卵の保持放出具は、上方から受けた卵を保持する第1の状態と、保持した卵を下方に放出する第2の状態とに遷移する。前記保持放出具は、前記第1の状態で、卵を挟んで保持するように水平方向に対向して配置された第1の保持部材および第2の保持部材を備え、前記第1の保持部材は、第2の状態で、卵を放出するために稼動することなく、前記第2の保持部材は、第2の状態で、卵を放出するために稼動する。
前記第2の保持部材は、前記第1の保持部材と共同して卵を保持するように、長軸を鉛直方向に向けた卵を前記第1の保持部材と反対側から支持する第2の支持部を備え、第1の保持部材に比較して簡易な形状を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の卵の保持放出具。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る保持放出具について説明する。保持放出具は、一般に、グレーダーと称される卵の選別包装システム、ファームパッカーと称される卵の分配充填システム等に用いられる。保持放出具は、種々の装置において、所定の箇所にて卵Eを受け、卵Eを保持した状態で移動し、所定の箇所にて卵Eを放出する。以下では卵の選別包装システムS1を例に、保持放出具100について説明する。
【0014】
図1に示すように、卵の選別包装システムS1は、従来よく知られるように、複数列で卵Eを搬送する第1の搬送部10と、第1の搬送部10より卵Eを受けて、さらに卵Eを搬送する第2の搬送部20と、卵Eを卵パックP、トレイ等に充填して包装する複数の包装部30とを備える。卵Eは、第1および第2の搬送部10,20を搬送されながら、計量、検査等されて、これらの結果に基づいて各包装部30に選別されて受け渡される。
【0015】
図1に示す卵の選別包装システムS1では、例えば、上流(
図1の左側)の包装部30からLLサイズ、Lサイズ、Mサイズ、MSサイズ、Sサイズ、SSサイズの卵Eに対応した包装部30が設けられている。卵Eは、第1の搬送部10の終端付近で計量され、計量の結果に基づいたサイズで選別され、第2の搬送部20からサイズに対応した包装部30に放出される。すなわち、たとえば、計量によりLサイズと判定された卵Eは、Lサイズに対応した上流から2つ目の包装部30に放出される。
【0016】
各包装部30では、卵パックPが、包装部30の延在方向(
図1のX方向)に上流(
図1の上側)から搬送され、所定の位置で待機し、第2の搬送部20から放出された卵Eを受ける。各包装部30は、従来よく知られる鶏卵受取充填装置(たとえば、特開2011−42399号公報)のように、第2の搬送部20から放出された卵Eを卵パックPに確実に充填するための機構を備えていてもよい。
【0017】
所定の数の卵が卵パックPに充填されると、卵パックPは再び包装部30の下流に搬送される。包装部30の次の工程には卵パックPを封緘する封喚機(図示しない)が設けられており、卵Eを充填された卵パックPが封緘される。
【0018】
本発明の実施の形態における卵の包装選別システムS1では、第1の搬送部10が卵Eを6列で搬送する。第1の搬送部10は、卵の搬送方向に複数のローラが並べられた従来よく知られたローラコンベアである(たとえば、特開2013−249168号公報参照)。ローラコンベアは、搬送方向に隣り合う一対のローラにより卵Eを挟持し、ローラが搬送方向に移動することにより卵Eを搬送する。
【0019】
第2の搬送部20は、第1の搬送部10の終端付近に、第1の搬送部10の搬送方向に直行する方向(
図1のY方向)に延在して設けられている。本実施の形態において、第2の搬送部20は、6列で卵Eを搬送する第1の搬送部10から6個ずつ卵Eを受け、単列で卵Eを連続して搬送する。第1の搬送部10から第2の搬送部20への乗り移りは、従来よく知られた卵移し替え装置40(たとえば、特開2011−173714号公報参照)によりなされる。
【0020】
第2の搬送部20は、
図2および
図3に示すように、チェーンのような無限軌道体22と、無限軌道体22に取りつけられた多数の保持放出具100とを備える。
図2では、28個の保持放出具が無限軌道体に取り付けられているが、これは例示であり、選別包装システムS1の仕様により、無限軌道体の長さ、保持放出具の数等は、適宜選択される。無限軌道体22は、第2の搬送部20の延在方向に沿ってトラック状に形成されている。
【0021】
保持放出具100は、
図2の下側の軌道において、上流に位置する第1の搬送部10から卵Eを受け、無限軌道体22の周回運動により移動し、下流に位置する所定の包装部30に鶏卵Eを渡す。卵Eを受け渡した保持放出具100は、
