担率が30%であれば、補強層4は150Nの荷重を支持する。
【0027】
荷重分担率は、補強層4を備える非空気圧タイヤの弾性率Aから、補強層4を省いた非空気圧タイヤの弾性率Bを減じた値(A−B)を弾性率Aで除して100を乗じたものである。また、ここでの弾性率は、タイヤ径方向RDに負荷する荷重(N)を所定値から徐々に変化させながら撓み量(mm)を測定し、その荷重変化量を撓み変化量で除して求められる。
【0028】
補強層4の荷重分担率が30%よりも小さい場合、連結部3への負担が大きくなって亀裂が生じやすくなるため、耐久性が低下する。一方、補強層4の荷重分担率が60%よりも大きい場合、補強層4への負担が大きくなって亀裂が生じやすくなるため、耐久性が低下する。
【0029】
外側環状部2の内径は、その用途等に応じて適宜決定されるが、例えば、100〜600mmが好ましく、120〜300mmがより好ましい。
【0030】
補強層4のタイヤ径方向RDの厚みは、衝撃吸収性及び耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの0.5〜6%が好ましく、1〜4%がより好ましい。複数枚の補強層が埋設されている場合、各層(本実施形態では第1補強層41と第2補強層42)のタイヤ径方向RDの厚みは、衝撃吸収性及び耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの0.5〜4%が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。
【0031】
外側環状部2のタイヤ幅方向WDの幅Wは、用途等に応じて適宜決定されるが、例えば、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0032】
補強層4のタイヤ幅方向WDの幅は、外側環状部2の幅Wの30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。補強層4の幅が外側環状部2の幅Wの30%よりも狭いと、耐久性が低下する。
【0033】
外側環状部2の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0034】
外側環状部2の弾性材料の引張弾性率は、衝撃吸収性の向上を図る観点から、1〜100MPaが好ましく、5〜50MPaがより好ましい。
【0035】
補強層4は、繊維強化プラスチック(FRP)又はポリウレタン樹脂で形成されていることが好ましい。繊維強化プラスチックとしては、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックなどが例示される。なお、炭素繊維強化プラスチックからなる補強層4は、炭素繊維(カーボンファイバー)のクロス(織物)に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の中間部材を使用することで、容易に形成できる。炭素繊維の配向方向は、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向とするのが好ましい。
【0036】
補強層4は、引張弾性率が10000〜50000MPaであることが好ましい。補強層4の引張弾性率が10000MPaよりも小さいと、補強層4が十分に荷重を支持することができないため、連結部3の負担が大きくなって耐久性が悪化する。また、補強層4の引張弾性率が50000MPaよりも大きいと、補強層4が変形しにくくなるためタイヤの変形量が減少し、衝撃吸収性が悪化する。
【0037】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものである。本実施形態の連結部3は、タイヤ周方向に連続して設けられている。連結部3のタイヤ幅方向WDの断面形状は、図2に示すように、内側環状部1の外周面1aの始端位置からタイヤ径方向RDに対して傾斜する方向に延び、内側環状部1と外側環状部2の間で終端する第1連結部31と、外側環状部2の内周面2aの始端位置からタイヤ径方向RDに対して傾斜する方向に延び、内側環状部1と外側環状部2の間で終端する第2連結部32と、第1連結部31の終端と第2連結部32の終端を連結し、第1連結部31と第2連結部32に対してそれぞれ屈曲して延びる中間連結部33とを有する。
【0038】
第1連結部31、第2連結部32、及び中間連結部33は、それぞれ直線状であることが好ましい。本実施形態では、第1連結部31、第2連結部32、及び中間連結部33が全体として略Z字状の連結部3を構成している。
【0039】
第1連結部31は、始端31aがタイヤ幅方向WDの一方側WD1に位置し、終端31bがタイヤ幅方向WDの他方側WD2に位置している。また、第2連結部32は、始端32aがタイヤ幅方向WDの他方側WD2に位置し、終端32bがタイヤ幅方向WDの一方側WD1に位置する。これにより、中間連結部33は、タイヤ幅方向WDの一方側WD1と他方側WD2との間で延びている。
【0040】
第1連結部31と中間連結部33が形成する角度B、及び第2連結部32と中間連結部33が形成する角度Cは、内側環状部1と第1連結部31が形成する角度A、及び外側環状部2と第2連結部32が形成する角度Dの1.8〜3.6倍であることが好ましい。例えば、角度B及びCは20〜90°、角度A及びDは10〜45°である。ここで、角度A〜Dは、第1連結部31、第2連結部32、及び中間連結部33の中心線同士がなす角度とする。角度B及びCを角度A及びDの1.8〜3.6倍とすることで、横変位量/縦変位量が減少し、耐久性が改善される。横変位量/縦変位量が大きいと、走行の際にタイヤが横方向(タイヤ幅方向WD)に屈曲しやすくなるため、耐久性が損なわれ、操縦安定性も悪化する。角度B及びCが角度A及びDの1.8倍よりも小さいと、連結部3に占める第1連結部31及び第2連結部32の割合が大きくなり、第1連結部32及び第2連結部の異常屈曲が起こりやすくなるため、タイヤ自体も横方向に歪みやすくなる。一方、角度B及びCが角度A及びDの3.6倍よりも大きいと、連結部3に占める中間連結部33の割合が大きくなり、中間連結部33の異常屈曲が起こりやすくなるため、タイヤ自体も横方向に歪みやすくなる。
【0041】
連結部3の厚みは、内側環状部1及び外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜20%が好ましく、6〜16%がより好ましい。なお、第1連結部31の厚みt1、第2連結部32の厚みt2、及び中間連結部33の厚みt3は、互いに異なってもよく、また、それぞれ延設方向に一定である必要はない。
