(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-151202(P2015-151202A)
(43)【公開日】2015年8月24日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/24 20060101AFI20150728BHJP
【FI】
B66B23/24 Z
B66B23/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-23968(P2014-23968)
(22)【出願日】2014年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000232944
【氏名又は名称】日立水戸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】仲條 勇人
(72)【発明者】
【氏名】前田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】福島 絹代
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA01
3F321CF12
3F321CF16
(57)【要約】
【課題】ブラケット材に嵌合された手摺りガイドの脱落防止を容易に行うことのできる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】手摺りガイド5a、5bの長手方向及び短手方向の分割部に配置され、ブラケット材4に嵌合された手摺りガイド5a、5bが脱落するのを防止する固定金具8を有しているとともに、手摺りガイド5a、5bは、短手方向に分割された手摺りガイド5a、5bの互いに向き合う面に溝6を有し、固定金具8は、手摺りガイド5a、5bの長手方向及び短手方向の分割部で互いに隣接する4つの手摺りガイド5a1、5a2、5b1、5b2の溝6に嵌め込まれる嵌め込み部8aと、嵌め込み部8aと連結されるとともに、手摺りガイド5a、5bの長手方向の分割部(継ぎ目7)の間隙に沿って外側に向かって延設され、ブラケット材4に係合する係合部8bとを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され、乗降口間を循環移動する複数の踏段と、前記踏段の進行方向に沿って立設される欄干パネルと、前記欄干パネルの上端に装着されるブラケット材と、長手方向及び短手方向に分割構造となっており、前記ブラケット材に嵌合される手摺りガイドと、前記手摺りガイドに支持され、前記踏段と同期して移動する移動手摺りとを備えた乗客コンベアにおいて、
前記手摺りガイドの長手方向及び短手方向の分割部に配置され、前記ブラケット材に嵌合された前記手摺りガイドが脱落するのを防止する固定金具を有し、
前記手摺りガイドは、短手方向に分割された前記手摺りガイドの互いに向き合う面に溝を有し、
前記固定金具は、前記手摺りガイドの長手方向及び短手方向の分割部で互いに隣接する4つの手摺りガイドの前記溝に嵌め込まれる嵌め込み部と、前記嵌め込み部と連結されるとともに、前記手摺りガイドの長手方向の分割部の間隙に沿って外側に向かって延設され、前記ブラケット材に係合する係合部とを有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記固定金具は、金属棒材を折り曲げて前記嵌め込み部及び前記係合部を一体成型したものであることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは、無端状に連結され、乗降口間を循環移動する複数の踏段と、これらの踏段の進行方向に沿って立設される欄干パネルと、この欄干パネルにより支持され、踏段と同期して移動する移動手摺りとを備えている。そして、移動手摺りを欄干パネルに支持する構造として、従来、欄干パネルの上端に装着されるブラケット材と、長手方向及び短手方向(左右方向)に分割構造となっており、ブラケット材に嵌合される手摺りガイドとを備え、この手摺りガイドに移動手摺りを支持している。
【0003】
ところで、手摺りガイドには何らかの要因で大きな負荷がかかることがある。例えば、手摺りガイドは、一般に、樹脂で形成されるものであるとともに、例えば2000mmの長さ寸法を有する長尺部材であり、乗客コンベアの設置環境の変化等により、手摺りガイドに伸びが生じることがある。通常の状態では、手摺りガイドはブラケット材に嵌合されて脱落しないようになっているが、このような伸びが生じると、長手方向で隣り合う一方の手摺りガイドと他方の手摺りガイドとの繋ぎ目で互いに押し合い持ち上がる虞がある。このような事象等により手摺りガイドに大きな負荷がかかったときにブラケット材から脱落することを防ぐため固定することが必要である。
