(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151182(P2015-151182A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20150728BHJP
B65D 1/22 20060101ALI20150728BHJP
B65D 25/22 20060101ALI20150728BHJP
【FI】
B65D81/38 B
B65D1/22
B65D25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-28507(P2014-28507)
(22)【出願日】2014年2月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506069505
【氏名又は名称】株式会社積水化成品四国
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】田島 一雄
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】島袋 出
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
3E067
【Fターム(参考)】
3E033AA09
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA22
3E033CA08
3E033DA08
3E033DE01
3E062AA01
3E062AB14
3E062AC08
3E062HA03
3E062HC01
3E067AB01
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067BC07A
3E067EA17
3E067EE12
3E067EE50
3E067GA01
3E067GA11
(57)【要約】
【課題】積み下ろし作業時に損傷することを抑制することができる保冷容器を提供する。
【解決手段】発泡性合成樹脂で形成された容器本体3と蓋体4とからなり、容器本体3は、略矩形状の底壁と底壁の4辺から高さ方向に立ち上げられた4つの本体用側壁とを備え、該対向する一対の本体用側壁のうちの一方の本体用側壁8の外側に、内側に凹んだ一対の凹部10,11を左右方向に間隔を置いて備え、一対の凹部10,11は、左右方向から指を引っ掛けて一方の本体用側壁8を掴むための掴み用引っ掛かり部10c,11Bを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性合成樹脂で形成された容器本体と蓋体とからなり、前記容器本体は、略矩形状の底壁と該底壁の4辺から高さ方向に立ち上げられた4つの本体用側壁とを備えた保冷容器であって、
前記対向する一対の本体用側壁のうちの一方の本体用側壁の外側に、内側に凹んだ一対の凹部を左右方向に間隔を置いて備え、前記一対の凹部は、左右方向から指を引っ掛けて前記一方の本体用側壁を掴むための掴み用引っ掛かり部を備えていることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記残る他方の本体用側壁の外側に、内側に凹んだ一対の第2凹部を左右方向に間隔を置いて備え、前記一対の第2凹部は、左右方向から指を引っ掛けて前記他方の本体用側壁を掴むための第2掴み用引っ掛かり部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記一対の凹部のうちの一方の凹部に、指を下方から引っ掛けて前記容器本体を持ち上げるための持ち上げ用引っ掛かり部を備え、前記一対の第2凹部のうちの一方の第2凹部に、指を下方から引っ掛けて前記容器本体を持ち上げるための第2持ち上げ用引っ掛かり部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記一対の凹部のうちの一方の凹部の上端を、他方の凹部の上端よりも高い位置で、かつ、前記一方の本体用側壁の上部に位置するように設定し、該一方の凹部の上端が、前記持ち上げ用引っ掛かり部を構成し、前記一対の第2凹部のうちの一方の第2凹部の上端を、他方の第2凹部の上端よりも高い位置で、かつ、前記他方の本体用側壁の上部に位置するように設定し、該一方の第2凹部の上端が、前記第2持ち上げ用引っ掛かり部を構成していることを特徴とする請求項3に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記一対の凹部の下端を、前記一方の本体用側壁の下部まで延長し、この延長した延長部をもって前記一方の本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛ける前記掴み用引っ掛かり部を構成し、前記一対の第2凹部の下端を、前記他方の本体用側壁の下部まで延長し、この延長した延長部をもって前記他方の本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛ける前記第2掴み用引っ掛かり部を構成していることを特徴とする請求項4に記載の保冷容器。