図2の上側の軌道に移動し、循環して再び第1の搬送部10から卵Eを受ける位置まで移動する。
【0022】
無限軌道体22に取り付けられた保持放出具100は、
図2に示すように、第1の搬送部10から、すなわち上方から卵Eを受け、計量または検査の結果に基づいて所定の包装部30まで移動し、包装部30に向けて、すなわち下方に向けて卵Eを放出する。これにより、保持放出具100は、第1の搬送部10より鉛直方向に長軸を向けた状態の卵Eを上方から受け、卵の姿勢を変更することなく所定の包装部30まで移動し、対応する前記キック装置に連関して下方に卵Eを放出する。
【0023】
これにより、第2の搬送部20は、第1の搬送部10から包装部30の間に介在し、卵Eを受け渡す。第2の搬送部20では、無限軌道体22が巡廻運動することにより、保持放出具100が周回運動する。すなわち、保持放出具は一の所定の箇所から他の所定の箇所に卵Eを搬送する。
【0024】
再び
図1を参照するに、各包装部30は、所定の位置で保持放出具100を開放させ、卵Eを所定の位置に放出させる放出機構32を備える。放出機構32は、第2の搬送部20の搬送方向(矢印Yの方向)に1列に並べて配置された複数のキック装置(図示しない)を備える。キック装置が保持放出具100に連関して、保持放出具100から卵Eを放出させる。キック装置として、たとえば、特開平8−82546号公報に開示されたキック装置を利用することができる。
【0025】
複数の前記キック装置は、卵パックPの1列あたりの卵座の数に対応して設けられている。したがって、本実施の形態において、1列に5つの卵座を有する卵パックPに対応して、各放出機構32は、5つのキック装置を備える。しかし、包装部30が1列に6つ以上の卵座を有するトレイ等に卵Eを充填するような場合に備え、各放出機構32は6つ以上のキック装置を備えていてもよい。
【0026】
各保持放出具100は、
図3〜5に示すように、卵Eを共同して保持する一対の第1および第2の保持部材110,120を備える。第1および第2の保持部材110,120は、鉛直方向に長軸を向けた状態の卵Eを受けるべく、上方に開放した受部130を共同して形成する(
図4参照)。本実施の形態において、第1および第2の保持部材110,120は、対称な形状を有する。
【0027】
第1の保持部材110は第2の搬送部の搬送方向の下流側に、第2の保持部材120は搬送の上流側に対向して配置されている。各保持放出具100は、
図3(A)に示す第1の状態で卵Eを保持し、
図3(B)に示す第2の状態で卵Eを矢印Z1の方向に放出するように遷移する。
【0028】
第1の保持部材110は、無限軌道体22に固定して稼動不能に取りつけられ、第2の保持部材120は、無限軌道体22に稼動可能に取りつけられている。第1の保持部材110は、第1の保持部材110を貫通して無限軌道体22に羅合するネジ部材(図示しない)により。無限軌道体22に固定して取り付けられている。第1の保持部材110は接着剤により無限軌道体22に取り付けられていてもよい。
【0029】
各保持放出具100は、
図5に示すように、さらに、第2の保持部材120を無限軌道体22に取りつけるための取付部材150と、第2の保持部材120を稼動させるための稼動部材160とを備える。取付部材150は、第2の搬送部20の卵の搬送方向と直行する水平方向に延在する軸状部材であり、第2の保持部材120を貫通して無限軌道体22に結合している。これにより、第2の保持部材120は、取付部材150を軸として回転可能に無限軌道体22に結合されている。
【0030】
稼動部材160は、
図5に示すように、無限軌道体22に回転可能に取り付けられている。稼動部材160は第2の保持部材120より保持放出具100の内側に位置する。また、稼動部材160は、歯車の歯型のような第1の噛合部分162とキック装置に当接する当接部分164とを備える。また、第2の保持部材120は、取付部材150の付近に歯車の歯型のような第2の噛合部分122を備える。第1の噛合部分162と第2の噛合部分122は噛み合うことで稼動部材160が回転した場合に第2の保持部材120も回転する。
【0031】
稼動部材160の当接部分164は、その上端付近がキック装置に当接するように無限軌道体22に取りつけられており、当接部分164がキック装置に当接することにより稼動部材160は矢印aの方向に回転する。これにより、当接部分164と一体的に形成された第1の噛合部分162も矢印aの方向に回転し、第1の噛合部分162に噛み合う第2の噛合部分122が矢印bの方向に回転する。
【0032】
第2の噛合部分122が矢印bの方向に回転することにより、第2の噛合部分122が一体的に形成された第2の保持部材120は、矢印bの方向に回転し、