【0004】
そこで、従来、長手方向及び短手方向に分割構造となっている手摺りガイドを、それぞれブラケット材に嵌合した状態で、ブラケット材の短手方向の中央部において、手摺りガイドの上に一部重なるように固定プレートを配置し、固定プレートをビスで固定することによって、ブラケット材に嵌合された手摺りガイドが脱落するのを防止している。この種のものとして、例えば特開平05−78080号公報(特許文献1)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−78080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したものでは、手摺りガイドをブラケット材に嵌合した状態で、固定プレート及びビスにより手摺りガイドがブラケット材から脱落するのを防止するものであり、ビスによる固定作業に手間がかかるという課題があった。手摺りガイドが2000mmの長さ寸法を有する長尺部材の場合には、少なくとも2000mm間隔でこのようなビスによる固定作業を行う必要があることから、ビスによる固定作業にかなりの労力と時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、ブラケット材に嵌合された手摺りガイドの脱落防止を容易に行うことのできる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、例えば、無端状に連結され、乗降口間を循環移動する複数の踏段と、前記踏段の進行方向に沿って立設される欄干パネルと、前記欄干パネルの上端に装着されるブラケット材と、長手方向及び短手方向に分割構造となっており、前記ブラケット材に嵌合される手摺りガイドと、前記手摺りガイドに支持され、前記踏段と同期して移動する移動手摺りとを備えた乗客コンベアにおいて、前記手摺りガイドの長手方向及び短手方向の分割部に配置され、前記ブラケット材に嵌合された前記手摺りガイドが脱落するのを防止する固定金具を有し、前記手摺りガイドは、短手方向に分割された前記手摺りガイドの互いに向き合う面に溝を有し、 前記固定金具は、前記手摺りガイドの長手方向及び短手方向の分割部で互いに隣接する4つの手摺りガイドの前記溝に嵌め込まれる嵌め込み部と、前記嵌め込み部と連結されるとともに、前記手摺りガイドの長手方向の分割部の間隙に沿って外側に向かって延設され、前記ブラケット材に係合する係合部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定金具により、固定プレートやビスを要することなくブラケット材に嵌合された手摺りガイドの脱落防止を容易に行うことができ、これによって、手摺りガイドの脱落防止のための固定作業にかかる労力と時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例における乗客コンベアの概略構成図である。
【
図4】実施例における固定金具の装着状態を説明する説明図である。
【
図5】実施例における固定金具の装着状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。尚、各図において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施例における乗客コンベアの概略構成図である。乗客コンベアは、
図1に示すように、無端状に連結され、乗降口間を循環移動する複数の踏段1と、これらの踏段1の進行方向に沿って立設される欄干パネル2と、この欄干パネル2により支持され、踏段1と同期して移動する移動手摺り3とを有している。
【0013】
図2は、実施例における欄干の正面図である。乗客コンベアの欄干は、
図2に示すように、前述した欄干パネル2と、この欄干パネル2の上端に装着されるブラケット材4と、長手方向及び短手方向に分割構造となっており、ブラケット材4に嵌合される手摺りガイド5a、5bと、これらの手摺りガイド5a、5bに支持される前述した移動手摺り3とから構成されている。なお、欄干パネル2はガラス製、ブラケット4はアルミ製、手摺りガイド5a、5bは樹脂製である。
【0014】
図3は、実施例における固定金具の斜視図である。
図4及び
図5は、実施例における固定金具の装着状態を説明する説明図である。尚、
図4は、
図5の手摺りガイド5a、5bを半透明で示した図に相当する。また、
図4及び
図5では、移動手摺3の一部を半透明で示している。
【0015】