【請求項6】
前記他方の凹部の左右幅は、前記一方の凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定され、前記他方の第2凹部の左右幅は、前記一方の第2凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記一対の掴み用引っ掛かり部及び前記一対の第2掴み用引っ掛かり部のそれぞれが、外側から内側に向うほど外広がり形状となる傾斜面を備えていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物や水産物等の商品を収容して目的地まで輸送するための保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷却・保温ユニットを備えたコンテナ(船用ではリーファーコンテナとも言う)内に多数の保冷容器を上下方向に積み重ねて、船、飛行機、トラック等で目的地へ輸送している。
【0003】
かかる保冷容器は、発泡性合成樹脂で形成された容器本体と蓋体とからなり、容器本体は、長方形状の底壁と底壁の4辺から高さ方向に立ち上げられた4つの本体用側壁とを備え、4つの本体用側壁のうちの長手方向で対向する前後の本体用側壁の外側の左右方向中央部に、指を下方から引っ掛けて容器を持ち上げるための引っ掛かり部を備えている。この引っ掛かり部は、下方が開放された切欠き部から構成されている。この切欠き部は、外面から内側に離間したフラット面と、このフラット面の左右両端から外側に延びる左右の側面と、左右の側面の上端同士を連結するとともに指を下方から引っ掛けるための上面とを備えている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成された保冷容器の前後の切欠き部の上面に手の指をそれぞれ掛けることによって、保冷容器の前後の上端部を手で掴んでから保冷容器を持ち上げ、コンテナ内に保冷容器を積み込むようにしている。そして、輸送料金をできるだけ安くするために、コンテナ内に上下方向及び左右方向に大きなデッドスペースができないように多くの保冷容器を積み重ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−62764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コンテナの扉の開口寸法が、幅2.3m×高さ2.2m位のサイズを有している。このような高さのコンテナに保冷容器が積み上げられると、特に最上段の保冷容器が手の届き難い高さに位置しているだけでなく、隣り合う保冷容器同士が隙間の無い状態で積み上げられている。そのため、隣り合う保冷容器同士間に手を入れることができない。また、高い位置にある最上段の保冷容器の切欠き部の上面に指を引っ掛けることができたとしても、保冷容器を上方へ浮かすことはできるものの、最上段の保冷容器を手前側へ引き出すことができない。そこで、保冷容器を変形させながら隣り合う保冷容器同士間に無理矢理手を入れて引き出すことが考えられるが、保冷容器が変形して保冷容器にヒビや割れなどの損傷が発生してしまうことがある。保冷容器が損傷してしまうと、保冷性能が低下して、商品が傷んでしまうというトラブルが発生することがあるため、改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、積み下ろし作業時に損傷することを抑制することができる保冷容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る保冷容器は、発泡性合成樹脂で形成された容器本体と蓋体とからなり、前記容器本体は、略矩形状の底壁と該底壁の4辺から高さ方向に立ち上げられた4つの本体用側壁とを備えた保冷容器であって、前記対向する一対の本体用側壁のうちの一方の本体用側壁の外側に、内側に凹んだ一対の凹部を左右方向に間隔を置いて備え、前記一対の凹部は、左右方向から指を引っ掛けて前記一方の本体用側壁を掴むための掴み用引っ掛かり部を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一対の凹部の掴み用引っ掛かり部に指を引っ掛けて一方の本体用側壁を掴むことができる。その掴んだ状態で保冷容器を手前側へ容易に引き出して積み重ねられている最上段の保冷容器から順に積み下ろすことができる。