図5(A)の状態から
図5(B)の状態に変形する。すなわち、キック装置が、稼動部材160に当接し、保持放出具100に連関することにより、保持放出具100は、卵Eを保持する第1の状態(閉状態)から卵Eを開放する第2の状態(開状態)に遷移する。
【0033】
なお、保持放出具100は、さらに、保持放出具100が閉状態を維持するように作用する弾性部材(図示しない)を第1の保持部材110と第2の保持部材120の間に備える。これにより、キック装置が稼動部材160に当接している状態では、保持放出具100は開状態となるが、キック装置が稼動部材160に当接していない状態では、保持放出具100は閉状態に戻る。
【0034】
したがって、保持放出具100は、閉状態の自己保持機能を有し、所定の包装部30に卵Eを開放した後の保持放出具100は、閉状態に戻って周回運動する(
図2参照)。しかし、弾性体を設けることなく、第2の搬送部20の循環軌道の途中に、キック装置により開状態となった保持放出具100を閉状態に戻す機構を設けてもよい。
【0035】
保持放出具100は、閉状態で第1の搬送部10から長軸を鉛直方向に向けた卵Eを受けて保持し、長軸を鉛直方向に向けた卵Eを保持した状態で無限軌道体22の軌道に沿って移動する。さらに、保持放出具100は、保持した卵の条件が適合する包装部30、すなわち所定の包装部30に到達すると所定のキック装置に当接部分164を当接させて開状態となり、卵Eを放出する。
【0036】
第1および第2の保持部材110,120は、再び
図4を参照するに、それぞれ、鉛直方向に長軸を向けた卵Eを共同して保持する第1の支持部110aと第2の支持部120aとを備える。第1の支持部110aは、搬送方向に対して反対方向と上方向との斜め上方に卵Eを支持し、第2の支持部120aは、搬送方向と上方向との斜め上方に卵Eを支持する。
【0037】
第1および第2の保持部材120は水平方向に対称な形状を有し、第1および第2の支持部110a,120aは、卵Eに接する部分が卵の外形形状に対応したテーパを有する靴ヘラ状に形成されている。保持放出具100が卵Eを安定して保持すべく、第1および第2の支持部120aは、保持放出具100の内部が釣鐘形状、すなわち下方ほど円周の小さい略切頭円錐形状を共同して形成する。
【0038】
保持放出具100は、第2の保持部材120が卵Eを開放する第2の状態で、稼動不能の第1の保持部材110に沿って卵が落下する。このとき、稼動しない第1の保持部材110はテーパを有し、このテーパに沿って卵が落下するため、搬送方向に対する反対方向と鉛直方向とからなる斜め下方(
図3の矢印Z1の方向)に卵Eを案内する。これにより、卵Eは、搬送方向に対して反対方向と落下方向とに速度ベクトルを有した状態で開放される。
【0039】
第2の搬送部20は、矢印Yの方向に卵Eを搬送し、所定の包装部30にて卵Eを渡す。その際、保持放出具100は、搬送方向に対して反対方向と落下方向とに速度ベクトルを有した状態で卵Eを放出するため、卵Eは、搬送による速度ベクトルを一部打ち消される。これにより、卵Eは、包装部30への渡される際の衝撃を緩和される。
【0040】
本発明の実施の形態にかかる保持放出具200の変形例を
図6に示す。この保持放出具200では、第1の保持部材210と第2の保持部材220とが非対称の形状を有する。変形例の第1の保持部材210は、
図2〜
図5に示す実施例の第1の保持部材110と略同一形状であり、曲面で卵Eを受けるような形状となっている。
【0041】
これに対して、変形例の第2の保持部材220は、実施例の第2の保持部材120のように曲面を有さず、実施例の第2の保持部材220に比較して簡易な形状となっている。第2の保持部材220は、水平方向に延びる第1の部材222と、鉛直方向に延びる第2の部材224とを備える。第2の保持部材220は、第1の部材222と第1の部材224とから矢印Yの方向からみてL字状に形成されている。
【0042】
第1の部材224は、その上部を無限軌道体22に固定して結合されており、第1の部材222が第1の部材224の下端に水平方向に回転可能に結合されている。これにより、第1の部材222は、第1の部材224の結合部を軸に水平方向に回転可能とされている。
【0043】
また、保持放出具が本変形例の場合に、包装部30は、第2の保持部材220に連関して、第2の保持部材220を
図6(A)に示す閉状態(第1の状態)から、
図6(B)に示す開状態(第2の状態)に遷移させる放出機構32を備える。放出機構32は、実施例と同様に、第2の搬送部20の搬送方向に1列に並べて配置された複数のキック装置(図示しない)を備える。
【0044】