本実施例では、ブラケット材4に嵌合された手摺りガイド5a、5bの脱落を防止するための工夫が施されている。具体的には、
図3から
図5に示すように、手摺りガイド5a、5bの長手方向及び短手方向の分割部に配置され、ブラケット材4に嵌合された手摺りガイド5a、5bが脱落するのを防止する固定金具8を有しているとともに、手摺りガイド5a、5bは、短手方向に分割された手摺りガイド5a、5bの互いに向き合う面に溝6を有し、固定金具8は、手摺りガイド5a、5bの長手方向及び短手方向の分割部で互いに隣接する4つの手摺りガイド5a1、5a2、5b1、5b2の溝6に嵌め込まれる嵌め込み部8aと、嵌め込み部8aと連結されるとともに、手摺りガイド5a、5bの長手方向の分割部(継ぎ目7)の間隙に沿って外側に向かって延設され、ブラケット材4に係合する係合部8bとを有する構造となっている。
【0016】
ここで、固定金具8は、金属棒材を折り曲げて嵌め込み部8a及び係合部8bを一体成型している。
【0017】
嵌め込み部8aは、手摺りガイド5a1の溝6に嵌め込まれる直線部8a1と、手摺りガイド5a2の溝6に嵌め込まれる直線部8a2と、手摺りガイド5b1の溝6に嵌め込まれる直線部8a3と、手摺りガイド5b2の溝6に嵌め込まれる直線部8a4とを有している。
【0018】
係合部8bは、長手方向に分割された手摺りガイド5a1、5a2の分割部(一方の継ぎ目7)の間隙に沿って一方の外側に向かって延設される延設部8b1と、この延設部8b1の端部が折り曲げられて形成され、ブラケット材4の鍔部に係合する折り曲げ部8b2と、長手方向に分割された手摺りガイド5b1、5b2の分割部(他方の継ぎ目7)の間隙に沿って他方の外側に向かって延設される延設部8b3と、この延設部8b3の端部が折り曲げられて形成され、ブラケット材4の鍔部に係合する折り曲げ部8b4とを有している。
【0019】
長手方向に分割されて隣接する手摺りガイド5a1と手摺りガイド5a2との間の継ぎ目7、及び、長手方向に分割されて隣接する手摺りガイド5b1と手摺りガイド5b2との間の継ぎ目7は、例えば手摺りガイド5a、5bの伸びを考慮するとともに、継ぎ目7の間隙に沿って延設される固定金具8の係合部8bを配置するため、例えば5mmの間隙寸法に設定されている。
【0020】
ここで、手摺りガイド5a、5bの据付け手順について説明する。本実施例にあっては、まず、手摺りガイド5a1及び手摺りガイド5b1をブラケット材4に嵌合する。この状態で固定金具8の嵌め込み部8aの直線部8a1を手摺りガイド5a1の溝6に、また、直線部8a3を手摺りガイド5b1の溝6に、それぞれ嵌め込むとともに、係合部8bの延設部8b1を手摺りガイド5a1の縁部に沿って配置し、折り曲げ部8b2を一方のブラケット材4の鍔部に係合し、かつ、延設部8b3を手摺りガイド5b1の縁部に沿って配置し、折り曲げ部8b4を他方のブラケット材4の鍔部に係合する。
【0021】
次いで、手摺りガイド5a2及び手摺りガイド5b2をブラケット材4に嵌合する。このとき、手摺りガイド5a2及び手摺りガイド5b2を手摺りガイド5a1及び手摺りガイド5b1方向にスライドするようにして、固定金具8の嵌め込み部8aの直線部8a2を手摺りガイド5a2の溝6に、また、直線部8a4を手摺りガイド5b2の溝6に、それぞれ嵌め込む。このように、固定金具8の嵌め込み部8aにより手摺りガイド5a1、5a2、5b1、5b2のそれぞれを互いに連結することで、手摺りガイド5a、5bは強固にブラケット材4に固定される。そして、前述した手順を繰り返すことで、順次、手摺りガイド5a、5bを据え付けていく。
【0022】
本実施の形態によれば、固定金具8により、固定プレートやビスを要することなく手摺りガイド5a、5bがブラケット材4から脱落するのを防止することができ、これによって、手摺りガイド5a、5bの固定作業にかかる労力と時間を低減することができる。
【0023】
また、固定金具8は、金属棒材を折り曲げて嵌め込み部8a及び係合部8bを一体成型したことにより、低コストで固定金具8を製作することができる。
【0024】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、これまでの実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 踏段
2 欄干パネル
3 移動手摺り
4 ブラケット材
5a(5a1、5a2)、5b(5b1、5b2) 手摺りガイド
6 溝
7 継ぎ目
8 固定金具
8a 嵌め込み部
8a1、8a2、8a3、8a4 直線部
8b 係合部
8b1、8b3 延設部
8b2、8b4 折り曲げ部