【0010】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記残る他方の本体用側壁の外側に、内側に凹んだ一対の第2凹部を左右方向に間隔を置いて備え、前記一対の第2凹部は、左右方向から指を引っ掛けて前記他方の本体用側壁を掴むための第2掴み用引っ掛かり部を備えていることが好ましい。
【0011】
上記のように、残る他方の本体用側壁の外側にも、一対の第2凹部を備えておけば、保冷容器を積み重ねる際に、一対の第1凹部を備える一方の本体用側壁と一対の第2凹部を備える他方の本体用側壁のいずれかが手前に位置するように積み重ねていけばよく、保冷容器の積み重ね作業がやり易い。
【0012】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記一対の凹部のうちの一方の凹部に、指を下方から引っ掛けて前記容器本体を持ち上げるための持ち上げ用引っ掛かり部を備え、前記一対の第2凹部のうちの一方の第2凹部に、指を下方から引っ掛けて前記容器本体を持ち上げるための第2持ち上げ用引っ掛かり部を備えていることが好ましい。
【0013】
上記のように、持ち上げ用引っ掛かり部及び第2持ち上げ用引っ掛かり部を備えておけば、持ち上げ用引っ掛かり部及び第2持ち上げ用引っ掛かり部に指を引っ掛けて保冷容器を容易に持ち上げることができる。
【0014】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記一対の凹部のうちの一方の凹部の上端を、他方の凹部の上端よりも高い位置で、かつ、前記一方の本体用側壁の上部に位置するように設定し、該一方の凹部の上端が、前記持ち上げ用引っ掛かり部を構成し、前記一対の第2凹部のうちの一方の第2凹部の上端を、他方の第2凹部の上端よりも高い位置で、かつ、前記他方の本体用側壁の上部に位置するように設定し、該一方の第2凹部の上端が、前記第2持ち上げ用引っ掛かり部を構成してもよい。
【0015】
上記のように、一方の本体用側壁の上部に、持ち上げ用引っ掛かり部が位置し、かつ、他方の本体用側壁の上部に、第2持ち上げ用引っ掛かり部が位置していれば、例えば地面又は床面にある保冷容器を持ち上げる際に、腰を大きく屈めることなく、持ち上げ用引っ掛かり部及び第2持ち上げ用引っ掛かり部に指を容易に引っ掛けることができる。他方の凹部及び第2凹部の上端が、一方の凹部及び第2凹部の上端よりも低い位置にあるため、保冷容器の保形強度が低下することを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記一対の凹部の下端を、前記一方の本体用側壁の下部まで延長し、この延長した延長部をもって前記一方の本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛ける前記掴み用引っ掛かり部を構成し、前記一対の第2凹部の下端を、前記他方の本体用側壁の下部まで延長し、この延長した延長部をもって前記他方の本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛ける前記第2掴み用引っ掛かり部を構成してもよい。
【0017】
上記のように、一方の本体用側壁の下部に掴み用引っ掛かり部を備えるとともに、他方の本体用側壁の下部に第2掴み用引っ掛かり部を備えておけば、高い位置にある保冷容器でも、掴み用引っ掛かり部又は第2掴み用引っ掛かり部に容易に指を引っ掛けることができる。
【0018】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記他方の凹部の左右幅は、前記一方の凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定され、前記他方の第2凹部の左右幅は、前記一方の第2凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定されていることが好ましい。
【0019】
上記のように、他方の凹部の左右幅を、一方の凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定するとともに、他方の第2凹部の左右幅を、一方の第2凹部の左右幅よりも狭い寸法に設定しておけば、容器本体の保形強度が低下することをより一層抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る保冷容器においては、前記一対の掴み用引っ掛かり部及び前記一対の第2掴み用引っ掛かり部のそれぞれが、外側から内側に向うほど外広がり形状となる傾斜面を備えていることが好ましい。
【0021】