【0042】
内側環状部1、外側環状部2、第1連結部31、第2連結部32、及び中間連結部33は、応力集中を防いで耐久性を向上させるために、互いの連結箇所に丸みを持たせている。丸みの半径は、例えば、0.5〜4mmである。
【0043】
連結部3の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0044】
連結部3の弾性材料の引張弾性率は、衝撃吸収性の向上を図る観点から、1〜100MPaが好ましく、5〜50MPaがより好ましい。
【0045】
非空気圧タイヤTは、弾性材料で成形される。本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張弾性率が、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張弾性率が1〜100MPaであり、より好ましくは5〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0046】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0047】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0048】
なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものも使用可能である。
【0049】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、ポリウレタン樹脂で成形されるのが好ましい。
【0050】
弾性材料で成形された内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0051】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ幅方向WDに配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0052】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0053】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0054】
本発明における非空気圧タイヤTは弾性材料で成形されるが、非空気圧タイヤTを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0055】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、連結部3は直線状の中間連結部33を有している例を示したが、中間連結部33は直線状でなくともよい。他の実施形態にかかる非空気圧タイヤのタイヤ幅方向断面図を図3A及び図3Bに示す。ただし、図3A及び図3Bは内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3を模式的に表している。図3Aは、中間連結部33が中央部で1回屈曲する例を示す。図3Bは、中間連結部33が2回屈曲する例を示す。なお、第1連結部31と第2連結部32は、図3Aのように、始端31a,32aがタイヤ幅方向WDの一方側WD1に位置し、終端31b,32bがタイヤ幅方向WDの他方側WD2に位置するようにしてもよい。
【0056】
(2)また、第1連結部31の始端31aは、内側環状部1の外周面のタイヤ幅方向WDの端部に位置する必要はなく、同様に、第2連結部32の始端32aは、外側環状部2の内周面のタイヤ幅方向WDの端部に位置する必要はない。例えば、図4のように、第1連結部31の始端31aは、内側環状部1の外周面のタイヤ幅方向WDの中央部に位置し、第2連結部32の始端32aは、外側環状部2の内周面のタイヤ幅方向WDの中央部に位置してもよい。
【0057】
(3)前述の実施形態では、外側環状部2の外周面がトレッド面となっているが、外側環状部2の外周側にトレッド層を別途設けてもよい。
【0058】
(4)補強層4は、3枚以上の補強層が重ねて埋設されてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。尚、実施例等における評価項目は、下記のようにして測定を行った。
【0060】
耐久性
試験タイヤに70kgの錘を載せ、ドラム上を走行させることで、故障が発生するまでの走行距離を測定した。表1及び2に走行距離の測定結果を示す。走行距離が長いほど、耐久性に優れていることを示す。
【0061】
衝撃吸収性
試験タイヤにて点字ブロック上を時速4km/hで走行した際の、ホイール中心部にかかる上下方向の衝撃加速度を測定した。一つのサンプルにつき5回測定し、平均値を結果とする。表1及び2に衝撃加速度の測定結果を示す。衝撃加速度が小さいほど、衝撃吸収性に優れていることを示す。
【0062】
実施例及び比較例の構成は、表1及び2に示すようにした。表1及び2において、補強層厚みとは、補強層が複数枚埋設されている場合には各層の厚みを示している。また、故障モードとは、耐久性を評価した際、発生した故障の状況を示している。
【0063】
実施例1では、図2のような連結部3、及び補強層4を設けた。実施例2では、補強層4を3枚の補強層で構成した。実施例3〜5では、補強層4を1枚のみとした。
【0064】
比較例1では、補強層4を設けなかった。比較例2及び3では、補強層を設けたが、荷重分担率を30%よりも小さくした。比較例4では、補強層を設けたが、荷重分担率を60%よりも大きくした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1及び2のように、実施例1〜5は、比較例1に比べ耐久性が大きく向上した。比較例2及び3では、補強層の荷重分担率が小さいため、連結部への負担が大きくなり、連結部に亀裂が生じた。一方、比較例4では、補強層の荷重分担率が大きいため、補強層への負担が大きくなり、補強層に亀裂が生じた。
【符号の説明】
【0068】
1 内側環状部
1a 内側環状部の外周面
2 外側環状部
2a 外側環状部の内周面
3 連結部
4 補強層
31 第1連結部
31a 第1連結部の始端
31b 第1連結部の終端
32 第2連結部
32a 第2連結部の始端
32b 第2連結部の終端
33 中間連結部
41 第1補強層
42 第2補強層
T 非空気圧タイヤ
WD タイヤ幅方向
図1
図2
図3A
図3B
図4