前記キック装置が保持放出具200に連関して、保持放出具200から卵Eを放出させる。第2の部材224は、その一部を前記キック機構に当接させる当接部分とし、キック機構は、実施の形態と同様の構成を有し、第2の部材224の当接部分に当接し、第2の部材224を水平方向に回転させ、第2の部材224を
図6(B)の状態に遷移させる。
【0045】
なお、保持放出具200は、さらに、保持放出具200が閉状態を維持するように作用する弾性部材(図示しない)を第1の保持部材210と第2の保持部材220の間に備える。これにより、キック装置が第1の保持部材210に当接している状態では、保持放出具200は開状態となるが、キック装置が第1の保持部材210に当接していない状態では、保持放出具100は閉状態に戻る。
【0046】
保持放出具200は、
図6(A)の状態で卵Eを受け、
図6(B)の状態で卵Eを放出する。第1の保持部材210は、保持放出具100の第1の保持部材110と略同一の形状であり、
図6(A)の状態および
図6(B)の状態で稼動しない。
【0047】
変形例の保持放出具200では、第2の保持部材220が簡易な形状であるため、実施例に比較して製造が容易になる。しかし、変形例の保持放出具200でも、第1の保持部材210は実施例と同様の形状を有しているため、変形例の保持放出具200は、搬送方向に対して反対方向と鉛直方向とからなる斜め下方(矢印Z1の方向)に速度ベクトルを有した状態で卵Eを放出する。これにより、卵Eは、放出後に受けられる際の衝撃を緩和される。
【0048】
変形例の保持放出具200において、第2の保持部材220は、長軸を鉛直方向に向けた卵Eを搬送方向と下方向との斜め下方から支持する第2の支持部220aを有する。しかし、第2の支持部220aは、実施例と異なり、卵Eに対する接触面積は小さい。したがって、卵Eを受ける際に、変形例の保持放出具200は、保持放出具100よりも卵への衝撃が大きくなる。
【0049】
これを緩和すべく、第1の保持部材210または第2の保持部材120の第2の支持部120aに衝撃を緩衝する衝撃緩衝部材を設けてもよい。衝撃緩衝部材として、例えば、樹脂製のシートを支持部材に貼付してもよい。
【0050】
本実施の形態(以下、実施例および変形例を含む。)において、保持放出具を水平方向に移動させ、移動しない卵パック、鶏卵受取充填装置等に卵を放出する。しかし、保持放出具を水平方向に移動させず、移動する卵座に保持放出具から卵を放出することも想定される。この場合であっても、卵は、第1の保持部材により斜め下方に案内されながら放出されるため、案内する方向、すなわち第1の保持部材の形状、配置等を選択することにより、卵座への受渡の衝撃を緩和する事ができる。
【0051】
本実施の形態において、第1の保持部材は、稼動不能に形成されている。しかし、第1の保持部材は、卵を受けて保持できる範囲で、稼動可能に形成為れていてもよい。卵を受けて保持できる範囲で、第1の保持部材が少量の変位を許される程度に稼動可能とすることにより、卵への衝撃を緩和することができる。
【0052】
本実施の形態において、第1の保持部材が稼動不能に形成され、第2の保持部材が第1の状態と第2の状態とを形成するように稼動可能に形成されている。これにより、保持放出具は、1つの保持部材のみを稼動可能とすればよいため、保持放出具の構造が簡易になる。
【0053】
本実施の形態において、卵が放出される際に、第1の保持部材は、保持放出具の搬送方向に対する反対方向と鉛直方向とからなる斜め下方に卵を案内する形状を有する。これにより、保持放出具の搬送に対して、放出される卵の水平方向の速度が減殺され、卵への衝撃が緩和される。
【0054】
本実施の形態において、第1の保持部材は第2の状態で稼動不能とされ、第2の保持部材は、第2の状態で稼動可能とされているが、第1の保持部材を第2の状態で稼動可能とし、第2の保持部材を第2の状態で稼動不能としてもよい。少なくとも一方の保持部材を第2の状態で稼動不能とすることにより、稼動のための機構を減らし、保持放出具の構造が簡易になり、製造コストを低減できる。
【0055】
本実施の形態の変形例において、第2の保持部材が第1の保持部材に比較して簡易な形状を有するため、保持放出具の構造が簡易になる。また、第1の保持部材と第2の保持部材とを入れ替えて、第1の保持部材が上流側、第2の保持部材が下流側に配置されるようにしてもよい。
【0056】
本実施の形態における保持放出具は、無限軌道体に多数取り付けられ、一つの保持放出具の構造が簡易になることにより、取り付けられた保持放出具の数量に応じて、卵の搬送装置の製造費用が廉価になる。
【0057】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。