上記のように、一対の掴み用引っ掛かり部及び一対の第2掴み用引っ掛かり部のそれぞれが、外側から内側に向うほど外広がり形状となる傾斜面から構成しておけば、一対の掴み用引っ掛かり部及び一対の第2掴み用引っ掛かり部への指の入り込みを深くすることができ、本体用側壁を確実に掴むことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明によれば、一方の本体用側壁の外側に備えた一対の凹部の掴み用引っ掛かり部に指を引っ掛けて本体用側壁を掴むことができる。従って、保冷容器が高く積み上げられている場合でも、本体用側壁の一対の掴み用引っ掛かり部に指を引っ掛けて容易に積み下ろすことができ、保冷容器の積み下ろし作業時に損傷することを抑制することができる保冷容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る保冷容器をコンテナ内に積み上げた状態を示す正面図である。
【
図6】同実施形態に係る保冷容器の容器本体の内部構造を示す斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係る保冷容器の正面図である。
【
図8】他の実施形態に係る保冷容器の正面図である。
【
図9】他の実施形態に係る保冷容器の正面図である。
【
図10】他の実施形態に係る保冷容器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る保冷容器の実施形態について、
図1〜
図6に基づいて説明する。
【0025】
図1に、コンテナ1内に多数の保冷容器2を積み上げた状態を示している。コンテナ1は、20Ft(フィート)や40Ft(フィート)の大きさのものが主流であり、いずれの扉開口寸法も同じであり、その寸法は、幅約2.3m×高さ約2.2mである。そして、保冷容器2を積み込んだ状態では、左右方向で隣り合う保冷容器2,2同士の間は勿論のこと、最上段に位置する保冷容器2とコンテナ1の天井壁1Aとの間の他、左右端に位置する保冷容器2とコンテナ1の左右壁1B,1Cとの間に、大きなデッドスペースが無い状態になっている。コンテナ1としては、冷却・保温ユニットを備えた海上輸送に用いられるリーファーコンテナでもよいし、空輸用や陸送用のコンテナであってもよい。また、倉庫や工場等で保管するために多数の保冷容器2を積み上げてもよい。
【0026】
保冷容器2は、
図1〜
図3及び
図6に示すように、農産物や水産物等の商品を上端の上面開口部3Aから収容することができる箱型状の発泡合成樹脂でなる容器本体3と、この容器本体3の上面開口部3Aを閉じて密閉状態にするための発泡合成樹脂でなる蓋体4とから構成されている。尚、発泡合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の各種発泡合成樹脂が利用できる。発泡倍率としては、20倍〜90倍の範囲の任意の値に設定することができる。そのときの発泡粒径としては、0.915mm〜5.291mmの範囲の任意の値に設定することができる。また、発泡倍率が30倍から70倍までの間の任意の値で、かつ、発泡粒径が1.31mm〜2.433mmまでの間の任意の値を設定した場合が、更に好ましい。また、収容される商品としては、例えば魚を複数枚に切り下したフィレ状の魚肉を包装して冷凍状態にしたものを入れている。
【0027】
容器本体3は、
図2〜
図4、及び
図6に示すように、平面視略長方形状に形成され、商品を載置する載置面5Aを備えた底壁5と、底壁5の4辺から高さ方向に立ち上げられた4つの本体用側壁とを備えている。
【0028】
本体用側壁は、底壁5の4辺のうちの一対の長辺である左右の縁部に上方に向けて立設された左右の側壁7,7と、底壁5の一対の短辺である前後の縁部から上方に向けて立設された前後の側壁8,8とを備えている。そして、これら4つの側壁7,8の上部に商品を出し入れするための前記上面開口部3Aが形成されている。左右の側壁7,7及び前後の側壁8,8は、上端から下端側ほど内側となる傾斜面に形成されており、金型との離型性を良好にしている。尚、前記傾斜面の傾斜角度を1°に設定しているため、図面上では把握でき難い状態になっている。
【0029】
図6に示すように、左右の側壁7,7及び前後の側壁8,8の上端面、即ち、容器本体3の上端面には、上向きに突出する嵌合用凸条9が設けられている。この嵌合用凸条9の左右の側壁7,7の中央部分7A,7Aが切りかかれており、嵌合用凸条9が周方向の2箇所で形成されている。そして、この嵌合用凸条9に嵌合する凹部(図示せず)が蓋体4の底部に形成されている。
【0030】
前側壁8及び後側壁8が同一構成であるため、前側壁8についてのみ説明する。前側壁8の外側に、内側に凹んだ一対の第1凹部10,11を左右方向に間隔を置いて備えている。左側の第1凹部10は、前側壁8の左右方向中央部に位置し、下方が開放された切欠き部から構成され、前側壁8の上端部から下端まで延びている。具体的には、第1凹部10は、前側壁8の外面8Aから内側に離間したフラットな縦面10Aと、縦面10Aの左右端と外面8Aとを連結する左右の側面10B,10Cと、左右の側面10B,10Cの上端同士を連結する上面10Dとから構成されている。尚、後側壁8にも、前側壁8と同様に、内側に凹んだ一対の第2凹部10,11を備えている。それら第2凹部10,11は、一対の第1凹部10,11と同様に、第2持ち上げ用引っ掛かり部及び第2掴み用引っ掛かり部も備えており、それらの構成は、一対の第1凹部10,11の構成と全く同一であるため、説明を省略する。
【0031】
第1凹部10の上面10Dは、フラット面からなるとともに、前側壁8の上端部に位置しており、指を下方から引っ掛けて容器本体3を持ち上げるための第1持ち上げ用引っ掛かり部を構成している。この上面10Dは、前側壁8の上端から50mm下がった位置にある。また、上面10Dの幅L1は、5本の指のうちの親指を除く4本の指(人差し指、中指、薬指、小指)を引っ掛けることができる左右幅の寸法を有している。具体的には、幅L1は、9cmに設定されている。また、上面10Dの奥行き方向の深さ、つまり前側壁8の外面8Aから内側端面(縦面10A)までの間隔(長さ)D1は、指の先端を引っ掛けることができる寸法を有しており、具体的には、12mmの寸法になっているが、10mm〜25mmの範囲の任意の値であればよい。上面10Dの位置は、容器本体3の高さの半分よりも上側の上部であれば、どの位置であってもよい。
【0032】
第1凹部10の左右の側面10B,10Cは、
図3及び
図5に示すように、左右方向から指を引っ掛けることができるように構成されている。これら左右の側面10B,10Cは、本体用側壁の下端まで延長されるとともに下端側ほど外側に位置する傾斜面になっている。この延長された延長部10b,10cのうちの一方の延長部10cをもって本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛けるための後述する一方の第1掴み用引っ掛かり部を兼用構成している。
【0033】
また、左右の側面10B,10Cへの指の引っ掛かりが良くなるように、左右の側面10B,10Cが、容器本体3の外側から内側に向うほど外広がり形状になるとともに、左右方向外側に凸となる湾曲面に形成され、より一層指の引っ掛かりが深くできる利点があるが、フラット(平坦)面に構成してもよい。その傾斜角度θ1は、図では、1°〜45°の任意の角度に設定される。
【0034】
また、一方(左側)の第1凹部10に対して左右方向一側(ここでは右側)に、左右方向から指を引っ掛けることができる他方(右側)の第1凹部11を備えている。この右側の第1凹部11は、内側に凹んでいるとともに下方が開放された切欠き部から構成されている。具体的には、右側の第1凹部11は、前側壁8の外面8Aから内側に離間したフラットな縦面11Aと、縦面11Aの左右端と外面8Aとを連結する左右の側面11B,11Cと、左右の側面11B,11Cの上端同士を連結する上面11Dとから構成されている。
【0035】
また、左右の側面11B,11Cは、左右方向から指を引っ掛けることができるように構成されている。左右の側面11B,11Cは、前側壁8の外面8Aから鉛直方向に延びるストレート面SB,SCと、ストレート面SB,SCから容器本体3の内側に向うほど外広がり形状になる傾斜面KB,KCとからなっている。ストレート面SB,SCを備えることによって、右側の第1凹部11の入り口の角が欠け難くできる。また、傾斜面KB,KCを備えることによって、側面11B,11Cへの指の引っ掛かりが良くなる。更にまた、傾斜面KB,KCは、左右方向外側に凸となる湾曲面に形成されているため、より一層指の引っ掛かりを深くすることができる利点があるが、フラット(平坦)面に構成してもよい。その傾斜角度θ2は、1°〜45°の任意の角度に設定される。
【0036】
右側の第1凹部11の上面11Dは、フラット面からなり、左側の第1凹部10の上面10Dよりも低い位置に設定されている。上面11Dの上下方向の位置は、本体用側壁の上下高さの半分よりも下方にあり、実際には、本体用側壁の上下高さの約1/4の高さにある。具体的には、本体用側壁の下端から60mmの高さ位置に上面11Dが位置しており、5本の指のうちの親指を除く4本の指(人差し指、中指、薬指、小指)を上下方向に一列となる状態で入り込ませることができる上下寸法になっている。また、上面11Dの幅L2は、左側の第1凹部10の上面10Dの幅L1よりも狭く構成されている。具体的には、左側の第1凹部10の上面10Dの幅L1の1/3の30mmの寸法になっており、一本の指が入り込める幅寸法になっている。右側の第1凹部11の左右の側面11B,11Cが左右方向から指を引っ掛けることができるように構成されている。そして、前記寸法関係により、5本の指のうちの親指を除く4本の指(人差し指、中指、薬指、小指)を上下方向に一列に並んだ状態で入れ込ませて引っ掛けることができるようになっている。また、側面11B,11Cの奥行き方向の深さ、つまり前側壁8の外面から内側端(縦面11A)までの間隔(長さ)D2は、指の先端を引っ掛けることができる寸法を有しており、具体的には、12mmの寸法になっているが、10mm〜25mmの範囲の任意の値であればよい。
【0037】
前記説明した左側の第1凹部10(具体的には、一方の延長部10cの側面11C)と右側の第1凹部11(具体的には、一方の側面11B)とで、左右方向から指を引っ掛けて第1凹部10と第1凹部11の間の本体用側壁を掴むための一対の第1掴み用引っ掛かり部を構成している。左側の第1凹部10及び右側の第1凹部11の各々の互いに隣り合う両側面10C,11Bの間隔Tを、両側面10C,11Bに指を引っ掛けて(係止して)両側面10C,11B間で前側壁8を掴むことができる間隔に設定している。具体的には、間隔Tを55mmに設定しているが、50mm〜100mmの範囲であれば、どの値に設定してもよい。例えば、右手で前側壁8を掴む場合には、親指を左側の第1凹部10の側面10Cに引っ掛けるとともに4本(2本でも3本でもよい)の指(人差し指、中指、薬指、小指)を右側の第1凹部11の側面11Bに引っ掛けることになる。また、左手で前側壁8を掴む場合には、親指を右側の第1凹部11の側面11Bに引っ掛けるとともに4本(2本でも3本でもよい)の指(人差し指、中指、薬指、小指)を左側の第1凹部10の側面10Cに引っ掛けることになる。
【0038】
また、前側壁8の上端の左右両端部2箇所に、蓋体4を容易に外せるように指を入れることができる蓋体用凹部12が形成されている。
【0039】
前記構成の保冷容器2は、
図1に示すように、コンテナ1内に上下に複数個積み重ねた状態で輸送(例えば、海上輸送、空輸、陸送)される。ここで、複数個の保冷容器2を積み重ねた状態とするためには、保冷容器2を持ち上げてコンテナ1内に積み上げる積み上げ作業が必要となる。保冷容器2を持ち上げる場合には、保冷容器2の前後の第1凹部10,10の上面10D,10Dに親指以外の4本の指(人差し指、中指、薬指、小指)を引っ掛けて、保冷容器2の前後の上端を掴むことができる。その掴んだ状態で保冷容器2を持ち上げる。前述のように上面10D,10Dが本体用側壁の上部に位置しているため、腰を大きく屈めなくても指を上面10D,10Dに容易に引っ掛けることができる。目的地へ運搬された後に、コンテナ1内に積み重ねた保冷容器2を下ろす際場合には、片方の手の指を左側の第1凹部10の側面10Cと右側の第1凹部11の側面11Bとに引っ掛けることによって、両側面10C,11B間の前側壁8を片手で掴むことができる。この掴んだ状態で前方に保冷容器2を引き出すことによって、保冷容器2を積み下ろすことができる。このとき、本体用側壁の下端部(下部)で前側壁8を掴むことができるので、特に最上段に位置している保冷容器2を容易に積み下ろすことができる。
【0040】
図6に示すように、左側の第1凹部10及び右側の第1凹部11に対応する本体用側壁の内側に、他の部分よりも内側に突出する突出部13を備えている。この突出部13の厚みは、少なくとも左側の第1凹部10及び右側の第1凹部11が凹んだ部分の体積以上になるように設定することになる。また、
図6では、左側の第1凹部10及び右側の第1凹部11よりも大きな面積の突出部13にして強度をアップすることで突出部13の厚みを薄くすることができる。これによって、保冷容器2の収容体積の減少を抑制することができるが、同一の面積の突出部であってもよい。このように突出部13を備えることによって、左側の第1凹部10及び右側の第1凹部11が形成されている本体用側壁の保形強度が低下することを抑制することができる。
【0041】
尚、本発明に係る保冷容器は、実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
前記実施形態では、平面視において長方形状の保冷容器を示したが、平面視において正方形状の保冷容器であってもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、第1凹部10の一方の延長部10cをもって本体用側壁の下部において左右方向から指を引っ掛けるための一方の第1掴み用引っ掛かり部を兼用構成したが、
図7に示すように、前側壁8の上端部の左右中央に容器本体3を持ち上げるための上面(第1持ち上げ用引っ掛かり部)10Dを有する持ち上げ用凹部10を設け、前側壁8の下部の一側(図では右側)に左右一対の第1凹部11,11を左右方向から指を引っ掛けることができる間隔で設けてもよい。持ち上げ用凹部10は、前側壁8の外面8Aから内側に離間したフラットな縦面10Aと、縦面10Aの左右端と外面8Aとを連結する左右の側面10B,10Cと、左右の側面10B,10Cの上端同士を連結する上面(第1持ち上げ用引っ掛かり部)10Dと、左右の側面10B,10Cの下端同士を連結する下面10Eとからなる凹部で構成されている。各第1凹部11は、前記実施形態と同様に、前側壁8の外面8Aから内側に離間したフラットな縦面11Aと、縦面11Aの左右端と外面8Aとを連結する左右の側面11B,11Cと、左右の側面11B,11Cの上端同士を連結する上面11Dとからなる切欠き部で構成されている。左側の第1凹部11の右側面11Cと右側の第1凹部11の左側面11Bとで、左右方向から指を引っ掛けて本体用側壁(前側壁8)を掴むための一対の第1掴み用引っ掛かり部を構成している。
図7では、一対の第1凹部11,11を右側に寄せて配置したが、左側に寄せて配置する、あるいは中央から左右に等間隔を置いて配置してもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、高さの異なる左右一対の第1凹部10,11を備えた場合を示したが、
図8に示すように、同一の高さで、かつ、同一の左右幅(同一形状で同一の大きさ)を有する一対の第1凹部10,10を本体用側壁(前側壁8)の上部(下部でもよい)に備えてもよい。各第1凹部10は、前側壁8の外面8Aから内側に離間したフラットな縦面10Aと、縦面10Aの左右端と外面8Aとを連結する左右の側面10B,10Cと、左右の側面10B,10Cの上端同士を連結する上面(第1持ち上げ用引っ掛かり部)10Dと、左右の側面10B,10Cの下端同士を連結する下面10Eとからなる凹部で構成されている。左側の第1凹部10の右側面10Cと右側の第1凹部10の左側面10Bとで、左右方向から指を引っ掛けて両側面10C,10B間の本体用側壁(前側壁8)を掴むための一対の第1掴み用引っ掛かり部を構成している。
【0045】
また、前記実施形態では、第1凹部10,11を2個設けたが、3個以上設けて実施してもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、第1凹部を2つの本体用側壁8,8に設けたが、1つ又は3つあるいは4つ全ての本体用側壁に設けてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、一対の第1凹部10,11の左側の第1凹部10を右側の第1凹部11よりも幅広に構成することによって、左側の第1凹部10の上面10Dを第1持ち上げ用引っ掛かり部として構成したが、第1持ち上げ用引っ掛かり部の無い一対の第1凹部であってもよい。具体的には、幅の狭い2つの第1凹部11,11(
図3参照)を少なくとも1つの本体用側壁8に備えて実施してもよい。この場合、保冷容器2を持ち上げる場合には、保冷容器2の底を掴んで持ち上げることになる。また、
図9に同一形状で同一の大きさを有する幅の狭い4つの第1凹部11,11,11,11を本体用側壁8に備えている場合(図示していない他の本体用側壁8にも備えてもよい)を示しているが、第1凹部11の個数は、3つあるいは5つ以上の任意の数であってもよい。尚、第1凹部11を3つ以上備える場合には、隣り合う第1凹部間の間隔は、左右方向で指を引っ掛けることができる範囲であれば、どのような間隔(距離)に設定してもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、上下高さと左右幅とが異なる一対の第1凹部10,11を備えた場合を示したが、
図10に示すように、左右幅方向中央に位置する第1凹部10と、これの第1凹部10の両側のそれぞれに、第1凹部10の上下高さよりも低く、かつ、第1凹部10の左右幅よりも狭い左右幅を有する第1凹部11を備えていてもよい。尚、
図10では、第1凹部10から左側に備えた第1凹部11までの左右幅方向おける第1距離と第1凹部10から右側に備えた第1凹部11までの左右幅方向における第2距離とを同一にしているが、第1凹部10と左側に備えた第1凹部11との間又は第1凹部10と右側に備えた第1凹部11との間に左右方向で指を引っ掛けて本体用側壁8を掴むことができる距離であれば、第1距離と第2距離とを異なる距離に設定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…コンテナ、1A…天井壁、1B,1C…左右壁、2…保冷容器、3…容器本体、3A…上面開口部、4…蓋体、5…底壁、5A…載置面、7…左右側壁(本体用側壁)、8…前後側壁(本体用側壁)、8A…外面、9…嵌合用凸条、10…第1凹部、10A…縦面、10B,10C…側面、10D…上面(第1持ち上げ用引っ掛かり部)、10E…下面、10b,10c…延長部、10c,11B…第1掴み用引っ掛かり部、11…第1凹部、11A…縦面、11B,11C…側面、11D…上面(第1持ち上げ用引っ掛かり部)、12…蓋体用凹部、13…突出部、KB,KC…傾斜面、L1,L2…幅、SB,SC…ストレート面、T…間隔、θ1,θ2…傾斜角度